松本裕行・宮原孝夫『数理統計学入門』学術図書出版社(1990年)

この教科書は、120ページと比較的薄い教科書で、紙面も余白がわりとあってスッキリとしていて読みやすく、それでいて、説明は日本語も多用してわかりやすく、数学的にきっちりと説明がなされていくので、とても理解しやすいと思います。定義、定理、証明の繰り返しで構成されているのですが、その途中途中にある日本語の解説がわかりやすいので、ありがちな数学書における堅苦しさや無味乾燥さがなくて、良いです。

統計の教科書がわかりにくい理由は、多くの場合事実を列挙しているだけで、それらの数式や定理がどこから来たのかが説明されていなかったせいなのではないかと思います。「統計学」の教科書ではなく、「数理統計学」の教科書を読めばよかったわけですが、多くの「数理統計学」の教科書は、数学の本になっていて、読むのが困難です。松本裕行・宮原孝夫『数理統計学入門』学術図書出版社(1990年)は、数学的な厳密さと、日本語の説明のわかりやすさ、取り上げる内容の絞り込みのバランスが絶妙で、初学者が勉強していて満足度が高い教科書だと思います。

ジャズピアニストのビル・エバンスが、即興演奏をどうやって学んだらいいかについて解説した動画があります。彼は、誰かの演奏を聞いてその表面的な派手さを真似するのではなく、自分で自分が何を弾いているのかを理解できるくらい基本的なことからまず始めなさいと言っています。この教科書はまさに、統計学の基本事項の徹底理解にうってつけだと思います。

Bill Evans – The Creative Process and Self-Teaching