飢餓時におけるエネルギー源としてのケトン体の利用

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エネルギー代謝経路は、食事をしたとき、食間(運動時や睡眠時)、飢餓時(何日も食事を取っていない状態)によって変化します。

ヒトの体内では、空腹時には体脂肪が分解され、満腹時には脂肪の合成が活発になっている。脂肪や炭水化物摂取が過剰になると脂肪は蓄積の方に偏り、肥満や、肥満に起因した様々な疾病を引き起こしやすくなる。‥ 空腹時の肝臓では脂肪酸が分解されてケトン体が生じ、ケトン体は生体燃料として利用されることが知られている(酢酸の生理機能性 日本栄養・食糧学会誌67(4):171-176(2014))

ケトン体飢餓絶食糖質制限時のエネルギー(ATP)産生源として重要だ。‥ 絶食を行うと、エネルギー代謝の経路が変化することも明らかになっている。絶食当初は肝臓のグリコーゲンを分解する糖代謝で生命活動を保つが、その後は腹部に蓄えられた脂肪を分解し、脂肪酸として心臓や筋肉の機能を維持する。ところが脳は、脂肪酸をダイレクトにATPに変換できないため、肝臓でつくられたケトン体を介してエネルギーを受け取るのである。(ケトン体は諸刃の剣、使い方次第で臓器保護 各種モデルの腎障害を抑制 2022年11月11日 17:50 MedicalTribune)

下の解説記事で紹介されているエネルギー代謝の図が非常にわかりやすいです。また解説もかなり詳細でわかりやすい。

絶食が数日以上におよぶと、脂肪組織から遊離した脂肪酸の分解(β酸化)が亢進し、肝臓でケトン体の産生が増え、血中のケトン体の濃度が上昇し、脳を含め多くの組織のエネルギー源としてケトン体が利用されるようになる。‥ グルコース(ブドウ糖)が枯渇した状態で脂肪酸が燃焼するとき、肝臓ではケトン体(アセト酢酸β-ヒドロキシ酪酸)という物質ができます。‥ アセトンはエネルギー源にはならず呼気から排出されます(図)。(385)ケトン体の健康作用と抗がん作用 「漢方がん治療」を考える)

グルコースが枯渇したときのエネルギー源としてのケトン体の利用

食事で炭水化物を摂取していれば、それを消化してグルコースが得られます。食べないでいると、グルコースを得るためにエネルギー貯蔵の形態であるグリコーゲンを分解して、グルコースを得ることができます。しかし絶食の期間が長引くと、グリコーゲンの貯蔵は枯渇してしまうため、糖質以外の物質から糖新生に拠ってグルコースを作る必要があります。

筋肉のタンパク質はアミノ酸にまで分解され、アミノ酸代謝によりピルビン酸、α-ケトグルタル酸、スクシニルCoA、フマル酸、オキサロ酢酸がつくられ、糖新生に利用されます。糖新生に利用されるアミノ酸は、糖原性アミノ酸と呼ばれます。

脂肪組織に貯蔵された中性脂肪(トリアシルグリセロール TAG)は分解されてグリセロールと脂肪酸が生成し、脂肪酸からはβ酸化によってアセチルCoAとプロピオニルCoAが生成されます。プロピオニルCoAはスクシニルCoAに変換され、糖新生に利用されます。

ちなみに、心臓は遊離脂肪酸を取り込んで自分でβ酸化してエネルギーを得ることができますが、脳は遊離脂肪酸を利用できないため、別の方法が必要になります。

そこで、糖新生と並ぶ重要性が出てくる代謝経路が、ケトン体の生成です。脂肪組織の中性脂肪が分k内されてできる脂肪酸は肝臓でβ酸化されアセチルCoAが得られますが、アセチルCoAは水に溶けないので、血流にのって体の各所に移動することができません。そこで肝臓では、アセチルCoAは一旦、ケトン体に変換されて、ケトン体が血流にのって体の各組織に運ばれ、などの臓器で取り込まれて再びアセチルCoAに変換され、クエン酸回路に入ることでエネルギー源として利用されます。いわば、飢餓時においてケトン体はグルコースの代替として活躍するわけです。

ATP release from damaged cells and tissues has recently attracted attention, and has been reported as an alarm signal compound, alarmin. ‥ The released ATP in serum, however, is rapidly degraded within few minutes (Blood Lactate/ATP Ratio, as an Alarm Index and Real-Time Biomarker in Critical Illness April 5, 2013 PLOS ONE https://doi.org/10.1371/journal.pone.0060561)

図 https://www.researchgate.net/publication/353171740_Physiological_impact_of_in_vivo_stable_isotope_tracing_on_cancer_metabolism/figures?lo=1 ケトン体(βヒドロキシ酪酸)がグルコースと同じ位置付けに示されている図でわかりやすい。

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アセチルCoAからのケトンの合成

  1. Biochemistry, Ketogenesis Kiranjit K. Dhillon; Sonu Gupta. Author Information Last Update: February 10, 2022.

ケトン体はなぜ肝臓自身では利用されないのでしょうか?

ケトン体肝臓によって生成されますが、肝臓自身ではほとんど利用されません。その主な理由は以下の通りです:

  1. 代謝の優先順位: 肝臓は、エネルギー源としての優先順位が異なります。ケトン体は脂肪酸の代謝によって生成され、通常は他の組織や臓器でエネルギー源として利用されます。肝臓は、他の組織がエネルギーを必要としている場合に、ケトン体を優先的に供給するため、自身で利用する必要性が低くなります。(*コレ、日本語が変で意味をなしていない!chat.openai.comダメじゃん)
  2. グルコースの重要性: 肝臓はグルコースの生産と調節を主な役割としています。ケトン体は脂肪酸から生成されるため、主に有酸素条件下での脂肪酸代謝の産物として形成されます。しかし、肝臓は一酸化炭素の形成によるエネルギー源であるグルコースの合成に重点を置いています。グルコースは中枢神経系や赤血球など、特定の組織において重要なエネルギー源として必要です。(*コレも回答になっていない!chat.openai.comダメじゃん)
  3. ケトン体の代謝能力: ケトン体は一部の組織で効率的に利用されますが、肝臓自身の細胞内でのケトン体代謝能力は比較的低く、代謝に必要な酵素や転送システムが制限されています。そのため、肝臓自身がケトン体を利用することは限られています。(*コレが唯一回答らしい説明)

ケトン体は特に長時間の絶食状態糖質制限ダイエットなどの条件下で、他の組織や臓器がエネルギー源として活用するために重要な役割を果たします。肝臓は他の組織のエネルギー供給やグルコースの維持に注力するため、自身でのケトン体利用は限られています。(https://chat.openai.com/)

呼気中のアセトンの定量

  1. 呼気を用いて体脂肪の燃焼をモニタリングする簡易な方法を開発 医療技術ニュース 2021年02月16日 15時00分 Monoist 体脂肪が燃焼、分解される際、脂肪の代謝反応によって血中に生成されたアセトンが、アセトンガスとして呼気中に現れる。
  2. 安静時および運動時における呼気アセトン排出量と脂肪酸化量の関連 早稲田大学審査学位論文博士(スポーツ科学)
  3. 呼気中アセトン濃度を指標とした糖代謝・脂質代謝の評価(KAKEN 18K19763)

 

参考

  1. Ketosis, ketogenic diet and food intake control: A complex relationship February 2015Frontiers in Psychology 6:27 Follow journal DOI: 10.3389/fpsyg.2015.00027 Nutrient-sensitive neurons reacting to glucose but also to fatty acids (FAs) concentrations are present at many sites throughout the brain and may play a key role in the neural control of energy and glucose homoeostasis.
  2. FUEL METABOLISM IN STARVATION George F. Cahill, Jr. Annu. Rev. Nutr. 2006. 26:1–22 doi: 10.1146/annurev.nutr.26.061505.111258
  3. Ketone Strong: Emerging evidence for a therapeutic role of ketone bodies in neurological and neurodegenerative diseases Thomas N. SeyfriedJournal of Lipid Research VOLUME 55, ISSUE 9, P1815-1817, SEPTEMBER 01, 2014  DOI:https://doi.org/10.1194/jlr.E052944

 

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