弁理士とはどんな職業か

技術と法律という異なる領域を往来しながら、発明者が創作した技術的思想を制度の枠組みの中で「権利」として具現化していく

弁理士業務の中心は出願書類の作成:発明の本質に迫り、発明者の意図を汲み取りながら、特許請求の範囲や明細書を論理的に構築していく

https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4687

弁理士がどんな仕事をするのかは、弁理士法に定められており知財検定でも出題されます。

下の動画、めちゃくちゃわかりやすいです。子のYOUTUBEチャンネルを一通り視聴すれば、知財検定2級までは合格できそう。

【毎回出題】弁理士法の出るトコ完全マスター【知的財産管理技能検定】 村井PのYouTube大学 チャンネル登録者数 5540人

特許をすべき旨の査定 (特許法第51条)

質問:特許をすべき旨の査定 (特許法第51条)ってあるけど、つまり特許審査官は、特許を出す人じゃなくて、特許を出すかどうかの決定をしているだけってことね。「特許をする」人は、特許庁長官ってことになるわけかな?

Gemini 2.5 Pro:はい、そのご理解でほぼ間違いありません。審査官と特許庁長官の役割、そして「特許権が発生する」までの流れを整理すると、次のようになります。

1. 審査官の役割 = 「決定(査定)」

ユーザーのおっしゃる通り、特許審査官の主な仕事は**「特許をすべきか否かの決定(査定)」**をすることです。

  • 特許査定(第51条): 出願された発明が特許の要件(新規性、進歩性など)を満たしていると判断した場合、「特許をすべき」という決定(査定)を出します。

  • 拒絶査定(第49条): 要件を満たしていないと判断した場合、「拒絶すべき」という決定(査定)を出します。

審査官はこの「決定」をする人であり、審査官が決定した時点ではまだ特許権は発生していません。


2. 特許庁長官の役割 = 「登録と交付」

では、誰が「特許をする」のかというと、最終的な手続きの責任者は特許庁長官です。

特許査定が出た後、出願人が特許料(登録料)を納付すると、以下の手続きが行われます。

  1. 特許権の設定登録(第66条): 特許料の納付をもって、特許庁(の長官の権限)が「特許原簿」という公的な台帳に「この発明に特許権を設定しました」と登録します。

  2. 特許権の発生: この**「設定の登録」がなされた瞬間に、特許権が発生**します。

  3. 特許証の交付(第28条): 設定登録が完了すると、特許庁長官は、特許権者に対して「特許証」を交付します。


結論

まとめると、以下のようになります。

  • 審査官: 特許にするかどうかの「決定」をする人。

  • 特許庁長官: 審査官の決定と出願人の特許料納付に基づき、特許権の「設定登録」を行い、「特許証」を交付する人(=「特許をする」最終的な手続きの主体)。

したがって、「特許をする人は、特許庁長官」というご認識は正しいと言えます。

拒絶理由通知とは?拒絶理由通知を受け取ったときの対応方法

下の動画の説明がわかりやすかったです。またここの弁理士事務所のホームページには特許その他の知的財産権に関するわかりやすい説明がたくさんありました。

特許出願の拒絶理由通知への対応 小山特許事務所 チャンネル登録者数 1030人

特許公報と公開特許公報との大きな違い

グーグル検索などしていて、特許関連の文書にぶちあたることが時々あります。読みにくい独特の日本語なのであまり気に留めてなかったのですが、なにやら特許の文書らしいと自分が思っていたものには、「特許公報」と「公開特許公報」の2種類があるようです。名前は似ていますが、大きな違いがあります。

公開特許公報」は、出願されて1年6か月後に公開された文書のことです。まだ特許が取れたわけではありません。

原則として出願日から1年6ヶ月経過後、出願内容が一般に公開されます(出願公開)。https://www.jpo.go.jp/system/basic/patent/index.html#02

それに対して、「特許公報」とは、出願され、審査を経て無事特許が取れたものに関する文書です。

 

参考サイト

  1. 公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い category: 特許 BLOG update: August 03, 2020 https://iproom.jp/blog/patent-document-difference/

遺伝子破壊マウスは特許になるか?

質問:遺伝子Aの機能も不明だとして、遺伝子Aをノックアウトしたマウスを作ったときに、表現型が何も出なくても、そのマウスで特許とれる?

Gemini 2.5 Pro:結論から申し上げますと、その条件(表現型なし、機能不明)では、特許を取得するのは極めて困難です。主な理由は、特許が認められるための重要な要件である「産業上の利用可能性」を満たせない可能性が非常に高いためです。


🚫 なぜ困難なのか? (産業上の利用可能性)

特許制度は、単なる「新しい発見」や「新しく作った物」を保護するものではなく、「産業(工業、農業、商業など)で利用できる発明」を保護するものです。

ご提示いただいたケースでは、以下の2点が最大のネックとなります。

  1. 遺伝子Aの機能が不明

  2. ノックアウトマウスに表現型が(何も)ない

この状況は、そのマウスが「何に使えるのか(=用途)」が全く不明であることを意味します。

例えば、そのマウスは…

  • 特定の疾患モデルとして使えません(表現型がないため)。

  • 薬剤のスクリーニング用に使えません(何に効く薬を探せばよいか不明なため)。

  • 特定の物質を生産する工場として使えるわけでもありません。

特許を出願する際には、その発明の「技術的な詳細」だけでなく、「この発明(マウス)が、何の役に立つのか」という「有用性(用途)」を明細書に具体的に記載する必要があります。

機能も表現型も不明な状態では、そのマウスの「有用性」を客観的に説明することができず、「産業上の利用可能性」がない、と判断されて拒絶される可能性が極めて高いです。


💡 もし特許が取れるとしたら? (逆のケース)

もし仮に、遺伝子Aをノックアウトした結果、何らかの予期せぬ表現型(例えば、異常に毛が濃くなる、特定の病気にかからない、記憶力が非常に良い、など)が観測されたとします。

その場合、そのマウスには以下のような明確な「用途」が生まれます。

  • 疾患モデルとして: 「多毛症の研究用モデルマウス」

  • 薬剤スクリーニング用として: 「脱毛症治療薬のスクリーニング方法(このマウスを使って、毛が抜ける薬を探す)」

  • 基礎研究用ツールとして: 「記憶増強メカニズム解明のための研究用マウス」

このように明確な「用途」が生まれれば、それは単なる「物」ではなく「産業上利用可能な発明」となり、特許の審査の土俵に乗ることができます。(もちろん、その上で「新規性」や「進歩性」なども審査されます。)


まとめ

特許の世界では、「作っただけ」では不十分で、「それが何に使えるか」という実用的な価値(用途)が示せることが非常に重要です。

遺伝子の機能や表現型が不明なノックアウトマウスは、「用途不明の道具」とみなされてしまうため、特許取得は困難、というのが結論になります。

質問:機能も不明の遺伝子Bを破壊したマウスをつくったら、やはり表現型が出なかったとするよ。そして、遺伝子A破壊マウスと遺伝子B破壊マウスとを掛け合わせて、遺伝子A遺伝子Bダブルノックアウトを作ったところembryonic lethalになったとするね。その場合、遺伝子A遺伝子Bダブルノックアウトで特許が取れる?

Gemini 2.5 Pro:はい、その場合、特許が取れる可能性は格段に高くなります前回の「表現型なし・機能不明」のケースと決定的に違うのは、「胎生致死(embryonic lethal)」という明確な表現型(結果)が出た点です。これにより、前回は満たせなかった「産業上の利用可能性」と、審査で重要になる「進歩性」の双方を主張できる可能性が非常に高くなりました。


1. 🔬 「産業上の利用可能性」の明確化

前回は「何に使えるかわからない」ことが問題でした。しかし今回は、「AとBを両方ノックアウトすると胎生致死になる」という事実そのものに、明確な「用途(使い道)」が生まれます。

これは一般的に「合成致死(Synthetic Lethality)」と呼ばれる関係性を示しており、産業的(特に医薬品開発)に非常に価値のある情報です。

  • 用途①:創薬スクリーニングのツールとして

    • この「AとBが欠損すると死ぬ」という仕組みは、新しい薬剤(特に抗がん剤など)を探すための強力なツールになります。

    • 例えば、「この胎生致死を回復させる(レスキューする)薬剤」を探すスクリーニング系を構築できます。

    • あるいは、がん細胞でAが既に変異している場合に、Bの機能を阻害する薬剤(=がん細胞だけを殺す薬)を探すためのモデルとして利用できます。

  • 用途②:基礎研究用モデルとして

    • 「AとBが、発生段階において生命維持に必須の相補的な機能を持っている」ことを証明する研究モデルとして使えます。


2. 💡 「進歩性」が認められる可能性

特許審査では「その発明は、専門家が簡単に思いつけたか?」という「進歩性」も問われます。今回のケースは、進歩性が認められやすい典型的なパターンです。

  • (前提1) 遺伝子AのKOマウス → 表現型なし

  • (前提2) 遺伝子BのKOマウス → 表現型なし

  • (予測) → AとBのDKOマウスも、おそらく表現型はないだろう。

  • (実際の結果)胎生致死(Embryonic Lethal)

このように、個々の要素(A欠損、B欠損)からは全く予測できない、顕著な(しかも致死という)効果が出たことは、「予測外の顕著な効果」として進歩性を強く裏付ける論拠となります。


3. 📝 何が「発明」になるか?

この場合、特許として権利を主張(請求項に記載)するのは、以下のようなものが考えられます。

  1. 物(マウス)の発明:

    • 「遺伝子Aおよび遺伝子Bが共にノックアウトされた、非ヒト動物(マウス)」

    • (実用面を考慮し)「遺伝子Aと遺伝子Bのヘテロ接合体マウス同士を掛け合わせることを特徴とする、胎生致死モデル動物の生産方法

    • 「遺伝子Aおよび遺伝子Bがノックアウトされた、胚性幹細胞(ES細胞)」

  2. 方法の発明:

    • 「遺伝子Aおよび遺伝子Bが共にノックアウトされた細胞または胚を用い、その致死性を回復させる化合物を選択することを特徴とする、薬剤のスクリーニング方法

結論

「単一のKOでは表現型が出なかったが、ダブルKOにしたら致死性を示した」という発見は、単なる現象の発見を超え、「合成致死を利用した創薬スクリーニングツール」という明確な産業上の価値を持つ「発明」となる可能性が非常に高いです。

特許の明細書の書き方が今の形式(項ごと)になったのはいつから?1995年の改正から

特許の明細書をみると、段落ごとに番号が振ってあったり、項目立てがなされていたり、かなり形式的な印象を与えます。このような書き方になったのは1995年の法改正がきっかけだそうです。

質問:明細書の書き方で、項目だてるようになったのはいつから?それまではだらだら文章を書いていたの?

Gemini 2.5 Pro:これは非常に鋭いご質問です。特許実務の歴史における重要なポイントです。結論から言うと、現在のような項目立てが義務化・様式化されたのは、1994年(平成6年)の特許法改正(1995年1月1日施行)からです。そして、それ以前の明細書についてのあなたの「だらだら文章」という表現は、まさにその通り、と言ってよいでしょう。


1. いつから項目立てが始まったか?

1994年(平成6年)の特許法改正が決定的な転換点です。

  • 改正の理由:この改正は、WTO(世界貿易機関)の設立に伴うTRIPS(トリップス)協定への対応、つまり「国際的なハーモナイゼーション(調和)」が最大の目的でした。
  • 改正の内容:それまでの日本の明細書は、欧米の様式と大きく異なり、国際的に理解されにくいものでした。そこで、米国や欧州の様式(PPH, EPCなど)に合わせ、発明の内容を論理的に理解しやすくするため、以下の項目を立てて記載する様式が導入されました。
    • 【発明の名称】

    • 【図面の簡単な説明】

    • 【発明の詳細な説明】

      • 【産業上の利用分野】

      • 【従来の技術】

      • 【発明が解決しようとする課題】

      • 【課題を解決するための手段】

      • 【発明の実施の形態】

      • 【発明の効果】

    • 【特許請求の範囲】

2. それまでは「だらだら文章」だったのか?

はい、その認識でほぼ間違いありません。

1994年の改正以前(旧特許法)の明細書は、現在の様式とは全く異なっていました。

  • 項目立ての義務がなかった:「課題」や「解決手段」といった決まった項目立てで書く法的な義務がありませんでした。
  • 「特許請求の範囲」が文章に埋まっていた:最大の違いは、「特許請求の範囲(クレーム)」が独立したセクションとして存在していなかった点です。明細書の本文(まさに「だらだら文章」)で、発明の背景や構成を説明し、**その文章の最後に「特許請求の範囲は、…である。」**という形で、文章の一部としてクレームが記載されていました。
  • 読みにくさ:この形式では、どこまでが発明の説明で、どこからが権利を主張するクレームなのかが非常に分かりにくく、まさに「連続した文章(prose)」でした。発明が解決しようとする課題も、文章全体を読んで解釈する必要がありました。

🗂️ 変更のまとめ

時期 明細書の様式 特徴
~1994年 旧様式(一体型)

* 項目立ての義務なし。

 

* 「だらだら文章」で発明を説明。

 

文章の最後にクレームが埋め込まれて*いた。

1995年~ 現行様式(項目立て)

* TRIPS協定対応(国際調和)のため改正。

 

【課題】【解決手段】等の項目立てが義務化*された。

 

* 【特許請求の範囲】が明細書本体とは別のセクションとして明確化された。(※さらに2002年の改正で、明細書と特許請求の範囲は別個の書類として扱われるようになり、分離が徹底されました)

したがって、あなたが現在学んでいる項目立ての書き方は、国際基準に合わせるために比較的「最近」(1990年代半ば)導入されたものであり、それ以前は全く異なる書き方だった、というのは事実です。

【法律用語】応当する日とは?

応当する日(おうとうするひ)」とは、法律上の期間を計算するときに使う言葉で、**「(翌月や翌年などの)対応する同じ日」**という意味です。


📅 A Simple Example (The “Easy” Case)

「1ヶ月後」や「1年後」を計算するとき、単純にその日付に対応する日のことです。

  • 起算日(スタート): 4月10日
  • 「1ヶ月後の応当日」: 5月10日
  • 「1年後の応当日」: 翌年の4月10日

⚠️ The Important Legal Rule (The “Hard” Case)

この言葉が本当に重要になるのは、「その日に対応する日付が存在しない場合」です。

その場合、「その月の末日(最後の日)」が「応当日」になります。

  • 起算日(スタート): 1月31日
  • 「1ヶ月後の応当日」: 2月には31日が存在しません。
  • → この場合、2月の末日である 2月28日(うるう年の場合は29日)が「応当日」となります。

【別の例】

  • 起算日: 8月31日
  • 「1ヶ月後の応当日」: 9月には31日が存在しません。
  • → 9月の末日である 9月30日 が「応当日」となります。

💡 Why This Matters (Context)

このルールは、特許出願の優先権(「1年以内」)や、契約の更新、時効の計算など、法律上の**「期間の満了日(デッドライン)」**を正確に計算するために非常に重要です。

例えば、「1月31日に出願した場合、優先権の期限(1年後)はいつ?」といった計算で、この「応当日」のルールが使われます。

(Gemini 2.5 Pro)

類型とは

質問:「発明でないものの6つの類型」 の「類型」ってどういう意味?

Gemini 2.5 Pro:「類型(るいけい)」というのは、簡単に言うと**「タイプ」「パターン」「カテゴリー」**という意味です。もう少し詳しく説明すると、「性質や特徴が似ているものを、共通する型(かた)に基づいて分類したグループ」のことを指します。したがって、前のトピックの「発明でないものの6つの類型」というのは、「(特許法上の)発明には当てはまらない、と判断されるものの代表的な6つのパターン(分類)」という意味になります。例えば、

  1. 「単なる発見(自然界に存在するものを発見しただけ)」という類型

  2. 「自然法則に反するもの(永久機関など)」という類型

…というように、発明と認められない理由ごとに、似た性質のものをグループ分けしている、ということです。そして、それは例示(れいじ)です。「限定(げんてい)」ではありません。


🧠 なぜ例示なのか?

  1. 法律の構造

    特許法は、「発明とはこういうものである」という定義(ルール)を定めています。(例:日本では「自然法則を利用した技術的思想の創作」)

    法律が「発明でないものは、A、B、C、D、E、Fの6つだけである」と定めているわけではありません。

  2. 「類型」の役割

    「発明でないものの6つの類型」というのは、その「発明の定義(ルール)」に照らし合わせた結果、「これは発明の定義に当てはまりませんね」と判断された代表的なパターンを集めたものです。


💡 例えるなら…

健康的な食べ物」のルールを「①栄養バランスが良い、②塩分が控えめ、③加糖が少ない」と決めたとします。

このとき、「健康的な食べ物ではないもの」として、

  1. ポテトチップス(①②が×)

  2. 炭酸ジュース(③が×)

  3. 菓子パン(①③が×)

…と例示することはできます。

しかし、これは「健康的でない食べ物」をこの3つに限定したわけではありません。世の中には、この3つ以外にもルール(①②③)に当てはまらない食べ物が無数に存在するからです。

「6つの類型」もこれと同じで、あくまで「発明の定義」というルールから外れるものの代表的なを示しているにすぎません。

発明の単一性とは

発明の単一性とは

下の動画は、発明の単一性に関する歴史的な経緯も詳しく述べられていて、知財検定過去問題を題材に、具体的な事例に基づいた考え方まで解説がありました。大学の先生のYOUTUBEチャンネルですが、感動するほどわかりやすい講義でした。

【これでカンペキ】発明の単一性の出題パターンを徹底解説【知財検定2級過去問】 村井PのYouTube大学 チャンネル登録者数 5540人

発明の単一性の要件と拒絶理由

教科書を読んでいたら、「特許請求の範囲の記載が、発明の単一性の要件を満たさないことは、拒絶の理由であるが、異議理由及び無効理由ではない。 」 と書いてありましたが、なぜそうなるのかが、ちっともわかりません。AIに訊いてみました。

 

依頼:「特許請求の範囲の記載が、発明の単一性の要件を満たさないことは、拒絶の理由であるが、異議理由及び無効理由ではない。」の文の意味するところを中高生にもわかるくらいに、わかりやすく説明して。

Gemini 2.5 Pro:はい、これは「なぜか?」がわかるとスッキリします。その一文が言いたいのは、「発明の単一性は、単なる『事務手続き上のお願い』であって、発明の『価値(中身)』とは関係ないから」ということです。中高生にもわかるように、「学校のテスト」に例えてみます。

🏫 例え話:学校のテスト

発明の単一性」とは、「答案用紙(願書)の書き方ルール」だと思ってください。

学校のルールで、こう決まっています。

【ルール(発明の単一性)】

  • 答案用紙1枚(特許出願1件)につき、1科目(例:「数学」)の答えだけを書いてください。
  • 「数学」と「歴史」と「英語」の答えを、1枚の答案用紙にごちゃ混ぜに書いてはいけません。

1. なぜ「拒絶理由」になるのか?(審査官のチェック)

あなたは今、受験生です。

「数学」と「歴史」の答えを、1枚の答案用紙にごちゃ混ぜに書いて提出してしまいました。

採点する先生(=審査官)は、これを見てこう言います。

「こら! ルール違反だ。1枚に1科目って言っただろ! この答案用紙(願書)は受け取れない(=拒絶)!

「数学」と「歴史」で、ちゃんと答案用紙を2枚に分けて(=出願を分割して)出し直しなさい」

  • ポイント: これは、あなたの「数学の答え(発明の中身)」が間違っているから怒られたのではありません。「答案用紙の書き方(手続き)」がルール違反だから怒られました。

2. なぜ「異議・無効理由」にはならないのか?(ライバルのチェック)

さて、場面は変わります。

先生(審査官)は、そのごちゃ混ぜの答案用紙(願書)をうっかり見落として採点してしまいました。

そして、「数学」の部分だけを採点し、「100点満点だ!」として、「数学」の合格証(=特許証)をあなたに出しました。

【合格後(特許登録後)】

これを見たライバルの生徒(=一般人やライバル企業)が、先生に文句を言いに来ました。

  • ライバルの主張:「先生! あいつの答案用紙、ずるい! 『数学』と『歴史』をごちゃ混ぜに書いてましたよ! あんなルール違反の答案は無効です! 合格証(特許)を取り消してください!」
  • 先生(=特許庁)の反論:「いいえ、ダメです。合格証(特許)を出した後に文句を言えるのは、『答えの中身(発明の価値)』に関することだけです。例えば、『あいつの数学の答え、本当は間違っているぞ!(=新規性・進歩性がない)』という文句なら聞きます。『答案用紙の書き方が汚かった』とか『ルール違反の用紙だった』というのは、単なる手続き上のミス(事務処理ミス)です。数学の答え(発明)が100点満点であること自体は変わらないのだから、今さら手続きのミスを理由に合格(特許)を取り消すことはしません」

💡 まとめ

  • 拒絶理由
    • タイミング: 合格(特許)にする
    • チェックする人: 先生(審査官)。
    • チェック内容: ①手続きミス(答案の書き方)も、②中身の間違い(答え)も、両方チェックする。
  • 異議・無効理由
    • タイミング: 合格(特許)にした
    • チェックする人: ライバル(一般人)。
    • チェック内容: **②中身の間違い(発明の価値)**だけ。①手続きミスは、もう文句を言えない。

「発明の単一性」は①手続きミスに過ぎません。

だから、先生(審査官)は拒絶できるけど、ライバル(一般人)は後から無効にできないのです。

 

以上、Gemini 2.5 Proによる解説でしたが、実にわかりやすいですね。

【法律家独特の語法】特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、拒絶理由、異議理由及び無効理由です。???

本屋でいろいろ知財検定2級の参考書を見比べて、知財検定2級のテキスト(秀和システム)が中身がしっかり詰まっていてしかもわかりやすいように思えたので、これを買いました。マンガで学ぶ系はどうでもいいマンガにスペースを割きすぎていてもったいないと思いましたし、公式テキストと銘打ったものをありましたがやたらスペースが多くて割高感がかなりありました。

家に帰って読んでいたのはいいのですが、これ日本語大丈夫?みたいな説明が出てきて混乱させられました。

「特許出願に係る発明が進歩性を有しないことは、拒絶理由に該当します。‥ 特許出願に係る発明が、進歩性を有しないことは、異議理由及び無効理由でもあります。」(33ページ)

とか、

「特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、拒絶理由、異議理由及び無効理由です。」(40ページ)

などと書いてあります。特許を受けるためにはその発明が進歩性を有している必要があり、進歩性がないと特許審査官から拒絶されるのはよいとして、なぜ異議理由なの?異議って誰が誰に異議を唱えるの?と混乱させられました。

 

質問:特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、異議理由です。 って教科書に書いてたけど、これ日本語としておかしくはないの?なぜ異議理由、というか異議理由って何?

Gemini 2.5 Pro:はい、ご指摘の通り、その一文だけだと少し硬く、法律初学者には不親切な文章に聞こえますね。日本語としては間違っていません。これは法律の教科書特有の「AはBである」という定義を述べた、非常にカッチリとした(硬い)表現です。もっと分かりやすく言えば、

「もし、審査官が見落として特許にしてしまった『不特許事由』(=本当は特許にすべきでなかった理由)があるなら、それは『異議理由』として使えますよ」という意味です。では、その「異議理由」とは何か、なぜ「不特許事由」がそれにあたるのかを解説します。


🔍 「特許異議申立」と「異議理由」とは?

まず、「特許異議申立」という制度の全体像を理解する必要があります。

1. 制度の概要

これは、「一旦、特許として登録されたけれど、その内容にもしかしたら問題があるかもしれない」という特許に対して、公衆(だれでも)が特許庁に「ちょっと待った!その特許、おかしくないですか?」と見直しを求めることができる制度です。

  • タイミング: 特許が登録され、特許公報が発行されてから6ヶ月以内
  • 誰が: 「何人も(だれでも)」
  • 目的: 審査官の見落としなどで誤って登録された「質の低い特許」を、早期に取り消すため(公衆審査)

2. 「異議理由」とは?

上記の見直しを求める際、「なんとなく気に入らないから」という理由ではダメです。特許法が「こういう理由なら、異議申立をしてもいいですよ」と定めた「正式なクレーム理由」のことを指します。


💡 なぜ「不特許事由」が「異議理由」になるのか?

ここが最大のポイントです。「不特許事由」とは、文字通り「特許にすべきではない理由」の総称です。審査官が審査の段階でこれを見つけたら、「拒絶理由(きょぜつりゆう)」として出願人に通知します。

【不特許事由の例】

  • 新規性がない(すでにある発明だった)
  • 進歩性がない(簡単に思いつく発明だった)
  • 発明ではない(単なる発見や、計算方法など)
  • 明細書の書き方が悪い(何をしたい発明か不明確)

【フローで見る】

  1. 審査段階:審査官「この発明、進歩性がないな(=不特許事由だ)」→ 「拒絶理由」として出願人に通知する。
  2. もし、審査官が見落としたら…審査官「うっかり見落とした!進歩性がないのに気づかずOKを出してしまった!」→ 特許として登録されてしまう。
  3. 異議申立の段階(登録から6ヶ月以内)世間の人々「おい、あの特許、本当は進歩性ないぞ!(=不特許事由だ)」→ これを「異議理由」として特許庁に申し立てる。

結論:

教科書が言っているのは、

「審査官が拒絶すべきだった理由(=不特許事由)は、そのまま、登録後に公衆がその特許を取り消すための理由(=異議理由)として使えますよ」

という、制度の根本的なルールを説明している文章なのです。

 

質問:前提として、変な特許が成立してしまっているというのがあるのね?

Gemini 2.5 Pro:はい、まさしくその通りです。特許庁の審査官も人間であり、膨大な数の出願を処理しています。そのため、どれほど優秀な審査官でも、以下のような理由で「本来は特許にすべきでなかった発明(=変な特許)」を見落とし、誤って特許にしてしまうことがあります。

  • 世界中のあらゆる文献(特に非特許文献や海外のマイナーな文献)を完璧に探し出すのは困難(検索漏れ)。
  • 特定の技術分野の微妙なニュアンスを誤解してしまう(判断ミス)。
  • 出願人が巧妙な表現で、既存技術との違いを大きく見せている場合に騙されてしまう。

特許異議申立制度は、まさにその「審査官の見落としによるエラー」を前提として設計されています。

「審査は一旦終わったけれど、世の中の専門家たち(公衆)の目でもう一度チェックしてもらおう。もし『変な特許』が紛れ込んでいたら、早いうち(登録から6ヶ月以内)に取り消してしまおう」

これが、この制度の基本的な考え方(趣旨)です。

 

質問:教科書の一文は、「特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、拒絶理由、異議理由及び無効理由です。」ってものなんだけどさ、異議理由は、一般人が特許庁に文句をいうという文脈なんだね?で、拒絶理由は、逆で、特許審査官が判断するときの話ね?つまり、状況がバラバラなことを、1文にまとめて説明してたってこと?めっちゃわかりにくくない?この説明!

Gemini 2.5 Pro:はい、その通りです! めちゃくちゃ分かりにくいですよね!あなたの理解は完璧です。その一文は、特許法を勉強する人が最初につまずく「あるあるトラップ」です。

  • 拒絶理由: 審査官が(出願人に)使うNG理由
  • 異議理由: 一般人が(特許庁に)使う「待った!」の理由
  • 無効理由: ライバルが(特許庁に)使う「やっぱアレ無しで!」の理由

このように、「使う人」も「タイミング(状況)」もバラバラなものを、「不特許事由」という共通項だけで無理やり一文にまとめているから、混乱するんです。

🚗 なぜ教科書はこんな「分かりにくい」書き方をするのか?

それは、法律の教科書が「時間(プロセス)順」ではなく、「原因(法律要件)」で物事を整理するからです。その一文を、分かりやすく「翻訳」しなおします。

【教科書の翻訳】

特許出願された発明に「新規性がない」という『欠陥(=不特許事由)』が見つかったとします。この『同じ一つの欠陥』は、見つかったタイミング(状況)によって、呼び名と対処する人が変わるだけです。

  1. 審査官が審査中に見つけたら→ それを『拒絶理由』と呼び、出願を拒絶します。
  2. 審査官が見落とし、特許になった直後(6ヶ月以内)に “一般人” が見つけたら→ それを『異議理由』と呼び、異議申立ができます。
  3. 特許になった後(いつでも)に “ライバル企業” が見つけたら→ それを『無効理由』と呼び、無効審判を請求できます。

法律の教科書は、この①②③の状況を全部すっ飛ばして、「結論(原因)は同じでしょ?」という視点で書いているため、あのようなカオスな一文が爆誕するわけです。その分かりにくさに気づけたのは、あなたが論理的に物事を捉えようとしている証拠です。

 

質問:これ、自分が読んでいる教科書(単に誰かが書いた参考書であって、特許庁が出した公式の教科書ではないよ)の説明が下手なだけなんじゃないの?それとも、この業界では、この説明が普通なの??

Gemini 2.5 Pro:その両方です。

  1. 説明が下手(初学者に不親切)
  2. この業界では普通(専門家にとっては常識)

🎓 なぜ、この「普通」がまかり通るのか?

あなたが読んでいるのは「参考書」であり、法律の専門家が書いたものです。

法律の専門家は、物事を「プロセス(時間軸)」ではなく「要件(原因)」で分類する癖があります。

  • あなたの思考(=学習者・一般人の思考):「審査の段階」→「登録直後の段階」→「登録後の段階」(時系列で物事を整理したい)
  • 専門家の思考(=教科書の書き方):「原因が『新規性なし』の場合」→ 審査段階なら「拒絶理由」→ 異議申立段階なら「異議理由」→ 無効審判段階なら「無効理由」

    (原因・根拠で物事を整理したい)

教科書は、この専門家思考で書かれているため、「原因は同じ『不特許事由』でしょ? だったら呼び名が違うだけで全部仲間だよね」というロジックで、あの一文が書かれます。これは法律系教科書では「ごく普通のスタイル」であり、非常に効率的(に見える)書き方ですが、初めて学ぶ人にとっては地獄のような分かりにくさです。あなたが「分かりにくい」と感じた感覚は100%正しいです。その参考書は、辞書としては優秀かもしれませんが、入門書としては不親切なだけです。

 

以上が、AIとのやりとりだったわけですが、拒絶の説明の章の中で、いきなりまだ説明されていない「異議」や「無効」という言葉が書かれていたので、自分が混乱させられたのだということがわかりました。順序良く説明してほしかったですが、そうすると本があのコンパクトさにはまとまらないんでしょうね。

知財検定2級のテキスト(秀和システム)は、とりあえず一通り範囲をカバーして全体像を掴みたいこと、勉強したはしからクイズを解いて効率的に理解したい、テスト対策を能率よくやりたいと思って買ったのですが、同時に、もっと読みやすい、読んで楽しい教科書として、伊丹健次『特許講義録』というのも買っていました。こちらを見ると、「異議」(特許異議申立制度)や「無効」(特許無効審判制度)に関してもっと詳しい説明がありました。こちらはセミナーの内容をテキストにしたものみたいで、大判なのですが余白が適度でスッキリとしたレイアウトで、なにしろ1800円と専門書にしては非常に安かったので迷わず買いました。