婦人科の癌

産婦人科領域の代表的な癌についてまとめます。


産婦人科領域の代表的な癌:総合まとめ

1. 子宮頸癌(Cervical Cancer)

病態と機序

  • 主に**子宮頸部の扁平上皮と腺上皮の移行帯(SCJ)**から発生
  • 組織型:扁平上皮癌(約70%)、腺癌(約25%)、腺扁平上皮癌など
  • 発癌機序:高リスク型HPV(特にHPV16, 18, 31, 33, 45, 52, 58)の持続感染 → ウイルス癌タンパクE6/E7がp53とRb(pRB)を分解・不活化 → 細胞周期制御の破綻 → 異形成(CIN)→ 上皮内癌 → 浸潤癌へと多段階進展(通常10年以上)

リスク因子

高リスクHPVの持続感染、若年での性交開始、複数の性的パートナー、喫煙、免疫抑制(HIV、移植後)、長期経口避妊薬使用、多産、低栄養(葉酸欠乏)。

病勢進行(FIGO 2018)

  • I期:子宮頸部限局
  • II期:子宮を超えるが骨盤壁・膣下1/3に達しない
  • III期:膣下1/3進展、骨盤壁進展、水腎症、または骨盤・傍大動脈リンパ節転移(IIIC)
  • IV期:膀胱・直腸粘膜浸潤、または遠隔転移

層別化治療戦略

  • IA1期:円錐切除(妊孕性温存)あるいは単純子宮全摘
  • IA2-IB1, IIA1:広汎子宮全摘+骨盤リンパ節郭清。妊孕性希望ならIA2-IB1の一部で広汎子宮頸部摘出術(trachelectomy)
  • IB3, IIA2, II-IVA期(局所進行癌):**同時化学放射線療法(CCRT:シスプラチン併用外照射+小線源治療)**が標準
  • 新規パラダイム:高リスク局所進行癌(FIGO 2014 IB2-IIB N+ または III-IVA)に対し、KEYNOTE-A18試験でpembrolizumabをCCRTに併用することで有意なPFS改善が示された。2024年1月にFDAがStage III-IVAに対してpembrolizumab+CCRTを承認し、第2回中間解析では全生存期間も有意に改善した
  • 再発・転移:プラチナ+パクリタキセル+ベバシズマブ±pembrolizumab(PD-L1陽性)。2次治療以降にはtisotumab vedotin(抗TF抗体薬物複合体)も登場

予防

HPVワクチン(9価ワクチンが主流)と検診(細胞診±HPV検査)の併用で90%以上予防可能であり、産婦人科腫瘍学の中で最も予防可能な癌。


2. 子宮体癌(Endometrial Cancer)

病態と機序

近年は組織学的二分類(タイプI/II)からTCGA/ProMisEに基づく分子分類へとパラダイムシフト。2013年TCGAが4つの分子サブタイプを提唱し、2023年FIGO病期分類にも分子分類が組み込まれた。

TCGA/ProMisE分子分類

分子分類はPOLE focused sequencingとMMRタンパク・p53のIHCを組み合わせ、4サブタイプ(POLEmut、MMRd、p53abn、NSMP)に分類される。

サブタイプ 頻度 特徴 予後
POLEmut(超変異型) 約7% POLE exonuclease domain変異、超高TMB 極めて良好。5年RFSは100%に近い
MMRd(高頻度変異型) 約30% MLH1/MSH2/MSH6/PMS2欠損、Lynch症候群関連 中間
p53abn(コピー数高型) 約15% TP53変異、漿液性癌・癌肉腫の多くを含む 不良
NSMP(コピー数低型) 約50% 上記以外、類内膜癌G1-2が主 多様

リスク因子

エストロゲン過剰曝露(肥満、未産、早発初経・遅発閉経、PCOS、無拮抗エストロゲン療法、タモキシフェン)、糖尿病、高血圧、高齢、Lynch症候群(生涯リスク40-60%)。

症状・進行

  • 主症状:閉経後不正性器出血(最重要警告徴候)
  • 進行:子宮筋層浸潤 → 頸部・付属器浸潤 → 骨盤・傍大動脈リンパ節転移 → 腹腔内播種・遠隔転移
  • 漿液性癌や明細胞癌では原発巣が小さくても播種・転移を起こしていることがある

層別化治療戦略

手術:筋膜外単純子宮全摘+両側付属器切除が基本。2023年版ガイドラインで筋膜外単純子宮全摘出術が標準術式と明記された。リンパ節郭清は再発リスクで判断、近年はセンチネルリンパ節生検が普及。

術後補助療法(再発リスク群別):

  • 低リスク(類内膜G1/2かつIA期):経過観察
  • 中・高リスク:化学療法(TC療法:パクリタキセル+カルボプラチン)±放射線

分子分類に基づく個別化

  • POLEmutは予後良好で、術後治療省略の安全性がPORTEC-4、TAPER試験で前向きに評価中
  • p53abnは高悪性度で化学放射線療法が標準。一部はHER2阻害薬やPARP阻害薬が有効な可能性
  • MMRd:免疫療法の良い適応

進行・再発癌

  • MMRd/MSI-H:pembrolizumab、dostarlimab単独
  • pMMR:lenvatinib+pembrolizumab、化学療法+dostarlimab(RUBY試験)など、ICI併用が標準化

妊孕性温存:類内膜癌G1かつIA期(筋層浸潤なし)に限り、高用量MPA療法を適応。


3. 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌(Ovarian/Fallopian/Peritoneal Cancer)

病態と機序

これら3者は同一スペクトラムとして扱われる。**上皮性卵巣癌(EOC)が約90%**を占め、組織型は以下:

組織型 頻度 特徴
高異型度漿液性癌(HGSC) 約70% TP53変異がほぼ全例。BRCA変異/HRD多い。卵管采が起源とされる
子宮内膜様癌 約10% 子宮内膜症を背景。MMRd、CTNNB1、PTEN変異
明細胞癌 約10%(日本で多い) 子宮内膜症背景。ARID1A、PIK3CA変異。化学療法抵抗性
低異型度漿液性癌 約5% KRAS/BRAF変異、緩徐進行
粘液性癌 約3% KRAS変異、しばしば消化管転移と鑑別

その他:胚細胞腫瘍(若年女性)、性索間質性腫瘍(顆粒膜細胞腫など)。

リスク因子

  • 遺伝性:BRCA1(生涯リスク40-60%)、BRCA2(10-30%)、Lynch症候群、RAD51C/D、BRIP1
  • 排卵回数の増加(未産、不妊、早発初経・遅発閉経)
  • 子宮内膜症(明細胞・類内膜癌)
  • 高齢、ホルモン補充療法
  • 防御因子:経口避妊薬、多産、卵管結紮、母乳育児

症状・進行

**「サイレントキラー」**と呼ばれ、症状が乏しく約70%が進行期で発見される。腹部膨満、腹水、消化器症状、腹痛など非特異的。腹腔内播種が主進展経路で、大網・腹膜・横隔膜・骨盤臓器に拡がる。

FIGO病期分類

  • I期:卵巣・卵管限局
  • II期:骨盤内進展
  • III期:骨盤外腹腔内進展または後腹膜リンパ節転移
  • IV期:遠隔転移(実質肝転移、胸水細胞診陽性など)

層別化治療戦略

手術:完全摘出(R0)を目指す根治的減量手術(debulking surgery)。残存腫瘍量が予後に直結。進行癌では術前化学療法(NAC)後にinterval debulking surgeryも選択。

初回化学療法:プラチナ+タキサン(TC療法、3週ごと6サイクル)。進行癌ではベバシズマブ追加。

維持療法(PARP阻害薬がパラダイムシフト): 合成致死性(synthetic lethality)の概念に基づき、HRR欠損(BRCA変異、HRD)腫瘍でPARP阻害が著効。

ASCOガイドラインでは、新規診断のIII-IV期EOCで一次プラチナ化学療法に完全/部分奏効を示した高異型度漿液性または類内膜EOC全例にniraparib維持療法を推奨。BRCA1/2の生殖細胞系列または体細胞病的バリアントを有する患者にはolaparib、ゲノム不安定性を持つ患者にはolaparib+bevacizumabが推奨される。

ネットワークメタアナリシスでは、BRCA変異陽性ではolaparib+bevacizumabが最大のPFS利益を示し、BRCA陰性/HRD陽性でも同様。BRCA陰性/HRD陰性ではPARP阻害薬の利益は限定的。

SOLO-1試験ではBRCA変異陽性患者でolaparibの長期OSが未到達で、プラセボ群75.2か月に対しHR 0.55と顕著な改善。

バイオマーカー検査の重要性

  • BRCA1/2(生殖細胞系列+体細胞)
  • HRD検査(GIS:genomic instability score)
  • これらにより治療を層別化

再発例:プラチナ感受性なら再プラチナベース、PARP阻害薬維持。プラチナ抵抗性は単剤治療+ベバシズマブ、抗FRα-ADC(mirvetuximab soravtansine、FRα高発現症例)など。

遺伝性の予防:BRCA変異キャリアにはRRSO(リスク低減卵管卵巣摘出術)を35-40歳以降に推奨。


4. その他の婦人科癌

外陰癌(Vulvar Cancer)

  • 主に扁平上皮癌。**HPV関連型(若年)HPV非関連型(高齢、苔癬硬化症背景、p53変異)**の二経路
  • 治療:広汎外陰切除+鼠径リンパ節郭清(センチネル生検が普及)。進行例はCCRT

膣癌(Vaginal Cancer)

  • 稀(婦人科癌の1-2%)。HPV関連扁平上皮癌が大半
  • 治療は放射線療法中心

絨毛性疾患(Gestational Trophoblastic Disease)

  • 胞状奇胎、侵入奇胎、絨毛癌、胎盤部位腫瘍を含む
  • hCGが優れた腫瘍マーカーで、進行癌でもメトトレキサート/EMA-COなど化学療法による治癒率が高い

子宮肉腫

  • 平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、未分化肉腫など。化学療法・放射線への感受性が低く予後不良。手術が中心。

共通する現代的潮流

  1. 分子プロファイリングによる個別化医療:体癌のTCGA分類、卵巣癌のHRD/BRCA、頸癌のPD-L1
  2. 免疫チェックポイント阻害薬の標準治療化:頸癌、体癌、MSI-H腫瘍全般
  3. PARP阻害薬による合成致死性の臨床応用:卵巣癌で確立、体癌・頸癌へ拡大中
  4. 抗体薬物複合体(ADC)の登場:tisotumab vedotin(頸癌)、mirvetuximab(卵巣癌)
  5. 妊孕性温存治療の普及:早期癌で適応拡大
  6. HPVワクチンによる頸癌の根本的予防

まとめ

子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌
主機序 HPV持続感染 エストロゲン過剰/分子4型 HRR欠損(BRCA/HRD)
好発年齢 30-50代 50-60代(閉経後) 50-70代
早期症状 不正性器出血 閉経後出血 乏しい(進行発見多)
検診 細胞診/HPV 確立されず 確立されず
一次予防 HPVワクチン 体重管理 RRSO(BRCA陽性)
標的治療 ICI、抗TF-ADC ICI、HER2、PARP PARP、Bev、抗FRα-ADC

(執筆:Claude Opus 4.7)

 

 

科研費研究について調べてみました。

検索対象:KAKENデータベース

検索式:(層別化 OR 個別化 OR precision OR 分子分類) AND (子宮頸癌 OR 子宮頸がん OR 子宮体癌 OR 子宮体がん OR 子宮内膜癌 OR 卵巣癌 OR 卵巣がん OR 婦人科癌 OR 婦人科がん OR 婦人科悪性腫瘍 OR 婦人科腫瘍)

基盤研究(B)

研究課題名 研究課題名 (英文) 研究課題/領域番号 研究期間 (年度) キーワード 研究分野 審査区分 研究種目 研究機関 研究開始時の研究の概要 研究概要 研究概要 (英文) 研究成果の概要 研究成果の概要 (英文) 研究実績の概要

    1. 子宮体癌術後の体組成・身体活動・QOLの縦断解析と特化型リハプログラムの実装研究 26K02740 2026-04-01 – 2029-03-31 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(B) 慶應義塾大学
    2. 大規模コホート解析に基づく子宮体癌の分子遺伝学的分類の細分類化と個別化医療の推進 26K02542 2026-04-01 – 2029-03-31 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 和歌山県立医科大学
    3. メタボリックリプログラムによる腫瘍関連腹膜線維化を標的とした卵巣癌の治療戦略開発 26K02541 2026-04-01 – 2029-03-31 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 名古屋大学
    4. 子宮体癌の薬剤感受性耐性予測による引き算の個別化医療のための基礎的検討 26K02540 2026-04-01 – 2029-03-31 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 金沢大学
    5. 円偏光散乱を用いた婦人科がんの前癌病変評価技術の確立 Establishment of evaluation technique using circularly polarized light scattering to evaluate the precancerous lesion of gynecological cancer 25K03438 2025-04-01 – 2028-03-31 がん組織評価 / 円偏光 / 光学生検 / 子宮頸がん / 異形成 小区分90110:生体医工学関連 基盤研究(B) 北里大学 円偏光を生体組織に照射し、その散乱光の偏光の崩れ具合を評価することで組織内の細胞核の異形成などを検出することができる。本研究課題では、婦人科がんへの適用を目指し、①子宮頸がんの進行メカニズムの光学的検証、②de novo型卵巣明細胞癌の前癌状態の光学的評価を実験と計算の両面から実証し、並行して③非侵襲がん評価デバイスを開発し、その機能を実証する。組織に対する光散乱シミュレーションによる計算的手法、並びに生体模型および生体組織と病理検体を用いた実験的手法による検証を進める。また並行して内視鏡(子宮鏡)に搭載可能な円偏光照射・検出装置を試作し、機能実証を行う。
    6. 遺伝性乳がん卵巣がん症候群に対する先制医療の開発 Development of preemptive medicine against hereditary breast and ovarian cancer syndrome 25K02870 2025-04-01 – 2030-03-31 遺伝性乳がん卵巣がん症候群 / 先制医療 / トラメチニブ / p21 / RB 小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む 基盤研究(B) 京都府立医科大学 遺伝子診断の進歩に伴い、個人の全遺伝子配列を簡便に調べることが可能となり、種々のがん体質が容易に診断できるようになった。このがん体質はがん抑制遺伝子が家族性に突然変異で失活することが原因であるが、その失われたがん抑制能を回復できる薬剤は存在しない。私達はいくつかのがん体質に対する薬剤・食品成分による先制医療のモデルを報告してきた。今回、乳がん、卵巣がんだけでなく、膵臓がん、胃がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん等の発がんリスクが高くなる、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の未発症変異保有者に対する先制医療の方法を創案し、臨床における予防介入試験に使用できる薬剤・食品(成分)カクテルの創製を目指したい。
    7. 婦人科がんにおけるがん免疫疲弊と免疫記憶の包括的理解と制御法の開発 25K02782 2025-04-01 – 2028-03-31 免疫逃避 / 免疫記憶 / 婦人科がん 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 慶應義塾大学 本研究では,臨床検体ならびにICI投与モデルマウスを用いて,腫瘍抗原特異的T細胞の性質を,1細胞RNAシークエンス(scRNA-seq)やメタボローム解析などで評価する.免疫疲弊からのT細胞の機能を克服し,メモリー分化へ誘導する治療法として,ICI,脂質代謝酵素阻害薬,グルタミン酸受容体阻害薬などを用いて,その作用メカニズムの解明と新たな治療標的の探索を行う.さらにヒト検体では,長期ICI使用症例,ICI使用後の再発症例の腫瘍組織や末梢血を経時的に採取し,T細胞に疲弊が起きる過程を解析すると同時に,長期奏功症例でのメモリーT細胞の分化過程を解析し,動物実験により得た知見についても検証する.
    8. 2Dフローサイトメトリー技術の確立と子宮頚がん細胞診への応用 Two-dimensional flow cytometry for cervical cancer screening 24K03302 2024-04-01 – 2027-03-31 マイクロ流体デバイス / フローサイトメトリー / 細胞診 小区分90130:医用システム関連 / 小区分90140:医療技術評価学関連 / 合同審査対象区分:小区分90130:医用システム関連、小区分90140:医療技術評価学関連 基盤研究(B) 東京大学 本研究は、新概念のフローサイトメトリーとして、タンパク質の発現量・細胞内局在に基づいて、高速で臨床検体細胞の同定・解析が可能な2DFC技術を確立し、p16/Ki-67二重染色による子宮頸がんの細胞診に応用することで、発癌リスクの高い異型細胞の高精度検出により診断の信頼性を高めた細胞診自動化プラットフォームの実現を目指す。 多重蛍光染色された細胞からの蛍光を検出するために、タイムゲーティングSPADの制御をさらに高度化し、各励起光を時間差で照射する手法を導入した。これにより、光学フィルターを使用せずに、複数の蛍光マーカーを同時に検出することが可能となった。具体的には、異なる波長のパルスレーザーをインターリーブ照射し、それぞれのマーカーを特定の波長のパルスで選択的に励起することで、複数の蛍光マーカーを同時に検出することに成功した。このように複数波長の光を時間差で照射することで、多種類のマーカーで多重染色された細胞の解析を実現した。
    9. 腫瘍浸潤T細胞を用いた卵巣がん微小環境における抑制性免疫機構の解明 Exploring Suppressive Immunity Mechanisms in the Ovarian Cancer Microenvironment Using Tumor-Infiltrating T Cells 24K02591 2024-04-01 – 2028-03-31 卵巣がん / 腫瘍免疫 / TIL / 卵巣癌 / 腫瘍微小環境 / T細部 / 免疫 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 埼玉医科大学 卵巣がんにおける抑制性免疫環境のメカニズムをTILの腫瘍応答性を指標にし、免疫細胞のサブタイプ、腫瘍微小環境などの視点から、免疫細胞学的手法および免疫ゲノム学的手法を用いて明らかにし、新規のバイオマーカーおよび免疫療法開発へと発展させる。 TILの培養及び免疫データから腫瘍特異的な応答が見られるTILの評価を行う。保存されている培養TILおよびPDCあるいはFTCの共培養法を確立し培養液中のIFNγを指標にELISA法にて腫瘍応答性を評価する。またFTC及び培養して活性化されたTILのサブタイプをフローサイトメーターにて評価し、TILの免疫学的特徴に関してT細胞機能に関する免疫プロファイル及び応答性に強く影響する腫瘍のHLA class IやPD-L1の発現も評価し、腫瘍応答性と関連するTILのフェノタイプや腫瘍の特徴を明らかにする。保存されているTILの培養を行い、十分増殖できた20例を利用して、この20例に関して培養TILおよびPDCあるいはFTCの共培養を行い、培養液中のIFNγを指標にELISA法にて腫瘍応答性を評価したところ、10例に培養液中のIFNγを指標にELISA法にて腫瘍応答性が確認できた。つまり卵巣がんTILのうち約半数はbystandarなT細胞ではなく、光源特異的なT細胞を含んだTILであることが明らかになった。種表応答性とTILの背景を確認したところ、進行期の卵巣がんから採取したTILの方が応答性を示す傾向にあることがわかった。また培養して活性化されたTILのサブタイプをフローサイトメーターにて評価し、TILの免疫学的特徴に関してT細胞機能に関する免疫プロファイルを確認するために、CD8, CD39, PD-1の解析を行った。しかし、いずれも自己腫瘍応答性とは明らかな関連性は認められなかった。次にPDCのフローサイトメーターによる解析の準備を行い、EpCAM, PD-L1, HLA-class Iによる多重染色が可能か確認を行なった。
    10. BRCA病的バリアント保持者女性における卵巣癌危険因子の層別化に向けた多施設共同研究 Multicenter study to stratify ovarian cancer risk factors in women with BRCA pathogenic variants carriers. 24K02589 2024-04-01 – 2029-03-31 遺伝性乳癌卵巣癌症候群 / 卵巣癌 / 臨床研究 / 遺伝性腫瘍 / BRCA1,BRCA2 / リスク低減卵管卵巣摘出術 / 前向きコホート研究 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 岡山大学 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)女性の約4割が生涯で卵巣癌を発症する。一方でHBOCの原因遺伝子であるBRCA1/2病的バリアント保持者の約6割は卵巣癌を発症しないことから、BRCA1/2病的バリアント保持者女性のがん予防個別化を確立するための発癌リスクの個別化に向けた基盤データの集積は喫緊の課題である。卵巣がん未発症のBRCA1/2病的バリアント保持者女性を対象に前向きコホート研究を組み、同コホートの登録情報からがん発生の特徴と発癌に関与する遺伝・環境因子を明らかにして、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)やサーベイランスなどの先制医療の個別化戦略策定に向けた基盤データを構築する。 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(Hereditary breast and ovarian cancer syndrome: HBOC)女性の約4割が生涯で卵巣癌(卵管癌および腹膜癌を含む)を発症する。一方でHBOCの原因遺伝子であるBRCA1またはBRCA2 (BRCA1/2)の病的バリアント保持者の約6割は卵巣癌を発症しないことから、BRCA1/2病的バリアント保持者女性のがん予防個別化を確立するための発癌リスクの個別化に向けた基盤データの集積は喫緊の課題である。申請者らは特定非営利活動法人婦人科悪性腫瘍研究機構(Japanese Gynecologic Oncology Group: JGOG)の多施設共同臨床研究(JGOG3024)として、卵巣がん未発症のBRCA1/2病的バリアント保持者女性を対象に前向きコホート研究を組んでいる。本研究では同コホートの登録情報からがん発生の特徴と発癌に関与する遺伝・環境因子を明らかにして、リスク低減卵管卵巣摘出術(risk-reducing salpingo-oophorectomy: RRSO)やサーベイランスなどの先制医療の個別化戦略策定に向けた基盤データの構築を進めている
    11. 細胞外小胞トランスレーショナル解析による新規卵巣がん治療戦略開発 Development of Novel Ovarian Cancer Treatment Strategies by Translational Analysis of Extracellular Vesicles 24K02586 2024-04-01 – 2027-03-31 エクソソーム / 細胞外小胞 / がん微小環境 / 卵巣がん / Heterogeneity / 悪性化メカニズム 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 名古屋大学 卵巣がんを始めとした難治性婦人科がんは、最先端の研究では対象とされにくい現状があるが、それゆえに、臨床応用を目指した基礎的研究を行う意義は高い。またEV研究は現在、世界的にみて最も注目を集めている研究分野の一つである。本研究は、需要の極めて高い、EV研究、婦人科がん研究の双方の発展に寄与する極めて重要な位置づけとなると考えられ、分野横断的にも世界に大きな影響を与えうる重要な知見をもたらすことを目的とする。 本研究は、卵巣がんにおける体液中細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)を解析対象とし、EVが搭載する核酸やタンパク質を詳細に解析することで、臨床応用へ向けた基盤となる知見を明らかにすることを目的とする。あらゆる生細胞が恒常的に放出するEVは、細胞間情報伝達手段として注目され、過去10年程で世界的に研究が劇的に進み、現在もその勢いは続いている。取り巻く市場も急速に拡大しており、今後臨床応用へ向けたトランスレーショナル研究がさらに加速することが予想される。一方で、EVは、その特性や定義、取扱い手法など、今なおアップデートが続いている。がん生物学おけるEVのもつ役割の重要性は今や疑う余地はなく、未だ臨床的問題点が多く残る難治性卵巣がんに於けるEVの機能解明は極めて重要と考える。本研究では、① 卵巣がん発生初期段階の悪性化に関わるEVの機能解析 ② 個別化医療を実現するEVバイオマーカー同定を通した新規治療戦略開発 の、2点を研究項目に設定する。今年度は①②ともに順調に研究を進め、新たな知見について特許出願も行った。また学会等の受賞なども得た。引き続き研究目的実現のため研究を継続する。
    12. 卵巣癌/子宮体癌における薬剤感受性メチル化診断キットの開発とLiquid Biopsyへの応用 Diagnostics of methylation-based predictive biomarkers in ovarian and endometrial carcinomas by using both tumors and liquid biopsy 24K02584 2024-04-01 – 2027-03-31 エピゲノム / メチル化プロファイル / マルチオミクス解析 / 卵巣癌 / 細胞起源 / メチル化判定 / リキッド・バイオプシー / 子宮体癌 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 東京大学 エピゲノム修飾の変化と薬剤感受性の関係性に注目し、HRDやMSI-H群においてDNAメチル化症例を正確に層別化するとともに、薬剤耐性に関わる主要遺伝子のメチル化状態を同時に評価することで、臨床応用可能なメチル化診断法の確立を目指す。具体的には、卵巣癌・子宮体癌の腫瘍検体を用いて、BRCA1, MLH1等のメチル化とMSIを同時に調べるアッセイ法(SiFAMM法)として、「薬剤感受性メチル化診断パネル(新SiFAMM法)」を開発するLiquid Biopsyを用いて経時的にメチル化を評価する「メチル化リアルタイムモニタリング法(Liquid SiFAMM法)」へと発展させ、実用化を目指す。 【目的】卵巣明細胞癌(clear cell ovarian carcinoma:CCOC)は主要な組織型の一つであるが、細胞起源や分子サブタイプは未だ明らかでない。本研究では、CCOCの候補となる細胞起源を同定し、分子サブタイプの分類を目的にゲノム・エピゲノム統合解析を実施した。【方法】原発性CCOC 78症例で全エクソーム解析、発現アレイ解析、DNAメチル化アレイ解析を実施した。他の卵巣癌症例(n = 270)および正常組織(卵管上皮、卵巣表層上皮、子宮内膜上皮、骨盤腹膜中皮)と比較解析を行い、メチル化プロファイルに基づくクラスタリングを実施した。【成績】ARID1AおよびPIK3CAの変異は、TP53、BRCA1、ATMなどのDNA修復関連遺伝子の変異と相互排他的に存在していた。メチル化アレイ解析により、主要なCCOCサブタイプ(ARID1Aおよび/またはPIK3CA変異を有する)は骨盤腹膜中皮(PPM)様のクラスター(n = 64)に属することが判明した。このクラスターはさらに、(1) MMR(ミスマッチ修復)欠損・TMB高(n = 2)、(2) ARID1A変異あり(n = 51)、(3) ARID1A野生型(n = 11)の3つに分類された。残る14例は、(4) 卵巣表層上皮様(n = 11)、(5) 卵管上皮様(高異型漿液性腫瘍と考えられる;n = 3)に分類された。これらのうち、(1)-(3)は免疫反応性シグネチャーと関連し、(4)、(5)は上皮間葉転換(EMT)との関連が示唆された。【結論】本研究により、CCOCは分子異常とエピゲノム特性に基づき分類可能であり、PPM由来と考えられるサブタイプが主であることが明らかとなった。メチル化パターンを示すサブタイプは、ARID1A変異や免疫反応性と関連し、今後の薬剤感受性予測バイオマーカーとしての有用性が期待される。
    13. KMT2変異子宮体癌の脆弱性を狙い撃つ革新的複合免疫療法の開発 Innovative Combination Immunotherapy Targets Vulnerability of KMT2 Mutant Uterine Cancer 24K02582 2024-04-01 – 2027-03-31 エピゲノム / KMT2 / 子宮体癌 / エピジェネティクス 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 群馬大学 この研究では、まずKMT2変異とマイクロサテライト不安定性との因果関係を明確にし、免疫チェックポイント阻害剤による治療の妥当性を検討する。続いて、KMT2変異癌のDNA修復異常に着目した分子標的治療薬による治療法の検討と、免疫療法の効果を減弱させる癌悪液質に対する治療法の開発を実施する。さらに免疫チェックポイント阻害と分子標的治療、癌悪液質抑制を同時に実施することにより、KMT2変異子宮体癌に最適化された複合免疫療法の完成を目指す。 本研究では、KMT2変異とマイクロサテライト不安定性との因果関係を明確にし、免疫チェックポイント阻害剤による治療の妥当性を検討する。続いて、KMT2変異癌のDNA修復異常に着目した分子標的治療薬による治療法の検討と、免疫療法の効果を減弱させる癌悪液質に対する治療法の開発を実施する。さらに免疫チェックポイント阻害と分子標的治療、癌悪液質抑制を同時に実施することにより、KMT2変異子宮体癌に最適化された複合免疫療法の完成を目指す。今年度はマウスKMT2変異子宮体癌の組織標本を用いて免疫組織化学による免疫系細胞の局在同定及び腫瘍微小環境の性質を解析した。Pten/Kmt2ダブルノックアウト子宮癌組織では、Pten単独ノックアウト子宮癌組織と比較して、腫瘍内での好中球やマクロファージの浸潤数が減少していた。これは遺伝子発現解析ではダブルノックアウト子宮癌組織で炎症応答が亢進しているという結果と相反するものだった。またダブルノックアウト腫瘍の微小環境はI型コラーゲンが比較的疎で、壁の薄い血管が多く認められた。このことは、線維化が少なく血管新生も活発なことを示し、薬剤が到達しやすい環境であることを示唆した。
    14. 子宮体癌の分子分類診断システムの開発と新規治療標的の探索を志向したゲノム解析研究 Development of new gene panel system for molecular classification of endometrial cancer and genetic analysis to search for therapeutic targets 24K02581 2024-04-01 – 2027-03-31 子宮体癌 / 臨床試験 / 試料解析研究 / L1CAM / 分子分類 / ゲノム解析 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 北海道大学 JCOG婦人科腫瘍グループで実施中のJCOG1412試験「リンパ節転移リスクを有する子宮体癌に対する傍大動脈リンパ節郭清の治療的意義に関するランダム化第 III 相試験」の付随研究JCOG1412A1研究として、以下の3点を明らかにする.①子宮体癌の分子分類の本邦での導入にあたり、臨床実装可能な新規NGSパネルの開発②分子サブタイプ毎の臨床病理学的特徴の解明③新規予後予測バイオマーカー及び治療標的分子の探索上記により、JCOG1412試験の質の高い臨床データに裏付けられた新規診断パネルを臨床応用し、新たに採用される新進行期分類(FIGO2023)の臨床的意義、新規治療法の開発が期待される。 2024年度は分子サブタイプ毎及び分子サブタイプ横断的な新規治療標的バイオマーカーの検証の一環として、治療抵抗因子としての「L1 cell adhesion molecule (L1CAM)の機能解明を進めた。複数の子宮体癌細胞株に対してLentivirus vectorを使用しL1CAMの過剰発現もしくはshRNAによるknockdownを行い、樹立したL1CAM過剰発現細胞株、L1CAM knockdown細胞株を用いて、遺伝子発現解析や機能評価を実施した。WST-1を用いたcell proliferation assayにより、L1CAM過剰発現細胞株では増殖能が亢進する一方、L1CAM knockdown細胞株では増殖能が低下することが確認された。flow cytometerを用いた実験でL1CAMをknockdownしてもapoptosisの増加は確認されなかった。 Knockdown細胞株のRNA-seqの結果に基づくPathway解析を実施し、L1CAMがいくつかの炎症性シグナル経路に関与している可能性が示唆された。L1CAMの過剰発現によってIL6 mRNAの発現が増加し、knockdownすることでIL6 mRNAの発現が低下することがqPCRにて確認された。L1CAMの全長型の過剰発現と細胞内ドメインのみの過剰発現で比較を行った結果、細胞内ドメインのみの過剰発現ではIL6 mRNAの増加が見られなかったことから、この影響には細胞内ドメインのみではなく、全長型の存在が必要であることが示唆された。現在、炎症性シグナル経路のどこに影響を及ぼしているか、L1CAMの発現がどのようにして増殖能に影響を及ぼすかを明らかにするために更なる検証を続けている。
    15. 子宮・卵巣癌肉腫の3次元空間エピゲノム解析による肉腫組織生成の分子機序の解明 Mechanism of sarcomagenesis by 3-d epigenome analysis of gynecological carcinosarcoma 24K02334 2024-04-01 – 2027-03-31 婦人科癌肉腫 / エピゲノム / 多重連続免疫染色 / 3次元 小区分50020:腫瘍診断および治療学関連 基盤研究(B) 公益財団法人がん研究会 子宮・卵巣癌肉腫の肉腫出現の分子機構や予後不良の原因は不明である。本研究では癌肉腫において肉腫が生じる分子機構を解明する目的で、臨床検体を用いた空間エピゲノム解析を行う。これまでに蓄積したゲノム・エピゲノムデータを利活用しながら、臨床検体を用いて、3次元イメージ解析、多重連続免疫染色/FISH、ChIL-seqを行い、肉腫の 3次元空間分布、肉腫分化のトリガー、EMTの実行分子、特定の間葉系細胞への分化機構を解析し、肉腫生成の分子機構を探索する。本研究により、予後不良の原因が明らかとなり、新規診断・治療法の開発につながることが期待される。 本研究は、子宮・卵巣癌肉腫において肉腫が生じる分子機構を解明する目的で、臨床検体を用いた空間エピゲノム解析を行うものである。子宮・卵巣癌肉腫では腫瘍内に癌腫と肉腫が隣接する。同組織型の癌腫に比べ予後不良な希少がんであるが、肉腫出現の分子機構や予後不良の原因は不明である。申請者らは世界最多の 109例の臨床検体を用いてゲノム・エピゲノム解析を行い、癌腫と肉腫が同一クローン由来であり、肉腫生成には癌腫細胞が上皮の形質を失い間質の形質を獲得する、上皮間葉転換(EMT)が関与していることを見出した(Gotoh, Mori Nature Commun 2019)。本研究では、これまでに蓄積したゲノム・エピゲノムデータを利活用しながら、多数の臨床検体を用いて、空間エピゲノム解析として、3次元イメージ解析、多重連続免疫染色/FISH、ChIL-seqを行い、肉腫の 3次元空間分布、肉腫分化のトリガー、EMTの実行分子、特定の間葉系細胞への分化機構を解析し、肉腫生成の分子機構を探索する。R6年度は65症例について血液、腫瘍検体の全ゲノム解析、全RNA解析を行った。また多重連続免疫染色並びにChIL-seqに用いる抗体の選定を行った。組織染色上の特異性を示した抗体のうちFOXA2, HAND2, LEF1等24種類の抗原を認識する抗体がラベル後も抗原認識性を保持していたことが確認できた。EMT実行転写因子のZEB1, ZEB2, SNAIL/SLUGについても特異的な抗体を選別した。一方で抗原を得意的に認識するものの標識によって抗原認識できなくなるような抗体については蛍光標識2次抗体を利用することとした。選別した全ての抗体の蛍光標識を行い、染色後のシグナル強度から染色の順序と配色を決定した。16症例のDNAメチローム解析を行った。
    16. 婦人科癌特化型リハビリテーションプログラムの開発に関する研究 A study on the development of a specialized rehabilitation program for gynecologic cancer 23K27942 2024-04-01 – 2026-03-31 リハビリテーション / 婦人科がん / 運動療法 / サルコペニア / 身体活動 / 骨格筋 / QOL 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(B) 慶應義塾大学 婦人科がんでは、治療が終了した後も他のがん種と比較して活動性が低下しやすいが、周術期から術後の経時的な変化を報告したに関する研究はいまだなく、婦人科がんに特化したリハビリテーションプログラムは開発されていない。そこで、本研究では、子宮体癌の診断で根治手術の実施患者を対象に前方視コホート研究として、手術前から術後12カ月まで経時的にアンケート調査を実施し、身体活動量・健康関連QOLの変化を明らかにし、身体活動量・健康関連QOLに影響を与える因子を抽出し、2)その結果に基づいてリハビリテーションプログラムを構築・公開し、普及啓発を行うことで、実際の臨床場面への社会実装する予定である。 子宮体癌の診断で根治手術を実施した患者を対象に以下の研究を行い、在宅運動プログラムを開発・公開し、実臨床場面へ社会実装する。研究①:子宮体癌根治手術前後の骨格筋量の変化に関する後方視観察研究。【目的】手術前と術後6・12か月の骨格筋量や質を計測し、術前後の変化や影響する術前・術後因子を明らかにすること。【主要評価項目】CT第3腰椎高位の骨格筋指数 (SMI)・密度 (SMD)、術前・術後の変化量・変化率。【解析方法】多変量解析により、SMI・SMDの術前後の変化量に影響を与える術前・術後因子を抽出する。【進捗状況】データ収集は終了、解析もほぼ終了した。研究②:子宮体癌根治手術後の身体活動・健康関連QOLの経時的変化に関する前方視コホート研究。【目的】手術前から術後6・12か月の経時的に自記式のアンケート調査を実施し、身体活動量・健康関連QOLに影響を与える因子を明らかにすること。【主要評価項目】健康関連QOL(EORTC QLQ-C30)【解析方法】術後の健康関連QOLの各項目を目的変数として、基本情報、腫瘍情報、SMI・SMD等の説明変数を用いて、多変量解析を行い、術後の予測因子を抽出する。【進捗状況】症例登録を継続中。研究③:自宅での非監視下運動療法(在宅運動プログラム)構築 【目的】前方視コホート研究として、子宮体癌の手術を実施された患者に対して、退院直後および6か月後にウエアブル端末を装着し、生活場面での身体活動量と身体機能やQOLとの関係を明らかにすること。【主要評価項目】身体活動量・歩数。【解析方法】身体活動量の経時的な変化や身体機能(握力、5回立ち上がりテスト)、QOL等との関係を分散分析・相関分析等により解析する。【進捗状況】研究計画書を作成し倫理委員会で承認され、来年度から症例登録の予定。さらに、来年度は、研究結果に基づき在宅運動プログラムを構築する。
    17. 難治性婦人科腫瘍に対する抗腫瘍剤の研究開発に向けた基礎研究 Basic research for research and development of antitumor agents for intractable gynecologic tumors 23K27742 2024-04-01 – 2027-03-31 子宮平滑筋肉腫 / 子宮平滑筋腫 / 血行性転移 / 子宮間葉性腫瘍 / ATRX / TP53 / CDK4 / Cyclin E 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) Lmp2/β1i欠損マウス:子宮平滑筋肉腫自然発症モデルを用いた基礎研究と臨床研究(PRUM-IBio study)、さらに京都大学医学部附属病院 癌ゲノム医療/リアルワールドデータでの症例報告の病的バリアントを総合的に考えると、子宮平滑筋肉腫の病的バリアントとして、ATRX、Cyclin E、TP53、MDM2、RB1などが考えられる。つまり、細胞周期を制御する因子(Cyclin E、TP53、RB1等)への標的物質において、子宮平滑筋肉腫への治療効果が期待される。さらに、クロマチンリモデリング因子ATRX病的バリアントと神経膠腫の発症との関連性を示す医学的エビデンスが確立されている。 子宮平滑筋肉腫の5年生存率は20%未満の難治性悪性腫瘍である。NCCNガイドライン2020年版では、第Ⅲ相試験で、子宮平滑筋肉腫に対する術後治療としての放射線照射や化学療法の有効性は、明確なエビデンスとして示されていない。現在、申請者らが遂行している臨床研究(国立病院機構臨床研究PRUM-IBiostudy/AMED橋渡し事業 研究代表者 林 琢磨)で登録(336例)された子宮平滑筋肉腫、子宮平滑筋腫、種々の子宮平滑筋腫瘍合計50症例を用いて、次世代シークエンサーにて、血行性転移に関わる因子とシグナルカスケードにおける病的バリアントを再度検証している。子宮平滑筋肉腫は、再発・転移を売り返すことが、予後不良の原因である。したがって、本申請の科研費基盤Bでは、ヒト子宮平滑筋腫瘍培養細胞が移植された免疫欠損マウスのジェノグラフトモデルマウスとLmp2/β1i欠損マウス(子宮平滑筋肉腫自然発症マウス)を用いて、子宮間葉性腫瘍、特に、子宮平滑筋肉腫における血行性転移に関与する因子やシグナルカスケードについて検証を行う。本研究の目的は、難治性悪性腫瘍である子宮平滑筋肉腫への新規治療法の開発のための研究開発の基盤を構築することである。
    18. 子宮体癌がん幹細胞の多様性・可塑性に関与する分子機構解明と多角的新規治療法の開発 Elucidation of molecular mechanisms involved in the diversity and plasticity of uterine cancer stem cells and development of novel multifaceted therapies 23K27735 2024-04-01 – 2026-03-31 子宮体癌 / がん幹細胞 / 治療抵抗性 / 腫瘍免疫 / 子宮体がん / DUSP6 / CT45 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 九州大学 我々はがん幹細胞形質維持にはDUSP6、治療抵抗性や癌幹細胞の可塑性にはYBX2やCT45A5、浸潤能や転移能獲得、がん細胞周囲の微小環境にはS
      PARC・fibronectinがそれぞれ重要であることを報告した。本研究では細胞株、臨床検体組織を用いて上記の蛋白を発現する細胞の生物学的特
      性、臨床病理学的特徴を検討するとともに、幹細胞の多様性に関与するゲノム情報の詳細を解析する。また、CT45A5の腫瘍免疫への関与の検討
      を行うとともにSPARCやDUSP6を標的とした新規治療薬の開発を試み、がん幹細胞の多様性やその周囲微小環境を標的とした治療法を開発する。 子宮体がんの罹患率は最近15年間で3倍と増加しており、対策が急がれる婦人科がんの一つである。特に進行期の低分化癌、漿液性癌、癌肉腫は治療抵抗性である。治療抵抗性の要因として、がん組織に存在するがん幹細胞の存在が考えられている。幹細胞は自己複製能と多分化能を持つ細胞と定義されるが、最近、がん幹細胞には可塑性や多様性があること、周囲のがん微小環境と相互作用を持つことが報告され、それぞれを克服する多角的な治療戦略が必要である。
      我々は子宮体癌がん幹細胞の解析を行い、浸潤能や転移能獲得、周囲の微小環境には上皮間葉移行(EMT)や癌幹細胞から分泌されるSPARC・fibronectinが重要であることを報告してきた。また、胚細胞や癌細胞で発現が報告されているYBX2遺伝子を癌細胞に導入し脱分化させ、未分化ながん幹細胞が誘導することに成功し、YBX2が可塑性に関与していることを示した。さらにこの手法を用いて、がん幹細胞形質維持にはERKリン酸化阻害酵素のDUSP6、治療抵抗性や癌幹細胞の可塑性にはcancer testis antigenであるCT45A5が重要であることを明らかにした。DUSP6はERKリン酸化を阻害するが、AKTリン酸化を亢進させており、子宮体癌のdriver遺伝子の一つであるRASを介する経路に関連すると考えられる。
      本研究では子宮体癌細胞株、子宮体癌や癌肉腫の臨床検体組織を用いて上記の蛋白を発現する細胞の生物学的特性、臨床病理学的特徴を検討するとともに、シングルセル解析により、幹細胞の多様性に関与するゲノム情報の詳細を解析する。また、CT45A5の腫瘍免疫への関与の検討を行うとともにSPARCやDUSP6を標的とした新規治療薬の開発を試み、がん幹細胞の多様性やその周囲微小環境を標的とした治療法を開発する。
    19. 腹腔内エコシステムに基軸をおいた難治性卵巣癌に対する新規癌間質標的治療戦略の創生 Creation of a novel cancer stromal-targeted therapeutic strategy for refractory ovarian cancer based on the intraperitoneal ecosystem. 23K27732 2024-04-01 – 2026-03-31 卵巣癌 / 癌関連線維芽細胞 / 腹膜播種 / 腹膜中皮細胞 / 腹腔内エコシステム 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 名古屋大学 よい植物が育つにはよい“種”とよい“土壌”が必要である。逆説的ではあるが、よい“種”とは悪性度の高い卵巣癌細胞であり、よい“土壌”とは“腫瘍の手先”にさせられた本来生体防御的である中皮細胞(癌関連中皮細胞:CAMs)と脂肪細胞(脂肪細胞由来線維芽細胞:ADFs)である。本課題では、腹腔内全体を一つの包括的生態系(エコシステム)と見なし、卵巣癌―腹腔内宿主細胞群の相互作用に着目し、未だ明らかにされていない卵巣癌の腹膜進展や休眠維持機構の解明を目指す。また分化誘導薬剤であるAM80を用いて、CAMsおよびADFsへの脱分化を阻害し、難治性卵巣癌に対する新規間質標的治療戦略の創成を目指す。 卵巣癌は婦人科がんの中で最も予後不良な癌種であり、多くは進行した状態で腹膜播種を伴って発見される。初期治療としては、手術でのがん除去が最も重要であるが、手術では取り除き切れない微小ながん細胞に対しては化学療法が用いられる。しかし化学療法による初回治療の成功率は50から70%と高いものの、再発率が非常に高く、再発した場合の生存率は極めて低い。そして再発の主な原因は、初回治療後に残る微小残存病変(MRD)が、ある期間休眠した後に活性化し、腹膜炎を引き起こすプロセスである。治療面での新たなアプローチとして、がん細胞を支える「土壌」となる癌間質の重要性が指摘されている。癌関連線維芽細胞(CAFs)はがん細胞からのサイトカインによって活性化し、組織の硬化や臓器機能低下を引き起こす。これに対し、申請者らは癌間質を治療のターゲットとして注目し、特に卵巣癌の腹膜播種に対しては、腹膜中皮細胞と腹腔内脂肪細胞が重要な役割を果たすことを発見した。これらの細胞は、腹膜の大部分を構成し、がん細胞が腹膜に播種する主な場所となっている。本研究では、これらの細胞ががん関連腹膜中皮細胞(CAMs)や脂肪細胞由来線維芽細胞(ADFs)に脱分化する過程を明らかにし、卵巣癌の腹膜進展において重要な役割を果たすことを明らかとする。そしてAM80がCAMsやADFsの脱分化を阻害し、癌間質を正常化して腹膜環境を改善する可能性があるかを探求し、新しい治療戦略の開発を目指す。本年度はAM80の標的となるmeflin陽性のCAFsの存在と臨床的意義を検証し、meflin陽性のCAFsの卵巣癌進展における意義について検討した。
    20. HPVワクチン再普及のシミュレーションと生まれ年度別の子宮頸がん罹患リスク予測 Simulation of HPV vaccine re-dissemination and prediction of cervical cancer incidence risk by birth fiscal year 23K24484 2024-04-01 – 2025-03-31 HPVワクチン / 情報 / インターネット調査 / 接種率 / 子宮頸がんリスク / Agent-based simulation / 生まれ年度 / 子宮頸癌罹患・死亡リスク / インタビュー調査 / Agent- based simulation / 情報共有 / 子宮頸がん / 社会シュミレーション 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 大阪大学 本邦においてHPVワクチンは停止状態となっている。全国の自治体での個別案内や積極的勧奨の再開だけでは接種率の充分な回復は期待できず、医師から対象者の母親たちへの情報提供や母親たちの中での情報共有・拡散が接種率上昇の鍵となる。当研究では、医師や友人等からの情報伝達がどのように広がっていくのかをAgent-based simulation手法を用いて可視化し、そこから推計される接種率を用いて、各生まれ年度の生涯の子宮頸がん罹患・死亡リスクの予測を行い、リスク軽減に資する情報発信手法の確立を目指す。 健康は広がらない話題として認識されており、話題にするきっかけがあれば話すこともあるが、特段話す必要がなければ話さないという位置付けのトピックであった。特に情報感度が高いイノベーターは数%、次に感度の高いアーリーアダプターが10~20%、その次のアーリーマジョリティーが20~30%程度存在することが判明した。この情報感度とキャッチアップ接種行動の関係を解析したところ、情報感度の最も高い、いわゆるイノベーターの層においても、次に情報感度の高いアーリーアダプターやアーリーマジョリティーにおいても著明な差はなく60%程度の接種率であった。HPVワクチンが浸透し出していることが明らかとなった。 Health was perceived as a topic that was not widespread and was positioned as a topic that people would talk about if they had the opportunity to talk about it, but not if there was no particular need to talk about it. It was found that there were a few percent of innovators with particularly high information sensitivity, 10-20% of highly sensitive early adopters, and 20-30% of early majority. Analysis of the relationship between information sensitivity and catch-up vaccination behavior showed that there was no significant difference between those with the highest information sensitivity (innovators) and those with the next highest (early adopters and early majority), and that the vaccination rate was about 60%. HPV vaccine is becoming more widespread.
    21. 難治性婦人科癌のマルチオミックス解析による病態解明 Elucidation of the pathogenesis of refractory gynecological cancer by multi-omics analysis 23K24478 2024-04-01 – 2025-03-31 メタボローム解析 / プロテオーム解析 / マルチオミックス解析 / 卵巣癌 / 子宮内膜癌 / 子宮頸癌 / 卵巣がん / 子宮体がん / 子宮頸がん / メタボローム / プロテオーム / 腫瘍循環DNA 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 東北大学 核酸配列解析から得られる情報だけでは難治婦人科癌の病態解明には不十分である。申請者らの検討でも担癌患者血漿や婦人科癌由来細胞株のメタボローム解析ががん細胞の生態を明らかにし、適正な化学療法の選択に資する予備的知見を得ている。そこで、本申請研究では難治婦人科癌罹患患者の血漿メタボローム解析を時系列で実施、ゲノム、トランスクリプトームと統合したマルチオミックス解析を推進することで、適正な薬物療法を選択可能にし、予後の劇的な改善を目指す。 東北大学病院で治療した婦人科悪性腫瘍(子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌)を対象とし、経時的に採取した血液検体を用いた高精度血漿オミックス解析を実施した。東北大学メディカルメガバンクで保管した一般住民コホートのオミックス解析データと比較した。治療効果・予後に着眼した経時的解析により、婦人科悪性腫瘍に関する早期診断、治療効果・予後の予測に有用な代謝物プロファイルを明らかにし、予測医療の実現する寄与し得る成果が得られた。 This study aimed to achieve early diagnosis and predictive medicine by conducting longitudinal plasma metabolome analysis in patients with refractory gynecological cancer, thereby enabling the development of optimal treatment strategies. Using metabolome analysis data from a general population cohort stored at the Tohoku Medical Megabank Organization as a control group, we conducted high-precision plasma omics analysis over time on patients with gynecological malignancies (epithelial ovarian cancer, uterine cervical cancer, and endometrial cancer) treated at Tohoku University Hospital. We conducted integrated analyses of biomarkers characteristic of each cancer type from diverse clinical perspectives. As a result, we identified metabolite profiles associated with early diagnosis, treatment efficacy, and prognosis prediction of refractory gynecological malignancies.
    22. 卵巣癌オルガノイドバンクの階層的オミクスによる難治性卵巣癌根治療法の実現 Multi-omics of ovarian cancer organoids for development of novel therapeutics against drug-resistant ovarian cancers 23K21475 2024-04-01 – 2025-03-31 卵巣癌 / オルガノイド / 明細胞癌 / 高異型度漿液性癌 / 薬剤スクリーニング / トランスクリプトーム / ドラッグスクリーニング / ゲノム / マルチオミクス / オミクス 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 慶應義塾大学 Homologous recombination deficiency(HRD)のない卵巣癌および明細胞癌は化学療法の効果が低く、また効果的な分子標的薬は存在しない。本研究はこれらの難治性卵巣癌に対する革新的な治療薬開発と再発を防ぐ革新的な治療戦略を、卵巣癌オルガノイドバンクを用いて実現する。難治性卵巣癌から作成したオルガノイドを用いて薬剤スクリーニングを行い、薬剤感受性とゲノム、トランスクリプトームを階層的に統合解析し新規バイオマーカーに基づく薬剤を開発する。さらにはMinimal residual disease (MRD)における変化を明らかにし、MRDを根絶する革新的治療法を考案する。 100例をこえる卵巣癌オルガノイドバンクを構築した。その中の明細胞癌オルガノイドライブラリーおよび高異型度漿液性癌オルガノイドライブラリーを用いて新規薬剤開発を行った。明細胞癌オルガノイドを用いて4560化合物によるhigh-throughput drug screening (HTDS)を行い、プロテアソーム阻害薬およびジナシクリブを新規薬剤として抽出した。in vitro, in vivoで効果を有することが証明された。また明細胞癌ではunfolded protein response (UPR)が高く、UPRに関わるAGR2が治療標的となることが明らかとなった。 We constructed an ovarian cancer organoid bank comprising over 100 cases. Using the clear cell carcinoma organoid library and high-grade serous carcinoma organoid library from this collection, we conducted novel drug development. High-throughput drug screening (HTDS) was performed using clear cell carcinoma organoids with 4,560 compounds, leading to the identification of proteasome inhibitors and dinaciclib as novel therapeutic agents. Their efficacy was demonstrated both in vitro and in vivo. Furthermore, we found that the unfolded protein response (UPR) is elevated in clear cell carcinoma, and AGR2, which is involved in UPR, was identified as a therapeutic target.
    23. 卵巣がんのがん・宿主多様性の解明による新たな診断・治療戦略の開発 Elucidation of tertiary lymphoid structures (TLS) in gynecological cancer and basic investigation of new treatment development 23K21473 2024-04-01 – 2025-03-31 婦人科腫瘍 / 腫瘍免疫 / 多様性 / 巣癌 / 卵巣癌 / 婦人科腫瘍学 / 婦人科がん / 免疫ゲノミクス / 子宮体癌 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 京都大学 継続課題のため、記入しない。 本研究は、婦人科癌の治療経過における腫瘍免疫状態の変化を解析し、新規治療開発を目指しています。化学療法や免疫療法を受けた患者の検体を用いた遺伝子解析から、特定の遺伝子やシグネチャーが薬剤感受性や予後に関連することを発見しました。一方、薬剤抵抗性と免疫関連遺伝子発現には相関は見られませんでした。マウスモデルを用いた実験では、化学療法と分子標的薬の併用が腫瘍へのCD8+T細胞浸潤を促進し、その有用性が示唆された。 This study investigates how the tumor immune environment and suppression change in gynecological cancers (endometrial/ovarian) during disease and treatment to inform new therapies. Prior analysis of patient data (DNA/RNA sequencing) linked molecular features to clinical outcomes. Key findings: cytokine signaling, T cell genes, specific mutations, and gene expression profiles (GEPs) correlated with drug sensitivity and prognosis. Notably, resistance after repeated chemotherapy was separate from immune gene expression. Mouse models of ovarian/endometrial cancers, and immunodeficient mice, tested combining chemotherapy with targeted drugs (VEGF/PARP inhibitors) on the immune landscape. Tumor analysis showed combination therapy boosted CD8+ T cell infiltration more than chemotherapy alone, suggesting a benefit. This research emphasizes the complex interaction between the tumor, immunity, and treatment in gynecological cancers, providing insights for personalized therapies.
    24. 難治性卵巣がんにおける細胞外小胞機能解析と臨床応用基盤創生 Development of Novel Ovarian Cancer Treatment Strategies by Translational Analysis of Extracellular Vesicles 21H03075 2021-04-01 – 2024-03-31 卵巣癌 / エクソソーム / 細胞外小胞 / 卵巣がん / がん微小環境 / マイクロRNA / リキッドバイオプシー 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 名古屋大学 本研究は、卵巣がんにおけるエクソソームを始めとした細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)を対象とし、EVが有する未だ明らかにされていない腫瘍生物学的意義を明らかにし、臨床応用へ向けた基盤となる知見を得ることを目的とします。未だ臨床的問題点が多く残る難治性卵巣がんにおけるEVの機能解明は極めて重要と考えられます。本研究では、①卵巣がん悪性化に関わるEVの機能解析 ②個別化医療を実現するEVバイオマーカーの創出 ③EVによる難治進行性卵巣がんの新規治療開発の、3点を軸に研究を展開し、卵巣がん患者予後の改善に繋が成果を得ることを目指します。 本研究は、卵巣がんにおけるエクソソームを始めとした細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)を対象とし、EVが有する未だ明らかにされていない腫瘍生物学的意義を明らかにし、臨床応用へ向けた基盤となる知見を得ることを目的とした。本研究では、①卵巣がん悪性化に関わるEVの機能解析 ②個別化医療を実現するEVバイオマーカーの創出 ③EVによる難治進行性卵巣がんの新規治療開発 の、3点を軸に研究を展開した。研究期間内で計34件の論文報告に貢献することができた。いくつかのシーズについては今後の臨床応用へむけた展開が期待されるものであり、引き継き検証を重ねる。 The purpose of this study was to clarify the biological significance of extracellular vesicles (EVs), including exosomes, in ovarian cancer, and to obtain fundamental knowledge for clinical application. In this study, research was conducted with three main themes: (1) functional analysis of EVs involved in ovarian cancer malignant transformation, (2) creation of EV biomarkers for personalized medicine, and (3) development of new treatment for refractory advanced ovarian cancer using EVs. During the research period, we were able to contribute to a total of 34 publications. Some of the seeds are expected to be developed for clinical application in the future, and we will continue to verify them.
    25. 卵巣癌におけるゲノム解析とオルガノイドによる薬剤感受性試験の臨床的有用性の検証 Genomic profiling and drug screening among organoids derived from ovarian cancer patients 21H03074 2021-04-01 – 2024-03-31 がん遺伝子パネル検査 / マルチオミクス解析 / オルガノイド / 卵巣癌 / 子宮体癌 / 子宮頸癌 / リアルワールドデータ / Todai Oncopanel / RNAシークエンス / ゲノム解析 / 薬剤感受性 / 婦人科がん / プレシジョンメディシン / Todai OncoPanel / myChoice CDx / BRCA1 / BRCA2 / 融合遺伝子 / 遺伝子変異頻度 / 全エクソンシークエンス 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 東京大学 がんゲノム医療における課題克服を目指し、卵巣癌症例において臨床検体を収集し、オルガノイドによる3次元培養を行い、ゲノム解析データと薬剤感受性試験を並行して行うことで、がんゲノム解析における治療選択肢の拡充につなげることを目的とする。DNAパネルとRNAパネルを兼ね備えたがん遺伝子パネル検査(Todai OncoPanel)のゲノム解析の結果に基づき、オルガノイド培養によるin vitro薬剤感受性試験とマウスモデルを用いたin vivo薬剤感受性試験を実施し、結果を統合することで、新規の治療標的分子の探索、RNA発現プロファイルに基づく免疫療法や併用療法を含めた治療法の提案につなげる。 婦人科がんにおけるオルガノイド培養系を樹立し、子宮頸部小細胞癌を例に、オリジナルの腫瘍との変異やコピー数異常の共有性、HPVインテグレーションサイトの同定、薬剤感受性試験の有用性を示した。新規がん遺伝子パネル検査であるTodai Oncopanelについて、先進医療B 200例の研究成果をまとめ、婦人科がんにおいてもPrecision Medicineの発展可能性を示した。C-CATデータベースを用いて、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんの変異プロファイルを詳細に解析し、組織型ごとの特徴を示した。さらに、遺伝子変異頻度、マイクロサテライト不安定性とGenotypeとの関連性を明らかとした。 Whole exome sequencing showed that both the original small cell carcinoma and its organoid shared 19 somatic mutations, including KRAS p.G12D pathogenic variant. RNA-seq revealed that HPV18 was integrated into chromosome 8q24.21, resulting in over- expression of the proto-oncogene MYC. Drug sensitivity testing revealed that a KRAS pathway inhibitor exerted strong anti-cancer effects in the xenograft model. Data from DNA and RNA panels in Todai OncoPanel were analyzed in 198 and 191 patients, respectively. One hundred and four samples (53%) harbored gene alterations with potential treatment implications. Twenty-two samples (11.1%) harbored 30 fusion transcripts or MET exon 14 skipping by the RNA panel. C-CAT database analysis illustrated the genomic landscape of three major gynecological cancers (endometrial, cervical and ovarian cancer) in the Japanese cohort. The prevalence and correlation between TMB and MSI may influence future immunotherapy, including combination therapies.
    26. クロマチン3次元構造調節因子CTCFの 子宮体がんにおける下流因子の解明 Exploration of downstream effector of CTCF using CTCF-mutated uterine endometrial cancer 21H02793 2021-04-01 – 2024-03-31 子宮体がん / CTCF / エストロゲン / DNAメチル化 / 遺伝子変異 / ドライバー / エストロゲン受容体 / エピゲノム / クロマチン高次構造 / DNAメチローム 小区分50020:腫瘍診断および治療学関連 基盤研究(B) 公益財団法人がん研究会 本研究ではCTCF の変異による子宮体がんのエストロゲン非依存性の獲得ならびにがん化の機序を明らかにする。子宮体がんの既存データを利活用しながら、CTCF 変異型と野生型の腫瘍検体で統計比較を行い、CTCF の下流因子について、特にER 活性制御とDNA メチロームの変化に注目しながら探索する。臨床検体で得られた知見について、CTCF に変異を有する子宮体がんの細胞株やCTCF 野生型の細胞株に変異を導入した細胞株を用いて実験的に実証する。前向きに収集する臨床検体を用いてクロマチン3次元構造解析を行い、DNA メチロームとトランスクリプトームより類推した現象を確認する 子宮体がんでは CTCF の変異頻度が高くドライバー遺伝子と考えられているが、その機序は不明であった。既存オミックスデータについてDNA メチル化と遺伝子発現の変化を調べ、TCGAデータを用いて検証した。自験例とTCGAデータでCTCFの変異によりCTCF結合部位のメチル化を確認した。自験例ではCTCF変異子宮体がんはエストロゲン受容体結合部位のメチル化が亢進していたが、TCGAデータでは亢進していなかった。CTCF 野生型・変異型の類内膜性子宮体がん細胞株についてCTCFを含む子宮体がんドライバー遺伝子の変異を確認しCTCF 変異型の細胞株においてエストロゲン反応性の低下は認められなかった。 CTCF mutation is commonly found in uterine endometrial cancer and is considered as a driver gene, but the mechanism remains unknown. We investigated changes in DNA methylation and gene expression associated with CTCF mutation using existing omics data and validated them using TCGA data. We confirmed hypermethylation of CTCF binding sites in CTCF-mutated samples in our and TCGA data. CTCF-mutated uterine endometrial cancer had hypermethylation of estrogen receptor binding sites in our data, but not in TCGA data. We confirmed mutations in uterine endometrial cancer driver genes, including CTCF, in CTCF wild-type and mutant endometrioid uterine cancer cell lines, and found no decreased estrogen responsiveness in CTCF-mutated cell lines.
    27. 新規抗硫酸化糖鎖抗体の卵巣癌病理診断と光免疫療法への応用 Novel anti-sulfated glycan antibodies for ovarian cancer pathology diagnosis and photoimmunotherapy 21H02702 2021-04-01 – 2024-03-31 卵巣癌 / 硫酸化糖鎖 / 光免疫療法 小区分49020:人体病理学関連 基盤研究(B) 福井大学 近赤外線光免疫療法は,がん細胞を特異的に認識する抗体に光吸収体を結合したものを投与した後,近赤外線を当てるだけでがん細胞を選択的に破壊することができる画期的な治療法である。申請者らは最近,ユニークな硫酸化糖鎖を認識する新規抗体を作製し,このユニークな硫酸化糖鎖が予後不良の卵巣癌に選択的に発現していることを見いだした。本研究課題では,この硫酸化糖鎖が卵巣癌の悪性形質に寄与するメカニズムを明らかにするとともに,卵巣癌の病理診断および予後マーカーとしての可能性を検討する。さらに,この新規抗硫酸化糖鎖抗体を近赤外線光免疫療法に応用し,卵巣癌の予後を著しく改善する新規治療法開発の基盤を築く。 われわれは,ガラクトースが硫酸化されたN-アセチルラクトサミン構造を認識する新規抗硫酸化糖鎖抗体297-11Aを作製し,卵巣癌病理組織検体の臨床病理学的解析を行った。その結果,297-11A陽性例は漿液性癌に多く,その発生母地と考えられている正常卵管上皮分泌細胞にも発現していることを明らかにした。また,297-11A硫酸化糖鎖陽性の卵巣癌患者は,陰性の患者に比べて無増悪生存期間が有意に短いことを明らかにした。 We generated a novel anti-sulfated carbohydrate antibody, 297-11A, which recognizes galactose-sulfated N-acetyllactosamine structures, and performed clinicopathological analysis of ovarian cancer histopathological specimens. The results showed that 297-11A-positive cases were frequently observed in serous carcinomas, and that it was also expressed in normal fallopian tube epithelial secretory cells, which are considered to be the origin of such carcinomas. In addition, we found that progression-free survival was significantly shorter in 297-11A-sulfated glycosylation-positive ovarian cancer patients than in negative patients.
    28. 涙を用いた卵巣がんの早期発見のための非浸襲・迅速・超高感度細胞外小胞検出法の開発 Development of a non-invasive, rapid, and ultra-sensitive extracellular vesicles detection method for the early detection of ovarian cancer using tears 21H01963 2021-04-01 – 2024-03-31 EVsセンシングチップ / 卵巣がん / 細胞外小胞 / 涙液 / 自動分析 小区分34020:分析化学関連 基盤研究(B) 神戸大学 本研究は、予後不良な難治がんである卵巣がんを対象として、がんとの関連が注目されている細胞外小胞(EVs)をバイオマーカーとした迅速・超高感度卵巣がん検出法を開発する。人工材料/天然ハイブリッド機能性材料をベースにしたEVsセンシング基板と、それを装着して自動分析を行うための検出器付小型分注ロボットを製作し、従来の免疫測定法の100倍以上の超高感度で検出することを試みる。最終的に、非侵襲で採取可能な上に夾雑物の少ない涙液を用い、涙液中EVsを腫瘍マーカーとした卵巣がん検出法を確立し、がん患者から採取した涙液を用いて、予後不良な卵巣がんの早期発見が可能かどうか臨床的に検証する。 本研究は、卵巣がんを対象として、がんとの関連が注目されている細胞外小胞(EVs)を腫瘍マーカーとした、卵巣がん早期発見のためのEVsの非浸襲・迅速・超高感度検出法の開発を目的とした。CD9抗体を固定化した基板にて、ヒト卵巣がん由来細胞株の培養上清から精製したEVsの測定を作製したセンシングチップにて行ったところ、濃度依存的に蛍光強度が変化し、EVsの迅速測定が可能であった。また、異なる抗体に対する吸着挙動の差異から、卵巣がん由来EVsを識別できる可能性が示唆された。 In this study, a non-invasive, rapid, and ultra-sensitive detection method for extracellular vesicles (EVs), which have garnered attention for their association with cancer, is developed for the early detection of ovarian cancer. EVs are utilized as a tumor marker. Using the CD9 antibody-immobilized substrate, purified EVs from cell culture supernatant of human ovarian cancer-derived cell line were measured. The fluorescence intensity changed as the concentration increases, suggesting that the fabricated sensing chip can be used for rapid EVs measurement. The difference in adsorption behavior to different antibodies suggested the possibility of identifying ovarian cancer-derived EVs
    29. 子宮頸がん検診未受診者に対する自己採取HPV検査の有用性評価:ランダム化比較試験 A randomized control trial to evaluate effectiveness of self sampling HPV test 20H03906 2020-04-01 – 2024-03-31 子宮頸がん検診 / 自己採取HPV-DNA検査 / ランダム化比較試験 / 自己採取HPV-DNA検査 / 子宮頸がん / ランダム化比較研究 小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連 基盤研究(B) 千葉大学 近年、我が国における子宮頸がん罹患率は上昇に転じている。ヒトパピローマウイルスワクチンの積極的勧奨政策を中断している我が国において、子宮頸がん検診の受診率向上は喫緊の課題である。本研究は、子宮頸がん検診未受診者に対して自己採取によるHPV-DNA検査をオプションとして提供することにより、検診受診率が向上するか否か、また、その結果、中等度異形成以上の検出率が向上するか否かを明らかにするランダム化比較試験である。 本研究は、自己採取HPV検査の有効性を評価するランダム化比較試験である。介入群(7,337人)は、通常の検診(細胞診)または自己採取HPV検査から始まる検診を、コントロール群(7,772人)は通常検診を受けることができた。介入群とコントロール群の検診受診率はそれぞれ、20.0%、6.4%で、有意な差が認められた。HPV検査陽性者の細胞診トリアージ検査の受診率は、46.8%であった。自己採取HPV検査は、受診率を有意に向上させたものの、CIN2+の検出の向上には寄与しなかった。その主な理由は、細胞診トリアージ検査の受診率の低さにある。トリアージ検査の受診率を向上させる工夫が必要である。 This is the first randomized controlled trial to evaluate the effectiveness of self-sampling HPV test in Japan. Women assigned to the intervention group (n=7,337) could undergo the regular screening (cytology) or screening with self-sampling HPV test and those to the control group (n=7,772) the regular screening. Screening uptake in the intervention and control groups were 20.0% and 6.0%, respectively, and significant difference was observed. Compliance rate with cytology triage in HPV-positive women was 46.8%. Self-sampling HPV test increased screening uptake; however, no difference was observed in the detection of CIN2+ between the two groups, probably due to a low compliance rate with cytology triage. Further research is needed to identify effective strategies to ensure an adequate compliance rate before rolling out programs that include self-sampling at the national level.
    30. 既成概念を打破する血清網羅的糖ペプチド解析による卵巣癌早期診断の社会実装 Implementing Early Detection of Ovarian Cancer through Serum Comprehensive Glycopeptide Analysis Breaking Through the Conventional Concepts 20H03828 2020-04-01 – 2024-03-31 卵巣癌 / 子宮内膜症 / 血清腫瘍マーカー / 糖ペプチド / CSGSA / 深層学習 / 機械学習 / OPLS-DA 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 東海大学 申請者らはCA125よりも有意に子宮内膜症性嚢胞(EM)と卵巣明細胞癌(CCC)を鑑別する血清糖ペプチドマーカーFS-C4BPをCSGSA解析により同定した。本研究ではまず第1に、FS-C4BP測定キットの開発、及び同キットを用いたEM経過観察におけるCCC早期発見の社会実装を目指す。第2に、単一腫瘍マーカーという概念から一歩前進し、CSGSA解析より得られる糖ペプチドピーク(1例より得られる再現性のある約2000ピーク)を2次元バーコード化(可視化)し人工知能(深層学習)を用いて卵巣癌の有無の診断を行う卵巣癌早期診断法(特願2019-108992)の社会実装を目指す。 我々は、個々の患者からの血中糖蛋白質を分解して得た糖ペプチド約2000種のピーク値から癌と非癌を判定する卵巣癌検知AIを開発した(特許番号:6145650、特願2019-108992)。このAI にて非癌者を対象とした検討で陽性的中率(PPV)8.9%、陰性的中率(NPV)99.9%の結果を得た。つまり日本での卵巣癌罹患率は1/5000人であるが、100人に9人程度に絞り込むことが可能となった。 We have developed an ovarian cancer detection AI that determines whether a patient has cancer or not by obtaining values of approximately 2,000 glycopeptides obtained by breaking down glycoproteins in the blood from individual patients (Patent No. 6145650, Patent Application 2019-108992). This Ovarian Cancer Detection AI has a positive predictive value (PPV) of 8.9% and a negative predictive value (NPV) of 99.9%. In other words, in Japan, ovarian cancer affects only 1 in 5,000 women, but this number can be reduced to about 9 in 100.
    31. アディポペリトクロストークに基づく卵巣癌腹膜進展に関する学際的研究基盤の創成 Interdisciplinary study on the peritoneal metastasis of patients with ovarian cancer based on the adipo-peritoneal crosstalk 20H03824 2020-04-01 – 2023-03-31 卵巣癌 / 腹膜播種 / 脂肪細胞 / 中皮細胞 / 腹膜中皮細胞 / 腹水 / 腹膜 / 細胞間クロストーク / 腹膜環境 / 脱分化 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 名古屋大学 ① 卵巣癌関連腹膜中皮・脱分化脂肪細胞―卵巣癌を1つのユニットとして捉えた上で卵巣癌の悪性化・腹膜進展機構の包括的解明を目指す。また、悪性腹水のメタボローム解析・エクソソーム解析を用いて、脂肪細胞からADMCにいたる誘導因子を解明する。癌細胞の膜脂質供給メカニズムの解明を行う。② ADMCが卵巣癌関連腹膜中皮(CAM)や腫瘍関連マクロファージと協調して、腫瘍細胞の局所免疫回避や休眠維持、腹腔内進展をもたらすメカニズム解明する。③ 新規蛍光プローブによる定量的脱分化評価システムを用いて、化合物ライブラリーから脱分化阻害剤の探索を行い、播種巣周囲の腹膜微小環境に着目した新規治療戦略を探求する。 本研究の成果において、独自の天井培養法によって大網から脱分化脂肪由来間葉系細胞(ADSC)が有する卵巣癌悪性化への影響を調べ、卵巣癌細胞の増殖の促進及び卵巣癌細胞の遊走能亢進、in vivo での腫瘍形成能の増大が誘導されることを示すことに成功し、一連の成果をもとに論文報告を行った。また、進行卵巣癌の腹膜微小環境において卵巣癌関連腹膜中皮細胞(OCAM)が卵巣癌の進展に深く寄与することをこれまでに同定しているが、正常腹膜中皮細胞がOCAMへと変貌する過程を抑制する候補物質としてcalcitriol(ビタミンD)が有望であることを実証し論文報告を行った。 In outcomes of this study, we investigated impact on the malignancy of ovarian cancer cells due to adipose-derived mesenchymal stem cells (ADSC) sourced from the omentum, through our unique ceiling culture method. We successfully demonstrated that proliferation of ovarian cancer cells, the enhanced motility of cancer cells, and the increased ability to form tumors in vivo, were all induced. We reported these series of results in a research paper. Moreover, we have previously identified that ovarian cancer-associated peritoneal mesothelial cells (OCAM) deeply contribute to progression of advanced ovarian cancer in the peritoneal microenvironment. We demonstrated that calcitriol (vitamin D) is a promising candidate substance to inhibit the process of normal peritoneal mesothelial cells transforming into OCAM, and reported these findings in a research paper as well.
    32. 正常子宮内膜ゲノム解析に基づいた子宮内膜症及び内膜症関連卵巣癌の発症機序の解明 Elucidation of pathogenesis of endometriosis and endometriosis-associated ovarian cancer based on genomic analyses for normal endometrium 20H03821 2020-04-01 – 2023-03-31 正常子宮内膜 / 子宮内膜症 / 内膜症関連卵巣癌 / ゲノム / 癌関連遺伝子 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 新潟大学 我々は、これまで内膜症関連卵巣癌の原因と考えられていたPIK3CA・KRAS などの癌関連遺伝子が、すでに子宮内膜症や正常子宮内膜で高頻度に体細胞変異を起こしていること、癌関連遺伝子変異は子宮内膜上皮・内膜症上皮に認めるが、子宮内膜間質・内膜症間質に認めないこと、を世界に先駆けて報告している。本研究では、先行研究を発展させ、正常子宮内膜から子宮内膜症・内膜症関連癌発症に至るまでの連続的なゲノム異常に着目し、正常子宮内膜から子宮内膜症および内膜症関連卵巣癌の発症に至る進展メカニズムを解明することを目的とし、最終的に、子宮内膜症および内膜症関連卵巣癌の発症予防を目指す。 正常子宮内膜のゲノム解析を幅広い年齢で実施した。正常子宮内膜におけるゲノム異常は加齢や累積月経回数に正の相関を示すことが明らかになった。また位置情報を加味したゲノムシークエンスにより、がん関連遺伝子変異を有する子宮内膜腺管が有利に子宮内膜で広がりを示すことが明らかになった。さらに子宮内膜の3次元構造解析とゲノム情報を組み合わせることで、子宮内膜の地下茎構造から発育するそれぞれの腺管はモノクローナルで、地下茎構造の腺管と起源を同じにしていることが判明し、子宮内膜のがん関連遺伝子の空間的広がりの形成に地下茎構造が重要な役割を果たしていることが明らかになった。 Genomic analysis of normal endometrium was performed at a wide range of ages. Genomic aberrations in normal endometrium were positively correlated with age and cumulative number of menstrual cycles. Genomic analysis of normal endometrium also revealed that endometrial glands with cancer-associated genetic mutations showed an advantageous spread in the endometrium. Furthermore, combination of 3D structural analysis of the endometrium with genomic analysis uncovered that each gland arising from the endometrial rhizome structure was monoclonal and shared the same genomic alterations, indicating that the rhizome structure plays an important role in shaping the spatial spread of cancer-associated genes in the endometrium.
    33. 婦人科悪性腫瘍における深層学習を利用したクロマチン3次元構造のマルチモーダル解析 Multimodal analysis of chromatin 3D structure using deep learning in gynecological malignancies 20H03820 2020-04-01 – 2023-03-31 エピゲノム / ヒストン修飾 / 子宮体癌 / 卵巣癌 / SUV39H2 / PARP阻害剤 / 子宮肉腫 / ChIP-seq / ATAC-seq / 卵巣類内膜癌 / 深層学習 / 薬剤耐性 / クロマチン立体構造 / Hi-C解析 / ChIP-seq法 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 東京大学 我々は婦人科悪性腫瘍を対象とし、多層的なヒストン修飾が及ぼすクロマチンの3次元構造の変化を解析する事により、がん化、がんの進展メカニズムを解明する。また多種類のヒストン修飾、クロマチンの立体構造の変化、DNAメチル化、ゲノム変異、臨床情報についてマルチモーダル解析を行い、がんの全体像を解明する。最終的にクロマチンの3次元構造の解析から抗がん剤の治療効果を予測するエピゲノムバイオマーカーの同定や新規エピゲノム治療薬の開発を行う。以上の事を明らかにするためにChIP-seq法、実験ロボット、Hi-C解析、人工知能による深層学習といった最先端の技術を駆使して解析する。 我々は婦人科悪性腫瘍を対象とし、多層的なヒストン修飾が及ぼすクロマチンの変化を解析する事により、主に以下の研究を行った。①婦人科癌におけるヒストンメチル化酵素SETD8の治療標的の可能性について:SETD8が子宮体癌、卵巣漿液性癌において発現が亢進した、SETD8を抑制すると、H4K20メチル化を介して特定の癌抑制遺伝子が亢進する事によりアポトーシスが誘導された。②子宮体癌におけるPRMT6-ERVネットワークを標的とした新規治療法の開発について:子宮体癌においてPRMT6の高発現が認められ、その抑制はヒストン修飾を介して内因性レトロウイルスを上昇させる事によりアポトーシスを誘導した。 We conducted the following studies on gynecological malignancies, mainly by analyzing the effects of multilayered histone modifications on chromatin changes. We analyzed the following studies: (1) Potential therapeutic targets of the histone methyltransferase SETD8 in gynecological cancers: SETD8 was upregulated in endometrial and ovarian serous carcinomas, and suppression of SETD8 induced apoptosis by upregulating specific tumor suppressor genes via H4K20 methylation. (2) Novel therapy targeting PRMT6-ERV network in uterine carcinoma: High expression of PRMT6 was observed in endometrial carcinoma, and its suppression induced apoptosis by upregulating endogenous retroviruses through histone modification.
    34. 子宮体癌がん幹細胞関連蛋白SPARCの機能解析とそれを標的とした新規薬剤の開発 Functional analysis of uterine cancer stem cell-associated protein SPARC and development of novel drugs targeting it 19H03800 2019-04-01 – 2022-03-31 子宮体癌 / 癌幹細胞 / SPARC / AKT / Aldoxorubicin / がん幹細胞 / SAPRC 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 九州大学 本研究では、secreted proteins acidic and rich in cysteine (以下SPARC)を「子宮体癌がん幹細胞関連蛋白」としてとらえ、1)その発現機構を脱メチル化の点から解析し、また活性化の分子機構をMMP3の点から検討するとともに、2)SPARCが腫瘍細胞や間質細胞などの周囲の微小環境へ及ぼす影響やその相互作用を明らかにする。また、3)SPARCがアルブミン結合蛋白である性質を利用し、SPARCを標的とするアルブミン結合薬剤を創薬し子宮体癌の新規治療法を開発する。 子宮体癌幹細胞で発現が亢進しているSPARCについて検討した。子宮内膜癌細胞においてSPARC発現はAKTのリン酸化と上皮間葉転換を誘導することを示し、fibronectinの存在下にSPARCが線維芽細胞を活性化させることを明らかにした。さらに蛍光標識したヒト血清アルブミンとSPARCの結合、細胞への取り込みの確認後、アルブミン結合型DoxorubicinのAldoxorubicinを用いて、SPARC発現子宮体癌細胞への増殖抑制効果を3次元培養やin vivoで確認した。以上よりAldoxorubicinは今後、SPARCを発現する子宮体癌の治療薬の候補になることが示された。 We examined the function of SPARC, which is upregulated in uterine cancer stem cells. We showed that SPARC expression in endometrial cancer cells induces phosphorylation of AKT and epithelial-mesenchymal transition, and that SPARC activates fibroblasts in the presence of fibronectin. Furthermore, after confirming the binding and cellular uptake of SPARC to fluorescently labeled human serum albumin, we confirmed the growth inhibitory effect of albumin-bound doxorubicin, Aldoxorubicin, on SPARC-expressing uterine cancer cells in three-dimensional culture and in vivo. These results indicate that Aldoxorubicin is a potential therapeutic candidate for the treatment of SPARC-expressing uterine cancer in the future.
    35. 順遺伝学手法による、脱ユビキチン化酵素の卵巣癌進展・子宮内膜症癌化制御機構の解明 Elucidation of the regulatory mechanism of ovarian cancer progression and endometriosis carcinogenesis by deubiquitinating enzymes using a forward genetics approach. 19H03799 2019-04-01 – 2022-03-31 順遺伝学手法 / ユビキチン・プロテアソームシステム / 上皮性卵巣癌 / 子宮内膜症癌化 / 子宮内膜症悪性化 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 大阪大学 大規模遺伝子変異データセットにおけるゲノム異常には現れない、エピジェネティックに制御される遺伝子現象による細胞機能の変化も含めてスクリーニングが可能なForward genetic screeningの手法によって、以下の2つのプロジェクトを進める。1.過去に我々が卵巣癌の治療標的を同定する目的で行った独自の治療標的候補リストから、より臨床的意義の高い治療標的であると絞り込んだ脱ユビキチン化酵素であるUSP32と上皮性卵巣癌の関連性を解明し、その機序を検討する。2.癌、炎症疾患に強く関連するとされるユビキチンプロテアソームシステムと、子宮内膜症との関連性を解明する為、正常子宮内膜オルガノイドを用いて新規スクリーニングを行う。 卵巣癌進展における脱ユビキチン化酵素の関与をヒト卵巣癌細胞株を用いUSP32発現を欠失・過剰発現させ検証し、USP32の癌遺伝子としての機能、細胞増殖能・上皮間質転換・スフィア形成能獲得に関与する事を示した。免疫沈降-質量分析法による基質蛋白の網羅的探索の結果、メバロン酸経路のスクアレン合成酵素FDFT1に着目した。卵巣癌スフィアでUSP32、FDFT1発現は高く、それらの抑制、FDFT1阻害剤、メバロン酸経路抑制によりスフィア形成が有意に抑制された。卵巣癌腹膜播種の過程ではスフィア形成能獲得が必須であり、USP32、FDFT1は卵巣癌腹膜播種に対する新たな治療標的となることが示唆された。 Involvement of deubiquitinating enzymes in the progression of ovarian cancer was investigated by using human ovarian cancer cell lines suppressing or overexpressing USP32. It was shown that USP32 functions as an oncogene and is strongly involved in cell proliferation, and epithelial mesenchymal transition, especially in sphere formation capacity. Among candidates substrates identified by immunoprecipitation mass spectrometry experiment, we focused on FDFT1, a squalene synthase in the mevalonic acid pathway, which is important for cholesterol biosynthesis. USP32 and FDFT1 expression is high in ovarian cancer spheres, and sphere formation capacity is significantly suppressed by USP32 or FDFT1 suppression, FDFT1 inhibitors, and mevalonic acid pathway suppression, and restored by squalene. Sphere formation capacity is essential for the process of ovarian cancer peritoneal dissemination, suggesting that USP32 and FDFT1 are novel therapeutic targets.
    36. 子宮頸部病変自動診断システムの開発~低医療資源国における子宮頸がん予防に向けて~ Development of New Diagnostic System for Cervical Premalignant and Malignant Diseases 19H03798 2019-04-01 – 2022-03-31 子宮頸癌 / 画像診断 / コルポスコープ / AI / 子宮頸がん検診 / スマートスコープ / 自動診断 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 大阪大学 子宮頸がんの予防システムのさらなる改善は世界的に望まれている。特に低医療資源国においては十分な検診・治療システムが確立されておらず、スクリーニング陽性者をそのまま治療対象とせざるを得ないのが現状である。そこで、精検として活用できる、デジタルカメラやスマートフォンでの子宮頸部撮影画像の自動診断機能を開発することで、世界的な子宮頸がん対策の一端を担いたいと考えた。研究期間中に正常子宮頸部および CIN ・浸潤がんの画像を 2200 枚集積し、病理所見を付与して識別機にディープラーニングさせ、子宮頸部画像の自動診断機能を開発する。 子宮頸部病変の診断を自動化することを目的とした病理診断に基づき、正常:120症例、CIN1:120症例、CIN2-3:113症例、浸潤癌:110症例のコルポスコープ画像をトレーニングとテストに3:1で割り付けて評価を行った。結果は、CIN1以下とCIN2以上の2つのカテゴリーでは正診率は72.4%であった。さらに、正常、CIN1、CIN2-3、浸潤癌の各20例において、AI支援画像診断は、浸潤癌では婦人科医の診断精度を有意に改善でき(P<0.01)、CIN2-3ではその精度が向上する傾向にあった(P=0.14)。 Colposcopic images of normal: 120 cases, CIN1: 120 cases, CIN2-3: 113 cases, invasive cancer: 110 cases were assigned 3:1 for training and testing based on pathology. The results showed an accurate diagnosis rate of 72.4% for the two categories of CIN2- and and CIN2+. Furthermore, in each of the 20 cases of normal, CIN1, CIN2-3, and invasive cancer, AI-assisted image diagnosis was able to improve gynecologist diagnosis accuracy significantly (P<0.01) for invasive cancer and tended to improve their accuracy for CIN2-3 (P=0.14).
    37. 腹膜中皮との相互作用による卵巣がんの悪性化・腹膜播種・進展機序の解明 Elucidation of malignancy, peritoneal dissemination and spread mechanism of ovarian cancer by interaction with peritoneal mesothelium. 19H03797 2019-04-01 – 2022-03-31 卵巣癌 / がん微小環境 / 細胞間相互作用 / 卵巣がん / 婦人科がん / エクソソーム / 中皮細胞 / マイクロRNA / 細胞外小胞 / exosome / ovarian cancer / miRNA / mesothelium 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 名古屋大学 これまで卵巣がんの微小環境に着目し、多くの報告を行ってきた。さらに近年、我々は卵巣がん細胞が放出するエクソソームの機能を、世界に先駆けて明らかにした。卵巣がん細胞が放出するエクソソームが中皮細胞と協力して、腹膜転移を促進させる機構を同定した。卵巣がん細胞はその微小環境において、がん細胞の自身の悪性化のみならず、周囲の種々の細胞とメッセージを送り合うことで、様々な生理機能を発揮させていることが明らかになったが、詳細は明らかにされていない。がん細胞とそれを取り巻く細胞間との情報伝達機構どのようなものがあるのか、これらの疑問を解明するためにエクソソームmiRNAを中心に研究する。 本研究では、卵巣がんの新たな治療標的の探索を目指し、卵巣がん微小環境における細胞間相互作用に着目し、新たな疾患メカニズムを提唱することを目的とした。3年間の研究期間を通して、極めて多角的に難治性卵巣がんの悪性化機構の解明を行った。メタボローム解析やsmall RNAシーケンス、ビタミンによる治療効果や、脂肪組織との関連性など、どの成果も、これまで全くわかっていなかった最新の知見である。中皮細胞を介した機能は現在も検討中であり多角的にかつ同時進行で解析を行っている。本研究助成は最終年度になるが、今後も継続して卵巣癌微小環境における機能を明らかにし、迅速に診断・治療等の臨床応用へと展開させる。 The aim of this study was to elucidate new disease mechanisms by focusing on cell-cell interactions in the ovarian cancer tumor-microenvironment (TME), and to discover novel therapeutic targets for ovarian cancer patients. Throughout the three-year research period, we have elucidated the malignant mechanisms of refractory ovarian cancer from extremely multiple aspects. The research included metabolomic analysis, small RNA sequencing, therapeutic effects of vitamins, and the relationship with adipose tissue. All of the results are the whole new findings, which have been reported for the first time. The function of mesothelial cells in TME is still under investigation. Although this research grant is in its final year, we will continue to elucidate the functions of various cells in the ovarian cancer TME and leading to develop them for clinical applications such as diagnosis and treatment.
    38. 婦人科がん薬物療法後のがんゲノム・RNA解析による薬剤耐性の解明 Comprehensive genomic and transcriptome analyses to clarify molecular mechanisms contributing to chemoresistance in gynecologic cancer 19H03795 2019-04-01 – 2022-03-31 卵巣癌 / 薬剤耐性 / バイオマーカー / オミックス / メタボロミクス / 婦人科がん / がんゲノム解析 / メタボローム / 循環腫瘍DNA 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 東北大学 がん発症時のドライバー変異や治療標的候補分子の同定が進んでいるものの、がん薬物療法等により生じる遺伝子変異に基づく薬剤耐性獲得の分子機構は十分に解明されていない。一般に、再発あるいは残存腫瘍では外科的切除が困難な場合が多く、解析検体数が少ないが、婦人科がんの場合、再発・残存腫瘍に際し腹水穿刺や二次的手術等を選択することは少なくない。本研究では再発ないし残存腫瘍のエキソーム解析やRNA-Seq解析等により耐性獲得の分子機構解明を進め、がん薬物療法等による治療戦略の再構築を目指す。研究期間の前半で薬剤耐性候補変異を探索し、後半では検証データによる仮説を立証する。 抗がん剤治療前後の卵巣がん組織或いは治療抵抗性卵巣がん組織における遺伝子変異を解析することにより卵巣がんの抗がん剤抵抗性に関与する可能性がある遺伝子異常について探索を行った。その結果KEAP1遺伝子の異常が卵巣がんの抗がん剤抵抗性をもたらしている可能性があることを見出した。現在卵巣がん組織中のKEAP1とその関連タンパク質であるNRF2の関係について追加研究を行っている。また卵巣がん及び子宮体がん患者血液中にある約600の代謝物を測定し、それぞれのがん特有の代謝産物の特徴を同定した。特にアミノ酸の1つであるトリプトファンの代謝が亢進している卵巣がん症例では治療抵抗性を示すことを発見した。 We investigated the genomic alterations that potentially facilitate primary or acquired resistance to platinum agents in ovarian cancer by comprehensive genome analysis with surgically removed ovarian cancer specimens before and after chemotherapy. We found that KEAP1 mutation is possibly associated with chemoresistance in ovarian cancer. KEAP1 is known to repress the function of NRF2 which regulates chemosensitivity in variable cancer. Additional experiments are ongoing to validate the involvement of KEAP1 and NRF2 in chemoresistance of ovarian cancer. In addition, approximately 600 metabolites in plasma from the patients with ovarian or endometrial cancer were measured to investigate the association between metabolomic status and chemosensitivity. We clarified several metabolomic profiles characteristic for ovarian and endometrial cancer, respectively. We also identified that increased tryptophan metabolism is significantly associated with chemoresistance in ovarian cancer.
    39. 卵巣癌における腫瘍内不均一性の解析に基づく新規治療法の開発 Development of new treatment for ovarian cancer based on intratumor heterogeneity 18H02947 2018-04-01 – 2023-03-31 卵巣癌 / 腫瘍内不均一性 / 腫瘍免疫 / 幹細胞 / DNA修復機構 / ゲノム / 免疫療法 / バイオマーカー / ゲノム解析 / オミックス解析 / 相同組み替え修復 / 機能ゲノミクス解析 / 化学療法感受性 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 近畿大学 (i) 卵巣癌において、上皮間葉転換が骨髄由来免疫抑制細胞の腫瘍内への集積と腫瘍免疫抑制をもたらしていることを明らかにした。(ii) 腫瘍内不均一性が予後不良に関わっていることを明らかにした。(iii) 卵巣癌における抗VEGF抗体の治療抵抗性が低酸素による骨髄由来免疫抑制細胞の集積によることを示した。(iv) DNA相同組み替え修復機構の異常について包括的な解析を行った。 We revealed the following findings. (i) Epithelial-mesenchymal transition results in the accumulation of bone marrow-derived myeloid suppressor cells (MDSC) within the tumour and tumour immunosuppression in ovarian cancer. (ii) Intratumoural heterogeneity in ovarian high-grade serous carcinoma is associated with poor prognosis. (iii) Resistance to anti-VEGF antibody treatment in ovarian cancer was due to hypoxia-induced accumulation of MDSC. (iv) A comprehensive analysis of abnormalities in DNA homologous recombination repair mechanisms was carried out.
    40. 婦人科腫瘍における免疫制御機構のダイナミズムの解明と新規治療開発の基礎的検討 Investigation of immune-suppressive dynamism and exploratory research for new treatment strategy for gynecologic cancer 18H02945 2018-04-01 – 2021-03-31 婦人科腫瘍 / 免疫ダイナミズム / 免疫チェックポイント / 卵巣癌 / 腫瘍免疫 / 婦人科がん / 免疫ゲノミクス / 子宮体癌 / PD-1 / 免疫ダイナミクス / PD-L1 小区分56040:産婦人科学関連 基盤研究(B) 京都大学 本研究では、マウス卵巣癌、体癌モデルを用いて、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬による治療効果と腫瘍と宿主に対する免疫細胞の分布や各種免疫関連因子の変動が治療効果に一定の相関を示すとともに、従来の免疫応答では示されなかった細胞分画も同定し、ヒト腫瘍組織でも同様の変化を確認し、変動する免疫細胞分画を最も誘導するサイトカインや最も抑制する因子を同定し、これらを添加あるいは阻害薬を用いて、マウス担癌モデルを用いて従来の治療法に併用すると、抗腫瘍効果を増強できた。 In this study, we used mouse ovarian and uterine cancer models to demonstrate that antitumor effects of conventional chemotherapies cancer drugs and immune checkpoint inhibition via dynamic change of not only tumor cells but also several immune cells and immune-related factors. In addition, we also identified several factors that induce or inhibit certain types of immune cells fractionation, which were not found in our previous studies, and confirmed that these factors enhance the anti-tumor effect when used in combination with conventional chemotherapy and immune checkpoint inhibitors in a mouse tumor-bearing models.
    41. 既成概念を打破する血清網羅的糖ペプチド解析による卵巣癌早期診断・予後診断法の開発 Development of hemodiagnosis for early detection of ovarian cancer using glycopeptide peaks obtained from CSGSA (Comprehensive Serum Glycopeptide Spectra Analysis) 17H04340 2017-04-01 – 2021-03-31 卵巣癌 / 血清バイオマーカー / 糖ペプチド / 質量分析 / 人工知能 / 深層学習 / リキッドバイオプシー / 卵巣癌早期診断 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 東海大学 卵巣癌は発見時に進行例が多く、早期発見方法がなくその解決は重要な課題である。CSGSAによって同定したFS-C4BPは、レクチン電気泳動とウェスタンブロットによってその分子構造から予想される原理通りに健常人と卵巣癌例の選別が可能であった。CSGSAにより得た糖ペプチドピークを2次元バーコード化し人工知能によって深層学習させることで、健常人、良性疾患例、卵巣癌例を選別することが可能であった。また同様にCSGSAにより得た糖ペプチドピークに統計学的解析を行うことによって同様に選別することが可能であった。今後、これらの方法を用いて卵巣癌の早期発見を目指し社会実装を模索していく。 Ovarian cancer is a leading cause of deaths among gynecological cancers, and a method to detect early-stage epithelial ovarian cancer (EOC) is urgently needed. FS-C4BP, which was discovered by CSGSA, can be measured by Lectin and immunoblot to detect early EOC. CSGSA evaluates >10,000 glycopeptides and identifies reproducible peaks and patterns via supervised orthogonal partial least-squares discriminant modeling(OPLS-DA). Combined CSGSA(OPLS-DA), CA125, and HE4 had improved diagnostic performance. We also developed an AI-based CSGSA method. We converted serum glycopeptide expression patterns into two-dimensional (2D) barcodes to let convolutional neural network (CNN) learn and distinguish between EOC and non-EOC. When CNN was trained with 2D barcodes colored on the basis of serum levels of CA125 and HE4, a diagnostic AUC of 95% was achieved. This simple and low-cost method will increase the detection of EOC. Thus, CSGSA may be a useful screening tool for detecting early stage EOC.
    42. 卵巣癌関連腹膜中皮に新機軸をおいた腹腔内細胞クロストークに関する学際的機能研究 Interdisciplinary research on intraperitoneal cell-to-cell crosstalk focusing ovarian cancer-associated mesothelial cells 17H04338 2017-04-01 – 2020-03-31 卵巣癌 / 腹膜播種 / 腹膜中皮細胞 / 化学療法抵抗性 / 癌関連腹膜中皮細胞 / 癌性腹膜炎 / 薬剤耐性 / 癌関連腹膜中皮 / トランスクリプトーム解析 / エクソソーム / 卵巣癌関連腹膜中皮 / エクソソーム解析 / メタボローム解析 / 腹膜微小環境 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 名古屋大学 卵巣癌は婦人科領域における最も予後不良な癌腫の一つであり、腹膜播種を伴う特徴的な進行の形を示す。特に、進行・再発した腫瘍では、プラチナ製剤を中心とした化学療法への抵抗性を獲得することで、難治性癌へと変化する。本研究では、腹膜播種における卵巣癌細胞の生存を支える「土壌」、すなわち環境としての腹膜に着目し、腹膜の特徴的な構成要素としての腹膜中皮細胞に焦点を当て、卵巣癌細胞との間で行われる異種細胞間のクロストークと化学療法への抵抗性の関連について検討した。 We reported how ovarian cancer (OvCa)-associated mesothelial cells (OCAMs) induce platinum-resistance in OvCa cells through direct cell-to-cell crosstalk. We evaluated mutual associations between OvCa cells and human primary MCs with in vitro co-culturing experimental models and in silico omics data analysis. Results of in vitro experiments show that mesenchymal transition is induced in OCAMs primarily by TGF-β1 stimulation. OCAMs can induce decreased platinum-sensitivity in OvCa cells via induction of the FN1/Akt signaling pathway via cell-to-cell interactions. Further, we also confirmed activation of Akt signaling in OvCa cells in contact with TGF-β1 stimulated peritoneum, using an in vivo mice model. Their results suggest that the tumor microenvironment, enhanced by direct cell-to-cell crosstalk between OvCa cells and OCAMs, induces acquisition of platinum-resistance in OvCa cells, which may serve as a novel therapeutic target for prevention of OvCa peritoneal dissemination.
    43. 乳癌・卵巣癌治療の分子基盤としてのグアニン4重鎖解除機構の解析 Analyses of the mechanisms for DNA G-quadruplex resolution as a molecular basis of the treatment of breast and ovarian cancer. 17H03585 2017-04-01 – 2020-03-31 乳癌 / 卵巣癌 / 相同組換修復 / グアニン4重鎖 / G4安定化剤 腫瘍生物学 / 腫瘍学 / 総合生物 / 生物系 基盤研究(B) 聖マリアンナ医科大学 がんに対する治療としてDNAの二次構造であるグアニン四重鎖(G4)安定化剤の有効性を検討するため、G4を制御するメカニズムを解析した。その結果、HERC2と呼ばれるタンパク質が、DNAヘリカーゼであるBLMおよびWRNと1本鎖DNA結合タンパク質であるRPAとの結合を仲介し、さらにRPA2のリン酸化およびユビキチン化を介して、G4の解除に必須な役割を果たすことが判明した。HERC2の欠失および変異によりがん細胞のG4が蓄積し、G4安定化剤に対する感受性が亢進することから、臨床上重要なメカニズムと考えられる。 We investigated mechanisms regulating a secondary DNA structure G-quadruplex (G4) to clarify the significance of G4 stabilizer in cancer treatments. We discovered an essential role of HERC2 in G4 resolution by mediating interaction between single-strand DNA binding protein RPA and DNA helicases BLM and WRN. HERC2 was also required for phosphorylation and ubiquitination of RPA2. This mechanism is critical because G4 accumulation as a result of HERC2 deficiency may provide a therapeutic target for G4 stabilizers.
    44. 卵巣癌のゲノム多様性に基づく播種・転移・薬剤耐性・免疫逃避機序の解明と臨床応用 Clinical utilization and investigation of ovarian cancer genome diversity associated with metastasis, resistance to treatment and immune escape 16H05477 2016-04-01 – 2019-03-31 卵巣癌 / 腫瘍免疫 / ゲノム診断 / 抗腫瘍免疫 / 腫瘍ゲノム / ゲノム多様性 / 免疫 / 免疫療法 / 腫瘍内ゲノム多様性 / 包括的遺伝子発現解析 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 京都大学(2017-2018) / 近畿大学(2016) 本研究の目的は臨床腫瘍検体を用いた腫瘍微小環境における腫瘍ゲノム解析方法を確立し、さらに腫瘍ゲノムの遺伝子多様性をスコア化する方法を用いて、腫瘍免疫における免疫応答を評価し、実臨床で有用な手法を確立することである。本研究で実臨床応用にむけての階層的遺伝子変異解析パイプラインの整備を行った。遺伝子多様性スコアを癌ゲノムの遺伝子変異とコピー数変異から算出したスコアは予後を予測した。臨床応用のための癌ゲノムの層別化とトランスクリプトーム解析による腫瘍の免疫活性の相関を調べる方法を確立した。治療と反応性のある多様性スコアは経時的な採血と、T細胞、B細胞レパトアによっても観測できることが示唆された。 The aim of this study was to establish the tumor genome analysis pipeline using clinical tumor tissue for actual clinical setting. Moreover, we aimed to identify tumor genome biomarkers for stimulating immune activity to conquer cancer. The fruit of this research is to establish the platform of genome and transcriptome analyses by means of tumor tissue including tumor microenvironment and ,moreover to investigete biomarkers of immune reaction associated with somatic genome alteration. For the clinical utility, we established the multi platform pipeline in the tumor omics analyses. The diversity scores in cancer genome alteration including mutation and copy number alteration predicted prognoses. Stratification of genome alterations was integrated with transcriptome analyses reflecting the activity of tumor immunity. Diversity scores related with response to treatment was utilized from blood samples over the course of treatment by T cells and B cells repertoires analyses.
    45. 癌幹細胞とニッチを標的とした卵巣癌Dual-targeted therapy戦略 Elucidation of interactions between cancer stem cells and their niche: Dual-targeted therapy in ovarian cancer patients 16H05473 2016-04-01 – 2019-03-31 卵巣癌 / 癌幹細胞 / 癌幹細胞ニッチ / マクロファージ / 卵巣表層上皮 / 卵巣癌治療 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 熊本大学 癌の発生や浸潤・転移の過程においては、癌細胞と周囲の微小環境との細胞間相互作用が重要な役割を果たしている。近年、正常組織の幹細胞と同様に癌幹細胞においても微小環境ニッチが存在し、腫瘍の増殖や治療抵抗性に関与していることが示されている。今回われわれは、卵巣癌における癌幹細胞ニッチを特定し、それらの分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。さらに、卵巣癌幹細胞とニッチとの細胞間相互作用について解析を行い、最終的には卵巣癌幹細胞および癌幹細胞ニッチを治療標的とした卵巣癌に対する新たな治療戦略を開発することを目指している。 The tumor microenvironment represents a dynamic milieu that involves a complex network of interactions between cancer cells and various stromal components and plays a crucial role in cancer cell survival, proliferation, invasion, and metastasis. Considering the distinct biology of ovarian cancer, the elucidation of the cellular and molecular mechanisms underlying the reciprocal interplay between ovarian cancer stem cells and surrounding stromal cell types in the tumor microenvironment will provide further insights into the development of novel therapeutic approaches for patients with advanced ovarian cancer. Our research group studied the biological mechanisms that regulate the highly orchestrated crosstalk between ovarian cancer stem cells and their niche in the tumor microenvironment.
    46. 婦人科がんの個別化腫瘍免疫療法を目指した腫瘍浸潤リンパ球の基礎的研究 Analysis of tumor-infiltrating lymphocytes in malignant gynecologic tumors for development of personalized tumor immunotherapy 16H05472 2016-04-01 – 2019-03-31 婦人科がん / 腫瘍免疫 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 卵巣癌 / 免疫療法 / PDXモデル / TIL 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 名古屋大学 婦人科がんにおける患者由来腫瘍のin vivoモデル(Patient-derived xenograft: PDXモデル)の構築と腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocytes: TIL)の基礎的検討を行った。TIL培養に関しては、培養細胞数に幅はみられたものの97.6%で可能であった。PDXモデルに関しては、41%の症例で腫瘍生着および継代が可能であった。少数例ではあるが、次世代シーケンサー技術を用いて腫瘍特異的変異抗原候補を抽出し、同抗原の一部に関して同定でき、さらには同定した腫瘍特異的変異抗原を認識するCTLのTCR解析を行った。 In order to develop personalized immunotherapy for malignant gynecologic tumors, we aimed to characterize tumor infiltrating lymphocytes (TIL) and to clarify the mutated neoantigens of individual patients with malignant gynecologic tumors. Although TIL yield varied between patient samples, we could expanded the TILs from the small fragments of tumor in most cases (97.6%). A total of 14 patient derived xenografts (PDX) models were established. It could be confirmed that the reactive cells to autologous tumor cells were present in the expanded TILs. In two cases with ovarian cancer, we identified candidates of mutated neoantigens by the next generation sequencing combined with bioinformatics prediction and evaluated TILs from the same patients.
    47. 子宮内膜癌に対する抗サイクリンA分子標的薬開発:新たに同定した化合物の改良の試み Development of novel anti-cancer drugs targeting cyclin A for endometrial carcinoma. 16H05471 2016-04-01 – 2019-03-31 子宮体癌 / 細胞周期調節因子 / 低分子化合物 / サイクリンA / 化合物X / 子宮内膜癌 / 抗がん剤 / 婦人科腫瘍学 / 分子標的薬 / 創薬 / 抗腫瘍薬 / 抗癌剤感受性 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 信州大学 近年著増している子宮体癌に対する新たな分子標的療法を開発する目的で、各種細胞周期調節因子の発現を検討したところ、サイクリンA2が体癌の細胞増殖や抗癌剤の耐性に深く関与していることが判明した。このため、サイクリンA2の発現を抑制する薬剤の関発をこころみた。
      サイクリンA2の転写能を測定するアッセイを樹立し、低分子化合物ライブラリーをスクリーニングしたところ、サイクリンA2の転写および子宮体癌の増殖を抑制する化合物Xを同定した。さらにこれを構造改変した化合物X1を合成したところ、化合物X1は化合物Xの約10倍の抗腫瘍作用があることが判明し、新たな薬剤として大きな可能性を有すると考えられた。 Because the number of endometrial carcinoma (EMCa) patients is markedly increasing in recent years, development of novel drugs for EMCa is mandatory. We previously revealed that the expression of cyclin A, an important cell-cycle regulator, was involved in the acquisition of malignant potentials of EMCa. Therefore we aimed to develop new drugs which suppress cyclin A activity.
      The screening of low molecular weight compound library using luciferase assay containing cyclin A promoter identified “compound X”, which had strong anti-cyclin A transcriptional activity. The compound X also showed strong anti-proliferative activity for EMCa cells in vitro and in vivo. We then altered the partial structure of compound X, and newly synthesized compound X1. The compound X1 had anti-proliferative activity 10 times stronger than that of compound X. There results indicated the newly synthesized compound X1 is a promising agent.
    48. 卵巣癌における抗VEGF抗体療法感受性・耐性機序の解明 The elucidation of the mechanisms of sensitivity and resistance to anti VEGF antibodies in ovarian cancer 15H04309 2015-04-01 – 2018-03-31 抗VEGF抗体 / 感受性 / 耐性 / 免疫抑制 / 骨髄由来免疫抑制性細胞(MDSCs) / GM-CSF / 抗VEGF抗 / Gr-1 / CD8 / 骨髄由来免疫抑制性細胞 / ピモニダゾール / 低酸素状態 / VEGF抗体 / PD-1抗体 / 耐性遺伝子 / 抗VEGF抗体治療 / Gr-1陽性細胞 / CD8陽性リンパ球 / 薬剤反応性 / 抗VEGF抗体 / 卵巣癌 / 耐性獲得機構 / 発現マイクロアレイ / バイオマーカー 腫瘍治療学 / 腫瘍学 / 総合生物 / 生物系 基盤研究(B) 京都大学 卵巣癌において抗VEGF抗体治療抵抗性の解明は臨床的に重要であるが、マウスモデルを用いて抗VEGF抗体抵抗性には腫瘍局所の免疫抑制が関与することを見出した。抗VEGF抗体治療は腫瘍局所に骨髄由来免疫抑制性細胞(MDSCs)を誘導し、腫瘍局所のリンパ球活性を抑制していた。抗体治療により腫瘍局所に低酸素環境が惹起され、腫瘍細胞におけるGM-CSF発現が亢進し、MDSCsを腫瘍局所に誘導していることが判明した。GM-CSF経路を阻害すると、腫瘍の局所免疫が改善し、抗VEGF抗体治療抵抗性が解除されることがわかった。腫瘍免疫を標的とする、抗VEGF抗体との新規併用治療の開発が期待される。 The elucidation of the mechanism underlying the development of resistance to anti-VEGF antibodies in ovarian cancer is urgently required. We found that immunosuppression in the tumor microenvironment is associated with resistance to anti-VEGF therapy with the use of preclinical models. Anti-VEGF therapy induced myeloid-derived suppressor cells (MDSCs), which suppressed lymphocyte activity. Anti-VEGF therapy induced tumor hypoxia, which up-regulated the GM-CSF expression in tumor cells and recruited MDSCs into the tumor site. The blockade of GM-CSF signaling improved tumor immunity and enhanced the efficacy of anti-VEGF therapy. Treatments targeting MDSCs induced by VEGF signaling may improve prognosis in patients with high-grade serous ovarian cancer. The development of therapies combining anti-VEGF therapy with drugs targeting tumor immunity is expected.
    49. 卵巣癌の発生・進展に関わる宿主免疫のゲノミクス解析と治療開発への基礎的検討 Fundamental research of host immune-genomics and development of new cancer therapy for ovarian cancer 26293359 2014-04-01 – 2017-03-31 がん免疫逃避 / Immuno-genomics / がん免疫療法 / 卵巣がん / 免疫チェックポイント阻害薬 / PD-L1 / PD-1 / 婦人科腫瘍学 / 腫瘍免疫 / 医療・福祉 / 癌 / 免疫学 / 腫瘍免疫学 / がん免疫逃避機構 / 卵巣癌 / 免疫ゲノミクス 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 京都大学 卵巣癌発生やがん進展での局所免疫状態の経時的変化、特に卵巣癌の免疫抵抗性獲得因子の探索するためにがん(抑制)遺伝子変異を組合わせた細胞株をマウスに接種し、腫瘍局所の免疫細胞を解析し有意に変化する免疫細胞サブセットを同定した。一方で、OVAを発現するマウス卵巣癌細胞株を用いて免疫抵抗性獲得遺伝子の探索を行うために免疫抵抗性獲得能を有するOVA発現株を作成し、親株との遺伝子発現解析の比較にて、複数種の免疫抑制因子遺伝子を抽出した。上述の免疫関連遺伝子を、マウス卵巣癌細胞株に強制発現し、in vitro・in vivoモデルで免疫抑制機能を再確認し、卵巣癌治療の新たな治療標的になる可能性を示した。 To investigate the host immune-genomics and development of new cancer therapy for ovarian cancer, we found several immunosuppression related genes in mouse ovarian cancer model with both or either of oncogenes and onco-suppressor genes transfected mouse ovarian cancer cell lines. And we found tumor antigen specific immunosuppressive genes by repeating injections OVA overexpressed ovarian cancer cell line. Lastly we could detect some immunosuppressive function of these genes in vitro and vivo mouse model and find a new potential target of ovarian cancer treatment.
    50. レチノイン酸によるアポトーシス関連遺伝子を介した子宮内膜癌増殖制御機構の解明 26293356 2014-04-01 – 2018-03-31 レチノイン酸 / アポトーシス / 子宮内膜癌 / レチノイン酸受容体 / RL95-2 / RARβ / ATRA 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 東北大学 レチノイン酸は既に他癌種では実用化されており、子宮内膜癌においてもその効果が期待されている。また正常組織に比べ、他癌種や子宮内膜症ではレチノイン酸合成代謝の変化により、細胞分化やアポトーシスの抑制が起こっている可能性が報告されている。そこで今年度は、子宮内膜癌におけるレチノイン酸合成代謝に着目し、子宮内膜癌に対するレチノイン酸の効果や関連遺伝子の発現およびレチノイン酸による動態変化を解析し、新規治療薬としての可能性を探った。子宮内膜癌細胞株(RL95-2)を用いて、全トランスレチノイン酸 (all-trans retinoic acid : 以下ATRA) 添加による細胞増殖試験およびアポトーシス試験を行った。また、子宮摘出検体および子宮内膜癌細胞株、乳癌細胞株を用いてレチノイン酸合成代謝関連遺伝子の発現をRT-PCR法にて解析した。さらに、レチノイン酸受容体(RAR)ノックダウンによるannexin V detection assayを検討した。そしてヒト組織におけるRARの発現を検討した。RL95-2を用いて、レチノイン酸による増殖抑制効果およびapoptosisの誘導を認めた。また、RARαおよびRARβのknock downによりレチノイン酸によるapoptosis誘導が抑制された。さらに、内膜癌組織におけるRAR発現はホルモン動態とは異なる発現を示しており、MPA療法とは異なる対象への治療薬もしくは予防薬として期待できると推察された。子宮内膜癌においてレチノイン酸受容体の異常が起こっており、腫瘍の増殖に関わっている可能性がある。そして、レチノイン酸によりその機能を改善し、増殖抑制をもたらす可能性が示唆された。
    51. 上皮性卵巣癌における癌幹細胞とニッチを標的とした新規治療戦略 Novel therapeutic strategy targeting ovarian cancer stem cells and their niche 25293344 2013-04-01 – 2016-03-31 卵巣癌 / 癌幹細胞 / CD44 / 上皮性卵巣癌 / 卵巣表層上皮 / 卵巣癌治療 / 卵巣癌モデル 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 熊本大学 本研究では卵巣癌の遠隔転移におけるCD44v6の役割を明らかにすることを目的とした。遠隔転移とCD44v6との関連性について検討するために、免疫組織化学染色法による臨床病理学的検討を行った。その結果、卵巣癌原発巣におけるCD44v6の発現は、診断時における遠隔転移の有無に関して有意な相関がみられた。次に、無遠隔転移生存期間についてKaplan- Meier法を用いて解析した結果、CD44v6高発現群は低発現群と比較して有意に遠隔転移再発期間の短縮が認められた。以上の結果より、CD44v6陽性の卵巣癌幹細胞は遠隔転移に密接に関わることが示された。 To investigate the role of cancer stem cell marker CD44 variant 6 (CD44v6) in the development of distant metastasis in patients with epithelial ovarian cancer. The association between the expression of CD44v6 and distant metastasis was evaluated based on immunohistochemical analysis. Distant metastasis-free survival was compared between the CD44v6-high and -low groups. At the time of ovarian cancer diagnosis, distant metastasis occurred in 13 of 53 patients in the CD44v6-high group and 17 of 133 patients in the CD44v6-low group. The median metastasis-free survival after stage I-III ovarian cancer diagnosis was 19.5 months in the CD44v6-high group and 39.5 months in the CD44v6-low group. Multivariate analysis demonstrated that CD44v6 expression was an independent risk factor for distant metastatic recurrence. In conclusion, CD44v6 represents an important predictor of distant metastasis.
    52. 微小環境EMTが誘導する腹腔内細胞コミュニケーションを狙った卵巣癌治療の新展開 New strategy of treatment for ovarian cancer aiming intraperitoneal cell-cell communication induced by microenvironmental EMT 25293341 2013-04-01 – 2016-03-31 卵巣癌 / 腹膜播種 / 腹膜中皮細胞 / 細胞コミュニケーション / 上皮間葉転換 / 癌関連中皮細胞 / 中皮細胞 / TGF-ベータ / 転移・浸潤 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 名古屋大学 本課題の目的は卵巣癌細胞によって活性化された癌関連中皮細胞がいかに腫瘍細胞の腹膜親展に加担しているかを、微小環境EMTが誘導する腹腔内細胞コミュニケーションの観点から解明し、新規卵巣癌治療戦略の端緒とするものである。本課題は以下の3項目から成り立つ。(1)中皮由来のmir-200 familyやVEGF経路に着目した腹腔内、癌-腹膜中皮の細胞コミュニケーションを伴う腫瘍腹膜進展機序の解明、(2)再発卵巣癌におけるEMT誘導転写因子ZEB1の機能解析とTGF-βシグナル経活性化とEMT誘導転移能亢進のメカニズム、(3)卵巣癌における包括的細胞骨格制御システムの解析。 The TGF-beta;-mediated alteration of the tumor microenvironment plays a crucial role in tumor progression. Mesothelial cells are the primary components of the tumor microenvironment for ovarian cancer cells (OC). We show that TGF-beta;-stimulated human primary mesothelial cells (HPMCs) are able to promote cancer cell attachment and proliferation and the activation of the promoter activities of MMP-2 and MMP-9, which are metalloproteinases necessary for tumor invasion. Expression of the miR-200 family was down-regulated in HPMCs by TGF-beta; stimulation, and restoration of the expression of miR-200 family members in HPMCs suppressed cancer cell attachment and proliferation. Down-regulation of the miR-200 family by TGF-beta; induced fibronectin 1 production, which promoted cancer cell attachment to HPMCs. Finally, we demonstrated that the delivery of the miR-200s to mesothelial cells in mice inhibited ovarian cancer cell implantation and dissemination.
    53. サイクリンAを標的とした子宮内膜癌治療薬の開発:新規化合物の機能解析と改良 Development of a new drug for endometrial carcinoma targeting cycylin A 25293340 2013-04-01 – 2016-03-31 子宮内膜癌 / サイクリンA / 分子標的薬 / 低分子化合物 / prohibitin 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 信州大学 我が国では著増する子宮内膜癌に対する新たな治療法が待たれている。子宮内膜癌において細胞周期促進因子であるサイクリンAの陽性症例が予後不良であったことから、サイクリンAを治療標的分子と考え、低分子化合物ライブラリーからサイクリンA転写抑制活性を有する化合物Xを新たに同定した。この化合物Xは子宮内膜癌細胞のサイクリンAの転写とマウスに移植した内膜癌の増殖を9割以上抑制することから新規薬剤のリード化合物であることが示された。さらこの化合物Xを改良するため、Xの作用機序を検討したところ転写因子prohibitinを新たに同定し、これをもとにしたXの改良の基盤が整備された。 Since the number of endometrial carcinoma (EC) patients is sharply increasing in Japan, development of new therapeutic strategies is mandatory. We previously found the increased expression of cyclin A, a cell-cycle regulatory molecule, to be correlated with poor prognosis of EC patients. Therefore, we considered cyclin A to be a important therapeutic target. After screening of a library containing more than 10,000 low molecular weight compound, we found that a molecule with 300 Da (termed “X” ) had strongly suppressed the transcription of cyclin A and growth of EC xenografts on mice, suggesting “X” to be a promising lead compound. In order to improve the function of “X”, we examined the working mechanism of “X”, and found X to bind to a transcriptional factor, prohibitin. Thus, prohibitin-oriented structural modification seems to pave the way for a new drug development.
    54. 子宮内膜癌における新規癌遺伝子lipocalin2を標的とした治療法の開発 Study for development of the therapy targeting the novel oncogene lipocalin2 in endometrial carcinoma 25293339 2013-04-01 – 2016-03-31 lipocalin2 / 子宮内膜癌 / 抗癌剤耐性 / 癌幹細胞マーカー / マイクロアレイ / 造腫瘍能 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 信州大学 HHUA細胞のLCN2発現にはNFκBや鉄イオンは影響していないと考えられた。HHUA、RL95-2、HEC1B細胞では、LCN2はシスプラチン(CDDP)耐性を増強するが、その作用には鉄イオンが関与するもののPI3K経路やMAPK経路は関与しないと考えられた。またLCN2は足場非依存性コロニー形成能を亢進し、癌幹細胞マーカーであるCD44v9やCD133を増強した。このことはLCN2が癌幹細胞性の維持・増強に関与し、それにより抗癌剤耐性を増強している可能性が考えられた。また、これらのLCN2作用における下流因子の候補として、マイクロアレイ解析によりNUPR1を見出した。 Using luciferase-reporter assay, we demonstrated that NFκB and Ferric ion did not affect to the control of the LCN2 expression in HHUA cells. We also demonstrated that LCN2 significantly enhanced the cisplatin (CDDP) resistance by WST-1 assay using HHUA, RL95-2 and HEC1B cells. This effect was depend on ferric ion, but was independent from PI3K pathway and MAPK pathway. LCN2 significantly enhanced the anchorage-independent colony-formation ability, and enhanced the protein expression of CD44v9 and CD133, which is known as cancer stem cell markers. These results suggested that LCN2 might be involved in the maintenance and enhancement of the cancer stem cell properties, which might be inducing chemo-resistance. In addition, we found NUPR1 as a candidate for the downstream factors of LCN2 effects by microarray analysis.
    55. 大腸癌と卵巣癌におけるLgr5の機能の解析 Functional analysis of Lgr5 in colon and ovary cancer 25290043 2013-04-01 – 2016-03-31 Lgr5 腫瘍生物学 / 腫瘍学 / 総合生物 / 生物系 基盤研究(B) 東京大学 7回膜貫通型受容体のLgr5は腸管上皮の幹細胞マーカーとして注目されているが、癌発症における具体的な役割は充分に明らかにされていなかった。申請者らは、Lgr5が大腸がん細胞の造腫瘍性に必須の役割を果たしていることを見出した。また、大腸がん細胞においてmiR-363- GATA6(転写因子の一種)経路がLgr5の発現を直接促進していることを見出し、miR-363からLgr5へ至るカスケードが大腸癌細胞の造腫瘍性に重要であることを明らかにした。さらに、Reg4(増殖因子)もmiR-363-GATA6の標的因子として機能し、Lgr5と協調して癌細胞の腫瘍形成促進に関わっていることを見出した。 Lgr5 is specifically expressed in stem cells of the intestine and has an essential role in maintaining tissue homeostasis. However, the function of Lgr5 in colorectal tumourigenesis is unclear. We showed that Lgr5 is required for the tumourigenicity of colorectal cancer cells. We also showed that the transcription factor GATA6 directly enhances the expression of Lgr5. Furthermore, we demonstrated that GATA6 is upregulated in colorectal cancer cells due to the downregulation of miR-363, which directly targets GATA6. We found that Reg4, a member of the regenerating islet-derived (REG) family, is also a target of GATA6 and GATA6-mediated activation of Reg4 enhances the tumorigenicity of colon cancer cells. These results suggest that the miR-363-GATA6-LGR5/Reg4 pathway is critical for colorectal tumorigenesis.
    56. 難治性子宮内膜癌の治療戦略~高分子ミセルを用いたEMT制御を目指した治療の開発~ To control in invasion and metastasis through EMT (Epithelial-Mesenchymal-Transition) functional analysis of CD24 in endometrial cancer 24390384 2012-04-01 – 2015-03-31 子宮内膜癌 / EMT / CD24 / HGF / Met / ABC transporter / ミセル / Foretinib / ミセル / 上皮間葉形態転換 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 大阪医科大学 再発や多臓器転移を示す難治性内膜癌に対しての新規治療法は改善を認めていない。細胞表面マーカーのひとつCD24の発現増加が臨床検体での解析により予後不良因子であることを報告し、CD24の機能解析を細胞株を用いて行なった。GPIアンカー蛋白であるCD24は細胞膜表面のHGF受容体Metをripid laftにリクルートし、Metシグナルの増幅に寄与していることを発見した。さらに多剤耐性能獲得メカニズムのひとつABCトランスポーターの発現制御も行なっており、内膜癌の転移能獲得、多剤耐性能獲得に大きく寄与していることが明らかとなり、分子標的としてふさわしい膜蛋白であることを明らかにした。 The development of resistance to chemotherapeutic drugs by cancer cells represents a major challenge in the clinical cure of advanced and metastatic cancers. CD24 has been reported to be a marker for a poor prognosis in several tumors, and we herein examined the functions of CD24 in human endometrioid adenocarcinoma cell lines, and evaluated how it contributes to cancer drug resistance. We demonstrated that CD24 was responsible for the recruitment of phosphorylated-Met to the lipid raft domain of the cell membrane, resulting in amplification of the Met signaling cascade, ultimately leading endometrial cancer cells to express higher levels of ATP binding cassette (ABC) transporters. Our findings suggest that CD24-mediated amplification of the Met cascade may contribute to the drug resistance of endometrial cancer.
    57. EMTを標的とする、微少環境ストレス誘導転移の解明と克服~卵巣癌の予後向上へ~ Clarification of microenvironment-stress induced metastasis and its targeting approach in ovarian cancer 24390380 2012-04-01 – 2015-03-31 卵巣癌 / 腹膜播種 / 上皮間葉転換 / 薬剤耐性 / 腹膜中皮細胞 / 転写因子 / 微小環境 / 上皮間葉転換(EMT) / 転移浸潤 / 腹膜中皮 / ストレス誘導転移 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 名古屋大学 本課題は卵巣癌により特異性のあるEMT誘導転写を分子標的とすることによって”ストレス抵抗性” ⇒”感受性”を誘導し難治性卵巣癌の新規治療法開発を目指したものである。ALX-1/4とストレス(主として薬剤耐性)誘導EMTの中心となるZEB1について機能解析を行った。その結果、高転移性・薬剤耐性卵巣癌においてHOXB13/SLUGおよびALX4/SLUGアクシスがEMTおよび浸潤の促進の新たの経路を発見した。さらにZEB1ノックダウン薬剤耐性化高転移性卵巣癌細胞の腹膜転移形成能はコントロールと比較し有意に抑制され、予後延長に寄与しうるという基礎的データの構築につながった。 This study aimed to generate new therapeutic approach targeting EMT-induced transcriptional factors specific for ovarian cancer (OC). We show that two homeoproteins, HOXB13 and ALX4, are associated with EMT and invasion of OC cells. HOXB13 and ALX4 formed a complex in cells and exogenous expression of either protein promoted EMT and invasion. Knockdown of HOXB13 or ALX4 suppressed SLUG expression and exogenous expression of either protein promoted SLUG expression. Finally we showed that SLUG expression was essential for the HOXB13- or ALX4-mediated EMT and invasion. Our results show that HOXB13/SLUG and ALX4/SLUG axes are novel pathways that promote EMT and invasion of OC cells. Furthermore, in the current study, we showed the role of ZEB1, a member of zinc-finger E-box binding homeobox (ZFH) family, in metastasis and chronic paclitaxel resistance in OC.
    58. 婦人科癌における末梢血中腫瘍細胞からの遺伝子変異及びトランスクリプトームの解析 24390378 2012 末梢血中腫瘍細胞 / アデノウイルスベクター 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 金沢大学 1、テロメラーゼ特異的増殖型GFP発現型アデノウイルスベクターを用いた末梢血中腫瘍細胞(CTC)の検出本法では感染させるウイルス濃度を上げるとがん細胞の感度は上昇するが白血球への非特異的ウイルス感染によるGFP発現の増加が避けられないという問題点があったが、白血球共通抗原CD45の標識を加えることで、GFP陽性かつCD45陰性細胞をCTCとして明確に区別できるようになった。この改良により特異度が高まると共にウイルス濃度を上げることが可能になり、検出感度も高くなり、システムの有効性がかなり向上した。また観察者の経験に左右されずに客観的にCTCを判定できるようになった。これらの検出方法を応用して、本学倫理委員会の承認ならびに被験者のインフォームドコンセントのもとに婦人科癌患者の血液を用いたCTC検出実験を行った。対象は子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌患者であり、30~50%程度の検体でCTCが検出された。CTCの消長は治療の効果と優位に相関しており、治療効果マーカーとなりうることが明らかになった。2、CTC単離方法の確立 ナノリットル単位でのマニュピレーションが可能なPicoPipet^[○!R]にて蛍光顕微鏡下でのGFP陽性細胞の単離に成功した。子宮頸がん患者において回収されたCTCからHPV遺伝子の増幅に成功した。これは原発巣と同型のHPVであり確実に末梢血から腫瘍細胞を回収できていることを示す重要なデータであり、本法の有用性を示すものと考えられた。
    59. ハイスループットスクリーニングを利用した、婦人科がん薬剤耐性克服に向けた治療戦略 The therapeutic strategy toward overcoming drug resistance of gynecologic cancers utilizing high throughput screening. 24390375 2012-04-01 – 2015-03-31 スクリーニング / 薬剤耐性 / 婦人科がん / 化学療法 / シスプラチン 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 東北大学 本研究では6650遺伝子からなるsiRNAライブラリーを利用したハイスループット・スクリーニングでCDDP投与と合成致死作用を示す分子を探索した。細胞膜タンパク質であるTIE-1を候補分子として同定したが、TIE-1と卵巣がんや薬剤耐性との関わりは今までに報告されていない。卵巣がん患者におけるTIE-1発現の意義を検討するためにin silico解析を行い、TIE-1高発現群では有意に予後不良となる事を確認した。またTIE-1過剰発現細胞はCDDP投与時のアポトーシスおよびDNA二重鎖切断のマーカーであるγ-H2AXの発現もコントロールと比較して減少する事を確認した。 The purpose of this study is to search the molecules that can cancel the cisplatin resistance of cancer cells. We explore the molecules that show a synthetic lethal effect with a small amount of CDDP administration in a high-throughput screening using siRNA library consisting of 6650 genes. As a result, a strong expression of TIE-1 was found to be decrease the sensitivity toward cisplatin in several ovarian cancer cell lines. The relationship among TIE-1, ovarian cancer and/or drug resistance has not been reported. In order to examine the significance of TIE-1 expression in ovarian cancer patients, in silico analysis was carried out. We confirmed that TIE-1 high expression group has a significantly poor prognosis by examination of the overall survival in 1582 ovarian cancer patients. Furthermore, we confirmed that apoptosis and γH2AX expressions, a marker for DNA-double strand breaks, were significantly decreased during CDDP administration in TIE-1 over-expressed cells.
    60. 子宮体癌幹細胞を標的にした新規治療法の開発 Development of new target therapy for endometrial cancer stem cells 23390392 2011-04-01 – 2014-03-31 子宮体癌 / 癌幹細胞 / がん幹細胞 / 標的治療 / 子宮内膜 / 幹細胞 / 分子標的治療 / 発癌 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 九州大学(2012-2013) / 順天堂大学(2011) 我々は子宮体癌SP細胞はがん幹細胞の特性を持つことを報告した。SP細胞は既存の抗がん剤に対して抵抗性を持ち、新規薬剤の開発が必要である。マイクロアレイ解析にて、SP細胞ではEMTに関与するシグナル伝達経路を構成する遺伝子群の発現が亢進していた。そこで、EMT阻害剤として報告されているsalinomycinのSP細胞に対する効果を解析した。salinomycinはSP細胞においてアポトーシスを誘導し、Wntシグナルを抑制することにより、細胞増殖を抑制した。また、運動能、浸潤能やマウス皮下への腫瘍形成も抑制し、子宮体癌幹細胞を標的とした治療薬の候補となることが示された。 We previously demonstrated that side-population (SP) cells in human endometrial cancer cells have features of cancer stem cells (CSCs). Hec1-SP cells showed enhanced migration and the potential to differentiate into the mesenchymal cell lineage. We analyzed the association of the epithelial-mesenchymal transition (EMT) with the properties of endometrial CSC. We also assessed and the effects of salinomycin (a compound with EMT-specific toxicity) on the proliferative capacity, migration and invasiveness of endometrial CSCs using Hec1-SP cells. We demonstrated that i) EMT processes were observed in SP cells, ii) the level of fibronectin was enhanced in SP cells and salinomycin reduced the level of fibronectin expression, iii) salinomycin induced apoptosis and inhibited Wnt signaling, and iv) salinomycin inhibited the proliferation, migration, invasiveness and tumorigenicity of SP cells. This is the first report of an inhibitory effect of salinomycin on the properties of endometrial CSCs.
    61. 機能的スクリーニング法を用いた子宮体癌関連マイクロRNAの探索と核酸医薬への応用 Exploration of endometrial cancer-associated microRNAs by using a functional screening method and its application to medication 22390313 2010 – 2012 子宮体癌 / マイクロRNA / エピゲノム異常 / DNAメチル化 / 癌抑制型マイクロRNA / 癌 / ゲノム / 核酸 / microRNA / 抗癌剤感受性 / micro RNA / 癌抑制遺伝子 / がん抑制遺伝子 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 慶應義塾大学 子宮体癌においてエピジェネティックな異常メチル化により発現が抑制されている癌抑制型マイクロRNA(miRNA)を同定し、その機能を解析することを目的とした。ヒト子宮体癌由来細胞株に脱メチル化剤(5-Aza-CdR)を添加し発現が増加したマイクロRNAの中からmiR-34bを同定した。miR-34bは体癌組織で発現が抑制されており、培養細胞に導入するとコロニー形成能および遊走能を低下させた。マウス移植腫瘍に対しては抗がん剤の効果を増強したことからも新たな子宮体癌治療のツールとなる可能性が示唆された。 The aim of this study is to identify a tumor-suppressor microRNA (miRNA) silenced by aberrant DNA methylation in endometrial cancer. By investigating escalation of expression level of microRNAs after exposure of 5-Aza-CdR in endometrial cancer cells, miR-
    62. 婦人科がん幹細胞研究と免疫療法の融合 Combination of stem cell research and immunotherapy in gynecologic cancer 22390311 2010 – 2012 癌幹細胞 / 免疫療法 / CD133 / Glypican-3 / 卵巣癌 / 卵巣がん幹細胞 / 腹膜播種 / 卵巣明細胞腺癌 / ペプチドワクチン / 臨床試験 / glypican3 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 名古屋大学 卵巣がん細胞株OVCAR3、NOY1でCD133陽性と陰性細胞に分離し、ヌードマウスにおける腫瘍形成能を比較し、CD133陽性細胞で有意に腫瘍形成能の亢進を認め、癌幹細胞としの妥当性を証明した。マイクロアレイ解析を行いCD133 陽性細胞で発現増強遺伝子群を同定し、新たな免疫療法のターゲット抗原の探索を行った。免疫療法の実践とし、腫瘍抗原Glypican-3(GPC3)およびHLA-classIの免疫組織染色を行った。82例の卵巣癌組織での結果、明細胞腺癌のみで陽性を示し、HLA-classIは全82例中72例で陽性であり、GPC3をターゲットとした、卵巣明細胞腺癌の免疫療法の妥当性を証明した。我々はGPC3をターゲットとした、卵巣明細胞腺癌の免疫療法の臨床試験をスタートさせ、臨床効果が得られた症例を2例経験した。 We noticed CD133 as a stem cell marker in ovarian cancer. The present study was designed to evaluate the tumor-formation ability of CD133+ cells in ovarian YST cell lines and to examine characteristics of CD133+ cells such as cell growth, and invasiveness. Our data suggest that ovarian YST may be maintained by a rare fraction of cancer stem-like cells that express the cell surface marker CD133. CXCR4 levels were markedly higher in NOY1-CD133+ cells than CD133- NOY1 cells . NOY1-CD133+ expressed slightly higher levels of CD44 expression when compared with their CD133- counterparts.We also examined GPC3 expression in surgically resected ovarian carcinoma tissues. We tried immunotherapy in ovarian cancer. We investigated the expression ofonco-fetal antigen, GPC3. Our results showed that GPC3 was expressed in tumor cells from 51.6% of ovarian clear cell carcinoma although other histotypes were not stained, GPC3expression was observed in intracellular lesions as well as in the cell membrane, Furthermore, we showed that HLA-classI was expressed in tumor cells from 90% of ovarian clear cell carcinoma. We showed the validity of GPC3 peputide immunotherapy. We started a phase II clinical trial of the GPC3 derived peptide vaccine for ovarian clear cell adenocarcinoma patients
    63. 子宮内膜癌に対する分子標的療法ー新たに同定したサイクリン A 阻害剤の基礎的検討 The molecular targeted therapy for endometrial cancer; the basicanalysis of novel cyclinA inhibitor 22390310 2010 – 2012 子宮内膜癌 / サイクリン / 抗癌剤感受性 / 分子標的 / MAPK / サイクリンA / 子官内膜癌 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 信州大学 約 1 万種の低分子化合物ライブラリーからをスクリーニングし、サイクリン A 発現阻害活性を有する 5 種の化合物(化合物 A~E)を見出した。各種培養癌細胞株において、これらのうち特に化合物 C が最も強い細胞増殖抑制効果、抗癌剤との相乗効果を示した。さらにこの化合物C はマウスへの腹腔内投与により、皮下移植腫瘍の増大を著明に抑制した。この結果はこの化合物 C が子宮内膜癌に対する有望なリード化合物であることを示すものである。 We found 5 kinds of compound (the compound A ~ E), which had inhibitory activity of cyclinA expression, from a compound’s library including approximately 10,000 kinds of small molecular compound. Of these 5 compounds, the compound C most strongly inhibited the growth of several cancer cells and indicated synergistic effects to cisplatin and paclitaxel. This compound C inhibited the growth of xenograft of HEC1B cell in nude mice.These results suggested that this is a promising compound for novel cyclin A targeted anti-cancer therapy of endometrial carcinoma.
    64. 新たな視点での卵巣がん薬剤耐性化の解明:メタボロミクスの応用とオートファジー解析 The identification of drug resistance in ovarian cancer : new insights form metabolomics and autophagy 22390308 2010-04-01 – 2014-03-31 卵巣がん / 薬剤耐性化 / Rho/ROCK経路 / EGF受容体 / Trabectedin / ハニカム膜 / mTOR / メタボローム解析 / 卵巣癌 / 卵巣明細胞腺癌 / microRNA / 細胞増殖 / 細胞接着 / 卵巣癌幹細胞 / オートファジー / メタボロミクス / 薬剤耐性化機構 / トラベクテジン / AKT-mTORシグナル / 薬剤耐性 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 山形大学 新規抗癌剤Trabectedinが既存の抗癌剤に耐性を示す卵巣明細胞腺癌におけるKey drugであり、これを用いた二剤併用化学療法が卵巣明細胞腺癌に対する有望な化学療法レジメンである事を見出した。現在、Trabectedin併用化学療法の抗腫瘍効果とAutophagyの関係について検討を行っている。さらに我々はWilms’ tumor 1 (WT1)遺伝子の発現と臨床的特性および予後との関連を検討し、WT1 mRNAの発現量が高いと悪性度が増し、さらに無病生存期間が短縮することを明らかにした。 We identified that the anti-tumor activity of trabectedin was greater than any other existing anti-cancer agents, indicating that trabectedin is a promising agent for ovarian clear cell carcinoma (CCC). We also identified that combination treatment with trabectedin and irinotecan or topotecan displays the greatest cytotoxic effect against ovarian CCC. We believe that our studies provide the rationale for future clinical trials of trabectedin-based combination chemotehrapies in patients with ovarian CCC. We are currently investigating the role of autophagy in the sensitivity of CCC cells to trabectedin-based combination chemotherapies. We also identified that high levels of WT1 expression correlated with aggressive clinical features in ovarian cancer. The median disease-free survival time in patients with high WT1 expression levels was significantly shorter (p=0.038) than that in patients with low WT1 expression.
    65. 血中エコール濃度測定を含む症例対照研究による病理組織型別の卵巣癌リスク要因の検討 Assessment of risk factors for ovarian cancer including serum equol concentration by histopathology with a case-control study 22390135 2010 – 2012 卵巣がん / 症例対象研究 / イソフラボン / エコール / ダイゼイン / 業理組織型 / 症例対照研究 / アディポネクチン / インスリン / 病理組織型 公衆衛生学・健康科学 / 社会医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 札幌医科大学 イソフラボン類、Adiponectin、Insulin の血中濃度を測定して、卵巣がんリスクとの関連性を検討した。 2010 年 11 月から 2012 年 7 月までに札幌医科大学附属病院に入院した卵巣がん患者を症例群とし、同病院に入院した主として循環器疾患の患者を対照群とした症例対照研究を行った。Unconditional logistic regression model によって年齢、出産数、BMI を調整して症例群と対照群の比較を行った。症例群 71 人と対照群 80 人に関して多変量解析を行った結果、Daizein の血中濃度が高いことが卵巣がんのリスク低下と有意に関連し(P<0.001)、 Insulin の血中濃度が高いことが卵巣がんのリスク上昇と有意に関連していた(P<0.001) 。卵巣がんの病理組織型では、 serous 、 clearcell 、および、 endometrioid adenocarcinoma において、上記の関連がみられた。 We conducted a case-control study on association of serum components with ovarian cancer (OC) risk. OC cases (N=71) and their controls (N=80) were recruited from inpatients at Sapporo Medical University Hospital. Unconditional logistic regression analysis was used for adjustment of age, number of love-births, and BMI. As a result from the multivariate analysis, serum daizein level was significantly associated with decreased risk of OC (P
    66. 癌幹細胞をターゲットにした新規卵巣癌治療薬の開発 The development of novel therapeutic strategies for targeting ovarian cancer stem cells 21390454 2009 – 2011 上皮性卵巣癌 / 癌幹細胞 / 卵巣表層上皮 / 卵巣癌治療 / 卵巣癌モデル 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 熊本大学 様々な腫瘍組織において自己複製能を有する癌幹細胞とそこから分化した癌細胞からなる階層性の存在が近年明らかにされ、その起源は正常組織内の組織幹細胞あるいは前駆細胞であるという見解が示されている。上皮細胞接着分子(Epithelial cell adhesion molecule : EpCAM)は細胞接着に関与するI型膜タンパクであり、胚性幹細胞や他の正常組織における組織幹細胞との関連性が指摘されている。また、様々な固形癌における癌幹細胞マーカーとしての報告があり、上皮性卵巣癌(卵巣癌)においても予後不良因子として重要である。われわれはこれまでの研究で、マウス卵巣における組織幹細胞の候補マーカーの同定を試みるとともに、同細胞集団に対して遺伝子操作による発癌誘導を行うことで癌幹細胞を頂点とした階層性を有する実験モデルを樹立することに成功した。今回、樹立した卵巣癌幹細胞マウスモデルは、癌化の標的細胞ならびに発癌に関わる分子イベントの解析を可能にし、組織幹細胞ならびに癌幹細胞の包括的な理解、さらには創薬のための実験モデルとしても有用である。将来的には、卵巣癌幹細胞に関与する分子シグナルを標的とした卵巣癌治療への展開が期待される。 Emerging evidence suggests that human cancers arise from normal stem cells, and are composed of hierarchies of cells sustained by tumor-initiating cells(T-ICs), conceptually termed cancer stem cells(CSCs). Epithelial cell adhesion molecule(EpCAM) is a type I transmembrane glycoprotein that is expressed specifically in epithelial tissues and is overexpressed in some epithelial cancers. In normal tissues, EpCAM is expressed in several types of epithelial stem/progenitor cells and contributes to tissue development. On the other hand, a subpopulation of EpCAM-positive cells has been identified as CSCs in some human cancers. In the light of these considerations, we evaluated the EpCAM-positive cells for their stem cell properties in adult mouse ovary, and established the ovarian T-ICs by introduction of defined genetic elements in EpCAM-positive cells. EpCAM-positive cells possess the hallmarks of somatic stem cells and CSCs in this mouse model of ovarian tumorigenesis. Furthermore, our experimental mouse model facilitates further studies toward a comprehensive understanding of normal stem cells and CSCs in ovary. Ultimately, such studies will be imperative to define whether eradication of ovarian CSCs is critical for effective therapy.
    67. 卵巣癌播種性転移における癌細胞”進化”のゲノムワイド解析とその臨床応用 Evolution of ovarian carcinoma cells through peritoneal dissemination ; genome-wide analysis and clinical application. 21390452 2009 – 2011 婦人科腫瘍学 / 卵巣癌 / 播種性転移 / 腫瘍免疫 / TGF-beta経路 / エピジェネティクス / TGFβ / マイクロアレイ / メチル化 / 低分子化合物 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 京都大学 1)卵巣癌細胞39株および、初代培養17サンプルにDNAメチル化阻害剤を添加し、発現マイクロアレイを行うことによって、卵巣癌におけるメチル化遺伝子群を同定した。その解析から、卵巣癌において、TGF-beta経路がゲノムワイドなDNAメチル化によって制御されている事が明らかとなった。2)卵巣癌において、原発巣に比して大網播種性転移巣ではTGF-beta経路の活性が亢進していることを明らかにした。そして、マウスモデルを用いて、TGF-beta阻害剤が卵巣癌の腹膜播種性転移の治療薬になりうることを明らかにした。3)卵巣癌細胞におけるPDL-1発現は、CD8陽性Tリンパ球の活性を抑制して腫瘍免疫からのescapeをもたらし、そのことが卵巣癌の腹膜播種を促進させることを明らかにした。 1) Treatment of 39 ovarian cancer cell lines and 17 primary culture samples with the inhibitor of DNA methylation, followed by expression microarray, identified genes targeted by DNA methylation in ovarian cancer. This analysis revealed TGF-beta signaling pathway is regulated by genome-wide DNA methylation. 2) We found TGF-beta pathway activity is upregulated in the omental metastases of ovarian cancer. Then we demonstrated the inhibitor of TGF-beta signaling pathway is effective against disseminated metastasis of ovarian cancer using a mouse model. 3) We found expression of PDL-1 in ovarian cancer cells suppresses activity of CD8 positive T lymphocytes, causes immune escape, and facilitates peritoneal dissemination of ovarian cancer.
    68. 難治性婦人科がんに対する腫瘍融解ウイルス治療法の開発 Development of oncolytic virotherapy against the refractory gynecologic cancers 21390450 2009 – 2011 テロメラーゼ / 腫瘍融解ウイルス / 難治性がん / 腫瘍可視化 / 末梢血中腫瘍細胞 / 非侵襲性癌診断 / 遺伝子診断 / 先進医療 / Circulating tumor cell / Cancer screening / Telomerase / hTERT / Tumor-lysing virus / Gynecologic Cancer / 婦人科癌 / 卵巣癌 / 遺伝子治療 / 末梢血循環腫瘍細胞 / circulating tumor cells 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 金沢大学 本研究では薬剤抵抗性を示す癌細胞にはテロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルスが有効であることを示した。特に、表面抗原CD117/CD44陽性細胞は高い増殖能を示しプラチナ抵抗性である。この分画の細胞集団にテロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルスの効果をin vitroで検討した。シスプラチン抵抗性癌細胞やヌードマウス腹膜播種モデルでも同様に抗腫瘍効果が観られた。これは融解ウイルスが薬剤抵抗性の難治性癌に有効であることを示唆する。次に、GFP発現型テロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルス(OBP-401)によってGFP発光させ、肉眼的に可視した数個の末梢血液中の腫瘍細胞(CTC : Circulating Tumor Cell)を回収できた。Whole Genome Amplification法にてゲノム増幅後、HPV consensus primerにてPCR・制限酵素反応を行なったところ、原発巣とCTCにおいて同一のHPV-genomeが検出された。本法は様々な腫瘍での応用が可能であり、生検不能な深部病変の診断、治療法決定や癌の早期診断、非侵襲性のがん検診等に有用であると考えられる。 Despite tremendous development in chemotherapy for refractory gynecologic cancers over the past few decades, the prognosis of the advanced cases is still unsatisfactory, and novel treatment modalities are urgent needed. We developed virotherapy for solid tumors using telomerase-specific replication-selective adenoviruses(OBP-301), in which the human telomerase reverse transcriptase(hTERT) gene promoter has been inserted to direct tumor-specific E1 gene expression. In vitro treatment of Ovarian cancer cell with OBP-301 induced significant cell death in dose-dependent manner, although normal cells showed no significant cell death. Xenograft mouse model of ovarian cancer cells showed the improved survival of mice treated with Telomelysin. These findings support the therapeutic potential of virotherapy using oncolytic virus. OBP401 in which GFP gene is driven by the CMV-promotor, selectively replicates only in telomerase-positive cells, and therefore may be a tool for cancer screening. We collected a single cell with GFP from blood samples of cervical cancer patients and detected the same HPV-genotype in both CTC and original cancer tissues. This finding suggests that CTC detecting by OBP401 is the useful non-invasive diagnostic way for cancer screening and early detection of recurrent malignant tumors.
    69. 上皮間葉移行誘導の分子機構解析による上皮性卵巣がんの浸潤・転移の病態解明 Down regulation of antigen presentation pathway plays an important role in metastasis and progression of advanced stage of epithelial ovarian cancer. 21390449 2009 – 2011 卵巣がん / EMT / 抗原提供 / 遺伝子発現プロファイル / 上皮性卵巣がん / 予後予測 / 腫瘍内浸潤リンパ球 / 上皮性卵巣癌 / 分子標的治療薬 / 上皮間葉移行 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 新潟大学 上皮性卵巣がんは近年我が国で増加、毎年1万人が罹患、約6000人が死亡するにもかかわらず、過去20年間治療成績は向上せず、有効な検診制度も確立されていない。進行期上皮性卵巣がん1054例(漿液性腺がん)を用いて遺伝子発現プロファイルによる予後予測を実施、遺伝子発現と予後を比較した結果、抗原提供システムの低下が予後不良群の特徴として観察された。以上の結果は癌免疫療法に組織適合抗原の活性化が必須であることを示唆する。 High-grade serous ovarian cancers are heterogeneous not only in terms of clinical outcome but also at the molecular level. Our aim was to establish a novel risk classification system based on a gene expression signature for predicting overall survival, leading to suggesting novel therapeutic strategies using EMT molecules for high-risk patients. This risk classification based on the gene expression signature is an accurate predictor of clinical outcome in patients with advanced stage high-grade serous ovarian cancer and has the potential to develop new therapeutic strategies for high-grade serous ovarian cancer patients.
    70. 子宮内膜癌化モデルを駆使した内膜癌化機構の解明と新たな分子標的の探索 Identification of molecular mechanisms and the targets using in vitro carcinogenesis model of endometrial cancer. 20390432 2008 – 2010 子宮内膜癌 / 癌化モデル / 分子標的 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 金沢大学 本研究は我々がこれまでに正常子宮内膜上皮細胞より作製した不死化~癌化細胞を用いて内膜癌化の経路を解明し、新たな分子標的を探索することを目的とした。すでに不死化細胞を癌化させることが明らかとなっているK-ras変異導入による癌化の経路を明らかにすることを第一の目的とし、K-ras変異導入細胞ではNF-kBの転写活性化能が亢進していること、NF-kBのDNA結合能が上昇していること、NF-kB活性を阻害するIkBを強制発現すると浸潤能の低下、マウス腫瘍サイズの著明な減少など癌化のphenotypeの減弱が確認された。この結果より、子宮内膜癌のK-ras遺伝子下流ではNF-kBの活性化が起こっており、これが内膜癌化における重要な分子機構であること、K-ras遺伝子変異のある症例におけるNF-kB阻害剤の分子標的治療薬としての有用性が示された。 In the present study, we investigated the molecular targets of KRAS signals using tumorigenic cells with oncogenic KRAS mutation established from TERT-immortalized endometrial epithelial cells. We first confirmed that the Raf-Erk pathway, but not the PI3K-Akt pathway, was activated in KRAS-tumorigenic cells. However, the introduction of constitutively active MEK into immortalized cells to mimic Raf-Erk activation failed to obtain tumorigenic phenotypes, indicating the existence of other carcinogenic pathways triggered by KRAS Recent evidence suggestive of linkage with KRAS signals prompted us to examine the involvement of NF-κB in endometrial carcinogenesis. We found that the DNA binding activity of NF-κB was markedly elevated in KRAS-tumorigenic cells compared to TERT-immortalized cells. Furthermore, the ability of NF-κB to activate the target gene promoters significantly increased in KRAS-tumorigenic cells. Introduction of a mutant IκB that is resistant to degradation and thereby enhances the inhibitory effect on NF-κB largely abrogated the transformed phenotypes of KRAS-tumorigenic cells. Thus, oncogenic KRAS signals contributed to the tumorigenic phenotypes of endometrial cells by activating the transcription function of NF-κB. These findings clearly show that NF-κB activation is a novel target of oncogenic KRAS in endometrial carcinogenesis, implying the potential utility of NF-κB inhibitors for endometrial cancer chemoprevention, especially with KRAS mutation.
    71. 上皮間葉転換誘導因子を標的とする卵巣癌の抗癌剤感受性増強と転移抑制治療法の開発 New strategy for the enhanced chemosensitivity and less metastatic potential of ovarian cancer targeting EMT inducible transcriptional factor 19390427 2007 – 2009 上皮性卵巣癌 / 上皮間葉転換現象 / 転移浸潤 / 抗癌剤耐性 / 卵巣癌 / 上皮間葉転換 / 再発・再燃 / 耐性化 / 抗がん剤 / TGF-β / 転移 / paclitaxel / 上皮間葉転換(EMT) / 腹膜播種 / TWIST / RNA-干渉 / 形態変化 / RNA-i / 薬剤耐性 / タキソール 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 名古屋大学 卵巣癌の転移浸潤における上皮間葉転換(EMT)の意義、特にEMT誘導転写因子TWISTが腹膜播種形成や抗癌剤耐性に促進的な影響を及ぼしていることを明らかにした。さらに、抗癌剤に耐性化した再発・再燃卵巣癌におけるEMT発現と局所環境における転移・浸潤能亢進とのリンクが示された。EMT誘導転写因子を分子標的とすることによって再発あるいは薬剤耐性卵巣癌に対する治療に応用できる可能性が示唆された。 We demonstrated the significance of EMT and EMT inducible transcriptional factor in the metastasis of ovarian cancer. In addition, TWIST, one of the EMT inducible factors positively influenced the formation of peritoneal metastasis or the resistance to anti-neoplastic agents in this tumor. Furthermore, even in the recurrent ovarian cancer we showed the possible link between EMT and increasing local metastatic potential. Our study suggested the EMT inducible factor targeting therapy may lead to a new approach for the treatment of refractory ovarian cancer.
    72. 卵巣癌播種性転移のシグナル経路解析とその抑制物質の探索 Analysis of signaling pathways in peritoneal dissemination of ovarian cancer, which leads to investigation for their suppressor reagents. 19390426 2007 – 2008 卵巣癌 / 播種性転移 / エピジェネティックス / シグナル伝達 / マイクロアレイ / 低分子化合物 / メチル化 / TGFβ / S100A4 / Snail / RhoA / E-cadherin / Hedgehog 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 京都大学 卵巣癌の微小環境によるシグナル分子のエピジェネティックな変化に伴い、HIF-SNAIL-E-cadherin 経路、S100A4-RhoA 経路、Hedgehog 経路、さらにTGFβ経路の活性化が、卵巣癌細胞の播種性転移を促進させることを明らかとした。さらにRhoA、Hedgehog、TGFβの各シグナル経路を阻害する低分子化合物は、卵巣癌播種性転移の治療薬となりうることを明らかにした。]
    73. 網羅的エピゲノム解析技術システムを用いた卵巣癌化機構の解明について Evidence for an epigenetic mechanisms in ovarian cancer by the whole-genome tiling array system. 19390423 2007 – 2009 卵巣癌 / エピジェネティックス / 症例対照研究 / ChIP-on-Chip / DNAメチル化 / インプリント遺伝子 / インプリンティング遺伝子 / 抗メチル化シトシン 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 東北大学 卵巣癌細胞、組織を用い、網羅的なエピジェネティックな修飾の変化(DNAメチル化異常)と病因、病態(年齢、進行期、組織型)について関連性の検討を行ない、癌抑制遺伝子、インプリンティング遺伝子群の早期変異について明らかにした。発症予防の観点から、生活習慣などの環境要因についても検討した。さらに、新規メチル化異常測定系の開発に着手し、その性能評価を行なった。 We examined the epigenetic mechanisms (DNA methylation abnormality) in ovarian cancer by the whole-genome tiling array system and analysed the association between the etiology and conditions of a patient (age, staging, histological type). We found early stage variation for some tumor suppressor genes and imprinted genes. From the viewpoint of onset prevention, we examined the environmental factors, such as meals and life-styles. Furthermore, we developed a novel methylation analysis system, PCR-Luminex methods.
    74. 婦人科腫瘍における細胞接着分子をターゲットとした新規治療の開発と治療戦略の個別化 Developing a novel treatment and an order made therapy for gynecologic cancers targeting cell adhesion molecules 18390451 2006 – 2008 子宮体癌 / 子宮内膜 / 遺伝子治療 / コネキシン / 卵巣癌 / ギャップ結合 / バイスタンダー効果 / ベイスタンダー効果 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 札幌医科大学 初年度はin vitroにおいて子宮内膜癌細胞での細胞間コミュニケーションによるバイスタンダー効果を証明した。さらに性ステロイドホルモンやレチノイドなどを用いてより細胞間コミュニケーションを促進させることによりバイスタンダー効果が増強されるか検証を行った。1. RL-952細胞におけるバイスタンダー効果の発現 HSV-tk遺伝子を導入したRL-952-HSV-tk細胞に対するGCVの添加実験では、20mMと2mMの濃度ではほとんどすべての細胞が96時間後には死滅し、200mMでは75%、20mMでは40%が96時間後に死滅した。以降の実験ではGCVの濃度は200・Mと20・Mで行った。また、RL-952-HSV-tk細胞とRL-952-wildの混合培養にGCVを添加した実験では、フルシートのRL-952-wildにRL-952-HSV-tk細胞を100個、150個、200個、250個と増やしてゆくとそれに比例して死細胞数が増加した。 2. レチノイドがコネキシンの発現に与える影響 al trans-RAの添加実験では、レチノイドが100・Mの濃度でコネキシン26の発現が最も強く認められた。3. in vitroでレチノイド投与がバイスタンダー効果に与える影響 in virtoでの実験を通じて生体内でのバイスタンダー効果の変動と最終的には新しい治療法の開発について研究を進めた。本年度は腹腔内腫瘍の形成と、レチノイド投与によってコネキシンの発現が変動する事を証明した。
    75. 染色体安定性不死化ヒト卵巣表層上皮細胞を用いた卵巣癌実験モデルの作成 An ovarian carcinoma model using immortalized human ovarian surface epithelial cells without chromosomal instability 18390450 2006 – 2008 細胞・組織 / 遺伝子 / 癌 / 上皮性卵巣癌 / 不死化 / 類内膜腺癌 / 明細胞腺癌 / PI3 / Pten / Wnt / β-catenin / k-ras / 不死化ヒト卵巣表層上皮細胞株 / HPV E7 / hTERT導入 / 上皮生卵巣癌 / PI3K / Wint / K-ras 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 熊本大学 上皮性卵巣癌(卵巣癌)の多くは、卵巣表層上皮(OSE)細胞から発生すると考えられているが、このOSEから発癌に至る過程は今なお明らかではない。われわれは、世界で初めてウイルス癌遺伝子を用いない染色体安定性の新規不死化ヒトOSE細胞株(HOSEC)を樹立した。卵巣癌で多く報告されている遺伝子異常をこのHOSECに導入し、免疫不全マウスの腹腔内に移植することで、ヒト卵巣癌を模倣した播種病巣を形成させることができる卵巣癌実験モデルを構築した。この実験モデルは、卵巣癌の発癌機構の解明とともに発癌に関わる分子をターゲットとした新規治療薬の開発を可能とする。
    76. プロモーターマイクロアレイを用いた卵巣癌の薬剤耐性化遺伝子の解析 Analysis of chemo-resistance genes with promoter micro-array in ovarian cancer 18390448 2006 – 2008 卵巣癌 / マイクロアレイ / 薬剤反応性 / シグナル伝達 / トランスレーショナルリサーチ / 癌 / シスプラチン / タキソール / アポトーシス / プロモーターマイクロアレイ / NFkB / SiRNA / IAPファミリー / アデノウイルス 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 大阪医科大学 プロモーター上にがんの浸潤・転移に関与する転写因子NFκBの結合部位を有するプロモーターマイクロアレイを作成し、卵巣癌の薬剤耐性化遺伝子の解析を行った。ヒト卵巣癌細胞株および卵巣癌各症例において、IAPファミリーの数種の遺伝子の関与が明らかとなった。
    77. 子宮体癌の新しい分子標的治療開発のためのp53変異とp63,p73の機能解析 Functional analysis of p53 mutation and p63/p73 for novel molecular targeting therapy of endometrial cancer 18390442 2006 – 2008 婦人科腫瘍学 / 子宮体癌 / p53変異 / 浸潤能 / 運動能 / dominant negative / gain-of-function / 遺伝子変異 / p53がん抑制遺伝子 / 医学 / 悪性腫瘍 / 分子標的治療 / p53癌抑制遺伝子 / 子宮体がん 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 北海道大学 dominant negative (DNE)作用を有するp53変異が体癌の高悪性化を誘導する機序を明らかにするために本研究を行い、以下の結果を得た。野生型p53を有する子宮体癌細胞HHUAに導入したp53DNE変異(R273H)は野生型p53の標的遺伝子であるp21、Bax並びにMDM2のpromoterの転写機能を強く抑制した。更に、HHUA細胞の浸潤能および運動能が促進され、浸潤抑制作用のあるMaspin, PAI-1およびKAI1のmRNA発現が低下した。
    78. 一方、p53 DNE変異(R273H)の発現はp53 null癌細胞の浸潤能および運動能には関与しなかった。すなわちR273Hは、gain-of-function作用ではなく、野生型p53遺伝子の転写機能を阻害し、癌浸潤抑制遺伝子の発現を抑制することで浸潤能および運動能を促進すると考えられた。DNE作用の無いR213Qには浸潤能、運動能促進作用は認められなかった。
    79. 子宮体癌の発癌機構の解明と治療法の開発 Analysis of endometrial cancer development 17390452 2005 – 2007 子宮体癌 / 子宮内膜 / 幹細胞 / 分子標的治療 / エストロゲンレセプター / エストロゲンレセフター 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 九州大学 本研究では、Aホルモン依存性腫瘍としての子宮体癌の発癌機構の解明と治療法の開発、B.幹細胞の発癌機構への関与の観点から、検討を進めた。A.子宮体癌細胞株Hec6,HHUAを用いて解析したところ、MDM2蛋白が過剰発現しており、MEK阻害剤の添加によりMDM2の発現は抑制され、p21が増加し、細胞老化が誘導された。また、MEK阻害剤の効果はERα機能に依存し、in vitro,in vivoで子宮体癌の増殖を抑制するが、その効果は抗エストロゲン剤の併用により増強された。また、MDM2のsiRNAでも増殖能は著明に抑制された。以上の効果は正常子宮内膜ではみられなかったことより、このシグナル経路の阻害は子宮体癌治療への臨床応用が期待される。活性化型K-Rasの造腫瘍能へのPR-Bの抑制機構の分子機序を検討した。PR-Bの過剰発現は、p27の発現を誘導し、GO/G1期集積を起こした。また、cAMPの添加によりPR-Bの発現が増加し、細胞増殖能は抑制された。PR-Bのこの作用には、non-genomic ER活性が関与していた。 B.まず、組織幹細胞の同定に使用されるHoechst33342の取り込みの低い分画の細胞(side population cells,以下SP細胞)を分離する方法を用いて正常子宮内膜幹細胞の同定を試みた。正常子宮内膜細胞には、SP細胞が存在し長期培養により、腺上皮様・間質様構造を示したことより、これらのSP細胞は、前駆あるいは幹細胞様の細胞と考えられた。また、癌の初代培養細胞、子宮体癌細胞株(Hec1)にもSP細胞が存在し、nonSP細胞に比べ間葉系細胞の性質が強くなること、造腫能が亢進することを見いだしている。 1. We previously demonstrated that that the Ras/ER/MDM2 pathway was critical for NIH3T3 cell transformation. In this study, we examined the effect of blocking this pathway on cell growth in gynecologic cancer cells. (1) The MDM2 level was enhanced in cancer cells compared with normal cells. Treatment with MEK inhibitor (U0126) resulted in a reduced MDM2 level, enhanced p53 and p21 levels and inhibited cell growth by the induction of premature senescence. (2) The effect of MEK inhibitor on cell growth was affected by ER levels and functions. Treatment with low-dose MEK inhibitor in combination with anti-estrogen (ICI182,780) had a more inhibitory effect on cell growth compared to treatment with MEK inhibitor or anti-estrogen alone in cancer cells. Down-regulation of the MDM2 level by siRNA resulted in the inhibition of growth in cancer cells. 2. We isolated SP cells from the human endometrium and analyzed their properties. SP cells were present in normal human endometrial cells. Most SP cells were enriched in the CD9-CD13- fraction. These SP cells showed long-term repopulating properties and produced gland(CD9 positive)- and stroma(CD13 positive)-like cells. SP cells in the human endometrium can function as progenitor cells. This is the first report of the phenotype of SP cells from normal human endometrial cells. 3. We determined the correlation between PR-B expression and cell cycle progression. In synchronized NIH3T3 cells, we found an increase in PR-B protein and p27 CDK inhibitor levels in the G0/G1 phase and a reduction due to redistribution in the S and G2/M phases. The decrease in the PR-B levels caused by anti-sense oligomers or siRNA corresponded to the reduction in p27 levels. PR-B overexpression by adenovirus infection induced p27 and suppressed cell growth. Finally, we showed that induction of PR-B involved in the regulation of NIH3T3 cell proliferation was estrogen(E2)/estrogen receptor (ER) independent.
    80. テロメレース特異的癌融解ウイルスによる婦人科腫瘍の遺伝子治療の開発 Establishment of novel cancer therapy using telomerase-specific replication competent adenovirus 17390449 2005 – 2007 ウイルス療法 / 制限増殖型アデノウイルス / hTERTプロモーター / telomerase / hTERT / adenovirus / gene therapy 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 金沢大学 我々は従来から遺伝子治療のベクターとして用いられてきたウイルスの毒性に着目し、ウイルス自らが生体内で増殖複製し、その感染毒性により細胞を死滅させるシステムを模索してきた。また我々はテロメレース触媒サブユニットであるhTERT(Human telomerase reverse transcriptase)遺伝子プロモーターを世界で初めてクローニングし、このプロモーターが癌細胞特異的に活性化されることを報告してきた。本研究ではhTERTプロモーターをアデノウイルスtype5の複製に必要な自己蛋白E1Aの遺伝子の上流に組み込んだ増殖型ウイルス(TRAD: telomerase-specific replication-competent adenovirus)を開発し、in vitroおよびin vivoで腫瘍特異的増殖を確認するとともに、その抗腫瘍効果を明らかにした。TRADの腫瘍への直接注入により明確な造腫瘍抑制効果が認められる一方で、他臓器への毒性は認められなかった。一方でTRADは注入部位より拡散し、血流に乗って遠隔病巣にも到達し得ることが明らかとなった。このことは転移病巣にも有効である可能性を示唆する。またTRADは抗癌剤耐性細胞にも有効であり、さらには既存の抗癌剤との併用で相乗作用を有することも報告してきた。現在このウイルスはOncolys社との共同開発により米国で臨床試験を行っている。 We previously cloned the promoter of human reverse transcriptase (hTERT) gene, a catalytic subunit of human telomerase, which was found to be active only in cancer cells with telomerase activity, while it was silent in most normal cells without telomerase activity. We have planned to insert this promoter into the upstream of the El gene of Adenovirus type 5 genome so that adenovirus El gene is efficiently expressed only in cancer cells. Eventually, this chimera virus can replicate only in cancer cells with high levels of expression of El gene, which is required for viral replication. We named this virus TRAD: telomerase-specific replication adenovirus. In the present project, we examined the in vitro and in vivo efficacy of TARD directly injected into primary site of tumors. We found that TARD was effective to reduce tumor burden without exhibiting any severe adverse effect, such as myelosurpression or liver dysfunction caused by viral toxicity Therefore, we propose the clinical use of this virus.
    81. 子宮内膜癌の診断治療に有効な分子標的の探索 Targeting the molecules useful for the diagnosis and treatment of endometrial cancers 17390448 2005 – 2007 分子発癌機構 / 分子標的 / 子宮内膜癌 / 代替医療 / 予後因子 / 遺伝子治療 / 遺伝子診断 / 遺伝子メチル化 / エピジェネテイック変化 / 早期診断 / テロメラーゼ / K-ras遺伝子 / MEK-ERK 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 金沢大学 子宮内膜癌に発生に絡む蛋白変異を早期に補足し、癌の診断・治療に役立てることが本研究の目的である。人体材料について遺伝子修復に関わる遺伝子群の各種遺伝子プロモーターのメチル化状態を検索した。DNAミスマッチ修復遺伝子(MMR)であるMLH1蛋白は正常内膜組織に発現するが、癌組織や癌周辺部の正常組織にも消失が見られた。これは、正常→MMRのプロモーターメチル化→MMRの機能低下→遺伝子不安定→PTENなどの遺伝子変異→細胞増殖→癌への道程を示し、発癌には多くの遺伝子のメチル化が早期に関与している可能性を示唆した。そこで、すでに正常子宮内膜から樹立に成功している不死化細胞を用いて、発癌に重要な遺伝子群について検討した。正常内膜から発癌へ導く遺伝子変異はRb遺伝子の不活性化、テロメラーゼ酵素の活性化、K-RASシグナルの活性化が必要/充分条件であることが判明した。臨床検体ではテロメラーゼ活性はすべての子宮内膜癌に認められた。リン酸化シグナル経路の活性化を示すリン酸化ERKの発現もすべて癌組織に認められた。これらはリン酸化シグナルの上流に位置するK-RasやBrafの点突然変異とは独立した変化であることが判明した。多くの癌腫に見られるBrafの変異は極めて少なく、K-Rasの変異は下流のリン酸化シグナルとは相関せず、NFkBの転写充進が癌形質の獲得に重要であることが判明した。我々の一連の実験結果は多様な蛋白が分子標的になりうる事を示した。 Endometrial cancer is the second most common gynecological malignancy and its incidence has increased dramatically over the last decade in Japan. Although the surgical and chemotherapeutic treatments for endometrial cancers are well-established, the need for molecular-target therapy has increased, especially for recurrent and/or radio- or chemo-resistant diseases. Thus there is a need for a better understanding of the molecular pathway of endometrial carcinogens. The most frequent genetic abnormalities are mutations in PTEN and ERAS. A PTEN mutation and ERAS mutation activates the PI3K pathway and ERK – MAP pathway, respectively. In the present study using the clinical samples, there is no significant association between KRAS or BRAF and p-ERK1/2 expression. Patients with low expression have a favorable prognosis. Thus, the activation of ERK1/2 occurs in a ERAS and BRAF I dependent manner in endometrial cancer. A High level of p-AKT expression was observed in approximately 60% of endometrial cancers. It occurs independently of both PTEN mutations and PIK3CA mutations. Furthermore, p-AKT expression did not correlated with expression of potential downstream targets such as p-mTOR and/or p TORO 1/3a. The high-expression of p-AKT was strongly associated with ERK. The present study revealed the presence of complex signaling pathways other than the conventional carcinogenic pathway. The molecular targeting for the diagnosis and treatment of endometrial cancers is a long way for the success.
    82. 上皮成長因子(EGF)受容体シグナル伝達経路を分子標的とする卵巣癌化学療法の開発 Study for the development of molecular therapy targeting the signal transduction pathway through epidermal growth factor receptor 17390445 2005 – 2007 卵巣癌 / 分子標的治療 / EGF受容体 / シグナル伝達経路 / 抗癌剤 / EGF受容体(EGFR) / DNA損傷 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 山形大学 ヌードマウスにシスプラチン(CDDP)耐性株であるCaov-3細胞を接種し、その後CDDPとgefitinib(イレッサ)を単独または併用投与する実験において、2剤の併用投与により、1)腹水量、腹腔内腫瘍重量が各薬剤の単独投与に比べて減少し、2)CDDPにより誘導される腫瘍細胞におけるEGFR,ERK,Aktのリン酸化がイレッサの併用により抑制され、3)単独投与に比較し、腫瘍細胞のアポトーシスを増加させたことについてはすでに明らかにしてきた。今年度は当初の計画に加えて、イレッサがCDDPによるDNA損傷からの修復を遅らせる効果があるという報告(Clin Cancer Res 2004)をもとに、この点についてもin vitroにおいて実験を進め、以下の結果を得た。DNAの修復酵素であるDNA-PKの発現を免疫蛍光染色法で検討したところ、CDDP耐性の卵巣癌細胞では、CDDPによりDNA-PKの発現が誘導され、イレッサを併用することにより、その効果が抑制された。イレッサはCDDPが誘導するDNA損傷からの修復を遅延することでもCDDPの抗腫瘍効果を増強することが示唆された。さらに今年度は当初の計画通り、臨床検体を用いた検討を行った。学内の倫理委員会の承認を得た後、卵巣癌患者に十分なinformed consentをとって、(1)抗癌剤投与による腫瘍細胞におけるERK,Aktの発現変化、(2)抗癌剤投与前後のアポトーシスを定量化して、抗癌剤の効果を検討した。抗癌剤投与により、(1)ERKは有意にリン酸化が促進されたが、Aktの活性化には一定の傾向を認めなかった。(2)アポトーシスのマーカーであるカスパーゼ3およびPARPの発現が有意に増加した。これより、臨床検体における抗癌剤の効果には、ERK経路の活性化が関与していることが示唆された。今後、その詳細な機序を検討していく予定である。 Treatment with gefitinib increased the efficacy of the cisplatin-induced inhibition in the intraabdominal dissemination and production of ascites in athymic nude mice inoculated intraperitoneally with cisplatin-resistant Caov-3cells. Immunofluorescent reactivity for phosphorylated EGFR in tumors treated with gefitinib alone and combination of cisplatin + gefitinib was clearly reduced compared with that in tumors treated with vehicle and cisplatin alone. Similar Results were found for the phosphorylation of ERK and Akt. We next investigated the expression of DNA-PK by immunofluorescent staining with anti-DNA-PK antibody. Treatment with cisplatin significantly increased the expression of DNA-PK in nuclei compared with that in tumors treated with vehicle. Treatment with combination of cisplatin + gefitinib significantly reduced the expression of DNA-PK compared with treatment with cisplatin alone. These results suggested that inhibition of DNA repair by gefitinib enhanced the efficacy of cisplatin. Moreover, we investigated the effects of platinum-based chemotherapy on the signaling cascades and apoptosis before and after chemotherapy in patients with ovarian cancers using specimens obtained during surgical procedures. The increase in ERK phosphorylation was more consistent than that of Akt. Increases in apoptotic marker expression were observed in all patients exposed to chemotherapy. Activation of ERK by chemotherapy may be associated with apoptosis of tumor cells in patients with ovarian cancers.
    83. 3次元マイクロアレイシステムを用いた新たな子宮体癌マススクリーニング法の開発 Development of novel mass-screening methods by three-dimension microarray for endometrial cancer 17390444 2005 – 2007 3次元マイクロアレイ / 子宮体癌 / 検診 / マイクロアレイ / マススクリーニング / ミドカイン / 癌 / トランスレーショナルリサーチ / 外科 / 臨床 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 東北大学 本研究は3次元マイクロアレイシステムを用いて精度・感度および迅速性を飛躍的に向上させた子宮体癌の診断法を開発し、微量検体で的確な診断を可能とする新規子宮体癌スクリーニングシステムへの応用を主目的とする。まず我々は手術検体正常子宮内膜および子宮体癌の高分化型(G1)組織と低分化型(G3)組織からmicrodissection法によって正常腺管細胞と癌細胞を分離・回収後、遺伝子数約2万種類を対象とした大規模DNAマイクロアレイ解析を行った。我々はさらにrea1-time PCRを用いてマイクロアレイの妥当性を評価することで、その中から子宮癌のマーカーと成り得る可能性を持つ27の遺伝子を選抜した。我々はこの27遺伝子のmRM量を子宮体癌G1、G3組織および正常内膜組織各10症例において調べ、クラスター解析を行った。本解析は全30検体を癌組織と正常組織の2群に分けた。従って我々は、この27遺伝子に子宮体癌において重要視される既知の10遺伝子を足した37遺伝子を搭載した子宮体癌用カスタムチップ(EM3D)を作製した。癌組織8検体、正常組織4検体のEM3Dにおけるアレイ解析を施行したところ、EM3Dは癌組織と正常組織を異なるクラスターへと分類した。さらに検診への応用の可能性の検討として、健常者3例、癌患者6例の検診検体のRNAの抽出を試み、EM3Dにおけるアレイ解析を行った。本解析結果も健常例と癌例を異なるクラスターへと分類した。現在も組織および検診検体数を増やすべくEM3Dの解析を行っている。一方、我々はこの解析の中で選抜されたミッドカインといったタンパク質がそれ単独で癌マーカーを成り得ることも見出している。EM3Dは、今後得られたデータと臨床病理学的因子との関連性を解析することで、検診のみならず、悪性度診断、薬剤感受性予測、再発・転移予測といった子宮体癌の様々な臨床診断の場において有用な情報提供を担うツールと成る可能性を持つ。 In this study, our final goal is application of three-dimensional Microarray system which is new microarray technology to endometrial cancer (EC) screening. First, we analyzed the altered genes expression in the glandular cell cut out of endometrium (normal) tissue and EC (grade 1 and 3) tissue with laser-capture microdissection using 22K DNA microarray (Agilent). Following that, we evaluated the validity of DNA microarray using real-time PCR, and the results showed that the 27 genes may become the tumor marker in EC. We performed a cluster analysis using mRNA level of selected-27 genes from ten each samples in normal and EC (grade 1 and 3) tissue. The cluster analysis classified total 30 samples into two different groups as normal tissue or EC tissue. Therefore, we produced custom chip (EM3D) fixed DNA probe of selected-27 genes and well-known 10 genes which is important in EC for EC screening. We analyzed the gene expression of EC tissue and normal tissue, 8 samples and 4 samples, respectively, using EM3D. EM3D classified sample distinctly into two groups as EC tissue or normal tissue. Also, to explore application possibility of EM3D for screening, we performed array and cluster analysis using EM3D in total RNA from cytologic 3 normal specimens and 6 EC specimens. EC and normal specimen were classified into two different groups. Now, we have analyzed 37 gene expressions of tissue and cytologic specimen using EM3D to increase the number of the examination. On the other hand, we found that protein such as midkine selected in this analysis may become a tumor marker in cancer. In future by analyzing relationship between data of EM3D and the clinicopathologic factor, M3D may become the method to show important clinical information such as a malignancy diagnosis, a medicine sensitivity prediction, and recurrence and metastasis prediction in EC.
    84. 卵巣癌動物モデル(トランスジェニックマウス)の開発 Development of Animal Models (Transgenic Mice) for Ovarian Cancer 16390477 2004 – 2006 卵巣癌 / 動物モデル / トランスジェニックマウス / 腫瘍発生 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 愛媛大学 本邦における卵巣癌の粗死亡率は年々上昇し続け,この50年間で8倍以上となっている。卵巣癌は早期症状に非常に乏しく,初診時にIII/IV期の進行癌が過半数を占め,silent killerとの別称も存在する。われわれは現在までに種々の成長因子や癌遺伝子(c-src, c-erbB2,IGF-1など)のトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作製・解析してきた。われわれは上皮細胞を標的にしたTgマウスの作製のためのプロモーターとして各種ケラチン(1,5,14)を使用し,これらのマウスにおいて皮膚癌,胆嚢癌,前立腺癌,子宮頸癌などが発生することを明らかにしてきた。しかし,これらのケラチンは卵巣表層上皮には発現が認められず,卵巣癌の動物モデルとはなり得なかった。そこで,本研究においてわれわれは卵巣癌動物モデルの開発を自指した。まず,われわれは卵巣癌動物モデルとしてのTgマウスの作製のために有望なプロモーターの候補を探索した。いくつかの候補のなかからわれわれは最終的にケラチン8(K8)が卵巣表層上皮に特異的に発現していることを見いだすことができた。そこで,K8をプロモーターとして使用した各種発癌関連遺伝子のTgマウスを作製することとした,まず,その前段階として実際にこのK8 constructを使用したTgマウスにおける各種臓器におけるK8パターンを解析するために、K8をプロモーターとしたGFP (green fluorescent protein) Tgマウスを作製した。現在,増殖因子(IGF-1),癌遺伝子(c-erbB2)および転写因子(E2F1)を標的としたTgマウスを作製中である。いまだpreliminaryなdataではあるがerbB2 Tgマウスにおいて卵巣癌の前駆病変と考えられる卵巣表層上皮の乳頭状増殖が観察されており,現在も解析を進めている。 The mortality rate of ovarian cancer in Japan is increasing year by year, and more than 8 times in these 50 years. It is difficult to diagnose ovarian cancer in early stage, because patients with ovarian cancer have no symptoms or just mild symptoms until the disease is in an advanced stage such as stage III/IV and hard to treat. Therefore, ovarian cancer is sometimes called the “”silent killer. Recently, we have established a lot of transgenic mice overexpressing various growth factors or oncogenes, such as TGF-α, c-src, c-erbB2, IGF-1, and E2F1, using specific keratin promoters. These transgenic mice developed various epithelial tomors including skin, prostate, gallbladder and uterine cervix. In these transgenic mice, keratin 1, 5, 14 and loricrin were used as promoters. However, there is no possibilities that these mice were associated with ovarian tumorigenesis, because these promoters of transgenic mice were not expressed in ovarian surface epithelium (OSE). In this study, we aimed at development of animal models for ovarian cancer. First, we explored the promising candidate molecules as a specific promoter for making transgenic mice associated with ovarian tumorigenesis, and found that keratin 8 (K8) was specifically expressed in ovarian surface epithelium. Next, we made K8,GFP (green fluorescent protein) transgenic mice to confirm the distribution and localization of K8 expression. Finally, we attempted to make some transgenic mice, K8.IGF-1 transgenic mice, K8.E2F1 transgenic mice, K8.erbB2 transgenic mice, and K8.src transgenic mice. However these projects are still on going, our preliminary data showed that papillary proliferation of OSE, considered as precursor lesions of ovarian dancer, was observed in erbB2 transgenic mice.
    85. 子宮頚がん発生予防のためのHPVワクチンの開発と臨床応用に関する研究 Study on development of HPV vaccine and the use for prevention of cervical cancer 16390472 2004 – 2006 HPV / ワクチン / 子宮頸癌 / CIN / L2 epitope / メタアナリシス / HPV IgG / 中和抗体 / 液性免疫 / L1-capsids / 細胞性免疫 / コホート / IgG抗体 / CIN消失 / 免疫 / PTEN / 腺癌 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 筑波大学 1.L2エピトープの中でcross-neutralization epitopeを検索するため、HPV16L1L2VLPに結合する10個の合成L2ペプチド(14-20アミノ酸)に対する抗血清を作製した。Anti-P18/38はHPV18を、Anti-P56/75はHPV18,31,58を、anti-P61/75とanti-P61/75とanti-P64/81はHP18とHPV58を、anti-P96/115はHPV31とHPV58を中和した。また、anti-P18/38、anti-56/75、anti-96/115のmixtureはanti-P56/75単独よりも数倍の中和活性を有した。
      2.LIキャプシドにL2エピトープを挿入するため、VLP表面にL2 epitopeが抗原提示されるL1領域を決定した。その過程で、L1およびL2が分化したケラチノサイトでのみ発現され、未分化な細胞で発現が抑制される機構はpre-mRNAがsplicing stepの後のRNA element-mediated mechanismによって破壊されることであることを示した。
      3.HPV16,52,58,6型の蛋白L1に対するIgG抗体測定を行い、HPV L1蛋白に対する液性免疫応答はCIN病変の自然消退と関連しないこと、過去の別の型の感染から得られた獲得免疫は現感染の制御には役立たないことを示した。CIN患者では複数のHPV型に対する抗体を有することが特徴であり、複数のHPV型に感染することにより、排除できないHPV型と出会う機会が増加すると考えられた。
      4.我が国の主要HPV論文のメタアナリシスを行い、とくに発癌リスクの高いHPVタイプは海外とは異なりHPV16/18/31/33/35/52/58の7タイプであることを示した。本邦、韓国、中国を初めとする東アジアでは、HPV16/18陽性が60%とやや低く、HPV31/33/52/58が欧米や他の地域に比べ高頻度であった。世界中の子宮頸がんをワクチンで予防するには、この7タイプにHPV45を加えた8タイプがtargetになることを示した。 1. Neutralizing antibody against HPV L2 can cross-neutralize different HPV types in vitro. To identify the segments containing the cross-neutralization epitopes of HPV16 L2, we characterized antisera (AS) obtained by immunizing two rabbits with each of the ten synthetic peptides of 14 to 20 amino acids (aa) long, which represents a part of the HPV16 L2 sequence from aa 14 to 144. The AS against the peptides bound to HPV16 L1/L2-capsids and neutralized HPV16 pseudovirions. AS against the peptide from aa 18 to 38 (anti-P18/38) cross-neutralized HPV18. Anti-P56/75 cross-neutralized HPV18, 31, and 58. Anti-P61/75 and anti-P64/81 cross-neutralized HPV18 and 58. Anti-P96/115 and the AS induced by a mutant P96/115 cross-neutralized HPV31 and 58. The mixture of equal volumes of three AS, anti-P18/38, anti-P56/75, and anti-mutant P96/115, neutralized HPV16, 18, 31, and 58 more efficiently than anti-P56/75 alone. The cross-neutralization appears to be correlated with conserved aa sequences among HPV types. The data provide a basis for designing vaccine antigens effective against a broader spectrum of the high-risk HPVs.
      2. Production of HPV16 Ll in undifferentiated cells is negatively regulated by several yet unidentified cis-acting inhibitory RNA elements (ELs), among which a major EL is located within the first 514 nucleotides of the Ll-mRNA. By Northern blotting we examined effect of the major EL on the steady-state level of mRNA transiently transcribed in 293T cells from the firefly luciferase (Fluc) gene combined with the Ll DNA fragment encoding the major EL. The EL down-regulated steady-state level of the mRNA. The most efficient down-regulation was achieved by insertion of the EL near the 5′ end of mRNA. The half-life of the mRNA having the EL was similar to that of normal Fluc-mRNA. When the EL near the 5′ end was removed by splicing, the steady-state level of the resultant mRNA was raised to a readily detectable level. It is suggested that DNA region encoding the major inhibitory EL does not disturb transcription and that the pre-mRNA is degraded by an RNA EL-mediated mechanism after the splicing step in the course of mRNA maturation.
    86. ケラチノサイト増殖因子受容体を標的とした卵巣がんの新規分子標的治療薬の開発 Development of new molecular targeted medicine for ovarian cancer 15390512 2003 – 2005 IDO / タキソール / 卵巣がん / 低分子阻害剤 / cDANマイクロアレイ / 卵巣癌 / 卵巣上皮不死化細胞 / cDNAマイクロアレイ / KGF / KGFR / 卵巣上皮不死化細胞株 / cDNAマイクロアレイ解析 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 東京慈恵会医科大学 (1)パクリタキセル(TXL)耐性遺伝子のスクリーニング
      卵巣がん細胞株2008を用いTXL耐性株2株を樹立した。また患者の同意を得て採取された漿液性卵巣がんIIIc期手術検体でTXL不応症例4例およびTXL高感受性症例4例を選別した。全株、全症例よりtotal RNAを抽出し、約33,000遺伝子の発現プロファイリングを行った。Hierarchical clustering解析を行った結果TXL耐性群とTXL感受性群間で有意水準5%で発現差が認められた遺伝子は66種類であった。リアルタイムRT-PCRにより再現性が確認されたのはIDO(lndoleamine-2,3-dioxygenase)遺伝子を含む11種類であった。漿液性卵巣癌III-IV期症例28症例におけるIDO蛋白発現を免疫組織学的に検討し、染色パターンおよび強度を考慮したスコアリングを行った。その結果Kaplan-Meier解析によりスコアと予後に有意差をもって相関が認められた(p=0.0001)。以上よりIDOは漿液性卵巣癌におけるTXL耐性獲得能に関与し、IDO蛋白発現パターンは予後の指標となることが示唆された。
      (2)正常卵巣上皮不死化細胞株および卵巣がん細胞株を用いたトランスフェクションアッセイ
      インフォームドコンセントを得た3例の正常卵巣上皮にSV40Tag, hTERTを導入し、不死化細胞株を樹立した。卵巣細胞株2株とともにKGFR, IDO cDNAセンスをトランスフェクションし、クローンを得た。
      (3)KGFR低分子阻害剤のスクリーニング
      KGFRのkinase Domainを大腸菌・昆虫細胞で発現させ、kinase活性のあるRecombinant proteinを得た。現在約3万種類のKGFR低分子阻害剤のスクリーニング施行し、2種類の低分子がスクリーニングされた。 Purpose : We aimed to find key molecules associated with chemoresistance in ovarian cancer using gene expression profiling as a screening tool. Experimental Design : Using 2 newly established PTX-resistant ovarian cancer cell lines from an original PTX-sensitive cell line and 4 super-sensitive and 4 refractory surgical ovarian cancer specimens from PTX-based chemotherapy, molecules associated with chemoresistance were screened with gene expression profiling arrays containing 39,000 genes. We further analyzed 44 genes that showed significantly different expressions between PTX-sensitive samples and PTX-resistant samples with permutation tests, which were common in cell lines and patients’ tumors. Results : Eight of these genes showed reproducible results with the real time reverse transcriptase polymerase chain reaction, of which indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO) gene expression was the most prominent and consistent. Moreover, by immunohistochemical analysis using a total of 24 serous type ovarian cancer surgical specimens (stage III:n=21,stage IV:n=7) excluding samples used for GeneChip analysis, the Kaplan-Meier survival curve showed a clear relationship between IDO staining patterns and overall survival (log-rank test : P=0.0001). All patients classified as negative survived without relapse. The 50% survival of patients classified as sporadic, focal and diffuse was 41,17 and 11 months, respectively. Conclusion : The IDO screened with the GeneChip was positively associated with PTX resistance and with impaired survival in patients with serous type ovarian cancer.
    87. 卵巣癌のパクリタキセル耐性機序に関わる候補遺伝子の同定と遺伝子治療への応用 Identification of a candidate gene associated with paclitaxel-resistance and application to a gene therapy in ovarian cancer. 15390509 2003 – 2006 パクリタキセル耐性 / 卵巣癌 / cDNAマイクロアレイ法 / β-チュブリン / 薬剤耐性 / パクリタキセル / マイクロアレイ / ヒト卵巣癌 / In vivo樹立薬剤耐性細胞株 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 九州大学 担癌ヌードマウスにパクリタキセルを反復投与することで樹立したin vivo樹立耐性卵巣癌株とin vivoで樹立した対照群との間でcDNAマイクロアレイを行い,発現の異なる遺伝子を解析することでパクリタキセル耐性候補遺伝子の同定を試みた。
      (1)培養中のin vivo樹立パクリタキセル耐性株および対照株よりtotal RNAを抽出し、また(2)耐性株および対照株をマウスに皮下移植して作成した腫瘍塊(OM1TX6TおよびOM1P6T)からもtotal RNAを抽出した。cDNAを精製後、cDNAマイクロアレイ法により癌関連遺伝子の発現プロファイルを、解析(1)、解析(2)のそれぞれについて耐性株および対照株の2群間で比較検討し、耐性株に特異的に発現が亢進または低下している遺伝子の同定を試みた。解析(1)に用いた遺伝子数は9,063であり、耐性株での発現が対象株の2倍以上であった遺伝子数は298であった。また解析(2)に用いた遺伝子数は8,660であり、OM1TX6Tの発現がOM1P6Tの2倍以上であった遺伝子数も同じく298であった。現在、これらの遺伝子の中から実際にパクリタキセル耐性と関連する遺伝子の抽出を進めている。
      一方、タキサン製剤の耐性機序として特にβ-チュブリンアイソタイプのうちのクラスIIIβ-チュブリンの過剰発現との関係が注目されている。卵巣癌摘出標本におけるβ-チュブリンのアイソタイプであるクラスI、II、III、IV(IVa+IVb)の蛋白発現量を免疫組織化学的染色法にて評価して、タキサン製剤を含む化学療法に対する反応性と比較検討した。この結果、タキサンによる化学療法を行った群ではクラスIIIの高発現はprogression free survivalが短い傾向(p=0.081)が認められた一方、タキサン以外の化学療法が行われた群ではこの傾向は認められなかった。これらのことから、タキサンを用いた化学療法群ではクラスIIIの高発現は早期の再発と関連していることが示唆された。 We established an in vivo paclitaxel-resistant cell line from the parental human ovarian cancer cell lines by repeated paclitaxel administration into tumor-bearing mice. We performed cDNA microarrays between in vivo established paclitaxel-resistant cell line and in vivo established control group to identify the target genes associated with paclitaxel-resistancy. Total RNAs were extracted (1) from in vivo established paclitaxel-resistant cell lines and control group, and (2) from tumor blocks (OM1TX6T and OM1P6T)which were made by subcutaneous transplantion of paclitaxel-resistant cells or control cells.
      cDNA were purified and cancer-related gene manifestation profiles which were specifically increased or decreased between two groups were identified. Genes which we used for analysis (1) were 9,063, and the number of the genes which expressed in a resistant cell lines more than double of control cell lines. In addition, genes which we used for analysis (2) were 8,660,and similarly the number of the genes which expressed OM1TX6T more than double of OM1P6T was 298. Now we really push forward extraction of genes related to paclitaxel-resistance from these genes.
      On the other hand, overexpression of class III B-tubulin was attracted attention as mechanism of taxane-resistance. We evaluated protein expression level of class I, II, II, IV (IVa+IVb) isotypes of B-tubulin in an ovarian cancer specimens by immunohistochemical stainig, and examined the association with responce to taxane-containing chemotherapy. As a result, in the goup which had chemotherapy with taxane, high expression of class III isotypes of B-tubulin tend to correlate with short prograssion free survival (p=0.081), while this tendency was not found in the group which had chemotherapy without taxane.
    88. 子宮体癌に特徴的な遺伝子変異に基づいた細胞死誘導機構の解明と癌遺伝子治療への応用 15390508 2003 – 2005 ORF-12 / senescence / apoptosis / HPH-2 / EGLN-1 / HIF-1 / DCC / 子宮体癌 / ORF12 / Sodium butrate / p21 / Netrin 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 九州大学 1)DCCについて
      ヒト子宮体癌細胞株7株をもちいて、全ての株でDCCの正常な発現が失われていることを確認し、Netrin-1存在下でDCCを再発現させると全株でアポトーシスが誘導されることを確認した。また臨床検体30例の検討でも70%程度の症例でDCC発現が消失しておりこれらの症例の予後は相対的に不良であることも判明した。臨床応用の第一歩としてDCC発現アデノウイルスベクターを作製した。引き続きこれを用いて、子宮体癌細胞株とヌードマウスを用いた系で生体内投与の検討を行う。
      2)ORF-12について
      ORF-12はHIF-1プロリン残基水酸化活性をもち、これをとうしてHIF-1の分解を促進する。多くの子宮体癌症例ではHIF-1の発現が亢進しておりその約5分の一にORF-12の異常が見られる(特に肉腫例ではほぼ全例)ことを明らかにした。ヒト子宮体癌細胞株3株を場として(これら全ては、ORF-2に変異を持つ)、正常型ORF-1の再発現はHIF-1蛋白を消失させ、その下流であるVEGFなどの腫瘍増殖促進的に働く多くの遺伝子の活性を低下させることを見いだした。さらにORF-12によるHIF-1の抑制は最終的には、senescenceを誘導し癌細胞死を導くことも明らかとなった。これらの事実をふまえてHIF-1活性阻害剤であるYC-1と17AAGを癌細胞株に添加したところ同様な細胞死の誘導が観察された。ORF-12発現アデノウイルスベクターとともにこれらの薬剤の生体内投与について、特に難治例の肉腫を中心にして今後検討を行う。
      3)p21について
      p21発現アデノウイルスベクターを作製した。これらの癌細胞への感染は、Rb,p16,p53の状態に依存せず低容量感染でsenescenceを、高容量でアポトーシスを誘導することを明らかにした。基礎的検討が終了したのでこれもヌードマウスを場として検討を進める。
    89. 婦人科腫瘍に広がるオキシトシナーゼの新たな展開 New Development of Oxytocinase Study to Spread through Gynecologic Tumors 15390503 2003 – 2005 オキシトシナーゼ / アミノペプチダーゼ / オキシトシン / 子宮内膜癌 / 絨毛細胞 / 転写因子 / 分化 / 浸潤 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 名古屋大学 本研究では、オキシトシナーゼの本体であるPlacental leucine aminopeptidase(P-LAP)と婦人科腫瘍との関わりを明らかにする事を目的とした。
      P-LAP過剰発現子宮内膜癌細胞は、親株に比べ増殖能が亢進している。加えて、患者から得られた子宮内膜癌組織に対するP-LAP免疫染色は、P-LAP染色強度が強いもの程、予後が悪く、P-LAPは独立した強力な予後規定因子であった。同様に、P-LAP発現は子宮内膜癌患者の化学療法への感受性低下にも相関していた。in vitroにおいて、P-LAPの過剰発現導入は、化学療法剤であるパクリタキセルやカルボプラチンへの耐性を誘導する一方、P-LAP発現抑制はこれら化学療法剤の効果を増強した。更に、このP-LAPによる薬剤耐性機構には、ミトコンドリアを介するアポトーシス関連蛋白の発現抑制が関与する事を明らかにした。
      また、P-LAPは卵巣においても、良性腫瘍から、境界悪性、悪性と進行するに連れ、発現頻度が増加する事、併せてP-LAPの共存蛋白であるGLUT4の発現もP-LAPと相関関係にある事を示した。
      絨毛細胞においては、P-LAPが分化した合胞体細胞微に発現する事、その発現には転写因子AP-2とIkarosが関与する事を既に証明していたが、分化依存性のP-LAP発現調節はAP-2ファミリーに属するAP-2αの発現増加に起因する事を明らかにした。この研究を発展させ、AP-2は卵巣癌細胞の浸潤を抑制する事を突き止めたが、特に実験動物においても、AP-2過剰発現卵巣癌を移植された場合は、腹膜播種、腹水量が少なく、生存期間も有意に延長する事を示した。また、浸潤能のあるextra villous trophoblastにはIkarosアイソフォームの中でもIkaros-xが主に発現しており、Ikarosの転写活性能を抑制すると、EVTの遊走能、浸潤能は抑制される事を示した。 Placental leucine aminopeptidase (P-LAP) is the only membrane aminopeptidase known to functionally degrade oxytocin (OT) as oxytocinase. This study aimed to investigate the possible involvement of P-LAP in gynecologic cancers.
      We have shown that P-LAP-transfectant endometrial cancer cells not only partially recovered from OT-induced growth inhibition but also showed a higher growth rate than parental cells under condition without OT. In patients who had strongly positive P-LAP staining in their endometrial endometrioid adenocarcinoma tissues, the disease-free interval was significantly lower than in patients who had negative or weakly positive P-LAP staining. In addition, we have demonstrated that P-LAP expression was associated with chemosensitivity in endometrial carcinoma patients. Also in vitro, overexpression of P-LAP in endometrial carcinoma cells resulted in the chemoresistance to paclitaxel and carboplatin, while P-LAP downregulation enhanced the chemosensitivity, which would be mediated via inhibition of mitochondria-related apoptosis.
      In ovarian tumors, P-LAP expression was increased in order of benign, borderline and malignant tumors, which was co-related with GLUT4 expression.
      In addition to our previous findings that P-LAP is expressed in differentiated syncytiotrophoblasts and that transcriptional factors AP-2 and Ikaros are involved in P-LAP expression, we have found that AP-2α isoform regulated differentiation-dependent expression of P-LAP. We have also demonstrated that AP-2α suppressed invasion of ovarian carcinoma cells in vitro and that nude mice intraperitoneally injected with AP-2α-overexpressing cells survived longer than those with neo-transfected cells. Among the Ikaros isoforms, Ikaros-x was predominantly expressed in extravillous trophoblasts (EVTs) and involved in the migration and invasion of EVTs.
    90. 卵巣癌播種性転移の分子機序の解析に基づく新しい分子標的治療の開発 Development of a new molecular target therapy for ovarian carcinoma based on the analyses of mechanisms for its peritoneal dissemination 15390502 2003 – 2004 卵巣癌 / 播種性転移 / 分子標的治療 / 細胞微小環境 / 低酸素 / E-cadherin / SNAIL / Rho / LPA 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 信州大学 卵巣癌は女性性器に発生する悪性腫瘍のうちで最も予後不良の疾患であり、患者の予後向上のためにはまず卵巣癌細胞の播種性転移に関与する分子を標的とする新しい治療法の開発が必要である。本研究の目的は、卵巣癌の播種性転移の分子機序におけるE-cadherinの発現低下、および低分子量GTP結合蛋白Rhoの役割を解明した上で、これらの分子をターゲットとした新しい分子標的治療法の開発を行うことにある。
      卵巣癌細胞が腹腔内へ播種性に転移する過程で癌細胞は低酸素環境に対する適応能力を獲得し、低酸素環境そのものが癌の進展に関与する可能性がある。そこで、低酸素という環境因子に着目して検討したところ、低酸素は転写抑制因子であるSnailの発現を介して接着因子E-Cadherin発現を低下させ、その結果として癌細胞の原発巣からの遊離を促進していることが明らかとなった。また、細胞の運動・遊走能に関与する低分子量GTP結合蛋白質Rho(A,B,C)のmRNAおよび蛋白発現を卵巣癌で解析したところ、早期癌よりも進行癌で発現が高く、さらに原発巣よりも播種性転移巣で発現が有意に亢進していた。さらに、卵巣癌培養細胞においてRho発現を亢進させるとin vitro浸潤能およびin vivo播種性転移能が増強し、逆に抑制すると浸潤能も低下するという事実を初めて見出した。以上より、Rhoは卵巣癌転移治療の分子標的候補としてきわめて有力である。ヌードマウスモデルを用いて、Rho活性化を抑制するstatinを経口投与したところ、播種性転移を若干抑制するというpreliminaryはデータも得られ、このRhoを分子標的とする新しい卵巣癌治療をさらに確立していく必要がある。 Ovarian carcinoma is the leading cause of gynecological cancer death. The poor prognosis for patients with ovarian cancer is related with peritoneal dissemination ; a metastatic process in which cancer cells detach from the primary tumor, attach to the peritoneum, and re-grow at the site. The objective of this study is to develop a new molecular target therapy, based on the analyses of the molecular mechanisms of peritoneal dissemination of ovarian cancer cells.
      In the metastatic process, since cancer cells become independent from the blood supply and exposed to hypoxia, we focused on the hypoxic environment and. Ovarian cancer cells in the tip of papillary projection actually expressed HIF-1 alpha, being associated with reduced expression of E-cadherin. In vitro experiment indicated that hypoxia attenuates the expression of E-cadherin via up-regulation of SNAIL that is a repressor of E-cadherin promotor, and also increases the invasive capacity. These findings suggest that hypoxia plays an important role in the dissemination of ovarian cancer cells in the primary lesion.
      In the metastaic sites, we focused on the small GTPase RhoA, that is the candidate of common pathway from various growth signals from the ascites. The expression of RhoA was significantly higher in the peritoneal dissemination than in the primary lesion. Up-regulation and activation of Rho by treatment with lysophospahtidic acid (LPA) increased the invasiveness of cancer cells, and treatment with C3 exoenzyme, a specific inhibitor of Rho, reversed the effect of LPA treatment. Ex vivo model using nude mice showed that peritoneal dissemination was more prominent in ovarian cancer cells expressing Rho constitutively. In addition, our preliminary study showed that oral administration of statins, potential inhibitor of Rho activation, suppressed the peritoneal dissemination of ovarian cancer cells. These findings indicate that RhoA is a good molecular target in the new therapy for peritoneal dissemination of ovarian carcinoma.
    91. テロメレースをターゲットにした新たな分子標的薬剤の開発と婦人科癌への臨床応用 Establishment of novel molecular cancer therapy targeting telomerase and its clinical appication to gynecologic tumors 15390501 2003 – 2004 hTERT / telomerase / telomere / siRNA / gene therapy / cervical cancer / テロメレース / テロメア / RNA i / 子宮頚癌 / 分子標的治療 産婦人科学 / 外科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 金沢大学 テロメレースをターゲットとした分子標的治療を開発するための基礎的研究として我々はRNA interferenceの技術を応用してテロメレース触媒サブユニットhTERTのノックダウンを試みた。ハーバード大学ダナファーバー研究所の解析ソフトを用いた共同研究によりhTERT発現を強力に抑制するsi-RNAを作製することに成功した。このsiRNAをレトロウイルスの系により子宮頚癌細胞株に導入し、hTERT発現を安定的に減弱もしくは消失している細胞クローンを回収することに成功した。これらのクローンはテロメア長の短縮およびテロメア3’overhang長の短縮を認め、40-60回の分裂の後にsenescenceを迎えた。興味あることにこれらの細胞は培養初期から増殖能が著明に減弱し、軟寒天培地でのコロニー形成能やヌードマウスでの造腫瘍能が減弱していた。hTERTのノックダウンによりsenescenceとは別個の機構でこれらの悪性形質が阻害されていることを示す興味深い成績である。さらにこれらの細胞は放射線感受性が著明に亢進し、またDNA-stand breakを来す抗癌剤の感受性も増強していた。HTERTのDNA修復過程における新たな作用を示唆する成績と考えており、その分子機構についてさらに検討を進めている。これらの成績はテロメレース阻害剤を臨床応用する際に極めて有用な情報を与えるものと考えている。 Telomerase activation plays critical roles in tumor growth and progression in part through the maintenance of telomere structure. Indeed, the ubiquitous expression of telomerase in human cancers makes telomerase a promising target for cancer therapy. Genetic, pharmacologic and antisense methods to inhibit telomerase have been described ; however, in most cases, cancer cell death was observed only after many cell divisions. Here, using retroviral delivery of small interfering RHAs specific for the human telomerase reverse transcriptase (hTERT), we successfully inhibited telomerase activity in cervical cancer cell lines. Cells lacking hTERT expression exhibited significantly decreased telomerase activity and showed shortened telomeres and telomeric 3′-overhangs with passage. These cells entered the replicative senescence after considerable number of cell divisions. Notably, the proliferative rate of these cells was significantly impaired, compared to control cells with telomerase activity, even in low passage cells (PD 5). Likewise, colony-forming ability and tumorgenicity in mice were attenuated in low passage cells lacking hTERT. We further examined the effects of chemotherapy and ionizing radiation of cells in which hTERT expression is suppressed. Cells lacking hTERT showed a significantly increased sensitivity than control cells to ionizing radiation or chemotherapeutic agents that induce DNA double strand breaks, such as topoisomerase inhibitors or bleomycin. These findings suggest that a siRNA-based strategy can be applied to the development of novel telomerase inhibitors, whose anti-tumor effects may be enhanced in combination with ionizing radiation and chemotherapy.
    92. 婦人科癌をターゲットにした新たな遺伝子治療の戦略 Establishment of novel gene therapy targeting gynecologic tumors 13557138 2001 – 2002 テロメレース / 遺伝子治療 / hTERT / hTR / 婦人科癌 / 癌 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 金沢大学 我々は細胞の不死化過程に関わるとされるテロメレースをターゲットにした遺伝子治療の戦略をたて、これを婦人科癌の遺伝子治療に応用することを試みた。まずテロメレースの構成成分であるhuman telomerase RNA(hTR)をターゲットとしてこれに対するantisense DNAを合成し、その5’端に2-5Adenylate(以下2-5A)を付加したキメラ合成DNAによる癌の遺伝子治療の基礎実験を試みた。2-5AはRNAse Lのactivatorであり、antisense sequenceによって会合したtarget RNAをRNAse Lの活性化により分解することが期待される。子宮頚癌細胞であるME180 cellに2-5A anti-hTRをlipofectionにより導入し、hTRの発現を観察したところ、hTRは25-48時間で効率的に分解された。さらにテロメレース活性もそれに引き続いて低下し、細胞増殖も抑制された。細胞増殖抑制の原因としてflow cytometryの解析によりアポトーシスが誘導されていることが判明した。現在アポトーシス誘導機構の解析を行うとともに、動物実験でのin vivoの効果についても検討中である。
      また我々はテロメレースの酵素活性を担うhuman telomerase reverse transcriptase(hTERT)のプロモーターをクローニングし、これが極めて癌特異性が高いことを報告してきたが、このプロモーターを様々なアポトーシス誘導遺伝子とともにベクターに組み込み、in vitroおよびin vivoでの癌増殖抑制効果を検討した結果、本プロモーターを組み込んだベクターが極めて癌特異性の高い治療用ベクターをなり得ることが確認された。 We established novel methods that inhibit telomerase activity in cancer cells using 2-5Adenylate-linked antisense DNA against human telomerase RNA component (hTR). This antisense DNA effectively blocked telomerase activity in cervical cancer ME180 cells. Growth of ME180 cells in vitro was significantly inhibited by the treatment with 2-5A anti-hTR. Surprisingly, inhibition of cell growth was observed in 24-48 hr after treatment, quite earlier than expected. Telomere length was not shortened in this short period. These findings suggest that blockade of telomerase led to cell growth inhibition via telomere-independent mechanisms. We confirmed that growth inhibition of cells by the treatment with 2-5A anti-hTR was due to induction of apoptosis. The further anaylsis of mechanisms how 2-5A anti-hTR induces apoptosis is on going.
      We also established novel vector system for cancer gene therapy. We previously cloned promoter of human telomerase reverse transcriptase (hTERT), which is highly specific to cancer cells. We thus used this promoter for cancer-specific gene expression in gene delivery system. Various apoptosis-inducible genes, such as caspase-8 and FADD, were combined with hTERT promoter and used as vectors for cancer gene therapy. Introduction of these vectors effectively induced apoptosis of cancer cells but of surrounding normal tissues.
    93. 遺伝子変異メチル化の定量的検出法の開発と子宮内膜癌発生予知への臨床応用 Detection of the hypennethylation of MLH1 promoter and its clinical application in endometrial cancer screening 13557137 2001 – 2003 子宮体癌 / 早期発見 / 分子標的 / テイラーメイド癌検診 / DNA修復遺伝子 / MLH1 / テロメラーゼ / エピジェネティック変化 / DNAメチル化 / MLH1遺伝子 / 子宮内膜癌 / hMLH1遺伝子 / プロモーターのメチル化 / 遺伝子診療 / PTEN遺伝子 / 癌リスク因子 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 金沢大学 子宮体癌の発生には遺伝子不安定性(MSI : microsatellite instability)がハブ機能を有すると考えられる。MSI状態に導く遺伝子はDNAミスマッチ修復遺伝子の機能障害である。DNA修復遺伝子の機能障害は体癌ではMLH1の発現異常が重要で、MLH1蛋白発現の低下は遺伝子の変異ではなくプロモーターの過剰なメチル化が原因である。メチル化の検出にはmethylation specific PCR法およびbisulfite sequence法を用いた。これによるとMLH1の蛋白発現はプロモーターのCpGに富む領域のメチル化と極めて高い相関を示した。体癌組織の約30%の症例に80%以上の、50%以上の症例に10%以上のCpG領域でのメチル化が見られた。正常内膜ではメチル化は皆無であったが、過剰メチル化のある体癌周辺の正常内膜組織では約30%に過剰なメチル化が進行していた。内膜増殖症でも癌と同じ程度にメチル化がみられた。MLH1の過剰メチル化症例ではMSI及びTGF- βReceptor typeIIやPTENのフレームシフト変異が有為に高率であった。更に蛋白発現をみると癌周囲の正常内膜にも蛋白の消失が見られ,内膜の形態変化よりも早期にMLH1プロモーターのメチル化が進行すると考えられた。従って、MLHIプロモーターは発癌の過程では最も早期に起こる変化であると言える。このようなエピジェネチック変化を、特に子宮体癌ではMLHIプロモーターのメチル化を早期診断やリスク因子選別のための分子標的として捕らえることができる。MSIの結果として生じるPTEN, TGF-β-RII、p53、Ras等の遺伝子変異や発現も分子標的としてDNAチップなどで網羅的に検出し癌の診断に応用可能である。これらを総合的に診断することにより高リスクの個人や癌の早期診断に臨床応用の可能性が示された。その他の、癌の早期発見の分子標的としてテロメラーゼ活性も期待が持てる。すなわち、テロメラーゼ活性が95%以上の癌細胞に認められ、微量検体にて子宮体癌や頚部癌の診断に臨床応用可能である。癌の診断や術後の経過観察の腫瘍マーカー分子としても臨床応用可能である。 Silencing of the MLH1 gene by promoter hypermethylation is the main mechanism underlying the microsatellite instability(MSI) phenotype in endometrial cancers. MSI has a key role in the endometrial carcinogesis where mutations of multiple genes have involved.
      We have developed the convenient and sensitive method for the detection of promoter hypermethylation in the region 700bp upstream of MLH1 covering 48 CpG sites. The metylation of these sites has been confirmed by bisulfate sequencing. Metylation status was classified as full(over 80% of CpGs are methylated), partial(10-80%) or nonmethylation(less than 10%). Of endometrial cancers examined, 30% were fully methylated, 25% were partially methylated and 45% were not methylated. Analysis of MLH1 by immunohistochemical methods and of MSI revealed that the degree, rather than region-specific methylation of CpG island is critical for decreased MLH1 expression and the MSI phenotype. Among patients with methylated cancers, almost half patients have contained methylated promoters in their normal endometria with profiles similar to those of cancerous lesions, and these were closely associated with the MSI phenotype. In contrast, only a few cases of normal endometria from patients without endometrial malignancies harbored methylated promoters. The present study suggests that hypermetylation of the MLH1 promoter is frequent in the histologically-cofirmed normal endometrium adjacent to cancerous lesions, supporting the notion that hypermethylation of DNA-mismatch repair genes is the initial step that triggers the following various genetic events in the endometrial carcinogenesis. Of course, the genetic events could be candidates for molecular targets in the diagnosis and treatment.
      Detection of some molecular targets in a tiny clinical sample might be a useful diagnostic aid in cancer screening.
    94. 卵巣癌の細胞環境解析に基づく腹腔内播種性転移の分子機構に関する研究 Molecular mechanisms of peritoneal dissemination of ovarian cancer cell, based on the analysis of its microenvironment 13470349 2001 – 2002 卵巣癌 / 播種性転移 / 細胞環境 / 低酸素 / E-cadherin / HIF-1α / Rho / マイクロアレイ / 接着因子 / 血管新生 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 信州大学 卵巣癌は女性性器の悪性腫瘍のうち最も死亡率が高く、その要因は腹腔内播種性転移という進展形式にある。そこで、本研究は(1)播種性転移の細胞環境を解析し、(2)播種性転移の遺伝子発現をcDNAマイクロアレイ解析により比較し、(3)それらに基づいて卵巣癌細胞の増殖、接着、浸潤、血管新生に関してin vitroおよびin vivoモデル解析を行うことで、卵巣癌の腹腔内播種性転移の分子機構を解明することを目的とした。
      卵巣癌細胞をとりまく環境を腫瘍内溶液や腹水のpHやガス分圧などから検討し、また卵巣癌組織において低酸素で誘導されるhypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)の発現が乳頭状に突出する癌細胞の核内に認められ、さらに、この部位で細胞接着因子E-cadherinの発現が消失していた。そこで、卵巣癌培養細胞を用いて低酸素下の遺伝子発現変化をcDNAマイクロアレイにて探索したところ、E-cadeherinの発現が減少しており、これがWestern-blot、Northern-blotにより確認され、播種性転移の最初のステップに低酸素による接着因子発現の低下が重要な役割を演じていることが判明した。
      次に、播種性転移におけるras類似のGTP結合蛋白Rhoの役割を解析した。RhoのmRNAおよび蛋白発現は良性腫瘍に比して癌で有意に高く、さらに癌の原発巣よりも転移巣で亢進していた。さらにin vitroで卵巣癌細胞をlyosphosphatidic acid(LPA)で刺激するとRho発現の亢進および活性化が認められ、これに伴って浸潤能が亢進した。この浸潤能亢進はRho阻害剤のC3 exoenzymeの添加で抑制された。また、卵巣癌細胞にstableにRhoを発現するベクターを導入したところ、この細胞はヌードマウスにおける播種性転移巣形成が著しく亢進した。以上より、卵巣癌の播種性転移にはRhoが深く関与しており、Rhoは新しい卵巣癌治療の分子標的となりうると考えられる。 Ovarian carcinoma is the leading cause of gynecological cancer death. The poor prognosis for patients with ovarian cancer is related with peritoneal dissemination; a metastatic process in which cancer cells detach from the primary tumor, attach to the peritoneum, and re-grow at the site. The objective of this study is to explore the molecular mechanisms of peritoneal dissemination of ovarian cancer cells, based on the analysis of the microenvironment of disseminating cancer cells.
      Analysis of pH, pO2 and pCO2 of malignant ascitic or ovarian tumor fluids disclosed hypoxic environment of ovarian cancer cells. In addition, immunohistochemical study on the expression and hypoxia-inducible factor-1 alpha (HIF-1 alpha) showed that HIF-1 alpha is localized in the nuclei of tumor cells at the periphery of papillary projection. These findings indicate that ovarian cancer cells are exposed to hypoxia at the initial step of peritoneal dissemination.
      cDNA microarray analysis demonstrated that hypoxia down-regulates the expression of cell adhesion molecules, E-cadherin and beta-catenin, in ovarian cancer cells. In ovarian carcinoma tissues, the tumor cells positive for HIF-1 alpha tended to lose E-cadherin expression. Northern blot and Western blot analyses also showed that hypoxia attenuates the expression of E-cadherin in ovarian cancer cells, via up-regulation of SNAL, a transcriptional represser of E-cadherin. Therefore, it is likely that hypoxic microenvironment plays an important role in the attenuation of cell adhesion and transformation into “”metastatic phenotype”” of cancer cells.
      Our study on the expression of ras-related GTPases Rho in epithelial ovarian tumors revealed that it was elevated in ovarian carcinomas compared with benign tumors. In addition, its expression at mRNA and protein levels was significantly higher in the peritoneal dissemination than in the primary lesion. Up-regulation and activation of Rho by treatment with lysophospahtidic acid (LPA) increased the in vitro invasiveness of ovarian cancer cells, and treatment with C3 exoenzyme, a specific inhibitor of Rho, reversed the effect of LPA treatment. Ex vivo model using nude mice showed that peritoneal dissemination was more prominent in ovarian cancer cells expressing Rho constitutively. These findings indicate that up-regulation of Rho is essential in the tumor progression of ovarian carcinoma, and will be a molecular target in the future therapy.
    95. 子宮体癌細胞に発現するフコシル化糖鎖を指標とした新たな診断法の開発と実用化 Development of New Diagnostic Methods to Recognize the Fucosylated Carbohydrate Chains Expressed by Endometrial Cancer Cells and Clinical Applications 12557140 2000 – 2001 子宮体癌 / 細胞診 / Thin Prep / 酵素免疫測定法(EmC-EIA) / 頸管腺細胞 / EmC-EIA / MSN-1 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 慶應義塾大学 子宮体癌(以下「体癌」と略)における細胞診の判定は必ずしも容易ではなく、疑陽性例増加の一因となっている。そこで我々は、子宮体部より採取される細胞診検体を、モノレイヤー標本作製装置であるThin Prepを応用して処理した検体を用いて、体癌に特異的に発現する糖鎖抗原(SN-Ag)を標的とした酵素免疫測定法(EmC-EIA)を新たに開発し、体癌の補助診断法としての有用性を、手術検体、臨床検体を用いて検討した。手術時採取した体癌44例(G1:32例、G2:5例、G3:5例)、正常内膜10例の細胞診検体をThin Prepを利用してフィルター膜に吸着させ、細胞分散媒溶液に浸し、攪拌後、超音波破砕器により微小細胞断片化したものを測定検体とした。検体中のSN-Ag量の測定は、SN-Agと特異的に反応するモノクローナル抗体MSN-1を用いたSandwich EIAにより行い、SN-Ag量が測定できたものを陽性検体とした。体癌44例におけるEmC-EIAの陽性率は72.7%(G1:75.0%,G2:80.0%,G3:40.0%)であり、正常内膜12例の0%に比べ高い陽性率を示した。手術検体は、直視下で検体採取が行える為、検体への他の細胞の混入や、目的細胞の採り落としがないことから、手術検体において体癌例で正常例に比べ高い陽性率を示したこと、正常例で偽陽性率が0%であったことは、本EmC-EIAが細胞検体のSN-Ag量を正確に測定していることを示唆する結果と考えられた。また、臨床検体137例(体癌36例、内膜増殖症17例、正常内膜84例)の内、体癌例におけるEmC-EIAの陽性率は69.4%(G1:73.1%,G2:60.0%,G3:60.0%)であり、陽性率は手術検体とほぼ同じで、G1体癌で特に高い陽性率を示した。一方、正常内膜84例における陽性率は15.5%であり、手術検体に比べ偽陽性率の上昇を認めた。偽陽性例における検討より、内膜細胞採取時における頸管腺細胞の混入がその原因と考えられた。また、内膜増殖症17例の陽性率は35.3%と体癌と正常内膜の間であった。以上の検討より、本EmC-EIA法は細胞検体のSN-Ag量を測定するAssay法としてすぐれており、検体が正しく子宮腔内より採取されれば、体癌、特に細胞診判定に苦慮することがまれではない高分化型体癌おいて、細胞診の補助診断法として臨床応用可能であると考えられた。 Cytologic diagnosis of endometrial cancers often presents with difficult morphologic interpretations and thus may lead to false positive diagnoses. This current study was carried out with the goal to develop a new enzyme immunoassay (EmC-EIA) that targets the carbohydrate antigen (SN-Ag) expressed specifically by endometrial cancers. Cytological specimens obtained from endometrial samplings were processed by the monolayer specimen-preparation apparatus “Thin Prep”. The usefulness of this method as an ancillary diagnostic method for endometrial cancer was evaluated on both surgical and clinical specimens. A total of 44 cases of endometrial cancer were obtained at surgery (G1: 32 cases, G2: 5 cases, G3: 5 cases), in addition to10 normal endometrial specimens. Specimens were prepared by adhering the cytological specimens on the filter membrane by “Thin Prep”, immersing the specimens in cell dissociation buffer, and after shaking, micro-fractionating the samples by ultrasonographic sonicator. SN-Ag amount in the samples was determined by Sandwich EIA using the monoclonal antibody MSN-1 that specifically detects SN-Ag. Samples in which SN-Ag could be detected were determined to be positive samples. 72.7% (G1: 75.0%, G2: 80.0%, G3: 40.0%) of endometrial cancer specimens were positive by EmC-EIA compared to a 0% positive rate in 12 normal endometrial specimens. Surgical specimens, obtained under direct observation, included only the intended cancer tissue and did not include surrounding normal tissue or other cell types. These results were reflected as a high positive rate among endometrial specimens compared to normal endometrial specimens and as a false positive rate of 0% in the normal endometrial specimens and demonstrated that our EmC-EIA method is able to accurately measure the SN-Ag amount in cytological specimens. Furthermore, a positive rate of 69.4% by EmC-EIA was detected in endometrial specimens (G1: 7311% G2: 60.0%, G3: 60.0%), with a high positive rate detected among G1 cases, from among 137 clinical specimens and was similar to the positive rate’s demonstrated with surgical specimens. On the other hand, a positive rate of 15.5% was observed with 84 cases of normal endometrial specimens and showed an increase in the false positive rate compared to surgical specimens. Careful reinterpretation of these false positive cases showed that this was due to inclusion of cervical gland cells in the endometrial cytology specimens. A positive rate of 35.3% was observed with 17 cases of adenomyosis; this is between the positive rate observed for endometrial cancer and normal endometrium specimens. Thus our results demonstrate that our EmC-EIA assay is able to accurately measure SN-Ag amount in cytological specimens. Our results also demonstrate that with proper sampling of the endometrial cavity, this method would serve as an ancillary diagnostic method and would be clinically applicable in the evaluation of cytological specimens for endometrial cancers, especially highly differentiated endometrial cancers that often present with difficult differential diagnoses.
    96. 検診・治療システム確立を目指した家族性卵巣癌関連遺伝子分離・解析に関する研究 The isolation and characterization of novel susceptibility gene for familial ovarian cancer. 12557135 2000 – 2001 家族性卵巣癌 / BRCA1 / BRCA2 / 相関連鎖解析 / 卵巣癌 / 家族発生 / 家族性卵巣がん / 連鎖解析 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 新潟大学 BRCA1変異40家系のうち、24種の変異型を認め、そのうちT307Aを7家系、C2919Tを8家系に認め、ハプロタイプ解析からも本邦のcommon founder mutationと考えられた。BRCA2における5種の変異型はすべてProtein truncationであった。BRCA1あるいはBRCA2の変異を認めた家系の頻度は、卵巣癌家系では43.6%(24/55)、乳癌卵巣癌家系では77.8%(21/27)、全体の卵巣癌家系での頻度は54.9%(45/82)であった。BRCA1、2遺伝子に異常が認められなかった家系28家系を対象に、X染色体を含む全染色体領域を網羅した410個のマイクロサテライトマーカー(平均距離9.0cM)を用いてPCR(Polymerase Chain Reactioh)を施行した結果、multipoint analysisにてNPL scoreが2.0以上を示した領域は、3p22-25項域(NPL=2.7、L0D=3.5)、17p12-13領域(NPL=2.1、LOD=0.6)であった。同領域において高密度なマイクロサテライトマーカーを設定し、twopoint analysisを行い、連鎖の確認を行ったところ、17p12-13領域でP-valueが0.05以下を示したのは、スクリーニングに用いた2マーカーのみであったが、3p22-25領域においては同領域19cM内の11マーカーでP-valueが0.05以下を示し、連鎖の存在が確認された。3p22-25領域を新規原因遺伝子の候補領域と考え、同領域内に設定した高密度なマーカーによるLOH解析を行った。その結果、同領域内にて解析した27マーカーすべてにおいて30%以上、うち13マーカーでは50%を越える頻度で遺伝子欠失が確認され、癌抑制遺伝子の存在が示唆された。 We analyzed genetic alterations in BRCA1 and BRCA2 genes among 82 ovarian cancer families in Japan. Using a direct sequencing method, 45 out of the 82 ovarian cancer families were found to carry BRCA1 or BRCA2 germline mutations (40 with BRCA1 and 5 with BRCA2). In 24 independent mutations of BRCA1, five recurrent mutations were found and two of them, the T307A and C2919T mutations, were detected in 7 and 8 independent families, respectively. In addition, 18 mutations of BRCA1 and 4 mutations of BRCA2 have never been described previously. There was a significantly higher proportion of tumors with serous adenocarcinoma and of cases of advanced stages in the BRCA1 or BRCA2 cases than those of the controls. On the other hand, there were no differences of mean age at diagnosis between patients with BRCA1 or BRCA2 mutation and those of the controls. Our results indicate that the T307A and C2919T mutations of BRCA1 appear to be common founder mutations unique to the Japanese population. We performed genome-wide linkage analysis in 58 patients and 9 unaffected members among 28 families with no mutation in BRCA1 or BRCA2 employing a set of 410 microsatellite markers. We initially screened the whole genome including the X-chromosome by a nonparametric method using the GENEHUNTER program. As a result, chromosome 3p22-25 showed a suggestive score for linkage (LOD = 3.49 and NPL = 2.77 at D3S3611) based on a multipoint analysis. It was observed that the frequency of LOH was more than 50% only in tumor tissues from patients with no mutation in BRCA1 or BRCA2 but not in those with BRCA1 mutation at 4 markers in this region.
    97. 子宮体癌発生の分子機構及び分子標的療法の開発 Molecular mechanism of endometrial carcinoma development and their application for the new molecular target therapy 12470344 2000 – 2001 Endometrial cancer / tumor suppressor gene / chromosome 1q42 / Ras / ERα / p53 / Cell senescence / MDM2 / Chromosome 1 / Endometrium / K-Ras / H-Ras 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 九州大学 1.1番染色体上の子宮体癌抑制遺伝子の単離:子宮体癌抑制遺伝子は1q42領域内に存在すると推定した。本領域内にはORF12、HUBCEP70、ENST27746の3遺伝子が存在する。このため、子宮体癌細胞へこれら3遺伝子cDNAをトランスフェクトし、表現型の変化を解析している。2.子宮体癌細胞におけるRasシグナルの役割:我々はエストロゲンリセプターα(ERα)はRas下流に位置し、活性化[12Val]K-Rasにより機能亢進が誘導され、NIH3T3細胞形質転換に関与することを明らかにした。活性化[12Val]K-Ras発現は完全に形質転換し、造腫瘍性も保持していた。K12V細胞でERドミナント・ネガティブ変異体(DNER)を発現したところ、細胞老化が誘導された。NIH3T3細胞はP14^両側アリルを欠失している。本条件下におけるDNER発現は、MDM2発現抑制-p53蛋白安定化-p21発現誘導の原因となっていた。K12V細胞にDNER及びc-fosの強制発現系を樹立したところMDM2発現の回復-p53蛋白の発現抑制が示された。さらにNIH3T3細胞へERαをトランスフェクトしたところ(ER細胞)、MDM2発現亢進-p53蛋白の量の低下が招来された。以上の結果からP14^欠除下において、ERαはc-fosを介したシグナルによりMDM2発現を亢進し、p53不安定化を導くことを初めて明らかにした。 1. We have identified the 1q42 region as an endometrial cancer suppressor gene locus. Three kinds of genes (ORF12, HUBCEP 70 and ENST27746) are involved in this region. Now, we are investigating the tumor suppressor function of these genes by the transfection into endometrial cancer cell lines. 2.a. Both K-and H-Ras mediated proliferative signals in Rat endometrial cells(RENT4). However, K-Ras elicited the apoptosis through activating MAPK and in turn, H-Ras protected RENT4 from apoptosis. The data suggest that each Ras protein has distint function. b. ERα functions downstream of K-Ras. Expression of activated [12Val] K-Ras resulted in the NIH3T3 cell (K12V cells) transformation through activating ERα activity as a transcription factor. Dominant-negative ERα expression in K12V cells resulted in cell growth suppression and subsequent cell senescence induction. p21 upregulation through DNERα-MDM2-p53 signalling corresponded this cell senescence induction. ERα expression in NIH3T3 cells contributed to the upregulation of MDM2 through c-Jun. These data implicate the signalling from ERα to p53, regulating cell senescence in NIH3T3 cells. c. NaB(Sodium Butyrate) elicited G0/G1 arrest and subsequent senescence through p53-independent p21 upregulation in endometrial and ovarian cancer with intact pRb protein. In contrast, NaB arrested cervical cancer cells with pRb both at G0/G1 and G2/M phase and induced cell senescence. ECM and its receptors upregulated in senescence cancer cells in response to NaB.
    98. 子宮内膜癌におけるプロGnRHおよびGnRHII分泌の分子機構と機能 Alternative gonadotropin-releasing hormone I and II processing products secreted from endometrial carcinoma 12470340 2000 – 2003 子宮内膜癌 / アポトーシス / Ser / Thrホスファターゼ / GnRH II / GnRH / GnRH受容体 / プロGnRH II / リゾポスファチジン酸 / (1-5)GnRH / 卵巣癌 / 酵素の細胞内再分布 / エンドペプチダーゼ / プロセッシング異常 / プレGnRH / ウエスタンブロッティング 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 岐阜大学 ゴナドトロピン放出因子(GnRH)アナログはGnRH受容体陽性腫瘍に作用し,増殖抑制作用を発揮する。これらの腫瘍ではGnRH様ペプチドも産生されており,腫瘍増殖におけるGnRHのオートクリン的な多様作用が注目されていた。本研究によって,
      1)内膜癌組織内ではGnRHの産生・分解系が高まっていること,
      2)GnRHアナログ刺激によって,GnRHを(1-5)GnRHと(6-10)GnRHに分解する加水分解酵素が1.5倍に亢進することが明らかになった。
      また,リゾホスファチジン酸(LPA)はこのような腫瘍細胞の増殖を促進することが知られている。
      本研究はさらに,
      1)LPAの分解は脱リン酸化反応つまりphosphatase活性によること,
      2)このLPA分解は形質膜でなされること,
      3)GnRHIによるGnRH受容体の活性化に伴ってLPAの分解が亢進すること,
      4)GnRHII,(1-5)GnRH,(6-10)GnRHはこのような作用を有しないことを明らかにした。
      つまり,GnRHはLPAの分解を促進し,その増殖促進効果を遮断することが示唆された。ところが,GnRHIIやGnRHの分解産物がGnRH受容体に結合しても,LPAの分解シグナルには伝達されなかった。
      以上より,内膜癌細胞のGnRH受容体が活性化されると,GnRHの分解が亢進しGnRHの増殖抑制という細胞増殖調節機構が破綻することが示された。GnRH刺激に伴うこのGnRH代謝障害が,GnRH受容体の抗増殖シグナルに関与しているのかもしれない。 Gonadotropin-releasing hormone (GnRH) receptor is demonstrated in uterine endometrial carcinoma. The endometrial carcinoma also produces GnRH or -like peptide, which prompted us to examine whether the intratumoral ‘GnRH’ serves as natural ligand for its receptor. Endometrial carcinomas surgically removed had been screened for GnRH receptor expression before analysis. The ‘GnRH’ in endometrial carcinoma cell-enriched culture media was characterized by immunoblots in tricine-supplied electrophoresis system and subsequent amino acid sequencing. Three major proteins of 10.0kDa,7.6kDa and 1.1kDa corresponding to pre-proGnRH, proGnRH and decapeptide GnRH, respectively, were detected in all of ten endometrial carcinoma specimens tested. Immunoreactive ‘GnRH’ contents in the culture media, assessed by RIA, ranged from 0.08 to 0.1nM. In chorionic cells-conditioned media, only 1.1-kDa protein was detected. Endometrial carcinoma cells secrete alternative GnRH processing products in addition to natural GnRH. The GnRH variants may compete with mature GnRH at the level of its receptors, perhaps counteracting GnRH signaling pathway to retard cell proliferation.
    99. 卵巣癌に対するテロメレース活性中心hTERT遺伝子プロモーターを用いた遺伝子治療 Gene therapy against ovarian cancers using hTERT promoter 12470339 2000 – 2002 テロメア / テロメラーゼ / 卵巣癌 / 遺伝子治療 / 集学的治療 / hTERT / 癌治療 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 金沢大学 (1)hTERT・プロモーターの下流にアポトーシス誘導遺伝子の発現ベクターを組み込んだベクター(hTERT/caspase-8)を作製し、婦人科癌株化細胞に感染させるとがん細胞にアポトーシスが生じる。しかし、hTERT/caspase-8ではアポトーシスは癌細胞にのみ生じるが正常細胞には生じない。hTERT/caspase-8で治療すると癌細胞のみに効果が発現し、遺伝子治療の副作用軽減をはかれることを示した。
      (2)更に簡便性と安全性の高いBAVS(binary adenovirus system)を開発した。アポトーシス誘導遺伝子であるBaxはAd/GT-Bax発現ベクターを使うとGV-16により強力に活性化される。このことから、GV-16がhTERTプロモーターで癌細胞にのみ発現するベクターを使った一次システム(Ad/hTERT-GV16)に加えてGV-16で活性化されるAd/GT-Baxベクターを同時感染させる。この二段構えのシステムはより強力に正常細胞には障害なく癌細胞のみにアポトーシスを誘導した。
      (3)生体免疫能の増強策としてケモカインの一つである単球走化因子(MCP-1)の発現を増強させる系を開発した。癌細胞へのMCP-1遺伝子導入により細胞障害性T細胞が誘導されると同時に樹状細胞の集積が認められ、腫瘍の増殖が抑制された。さらに、シスプラチンを微量併用投与すると相乗効果が得られることを示した。 Telomerase activation has been observed in almost 90% of human cancers but not normal tissues of somatic origin. The recent research on the transcriptional regulation of hTERT promoter identified several factors, including c-Myc, SP1 and E2, which critically regulate promoter activity. The present study is based on the idea that the hTERT promoter can confer strong tumor-specific transgene expression, minimizing toxicity to normal cells, compared to the universal promoters. The following results were obtained from the present study.
      1) In vitro and in vivo administration of chimeric vectors in which hTERT promoter is linked to apoptosis-inducing genes, such as Caspase, FADD or Bax successfully induce apoptosis in cancer cells with damaging normal cell.
      2) The binary adenovirus system using two vectors, Ad/GT-BAX and Ad/hTERT-GV16 augmented the anti tumor-efficacy.
      3) The transfection of the vector designed to drive MCP-1 gene by hTERT promoter induced the expression of MCP-1 more extensively, compare to CMV-promoter. The multidisciplinary treatment of therapeutic vectors with MCP-1 gene and cisplatin suppressed significantly tumor growth in vivo.
    100. 卵巣癌のアポトーシス抑制機序の解析に基づく新しい遺伝子治療法の開発 Development of novel gene therapy based on the analysis of anti-apoptotic signals in ovarian cancer 11470347 1999 – 2000 卵巣癌 / アポトーシス / 遺伝子治療 / アデノウイルス / ゴナドトロピン / IGF-1 / p53 / Bax 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 信州大学 本研究の目的は、卵巣癌細胞における外因性および内因性のアポトーシス抑制シグナルを解明し、これを解除するような新しい遺伝子治療を開発することにある。外因性機序として卵巣癌発生に重要な役割を果たすゴナドトロピンに着目した。卵巣癌細胞およびその組織発生起源である卵巣表層上皮細胞はゴナドトロピンであるLH/hCGの受容体を発現し、hCGはinsulin-like growth factor-1(IGF-1)の発現亢進を誘導し、このIGF-1がシスプラチンによるアポトーシスを抑制することが明らかとなった。そこで、IGF-1アンチセンスRNA発現アデノウイルスを作成し、これをin vitroで添加するとhCGによるアポトーシス抑制を解除することができ、シスプラチン感受性が回復した。次に、内因性機序として、卵巣癌の半数に存在するp53遺伝子異常とp53の下流のアポトーシス促進因子Bax発現をみると、p53異常がBax発現の異常をきたし、シスプラチン抵抗性をもたらしていることが明らかとなった。そこで、Bax発現アデノウイルスを開発し、これをin vitro、in vivoで用いたところ、Bax発現およびアポトーシスを誘導することができ、シスプラチン耐性の卵巣癌細胞にも有効であった。また、Bax発現アデノウイルスはシスプラチンとの併用により相加効果が認められた。以上より、アポトーシス抑制に関与する遺伝子を標的とした遺伝子治療は制癌剤耐性の卵巣癌細胞に有効であることが示され、臨床応用の可能性が展望される。 Among the gynecological malignant tumors, ovarian carcinoma is most frequently associated with chemoresistance and poor prognosis of the patients. The effect of chemotherapy with various anti-cancer agents including cisplatin is shown to be mediated by intracellular apoptotic signals. Anti-apoptotic factors, either extrinsic or intrinsic, may influence the chemotherapeutic effect, and may result in the chemoresistance of ovarian cancer cells. Therefore, the objective of our study is to analyze the anti-apoptotic signals in ovarian carcinoma cells, and to develop novel gene therapy targeting these anti-apoptotic signals.
      Our study demonstrated that an approximately half of ovarian carcinomas expressed LH/hCG receptor at both mRNA and protein levels. In ovarian cancer cell line OVCAR3 expressing LH/hCG receptors, hCG inhibited cisplatin-induced apoptosis via up-regulation of IGF-1. IGF-1 also inhibited cisplatin-induced apoptosis and a neutralizing antibody to IGF-1 receptor restored the apoptosis. Wortmannin, an inhibitor of phosphatidyl inositol 3-kinase, blocked the anti-apoptotic effect of IGF-1. Therefore, gonadotropin is an important extrinsic factor of anti-apoptotic signal in ovarian cancer cell. Treatment with recombinant adenovirus expressing anti-sense IGF-1 mRNA was effective for restoring the cisplatin-induced apoptosis.
      Abnormality of p53 tumor suppressor gene is present in more than half of ovarian carcinomas. Pro-apoptotic bax gene is under the regulation of p53, and p53 abnormality resulted in chemoresistance as an intrinsic anti-apototic factor. In vitro, Bax protein expression was attenuated in cisplatin-resistant cell lines such as A2780/cDDP (p53 mutated) and SKOV3 (p53 deleted), compared with cisplatin-sensitive A2780 (p53 wild type). We developed recombinant adenovirus which highly expresses the Bax protein. The Bax protein was successfully induced by treatment with the Bax/adenovirus transfer, and apoptotic effect was obtained in the cisplatin-resistant ovarian cancer cells. Therefore, adenovirus-mediated introduction of Bax may be a useful gene thrapy in the treatment of chemoresistant ovarian carcinomas.
    101. 子宮体癌増加要因の解析と予防の可能性に向けての疫学的・分子生物学的研究 11470343 1999 – 2001 子宮体癌 / 10番染色体 / 癌抑制遺伝子 / PTEN遺伝子 / hBRAG遺伝子 / 疫学 / 高危険因子 / BRAG遺伝子 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 東北大学 本研究の最終目的はヒト染色体のすべてを対象として、子宮体癌における染色体欠失領域および遺伝子不安定性の原因の1つであるDNAミスマッチ修復異常とDNAレブリケーションエラー(RFR)をテストすることにより検索し、欠失領域の詳細な地図を作製すること、および近年増加傾向の著しい子宮体癌のわが国における新たな高危険因子を抽出し、分子疫学的手法という研究分野を確立することである
      我々は、多数の子宮体癌の手術症例を用い、第10番染色体長腕のq25-q26領域が子宮体癌の高分化癌で高頻度に欠失していることを見出し、詳細に欠失地図を作製したところ、D10S209とD10S216の間に約8CM、D10S217とD10S590の間に約12CMの共通欠失領域を認めた。次に酵母人工染色体(YAC)を用いて詳細に解析したところ、共通欠失領域は790kbのYACにより完全にカバーされていた。さらに、これらのYACからコスミドコンティングを作成し、得られたクローンを用いて、FISH法を行い詳しく解析したところ、共通欠失領域は100kbという極めて狭い範囲に限局された。そしてこの領域内に存在するhBRAG遺伝子を候補遺伝子の1つとして検索したが関連は薄いことがわかった。
      また、疫学的研究については患者の同意を得てまたプライバシーの保護に充分留意し、種々の項目(年齢、身体状況、居住地、職歴、教育歴、閉経状態、月経状態、婚姻歴、初婚年齢、妊娠、出産歴、ホルモン補充療法、不妊歴、授乳歴、生活面、および過去5年間の食物摂取頻度調査、既往歴、避妊歴、体型、喫煙歴、合併症)につき症例1:対照2のアンケート調査(症例対照研究)を行い、各々のオッズ比を算出し新たな高危険因子の抽出にとりかかった。
    102. ヒト乳癌、子宮内膜癌における腫瘍組織局所でのエストロゲン合成調節機構の解明 The analysis of intratumoral estrogen metabolism and production in human breast and endometrial carcinoma 11470047 1999 – 2001 乳癌 / 子宮内膜癌 / エストロゲン / アンドロゲン / プロゲステロン / ステロイド代謝 / レチノイド / 受容体 / steroid sulfatase / estrone sulfotransferase / 5α-reductase / 17水酸化ステロイド脱水素酵素 / 子宮内膜増殖症 / レチノイド受容体 / エストロゲン受容体 / プロゲステロン受容体 人体病理学 / 病理 / 医学 基盤研究(B) 東北大学 我々は生物学的活性の高いestradiol(E1)と低いestorone(E2)との相互転換に関与する17β-HSD1型、2型の発現、活性をヒト乳癌由来の培養細胞株であるT-47DならびにMCF-7、ヒト子宮内膜癌由来の培養細胞株RL95-2を含む種々の培養細胞株で検討した。T47D細胞では発現、活性共に17β-HSD1型が、RL95-2細胞では逆に17β-HSD2型が認められることを明らかにした。又実際のヒト乳癌(178例)、子宮内膜癌(102例)でも同様の傾向が見られる事を確認した。これらの結果から同じ性ステロイド依存性腫瘍であっても乳癌細胞と内膜癌細胞とではエストロゲン代謝動態が異なる事が示された。更にこれらの酵素の発現、活性がレチノイド、プロゲステロンが制御している事を明らかにした。そこでレチノイドの受容体であるRXRα、β、γ、RARα、β、γ,プロゲステロンの受容体であるPRA, PRBの発現動態を子宮内膜及び乳腺の病変に関して検討し、レチノイド及びプロゲステロンは実際のヒト子宮内膜癌、乳癌における腫瘍内のエストロゲン産生代謝動態においても重要な役割を果たしている事が考えられた。更に我々は腫瘍局所での性ステロイドの代謝動態を検討する為に、不活型ステロイドであるestrone sulfate(ES)をE1に変換するsteroid sulfatase (STS), E1をESに代謝するestrone sulfotransferase (EST)、testosterone(T)をより強力なandrogen(A)活性を有する5α-dihydrotestosterone(DHT)に変換する5α-reductase(RT)を乳癌症例で検討した。STS陽性乳癌は腫瘍径が大きい傾向があり、有為に再発しやすい傾向がみられた。一方ESTは多変量解析の結果、ESTはリンパ節転移とともに独立した予後因子であることが明らかとなった。これらの事から、ヒト浸潤性乳管癌ではestrogen供給がSTSやESTによって制御されており、両者は乳癌の再発予後に関する重要な因子であることが示唆された。一方5α-RT1及び2は各々58%,15%の症例において癌細胞質に陽性像を認め、ヒト浸潤性乳管癌では5α-RT1が多くの症例で癌細胞に発現し、局所におけるDHTの産生や作用に関与していると考えられた。 We have studied intratumoral metabolism and production of estrogens and its biological significance in estrogen dependent neoplasms including human endometrial and breast carcinoma. We first studied the activity and expression of 17β-hydroxysteroid dehydrogenase (HSD) type 1 and 2, involved in the interconversion of estrone and estrodiol. In human breast carcinoma, 17βHSD1 is dominant in both actual carcinoma cases (178 cases) and cell lines derived from breast cancer whereas in human endometrial carcinoma, 17βHSD2 is dominant in both actual carcinoma cases (102 cases) and its cell lines. These results suggest that intratumoral estrogen metabolism and actions is different between human endometrial and breast carcinoma despite the presence of estrogen receptor. We further demonstrated that the expression and activity of these enzymes are regulated by retinoids and progesterones. These results suggest the importance of these as regulators of intratumoral metabolism in these estrogen dependent neoplasms. Therefore, we then examined the expression of retinoid receptors (RAR α β and γ, RXR α β and γ) and progesterone receptors A and B in these tumors. We demonstrated that the presence of these receptors may play important roles in regulation of intratumoral 17β HSDs in human breast and endometrial carcinoma. Other important enzymes involved in intratumoral estrogen metabolism are estrogen sulfatase (STS) and estrogen sulfotransferase (EST). We therefore examined the expression of these two important enzymes in human breast carcinoma. The presence of STS in tumor was significantly associated with large tumor diameters and recurrence but that of EST exerts beneficial effects on the clinical outcome of the patients. The presence of EST turned out to be an independent prognostic factors of breast cancers.
    103. 薬剤耐性卵巣癌に対するGn-RHアゴニスト治療についての検討 The antiproliferative effect of GnRH agonists and the mechanism of the resistance to cisplatin in human ovarian cancer cell line 10557147 1998 – 2000 GnRHアゴニスト / シスプラチン / 耐性 / 卵巣癌 / MAP kinase / ERK / JNK / G1期停止 / DNA損傷 / ヒト卵巣癌 / トランスプラチン / c-Jun / 耐性化 / 燐酸化 / GnRH / 増殖抑制 / GnRH受容体 / MEK inhibitor / SOS 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 大阪大学 卵巣癌の予後を改善するために手術、化学療法以外の新たな治療法の開発とそのkey drugであるシスプラチンの耐性化機構を解明する事を目的とした。GnRH受容体が発現しシスプラチン耐性である事を確認したヒト卵巣癌の細胞株Caov-3細胞において、GnRHアゴニストは細胞増殖抑制効果を示した。GnRHアゴニストは下垂体ゴナドトロフ腫瘍細胞では細胞の増殖、分化、ダメージ等の生物反応の種々の現象に関与しているMAP kinase familyの一つであるERKを一過性に活性化するが、Caov-3細胞では持続的に活性化し、さらにGnRHアゴニストはretinoblastoma proteinをリン酸化し細胞周期をG1期に停止させた。また、MAP kinase pathwayの特異的な阻害剤であるMAP kinase kinase(MEK)inhibitor PD98059はGnRHアゴニストによるretinoblastoma proteinリン酸化及び細胞増殖抑制効果を抑制した。以上よりGnRHアゴニストによる持続的なERK活性化は、シスプラチン耐性であるCaov-3細胞をG1期に停止させ抗腫瘍効果を示す事を明らかにした。次に、DNA損傷ならびにアポトーシスのシグナル伝達経路として重要な機能を果たしていると考えられているMAP kinase familyの一つであるJNKが、シスプラチン耐性を示すメカニズムの一端を担っていると報告されている事に着目し、シスプラチン耐性であるヒト卵巣癌の細胞株Caov-3細胞においてJNKがいかなる生理作用を担っているかを検討した。シスプラチンはJNK及びERKを異なったkineticsで活性化し、JNK活性を抑制するためにc-JunのJNKによる燐酸化部分を消失した遺伝子(dominant negative c-Jun)導入もしくはMAP kinase pathwayの特異的な阻害剤であるPD98059投与によりシスプラチン耐性性が解除された。以上より、シスプラチンによるJNK及びERK活性化は耐性獲得に関与している事を明らかにした。 Although gonadotropin-releasing hormone agonists (GnRHa) have been used in the therapy of the endocrine-dependent cancers, their biological mechanism remained obscure. We have studied the roles of mitogen-activated protein kinase (MAPK) family in the antiproliferative effect of GnRHa on the cisplatin resistant Caov-3 human ovarian cancer cell line. Reverse-transcriptase PCR assays confirmed mRNA for GnRH receptor in Caov-3 cells. In the presence of 1 μM GnRHa, the proliferation of cells was significantly reduced to 76% of controls after 24 h and the effect was sustained up to 4 days. Although GnRHa had no effect on the activation of the Jun N-terminal kinase (JNK), treatment of Caov-3 cells with GnRHa activated extracellular signal-regulated protein kinase (ERK) and its effect was more than that induced by GnRH.Activation of ERK by GnRHa occurred within 5 min, with the maximum at 3 h and sustained until 24 h. To examine the role of ERK cascade in the antiproliferative effect of GnRHa, PD98059, an inhibitor of MEK, was used. This inhibitor canceled the antiproliferative effect of GnRHa and apparently reversed the GnRH-induced dephosphorylation of the retinoblastoma protein (pRb), whose hyperphosphorylation is a hallmark of G1-S transition in the cell cycle. These results provide evidence that GnRHa stimulation of ERK activity may play an important role in the antiproliferative effect of GnRHa in the Caov-3 human ovarian cancer cell line. Next, we have studied the roles of JNK and ERK cascade in both the cisplatin resistant Caov-3 and sensitive A2780 human ovarian cancer cell lines. Treatment of both Caov-3 and A2780 cells with cisplatin but not the transplatin isomer activates JNK and ERK.Activation of JNK by cisplatin occurred at 30 min, reached a plateau at 3 h, and declined thereafter, whereas activation of ERK by cisplatin showed a biphasic pattern (peaks at 30 min and 3 h), indicating the different time frame. Activation of JNK by cisplatin was maximal at 1000 μM, whereas activation of ERK was maximal at 100 μM and was less at higher concentrations, indicating the different dose-dependency. Exogenous expression of dominant negative c-Jun (dnJun) in both Caov-3 cells, which are highly resistant to cisplatin (IC50=380±25 μM), and A2780 cells, which are sensitive to cisplatin (IC50=84±4 μM), decreased viability following treatment with cisplatin : the IC50 for cisplatin was 7.6-and 4.2-fold less in dnJun expressing Caov-3 and A2780 cells, respectively. We further examined the role of ERK cascade on the viability following cisplatin treatment using PD98059. The treatment by this compound induced sensitivity to cisplatin, but not to transplatin, leading to a 9.7-and 1.8-fold less IC50 for cisplatin in Caov-3 and A2780 cells, respectively. Our findings suggest that cisplatin-induced DNA damage differentially activates JNK and ERK cascades and inhibition of either of these cascades sensitizes ovarian cancer cells to cisplatin.
    104. 膵癌,子宮内膜癌に対する遺伝子治療法の開発 Towards establishment of gene therapy for human pancreatic and endometrial cancers 10557026 1998 – 1999 アデノウイルスベクター / SMAD4遺伝子 / PTEN遺伝子 / 膵癌 / 子宮内膜癌 / アデノウィルスベクター / 癌抑制遺伝子 / 遺伝子導入 / DNAミスマッチ修復異常 / DUSP6遺伝子 実験病理学 / 病理 / 医学 基盤研究(B) 東北大学 1.前年度,膵の発癌過程において18qの欠失が初期変化であると考えられることを報告したが,本年度は,遺伝子治療の試みとして,同領域のSMAD4遺伝子がホモ欠失している複数の膵癌細胞株に正常SMAD4遣伝子をアデノウイルスベクターを用いて導入した。ところが,いずれの細胞株においてもSMAD4蛋白の発現は同定できたが,増殖能は全く抑制されなかった。これらの事実を考え合わせると,単一の遺伝子異常が発がんの初期変化であり,かつ予後不良因子である可能性も否定できないが,18qにはSMAD4遺伝子以外にもがん抑制遺伝子が局在する可能性が高いものと考えられる。 2.子宮内膜癌では,前年度までに高頻度にPTEN遺伝子の異常が見られること,また,この異常が初期変化であることを明らかにしたが,今年度は,PTEN遺伝子を用いた遺伝子治療を試みた。PTEN遺伝子のtwo-hitの異常がある複数の子宮内膜癌細胞株にアデノウイルスベクターを用いて正常PTEN遺伝子を導入したところ,PTEN蛋白の発現が同定できた。さらに,腫瘍細胞の増殖抑制がin vitroで確認できた。これらの細胞株をヌードマウスに移植し,アデノウイルスベクターを用いた実験的遺伝子治療を試みたが,腫瘍縮小効果は見られなかった。これらの事実は,PTEN遺伝子を用いた遺伝子治療の臨床応用に向けて,さらに一工夫を要することを示している。 1.Among regions of frequent chromosomal aberrations, loss of three chromosomal regions, 12q, 17p, and 18q, associated with poor prognosis in human pancreatic cancer. Adenoviral mediated delivery of the SMAD4 gene in pancreatic cancer cell lines with homozygous deletion of SMAD4 did not show any suppression of cell growth. We previously reported that, loss of 18q is an early event in pancreatic carcinogenesis. There is a possibility that mutation of the SMAD4 gene is responsible for the initial step of pancreatic carcinogenesis as well as prognosis defining factor. However, there is a possibility of unknown tumor suppressor gene on 18q that is distinct from SMAD4. 2.We and others previously reported frequent somatic mutation of the PTEN gene in endometrial cancer. We attempted a trial of gene therapy by adenovirus mediated introduction of this gene in endometrial cancer cell lines with two-hit mutation of this gene. The trial was successful in vitro, and apoptosis was induced in tumor cells after introduction of normal copy of PTEN. However, the attempt was not successful in vivo. These results suggested that the PTEN gene is a good candidate for gene therapy in human endometrial cancer after appropriate improvement.
    105. 子宮体癌における腫瘍ワクチン開発の基礎的研究(副題:c-erb-B2をコードするfusion geneを含んだplasmid DNAを用いた腫瘍ワクチンの開発) A Basic Study for Tumor Vaccine Development in Human Endometrial Adenocarcinoma-development of tumor vaccination with plasmid DNA containing fusion gene encoding c-erbB2 protein 10470349 1998 – 2000 DNAワクチン / c-erb-B2 / DNA ワクチン / c-erbB2 / cerbB-2 / C-erbB-2 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 日本大学 平成10、11年度実績報告に記載したように、当初予定した領域のc-erb-B2 plasmid DNAがimmunoantigenとして充分ではなかったため、平成12年度は他のgenomic DNAの領域について検討を行った。現在までに数個のconstructを得たが、いずれもそのimmunoantigen活性は弱く、十分なimmunoantigenとなり得る領域の同定には至らず、vaccinationの基礎実験に用いるc-erb-B2plasmid DNAの作成は完了できず、今後の課題となった。
      一方我々は本科研費の援助を受け、アクチンフィラメントー細胞膜結合に関与する蛋白ezrinが子宮体癌の浸潤・転移に関与することを国内外で初めて見い出し報告した(K.Ohtani,et al.,Cancer let.144:1-8,1999)。Ezrin antisenseは低転移性および高転移性子宮体癌の浸潤のみを特異的に抑制し、細胞増殖には影響を与えなかった。またezrinは、マウスのmethylcholanthren誘発肉腫のtumor-associatedtransplantation antigenであることも同定されており、以上よりezrinが子宮体癌の浸潤や転移に関与するtumor antigenとして作用する可能性が示唆された。そのため平成12年度は、前述のごとくc-erb-B2のplasmid DNAの作成が困難であったことより、c-erbB2と同様の方法を用いてimmunoantigenとなり得るezrin plasmid DNAの作成を試みた。現在までにezrin全領域およびアクチン結合領域であるC末端領域をcodeするplasmid DNAを得ることができたが、fusion proteinの発現やimmunoantigen活性については現在検討中であり、今後の課題となった。 We have previously reported that a 185 kDa transmenbrane glycoprotein (p185) coded by c-erbB2 is involved in the invasion and metastasis of human endometrial adenocarcinoma. In this study, we investigated the immunogen activity of plasmid DNAs encoding human c-erbB2 protein in order to evaluate the possibility of using the c-erbB2 gene as an immunogen for tumor vaccination in endometrial adenocarcinoma. The plasmid coding the full-length (pCMV-ferbB2) or the several lengths of the promoter regions of human c-erbB2 was constructed by initially cloning with pCR Bluescript SK(+) vector, and then transferring it into pcDNA3 vector. Expression of c-erbB2 protein was tested by in vitro transfection of 3T3 NIH cells and immunoblot analysis of cells lysate. Female BALB/c mice were boosted in both quadriceps muscles with 20μg of each plasmid threetimes and were bled by tetro-orbital puncture. Serum was stored at -20℃ until assay. Serum antibody responses to human p185 were determined in solid-phase enzyme-linked immunosorbent (ELISA) assay by using a cell lysate of 3T3 NIH cells transfected with pCMV-ferbB2. ELISA assay showed that the injections of all tested plasmids induced lower antibody responses, whereas these plasmids expressed p185. Thus we tried to produce the constructs coding the other regions of c-erbB2, however we have not yet obtained the plasmids which induce higher antibody response.
      On the other hand, we have recently reported that ezrin, a membrane-cytoskeletal linking protein, is involved in invasive ability of endometrial cancer cells. Ezrin is also identified as tumor-associated transplantation antigen in methylcholanthen-induced murine sarcoma. Thus we now investigate the possibility of using the ezrin gene as an immunogen.
    106. 婦人科癌の細胞特性に関与する糖鎖遺伝子に関する研究 A study on expression mechanisms and functions of a novel adhesion molecule, trophinin 10470348 1998 – 1999 ガラクトース転移酵素 / 子宮体癌 / 卵巣癌 / 転移 / AKT2遺伝子 / ノザンブロット法 / 遺伝子導入 / スロットブロット法 / 糖鎖遺伝子 / 薄層クロマトグラフィー免疫染色法 / β 1,4ガラクトース転移酵素 / 転移能 / ELISA法 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 慶應義塾大学 1.ガラクトース転移酵素遺伝子に関する検討
      β1,3ガラクトース転移酵素(β1,3GT)およびβ1,4ガラクトース転移酵素(β1,4GT)の酵素活性を選択的に測定する系を作成し、両者の活性を測定した。また、ノザンブロット法にてβ1,4ガラクトース転移酵素mRNAの発現を検討した。その結果、子宮体癌におけるβ1,3GT活性はβ1,4GT活性に比べ高値であり、またβ1,4GTmRNAの発現レベルは子宮頸癌や卵巣癌に比べ低下していた。さらに、子宮体癌由来培養株細胞あるいは卵巣癌由来株細胞にヒトβ1,4ガラクトース転移酵素cDNAを導入し、β1,4GTの高発現株あるいは低発現株を作成し、両者の細胞特性を検討した。その結果、β1,4GTの高発現株はcontrolに比べ細胞増殖能、細胞外基質への接着能が亢進し、一方β1,4GT低発現株は細胞増殖能、細胞外基質への接着能は低下した。以上の結果から、β1,4GTは子宮体癌や卵巣癌細胞の特性に関与している可能性が示唆された。
      2.AKT2遺伝子に関する検討
      最近クローニングされたAKT2遺伝子の産物は、細胞増殖シグナルの伝達物質の一つであることが明らかになっており、また膵臓癌においてAKT2遺伝子の異常増幅の有無が病勢や予後と関連があることが示唆されている。そこで、子宮体癌や卵巣癌におけるAKT2遺伝子の発現動態を解析した。AKT2のgenomic fragmentをプローブとして、卵巣癌症例についてAKT2遺伝子増幅の頻度を同一個体の非癌部分をコントロ-ルとしたスロットブロット法にて検討した。その結果、子宮体癌に関しては、培養細胞を用いた解析にて子宮体癌由来培養株細胞6種類のうち1種類にてAKT2遺伝子の異常増幅が認められた。一方、卵巣癌患者25例中の検索した範囲では、AKT2遺伝子の異常増幅は認められなかった。 1. Biological significance of β1, 4-galactosyltransferase in gynecological cancer
      We have established a system that selectively measures the activity ofβ-1, 3-galactosyltransferase (β1, 3GT) andβ-1, 4-galactosyltransferase (β1, 4GT), and we measured the activity of both. We also assessed the expression of β1, 4GTmRNA by the Northern blot analysis. The results revealed higherβ1, 3GT activity thanβ1, 4GT activity in uterineendometrial cancer analysis, and the level of expression ofβ1, 4GTmRNA was lower than in uterine cervix cancer and ovarian cancer. We also transfected humanβ1, 4GTcDNA into a uterine endometrial cancer and ovarian cancer derived cell lines, and established a high-expressionβ1, 4GT line and a low-expression line, and investigated the cellular properties of each. The results showed that the cell proliferation capacity and ability to adhere to the extracellular matrix by the high-expressionβ1,4GT line were greater than in the control, and that the cell proliferation capacity and the ability of adhere to the extracellular matrix by the low expressionβ1, 4GT line were less than in the control. These findings suggested thatβ1, 4GT may be involved in the properties of uterine endometrial cancer and ovarian cancer cells.
      2. Expression of the AKT2 gene in gynecological cancer
      The product of the recently cloned AKT2 gene has been found to be a cell proliferation signal transmitter, and it has been suggested that the presence or absence of abnormal amplification of the AKT2 gene in pancreatic cancer is associated with disease progression and outcome. We therefore analyzed the expression dynamics of the AKT2 were used as a probe to assess the frequency of AKT2 amplification in ovarian cancer patients by the slot-blot method, with the non-cancerous portion of the same specimen being used as a control. The results revealed abnormal amplification of the AKT2 gene in one of six uterine endometrial cancer cell lines in an analysis using cultured cells, whereas no abnormal amplification of the AKT2 gene was detected among the 25 ovarian cancer patients.
    107. 分子生物学的解析による家族性卵巣がんの第一次予防法の開発及び確立に関する研究 The establishment of primary prevention system of familial ovarian cancer by the analysis of genetic instability. 10470343 1998 – 1999 家族性卵巣癌 / BRCA1 / シブペアー解析 / 癌抑制遺伝子 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 新潟大学 1)家族性卵巣癌71家系を集積し、33家系(46.5%)にBRCA1の突然変異を認め(乳癌・卵巣癌家系23家系中17家系 73.9%、卵巣癌家系48家系中16家系 33.3%)、その生涯浸透率が0.784であることを求めた。以上より家族性卵巣癌に関するBRCA1の変異の頻度、浸透率等は欧米におけるものとほぼ同一であることおよびBRCA2の関わりが僅少である事が判明すると同時に日本人特有の突然変異の存在が示唆された(T307A 9/33=27.3%,C2919T 7/33=21.2%,2507delAG3/33=9.0%)。
      2)BRCA1に異常の認められない家系、患者を対象とした、Genome wide non-parametric linkage analysisにて新規原因遺伝子候補領域を限定することが可能であった。またこれら患者群の分離分析により存在が想定される新規原因遺伝子は浸透率が低く、常染色体優性遺伝形式を示すことが推定された。本邦における家族性卵巣癌家系の約半分弱はBRCA1、2に異常を認めないことが判明し、第3の新規原因遺伝子の存在が強く疑われると同時にこの原因遺伝子の分離、解析が強く求められている。これらの家系は家系内の患者数が少ないことより、ノンパラメトリック連鎖解析法を用いているが、本年の34家系の結果はmultipoint法とtwo point法2法により共通の領域で高いスコアが示され、本研究の結果に希望を抱かせるものである。今後、連鎖解析により特定された候補領域について、Single Nucleotide Polymorphism(SNP)を用いたcase-control association studyあるいはExpressed sequence tagデーターベースなどを用いた新規原因遺伝子の単離を目指す。 We found 18 individual germ line mutations in 33 familial ovarian cancer families including 16 site-specific ovarian cancer families and 17 breast ovarian cancer families. The majority of mutations were non-sense mutations ; 16 of 18 mutations were consisted with twelve frame shifts, six stop codon mutations, and two missense mutations causing a loss of zinc-binding motif or splice aberration. Interesting to note, two BRCA1 mutations appear to be unique to Japanese people, since T307A and C2919T were found 9 and 7 families, respectively.
      In this experiments, we tried to detect responsible chromosomal regions from 34 familial ovarian cancer families in which no BRCA1 mutation was detected by non-parametric linkage analysis using 400 micro satellite markers covering whole human genomes including X gene.
      As a results, both of analytical soft, two point analysis : GENE HUNTER and multipoint analysis : SIBPAL expressed high scores in 3 regions ; 2p12-q22 ( NPL score=2.01, p value=0.0002),8q22-24 ( NPL=2.07, p value=0.0025) and 16p12 ( NPL score=2.03, p value 0.0001).
      In next step, we are going to isolate response gene from these 3 regions by case controlled association study using high resolution single nucleotide polymorphism.
    108. 婦人科癌の組織型による浸潤、転移能に関する諸因子の解明とその制御に関する研究 Research on some factors of the invasive potential and metastasis potential on histological types in the gynecologic cancers, and also control of these factors. 9470363 1997 – 2000 婦人科癌 / 組織型 / 浸潤能 / 運動能 / 転移能 / MMP 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 札幌医科大学 婦人科癌の組織型による浸潤、転移能の相異に関与する因子について検討するために本研究を開始した。そして以下の成果を得た。
      1,子宮内膜癌にエストロゲンレセプターを導入し、エストロゲンを投入すると増殖能が高まり、浸潤能が促進される結果を得た。
      2、卵巣癌において細胞外マトリックス分解酵素MMP発現と運動能および浸潤能の解析を行い、浸潤能は細胞外マトリックスの分解酵素産生と種類が関係する結果をえた。
      3、子宮内膜癌においてE-cadherinとcateninの発現と癌の浸潤・転移は逆の相関を示した。
      4、子宮内膜癌の浸潤、転移と癌細胞の運動能に関する研究では、integrinβ1は高運動能細胞株で細胞間に強く発現し運動能との関与を示し、更に運動能にはpreintegrinからintegrinβへの糖鎖付加が考えられた。
      5、子宮頚部癌における細胞運動能に関係するCD9の発現を免疫組織学的に検討した。その結果CD9が細胞質と細胞膜に発現している症例は、発現していない症例と比較して有意にリンパ節転移が認められた。
      6、卵巣癌細胞の浸潤能に寄与している分子を同定するために、各種細胞外マトリックス分解酵素と浸潤、転移に関係する転写因子の発現を検討した。その結果MMP-2とMT1-MMPが発現し活性型MMP-2が卵巣癌の浸潤に重要であることを示した。しかし他の細胞株ではMMP-1とuPAの両者が発現し活性型MMP-1が分泌され浸潤に関与していることが明らかになった。 We have performed research factors which are considered to affect invasive potential and metastasis on histological types in the gynecologic cancers.
      The research results are summarized as follows.
      1). The endometrial cancer cells which were transfected with estrogen receptor, showed increased proliferation and promoted invasive potential after giving estrogen.
      2). Expression intensity of E-cadherin and catenin showed reverse correlation to invasive and metastasis potential.
      3). We have researched on the correlation of invasive potential and motility in the endometrial cancer cells. Higher expression of integrin β1 on the cellular membrane was seen in the higher motile cell lines.
      4). We have studied immunohistochemical expression of CD9 which are considered as a motility molecule in the cancer cells. Cervical cancer cases with CD9 positive had significantly higher positive lymph nodes than those with CD9 negative.
      5). The expression of MMP-2, MT1-MMP and the activation of MMP-2 in the ovarian cancer cells are important factors for invasive potential.
    109. 子宮体癌の分子機構の解明と遺伝子診断の開発 Molecular mechanism of endometrial cancer and its application to gene diagnosis 9470362 1997 – 1999 endometrial cancer / tumor suppressor gene on 1q / cell senescence / Ras / ER / DPC4 / DCC / cyclin G / tumor supppressor gene on 1q / 癌抑制遺伝子 / 子宮体癌 / 1番染色体 / 微小核融合 / 変異型K-Ras / エストロゲンリセプター / 形質転換 / 変異型K・Ras 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 九州大学 1)染色体工学及び分子遺伝学的手法を用い、子宮体癌細胞に細胞を老化誘導する癌抑制遺伝子座に決定した。Del1q染色体(1q上に欠失を有する1番染色体)、1qに由来する染色体断片を子宮体癌細胞へ単一移入し、細胞表現型の変化を解析した。特定の染色体断片を子宮体癌細胞へ単一移入した場合にのみ、細胞の巨大化・扁平化が誘導され数継代の培養の後に細胞死した。このため、細胞老化誘導遺伝子は1q31-terに存在すると判明した。1q31-terに遺伝子座を有するSTSマーカーを用い、子宮体癌組織60例より得たDNAを用いてLOH解析を行った。LOHは1q42領域に集中したため、候補遺伝子座は1q42と示唆された。
      2)変異型K-rasはエストロゲンリセプター(ER)発現を誘導した。発現誘導されたERは転写因子として機能していた。様々な再構成細胞を作成し、ERの転写能と造腫瘍能との関連を解析した結果、ER機能が亢進している細胞のみが造腫瘍能を獲得していた。プロゲステロンリセプター発現誘導或いはERに相補的配列を有するアンチセンスオリゴDNA投与によりER機能を抑制すると癌細胞形質も抑制された。
      3)子宮体癌で高率に観察される18qLOHはDPC4及びDCC遺伝子のいずれかを標的としていた。多くの場合、1回の染色体欠失により、両遺伝子の不活化に関与していた。DPC4遺伝子プロモーター変異により遺伝子発現の抑制が子宮体癌発生に関与していた。DCCcDNAの導入により子宮体癌細胞のアポトーシスが顕著に誘導された。このため、DPC4及びDCC遺伝子不活性化は子宮体癌の発生に関与することが明らかになった。
      4)p53遺伝子下流で機能するサイクリンGは細胞のG2/M期停止及びアポトーシス誘導に機能することを明らかにした。アポトーシスはBax蛋白発現誘導を介して誘導されていた。 1. Identification of an endometrial cancer suppressor gene locus : The gene located chromosome 1q has an ability to induce senescence in endometrial cancer cells. By introducing a del 1q chromosome that has incurred an interstitial deletion of approximately 63 cM or subchromosomal transferable fragments derived from the 1q into the endometrial cancer cells, we identified the localization of a target gene within 1q31-ter. In addition, we analyzed LOH on 1q using 60 sample of endometrial cancers and narrowed down the localization with 1q42.
      2. Contribution of ER to Ras mediated transformation. Mutant K-ras protein had an ability to induce expression of ER protein (3-fold) that functioned as a transcription factor. Reconstituted cells that had enhanced ER activities were tumorigenic but the cells with lower ER activities were nontumorigenic. Suppression of ER activities resulted in the loss of tumorigenicity in the cells transformed by mutant k-ras.
      3. Both DPC4 and DOC genes targeted by 18q LOH in endometrial cancers. : 18qLOH is frequent in endometrial cancers. By making a detailed deletions map on 18q, we found that deletions targeted both DPC4 and DOC genes. Mutations of the DPC4 promoter regions in the remaining allele resulted in the suppression of DPC4 gene activities. In turn, transfection of DOC cDNA resulted in the suppression of tumorigenicity or the induction of apoptosis in endometrial cancer cells. A DOC gene functions as a tumor suppressor gene by inducing apoptosis of endometrial cells.
      4. Function of p53-dependent cyclin G : Dox treatment induced p53 accumulation, p21 and cyclin G transcription, that resulted in G2/M arrest of cells. In turn, NaB induced p53 accumulation and p21 transcription but not cyclin G transcription, that resulted in G1 arrest of cells. Suppression of cyclin G expression corresponded to the release of cells from G2/M. Overexpression of cyclin G reverted the cell susceptible to apoptosis.
    110. 不妊症治療と卵巣癌発生の関連性に関する総合的解析 Clinicopathological and Molecular Analyses for Possible Correlation between Infertility Therapy and Development of Ocarian Cancer 9470358 1997 – 1998 卵巣癌 / 不妊症 / ゴナドトロピン / LH / hCG receptor / アポトーシス / insulin-like growth factor-1 / 卵巣表層上皮 / 不妊症治療 / hCG受容体 / IGF-1 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 京都大学 卵巣癌は、女性性器に発生する悪性腫瘍のうちで最も予後不良の疾患であるが、近年、排卵誘発を含む不妊症治療中に発生した卵巣癌の症例報告が認められ、不妊症治療と卵巣癌発生との関連性が注目されている。本研究は実際に不妊症治療中や治療後に発生した卵巣癌がどのような生物学的的特徴を有するかを明らかにすること、さらに、排卵誘発に用いられるゴナドトロピンが卵巣癌の組織発生起源である卵巣表層上皮細胞や卵巣癌細胞のbiological behaviorに影響を与えうるかを解析することを目的とした。
      不妊症治療中に認められる卵巣癌には大別して2種類のものが存在することが明らかとなった。一つは漿液性の卵巣癌または境界悪性腫瘍で臨床的には比較的突然発症することが特徴的で、経腟超音波法により丹念に卵巣を観察していても卵巣癌と判明した時点ですでに腹腔内に播種性転移が認められることが多く、現時点では早期発見することが困難である。一方、もう一つのタイプは子宮内膜症性嚢腫より発生する明細用癌ないし類内膜癌で、これらは超音波とMRIを組み合わせることにより早期に発見することが可能と考えられる。
      卵巣癌の発生起源である卵巣表層上皮細胞は免疫組織学的にゴナドトロピン受容体であるLH/hCG receptorを発現し、さらに卵巣表層上皮細胞の初代培養系においてもhCGに対する特異的結合能、およびLH/hCG receptor geneのmRNA発現が認められた。この培養系にてhCGは卵巣表層上皮細胞の増殖を促進し、さらに無血清条件下で誘導されるアポトーシスを抑制することが判明した。このhCGによるアポトーシス抑制効果はhCGによるinsulin-like growth factor-1発現誘導を介することも判明した。すなわち、ゴナドトロピンは通常では排卵により破綻した卵巣表層上皮の修復に関与することが推測され、高ゴナドトロピン状態は表層上皮細胞の増殖や細胞死の異常を惹起している可能性が示唆される。
      卵巣癌においてもその約半数はLH/hCG receptor mRNAを発現しこれは免疫組織学的なLH/hCG receptorの蛋白発現と一致していた。卵巣癌由来のcell lineのうちOVCAR3はLH/hCG receptor mRNA陽性であり、これを用いて検討すると、hCGは卵巣癌細胞の増殖にはほとんど影響を与えないものの、insulin-like growth factor-1発現誘導を介して、シスプラチンにて誘導されるアポトーシスを抑制する作用をもつことが判明した。このことは卵巣癌においてもゴナドトロピンがそのbiological behaviorに影響を及ぼしうること、さらに卵巣癌細胞の制癌剤抵抗性にも関与していることを示唆している。 Possible relationship between infertility therapy and development of ovarian cancer has recently received much attention, and there have been case reports of ovarian carcinoma which occurred during ovulation-induction using gonadotropic agents. The aim of this research project is to clarify the clinicopathological characteristics of ovarian cancer in this setting, and to examine if gonadotropins affect ovarian cancer or ovarian surface epithelium, the histogenetic origin of epithelial ovarian carcinoma.
      Analysis of our 6 cases and review of the literature revealed that ovarian carcinomas during or after ovulation-induction therapy are classified into 2 types : one is serous type carcinoma or LMP tumor. Clinically, such tumors suddenly appeared and are frequently associated with intraperitoneal metastases. Early detection of serous carcinoma is difficult even during the infertility treatment. Another type is clear cell or endometrioid carcinoma arising in endometriotic cyst. Early detection of this type carcinoma is possible by careful followup using transvaginal ultrasonography and MRI.
      Our study demonstrated that ovarian surface epithelium (OSE) is immunoreactive for LH/hCG receptors. In the primary culture system of OSE, these cells exhibited specific binding capacity for hCG, and expressed mRNA of LH/hCG receptor gene. hCG not only enhanced the proliferative activity, but also inhibited apoptosis induced by serum-deprivation in OSE cells. Signal transduction of apoptotic inhibition by hCG occurred via up-regulation of insulin-like growth factor-i (IGF-1). These results suggest that gonadotropins are presumably involved in the behavior of OSE such as repair of the ovarian surface after ovulation.
      An approximately half of ovarian carcinomas expressed LH/hCG receptor at both mRNA and protein levels. In ovarian cancer cell line (OVCAR3) expressing LH/hCG receptors, hCG inhibited cisplatin-induced apoptosis via up-regulation of IGE-1. Accordingly, gonadotropins may also play an important role in biological behavior and/or chemoresistance of ovarian cancer. In conclusion, our studies suggest the causal relationship between infertility therapy and ovarian cancer.
    111. 婦人科癌におけるテロメラーゼをターゲットにした遺伝子治療 Gene therapy against gynecologic cancers targeting telomerase 9470354 1997 – 1999 婦人科腫瘍 / テロメア / テロメラーゼ / hTERT / hTERTプロモーター / 遺伝子治療 / 産婦人科腫瘍 / TRAP法 / 転写因子 / hTRT 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 金沢大学 我々はこれまでにテロメレース活性が婦人科臓器由来の悪性腫瘍の90%以上で高いことや癌に特異的に発現しているテロメレース活性の癌のスクリーニング診断への応用は可能であることを子宮頸部擦過細胞診、尿細胞診、腹水細胞診などで報告してきた。特に、子宮頸部擦過細胞では細胞診にて偽陰性であった症例をテロメレース活性の検出により拾い上げることが可能で、両者の組み合わせにより診断精度が上昇することを明らかにした。また、テロメレース活性の定量法を開発し、癌と前癌病変、良性病変の鑑別診断に応用できることを報告した。さらに、癌のなかでも悪性度により活性が異なることから、予後予知因子としてまた追加治療の判断材料として臨床応用可能であることも示した。
      更に、遺伝子治療への応用も検討した。従来よりテロメレースは3つのサブユニット(hTR:human telomerase RNA,TPI:telomerase associated protein,hTERT:human telomerase reverse transcriptase)から構成されることが知られていたが、このうちどれが酵素活性の決定因子なのか不明であった。我々は、臨床材料を用いてhTERTが酵素活性を担う因子であることを明らかにした。さらに、hTERT遺伝子のプロモターのクローニングを世界に先駆け成功させた。hTERTプロモターの転写活性が癌細胞でのみ存在することが明らかとなったことより、アデノウイルスベクターにhTERTプロモターを導入し下流に治療遺伝子、例えば、P53などアポトーシス誘導遺伝子、を連結させ、がん細胞に効率良く発現させるベクターを開発した。これを用いた遺伝子治療を培養細胞や動物実験モデルで試みたところ、明らかな抗腫瘍効果が認められた。 Human telomerase is composed of three main subunit components, human telomerase RNA (hTR), telomerase-associated protein (TP1) and telomerase reverse transcriptase (hTERT). RT-PCR analyses demonstrated that expression of hTERT was observed in cancer tissues and cell lines, while hTR or TP1 was broadly expressed not only in cancers but also in normal tissues. Thus, hTERT expression was well correlated with telomerase activity.
      We succeeded to clone promoter sequences of hTERT gene. Of particular importance is identification of transcription factors interacting with such regions and regulate hTERT express in utilizing it for gene therapy. C-Myc has been shown to be a direct transactivator of hTERT gene. Antisense strategy against c-Myc has been in success to inhibit telomerase activity in cancer cells and suppress the tumor growth. As another strategy, we have applied hTERT promoter to plasmid or virus vectors for gene therapy. We have constructed a chimeric vector in which hTERT promoter is cloned upstream of apoptosis-inducing genes inhibiting cell growth and introduced of these vectors into cervical cancer cells. We have confirmed the specific inhibition of tumor growth in cell lines and animal models by these gene therapies.
    112. 子宮内膜癌の血管新生因子同定に関する研究 Interleukin-8 is a possible angiogenic factor in endometrial cancer 8457442 1996 – 1997 子宮内膜癌 / 血管新生因子 / 腫瘍壊死因子α(TNFα) / インターロイキン-8(IL-8) / 間質細胞 / 微小血管数 / 癌増殖 / パラクリン作用 / 子宮内膜 / 子宮内膜症 / 細胞増殖 / IL-8 / TNFα 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 鳥取大学 子宮内膜症を対象とした臨床研究において、内膜症患者腹水中のtumor necrosis factor α (TNFα)濃度は増加しており、腹水中のTNFα濃度とinterleukin-8(IL-8)濃度との間には有意な相関が存在することを見いだした。子宮内膜癌の血管新生因子同定を目的とする本研究においては、正常子宮内膜、子宮内膜症および内膜癌組織を対象に、それぞれの間質細胞を分離・培養し、血管新生因子であるTNFαとIL-8の作用を検討した。TNFα(0-100pg/ml)の添加は、子宮内膜と内膜症間質細胞培養上清中のIL-8産生を濃度依存性に促進した。MTT assayにおいて、TNFαは内膜症間質細胞の増殖を有意に促したが、その増殖促進効果は抗IL-8抗体の併用添加で減弱した。IL-8(200pg/ml)の添加は、子宮内膜癌間質細胞の増殖能を130%に増加させた。PT-PCRとSouthern blot法により、それぞれの間質細胞においてTNFα受容体IIとIL-8受容体typeAの遺伝子発現が観察された。
      摘出子宮内膜癌を対象として、第VIII因子および抗IL-8抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、第VIII因子染色陽性の微小血管数とIL-8染色陽性の血管数を算出した。微小血管数は、中分化型癌(G2)と未分化癌(G3)では高分化型癌に比して有意に多かった。IL-8陽性血管数は、G3ではG1とG2に比して有意に多かった。このことから、内膜癌の悪性度と微小血管ならびにIL-8陽性血管数との相関が明らかとなった。以上の成績より、TNFαは子宮内膜癌の間質と血管内皮にパラクリン様式で作用してIL-8の産生・分泌を促し、IL-8は内膜癌の血管新生因子として癌増殖に関与する可能性が示された。 This study was undertaken to find out the candidate of an angiogenic factor (s) in endometrial carcinoma. In recent clinical studies, we have found that the concentration of tumor necrosis factor a (TNF a) in peritoneal fluid of patients with endometriosis was increased and there was a significant correlation between the peritoneal fluid levels of TNF a and interleukin-8 (IL-8). We, therefore, examined the effects of angiogenic factors, TNF a and IL-8, on stromal cells collected from normal endometrium, endometriosis and endometrial carcinoma tissues. Addition of TNF a (0-100pg/ml) to the culture medium increased the production of IL-8 in both endometrial and endometriotic stromal cells, in a dose-dependent manner. The MTT assay showed that the number of endometriotic stromal cells increased in the presence of TNF a, but addition of anti-IL-8-antibody abolished the stimulating effect of TNF a on cell proliferation. IL-8 (200pg/ml) showed a growth-promoting effect on stromal cells of endometrial carcinoma, which was 130% of control values. The expression of transcripts of TNF a receptor II and IL-8 receptor typeA were observed in each stromal cells by RT-PCR and Southern blot analysis.
      Hysterectomy specimens of endometrial cancer were stained immunohistochemically for factor VIII-related antigen and anti-IL-8-antibody, and the numbers of the factor VIII-related antigen microvessels and the IL-8-stained vessels per area were counted by light microscopy. The numbers of microvessels in moderately-and poorly differentiated and those of IL-8 stained vessels in poorly differentiated carcinoma were significantly increased, suggesting that microvessel and IL-8-positive vessel densities are correlated with tumor grade. In summary, these results suggest that TNF a exerts paracrine effects on both the stromal and endothelial cells of endometrial carcinoma and stimulates the production of IL-8. The present study also raise the possibility that IL-8 may act as an angiogenic factor in endometrial cancer and promote the cancer growth.
    113. 連鎖解析による上皮性卵巣がん関連遺伝子領域の特定と構造決定 DETECTION AND CHARACTERIZATION OF FAMILIAL OVARIAN CANCER ASSOCIATED GENE BY LINKAGE ANALYSIS. 8457437 1996 – 1997 家族性卵巣がん / BRCA-1遺伝子 / 家族性卵巣癌 / BRCA1遺伝子 / 卵巣がん / 連鎮解析 / BRCA1 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 新潟大学 (1)平成8〜9年度にかけて家族性卵巣癌家系、乳癌/卵巣癌家系34家系を集積し、BRCA1遺伝子の解析を行った結果、卵巣癌家系17家系中7家系(41.2%)乳癌/卵巣癌家系17家系中11家系(64.7%)合計34家系中18家系(52.9%)にBRCA1遺伝子の異常をみとめた。18家系中17家系で認められた異常は蛋白の中断を引き起こすものであったが1家系ではZinc finger motifの構造に影響をおよぼすものであった。さらにBRCA2についても検討を行ったが明らかな異常は1例も認められなかった。
      (2)卵巣がん腫瘍組織からDNAが採取可能であった症例について、BRCA1遺伝子内に位置するD17S1322,D17S855、近傍に位置するD17S1325の3つのマイクロサテライトDNA多型マーカーを用いてLOHの解析を行った結果、germline mutationを有する21症例では、全例でLOHが確認された。
      BRCA1遺伝子に関連しない15家系を対象として、患者が少なくとも2名以上存在すれば解析可能なsib-pair analysisを実施した結果、9q34-35領域においてZ2=0.96が得られた。
      (4)BRCA1遺伝子に異常を認めた女性68名(患者32名、健常者36名)の年齢をもとにカプランメイヤー法により卵巣癌の浸透率を計算し、日本人における生涯危険率が80%であることを明らかにした。
      (5)BRCA1遺伝子に異常を認めた卵巣癌患者25名の臨床的解析の結果、しょう液性腺癌が96%を占め、孤発例に比較し明らかに高い生存率を示し事、あるいは発症年齢の平均は51.1才と孤発例の平均年齢52.03才とほぼ変わらず欧米の家族性卵巣癌患者の平均発症年齢より高い事が明らかになった。
      (6)アンケート調査による上皮性卵巣癌4512例の解析の結果、1例の遺伝性卵巣癌/乳癌家系、6例の遺伝性卵巣癌家系、5例の家族性卵巣癌家系が認められたが、この頻度は欧米のものと比較すると約10分の1であった。 We analyzed the alteration of BRCA1 in DNA obtained from 139 individuals of 17 Japanese site-specific ovarian cancer families and 17 breast-ovarian cancer families. Several germline mutations were detected in 18 families, which consisted of 11 breast-ovarian cancer and 7 site-specific ovarian cancer families, by single-strand conformation polymorphism (SSCP) following direct sequence analysis. The mutations included eleven frameshifts, six nonsense mutations, and one missense mutation causing a loss of zinc-binding motif.
      The frequency of LOH at the markers on the BRCA1 gene was 57% (8 of 14 cases) in site-specific ovarian cancer families, 100% (6 of 6 cases) in breast-ovarian cancer families. All tumors of the patients carrying mutation of BRCA1 showed deletion of wild-type alleles implicating BRCA1 as a tumor suppresser gene.
      In addition, we analyzed clinical features of twenty-three ovarian cancer patients associated with germline mutations of BRCA1 from 5 site-specific ovarian cancer families and 6 breast-ovarian cancer families in Japan. The average age at diagnosis was 51.3 years old (range, 38 to 77). Histological examination revealed 24 serous cyst-adenocarcinoma in 23 patients. In 19 patients with clear clinical records, one patient had stage I disease, 15 had stage III and 3 had stage IV.With stage III of disease, 13 patients treated with cisplatin-containing chemotherapy following tumor reduction surgery showed higher survival rate, as compared with age and treatment courses matched controls (0.802 vs.0.180, the log-rank test : p<0.05). Disase-free intervals of BRCA1 group was also significantly longer than that of sporadic cases (median disease free survival 59.6 vs. 8.3).These results suggest that the clinical outcome of ovarian cancer with germline mutations of BRCA1 appears to be more favorable as compared with sporadic cases. Finally, our statistical model for the inheritance of susceptibility to ovarian cancer was derived from the analysis of 26 patients and 50 pedigrees of 12 families. The expected life time risk of ovarian cancer is about 80% for women with mutations of BRCA1 suggesting that the disease penetrance among pedigrees with germline mutations of the BRCA1 gene expressed substantially high level.
    114. 卵巣癌の発癌に関与する遺伝子群の解明 Identification of A Group of Genes Associated with Oncogenesis of Ovarian Cancers 8457435 1996 – 1997 卵巣癌 / テロメラーゼ / 発癌 / テロメア 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 千葉大学 我々は,従来のTRAP法と異なったPCRプライマーのデザインを考案し,このプライマーを蛍光標識し,オートシーケンサー上で電気永動ならびにコンピューター解析を行うことに成功した.テロメラーゼによって産生された階段状蛍光バンドは,フラグメント解析プログラムを用いてより正確にかつ簡便に定量可能となった.この新しく開発した測定系を用いて,卵巣癌細胞株,卵巣癌原発腫瘍・転移腫瘍・化学療法後再発腫瘍の新鮮手術標本ならびに病理組織標本のテロメラーゼ活性の量的評価を試みた.
      検討した6種類の卵巣癌細胞株では,予想されたとおり強いテロメラーゼ活性が認められた.しかし,卵巣癌新鮮手術標本ならびに病理組織標本では,安定した再現性を得ることができなかった.これは,組織抽出液中の反応阻害物質に起因すると考えられ,蛋白抽出法の改良に務めたが,期間内にはこの問題を克服することはできなかった.また,卵巣癌ならびに子宮癌の擦過細胞について,in situにおけるテロメラーゼ活性の検出を試み,preliminaryながら今後の臨床応用が期待できる結果を得た.
      今後さらに解析方法の確立に向けて改良を重ね,卵巣癌のテロメラーゼ活性の量的評価を行い,この結果を進行期・組織型・分子度などの臨床データならびに各種癌遺伝子・細胞期関連遺伝子の発現と照合することにより,テロメラーゼの発癌機構における役割および臨床応用の可能性を検討する予定である. In this study we focused on the telomerase gene among a group of those associated with oncogenesis of ovarian cancers. By a variety of available molecular and cytogenetic techniques, cell lines and surgical specimens of ovarian cancers have been analyzed to clinically investigate following questions. 1) whether the shortening of telomere length and the acceleration of telomerase activity are correlated to carcinogenesis or not, 2) if so, to which stage in tumor progression, 3) how they communicate with other oncogenes and tumor suppresser genes.
      We designed new PCR primers for detecting telomerase activity, which are different from ordinary ones used in TRAP assay and succeeded in performing electrophoresis and computer analysis on an autosequencer using theses fluorescence-labeled primers. Fragment analysis program led to accurate and convenient quantitative measurement of fluorescent ladder bands produced by telomerase. This newly developed assay system was applied to quantitative analysis of telomerase activity in cell lines, primary or metastatic tumors, recurrence tumors after chemotherapy, and formalin-fixed tissue sections.
      In 6 ovarian cancer cell lines we examined high degrees of telomerase activity were detected as expected. However, we failed to obtain stable results for surgical and pathological specimen of ovarian cancers. This failure was thought to result from some inhibitory substance for telomerase or PCR reaction in tissue extracts. Several extraction techniques for tissue proteins were thus examined, but this problem has not been overcome in the research period. We also developed in situ detection of telomerase activity in smear cells of ovarian and cervical cancers, and obtain preliminary results promising clinical application.
      It is scheduled to make continuous improvements to establish quantitative measurement of telomerase activity in povarian cancers and, compare degrees of their activity with clinical background including stage, tissue type and grade, and expression of a panel of oncogenes and cell cycle-related genes. Our final goal is to clarify the roles of telomerase in oncogenesis mechanism and examine the ossibility of its clinical application.
    115. 卵巣癌の発生および進展の多様性に関する分子病理学的・臨床病理学的研究 Molecular-pathologic and clinicopathologic study on the heterogeneity of early development and progression of ovarian cancer 7457608 1995 – 1996 卵巣癌 / 組織発生 / 分子病理学 / p53 / K-ras / nm23 / VEGF / ゴナドトロピン / 性ステロイド受容体 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 京都大学 卵巣癌はその約半数が初診時にすでに腹腔内へと進展した進行癌であるため、その初期発生過程は明らかにされていない。表層上皮由来とされる卵巣腫瘍は、漿液性、粘膜性、類内膜、明細胞などの組織型に分類され、またそれぞれに良性、境界悪性、悪性腫瘍が存在するが、悪性腫瘍せある卵巣癌がそれぞれの組織型の良性腺腫または境界悪性腫瘍から続発性に発生するのか(adenoma-carcinoma sequence)、あるいは、卵巣表層上皮から直接発生するのか(de novo carcinogenesis)は不明である。その解明のために、初期卵巣癌患者の臨床経過の詳細な観察、卵巣癌の同一腫瘍組織の中の病理組織学的所見と対応した遺伝子変異の多様性に関する分子病理学的解析を行った。卵巣癌の進展形式についてもその多様性を種々の遺伝子発現から検討した。
      癌発生の臨床経過が詳細に据えられている不妊症治療中の卵巣癌を検討すると、漿液性癌は突然発生し発見された時点ですでに進行したものが多く、一方、子宮内膜症に続発した類内膜癌や明細胞癌には初期癌が多いという多様性が明らかとなった。さらに、卵巣癌におけるゴナドトロピン受容体の検討やゴナドトロピンによる卵巣癌細胞のアポトーシス抑制から、卵巣癌発生におけるゴナドトロピンの関与が示唆された。
      卵巣癌におけるp53遺伝子変異に関与するp53蛋白過剰発現の免疫組織学的解析において、粘液性癌ではp53発現が組織学的悪性度の高い上皮細胞のみに観察された。一方、漿液性癌ではp53陽性細胞が一見良性とも思える上皮細胞を含めて腫瘍全体に均一に分布し、良性病変を介さずde novoに発癌する可能性が示された。さらに、分子病理学的検討により、同一パラフィン切片の組織学的に異なる部位からのDNA抽出により、粘膜性腫瘍におけるK-ras変異がheterogeneousに存在することが確認され、この腫瘍が大腸癌と同様に、adenoma-carcinoma sequenceの過程を経て癌化することが示された。
      mRNA発現の減弱が深く関与することが明らかとなった。しかし、卵巣癌にはnm23遺伝子の変異の頻度は低く、nm23遺伝子はいわゆる癌抑制遺伝子とは異なるものと考えられた。また、卵巣癌細胞のVEGF強発現は進行癌に多く認められ、腹腔内進展と有意に関連することが明らかとなった。卵巣癌患者の血中VEGF値のEIA法による測定では、正常女性に比し、明らかに高値を示し、VEGFが卵巣癌患者の新しい腫瘍マーカーとなりうる可能性が示唆された。 Little is known about the early pathogenic process of ovarian carcinogenesis, because more than half of ovarian cancer patients are diagnosed at the advanced stages. Ovarian epithelial tumors originate from the surface epithelium covering the ovary, and there are three types with distinct clinicopathology ; benign cystadenoma, tumor of low malignant potential (LMP), and invasive carcinoma. However, it is unknown whether ovarian carcinomas occur de novo in the ovarian surface or develop as a result of the malignant transformation of benign or LMP tumors of the ovary. To address this issue, we studied the clinical course in detail of ovarian cancer development, and molecular pathologic analysis on heterogeneity of genetic alterations in ovarian tumors. In addition, we examined the expression of various genes with reference to the tumor progression.
      Analysis of the clinical findings of ovarian cancer development in infertility patients revealed that serous carcinomas are frequently at the advanced stages when the tumor was first recognized, whereas endometrioid or clear cell carcinomas arising in endometriotic cyst are at the early stage. Expression of gonadotropin receptors in ovarian cancers and apoptosis-inhibitory effect of gonadotropins in ovarian cancer cells suggest that gonadotropins play an important role in ovarian carcinogenesis.
      Immunohistochemical analysis of p53 protein expression in ovarian tumors showed that p53-positive tumor cells are homogeneously distributed in serous carcinomas, whereas heterogeneous in mucinous carcinomas. K-ras-mutated tumor cells are also heterogeneously present in accordance with histopathology. These findings suggest that serous carcinomas arise de novo in the ovarian surface, whereas mucinous carcinomas develop in the benign or LMP tumors.
      Overexpression of C-erbB-2 gene and decreased expression of metastasis-related nm23 gene are both important for distant metastasis of ovarian carcinomas. However, nm23 gene mutation is rare in ovarian carcinomas. Overexpression of vascular endothelial growth factor (VEGF) may play an essential role in peritoneal involvement with ascites formation in ovarian carcinomas, and serum VEGF levels is a novel tumor marker in ovarian cancer patients.
    116. 子宮体癌における遺伝子診断及び遺伝子治療の開発 Establishment of gene diagnosis and therapy for Endometrial carcinoma. 7457391 1995 – 1996 Chromosome 1 / Tumor suppressor gene / a single chromosome transfer / Ras / Estrogen Receptor / Transcription factor / Endometrial Carcinoma / chromosomel / K-ras mutation / Genomic instability / Endometrial cancer 産婦人科学 / 外科 / 医学 基盤研究(B) 九州大学 1.ヒト1番染色体上の癌抑制遺伝子の単離:ヒト1番染色体上には子宮体癌の発生に関わる癌抑制遺伝子の存在が示唆されている。その遺伝子座を決定すべくX線照射により作成した様々な断片長さを有する1番染色体断片を子宮体癌細胞へ微小核融合に基づき単一移入した。正常1番染色体単一移入子宮体癌細胞は、顕著な細胞形態変化とともにテロメレース活性の抑制を伴った老化による細胞死が誘導された。これらの形質変化を指標として各断片を単一移入した融合細胞を解析した結果、1番染色体長腕q11-q21或いはq31-ter領域に子宮体癌抑制遺伝子が存在すると推定された。
      2.活性型K-ras遺伝子による子宮体癌発生の分子機構:我々は「エストロゲンリセプターはRasの下流で転写因子として機能し、変異型Ras蛋白による癌化シグナルはERを介して様々な遺伝子群に伝達される」と推定している。本仮説を証明するため変異型或いは野生型K-ras蛋白を発現する再構成細胞を作成し、ER蛋白の発現誘導を解析した。その結果、変異型K-ras蛋白はER蛋白の発現を3倍程度亢進することが判明した。発現の誘導されたER蛋白の転写活性をCATアッセイ法を用いて解析した。変異型K-ras蛋白を発現する再構成細胞では、エストロゲン依存性にCAT活性値の亢進が示された。ER蛋白の癌化能を評価するため、野生型K-ras蛋白及びER蛋白を同時に発現する再構成細胞を作成した。本細胞を10%血清存在下で長期間培養すると形質転換し、ヌードマウス上での造腫瘍性も獲得した。本細胞へCATベクターをトランスフェクトし(10%血清存在下)、ERの転写因子としての活性を評価したところ、変異型K-ras蛋白発現細胞とほぼ同等の活性値が示された。以上からERの持続的活性化は細胞形質転換に重要な役割を果たすと結論された。 1. We made various fragments derived from a human chromosome 1 by high dose radiation, and transferred them into endometrial carcinoma cells via microcell fusion. The introduction of a whole chromosome 1 resulted in the morphological alteration followed by cell senescence. In addition, telomerase activity was also suppressed in the microcell hybrids containing a chromosome 1. Evaluation of cell morphology in addition to telomerase activity in the microcell hybrid clones containing various fragments form chromosome 1 disclosed that 1q11-q21 or q31-ter region of chromosome 1 was critical for the suppression of endometrial cell growth properties.
      2. We established the reconstituted cells expressing that mutant K-Ras protein constitutively. Enchanced expression of ER protein that has a function as a transcription factor was shown in this cell. We also established the reconstituted cells expressing both the wild type of K-Ras protein and ER protein. Long term culture in the presence of 10% calf serum transformed the cell that was analogous to the level in the mutant K-Ras expressing cells, was shown in this transformed cells. These implicate ER protein in Ras-mediated transformation.

                          炎症性腸疾患(IBD)の治療と粘膜治癒に関する科研費研究

                          IBDに含まれる疾患

                          IBDは Inflammatory Bowel Disease(炎症性腸疾患)の略です。IBDは特定の一つの病気ではなく、潰瘍性大腸炎(UC: Ulcerative Colitis)クローン病(CD: Crohn’s Disease) の2つを総称した呼び方です。つまり、クローン病もIBDの一種です。

                          ちなみに、過敏性腸症候群(IBS: Irritable Bowel Syndrome) はIBDとは全く別の疾患で、こちらは器質的な炎症を伴わない機能性疾患です。名前が似ているので混同されやすいですが、病態はまったく異なります。

                          潰瘍性大腸炎とクローン病の違い

                          項目 潰瘍性大腸炎(UC) クローン病(CD)
                          病変部位 大腸のみ(直腸から連続的に上行) 口腔から肛門までの全消化管(回腸末端・大腸に好発)
                          病変の分布 連続性 非連続性(skip lesion)
                          炎症の深さ 粘膜〜粘膜下層(表層性) 全層性(漿膜まで)
                          特徴的所見 びまん性炎症、陰窩膿瘍 縦走潰瘍、敷石像、非乾酪性肉芽腫
                          瘻孔・狭窄 まれ 高頻度に合併
                          主症状 粘血便、下痢、腹痛 腹痛、下痢、体重減少、肛門病変
                          喫煙の影響 増悪因子ではない(むしろ非喫煙者に多い) 増悪因子
                          大腸癌リスク 長期罹患で上昇 UCより低い

                          発症機序(病態生理)

                          IBDの発症機序は完全には解明されていませんが、現在は以下の4つの因子が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

                          1. 遺伝的素因 クローン病ではNOD2/CARD15遺伝子変異が代表的で、細菌成分(ムラミルジペプチド)の認識異常を引き起こします。UCではHLA関連遺伝子などが報告されています。

                          2. 腸内細菌叢の異常(dysbiosis) 腸内細菌の多様性低下や病原性細菌の増加が、異常な免疫応答の引き金となります。

                          3. 腸管バリア機能の破綻 腸上皮のtight junctionの異常により、腸内細菌や抗原が粘膜下に侵入しやすくなります。

                          4. 免疫応答の異常

                          • クローン病:Th1/Th17優位の反応で、TNF-α、IL-12、IL-23、IFN-γなどが過剰産生されます
                          • 潰瘍性大腸炎:Th2優位(非典型的Th2)の反応で、IL-5、IL-13などが関与します

                          これらの異常により、本来は無害なはずの腸内細菌や食物抗原に対して過剰な免疫応答が持続し、慢性的な炎症が起こります。この理解に基づき、抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)、抗IL-12/23抗体(ウステキヌマブ)、抗インテグリン抗体(ベドリズマブ)、JAK阻害薬などの分子標的治療薬が開発されています。

                          なお、IBDは日本では指定難病に認定されており、近年患者数が増加傾向にあります。

                          (執筆:Claude Opus 4.7)

                           

                          炎症性腸疾患(IBD)の治療と粘膜治癒に関する科研費研究

                          炎症性腸疾患(IBD)の治療と粘膜治癒に関する科研費研究をまとめました(2026年4月29日現在のKAKEN情報より、78件)

                          研究課題名 研究課題名 (英文) 研究課題/領域番号 研究期間 (年度) キーワード 研究分野 審査区分 研究種目 研究機関 研究開始時の研究の概要 研究概要 研究概要 (英文) 研究成果の概要 研究成果の概要 (英文) 研究実績の概要

                          1. 腸管上皮テロメア伸長による炎症性腸疾患組織構築正常化機構の解明 25K11268 2025-04-01 – 2028-03-31 テロメア長 / 炎症性腸疾患 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 筑波大学 炎症性腸疾患(IBD)の治療目標は炎症を制御し症状を改善させるだけでなく、内視鏡にて潰瘍が存在しない粘膜治癒が提唱されています。これは粘膜の腸管上皮細胞を修復させることが重要ですが、その障害の具合を評価するシステムがありません。我々はIBD上皮モデルにより、粘膜障害にテロメアが関与することを発見しました。本研究ではヒトIBD上皮モデルを用いて、テロメア伸長による組織正常化に関与する鍵分子を探すことを目的としています。この成果は炎症性疾患に対して上皮細胞の視点から病気を完治させることが期待されます。
                          2. 好中球様単球の誘導機構と腸炎の病態形成における役割の解明 25K02464 2025-04-01 – 2029-03-31 炎症性腸疾患 / 単球 / マクロファージ / 組織修復 小区分49010:病態医化学関連 基盤研究(B) 横浜市立大学 炎症性腸疾患は、食物や常在細菌叢への暴露によって、炎症が再燃と寛解を繰り返している状態と捉えられている。腸管免疫の均衡回復には、炎症抑制型マクロファージの働きが重要と考えられるが、生体における動態や産生機構は十分に解明されていなかった。申請者は以前に、マウスの腸炎回復期に増加し、粘膜治癒を促進する「好中球様単球」という特殊な単球サブセットを発見し、それまであいまいだった抑制型マクロファージの実態解明に迫る成果を得た。本研究は、好中球様単球の誘導機序、動態と標的を明らかにすることで、単球を介した組織修復機構の全容解明と、炎症性腸疾患の治療法策定に貢献することを目的とする。
                          3. 腸管粘膜チップを用いた炎症性腸疾患の再現と病態解明 24K23052 2024-07-31 – 2026-03-31 腸管チップ / ヒトiPS細胞 / 生体模倣システム / 炎症性腸疾患 / 粘膜障害 0403:人間医工学およびその関連分野 研究活動スタート支援 京都大学 炎症性腸疾患とは、慢性的な炎症により腸管粘膜が障害される疾患である。粘膜治癒を達成した患者は予後良好であることから、粘膜治癒効果を有する治療薬開発が求められている。しかし、上皮層や間質層だけでなく、粘液層までを含む腸管粘膜の再現はこれまで困難であった。本研究では、ヒトiPS細胞や生体模倣システムなどの細胞培養技術を駆使し、粘液層・上皮層・間質層から構成される腸管粘膜を再現したヒトモデルを開発し、炎症性腸疾患の病態を高い解像度で再現および理解する。 炎症性腸疾患とは、消化管における慢性的な炎症により、腸管粘膜に潰瘍やびらんを生じる疾患である。粘膜治癒を達成した患者では予後が良好であることが報告されているため、粘膜障害を治癒できる治療法が必要とされている。しかし、粘液層および上皮層、間質層を含む腸管粘膜の多層構造を再現したin vitroヒト腸管モデルは存在せず、炎症性腸疾患における粘膜障害の再現は困難であった。そこで、本研究では、ヒトiPS細胞や生体模倣システムなどの高度な細胞培養技術を駆使することで、腸管粘膜を再現したヒト腸管モデルの開発に挑む。開発した腸管粘膜モデルを用いて、炎症性腸疾患の病態解明および創薬研究を実施する。本年度は、生体模倣システムおよびヒトiPS細胞を用いた腸管粘膜チップの開発および炎症性腸疾患の炎症応答の再現を実施した。ヒトiPS細胞から内胚葉および中胚葉を同時に作製し、上皮細胞および間質細胞を分化誘導することで、腸管粘膜を構成する上皮層および間質層を作製した。また、マイクロ流体デバイス内で培地灌流を行いながらヒトiPS細胞を分化誘導することで、粘液層を形成できる成熟した腸管上皮細胞を作製した。さらに、開発した腸管粘膜チップを用いて、炎症性腸疾患患者の腸管で発現上昇することが報告されている炎症性サイトカインに対する応答を調べた。以上の検討により、腸管粘膜チップの開発および、炎症性サイトカインへの応答能の評価を実施した。次年度は、炎症性腸疾患患者における腸管粘膜障害の再現および創薬研究への利用可能性の評価を行う。
                          4. アミノ酸欠乏シグナルによる腸粘膜治癒を促進する食事療法の開発 Dietary therapy for mucosal wound healing via amino acid starvation signaling 24K20667 2024-04-01 – 2026-03-31 炎症性腸疾患 / GCN2 / 腸粘膜治癒 / 食事療法 / アミノ酸欠乏センサー 小区分59040:栄養学および健康科学関連 若手研究 大阪大学 アミノ酸欠乏のセンサーであるGeneral control nonderepressible 2 (GCN2) は、腸炎に対 して防御効果があることが報告されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。我々は GCN2が腸炎を改善させるメカニズムとして、腸粘膜治癒にGCN2シグナルが必須であることを明らかにした。しかし、なぜ粘膜治癒時にGCN2が活性化され創傷治癒を促進するのか、その詳細について は未だ不明である。そこで本研究は、腸粘膜回復期にGCN2シグナルが活性化する機序を解明し、腸粘膜治癒を促進する炎症性腸疾患の新しい食事療法の確立を目指す。 炎症性腸疾患(IBD)は難治性の消化器疾患であり、患者数が増加の一途を辿っている。IBDは未だ根治的な治療法は見つかっておらず、寛解期を長期間維持させることが患者の生活の質向上に重要である。IBDの再燃を予防するためには炎症が治るだけでなく、粘膜治癒を達成することが重要であり、IBDの治療目標とされている。
                            このような背景の中、我々はアミノ酸欠乏センサーであるGeneral control nonderepressible 2(GCN2) が粘膜治癒に及ぼす影響に注目した。アミノ酸欠乏時にGCN2が活性化されると、下流のEukaryotic translation initiation factor 2α (eIF2α) がリン酸化され、様々な遺伝子の発現を調節することでアミノ酸欠乏に適応する。このGCN2欠損マウスはデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性腸炎に対して高い感受性を示し、GCN2は腸炎に対して防御効果があることが報告されている。しかし、GCN2が腸炎に対し防御効果を示す詳細なメカニズムはよくわかっていない。そこで本研究は、GCN2の腸炎に対する防御効果のメカニズムを検証した。
                            これまでの研究では、GCN2欠損マウスではDSS腸炎からの回復が顕著に遅れることが示された。また、骨髄移植モデルにより、GCN2の腸炎抑制効果は非骨髄細胞が重要であることが判明した。そこで腸上皮細胞株のGCN2をノックダウンしたところ、創傷治癒が顕著に遅延することが示された。これらの結果から、腸上皮細胞由来のGCN2経路が腸炎の防御効果に重要であることが示唆された。今後、腸炎時にGCN2が活性化されるメカニズムについて、免疫学的および微生物学的観点から検証する予定である。
                          5. 腸管粘膜の障害に焦点をあてた炎症性腸疾患の新規病態メカニズムの解明 24K11150 2024-04-01 – 2027-03-31 細胞外小胞 / 障害腸管上皮細胞 / 炎症性腸疾患 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 三重大学 炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の慢性炎症であり難病に指定されている。様々な治療薬が開発されているが治療改善割合は4-5割であり、効果減弱も認める。またIBD治療では、臨床的寛解のみならず、腸管粘膜治癒を目指している。そこで、腸管炎症の増悪機序を解明し、IBDの活動性を抑制できる治療薬や粘膜治癒を評価できるバイオマーカーを開発することが医療上の課題である。
                            本研究は、障害腸管上皮細胞由来のEV (IEC-EV)が免疫細胞の集積と活性化を惹起し腸管炎症の増悪機序を解明することを目的とする。さらに、IEC-EV成分を同定しバイオマーカーの開発や新規治療標的の探索を目指す。 腸管上皮株化細胞にデキストラン硫酸ナトリウムを添加し、障害腸管上皮細胞を作製した。その上清を回収しフローサイトメトリーで細胞外小胞の数を定量したところ、障害細胞が細胞外小胞を放出していることが確認できた。さらに、障害を受けて細胞外小胞を出す時間を検討したところ、障害を受けて早期から細胞外小胞を出すことがわかり、細胞の変化を捉えられることがわかった。さらに、細胞の反応をとらえるために、障害を受けた細胞をヒーリングさせたところ、細胞の状態に応じて細胞外小胞の数も変化することがわかった。また標的細胞への活性化を観察するための標的細胞側の実験条件の検討も終了した。
                            また、腸管疾患の患者血清での細胞外小胞解析のための検体回収も順調に進んでおり、予定患者数の6割程度の回収が終了した。
                          6. 腸管炎症病態におけるガス状分子治療薬創出に向けた一酸化炭素の基盤分子機構の解明 Molecular Mechanism of Carbon Monoxide asa Gaseous Therapeutic Molecule against Intestinal Inflammation 24K11092 2024-04-01 – 2027-03-31 一酸化炭素 / 炎症性腸疾患 / 新規一酸化炭素検出プローブ 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 京都府立医科大学 本研究計画では、COの腸管内組織・細胞内局在について新規CO検出プローブを用いて検証し、腸管上皮細胞内シグナル、腸管内免疫担当細胞プロファイルを行い、外因性CO投与時における細菌叢解析・腸管内代謝物メタボロミクス解析を通じて腸内環境解析を実施することにより、COをガス状治療分子とする新規治療法としての基盤形成を目指す計画である。 我々は先行研究において腸管炎症病態において抗酸化酵素Heme Oxygenase-1(HO-1)がマクロファージに発現し、M2形質を誘導することにより抗炎症効果を発揮し、HO-1により生成される一酸化炭素(Carbon monoxide: CO)がTh17リンパ球分化を制御することにより腸炎抑制作用が発揮されることを明らかにし、COが自然免疫(マクロファージ)機構と獲得免疫(リンパ球)機構を繋ぐガス状メディエーターとして作用することを示してきた。一方、外因性に投与されるCOによって腸炎抑制効果のみならず、潰瘍治癒(粘膜治癒)促進効果が得られることを明らかにしており、COの毒性を克服した新規ガス状分子治療薬として局所遊離型CO製剤の開発を達成してきた。本研究では、COをガス状治療分子とした臨床治療応用を支える基盤研究として、CO分子挙動の詳細を明らかにし、その分子機構の詳細を検討するとともに、腸内環境調整作用についても解析
                            を行う。本研究計画では、COの腸管内組織・細胞内局在について新規CO検出プローブを用いて検証し、腸管上皮細胞内シグナル、腸管内免疫担当細胞プロファイルを行い、外因性CO投与時における細菌叢解析・腸管内代謝物メタボロミクス解析を通じて腸内環境解析を実施することにより、COをガス状治療分子とする新規治療法としての基盤形成を目指す計画である。2024年度の研究実施では新規CO検出プローブの作成に着手した。
                          7. 炎症性腸疾患におけるCircular RNA-RNA結合蛋白相互作用の解析 24K11079 2024-04-01 – 2027-03-31 CircularRNA / RNA結合蛋白 / 炎症性腸疾患 / circular RNA 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 旭川医科大学 炎症性腸疾患(IBD)は慢性腸管炎症・腸管外合併症をきたすが、その発症・増悪の機序は不明な点が多い。ncRNAの一種であるcircular RNA(circRNA)は、microRNAやRNA結合蛋白(RBP)との相互作用による転写後調節を担うが、IBD病態への関与は解明されていない。申請者はこれまでIBD患者由来腸管粘膜において多数のcircRNAの発現が変化していること、そのうちhas_circ_0015388がマクロファージのROS発現調節を介して炎症制御に関与することを明らかにした。本研究ではcircRNAとRBPやRNAとの相互作用という新たな視点からIBD病態の解明を目指す。 <IBDの腸管炎症に関連するcircRNAの同定と機能解析>
                            IBD患者の血液・組織中におけるcircRNA発現変化:クローン病(CD)患者の回腸非病変部の生検検体(n=4)と対照群として非CDの回腸生検の生検検体(n=4)において、RNA sequencingを
                            行い、circular RNAの発現を網羅的に解析したところ、31のcircRNAの有意な発現変化を認めた。これらのcircRNAに関して、45名のCD患者の回腸生検検体を用いてRT-PCRにて発現を検討したところ、CD群においてHsa_circ_0015388の有意な発現上昇を認めた。Hsa_circ_0015388は腸管上皮培養細胞での発現は確認できず、THP-1細胞にて発現していた。siRNAを用いてHsa_circ_0015388の発現を抑制したTHP-1細胞にて検討を行ったところ、ROS産生の有意な上昇を認め、その反応はTNFSF10の発現調節を介していることが明らかとなった。
                          8. 炎症性腸疾患の新規バイオマーカー・病態関連候補血清ペプチドの網羅的解析 23K14466 2023-04-01 – 2026-03-31 炎症性腸疾患 / バイオマーカー / ペプチドミクス 小区分49010:病態医化学関連 若手研究 聖マリアンナ医科大学 炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の難治性炎症疾患であり、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる。慢性の下痢・血便・腹痛等により生活の質が低下する為、正確な診断と速やかな寛解導入、長期の寛解維持が重要である。診断及び粘膜評価に必須の内視鏡は侵襲性があり頻回施行が困難な為、代替となる非侵襲的なバイオマーカーの確立が急務である。本研究では、IBD患者血清中のペプチドを網羅的に定量し、IBDの診断、腸管粘膜及び全身の疾患活動性、治療反応性を評価する為のバイオマーカー候補となるペプチドを同定する。更に上記の評価項目で特異的な量的変化を示した血清ペプチドについて、IBDの病因や病態における関与を検討する。 今年度は、潰瘍性大腸炎(UC)の腸管病変及び全身疾患活動性を評価する新規バイオマーカー候補となる血清ペプチドを探索した。UC 60例の血清から弱陽イオン交換でペプチドを抽出し、質量分析でペプチドイオン強度を測定した。116個のペプチドを検出し、これらのイオン強度を用いた主成分分析で4例が外れ値を示した為、以後は56例または下記選定例を対象とした。各ペプチドイオン強度の2群間の平均値の比較をWilcoxon検定、臨床スコアとの相関をSpearman順位相関係数を用い解析した。
                            腸管病変活動性のペプチドマーカー探索は、血清採取前後100日内に内視鏡を施行し、この間に疾患活動性の変化及び治療追加がなかった17例を対象とした。各ペプチドイオン強度とUCの内視鏡スコアMESとの間に中等度の相関(0.4<|r|≦0.7)を示すペプチドを18個認め、粘膜治癒群(MES≦1)と非粘膜治癒群(MES≧2)間でイオン強度が変化したペプチドを31個認めた(p<0.05)。全身疾患活動性のペプチドマーカー探索は56例で行い、イオン強度とUCの全身疾患活動性スコアSCCAIの間に中等度の相関を示すペプチドを4個、寛解群(SCCAI≦2)と非寛解群(SCCAI≧3)の間でイオン強度が変化したペプチドを19個認めた(p<0.05)。
                            代表例としてペプチドAは、MES・SCCAIと中程度の相関を示し(各r=-0.4869、r=-0.4811)、粘膜治癒群と非粘膜治癒群間及び寛解群と非寛解群間で差を認め、非粘膜治癒群を感度100%・特異度76.9%、非寛解群を感度84.6%・特異度60.5%で検出した。腸管病変及び全身疾患活動性の有用なバイオマーカー候補であり、またMES・SCCAIと負の相関を示すことから、UCの活動性を制御する機能をもち治療標的となる可能性が示された。
                          9. 腸管局所的JAKシグナル阻害によるIBD新規治療法開発 Development of a novel treatment for IBD by inhibition of topical JAK signaling in the intestin. 23K07413 2023-04-01 – 2026-03-31 炎症性腸疾患 / JAKシグナル / Drug Delivery System 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 東京科学大学(2024) / 東京医科歯科大学(2023) JAK阻害薬はIBDにおいて高い寛解導入率を示し難治例である生物学的製剤不応例においても有効性が認められているものの、感染症や血栓症など全身性の合併症が問題となり安易な導入は回避すべき位置づけとなっている。我々はこのJAK阻害薬を腸管局所へ直接デリバリーさせる坐剤や注腸製剤といった経直腸投与の局所製剤を開発し、薬剤の全身への曝露を回避することで合併症リスクを低減させつつ、直腸を含めた遠位大腸の炎症の鎮静化、それによる臨床的寛解、QOLの改善、粘膜治癒の達成による発癌抑制、長期予後改善をめざす。 JAK阻害薬はIBDにおいて高い寛解導入率を示し、生物学的製剤の不応例にも有効性が認められているにもかかわらず、感染症や血栓症など全身性の合併症が問題となり安易な導入は回避すべき位置づけとなっている。本研究で我々はこのJAK阻害薬を腸管局所へ直接デリバリーさせる坐剤や注腸製剤といった経直腸投与の局所製剤を開発することで、薬剤の全身への曝露を回避し合併症リスクを低減させつつ、直腸を含めた遠位大腸の炎症の鎮静化、それによる臨床的寛解、QOLの 改善、粘膜治癒の達成による発癌抑制、また長期予後の改善をめざしている。
                            昨年までの研究結果から、以下のような成果が得られた。1)JAK阻害薬の原末から、試験的な注腸剤を独自に調整することに成功した。2)次に正常マウスにおける毒性試験を行うにあたり、1回投与量や投与期間に関して多岐に亘るプロトコールを作成し、適切と思われるいくつかの条件を見出すことができた。3)そしてこれらのプロトコールを用いて野生型C57BL/6マウス にJAK阻害薬を注腸投与し、網羅的な病理学的解析を行った結果、血栓症や日和見感染、発癌性など想定された副反応を一切誘発しない最適な条件を見出すことに成功した。
                            当該研究年度においては安全性が立証された上記プロトコールを用いてDSS腸炎モデルなど複数のIBDモデルマウスを用いて治療の有効性の検討を行った。
                          10. 炎症性腸疾患におけるアドレノメデュリンの病態意義の解明と予後予測因子としての応用 Pathological functions and prognostic application of adrenomedullin in inflammatory bowel disease. 23K07385 2023-04-01 – 2028-03-31 アドレノメデュリン / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 福岡大学 アドレノメデュリン(AM)は抗炎症作用、組織修復作用など多彩な機能を有する生理活性ペプチドである。我々はAMを用いた炎症性腸疾患(IBD)の新規治療薬創薬を推進し、医師主導治験(第2相)でIBDに対するAM療法の安全性と有効性が示唆された。一方でAMは市中肺炎や心不全などの疾患バイオマーカーとしての有用性が報告されており、我々の予備的な検討においてもIBDの疾患活動性と血漿AM値に有意な関連性を認めている。本研究では消化管領域におけるAMの臨床応用を目指し、IBDにおけるAMの病態生理機能、AMを用いた治療効果・予後予測因子の探索、腸炎モデル動物を用いた腸炎におけるAMの病態機能解明を進める。 本研究は、①臨床研究:IBD患者を対象とした臨床研究(1-1 炎症性腸疾患(IBD)患者におけるAMの病態生理機能の解明、1-2 IBDの治療効果・予後予測因子としての応用)、②基礎研究:腸炎動物モデル動物を用いた基礎的研究(AM療法による消化管粘膜修復における血流改善や線維化に関する検討)の二つのテーマで進めている.
                            【臨床研究】今年度はpreliminaryに、IBD患者における治療反応性因子の特定を目的として各種パラメーターを検討した.【方法】2020年11月から2023年3月までに当施設で潰瘍性大腸炎およびクローン病に対してインフリキシマブ(IFX)/アダリムマブ(ADA)療法中の患者を対象とした.バイオマーカー(WBC,ESR,CRP,Plt,Alb,LRG,FC)や活動性スコア(Partial Mayo score・UCEIS,CDAI・SES-CD),IFX/ADA血中濃度,血清・腸管組織中のサイトカイン(TNF-α,IL-6,TGF-β,IL-17,IFN-γ,OSM)を経時的に評価した.【結果】対象は33例で臨床寛解率は67%,粘膜治癒率は45%であった.54/56週時点の臨床寛解群・非臨床寛解群にわけて0週時の各種項目を比較したところ,IFX投与例(n=22)では寛解群でCDAI・PMSが低く,LRGが基準範囲内で,血中濃度も高い傾向にあった.ADA投与例(n=11)では寛解群でCDAI・SES-CD・PMSは低く,FCが基準範囲内であった.血清サイトカインを測定し得た6例で変動値を比較したが差は認めなかった.腸管組織中サイトカインを測定し得た3例では,0週には高値であったTNF-α,TGF-β,OSMが有意に減少していた.
                            【基礎研究】アドレノメデュリン測定系の構築準備を進めた.
                          11. クローン病小腸病変における区域依存的幹細胞特性の解析と再生医療への応用 23K07352 2023-04-01 – 2026-03-31 クローン病 / オルガノイド / シングルセル解析 / 幹細胞 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 東京科学大学(2024) / 東京医科歯科大学(2023) 消化管難病の一つであるクローン病は区域性に病変を呈する特徴を有し、特に小腸活動性区域における粘膜治癒の達成は長期的な予後改善に極めて重要である。しかしながら同疾患の区域性病変分布を規定する要因等は未だ明らかでない。本研究ではクローン病の区域性病変分布が「区域依存的幹細胞特性」に起因するという仮説を立て、同患者の小腸活動性区域・非活動性区域に分布する腸上皮幹細胞についてオルガノイド培養技術を用いたシングルセル解析を実施する。本研究の遂行により、クローン病小腸病変の分布を規定する幹細胞特性の有無が明らかとなるのみならず、同知見を利用した新規治療への速やかな応用も期待できる。 本課題ではクローン病の区域性病変分布は当該消化管領域における「区域依存的幹細胞特性」に起因するという仮説を立て、クローン病患者の小腸活動性区域・非活動性区域に分布する腸上皮幹細胞について、オルガノイド培養技術を用いたシングルセル・レベルの解析を実施し、クローン病小腸病変の分布を規定する幹細胞特性の有無が明らかとすることを目的として研究を推進している。本年度は当初研究計画に従い「小腸内視鏡画像と紐付いた部位・区域別クローン病小腸上皮オルガノイドライブラリの構築」、「部位・区域別クローン病オルガノイドのscRNA-Seq/WGS及び機能解析」、及び「部位・区域別クローン病内視鏡画像-病理画像-幹細胞特性連関の人工知能解析」について研究を実施した。その結果、以下の様な成果を得ている。1)異なる小腸区域よりクローン病患者由来小腸オルガノイドを樹立し、前年度と比較しライブラリ構築における症例数の蓄積が更に進展した。各々のオルガノイドについて、内視鏡画像と紐付く形で構築を更に進展した。効率的にクローン病患者由来小腸オルガノイドを樹立・増幅するための単離・培養法について、標準法を確立した。2)樹立した患者由来オルガノイドについてscRNA-Seqに関する条件検討の最適化を進め、生細胞のうち上皮細胞を高純度で選択・選別しライブラリ構築を行う安定したパイプラインを確立した。3)小腸内視鏡所見(内視鏡スコア)と病変タイプ、疾患活動度等に関する患者データの集積を進め、患者の予後を規定する因子にとして、特に深部小腸に局在する病変の重要性を明らかとした。
                          12. 炎症性腸疾患患者に生じる粘膜治癒後の腹痛機序解析ーHPA axisの包括的評価ー Evaluation of abdominal pain after mucosal healing in patients with inflammatory bowel disease -comprehensive analysis of HPA axis- 22K16013 2022-04-01 – 2026-03-31 炎症性腸疾患 / Quality of life / 脳腸相関 / 過敏性腸症候群 / 腹痛 / HPA axis / 腸内細菌 小区分53010:消化器内科学関連 若手研究 新潟大学 炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)患者では粘膜治癒達成後も高い頻度で腹痛がみられるが、その詳しい病態は解明されていない。ストレスによるHypothalamic-Pituitary-Adrenal(HPA)axisの賦活化が、IBD患者における腹痛に関与している可能性があるが、検討は不十分である。本研究ではまず多角的視点で臨床データを収集し、患者の詳細なクラスタリングを行う。次いで大腸検体、血液検体を用いて、HPA axisに関連する因子を評価する。HPA axisを形成する各因子の関連を詳細に解析し、腹痛の程度を反映するバイオマーカーの発見を目指す。 2025年5月の時点で計410名の消化器疾患患者について、GSRS-IBS、Brief pain inventoryを用いた腹痛や他部位の痛みの調査、精神症状についてHADSを用いての評価、腹痛の有無、便秘・下痢といった消化器症状の有無、SF36を用いたhealth related QOLの調査、といった情報を含むデータベースを作成した。データベースには潰瘍性大腸炎74名、クローン病74名が含まれており、IBD患者については病勢についても調査を行っている。SF36や消化器症状については経時的な変化を記録した。IBD患者40例で便検体の採取を終え、便検体の解析も終了している。腸内細菌の解析結果とデータベース上の臨床症状との関連について解析、結果の解釈を進めている。また結果の解析、解釈と同時に論文執筆中。
                          13. 炎症性腸疾患における腸管上皮障害評価システムの構築 Development of an evaluation system for intestinal epithelial disorders in inflammatory bowel disease. 22K08048 2022-04-01 – 2025-03-31 炎症性腸疾患 / IBD人工モデル / 上皮障害度 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 筑波大学 炎症性腸疾患(IBD)は寛解と再燃を繰り返す難治性の疾患です。現在の治療目標は炎症を制御し症状を改善させるだけでなく、内視鏡的に潰瘍が消失する粘膜治癒が提唱されています。これは炎症細胞に加えて腸管上皮細胞の修復までが予後と密接に関わることを意味していますが、上皮細胞の障害度を評価するシステムは確立されていません。本研究では、IBD患者検体由来の組織からオルガノイドを樹立し多角的な解析により上皮障害度を評価するシステムを構築することを目的としています。得られる成果により、炎症性疾患に対して上皮細胞の視点から疾患を制御するという新しい概念の創出が期待できます。 炎症性腸疾患(IBD)は寛解と再燃を繰り返す難治性の炎症性腸疾患である。現在の治療目標は炎症を制御し症状を改善させるのみならず、内視鏡的に潰瘍が存在しない粘膜治癒が提唱されているが、上皮細胞の障害度を組織学的、機能的に評価するシステムは存在しない。申請者らはヒト大腸オルガノイドによるIBD人工モデルを構築し、IBD上皮脆弱性に関与する因子群を同定した。脆弱性因子を抑制させると炎症環境下においても上皮細胞の増殖促進を認めたことから、上皮細胞の脆弱性はIBDの病勢や予後に密接に関与するかを解析した。その結果、上皮障害度を評価するシステムの基盤を構築している。 Inflammatory bowel disease (IBD) is a refractory inflammatory bowel disease with repeated remissions and relapses. Current treatment targets not only control inflammation and improve symptoms, but also advocate endoscopic ulcer-free mucosal healing, but no system exists to assess the degree of epithelial cell damage histologically and functionally. The applicants established an artificial model of IBD with human colonic organoids and identified a group of factors involved in IBD epithelial vulnerability. As suppression of the fragility factors promoted epithelial cell proliferation even in an inflammatory environment, they analysed whether epithelial cell fragility is closely related to the disease severity and prognosis of IBD. The results provide the basis for a system to assess the degree of epithelial damage.
                          14. プロテオーム解析によるクローン病小腸病変の血液バイオマーカーの探索的研究 Discovery study of biomarkers of small bowel lesion in Crohn’s disease by proteome analysis 22K08019 2022-04-01 – 2025-03-31 クローン病 / 小腸病変 / バイオマーカー / プロテオーム解析 / 小腸 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 藤田医科大学 クローン病は日本では年間5万人近くが罹患し、増加の一途を辿っている原因不明の肉芽腫性炎症性腸疾患で、厚生労働省指定難病になっている。特に、小腸病変単独の小腸クローン病では初期は症状に乏しく、狭窄が高度になってから診断されることが多い。小腸病変の画像診断法にはCT、MRI、小腸造影、内視鏡があるが、スクリーニング検査の位置付けではない。便中カルプロテクチンは鋭敏な炎症マーカーであるが、採便が困難な場合や便の持参に抵抗感がある。血液のバイオマーカーは特異性に乏しく偽陰性も多い。そこで、本課題ではクローン病小腸病変の存在および疾患活動性を予測する世界発の新たな血液バイオマーカーの探索を目的とする。 クローン病小腸病変の存在および疾患活動性を予測する新たな血液バイオマーカーを探索するために、ペプチド分画システムを用いた定量的質量分析法によるプロテオーム解析を行い、以下の候補タンパク質A、Bを同定した。タンパク質Aは活動期小腸/活動期大腸比=4.395、寛解・改善治療前後比=0.912、小腸・大腸寛解治療前後比=0.791、不変治療前後比=0.913。タンパク質Bは活動期小腸/活動期大腸比=0.115、寛解・改善治療前後比=0.358、小腸・大腸寛解治療前後比=0.362、不変治療前後比=0.904。 We aimed to search for new blood biomarkers that predict the presence and inflammation of small bowel lesions in Crohn’s disease by using proteome analysis with quantitative mass spectrometry and a peptide fractionation system. Herein, we identified the following two candidate proteins A and B. Protein A has active small intestine/active colon ratio = 4.395, remission/improvement pre-/post-treatment ratio = 0.912, small and large intestine remission pre-/post-treatment ratio = 0.791, unchanged pre-/post-treatment ratio = 0.913; while protein B has active small intestine/active colon ratio = 0.115, remission/improvement pre-/post-treatment ratio = 0.358, small and large intestine remission pre-/post-treatment ratioratio = 0.362, unchanged pre-/post-treatment ratio = 0.904.
                          15. T細胞移入腸炎モデルを用いた骨格筋由来アイリシンの粘膜治癒効果と作用機序の解明 Mucosal healing effect and underlying mechanisms of skeletal muscle-derived irisin in a T cell-transfer model of colitis 22K07001 2022-04-01 – 2025-03-31 腸管上皮再生 / 腸上皮オルガノイド / Wnt/β-カテニン伝達経路 / Focal Adhesion Kinase / 上皮再生 / オルガノイド / 骨格筋マイオカイン / FAK シグナル経路 / Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路 / Wnt/β-カテニンシグナル経路 / 腸管上皮オルガノイド / T細胞移入大腸炎 / マイオカイン・アイリシン / 粘膜治癒 / T細胞 小区分49030:実験病理学関連 基盤研究(C) 三重大学 骨格筋マイオカイン・アイリシンは骨格筋から分泌され、細胞表面受容体インテグリンに結合することにより、骨や神経再生を促進する作用に加え、腸管粘膜炎症を抑制することが示唆されているがそのメカニズムは依然不明である。アイリシンが上皮細胞インテグリンだけでなく、T細胞インテグリンに結合し、リンパ球活性化を制御するという予備研究データに基づき、本研究ではマイオカイン・アイリシンの抗炎症作用と粘膜治癒効果をT細胞移入慢性腸炎モデルと腸管上皮オルガノイドで検討する。 骨格筋から分泌されるアイリシンの腸管上皮細胞増殖に対する効果についてマウス腸上皮オルガノイドを用いて検討を行った。運動後の血中濃度に相当する有効用量(100 ng/mL) のアイリシンが腸上皮オルガノイドの細胞増殖・分化を積極的に促すことが確認された。アイリシンがWnt/β-カテニンとその標的遺伝子(Lgr5とCyclinD1)の発現を誘導する一方、Focal Adhesion Kinase (FAK)の活性化を促進し、FAK阻害剤でアイリシンの効果が抑制されることから、アイリシンがWnt/β-カテニンシグナル伝達経路に加え、FAK活性化を介し、腸管上皮細胞増殖・分化を促進することが示された。 In this study, mouse intestinal organoids were used to assess the effects of irisin on the proliferation of the intestinal epithelial cells. At a concentration of 100 ng/mL irisin significantly increased the growth of the intestinal organoids and upregulated the Wnt/β-catenin and focal adhesion kinase (FAK) signaling pathway genes. Notably, a FAK inhibitor 14 blocked the effects of irisin on the proliferation of the intestinal epithelial cells by inhibiting FAK phosphorylation, as well as the expressions of Wnt target genes. Taken together, irisin activates Wnt/β-catenin and FAK signaling pathways in the intestinal epithelial cells, thereby promoting intestinal epithelial self-renewal under normal homeostatic conditions and intestinal epithelial regeneration upon damages.
                          16. 炎症性腸疾患の難治化における抗癌剤感受遺伝子Schlafen11の臨床的意義 Clinical significance of the anticancer drug sensitivity gene Schlafen11 in the treatment of refractory inflammatory bowel disease 21K20887 2021-08-30 – 2025-03-31 Schlafen11 / 潰瘍性大腸炎 / 炎症性腸疾患 / JAK阻害薬 / SLFN11 / 腫瘍生物学 0902:内科学一般およびその関連分野 研究活動スタート支援 弘前大学 本邦における炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)の新規登録数は増加傾向であり、その病態解明並びに診断・治療戦略の構築が急務となっている。近年、IBDの内科的治療成績は進歩したが、難治性症例や炎症性発癌により手術を要する症例も依然存在する。IBDにおけるSLFN11発現の評価は、治療薬選択並びに腸管病変検査の最適化につながると考えている。 SLFN11は、内視鏡による重症度スコア増加と相関して潰瘍性大腸炎患者の粘膜で発現していた。その後、内視鏡的寛解した症例において、可逆的なSLFN11抑制が認められた。SLFN11発現はIFN-JAK経路を介して制御されるため、様々なJAK阻害剤は癌細胞株においてSLFN11抑制を確認した。トファシチニブによる治療が奏効した患者では、治療前の腸管上皮細胞におけるSLFN11発現が高かった。粘膜におけるSLFN11発現とアポトーシスの解析では、トファシチニブ有効群では、いずれも上昇していたが、相関は非常に弱く有意ではなかった。 SLFN11 was expressed in UC mucosa accompanied with the severity by MES (n=20/group, p=0.0003). Then, individual paired samples that achieved endoscopic remission or decreased MES by some medications showed reversible SLFN11 depression (n=16, p=0.0013). Since SLFN11 expression was controlled via IFN-JAK pathway, various JAK inhibitors suppressed SLFN11 in cancer cell lines. Furthermore, patients with successfully treated by Tofacitinib had high SLFN11 expression in intestinal epithelial cells at the baseline. Finally, we analyzed the SLFN11 expression and amount of apoptosis in mucosa. Both had been elevated in the Tofacitinib-effective group. However, the correlation was very weak and not significant (r=0.06, p=0.29).
                          17. 大腸上皮細胞を介したIL-22とIL-33のクロストークが粘膜免疫へ及ぼす影響 Effects of IL-22 and IL-33 Crosstalk via Colonic Epithelial Cells on Mucosal Immune Responses 21K07893 2021-04-01 – 2025-03-31 IL-33 / IL-22 / 粘膜防御機構 / 大腸上皮細胞 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 浜松医科大学 一般的に難治性潰瘍性大腸炎の大腸粘膜においては『消化管粘膜バリア機構の破綻→抗原が容易に粘膜下に侵入→免疫担当細胞の活性化→TNFα等の炎症性サイトカインの産生→炎症反応惹起→粘膜治癒の遅延』という悪循環が起きている。この研究においては大腸上皮細胞を介したIL-22とIL-33のクロストークに着目し、全身性の後天的免疫を低下させることなく、腸管粘膜におけるinnate immunityを増強させることによりその悪循環を断ち、さらに難治の原因となる好酸球の活性化を抑制することにより難治性潰瘍性大腸炎を治癒に導くことを目標としている。 潰瘍性大腸炎は粘膜表層に限局した炎症を特徴とし、粘膜防御機構の破綻と免疫細胞の活性化が病態に関与する。近年、上皮細胞由来IL-33およびそれに応答するILC2-好酸球経路の関与が報告されている。一方、IL-22は腸管上皮細胞に作用してSTAT3を介し、ムチンや抗菌ペプチドの産生を促進し、防御機構を強化する。IL-22がIL-33発現を抑制する可能性があり、両者のクロストークが炎症制御の鍵と考えられる。本研究では、大腸上皮細胞におけるこの相互作用の分子機構を解明し、AhR活性化物質によるIL-22誘導を通じた治療戦略の可能性を検証する。 Ulcerative colitis is characterized by inflammation confined to the superficial mucosa, involving disruption of mucosal defense and immune cell activation. Recent studies suggest that epithelial cell-derived IL-33 and the IL-33–ILC2–eosinophil axis contribute to refractory disease. In contrast, IL-22 acts on intestinal epithelial cells, enhancing mucosal defense by inducing mucins and antimicrobial peptides via STAT3. IL-22 may suppress IL-33 expression, and their crosstalk could be central to inflammation control. This study aims to elucidate the molecular mechanisms of this interaction in colonic epithelial cells and explore the therapeutic potential of AhR agonist-induced IL-22 expression.
                          18. 粘膜バリアの再構築に基づく再燃予防を目指す炎症性腸疾患に対する治療戦略の創出 Creation of New Therapeutic Strategy for Inflammatory Bowel Disease Aiming to Prevent Relapse Based on Rebuilding Mucosal Barrier 21K06593 2021-04-01 – 2024-03-31 動的ネットワークバイオマーカー / ゆらぎ / 未病 / Wars / ヒトIBD / 遷移点 / IBD / 大腸上皮細胞 / 粘膜治癒 / 腸管上皮細胞 / オルガノイド / 粘膜バリア / 粘膜免疫 / 腸管マクロファージ / 創傷治癒 小区分47040:薬理学関連 基盤研究(C) 京都薬科大学(2023) / 富山大学(2021-2022) 現在、腸管の難病である炎症性腸疾患の治療において長期寛解維持を実現することが重要であると世界的に認識されている。しかし、再燃の予防または寛解維持を目的とした治療薬の選択肢は少なく、長期寛解維持を実現させる新規治療薬の創出が求められている。これまでの研究から、腸管マクロファージのIL-10産生を亢進させることが、再燃を予防し、長期の寛解維持を実現できるのではないかと考え、探索研究から腸管マクロファージにおけるIL-10産生を亢進させる候補薬物としてベルベリンを見出した。そこでベルベリンが、再燃を予防することにより、長期寛解維持を実現するリード化合物として有用であることの検証を本研究で遂行する。 本研究は再燃を予測して予防的介入を行うことを目的に、遺伝子発現の揺らぎに着目して健康状態から疾病状態への遷移を科学的かつ客観的に捉える新たな数理解析手法であるDNB解析をIBDモデルマウスに適用した。その結果、大腸炎の発症前に27個のDNB遺伝子が同期して大きく揺らぐ遷移前状態すなわち未病状態を検出した。次にDNB遺伝子が病態生理学的に意味をもつ遺伝子であることを実証するため、制御理論解析およびGEO databaseを用いたヒトIBD患者でのDNB遺伝子の発現解析を行い、DNB遺伝子の中でWarsに介入したところ、WarsはIBD病態にて保護的に働くことが示唆された。 In this study, we applied DNB analysis, a new mathematical analysis method that focuses on fluctuations in gene expression and scientifically and objectively captures the transition from a healthy state to a disease state, to IBD model mice with the aim of predicting relapse and providing preventive intervention. As a result, we detected a tipping point, i.e., a pre-disease state (Me-byo), in which 27 DNB genes fluctuate substantially and synchronously before the onset of colitis. Next, to determine the pathophysiological significance of the 27 DNB genes, we calculated control theory-based DNB intervention scores and investigated the expression of the 27 DNB genes in human patients with IBD by reanalyzing datasets in the GEO database. We then intervened in Wars among the 27 DNB genes, suggesting that Wars plays a protective role in IBD.
                          19. 組織学的治癒を目指したIBD病態リセット機構の解明 Elucidation of IBD pathology for histological remission 21H02898 2021-04-01 – 2024-03-31 炎症性腸疾患 / 体外モデル / ヒト体外モデル / 炎症塑性 / 塑性リセット 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(B) 筑波大学 炎症性腸疾患(IBD)は難病であり再燃することが問題です。それは治療しても腸粘膜の異常が残り、バリア機能が低下しているためとされています。実際の臨床では粘膜だけでなく組織まで治す治療が目標とすることが提唱されていますが、その原因は不明です。本研究ではヒト大腸体外IBDモデルを利用して、長期炎症による上皮細胞病態形成機構及びその病態を回復させる分子機構を解明し、IBD組織学的治癒開発の基盤構築を目的としています。得られる成果は慢性炎症における塑性病態をリセットする機構を解明することにより、IBD治療だけでなく他の炎症性難病の治療開発及び炎症発癌における発癌予防など幅広い活用が期待できます。 ヒトIBD擬似モデルにおける腸管上皮幹細胞炎症塑性獲得機構解析においては、長期炎症特異的因子群の発現からSLFN11を同定し、CRISPRでの欠損もしくは強制発現により動揺させた。また、IBD患者臨床検体にても発現していることを確認した。また、本モデルで炎症によりテロメア長が短縮することを発見した。ヒト細胞において炎症刺激のみでテロメアが短縮することを初めて発見した。炎症刺激除去後もテロメア短縮は持続しており、IBD病態との関連が示唆された。 In an analysis of the mechanism of intestinal epithelial stem cell inflammatory plasticity acquisition in a human IBD pseudomodel, SLFN11 was identified from the expression of long-term inflammation-specific factors and was disrupted by deletion or forced expression using CRISPR. It was also confirmed that it was expressed in clinical specimens from IBD patients. We also discovered that inflammation shortens telomere length in this model. We discovered for the first time that inflammatory stimulation alone shortens telomeres in human cells. Telomere shortening persisted even after removal of the inflammatory stimulus, suggesting a relationship with IBD pathology.
                          20. ヒト体外腸疾患in vivoモデルを用いたIBD上皮脆弱性リセット治療の開発 The development of the treatment for complete remission of IBD using human in vivo model 20K22867 2020-09-11 – 2022-03-31 炎症塑性リセット / オルガノイド / ヒト体外モデル / 潰瘍性大腸炎 / 炎症性腸疾患 / 粘膜治癒 / 上皮脆弱性 0902:内科学一般およびその関連分野 研究活動スタート支援 東京医科歯科大学 炎症性腸疾患(IBD)は一旦「寛解」するも「完治」はせず、再燃するため罹病期間が長期となる難病である。寛解時の腺管のねじれなど腸管上皮細胞の形質塑性や脆弱性による潰瘍再発は以前より指摘されているがその原因は不明である。申請者は長期炎症で不可逆的に機能不全に陥った上皮細胞「塑性」こそ病態の根幹であり、塑性獲得機構及び脆弱性リセット機構の解明がIBD病態解明や治療法開発に直結すると着想した。本研究は独自に構築したマウスモデルをさらにヒト体外長期炎症in vivoモデルにまで発展させ、ヒト腸管上皮幹細胞における長期炎症下での塑性獲得機構及び脆弱性リセット機構を解析する。 炎症性腸疾患(IBD)は一旦「寛解」するも「完治」はせず、再燃するため罹病期間が長期となる難病です。寛解時でも腺管のねじれなど腸管上皮細胞は完全に正常化しておらず、脆弱性による潰瘍再発は以前より指摘されていますがその原因は不明です。本研究においてモデルを構築し、炎症モデルにおける網羅的遺伝子発現解析から特異的因子を同定しました。これらの因子を欠損させると炎症刺激下においても細胞増殖を認めるなど炎症脆弱性のリセットに成功しました。潰瘍性大腸炎患者においてもその因子の発現を確認したことから新規治療標的であることが示唆されました。 Inflammatory bowel disease (IBD) is an intractable disease that once “in remission” is not “cured,” but rather relapses, resulting in a prolonged illness period. Even in remission, the intestinal epithelial cells, such as the crypt distortion, have not completely normalized, and ulcer recurrence due to its fragility has long been reported, but its cause is unknown. In this study, we constructed a model and identified specific factors based on comprehensive gene expression analysis in an inflammatory model using human colonic organoids. We succeeded in resetting the inflammatory vulnerability, as cell proliferation was observed even under inflammatory stimuli when these factors were deficient. The expression of the factors was also confirmed in patients with ulcerative colitis, suggesting that they are novel therapeutic targets.
                          21. 炎症性腸疾患の粘膜治癒過程における浸透圧変化の影響 Osmotic change in the mucosal healing process of infammatory bowel disease 20K17061 2020-04-01 – 2022-03-31 炎症性腸疾患 / 浸透圧変化 / 粘膜治癒 小区分53010:消化器内科学関連 若手研究 慶應義塾大学 IBDは原因不明の難治性腸炎であり、潰瘍性大腸炎やクローン病がそれに含まれる。従来は臨床症状に重点が置かれていたが、近年は腸管の粘膜治癒を病理学的に評価するようになり、また、新しい生物学的製剤や免疫調節薬、食事療法の改良などにより治療選択肢は広がったものの、体系的な治療指針を示すには未だ至っておらず、本疾患の病態発症機序の解明ならびに新規治療標的の発見が必要である。本研究は、IBD腸管の粘膜治癒過程における粘膜微小環境の浸透圧変化と免疫系細胞の動きに注目し、両者を関連付ける分子としてNFAT5の働きに注目し、粘膜治癒をエンドポイントとする新しいIBD治療の開発を目標とするものである。 IBD腸管の粘膜治癒過程における粘膜微小環境の浸透圧変化と免疫系細胞の動きに注目し、両者を関連付ける分子としてtonicity-responsive enhancer-binding protein (tonEBP)の働きに注目し、粘膜治癒をエンドポイントとする新しいIBD治療の開発を目的とした。本研究により、粘膜での浸透圧変化によりtonEBPをはじめとした浸透圧応答タンパクが間質に存在するマクロファージにおいて活性化することを見出し、かつその活性化が粘膜治癒過程と相関することが明らかとなった。 This study focused on osmotic changes in the mucosal microenvironment and the dynamics of immune system cells during the mucosal healing process of the intestinal mucosa in inflammatory bowel disease (IBD), and focused on the function of tonicity-responsive enhancer-binding protein (tonEBP) as a key molecule that links the two. The aim of this study was to develop a new IBD treatment with mucosal healing as the endpoint. In this study, we found that osmotic pressure-responsive proteins such as tonEBP are activated in macrophages in the interstitial space by osmotic pressure changes in the mucosa, and that the activation is correlated with the mucosal healing process.
                          22. クローン病患者おける抗IL-12/23p40抗体の治療効果予測因子の同定 Exploration of predictive markers of therapeutic response to anti-IL-12/23p40 antibody in patients with Crohn’s disease. 20K16992 2020-04-01 – 2023-03-31 クローン病 / 抗IL-12/23p40抗体 / Th分化 / 遺伝子発現解析 / 潰瘍性大腸炎 小区分53010:消化器内科学関連 若手研究 九州大学 クローン病は炎症性腸疾患の一病型であり、再燃寛解を繰り返すことで狭窄や瘻孔を形成する難治性の病態である。抗Interleukin-12/23p40抗体であるUstekinumab(UST)は、抗TNF-α抗体製剤不応例や効果減弱例への治療効果が明らかとなり、難治性クローン病に対する新たな治療選択肢と位置づけられている。一方で、USTへの治療効果予測因子に関する知見少なく、UST不応例に対する治療指針も定まっていない。本研究では、UST新規導入患者の腸管粘膜や血液サンプルにおける遺伝子プロファイルや免疫関連因子の解析を通じて、治療効果予測因子およびUST不応例への新たな治療標的の同定を目指す。 本研究では、抗IL-12/23p40抗体療法を新規導入したクローン病患者の末梢血T細胞におけるTh分化の変化を解析した。また、腸管粘膜組織における遺伝子発現解析を行った。同様の解析を抗TNFα抗体療法を新規導入した患者にも行い、両者の比較を行った。結果、抗IL-12/23p40抗体療法を行った患者群において、治療後に末梢血中のTh17細胞比率の有意な減少が確認された。また、腸管粘膜組織においてはTh17分化に関わる遺伝子発現が抑制されていた。この抑制された遺伝子は抗TNFα抗体療法で変動したものとは別種類のものであった。 In this study, we analyzed changes in Th differentiation in peripheral blood T cells from Crohn’s disease patients newly inducted anti-IL-12/23p40 antibody therapy. Gene expression analysis in intestinal mucosal tissues was also performed. The same analysis was performed on patients newly inducted anti-TNFα antibody therapy, and the two groups were compared. The results showed a significant decrease in the ratio of Th17 cells in peripheral blood in the group of patients treated with anti-IL-12/23p40 antibody. In addition, gene expression related to Th17 differentiation was suppressed in the intestinal mucosa tissue. The suppressed genes were differeant from those altered by anti-TNFα antibody therapy.
                          23. 潰瘍性大腸炎患者における免疫学的便潜血検査自宅測定の有用性の検討 Investigation of the usefulness of home-based measurement of fecal immunochemical test in patients with ulcerative colitis. 20K12669 2020-04-01 – 2024-03-31 潰瘍性大腸炎 / 免疫学的便潜血検査 / セルフマネジメント / 在宅自己測定 / 免疫学的便潜血反応 / 在宅自己管理検査システム 小区分90130:医用システム関連 基盤研究(C) 岡山大学 潰瘍性大腸炎患者による免疫学的便潜血検査の自宅測定の実施が可能であるか,またその結果が再燃の早期予測に貢献し,予後向上に寄与できるかを明らかにするため,以下の研究を行う.①潰瘍性大腸炎患者による在宅便潜血検査と大腸内視鏡検査における粘膜炎症の評価結果の関連を解析する.②在宅便潜血検査介入群(自宅にて2週毎に便潜血測定と症状スコアをつける群)と非介入群(自宅にて2週毎に,症状スコアをのみをつける群)に割り付け,追加治療必要な再燃の有無,外来院回数,入院の有無,1年後の内視鏡的活動性などの比較を行う. 本研究の最終の目的は,潰瘍性大腸炎患者による免疫学的便潜血検査の在宅自己測定が再燃の早期予測に貢献し,予後向上に寄与できるかを明らかにすることである.まず今期は,患者が便潜血キットを用いて,①自宅で測定を問題なく行うことができ,その測定結果が院内測定結果や大腸粘膜の炎症所見(内視鏡所見)と一致するかの確認,②在宅自己測定の継続が可能かの検証を行うことであった.①約90%の患者で在宅自己測定結果と院内測定結果は整合性を認めており,在宅測定で陽性であった症例は内視鏡的活動性が高く,多くが治療強化を必要とした.②現在20例中18例が終了,2例が間もなく終了し,完了となるが,継続性も良好である. The final objective of this study is to clarify whether home-based measurement of the fecal immunochemical test by patients with ulcerative colitis can contribute to early prediction of relapse and improve prognosis. The objectives of this term are to clarify the following, (1) patients can easily perform the test at home using a kit and home-measurement result are consistent with in-hospital measurement results and colonic inflammatory findings (endoscopic findings). (2) to verify whether patients can continue to perform the home self-measurement. (1) The results of home-based measurement were consistent with the in-hospital results in approximately 90% of patients, and patients with positive home-measurement result had colonic inflammation and required intensified treatment. (2) Eighteen of the 20 patients have been completed, and the continuity of h home-based measurement appears to be good.
                          24. 直腸環境の特殊性からみる潰瘍性大腸炎の再燃機序 Mechanisms of Ulcerative Colitis Relapse Based on the Particularities of the Rectal Environment 20K08389 2020-04-01 – 2023-03-31 潰瘍性大腸炎 / 再燃機序 / 直腸環境 / 粘膜バリア機能 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 九州大学 潰瘍性大腸炎は、遺伝因子・環境因子・防御因子・免疫学的因子が複雑に絡み合い発症し、再燃・寛解を繰り返す難治性疾患である。直腸から炎症が生じ結腸全体に広がっていく特徴を有しているが、なぜ直腸から炎症が伸展していくか、何が発症のトリガーになっているか不明である。発症前の病態を評価することは困難であるが、治療後の炎症改善時 (寛解時) の病態を詳細に評価することは可能であり、寛解時の直腸を多角的に検討することで再燃に係わる因子や発症機序を解明出来ると考えている。 潰瘍性大腸炎 (以下UC)は、再燃・寛解を繰り返す難治性疾患であるが、明らかな原因は不明である。直腸から炎症が生じ結腸全体に広がっていく特徴を有しているが、なぜ直腸から炎症が伸展していくか、何が発症のトリガーになっているかも分かっていない。今回、我々は寛解時UC患者を多角的に検討し再燃に係わる因子を解析した。今回の解析から、粘膜治癒が得られている寛解期UC患者では、結腸と直腸において細菌叢に差はなかったが、粘膜バリア機能は直腸のみにおいて低下していることが分かった。さらに粘膜のバリア機能低下はIL-1β、IL-6やClaudin 2の発現亢進と関与があることを見出した Ulcerative colitis (UC) is an intractable disease that repeatedly relapses and remits, but its cause remains unknown. UC is characterized by inflammation that begins from the rectum and spreads to the entire colon, but it is not well known why the inflammation extends from the rectum or what triggers the onset of the disease. In this study, we analyzed factors related to relapse in patients with UC in remission from various angles. We found no difference in the bacterial flora between the colon and rectum of patients with UC in remission who had achieved mucosal healing, but the mucosal barrier function was decreased only in the rectum. Furthermore, we found that the decreased mucosal barrier function was associated with increased expression of IL-1β, IL-6, and Claudin 2.
                          25. 創傷の治癒過程に異所性発現するAIDの新規「細胞外マトリクス構築制御」機能の解明 Novel function “regulation of extracellular matrix construction” of ectopic AID expression in wound healing process. 20K08318 2020-04-01 – 2023-03-31 炎症性腸疾患 / AID / 異所性発現 / AICDA / DSS / 大腸上皮細胞 / 上皮再生 / 細胞外マトリックス / 大腸炎 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 久留米大学 難治性の慢性炎症疾患である潰瘍性大腸炎とクローン病患者の寛解状態を長く維持するためには『粘膜治癒させることが重要』であるが、粘膜の創傷治癒過程に関する理解が不十分である。近年では、基底膜側に存在する間質細胞が腸管上皮幹細胞の恒常性維持と上皮構造のリモデリングに重要な事が報告された 。そこで本研究では、炎症条件下に大腸上皮細胞で異所性発現するActivation-Induced cytidine Deaminase (AID)が、ECM関連分子の発現調節を介して、損傷した大腸粘膜の創傷治癒に重要な間質細胞の種類(バランス)を変化させている可能性について検討を行う。 炎症によって大腸上皮細胞に異所性発現するAIDの役割を明らかにするために、DSS誘発大腸炎モデルを野生型およびAID欠損マウスに用いて検討した。大腸炎の誘導に伴い減少した体重の回復がAID欠損マウスにおいて遅延すること。そして回復期に移行した野生型とAID欠損型マウスの大腸上皮細胞において、細胞外マトリックス関連分子の発現が有意に変化するだけでなく、大腸組織の疾患スコアが野生型と比してAID欠損マウスにおいて有意に高いことが分かった。またAIDを安定発現させた細胞株を用いた実験では、AIDが標的遺伝子に結合することでDNAの脱メチル化を誘導し、その遺伝子の発現を調節する可能性を明らかにした。 To evaluate the role of AID, which is ectopically expressed in colonic epithelial cells (CECs) under inflammatory conditions, wild-type (WT) and AID-deficient mice were evaluated using the DSS-induced colitis model. Restoration of body weight loss after colitis induction is delayed in AID-deficient mice compared to WT mice. In addition, the expression of extracellular matrix-associated molecules in CECs of WT and AID-deficient mice transitioned to the recovery phase was not only significantly altered, but also the disease score of colon tissue was significantly higher in AID-deficient mice compared to WT mice. Additionally, we found that AID, which is ectopically expressed under inflammation conditions, binds to target genes and induces DNA demethylation, possibly regulating the expression of those genes using colorectal cancer cell lines stably expressing AID.
                          26. NK細胞サブセットによるクローン病新規治療標的の抽出 NK cell-mediated immune regulation for IBD treatment 20K08304 2020-04-01 – 2023-03-31 免疫学 / 腸管免疫 / 消化器病学 / 炎症性腸疾患 / 免疫 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 我々はこれまでの一貫して腸管粘膜における免疫寛容の誘導機構に注目してきた研究結果から、本研究計画では NK細胞サブセットによる細胞傷害活性を応用したクローン病に対する新規治療法開発を遂行する。本研究はNK細胞による病原性T細胞の制御機構という独自の概念に着目しつつ、NK細胞サブセットの機能解析法、培養技術・移植技術、三次元生体イメージング技術等、我々が独自に樹立している技術を融合し、得られる成果からクローン病新規治療法の開発基盤と技術基盤の樹立を目指した先駆的研究になると期待する。 本研究は申請者がこれまで見出してきた「NK細胞による病原性T細胞の制御機構」という独自の概念を基盤として、NK細胞サブセットによる細胞傷害活性を解明しつつ、その機能不全によって誘導される免疫異常からクローン病に対する新規治療標的を抽出することを目指している。その結果、当該研究期間に得られた成果から、生理的条件下でNK細胞クローンの免疫学的解析が可能であること、そしてT細胞に影響を与えるNK細胞サブセットの免疫学的機能を通じ、クローン病の新規治療標的分子の抽出が可能であることが示唆された。今後、クローン病に対する新規治療法開発の基盤に繋がると期待する。 Inflammatory bowel disease (IBD), including Crohn’s disease, is characterized by unrestrained effecter T cell activation that results in the production of a variety of pro-inflammatory cytokines as well as other mediators. Understanding the mechanisms of lymphocyte regulation is critical in the study of dysregulated mucosal inflammation such as IBD. Associated with this, several studies have revealed the importance of natural killer (NK) cells in the pathogenesis of several autoimmune diseases. In this regard, we were able to observe ex vivo and in vivo activities of effecter T cells modulated by a subset of NK cells. Defining the physiological mechanisms of cytotoxicity by NK cells will lead to a greater understanding of how manipulating effecter lymphocyte function may provide insights into novel treatment of IBD.
                          27. ガス分子薬開発に向けたヘムオキシゲナーゼ/一酸化炭素による腸内環境調整作用の解明 Heme oxygenase/carbon monoxide-mediated intestinal modulation for the development of gas molecule drugs 20K08292 2020-04-01 – 2024-03-31 Heme Oxygenase-1 / 一酸化炭素 / Bach1 / 潰瘍性大腸炎 / Paraprevotella / Heme oxygenase-1 / 腸内細菌叢 / 皮膚潰瘍 / 大腸潰瘍 / 一酸化炭 / マクロファージ / ヘムオキシゲナーゼ / 腸内環境 / 炎症性腸疾患 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 京都府立医科大学 これまでに我々は、先行研究結果である外因性一酸化炭素(Carbon monoxide: CO)による腸炎抑制効果の知見を元に、COの毒性を克服した新規ガス状分子治療薬の開発を達成し、局所遊離型CO製剤により腸管炎症病態の抑制、粘膜治癒の促進が得られることを明らかにしてきた。しかしながら、腸管炎症病態時に腸管粘膜内に発現亢進するHO-1や外因性COによる腸内細菌叢を含めた腸内環境調整作用についての詳細は不明のままである。そこで、本研究では、COをガス状治療分子とした臨床治療応用を支える基盤研究として、COを介した腸内環境調整作用に着目し、その分子機構の詳細を検討する。 Bach1欠損マウス(Heme Oxygenase-1(HO-1)高発現マウス)では、デキストラン硫酸(DSS)惹起性腸炎が野生型マウスに比較して抑制されることをもとに、Bach1欠損マウス(HO-1高発現マウス)の腸内環境を移植された野生型マウスにおいてもDSS惹起性腸炎が抑制されることを明らかにした。さらに、HO-1高発現環境下で優位性を示す腸内細菌の一つとして同定されたParaprevotella claraの投与により腸炎が抑制されること、さらには、潰瘍性大腸炎患者で有意に減少している菌種であることを確認しており、抗炎症性細菌として有望な候補菌であると考えられた。 Based on the fact that dextran sulphate (DSS)-induced enteritis is suppressed in Bach1-deficient mice (mice with high expression of Heme Oxygenase-1 (HO-1)) compared to wild-type mice, it has been shown that DSS-induced enteritis was suppressed in wild-type mice transplanted with the intestinal environment of Bach1-deficient mice (HO-1-high expressing mice). Furthermore, the administration of Paraprevotella clara, which was identified as one of the intestinal bacteria showing predominance in the HO-1 high-expressing environment, suppressed intestinal inflammation, and was also found to be a significantly reduced species in patients with ulcerative colitis. It was considered to be a promising candidate bacterium as an anti-inflammatory bacterium.
                          28. 腸管オルガノイドを用いた、好酸球による炎症性腸疾患への関与機構の解明 Unraveling the role of eosinophils in inflammatory bowel diseases using human enteroids 20K08264 2020-04-01 – 2024-03-31 Sigle-8 / 好酸球 / 炎症性腸疾患 / Siglec-8 / シアル酸 / 腸管オルガノイド / Neu5Gc 小区分52050:胎児医学および小児成育学関連 基盤研究(C) 京都府立医科大学 好酸球はその多くが腸管粘膜中に定住するが、腸管感染症や炎症性腸疾患では、これまで 考えられていたような炎症惹起のみならず、粘膜治癒・組織保護にも働くことが分かってきた。これまでの申請者らの研究結果からは、好酸球がシアル酸受容体 Siglec-8 を介して粘膜障害を認識し、組織中の活性酸素濃度を適正化する作用が想定される。
                            炎症性腸疾患では重症度に相関して好酸球が血中・組織中に増多しており、好酸球による粘膜 修復の機能不全が考えられる。そこで、オル ガノイドと好酸球との共培養系を構築し、好酸球による活性酸素産生能の変化、粘膜修復への影響を評価する。 本研究の基金提供期間がコロナ禍と重なり、研究代表者が地域の新型コロナ対策の責任者となったため、研究へのエフォートを捻出できなかった。
                            コロナ禍の終息後も、研究代表者の職場異動があり、研究エフォートを確保することができなかった。
                            以上から、研究時間を蓄積することができず、予備実験のみで研究機関が終了してしまったため、有意な研究成果は得られていない。 The funding period for this study coincided with the COVID-19 pandemic, and the principal investigator, who happened to be in charge of regional control of COVID-19, was unable to allocate the effort for the study.
                          29. 炎症性腸疾患における新規粘膜関連細菌叢検出法を用いた腸粘膜炎症プロファイルの作成 Intestinal mucosal inflammation profiling using a novel mucosa-associated bacterial flora detection method in inflammatory bowel disease 20K07801 2020-04-01 – 2025-03-31 潰瘍性大腸炎 / 腸粘膜 / 腸粘液 / ソマトスタチン / 粘膜関連細菌叢 / RNAシークエンス / 神経伝達物質 / 神経伝達因子 / クローン病 / フローサイトメトリー 小区分52010:内科学一般関連 基盤研究(C) 名古屋大学 炎症性腸疾患の腸表面の粘膜関連細菌叢から粘膜固有層までの免疫増幅経路は同時に同部位で評価すべき事象である。同じ部位の内視鏡生検検体を用いて、A)粘膜関連細菌叢の最適検出法を見出したうえで採取、細菌16SrRNA次世代シークエンス解析を行う。B)生検組織のフローサイトメトリーによる免疫担当細胞とT細胞の分布解析、細胞内炎症性サイトカインの定量を行い、免疫応答をカテゴリー化する。C)粘膜内蛋白質量解析により、炎症反応のKeyとなる分子の量と種類につき網羅的に解析する。A)B)C)から得た結果を疾患活動性とリンクさせ、腸粘膜炎症プロファイルを作成する。 潰瘍性大腸炎(UC)患者を対象に、内視鏡下での新規腸粘液採取法(ネット・ブラシカテーテル)を用い、腸粘液および粘膜からの細菌叢および炎症関連因子の解析を行った。初年度より、採取手技の確立と粘液内細菌叢の16SrRNAシークエンス、質量分析により炎症マーカーの同定を行った。腸粘液のRNAシークエンスにより神経伝達関連因子が炎症と関連することが判明し、因子X(ソマトスタチン, SST)を特定し、寛解期の粘液中で高発現し、抗炎症作用とバリア機能保持との関係が示唆された。フローサイトメトリー、qRT-PCR、ELISAによりSSTの動態を検証し、活動期との比較で一貫した傾向を再現した。 In patients with ulcerative colitis (UC), we employed novel endoscopic mucus sampling techniques (net and brush catheters) to analyze the mucosa-associated microbiota and inflammation-related factors from intestinal mucus and mucosal tissue. From the first year, we established reliable sampling procedures and identified inflammatory markers using 16S rRNA sequencing and mass spectrometry of mucus samples. RNA sequencing of the intestinal mucus revealed that several neuroregulatory factors were associated with inflammation, among which somatostatin (SST), designated as Factor X, was identified. SST was highly expressed in the mucus during remission, suggesting its anti-inflammatory role and involvement in maintaining barrier function. The dynamics of SST were further validated through flow cytometry, qRT-PCR, and ELISA, consistently demonstrating its differential expression between remission and active disease phases.
                          30. 腸管免疫寛容誘導と炎症性腸疾患発症過程の解析 Analysis of pathophysiology in the setting of IBD 20H03658 2020-04-01 – 2023-03-31 免疫学 / 腸管免疫 / 消化器病学 / 炎症性腸疾患 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(B) 東京医科歯科大学 我々はこれまでの研究結果をもとに、本研究計画ではIBDモデルの発症過程を詳細に解析する。本研究は「腸管粘膜の免疫恒常性はGALTにおける免疫寛容の誘導によって制御され、その異常がIBDの本態となる」という概念に着目しつつ、新規バイオセンサーおよび生体イメージング技術等、我々が独自に樹立している技術を融合し、得られる成果からはこれまで理解し得なかったGALTにおける新規免疫応答が見出される。またIBDの発症や永続性といった病態メカニズムの理解が可能となり、最終的にIBDの特異的病態に対する新規診断・治療法開発の基盤を創出するものと期待される。 本研究は申請者がこれまで見出してきた「腸管粘膜の免疫恒常性はGALTにおける正常な免疫寛容の誘導によって制御される」という独自の概念を基盤として、5次元生体イメージング技術を応用しつつ、GALTにおける免疫調節機構を詳細に解析することを目指している。その結果、当該研究期間に得られた成果から、定常時のみならず腸炎誘発時の腸管粘膜における抗原提示細胞群の客観的な生化学的、細胞生物学的な解析がin vitroおよびin vivoで可能であることを証明した。さらに現在、こうした実験腸炎モデル誘発時における抗原提示細胞群やリンパ球の詳細な生化学・細胞生物学的解析、また生体イメージング観察を進めている。 Inflammatory bowel disease (IBD), including Crohn’s disease and ulcerative colitis, is characterized by unrestrained lymphocyte activation that results in the production of a variety of pro-inflammatory cytokines and other mediators. Understanding the mechanisms of lymphocyte activation is critical in the study of dysregulated mucosal inflammation such as IBD. In this regard, we have recently established an intravital imaging system to investigate several murine models of IBD, such as DSS colitis and oxazolone colitis. Associated with this, we were able to observe in vivo activities where functions of effecter lymphocytes can be activated in several IBD models. Defining the physiological mechanisms of unrestrained lymphocyte activation will lead to a greater understanding of how manipulation of effecter lymphocyte function may provide insights into novel treatment of IBD.
                          31. 潰瘍性大腸炎における「JAK分子ネットワーク・プロファイル」の解明と治療への応用 Investigation of novel JAK-STAT pathway in ulcerative colitis. 19K17484 2019-04-01 – 2021-03-31 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / JAK阻害薬 / JAK阻害剤 / JAKファミリー分子 小区分53010:消化器内科学関連 若手研究 東京医科歯科大学 本研究ではJAK阻害薬の大腸における効果を独自に確立したオルガノイド培養系やシングルセル解析系を用い、免疫担当細胞・間葉系細胞・腸上皮細胞について分子生化学的・機能的解析を行い、同薬剤が各細胞を標的として如何なる効果を発揮し治療効果の有無が決定されるのか描出することを目指す。本研究の遂行により、複数のサイトカインシグナルが集結するJAK分子を介したシグナル伝達が免疫担当細胞-腸上皮細胞-間葉系細胞連関の中で難治性潰瘍性大腸炎の病態を制御する疾患特異的な「JAK分子ネットワーク・プロファイル」を明らかとし、「炎症の制御」と「上皮再生」が両立・協調可能な「治療最適化」の基盤構築が期待できる。 潰瘍性大腸炎は原因不明の炎症と難治性の潰瘍を起こす難病である。治療には炎症を制御する薬剤が用いられ、そのうちJAK阻害薬は、炎症を引き起こす複雑なサイトカイン・ネットワークを構成するJAK経路を特異的に阻害する。本研究はJAK阻害薬が効果を発揮するために、腸管における多彩な粘膜構成細胞の如何なる細胞を標的とし、如何なる分子機序を介して効果を発揮するのか、そしてその効果の有無が規定される条件を、臨床情報の解析と、患者由来の組織検体を用いた最新のシングルセル解析を行なって解明を試みた。治療有効性を規定する因子の同定にはさらなる解析が必要であったが、臨床情報から治療効果予測に有用な因子が同定された。 Ulcerative colitis is an idiopathic disease which causes chronic inflammation in colon. For the treatment of ulcerative colitis, anti-inflammatory agents are used such as corticosteroid, immune-modulator and biologic agents. JAK inhibitor is one of biologic agent blocking strongly pro-inflammatory JAK pathway in colonic tissue. JAK pathway has a vast cytokine-network interacting numerous other pathways, and it needs to be studied deeply and broadly. This study, using colonic tissue derived from the patients with ulcerative colitis, was aiming to investigate what kind of cells JAK inhibitor has any effects, how JAK inhibitor reduces and blocks proinflammatory response in colonic tissue, and what is the key biomarkers and/or conditions that regulate its treatment efficacy of the patients. We performed single-cell PCR analysis on organoids generated from colonic tissue derived from the patients with ulcerative colitis.
                          32. RNA結合蛋白-RNA相互作用からみた炎症性腸疾患の発症・進展、合併症の病態解明 Elucidation of pathophysiology for inflammatory bowel disease from the perspective of RNA binding protein-RNA interaction 19K17419 2019-04-01 – 2023-03-31 炎症性腸疾患 / RNA結合蛋白 / micro RNA / エクソソーム / RNA結合蛋白-RNA相互作用 / 腸管外合併症 / RBP・RNA相互作用 小区分53010:消化器内科学関連 若手研究 旭川医科大学 本研究では、炎症性腸疾患(IBD)の腸炎発症および腸管外合併症の発生進展のメカニズムを、RNA結合蛋白(RBP)・RNA相互作用の観点から解明することを目的とする。IBD患者の腸管組織、血清・血清エクソソームにおけるRBPの発現変化および、発現変化のあったRBPに結合するmRNAやmiRNAをトランスクリプトーム解析やマイクロアレイ解析を用いて同定し、腸管炎症の程度や腸管外合併症の有無などと比較検討する。RBPのsiRNAライブラリーや、炎症を誘発した腸管上皮プライマリー細胞・腸炎モデルマウスを用いて、RBP・RNA相互作用の関与について基礎的検討を行う。 炎症性腸疾患(IBD)の腸管・腸管外炎症の発生進展のメカニズムをRNA結合蛋白(RBP)と標的RNA相互作用の面から解析した。実験腸炎モデルや患者由来検体を用いて、腸管組織内のRBPおよび血清由来エクソソーム内のRBPや、標的となるRNAが腸炎の増悪・回復時に変動することを明らかにすることより、RBP-RNA相互作用がIBD病態に関与している可能性を示した。また、IBD患者由来血清による実験腸炎モデルの増悪を明らかにした。エクソソームやRBP-RNA相互作用の面からIBD病態解明および新規治療標的の開発に向けた更なる検討を進める必要がある。 The mechanisms underlying the development and progression of intestinal and extraintestinal inflammation in inflammatory bowel disease (IBD) were analyzed from the perspective of RNA-binding protein (RBP) and target RNA interactions. Using experimental enteritis models and patient-derived samples, we found that RBPs in intestinal tissues and in serum-derived exosomes in addition to changes in target RNAs fluctuate during exacerbation and recovery from enteritis, indicating that the RBP-RNA interaction might be involved in the pathogenesis of IBD. In addition, the exacerbation of experimental enteritis model by the administration of serum derived from IBD patients was clarified in this study. Further research should be conducted to elucidate the pathogenesis of IBD and develop new therapeutic targets in terms of exosome and RBP-RNA interactions.
                          33. 敗血症における腸管上皮エキソソームによるパラクライン的炎症制御作用 Study of the anti-inflammatory roles of the exosomes from intestinal epithelial cells in sepsis via a paracrine effect 19K09392 2019-04-01 – 2022-03-31 腸管粘膜免疫 / T細胞 / 腸管上皮細胞 / エキソソーム / 細胞接着 / インテグリン / マイクロRNA / 敗血症 / 腸管上皮 / 細胞外小胞 / サイトカイン / 樹状細胞 / 盲腸結紮穿刺(CLP) / マクロファージ 小区分55060:救急医学関連 基盤研究(C) 三重大学 敗血症は感染などに起因する制御不能な全身性の炎症反応が、腸管を含む多臓器の機能不全を惹起するショック病態である。腸管上皮細胞は、炎症の波及により透過性亢進が惹起されるなど傷害を受ける標的細胞であると同時に、メディエーター分泌を介して免疫麻痺など敗血症重症化病態の形成にも関わる制御細胞としても機能する可能性が示唆されるが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究では腸管上皮細胞の敗血症での炎症制御における役割を、エキソソーム機能に注目して検討する。 敗血症での全身性炎症反応もしくは免疫不全において樹状細胞の機能が組織ごとで変化する可能性に着目した。マウスの盲腸結紮穿刺の敗血症モデルを樹立し、全身系組織の脾臓組織と腸管粘膜組織の腸間膜リンパ節から分離した樹状の機能を調べた。その結果、脾臓と腸間膜リンパ節の樹状細胞は、T細胞活性化誘導の機能が異なる可能性を示した。また、敗血症において腸管上皮由来のエキソソームが炎症性腸疾患マウスの炎症性サイトカイン分子の発現を抑制し局所での炎症を制御する可能性を確認した。特に、エキソソームのマイクロRNAが、腸管組織のTNF-alphaとIL-17Aの発現制御に働く可能性を報告した。 We have tested a possibility that functions of dendritic cells (DCs) are altered in sepsis, especially between different immune tissues. Using a sepsis model of cecal ligation and puncture (CLP), DCs were isolated from spleen and mesenteric lymph nodes (MLNs) and subjected to analyzing induction of T-cell activation. We have found that spleen DCs and MLN DCs display different activities in eliciting T cell immune responses (Darkwah et al. 2019 Biomedicines). In addition, we examined if intestinal epithelium-derived luminally released exosomes exhibit the capacity in regulating expressions of proinflammatory cytokines. As a result, we found that some of functional miRNAs were supposed to possess an ability to suppress expressions of TNF-alpha and IL-17A (Appiah et al. 2020 International Journal of Molecular Sciences).
                          34. 皮膚由来3次元組織構造体(オルガノイド)の培養法の確立と解析 Establishment and Analysis of Skin-derived multicellular 3-dimensional in vitro cell models (Organoid) 19K08801 2019-04-01 – 2022-03-31 3次元構造体 / オルガノイド / ケラチノサイト / 皮膚 / 3次元組織構造体 小区分53050:皮膚科学関連 基盤研究(C) 慶應義塾大学 皮膚の表皮細胞は生体の恒常性維持に重要な役割を担っており、その生体外の器官培養系を確立することは、動物実験代替法となる生体外評価モデルの構築として重要な意味を持つ。これまでにマウスケラチノサイトの初代培養は報告されているが、2次元の培養方法であり、継代培養が困難であるなど、手技的にも熟練を要するものであった。本研究にて得られた皮膚オルガノイドは生体外で遺伝子改変による疾患モデルに応用可能であり、薬剤スクリーニングも可能となり、臨床に貢献できる可能性がある。 マウス皮膚より3次元組織構造体;オルガノイドを作成した。皮膚オルガノイドは基底層側が外側、角化層が内側を向き、内腔に角化物が充満する嚢腫構造を呈し、正常皮膚を模倣する。経時的に観察すると、複数個のケラチノサイトの集塊が発育し、成熟したオルガノイドが形成された。克服すべき課題は、長期培養を可能にすることであった。初代培養と継代培養を比較したRNA-seq解析から、継代によりmTORシグナル伝達経路の抑制が判明した。継代培養群でAktのリン酸化レベルが減少しており、Akt活性が減少しmTOR経路が抑制されることが示唆された。現在、Aktを活性化する小分子SC79が長期培養に寄与するか検証中である。 Mouse skin-derived multicellular 3-dimensional in vitro cell models (Organoid) was established and analyzed. In-vitro generated organoid occur as cysts with a central lumen. Organoid epithelium contains stratum corneum, stratum granulosum, stratum spinosum and basal layer comprising epidermis in vivo. According to the serial observation, it was revealed that aggregated keratinocytes developed into organoids in the presence of cocktails of growth factors. The challenge to overcome was to enable long-term culture. RNA-seq analysis comparing primary and passaging cultures revealed suppression of mTOR signaling pathway upon passaging. The phosphorylation level of Akt was decreased in the passaging culture group, suggesting that down regulated Akt inhibits mTOR pathway. We are currently testing whether SC79, a small molecule that activates Akt, contributes to long-term culture.
                          35. 腸管上皮オートファジーによる新規免疫調節機構の解析とクローン病新規治療標的の抽出 Immune regulation via intestinal autophagy for the treatment of Crohn’s disease 19K08438 2019-04-01 – 2022-03-31 腸管免疫 / 腸管上皮 / 炎症性腸疾患 / オートファジー 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 我々はこれまでの研究結果から、本研究では腸管粘膜の免疫恒常性は腸管上皮細胞のオートファジー機能と粘膜内リンパ球とのクロストークによって制御され、その破綻がIBDの本態となるという概念を提唱しつつ、大腸上皮特異的Atg5欠損マウス、大腸上皮細胞の初代(三次元)培養・移植技術、生体イメージング技術等々、我々が既に独自に樹立している技術を融合し、さらに上皮細胞のオートファジーによる腸管粘膜の新規免疫調節機構という新しい概念に着眼する。 本研究は申請者がこれまで見出してきた「腸管粘膜の免疫恒常性は腸管上皮細胞のオートファジー機能と粘膜内リンパ球とのクロストークによって制御され、その破綻がIBDの本態となる」という独自の概念を基盤として、オートファジーによる腸管粘膜の免疫調節機構を解明しつつ、その機能不全によって誘導される免疫異常からクローン病に対する新規治療標的を抽出することを目指している。その結果、当該研究期間に得られた成果から、生理的条件下で腸上皮細胞オートファジー機能を調節しつつ、免疫応答を生化学、細胞生物学的に解析することが可能な実験系の樹立が示唆された。今後、クローン病に対する新規治療法開発の基盤に繋がると期待する。 Inflammatory bowel disease (IBD) including Crohn’s disease is characterized by unrestrained lymphocyte activation that results in the production of a variety of pro-inflammatory cytokines as well as other mediators. Understanding the mechanisms of lymphocyte regulation is therefore of significant importance in the study of dysregulated mucosal inflammation such as IBD. Associated with this, several studies have revealed the importance of autophagy in several cell types of IBD pathology, such as intestinal epithelial cells. In this regard, we were able to observe ex vivo activities where functions of these lymphocytes can be modulated by autophagy in the epithelial cells derived from mouse intestines. Defining the physiological mechanisms of autophagy in intestinal epithelial cells will lead to a greater understanding of how manipulation of effecter lymphocyte function may provide insights into novel treatment of IBD.
                          36. タイトジャンクション制御による大腸腫瘍予防戦略の構築 Study of tight junction regulators for colorectal tumor prevention 19K08388 2019-04-01 – 2022-03-31 大腸癌 / 大腸腫瘍 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 本邦の大腸癌罹患者数は過去50年で急増し、その予防法・新規化学療法が求められている。隣りあった大腸上皮細胞はタイトジャンクションにより互いに結合しているが、癌化に伴ってタイトジャンクション関連タンパクの発現は変化し、癌細胞の転移や細胞増殖、癌微小環境の形成に関与することが示唆されてきた。本研究は、大腸癌発症におけるタイトジャンクションの役割を明らかにすることで、大腸癌予防及び治療法の基盤を提供することを目指す。 申請者は、これまで着目してきた「タイトジャンクション制御が腸管炎症及び大腸腫瘍を抑制する」との概念や独自の知見を基盤として、食餌や腸内細菌などの腸管内容物が大腸腫瘍へ及ぼす影響を追求している。その結果、大腸上皮細胞株及び大腸腫瘍細胞株への各種アミノ酸の影響を網羅的にスクリーニングし、そのうちからin vivoでの検討を行い得た。今後多種多様な食餌成分へ検討範囲を広げることで大腸腫瘍制御の基盤形成に繋げることが出来ると期待される。 The number of colorectal cancer patients has increased in Japan. It is difficult to establish an effective preventive method because mechanisms by which diet affects colorectal tumors are largely unknown. In the current study, effects of various amino acids on colon organoids and colon tumor organoids were screened. Their effects were subsequently analyzed in vivo. The results of this research are expected to contribute to an establishment of an effective method to prevent colorectal cancer.
                          37. 炎症性腸疾患発症におけるミオシン軽鎖キナーゼの役割 Study of the control mechanism of myosin light chain kinase aimed at elucidating the pathogenesis of IBD 19K08364 2019-04-01 – 2022-03-31 炎症性腸疾患 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 クローン病と潰瘍性大腸炎を代表とする炎症性腸疾患(IBD)は、再燃と寛解を繰り返す、難治性の慢性腸炎である。生物学的製剤の登場によりIBD治療は大きく前進したが、未だ内科的治療抵抗例が存在し、さらなるIBDの病態解明が急務である。IBDの腸管上皮ではミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)の発現異常が知られており、本研究では、腸管におけるMLCKの制御機構を明らかすることで、IBDの予防及び新規治療法の基盤創出を目指す。 本研究は申請者がこれまで着目してきた「腸管上皮のTNFR2発現亢進とミオシン軽鎖キナーゼの活性化による腸間上皮のバリア機能の障害が腸炎炎症の持続に関与する」という概念や申請者ら独自の知見を基盤として、本研究ではTNFR2とそのリガンドである膜型TNFの複合体の解析を多面的に行うとともに、膜型TNF発現を制御するTNF変異株を見出すことが出来、炎症性腸疾患の病態解明や新規治療法開発の基盤に繋げることが出来ると期待される。 The barrier dysfunction of the intestinal epithelium, which is caused by upregulation of TNFR2 and activation of myosin light chain kinase in epithelial cells, is involved in the pathogenesis of inflammatory bowel disease. In this study, we analyzed the membrane-type TNF complex and also found a TNF mutant strain that regulates the expression of membrane-type TNF. Based on our study, it will be a new understanding of the pathophysiology of inflammatory bowel disease and the development of new treatments.
                          38. 炎症性腸疾患の粘膜治癒過程におけるトロンボモジュリンの作用機序の解明 Effects of recombinant thrombomodulin on intestinal mucosal healing 19K07479 2019-04-01 – 2022-03-31 上皮再生 / 粘膜治癒 / トロンボモジュリン / 炎症性腸疾患 / オルガノイド培養 / DSS誘発腸炎モデル / オルガノイド / 腸管上皮 小区分49030:実験病理学関連 基盤研究(C) 三重大学 潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患はその病因がまだ解明されてないため、根本的な治療法がなく、“粘膜治癒”を目標した治療戦略は重要ともいえる。炎症性腸疾患の患者数は年々増加しており、より安全性・有効性・経済性の優れた薬剤の研究開発が望まれている。そこで、本研究では、腸炎マウスモデルと腸管上皮陰窩幹細胞オルガノイドを用いて粘膜治癒過程におけるトロンボモジュリンの効果及び作用機序を解明し、新たな治療標的候補としての可能性を提示する。 腸管上皮オルガノイドを用いたin vitro実験系において、遺伝子組換え型可溶性トロンボモジュリン(rsTM)はオルガノイドの成長を有意に促進し、腸管上皮幹細胞と上皮細胞遺伝子群の発現を濃度依存的に上昇した。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルを用いたin vivo実験において、rsTMはマウスの体重回復を促進し、組織学的にも腸炎抑制効果と延命効果を示すことが分かった。また、rsTMがLGR5陽性腸管上皮幹細胞の増殖と上皮分化を増強させ、粘膜治癒を促進することが確認された。 Recombinant soluble thrombomodulin markedly stimulated the growth of intestinal organoids, thereby increasing the surface areas and budding phenotypes of the organoids. A high dose rsTM treatment significantly improved the recovery of body weight, histological outcomes, colon length shortening, and prolonged the survival of mice with colitis. Importantly, rsTM significantly upregulated the LGR5-positive stem cell proliferation and epithelial differentiation both in intestinal organoids and in intestinal tissues in colitis.
                          39. 小腸共生環境と食による抗炎症・免疫機能の構築に関する研究 Studies on immunity and anti-inflammatory mechanisms regulated by diet and intestinal microenvironment 19H04042 2019-04-01 – 2022-03-31 樹状細胞 / 制御性T細胞 / パイエル板 / 乳酸菌 / 抗炎症 / インターフェロン-β / インターロイキン10 / 腸内細菌叢 / 小腸パイエル板 / 抗炎症性T細胞(Tr1) / マクロファージ / インターフェロンβ / 抗炎症性T細胞 / 常在乳酸菌 / インターフェロン / Tr1 / インターフェロン・サイトカイン / パイエル板樹状細胞 / 小腸内視鏡 / 腸管免疫 / 免疫恒常性 / 小腸常在菌 / 小腸 小区分59040:栄養学および健康科学関連 基盤研究(B) 日本大学(2021) / 国立研究開発法人産業技術総合研究所(2019-2020) 乳酸菌は小腸の主要な常在細菌であり発酵食品などからも日常的に摂取される。乳酸菌のプロバイオティクス機能は良く知られているが、我々は乳酸菌の核酸成分に特有の免疫活性化ならびに抗炎症機構をみいだした。ヒト小腸に常在菌する乳酸菌の免疫賦活能を明らかにするため、小腸内視鏡により採取した乳酸菌について核酸成分の解析並びにインターフェロン(IFN)誘導活性を解析する。またヒト小腸乳酸菌で作成したノトバイオートマウスの免疫応答能ならびに抗炎症機能を評価する。得られた成果は近年急増するアレルギー疾患や炎症に起因する症候群、発がんの予防に資するとともに、免疫恒常性維持機構としてヘルスケアの技術開発基盤ともなる。 乳酸菌は小腸の主要な常在細菌であり発酵食品などからも日常的に摂取される。乳酸菌のプロバイオティクス機能のひとつとして、我々は乳酸菌の核酸成分に特有の免疫活性化ならびに抗炎症機構をみいだした。さらに食や腸内環境を通じたヘルスケアと免疫制御の中で乳酸菌が果たす役割を分子レベルで明らかにし、抗加齢(免疫老化など免疫機能低下の予防/治療)や抗炎症(腸炎やアレルギーなど炎症性疾患の予防/治療)のための技術開発に資する基礎情報を得た。 Lactic acid bacteria (LAB), a major commensal bacterium in the small intestine, are well known beneficial bacteria which promote establishment of gut-centric immunity, such as anti-inflammation and anti-infection. We proposed that double-stranded RNA is a unique component of LAB and support maintaining well-balanced intestinal immunity through production of interferon-beta from dendritic cells. Here we show that a LAB strain Lactococcus cremoris C60 possesses an ability to activate antigen presenting cells and promotes functional maturation of intestinal T cells. Heat killed-C60 (HK-C60) diet restored the numbers and immunological functions of CD4+ T cells in aged Interleukin-18 gene-deficient mice, which was otherwise dramatically decreased in the small intestine. HK-C60 is also an effective inducer of Interleukin 10 from dendritic cells which is essential for induction of anti-inflammatory Tr1 cells. These findings shed lights on the way to prevent inflammaging.
                          40. ヒト体外複合臓器モデルによる生体維持機構解析 Analysis of homeostasis mechanisms using a human in vitro multi organ model 19H01050 2019-04-01 – 2022-03-31 ヒトオルガノイド / 臓器間制御機構 / 臓器共培養 / 炎症性腸疾患 / 臓器間制御 / iPS細胞複合臓器体外モデル / iPS細胞 / 複合臓器体外モデル 中区分53:器官システム内科学およびその関連分野 基盤研究(A) 東京医科歯科大学 炎症性腸疾患の病態は炎症ではなく、上皮細胞機能不全による粘膜障害が原因であることを上皮細胞のみを単離して解析することで明らかとしてきました。しかし病態の大元である上皮細胞の変化は生体の環境と密接に関わることを発見し、生体環境と腸管との相互作用を明らかにすることが新たに必要であることがわかってきました。そこで本研究ではヒト細胞を用いて臓器体外モデルを作成し、新規の原因を探索すること目的としています。 ヒト大腸細胞とヒトiPS由来肝臓細胞をそれぞれ樹立した。大腸細胞と肝臓細胞を同じ培養液中で培養できるか検討している。さまざまな培養条件を検討し、大腸細胞と肝臓細胞の共培養できることを確認し、相互作用が解析できる系を構築した。また、肝臓細胞、大腸細胞それぞれ疾患モデルを構築しており、正常大腸と疾患肝臓や疾患大腸と正常肝臓を共培養することにより、疾患における臓器間の影響を解析できる系を樹立している。さらにヒト細胞をマウスに移植することで、疾患ヒト細胞臓器を有するキメラマウスを構築した。以上より、ヒト疾患における臓器間制御機構の病態理解が進むことが期待されます。 Culture system of human colon cells and human iPS-derived liver cells was established respectively. We are examining whether colon cells and liver cells can be cultured in the same culture medium. After examining various culture conditions, we confirmed that colon cells and liver cells can be co-cultured, and constructed a system in which the interaction can be analyzed. We have also constructed disease models for both liver and colon cells, and have established a system that can analyze the effects between organs in disease by co-culturing normal colon and diseased liver, or diseased colon and normal liver. Furthermore, by transplanting human cells into mice, we have constructed chimeric mice with diseased human cell organs. These results are expected to advance our understanding of the pathophysiology of inter-organ regulatory mechanisms in human diseases.
                          41. 細胞外核酸の包括的解析による粘膜治癒機構の解明 Comprehensive understandings of extracellular nucleotides for mucosal healing and inflammation 18KK0432 2019 – 2022 細胞外核酸 / アデノシン3リン酸 / 線維芽細胞 / 糖ヌクレオチド / 間葉系細胞 / 腸管感染症 / 粘膜免疫 / 炎症性腸疾患 / 微小環境 / 平滑筋 / 病原性細菌 / 感染防御 / 粘膜修復 / ATP 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A)) 千葉大学 炎症性腸疾患の治療においては、現行の炎症コントロールのみならず腸管の「粘膜修復・再生」に特化した創薬が次世代治療に不可欠である。複数の細胞集団から構成される「間葉系細胞」は粘膜治癒に中心的に働くと考えられているが、一方で、これらの細胞集団による粘膜保護機能を有益に活用する方法は確立されていない。本研究では、間葉系細胞に高く発現する細胞外の核酸に対する受容体群に着目し、領域を牽引するカルフォルニア大学サンディエゴ校のPeter Ernst教授らとの共同研究を通じで、細胞外核酸を介した粘膜炎症・修復機序を明らかにする。 腸管上皮幹細胞の分化を制御する陰窩に局在する間葉系細胞の単離法を確立させ、絨毛や粘膜下層といった他の腸管微小環境の間葉系細胞との遺伝子発現の比較を行った。その結果、申請者がこれまでに取り組んできたプリン受容体に加えて、ピリミジンや糖ヌクレオチドに対する特定の受容体とアデノシン受容体の発現が陰窩間葉系細胞で特徴的であることを見出した。そこで、国際共同研究を通じて細胞外核酸のプロファイリングとセンシング機構の解明、ならびに種々の遺伝子欠損マウスを用いたin vitroとin vivo解析を進めた。その結果、腸管感染症並びに粘膜修復過程において間葉系細胞に作用する細胞外核酸の役割が明らかとなった。 We have established a method for isolating mesenchymal cells, controlling the differentiation of epithelial stem cells, from the intestinal crypt. Using this experimental method, we were able to compare the gene expression between mesenchymal cells present in the other intestinal microenvironment. As a result, we discovered that specific receptors for extracellular pyrimidines or sugar nucleotides, as well as certain adenosine receptors, are highly expressed in the mesenchymal cells in the crypt. Therefore, through this international collaborative research, we conducted profiling of extracellular nucleic acids and further elucidated the role of extracellular nucleic acids that act on mesenchymal cells in mucosal repair and protection processes through in vitro and in vivo analyses using various gene knockout mice.
                          42. 腸管AhRワールドの解明 The elucidation of the World of AhR in the intestinal environment ,followed by the diverse clinical applications. 18KK0246 2019-02-07 – 2021-03-31 青黛 / インジゴ類 / 潰瘍性大腸炎(UC) / AhRコンディショナルノックアウトマウス / 腸内細菌叢 / 腸管微小循環 / メタゲノム解析 / 腸内細菌 中区分53:器官システム内科学およびその関連分野 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 慶應義塾大学 青黛投与マウスとヒトUC患者の青黛投与後の腸内細菌叢の変化に相同性を見出した。ラットモデルを用いて、青黛およびインジゴがAhR-passwayを介して肺動脈性肺高血圧を発症させていることを実証し、論文化した。また、腸管上皮、T細胞、それぞれの組織でタモキシフェン投与により特異的にAhRを欠損する コンディショナルノックアウトマウスを用いて、免疫細胞、上皮細胞、腸内細菌叢の変化について解析し、現在論文投稿中である。 We found homology between changes in the intestinal microbiota of indigo naturalis(IN)-fed mice and patients with UC after the IN treatment. Next, we demonstrated that IN and indigo induced pulmonary arterial hypertension via the AhR-passway by using a rat model, which was published in the paper. In addition, we analyzed the changes in immune cells, epithelial cells, and intestinal microflora using conditional knockout mice, in which AhR is specifically deleted by tamoxifen administration in the specific cells, and this content is currently being submitted for publication.
                          43. 腸管抗原提示細胞によるサイトカイン誘導と腸炎制御メカニズムの解明 Antigen presenting cell mediated regulation of intestinal inflammation 18K15128 2018-04-01 – 2023-03-31 IL-36 / 食物アレルギー / 大腸がん / マイクロプラスチック / 2型サイトカイン / 2型サイトカイン / 腸内細菌 / 大腸 / 抗原提示細胞 / MDSC / Erdr-1 / 炎症性腸疾患 / 腸管バリア / 腸管樹状細胞 / サイトカイン / 腸炎 小区分49030:実験病理学関連 若手研究 京都府立医科大学 ex vivo及びin vivoでの解析により、Notch2依存性に誘導されるCD103+CD11b+樹状細胞がIL-36によるIL-23の誘導に必須である事を示した(PNAS2018)。食物アレルギーの病態にIL-36が関与することも世界で初めて報告した(Nutrients 2022)。また、出生後早期の腸内細菌叢が宿主の成体期の腸管免疫系に寄与することを示した。(Cancer Immunol Res 2019)。また、マイクロプラスチック発生メカニズムを再現し作製したマイクロプラスチックが腸管の抗原提示細胞及びT細胞の応答に及ぼす影響について解析し報告した(iScience 2023)。 In this project, we uncovered that Notch-2 dependent CD103+CD11b+ dendritic cells is critical for IL-36 mediated induction of IL-23 (PNAS 2018). We also discovered that IL-36 is involved in the pathogenesis of food allergy for the first time (Nutrients 2022). Further, we found that microbiota exposure in early life plays a key role in the development of intestinal immunity (Cancer Immunol Res 2019). Finally we reported the impact of particulate microplastics generated from polyethylene terephthalate on gut pathology and immunity (iScience 2023).
                          44. 腸管マクロファージのIL-10産生亢進作用をもつ炎症性腸疾患の新たな治療薬の開発 Development of Novel Therapeutic Medicines for Inflammatory Bowel Disease with Enhancement of IL-10 Production in Intestinal Macrophages 18K06698 2018-04-01 – 2022-03-31 炎症性腸疾患 / 腸管マクロファージ / IL-10 / Fatty acid synthase / 再燃予防 / 粘膜治癒 / 上皮細胞 / IBD再燃モデル / DARTS / 長期寛解維持 / ベルベリン / 粘膜修復 / 腸管粘膜免疫系 小区分47040:薬理学関連 基盤研究(C) 富山大学 本研究では、炎症性腸疾患(IBD)治療において再燃を予防し、長期寛解維持を実現する有用な治療戦略を提示することを目的に、腸管粘膜に存在する腸管マクロファージでのインターロイキン(IL)-10産生を亢進させる薬物のスクリーニングから見出した生薬由来化合物ベルベリンの薬理作用の解明を行った。
                            本研究成果から、ベルベリンはIBD再燃モデルに対して有効であり、その作用機序には腸管マクロファージでのfatty acid synthase活性化を介したIL-10産生の亢進による傷害腸管粘膜の修復促進の関与が考えられた。 We have proposed that the enhancement of interleukin (IL)-10 production in the intestinal macrophages has the potential to be a novel therapeutic mechanism for maintaining the remission of inflammatory bowel disease (IBD) and found berberine as a candidate compound for IL-10 enhancer. In the present study, we developed a useful experimental animal model to evaluate the relapse phase of IBD and investigated the effect of berberine on this model. Berberine significantly attenuated colitis symptoms during the relapse phase of IBD relapse model. Furthermore, we detected fatty acid synthase (FAS) as a candidate target protein. FAS inhibitor suppressed the IL-10 production of macrophages enhanced by berberine in a concentration-dependent manner. This study suggests that FAS activators such as berberine may be useful in developing a novel therapeutic strategy aimed at preventing relapse in IBD.
                          45. エピゲノム制御に基づく炎症性腸疾患個別化医療の開発 Development of personalized medcicine for inflammatory bowel disease based on control of epigenome 18H02799 2018-04-01 – 2021-03-31 iPS細胞 / オルガノイド / 腸管上皮細胞 / エピゲノム / 自然免疫 / 炎症性腸疾患 / メチル化 / IPS細胞 小区分53010:消化器内科学関連 基盤研究(B) 札幌医科大学 発症機序が腸管上皮機能障害によるところが大きいと考えられる潰瘍性大腸炎(UC)患者の生検組織を用いてオルガノイド作製を行った。UC患者腸管上皮細胞からのオルガノイド樹立は確立し、腸管オルガノイドからiPS化、その細胞を腸管上皮に分化させることに成功した。UC患者のオルガノイドおよびiPS化後に分化した腸管上皮細胞からDNAを抽出して、エピゲノム変化を網羅的に解析した。その結果から、腸管上皮細胞の分化制御に関する転写因子にエピゲノム変化が認められていることが明らかとなった。 In the present study, we have established organoids from intestinal epithelial cells of UC patients. We have succeeded in iPS conversion of intestinal organoids and differentiation of the cells into intestinal epithelium. We extracted DNA from the organoids of patients and the differentiated intestinal epithelial cells that originated from iPS and comprehensively analyzed the epigenomic changes. We found that epigenomic changes in transcription factors related to intestinal epithelial cell differentiation regulation.
                          46. 炎症性腸疾患において腸管マクロファージが腸管粘膜の損傷を修復するメカニズムの解明 A Research of Epithelium-Immune Interaction during Mucosal Repair in Inflammatory Bowel Disease 17KK0166 2018 – 2022 粘膜治癒 / 大腸上皮細胞 / 遊走 / BLT1 / オルガノイド / 腸管上皮細胞 / GPCR / 炎症性腸疾患 / 大腸オルガノイド / CD11c陽性細胞 / 腸管粘膜修復 / 腸管上皮 / CMKLR1 / 大腸上皮オルガノイド / 腸管粘膜バリア / 腸管マクロファージ / 上皮・免疫連関 / IBD 薬理系薬学 / 薬学 / 医歯薬学 / 生物系 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化) 富山大学 炎症でダメージを受けた大腸粘膜では、上皮細胞と免疫細胞とのクロストークを中心とする粘膜治癒により粘膜が再生されるが、粘膜治癒は複雑なイベントであり、未だ不明な点が多い。そこで、粘膜治癒のメカニズムを解明するために、ミシガン大学医学部との国際共同研究を実施し、これまで炎症性メディエーターとして認識されていたロイコトリエンB4とその受容体BLT1によって調節される粘膜治癒の新たなメカニズムを発見した。すなわち、大腸上皮細胞がBLT1を発現しており、炎症下ではその発現が上昇することで、大腸上皮細胞のBLT1が傷害後の粘膜治癒を促進する役割を担うことを細胞レベルおよび生体レベルにて証明した。 Damaged colonic mucosa by inflammation is regenerated through mucosal repair centered on crosstalk between epithelial cells and immune cells, however mucosal repair is a complex event and details are still unknown. Therefore, in order to clarify mechanisms of mucosal repair, we conducted an international joint research with the University of Michigan School of Medicine. As a result, we discovered a new mechanism of mucosal repair regulated by leukotriene B4 and its receptor BLT1, which have been recognized as inflammatory mediators. In other words, we demonstrated for the first time at the cellular and biological levels that colonic epithelial cells express BLT1, its expression is elevated under inflammation, and that BLT1 in colonic epithelial cells plays a role in promoting mucosal repair after injury.
                          47. 潰瘍性大腸炎患者に対する大腸内視鏡におけるリアルタイム自動診断 Artificial intelligence for endocytoscopy provides fully automated diagnosis of histological healing in ulcerative colitis. 17K15973 2017-04-01 – 2019-03-31 潰瘍性大腸炎 / 粘膜治癒 / 組織学治癒 / 人工知能 / 自動診断システム / CAD / 超拡大内視鏡 / エンドサイトスコピー / 内視鏡 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(B) 昭和大学 人工知能を用いた潰瘍性大腸炎の炎症活動性評価の内視鏡自動診断システムを構築し報告をおこなった。潰瘍性大腸炎患者187例の超拡大内視鏡画像22,835枚を収集し、87例の 12,900枚を人工知能に学習させた。残り100例の9935枚から525組のテストセットを作成した。本システムの組織学的炎症に対する診断能 は、感 度74%、特 異 度97%、精度91%であった。診断出力時間は0.4秒であった。結果を英文論文で報告した。(Maeda Y, et al. Gastrointest Endosc 2019.)更に2019年3月までに395名の患者から約4,5万枚の画像を収集しシステムを更新した。 In this study, we constructed and reported an endoscope automatic diagnosis system for evaluation of inflammatory activity of ulcerative colitis using artificial intelligence. As a pilot study, 22 835 ultra-magnified endoscopic images of 187 patients with ulcerative colitis taken from October 2016 to April 2018 were used. Of these, 12,900 in 87 cases were trained in artificial intelligence, and 9,953 to 525 sets of verification sample sets in 100 cases were created. The diagnostic ability of this system for histologic inflammation with a Geboes score of 3.1 or higher is 74% (95% CI: 65-81), 97% (95-99), 91% (88-93). Met. The diagnostic time per sample was about 0.4 seconds. The above results were reported in Gastrointestinal Endoscopy. (Maeda Y, et al. Gastrointest Endosc 2019.) Furthermore, by March 2019, about 45000 images were collected from 395 patients and the system was up-datad.
                          48. 炎症性腸疾患におけるエクソソームとRNA結合蛋白の機能解析 Functional analysis of exosomes and RNA binding porteins in inflammatory bowel disease 17K15911 2017-04-01 – 2020-03-31 エクソソーム / RNA結合蛋白 / 炎症性腸疾患 / 腸管外合併症 / 実験腸炎モデル / 消化器内科 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(B) 旭川医科大学 炎症性腸疾患(IBD)の腸管・腸管外炎症の発生進展のメカニズムをエクソソーム・RNA結合蛋白の面から解析した。実験腸炎モデルやIBD由来の血清エクソソーム内のRNA結合蛋白の発現を検討したところ、活動期において特定のRNA結合蛋白が低下していた。実験腸炎モデルにIBD由来血清を投与すると、組織学的炎症の増悪および炎症性サイトカインの上昇を認め、潰瘍性大腸炎・クローン病由来血清において、サイトカイン上昇のプロファイルは異なっていた。エクソソーム・RNA結合蛋白と標的RNAを含め、血清内の炎症を増悪させる因子に関して更なる検討を行う必要がある。 We analyzed the mechanism that intestinal and extraintestinal inflammation in inflammatory bowel disease (IBD) developed and exacerbated in regard to exosomes and RNA binding proteins (RBPs). In the experimental colitis models and patients with IBD, specific RBPs involving exosomes derived from serum decreased in active state of colitis. The exacerbation of histological inflammation and elevation of proinflammatory cytokines were determined when administering serum derived from active IBD to the experimental colitis mice. Additionally, the profiles about elevation of proinflammatory cytokines differed from serums between ulcerative colitis and crohn’s disease. Further investigations need to be performed to elucidate the factors derived from serum in IBD, including exosomes, RBPs and targeted RNA, which are possible to exacerbate intestinal and extraintestinal inflammation.
                          49. インドール含有青黛生薬の炎症制御機序解明および大腸癌抑制効果の検証 Investigation of the mechanisms for inhibitory effects on colonic inflammation and cancer of indigo naturalis including indole compounds 16K09326 2016-04-01 – 2019-03-31 AhR リガンド / 生薬青黛 / 潰瘍性大腸炎 / 大腸癌 / 腸内細菌叢 / 青黛 / Aryl Hydrocarbon受容体 / 炎症性腸疾患 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 慶應義塾大学 本研究課題では、腸炎モデルおよび潰瘍性大腸炎において、青黛が容量依存性に腸炎抑制を有すること、また腸管上皮再生に関与するIL-22陽性細胞の割合およびmRNAレベルの発現亢進、およびFoxp3陽性細胞の増加が認められ、青黛の腸炎抑制効果に調節性T細胞が関与している可能性が示唆された。微生物相に対する青黛の有効性については、大腸炎モデルおよびUC患者における青黛治療によりBifidobacteriumが有意に変化した。
                            また腸炎誘導大腸癌モデルを用いて青黛による大腸癌抑制効果が確認され、青黛が炎症抑制と非依存的に大腸癌腫瘍抑制効果を有することを明らかにした。 In this research subject, indigo naturalis has the control of enteritis in a dose-dependent manner in both mouse colitis model and patients with ulcerative colitis. The mechanisms of anti-inflammatory effect were associated with inducing IL-22 which repaired mucosal damage and the up-regulation regulatory T cells. For the efficacy of indigo naturalis on microbiota, the abundance of Bifidobacterium was significantly changed after treatment of indigo naturalis in colitis model and UC patients.
                            In addition, using the mouse model for colitis associated cancer, the inhibitory effect of indigo naturalis on colon cancer was confirmed, and it was revealed that indigo naturalis has an inhibitory effect on colitis associated cancers independently of inflammation suppression.
                          50. 炎症性腸疾患を対象としたアドレノメデュリン療法の開発における補完研究 The complementary research for development of adrenomedullin therapy in inflammatory bowel disease.therapy 16K09316 2016-04-01 – 2019-03-31 アドレノメデュリン / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / 創薬 / バイオマーカー 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 宮崎大学 アドレノメデュリン(AM)を用いた炎症性腸疾患(IBD)の新規治療方法の開発研究における基礎的および臨床的な補完的研究を行った。腸炎モデル動物に対するAM皮下投与の検討では、AMを毎日1回1週間投与した結果、著明な炎症改善が認められた。AM皮下投与によるIBD治療薬開発の可能性が示唆された。臨床研究として、炎症性疾患患者におけるAMの病理学的意義を検証した。IBD患者では血中AM濃度が上昇し、疾患活動性や合併症の有無との関係が認められた。今後バイオマーカーとしての開発が期待できる。また、難治性クローン病患者へのAM投与にて著明な粘膜治癒が得られ、クローン病に対するAM療法の治験に着手した。 In this study, we researched the clinical and basic complementary studies for the development of a novel therapy with adrenomedullin for inflammatory bowel disease(IBD). First, we investigated whether subcutaneously administered AM is effective against dextran sulfate sodium (DSS)-induced colitis. AM significantly and dose-dependently ameliorated severity of colonic inflammation in DSS-treated mice, which suggests that AM administered subcutaneously in IBD patients may decrease
                            diseases burden. Secondly, we evaluated plasma AM concentration in patients with IBD. Plasma AM levels tended to be higher in IBD patients than in controls (healthy persons), and showed correlations with the disease activities or complications. Plasma AM level may be used as a biomarker for diagnosis of IBD. Finally, We had applied AM for a patient with refractory CD and yield drastic improvement of clinical symptoms and mucosal lesions. We started to develop AM as a novel therapy reagent for Crohn’s disease.
                          51. 間葉系細胞間コミュニケーションによる粘膜治癒機構の解明 Analysis of mesenchymal network for the mucosal healing 16H06243 2016-04-01 – 2019-03-31 炎症性腸疾患 / 間葉系細胞 / 粘膜修復 / 細胞外マトリックス / 創傷治癒 / 上皮細胞 / 組織修復 / 炎症 / 粘膜免疫 / 上皮オルガノイド / 粘膜保護 / 線維芽細胞 / 粘膜治癒 / 粘膜再生 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(A) 東京大学 炎症性腸疾患の治療には炎症反応の軽減のみならず、粘膜上皮の適切な修復・再生の誘導が必須である。治癒には、細胞外マトリックスの産生を介した組織の修復と上皮細胞の適正な分化・増殖が必須であり、腸管間葉系細胞群が主体となって働く。しかしながら、粘膜修復に寄与する間葉系細胞の特性や機能的分類や解析は進んでおらず、詳細は不明であった。
                            本研究では、マウスの組織中の間葉系細胞群の網羅的解析によって、腸管粘膜修復に寄与する線維芽細胞亜群を新たに同定した。この細胞亜群の特徴化を行うと同時に、機能的な制御によって粘膜治癒が顕著に遅延することが示された。本研究から間葉系細胞による粘膜修復機序の一端が明らかとなった。 Control of inflammatory responses as well as promotion of mucosal repair are required for the adequate treatment and cure of intestinal bowel diseases, such as Crohn’s diseases and Ulcerative colitis. Mucosal mesenchymal cell populations function as a central source of extra cellular matrix and are required for the development and maintenance of stem cell niches in the colon. However, the precise mechanisms and subsets within the mucosal mesenchymal cells, involved in the process of mucosal repair, have not been well elucidated.
                            In this project, we first comprehensively analyzed the functional characteristics of those mesenchymal cells and found the unique and novel subsets are increased upon inflammatory responses. We further regulated the mesenchymal cellular population and found the disruption of its function resulted in the delay of mucosal repair. These results indicated the novel target of mesenchymal cells for promotion of mucosal repair was elucidated.
                          52. 小児潰瘍性大腸炎に対する糞便移植と腸内細菌叢の検討 Fecal Microbiota Transplantation for pediatric ulcerative colitis 15K19647 2015-04-01 – 2018-03-31 FMT / ulcerative colitis / children / 糞便移植 / 潰瘍性大腸炎 / 腸内細菌 / 小児消化器病学 / 下部消化管学(小腸、大腸) / 腸内細菌叢 / 小児 小児科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(B) 国立研究開発法人国立成育医療研究センター 潰瘍性大腸炎に対する糞便移植については、2017年度末までに合計9例に対して実施した。比較的軽症の患者で早期に移植した場合は良好な結果が得られた。しかし、糞便移植を希望する患者の多くは、複数の内科的治療を尽くしても治療が奏功せず、外科的大腸全摘術を回避する目的であり、その場合の治療成績は不十分だった。
                            糞便移植の治療成績は、小児潰瘍性大腸炎の1例に対し、反復して糞便移植を行ったことの有効性をPediatrics International誌に報告した。また、2016年にはカナダで開催されたWCPGHANで5例に対する成績を報告した。便処理法の研究成果は2017年に米国のAIBDで報告した。 We performed FMT to 9 children with ulcerative colitis until the end of March 2018. Favorable results were achieved in relatively mild patients. However, most part of the candidates for this study were already resistant to several drugs including biologics and / or steroid and intended to avoid colectomy. In these patients, the result of FMT was not promising.
                            We reported a case successfully treated with repeated FMTs on Pediatric International. We presented 5 cases treated with repeated FMTs at WCPGHAN held in Canada. At AIBD 2017 in USA, we reported the impact on microbiota by blending the FMT solutions under aerobic condition.
                          53. プロバイオティクス優位腸内細菌パターン形成ワクチンの開発 Development of new vaccine therapy to promote the symbiotic bacteria in gut. 15K15298 2015-04-01 – 2017-03-31 下部消化管 / 免疫学 / 炎症性腸疾患 / 腸内細菌 / 下部消化管学 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 挑戦的萌芽研究 慶應義塾大学 炎症性腸疾患発症に関して特異的な腸内細菌への絞込みを目的とし、健常人(HC)、原発性硬化性胆管炎合併潰瘍性大腸炎(PSC/UC)患者糞便を無菌マウスへ移植したマウス(HCマウス、PSC/UCマウス)を作成し、PSC/UCマウスでは肝臓内Th17細胞の集積を認めた。PSC/UCマウスのみでKlebsiella pneumonia, Proteus mirabilis, Enterococcus gallinarumの同定培養に成功。Q-PCR法にて解析しPSC/UC患者に高頻度にこれらの腸内細菌が検出。ある特定の悪玉菌の腸内細菌が腸管外病変へ関与する事を見い出し、発展性が期待できる成果と考える。 Regarding the onset of inflammatory bowel disease, it is important to reduce the diversity of intestinal microbiota. We generated the mice inoculated with healthy human feces (HC mice) or primary sclerosis cholangitis-associated ulcerative colitis (PSC / UC) patient feces (PSC/UC mice) and analysed a week after transplantation. In PSC / UC mice, Th17 cells was accumulated in liver compare to the HC mice. Next, we isolated 3 dominant microbiota in mesenteric lymph node of PSC/UC mice. Klebsiella pneumonia, Proteus mirabilis and Enterococcus gallinarum were isolated.We also analysed fecal microbiota in Healthy controls and PSC/UC patients. Analysis by the Q-PCR method confirmed that these intestinal bacteria were detected more frequently in PSC / UC patients than in HC control. We demonstrated that certain intestinal microbiota are involved in extraintestinal lesions. We will further promote vaccine therapy with the analysis of these bacteria.
                          54. 炎症性腸疾患の個別化治療を目指した全ヒト型抗体製剤の薬物動態解析法の確立 Therapeutic drug monitoring for IBD 15K08967 2015-04-01 – 2018-03-31 IBD / 抗TNF抗体 / 炎症性腸疾患 / 抗サイトカイン療法 / IgG / アダリムマブ 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 滋賀医科大学 全ヒト型抗TNF-α抗体の血中濃度および中和抗体定量法を開発し、全ヒト型抗TNF-α抗体の薬物動態の解析法を確立した。全ヒト型抗TNF-α抗体血中濃度と中和抗体血中濃度を指標とした全ヒト型およびキメラ型抗TNF-α抗体の効果を最大限に引き出す炎症性腸疾患テーラーメイド免疫療法のストラテジーを構築することができた。血清中IgGの非特異的結合とヒト型抗TNF-a抗体を厳密に区別して認識することがきわめて難しかったが、TNF-αをビオチン化し、プレート上のアビヂンを介してプレートに固相化した上で、ゼラチン、アルブミンで重厚にブロッキングするという方法で非特異的IgGの結合が防げることを見いだした。 he present report describes a new ELISA system for measurement of serum ADA concentrations. In this system, non-specific binding of serum IgG was markedly blocked and did not require specific materials, such as anti-ADA idiotype antibodies. In addition, this study describes a novel immunoassay for AAAs that can measure AAAs in the presence of free ADA. These methods improved the diagnostic accuracy for measurement of serum ADA and AAA concentrations and might be useful for determination of the therapeutic approach for patients with a loss of response to ADA.
                          55. 糖鎖の制御による炎症性腸疾患の粘膜治癒促進治療 Mucosal healing of IBD by regulation of sugar chain 15K08966 2015-04-01 – 2019-03-31 炎症性腸疾患 / 線維化 / 粘膜治癒 / 内視鏡 / 糖鎖 / siRNA / CHST15 / コンドロイチン硫酸 / 核酸医薬 / RNA干渉 / コンドロイチン硫酸E 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 新潟医療福祉大学(2016-2018) / 新潟大学(2015) 我々はステリック再生医科学研究所と共同で、クローン病の腸管線維化の原因として糖硫酸転移酵素CHST15とコンドロイチン硫酸E(CSE)の経路が重要であることを明らかにし、ヒトCHST15遺伝子の発現を特異的に抑制するsiRNA医薬「STNM01」を開発した。平成24年度に日本国内でクローン病患者を対象としたSTNM01の第I相臨床試験を行い、安全性と、線維化抑制作用、粘膜治癒効果を確認した。本研究ではこの糖鎖を制御することでIBDの新規治療を目指したRNA干渉医薬STNM01が炎症性腸疾患に対する粘膜治癒促進作用も発揮することを明らかにしその機序解明を行った。 We have developed a novel si RNA medicine STNMO1 targeting CHST15 which inhibits inflammation and fibrosis in animal colitis model. We have performed Phase I clinical trial of STNM01 for patients with Crohn’s disease in Japan. Our newly developed method of endoscopic mucosal injection of STNM01 have shown increased mucosal healing as well as anti-fibrosis effect without any adverse reaction in human as well as in animals. This JSPS funded research has revealed the mechanism of mucosal healing by STNM01, and suggests regulation of sugar chain using STNM01 could be a new treatment option for not only Crohn’s disease but also for ulcerative colitis.
                          56. 粘膜治癒を目指したIBD治療におけるWnt5aペプチドの有用性に関する検討 The role of Wnt5a peptide to enhance colonic epithelial healing for the treatment of IBD 15K08313 2015-04-01 – 2018-03-31 大腸上皮細胞 / 筋繊維芽細胞 / 短鎖脂肪酸 / 粘膜再生 / Wnt5a / IBD / 創傷治癒 / mucosal healing / butyrate / Hsp25 / YAMC細胞 / DSS腸炎 病態医化学 / 基礎医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 京都府立医科大学 われわれは大腸筋繊維芽細胞由来の細胞培養液からWnt5a蛋白の一部である31個のアミノ酸からなるペプチド(Wnt5aペプチド)が、大腸上皮細胞の酪酸誘導性Hsp25発現を抑制することを発見してきたが、そのメカニズムや役割に関して本研究を通して以下の結果を得た:
                            1)大腸上皮細胞のHSP25発現を抑制することによる細胞増殖促進作用を認め、それはβカテニンの核内移行を促進することによる。2)マウスDSS腸炎からの回復期モデルで、Wnt5aペプチドを腹腔内投与すると腸炎による腸管障害からの回復が促進された。
                            以上よりWnt5aペプチドがHsp25の発現抑制を介した大腸上皮の再生を促進することがわかった。 In this study, two key factors were identifed that have important and counterbalancing roles regulating intestinal epithelial growth processes: pericrypt myofbroblast-derived Wnt5a and the microbial metabolite butyrate.
                            Intracellular Hsp25 inhibited YAMC proliferation and YAMC cell proliferation were enhanced via reduction of Hsp25 under butyrate condition with myofibroblasts conditioned medium and MS analysis revealed that the factor in conditioned medium was Wnt5a, especially a part of full length of Wnt5a: Wnt5a peptide (36mer amino acid). Synthesized Wnt5a peptide also reduced butyrate induced Hsp25 and promoted proliferation via β-catenin nuclear translocation in YAMC. Wnt5a peptide treatment in DSS colitis recovery phase model showed the quick recover compared to control.
                            We conclude that Wnt5a peptide has an activity to promote colonic epithelial proliferation via reduction of Hsp25 under butyrate condition.
                          57. ヒト疾患糞便移植マウスモデルを用いた炎症性腸疾患ディスバイオーシスの解明 To identify the mechanism of inflammatory bowel disease by using human microbe mono-associated mouse 15H02534 2015-04-01 – 2018-03-31 腸内細菌 / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / 原発性硬化性胆管炎 / 腸管外合併症 / Th17細胞 / 下部消化管学 / 下部消化管 / 免疫学 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(A) 慶應義塾大学 無菌マウスに潰瘍性大腸炎(UC)と原発性硬化性胆管炎(PSC)合併患者便を移植した。PSC/UC患者便移植マウスで肝臓Th17細胞が増加した。PSC/UC患者便にKlebsiella pneumonia(Kp)を始め3菌が高い頻度で検出された。3菌を無菌マウスに移植する(PSCマウス)と肝臓にTh17細胞の誘導を認めた。PSCマウスは胆管炎モデルで肝機能が増悪することが判明した。Kpとヒト大腸上皮細胞との共培養系において、Kpが上皮細胞のアポトーシスを誘導した。PSCの病態に、Kpが腸管上皮細胞を破壊し、”leaky gut”を誘導するという新規メカニズムを明らかとした。 We transplanted feces of ulcerative colitis (UC) and primary sclerosing cholangitis (PSC) patients to germ-free (GF) mice (UC mice or PSC/UC mice). The ratio of Th17 cells was significantly increased in the liver of the PSC/UC mice compared to the UC mice. Klebsiella pneumonia (Kp), Proteus mirabillus, Enterococcus gallineum were frequently detected in feces of PSC+UC patient. We inoculated these three bacteria to GF mice (3 microbe mix mice; 3 mix mice). Th17 cells were accumulated in the liver. We also confirmed 3mix mice induce severe liver damage after DDC treatment compare to UC mice. Kp is found in the lamina propria of Kp mono associated mice. Kp induced epithelial cell apoptosis by using co-culture of Kp and human colon epithelial cells. As above, we revealed Kp destroys intestinal epithelial cells and induces “leaky gut” in the pathological condition of PSC.
                          58. 重症潰瘍性大腸炎に対する治療戦略-組織標的プロテオミクス解析による治療効果予測 Prediction of treatment efficacy for severe ulcerative colitis 26460977 2014-04-01 – 2017-03-31 潰瘍性大腸炎 / 炎症性腸疾患 / 治療 / 再燃 / 効果予測 / 内視鏡 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 慶應義塾大学 臨床的寛解期に内視鏡検査を施行された潰瘍性大腸炎患者を対象とし、内視鏡的な活動性が長期予後に影響を及ぼすか否か検討を行った。内視鏡スコアと再燃率に有意な相関を認めた。再燃率に関与する因子として、多変量解析では内視鏡的活動性、寛解維持期間、白血球除去療法による寛解導入治療、組織学的活動性の項目において有意差を認めた。今回の結果により、内視鏡的活動性が臨床的再燃の予測因子であることが示された。 We explored the association of a variety of factors including endoscopic activity of patients in clinical remission with their long-term clinical outcome. Mayo endoscopic score 1 (hazard ratio (HR): 2.86) and score 2 (HR: 3.60) was significant risk factor for clinical relapse against endoscopic score 0. Univariate analysis also identified significant association with relapse for moderate clinical activity of last flare, remission induction with cytapheresis (CAP), maintenance with imuunomodulator, shorter duration of remission and higher histological activity. Cox regression analysis revealed that endoscopic activity, histological activity, duration of remission and remission induction with CAP were found to be independent determinants of relapse. The Kaplan-Meier estimate of non-relapse rate by endoscopic activity groups demonstrated significant difference. While there was significance between score 0 and 1, there were no significance between score 1 and 2.
                          59. 病原性メモリーリンパ球の包括的制御によるIBD新規治療法の開発 Development of new treatment with trafficking modulation of colitogenic memory lymphocytes. 26460963 2014-04-01 – 2017-03-31 下部消化管学 / 炎症性腸疾患 / 新規治療 / 腸管免疫 / リンパ球動態制御 / 下部消化管学(小腸、大腸) 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 炎症性腸疾患の治療は生物学的製剤の登場で激変したもののいまなお社会的問題となっている。単一分子を標的とするだけでなく病原性メモリーリンパ球を包括的に制御するために、病原性メモリー細胞のtrafficking制御を標的とした全く新規の概念による治療の開発を目的とした。マウス病原性メモリー細胞の解析およびそのtraffic制御モデルの確立を行った。そしてナイーブT細胞移入腸炎モデルさらには病原性メモリーT細胞移入モデルにおいてもfingolimodが腸炎を抑制することを明らかにし、二次リンパ組織欠損腸炎モデルにより骨髄にリンパ球を隔離することで免疫抑制作用を発揮するという新規の機序を明らかとした。 Fingolimod is a sphingosine-1-phosphate receptor modulator, which inhibits T cell egress from lymph nodes, thereby prevents pathogenic T cells from migrating towards disease sites. In inflammatory bowel diseases (IBD), it is thought that colitogenic memory T cells are reactivated in regional lymphoid organs, and return to inflammatory tissues. We demonstrated that fingolimod prevents the development of colitis induced by the adoptive transfer of naive T cells (naive T colitis) and colitogenic effector-memory T cells (memory T colitis) into SCID mice. Next, we demonstrated that fingolimod decreased T cells in peripheral blood, but conversely increased in bone marrow in the mice lacking lymph nodes and spleen. Notably, fingolimod prevented the development of memory T colitis without lymph nodes and spleen. Collectively, fingolimod may offer an additional role to direct trafficking of T cells in bone marrow, resulting in the prevention of memory T cell-mediated diseases including IBD.
                          60. 小児炎症性腸疾患における新規便中カルプロテクチン測定法の臨床的有用性の検討 Usefulness of a Novel and Rapid Assay System for Fecal Calprotectin in Pediatric Patients with Inflammatory Bowel Diseases. 25860889 2013-04-01 – 2015-03-31 炎症性腸疾患 / 小児 / バイオマーカー / カルプロテクチン / 疾患活動性 小児科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(B) 大阪医科大学 短時間で測定が完了する新規便中カルプロテクチン濃度(FC)の測定法である金コロイド凝集(CGA)法は小児IBDの腸管炎症を正確に診断することができた。また、CGA法で測定したFCは、粘膜治癒や臨床的寛解例における潜在炎症の診断にも有用であった。以上より、従来の測定法であるELISAに代わり得ると考えられる。 Novel assay system for fecal calprotectin (FC), colloidal gold aggragation assay (CGA), had excellent performance for assessing mucosal inflammation of pediatric inflammatory bowel diseases, and can be replaced for conventional ELISA. FC measured by CGA was also useful for assessing mucosal healing and identifying subclinical inflammation of the colon.
                          61. 大動物を用いた腸管上皮幹細胞の移植技術確立 Establishment of transplantation therapy using intestinal stem cells for large animals. 25670372 2013-04-01 – 2015-03-31 腸管上皮細胞 / 粘膜再生治療 / 下部消化管学 / オルガノイド / 炎症性腸疾患 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 挑戦的萌芽研究 慶應義塾大学 炎症腸疾患は慢性腸管炎症を特徴とする疾患であり,免疫統御療法によって治療されている.最近,粘膜治癒が長期寛解を予測する治療ゴールとなっているが,粘膜再生治療の効果については十分な検証がなされていない.我々は新しく開発されたオルガノイド培養技術を利用し,大動物を用いた粘膜再生治療の確立を試みた.大動物飼育施設を利用し,飼育ブタより内視鏡的に採取したサンプルよりオルガノイドを樹立し,上皮損傷後のブタ腸管粘膜への内視鏡的な移植を行った.オルガノイドは7-10日間の生着が内視鏡的に確認された.さらなる移植技術の最適化により,炎症性腸疾患への粘膜再生治療の実現を目指したい. Inflammatory bowel disease is characterized by chronic mucosal inflammation and mainly treated with immunomodulatory reagents. Recently it was found that mucosal healing is a therapeutic goal to predict long-term remission. Nonetheless, there is little evidence of efficacy for mucosal regenerative therapy. We developed a novel intestinal stem cell culture system, in which isolated stem cells form stereotypic organoid structgures for long-term. Using this technology, we attempted to establish mucosal regenerative therapy for large animals. Taking advantage of our large animal facility, we established pig organoids from endoscopic biopsy specimens. The pig intestinal organoids were endoscopically transplanted on the epithelium-removed mucosa and engraft for 7-10 days. Further optimization may lead realization of regenerative medicine for inflammatory bowel disease.
                          62. Ras-Raf-ERK/MAPK経路抑制による炎症・がん制御の分子機構 Regulatory mechanism of inflammation and inflammation-related cancer by regulating Ras-Raf-ERK/MAPK 25293095 2013-04-01 – 2016-03-31 炎症 / シグナル伝達・抑制 / 炎症とがん / 炎症・自然免疫 / シグナル伝達 / 発がん / 急性肺傷害 / 炎症性腸疾患 / ウイルス感染 実験病理学 / 基礎医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(B) 岡山大学 本研究課題では、Ras-Raf-ERK/MAPKとその内因性抑制因子Spred-2に焦点をあて各種動物モデルを用いて、ERK経路抑制による炎症とがんの制御機構を明らかにした。検討結果から、Spred-2は種々のモデルで炎症制御に中心的な役割を担うことが明らかとなり、抗炎症の新規ターゲットになると考えられた。また、ヒトがん組織に発現するSpred-2は、細胞のがん化とがん進展に密接に関係する事が示唆された。さらに、炎症反応を制御するSpred-2は、がん細胞及び間質細胞の共存する微小炎症環境で、がんの増殖・進展に関わる可能性を見いだした。 In this project, we have analyzed the role of Ras-Raf-ERK/MAPK and its endogenous inhibitor, Spred-2 in various animal models, using Spred-2 knock-out (KO) mice. We have demonstrated that Spred-2 plays a central role in the regulation of inflammation in various types of inflammation. Our results suggest that Spred-2 can be a new target for controlling inflammation. We also demonstrated that Spred-2 expressed in clinical cancer tissue may be involved carcinogenesis and cancer progression. Furthermore, our results indicate that Spred-2 may be essential regulator of cancer metastasis by modulating epithelial mesenchymal transition (EMT).
                          63. 炎症性腸疾患大腸発癌における低分子量GTP蛋白Ralの機能解析 Functional analysis of small GTP binding protein Ral in colitis-associated cancer 24590941 2012-04-01 – 2015-03-31 炎症性腸疾患 / 炎症性大腸発がん / Ral / 自然免疫 / 炎症性大腸がん / サイトカイン / 炎症性大腸発癌 / IL-17 / IL-1beta 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 京都大学 炎症性大腸癌機序における低分子量GTP結合蛋白Ralの役割を検討した。Ral-GAPα2 KOマウス(Ralが活性化されている)では大腸粘膜内の炎症性サイトカインの発現が上昇していた。IL-10Ral-GAPα2 Double KOマウスでは、IL-10KOマウスに比し早期に腸炎が誘導された。さらに、RaGAPα2 KOマウスを用いてazoxymethane +デキストラン硫酸投与による炎症性大腸癌誘導モデルを作製した。野生型マウスに比べ、RaGAPα2 KOマウスでは浸潤型大腸癌が多く観察された。以上より、Ralの活性化は自然免疫系ならびに、大腸腫瘍の浸潤能獲得に関与することが示唆された。 The aim of this study is to elucidate the role of Small GTP binding protein Ral in development of colitis-associated cancer (CAC). We used Ral-GAPα2 KO mice (Ral continuously activated) for this study. The gene expression of pro-inflammatory cytokines was significantly up-regulated in colonic mucosa of Ral-GAPα2 KO mice than in wild type mice. Interestingly, Ral activation accelerated colonic inflammation of IL-10KO mice. In addition, we made CAC model by the injection of azoxymethane (AOM) with repeated administration of dextran sulfate sodium (DSS). The number of CAC with submucosal invasion was higher in Ral-GAPα2 KO mice treated with AOM and DSS than in wild type mice. These data indicate that Ral is involved in innate immune system and providing invasive phenotype in CAC.
                          64. 画期的中和抗体定量法を用いたクローン病の生物学的製剤個別化投与アルゴリズムの構築 Development of a new immunoassay for the accurate 24590940 2012-04-01 – 2015-03-31 炎症性腸疾患 / 内科 / 薬物動態 / インフリキシマブ / アダリムマブ 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 滋賀医科大学 IFXの維持療法を受けている患者のIFX投与直前の血中IFX濃度をIFX値とし、このIFX値とATI濃度からクローン病の病態を解析した。58人の患者の解析から、ATI陰性の患者に比べてATI陽性の患者ではIFXトラフ値が有意に低く、血中TNF-α濃度が有意に高かった。健常人より得られた数値から、ATIのカットオフ値を10.2μg/ml、IFX トラフ値のカットオフ値を1μg/mlに設定し、臨床経過を解析した。ATI陽性、トラフ値カットオフ以下の患者の多くが二次無効となりIFXの効果減弱例と判断された。これらの患者のATI力価にはばらつきが認められ、ATIカットオフ値近傍の患者が多く認められた。 Our results suggest that ATI levels of ≤35 μg/mL should be the standard indication for dosage increase. For cases where no improvement is evident following dosage increase, switching to other biopharmaceuticals should be considered. Serum infliximab trough levels are correlated with ESR as well as CRP, serum albumin, and fecal calprotectin levels in Crohn’s disease patients on infliximab maintenance therapy. The results suggest that serum infliximab trough levels should be ≥1.0 μg/mL for effective therapy, and the dosage of infliximab should be increased when serum infliximab trough levels fall below 1.0 μg/mL. Increasing the dosage is not effective and efficacious serum infliximab trough levels cannot be obtained in patients with high ATI levels. Thus, the presence or absence of ATIs is important in determining treatment strategy.
                          65. 特異的NK細胞受容体・リガンドを標的としたクローン病新規治療法の開発 Novel therapeutic strategy for Crohn’s disease by targeting an NK cell subset 24590937 2012-04-01 – 2015-03-31 炎症性腸疾患 / クローン病 / 新規治療法 / 粘膜免疫 / NK細胞 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 申請者らがこれまでに得られた知見を基盤として独自に研究を展開してきたナチュラルキラー(NK)細胞による特異的受容体/リガンドを介したその細胞傷害活性に着目し、本研究では炎症性腸疾患の病態における特異的な免疫学的異常に対する新規治療法の開発基盤樹立を目標とした研究を展開している。その結果、当該研究期間に得られた成果から、あるNK細胞サブセットの機能解析を行うことに成功した。そして炎症性腸疾患の病態において誘導される獲得免疫反応に対し、このNK細胞サブセットがその新規治療法に繋がる可能性が暗示された。 We previously reported that IL-7-/-RAG-/- mice receiving naive T cells failed to induce colitis. Such abrogation of colitis may be associated not only with the lack of IL-7, but also with the induction of T cell apoptosis at an early stage of colitis development. Natural killer (NK) cells may be associated with the suppression of pathogenic T cells, and may induce apoptosis of CD4+ T cells. To further investigate these roles of NK cells, RAG-/- and IL-7-/-RAG-/- mice that had received naive T cells were depleted of NK cells. NK cell depletion at an early stage during effecter/memory T cell (TEM) development resulted in exacerbated colitis in recipient mice even in the absence of IL-7. Increased TEM were observed in the T cell-reconstituted RAG-/- recipients when NK cells were depleted. These results suggest that NK cells suppress colitis severity in the T cell-reconstituted recipient mice through targeting of colitogenic TEM present at the early stage of T cell development.
                          66. 慢性炎症による大腸発癌機構の解明 Molecular characterization of Colitis Associated Cancer 24249046 2012-04-01 – 2015-03-31 下部消化管学 / 下部消化管 / 潰瘍性大腸炎 / 幹細胞 / 大腸がん / 大腸癌 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(A) 慶應義塾大学 炎症性腸疾患は慢性腸管炎症を特徴とする疾患で,本邦で近年増加中である.潰瘍性大腸炎患者は長期罹患とともに大腸発がんリスクが高くなり,通常の大腸がんと異なる臨床像を示し,Colitis associated cancer (CAC)と称される.我々はCAC症例より腫瘍サンプルを採取し,オルガノイドの樹立,そのCACオルガノイドの統合的な解析を行った.CACでは通常型の大腸がんに比し,低頻度のAPC変異と高頻度のTP53変異を認めた.CACオルガノイドの樹立とその分子遺伝学的解析データが統合され,今後のCACに対する基礎研究ならびにトランスレーションナルリサーチの進展に極めて有用と考えられる. Inflammatory bowel disease is characterized by chronic mucosal inflammation and the number of patients are increasing in our country. Duration of disease is positively correlated to the occurrence of colorectal cancer, which is referred to as Colitis associated cancer (CAC). CAC exhibit different clinical features and therapeutic response in comparison to sporadic colorectal cancer. To elucidate carcinogenic mechanism for CAC, we attempted to establish organoids from CAC. We established 6 CAC organoids and performed gene expression microarray analysis, exome analysis and copy number variation analysis. We observed less frequent mutations in APC and higher prevalence of TP53 mutations in CAC as compared to sporadic colorectal cancer. The established CAC organoids and their molecular characterization data can be useful resource for basic and translational research for CAC.
                          67. ヒト腸管切除検体を用いた炎症性腸疾患の免疫学的発症機序の解明と新規治療法の開発 12J05920 2012-04-01 – 2015-03-31 炎症性疾患 / サイトカイン / マクロファージ / 自然リンパ球 / 遺伝子発現 / 炎症性腸疾患 / Innate lympohoid cell / Lymphoid tissue inducer cells / Th17細胞 / Th1細胞 / Gut-associated lymphoid tissue 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 特別研究員奨励費 慶應義塾大学 前年度までにマウスを用いて行った基盤的研究から、炎症状態、定常状態ともヘルパーT細胞(Th1, Th17細胞)および、Innate lymphoid cell (ILC)は独立した制御機構が存在することが示唆された。IBD患者腸管切除検体において、ILCの細胞数の増減は認められない物の、粘膜修復能に関与するIL-22産生能を炎症部と非炎症部において比較したところ、ILCのIL-22産生能は炎症部と比して非炎症部において有意に高値を示した。また、IL-22産生性のILCはCD127(+)CD56(-)分画(CD127SP)およびCD127(+)CD56(+)分画(DP)において認められた。次にCD127SPおよびDP分画を単離し定量PCRを実施したところ、Flowcytometryの結果と一致してCD127SPおよびDP分画はRORγt陽性であり、これらはそれぞれマウスにおけるNCR- ILC3, NCR+ILC3に一致する分画と考えられる。これらILC3分画からのIL-22産生機構を検討するために、マウスの腸管を用いて、ILC3分画における網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)および、クロマチン構造(ATAC-seq)を検討した。まず初めに、ILC3の各分画を効率よく分離するための細胞調整方法および分離方法を検討した。CCR6+NCR-ILC3はLTiに、CCR6-NCR-ILC3はT-betを発現しNCR+ILC3に近い性質を持っていることを確認しNCR+ILC3とLTiの遺伝子発現をRNA-seqを用いて比較検討した。
                          68. 樹状細胞オートファジーによる腸管粘膜免疫系ホメオスターシスの制御 Regulation of gut mucosal homeostasis by autophagy in dendritic cells 23790528 2011 – 2012 樹状細胞 / オートファジー / 腸内常在菌 / IgA / 炎症性腸疾患 免疫学 / 基礎医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(B) 東京医科歯科大学 申請者は, 腸管関連リンパ組織(GALT)の樹状細胞(DC)では構成的に オートファジーが誘導されていること, また同機構の誘導には腸内常在菌の細胞内捕捉が重要 であることを明らかにした. 腸炎モデルの検討から, DC オートファジーを欠如するマウスでは, 腸炎回復期における粘膜組織の再生遅延が観察された. またこの遅延は, DC オートファジー不 全による DC 内常在菌数の増加に伴う IL-6 および TNF-〓の生産レベルの増加, ならびに DC による IL-23 の生産レベルの減少および IL-23 依存性に誘導される, 組織修復を促す IL-22 の 大腸組織からの生産レベルの減少によることが判明した. これらの結果から, GALT DC の構成 的オートファジーは定常状態では腸内常在菌の刺激依存性に誘導されること, 炎症状態では回 復時の粘膜治癒機構に深い関わりがあることが明らかとなった. We here showed that autophagy is constitutively induced in dendritic cells (DCs) in the gut-associated lymphoid tissues (GALT) under steady-state conditions and the induction is dependent on the engulfment of commensal bacteria. In a colitis model, DC-specific autophagy-deficient mice showed a delayed restoration of mucosal integrity in a recovery phase. Autophagy-deficient GALT DCs revealed increased intracellular commensal bacteria, increased production of IL-6 and TNF-〓, and reduced production of IL-23 in the recovery phase of colitis. Importantly, the production of tissue-remodeling cytokine IL-22, which is induced by IL-23, was much reduced in the autophagy-deficient mice. Collectively, these results indicate that constitutive autophagy in GALT DCs is induced by the intracellular recognition of commensal bacteria, and suggest that the autophagy plays an important role in mucosal healing of colitis.
                          69. 特殊光内視鏡と分子イメージング内視鏡による潰瘍性大腸炎合併癌サーベイランスの検討 The investigation of surveillance colonoscopy for ulcerative colitis associated cancer by using image enhanced endoscopy and molecular imaging endoscopy. 23591022 2011 – 2013 潰瘍性大腸炎 / サーベイランス内視鏡 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 大阪市立大学 全大腸NBI(Narrow Band Imaging)観察と狙撃生検によるサーベイランス内視鏡は通常光と同等の検出力で検査時間が短いことを示し、全大腸NBI観察と全大腸色素内視鏡による国内多施設共同前向きランダム化比較試験(Navigator Study)を開始した。またAFI(Auto Fluorescence Imaging)で非腫瘍性病変がマゼンダを呈さないことを示した。PDD(Photodynamic diagnosis)で全ての市販内視鏡検査で視認困難なflat dysplasiaを視認できることを報告した。以上をもとに高精度で効率的なサーベイランス内視鏡検査ストラテジーを提唱した。 We evaluated that panclonic NBI (Narrow Band Imaging) surveillance colonoscopy showed similar efficacy for the detection of colitis associated neoplasia and shorter examination time. We conducted the multicenter prospective randomized comparison study (Navigator Study) for surveillance colonoscopy with panclonic NBI observation and panchromoendoscopy. AFI (Auto Fluorescence Imaging) was useful for negative selection with green appearance for suspected lesion. And PDD (Photodynamic diagnosis) could visualize the invisible flat dysplasia with commercial endoscopic devices. Therefore, we recommended the optimized surveillance colonoscopic strategy.
                          70. S1P受容体を標的としたIBD新規治療法の開発 Development of the novel IBD treatment targeted S1P receptor 23590934 2011 – 2013 炎症性腸疾患 / 慢性腸炎 / リンパ球動態制御 / FTY720 / S1P受容体 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 本研究では炎症性腸疾患における特異的な免疫学的異常に着目し、リンパ球動態を制御する低分子化合物FTY720を用いた、これまでと全く異なる概念に基づく新規治療法に関して独自に検討を行った。
                            FTY720を腸炎マウスの複数のモデルに投与した結果、その腸炎を著明に抑制することが可能であった。
                            また我々は、この腸炎抑制機序はFTY720が腸炎惹起性リンパ球を二次リンパ節に隔離することで効果発現していることを明らかとした。 In inflammatory bowel diseases, it is thought that colitogenic memory CD4+ T cells are intermittently reactivated in regional lymphoid organs, and return to inflammatory tissues. Little is known about how FTY720 controls the migration property of memory T cells. We here demonstrated that FTY720 prevents the development of colitis induced by the adoptive transfer of naive CD4+ T cells into SCID mice. Also FTY720 prevents the colitis induced by the adoptive transfer of colitogenic effector-memory CD4+ T cells into SCID mice. In both model, cell number of CD4+ T cells was markedly decreased in peripheral blood of FTY720-treated mice, but conversely increased in lymph nodes. Notably, FTY720 treatment prevented the development of colitis in inflammatory bowel disease model by inhibition of T-cell egress from lymph nodes.
                          71. 細胞膜有機イオン輸送体および接着分子による新規微生物認識機構の解明と腸炎への関与 Novel roles of transporters and adherent molecules of epithelial membrane in the recognition of bacteria 23590931 2011 – 2013 下部消化管学(小腸、大腸) / 腸内細菌 / 炎症性腸疾患 / ポリリン酸 / トランスポーター / エンドサイトーシス / インテグリン / 接着分子 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 旭川医科大学 バシラス菌および新規麦芽乳酸菌の培養上清から腸管上皮バリア機能を増強する活性物質であるcompetence and sporulation factor (CSF)とポリリン酸を同定することに成功した。これらの活性物質は、細胞膜トランスポーターOCTN2およびインテグリン1により腸管上皮に認識され、細胞内に取り込まれることで、腸管障害を改善することが明らかになった。これは、Toll様受容体やNODsなどのパターン認識受容体を介さない、新たな宿主-腸内細菌のコミュニケーションシステムの存在を示唆するとともに、菌由来活性物質を用いた新規腸炎治療開発への足がかりとなる。 Competence and sporulation factor and polyphosphate were identified as bioactive molecules from the conditioned media of Bacillus subtilis and Lactobacillus brevis SB88, respectively. These molecules improved the intestinal injury through their transport by OCTN2 and binding to integrin 1, respectively. The novel communication systems between the host and bacteria are distinct from the mechanisms mediated by pattern-recognition receptors, such as Toll-like receptors and NODs. These results are therefore expected to positively contribute to the development of new drugs for the treatment of intestinal inflammation using bacteria-derived molecules.
                          72. 腸管NK細胞の炎症性腸疾患への関与の解明及び細胞集団の移行性の検討 Analysis of intestinal NK cells in pathology of inflammatory bowel diseases and examination about translatability of NK cells 22790668 2010 – 2011 炎症性腸疾患 / クローン病 / 腸管マクロファージ / 腸管NK細胞 / NKp44 / NKp46 / IL-23 / TL1A 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(B) 慶應義塾大学 腸管NK細胞にはNKp44とNKp46の細胞表面分子により大きく二つの集団に分類され、正常腸管においてはこれらの細胞集団が均衡により腸管免疫の恒常性が保たれていることを示した。一方、クローン病においてはこれらの著しい不均衡が生じており、病態に関与している可能性を示した。また、腸管NK細胞の活性化には腸管マクロファージとの相互作用が重要であることを見出し、ここにかかわる因子としてIL-23とTL1Aの存在を見出した。これらの結果はNKp46+NK細胞がクローン病の病態に関与する可能性を示唆するものと考えられた。 We showed that the NKp44+/NKp46+NK cell is balanced in human normal intestinal mucosa, and the balance is disturbed in the intestinal mucosa in Crohn’s disease. Moreover, the interaction between intestinal NKp46+NK cells and CD14+LPMφs is an important participant in the pathogenesis of Crohn’s disease. IL-23 and the TL1A were the key factor of their interaction. These findings suggest that IFN-γ-producing NKp46+mucosal NK cell subset is involved in the pathogenesis of Crohn’s disease.
                          73. エピゲノム制御による消化管の組織修復機構 Epigenetically regulated tissue repair mechanism in gastrointestinal tract 22590712 2010 – 2012 下部消化管学(小腸、大腸) / 糖鎖 / エピゲノム / 消化管 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 独立行政法人国立国際医療研究センター 本研究では傷害を受けた消化管の組織修復を促す因子を、マウス腸炎モデルを用いて探索した。再生上皮においてムチン産生細胞の分化やムチン合成に関する遺伝子群の発現が低下していること、そのDNAメチル化が亢進していることを見出した。更に潰瘍性大腸炎においてもヒトホモログの発現低下が同様に起こっていることを明らかにした。また、潰瘍性大腸炎においてL-1トランスポゾンのDNAメチル化レベルの低下と、転写および分化にかかわる遺伝子群のDNAメチル化亢進を見出し、傷害上皮の再生のための増殖促進におけるエピジェネティック機構の重要性を明らかにした。 In this study, we searched for the factors which promoted the regeneration of damaged gastrointestinal epithelium in the murine colitis model. We found that a group of genes involving in the differentiation to mucin-producing cells and the synthesis of mucins was DNA methylated and their expression were significantly decreased in regenerative epithelial cells isolated from the inflamed colon. Decreased expression of some human homologues was also observed in the ulcerative colitis. In addition, the DNA methylation level of the L-1 retrotransposon was dramatically decreased while the DNA methylation of genes involving in the transcription and the differentiation was accelerated in ulcerative colitis. These results suggest the importance of epigenetic gene regulation for the regeneration of the injured epithelium.
                          74. 血清中マイクロRNAを用いた炎症性腸疾患に対する治療効果予測法の確立 Serum miRNA Levels in Patients with Inflammatory Bowel Disease 22590707 2010 – 2012 下部消化管学(小腸、大腸) / miRNA / 炎症性腸疾患 / 血清診断学 / 核酸創薬 / microRNA / 血清診断 / トランスレーショナル / マイクロRNA / マイクロアレイ / 発現制御 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 九州歯科大学 我々はクローン病の標準的な分子標的療法である抗TNFα抗体投与の前後で血清中miRNAを網羅的に測定した。結果として12個のmiRNAで変化を認めた。また、緩解群と非緩解群の比較においては、緩解群でlet-7dとlet-7eが有為に増量していることを確認した。血清中let-7の分子生物学的意義は今後の検討課題であるが、Tリンパ球のアポトーシスへの関与が報告されている。この結果より治療抵抗性のクローン病に対してlet-7が臨床マーカーとなる可能性が示唆された。 We measured serum miRNA before and after the antiTNF alpha antibody administration that was standard molecular target therapy of the Crohn’s disease. As a result, showed a change in 12 miRNAs. Also, in the comparison between remission group and non-remission group, we confirmed that let-7d and let-7e were increased in a remission group. The molecular biologic significance of serum let-7 should be examined. It may be involved in apoptosis of T lymphocytes causing inflammation. As a result, let-7 may become a therapeutic marker of the refractory Crohn’s disease.
                          75. 一酸化炭素による腸管炎症制御・粘膜損傷治癒効果の分子機構解明 The effect of carbon monoxide in the intestinal inflammation 22590706 2010 – 2012 一酸化炭素 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / 炎症性腸疾患 / 抗炎症作用 / 粘膜治癒 / Trinitrobenzesulfonic acid / TNF-alpha / CINC-1 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 京都府立医科大学 潰瘍性大腸炎やクローン病などの難治性炎症性腸疾患に対する新規治療法の開拓を課題として、一酸化炭素(Carbon monoxide: CO)による腸管炎症抑制効果・粘膜治癒促進効果を検証した。まず、安全かつ安定なCO供給源として、高濃度CO (50%)をバブリングすることにより溶解液を作成し、実験動物(ラット・マウス)を対象としてCO溶解液を経肛門的投与した。本投与法ではCO中毒は惹起されず、 COの毒性を克服しうる安全性の高い投与法であることを明らかにした。さらに、ラット実験腸炎モデルを用いた検討において、CO溶解液の経肛門的投与により、大腸炎の発症・進展が抑制されることを見出した。また、大腸炎発症後にCO溶解液を投与する治療実験においても大腸粘膜損傷治癒が促進されることを明らかにし、 この粘膜損傷治癒促進効果にはCOによる腸管上皮細胞の遊走促進作用が関与することを明らかにした。 An abundance of recent data on the cytoprotective and anti-inflammatory effect of carbon monoxide (CO) supports that CO is a promising therapeutic gas for various diseases. In the present study, we investigated whether the enema with CO-saturated saline as a novel therapeutic strategy was effective against intestinal inflammation. CO-saturated solution was made by bubbled 50% CO gas into saline. In results, the intrarectal administration of CO-saturated solution ameliorated TNBS-induced colitis and accelerated the healing of the colonic ulceration. Moreover, CO-saturated medium enhanced the migration of intestinal epithelial cells. Thus, the rectal administration of CO-saturated solution protected from the intestinal inflammation and accelerated the colonic ulcer healing. B ased on these data, CO mayrepresent a novel therapeutic approach for the treatment of inflammatory bowel disease.
                          76. 炎症性腸疾患における発癌調節機構の解明と臨床応用への基盤樹立 Identification of the inflammatory signaling in intestinal epithelial cells involved 22590696 2010 – 2012 炎症性腸疾患 / 炎症性発癌 / 新規治療法 / 粘膜免疫 / MLCK / 炎症性腸管 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 東京医科歯科大学 本研究は申請者らが独自に研究を展開してきた炎症性サイトカインを介した腸管上皮細胞における免疫学的シグナル伝達に注目し、炎症性腸疾患における特異的発癌分子機構とその新規治療標的としての可能性について解析した。その結果、腸管上皮細胞における特異的なTNFシグナルがNF-KBの活性化に深く関与する事実と、それによって腸管上皮細胞の発癌誘導が促進され得る可能性が暗示された。この分子メカニズムが炎症性腸疾患における特異的発癌の病態機序においてその治療標的になりうることが示唆され、今後の研究成果が期待される。 Treatment with anti-tumor necrosis factor (TNF) mAb has been accepted as a successful therapy for patients with inflammatory bowel diseases (IBD). It has been recently reported that blockade of TNF receptor (TNFR) signaling in infiltrating hematopoietic cells may prevents the development of colitis-associated cancer (CAC). However, it remains unclear whether the TNF signaling in the epithelial cells is also involved in the development of CAC. To investigate this, we studied the effects of anti-TNF mAb in animal models of colitis and CAC. Our studies suggest that the TNFR signaling in intestinal epithelial cells may be directly involved in the development of CAC with persistent colitis, and imply that the maintenance therapy with anti-TNF mAb may prevent the development of CAC in patients with IBD.
                          77. 炎症性腸疾患における病勢マーカーとしてのWnt-5aとその分子生物学的役割 The role of Wnt-5a as the pathological marker of inflammatory bowel disease. 21790688 2009 – 2011 Wnt-5a / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / myofibroblast / Hsp25 / SERPINB1 / Myofibroblast / FGF15 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 若手研究(B) 京都府立医科大学 大腸のmyofibroblastからのWnt-5a発現に関しては大腸上皮細胞のHeat Shock Protein 25を抑制することが分かった。これは上皮細胞におけるbeta-cateninの核内移行を促進することが機序であることも明らかとなった。また、この抑制によって上皮細胞の増殖が促進された。この増殖促進はWnt-5aそのものの作用ではなく、上皮細胞内におけるHeat Shock Protein 25抑制によってもたらされることも証明された。大腸粘膜におけるWnt-5a発現に関して、正常および寛解期の潰瘍性大腸炎患者から得た大腸粘膜組織ではWnt-5a mRNA発現は低値であったが、活動期の潰瘍性大腸炎患者における大腸粘膜組織では有意にWnt-5a mRNA発現が増加していた。 Colonic myofibroblast cells(VUPF) conditioned medium inhibited butyrate-induced Hsp25 expression and promoted butyrate induced cell proliferation. Mass spectroscopy of the active CM fraction implicated members of the Wnt-5a. Wnt5a expression was silenced in vivo by intramural injection with Wnt5a siRNA. At the site of injection, Hsp25 expression was increased along the entire length of the crypt in contrast to being only expressed by surface colonocytes in mice injected with scrambled siRNA. These findings were associated with decreased pericrypt MF Wnt-5a expression and decreased epithelial Ki-67 staining. When colonic crypt Hsp25 expression was increased through luminal lentiviral infection, Ki-67 staining was nearly absent. Wnt-5a mRNA expression of colonic mucosa from ulcerative colitis patients were significantly increased compated to normal control and remission stage of ulcerative colitis.
                          78. 腸管アルカリフォスファターゼが炎症性腸疾患の粘膜防御機構に果たす役割 The role of intestinal alkaline phosphatase in inflamatory bowel disease 21590808 2009 – 2012 炎症性腸疾患 / 粘膜防御機構 / 腸管アルカリフォスファターゼ 消化器内科学 / 内科系臨床医学 / 医歯薬学 / 生物系 基盤研究(C) 浜松医科大学 炎症性腸疾患において粘膜のバリア機構はその病勢に大きく関与する。我々は、過去に腸管バリア機構を増強すると報告されてきた腸管アルカリフォスファターゼ(IAP)に着目した。遺伝子操作により IAP をマウスの腸管粘膜局所で増減させる実験系の確立を探索した。炎症性腸疾患のモデルマウスとしては、過去の報告では安定した病気の作成が困難とされたクローン病類似モデルであるマウス TNBS 腸炎を腹腔麻酔の代りに吸入麻酔を使用することにより安定したモデルにすることに成功した。これらの系を用いて、今後 IAP の粘膜防御におけるメカニズムをさらに検討していく予定である。 The mucosal barrier function may contribute to the disease activity of inflammatory bowel disease (IBD). Previous studies showed that the intestinal alkaline phosphatase (IAP) maintains mucosal integrity of the gut. We tried to establish the experimental system which increases or decreases IAP on intestinal mucosa by using gene transfer system. It is known that TNBS colitis, which is one of mouse models of Crohn’s disease, is very difficult to induce colitis stably. However we succeeded in establishment of the system which makes the stable TNBS colitis by using continuous inhalation anesthesia with sevoflurane instead of conventional intraperitoneal anesthesia. We will further examine that the mechanism of IAP in mucosal barrier functions by using these models.

                          電子伝達系や酸化反応で電子はどのように移動していくのか

                          生化学の授業では、グルコースが酸化されていって、最後の電子伝達系で水素イオンの濃度勾配が作られて、ATP合成酵素が活性化されてADPからATPが作られるといったことを学びます。「酸化反応や電子伝達系を通して、電子が酸素まで流れていく」といった統一的な理解の仕方で習うのではないかと思いますが、だとすると、素朴な疑問が湧きます。電子は本当に、電線の中を流れる電子と同じように動いているのでしょうか? FADH2のように水素ごと運ぶ反応はどう理解すればいいのでしょうか? 高校化学で習った「水素を失うことが酸化」という定義は、いったい何を意味していたのでしょうか?

                          エネルギー代謝の最終段階は、水素イオン濃度勾配として蓄えられたエネルギーを利用したATP合成です。では、ミトコンドリアの内膜の内側と外側では、水素イオン濃度の差(つまり、pHの差)はどれくらいあるのでしょうか。

                           

                          1. ミトコンドリア内膜を挟んだ pH 勾配はどれくらい?

                          • マトリックス側: pH ≈ 8(弱アルカリ性)
                          • 膜間腔側: pH ≈ 7(細胞質と同じ、ほぼ中性)

                          つまり ΔpH ≈ 1 で、マトリックス側のプロトン濃度は膜間腔側の10分の1になっています。

                          膜間腔のpHが細胞質と等しくなるのは、外膜にポリンという大きな孔があって小分子が自由に通れるので、バリアとして働くのは内膜だけということになります。

                          ATP合成酵素を回す駆動力(プロトン駆動力 proton motive force, Δp)は、水素イオン濃度の差だけではありません。実はΔpHおよび電位差(ΔΨ)という2つの成分の合計です。

                          成分 大きさ
                          化学的勾配 ΔpH 約1単位(H+濃度10倍差)
                          電気的勾配(膜電位) ΔΨ 約 150〜180 mV、マトリックス側が負

                           

                          では、この電位差はどのようにして生じているのでしょうか。

                          2. 電位差はなぜ生じているのか

                          ではこの電位差はどのようにして生じるのでしょう? 大学の物理化学で、生体膜の内外でイオン濃度に差があるときに、ネルンストの平衡式で膜電位が計算されましたが、それでしょうか?

                          直感的には、電子伝達系の複合体I, III, IVは、プロトン(H+)をマトリックスから膜間腔へ汲み出す。H+は正電荷を持つ粒子なので、

                          • マトリックス側: H+が減る → 負に帯電
                          • 膜間腔側: H+が増える → 正に帯電

                          つまり「pH勾配」と「膜電位」は、同じプロトンポンプの2つの側面と理解されます。化学的に見れば濃度勾配、電気的に見れば電位差。

                          仮に、ネルンスト式を当てはめて、もしH+だけが膜を自由に通れる状況で平衡に達したとすれば:

                          ΔΨ = −(RT/F) ln([H+]matrix/[H+]IMS) = −2.303 (RT/F) × ΔpH

                          37℃で計算すると約 61 mV/pH単位。ΔpH = 1 ならネルンスト平衡では ΔΨ ≈ 61 mV に相当する。

                          ところが実際の ΔΨ は 150〜180 mVだということが知られています。この値は、ネルンスト平衡から予想される値よりずっと大きいわけですが、なぜでしょう。

                          その答えは、ミトコンドリア内膜のH+は平衡に達していないからです。電子伝達系が能動的にH+を汲み出し続けているので、内膜の両側はネルンスト平衡から大きくずれた 非平衡の定常状態 にあります。汲み出されたH+は戻ろうとするが、内膜は脂質二重層としてH+をほとんど通さず、ATP合成酵素の通路を通る時しか戻れません。

                          ネルンスト式は「もし平衡なら」の値を与えるだけであって、生きたミトコンドリアの値を予測するものではないのです。

                           

                          3. 非平衡だとして、観察される膜電位差はなぜ 150〜180 mV に落ち着くのか

                          「非平衡だから」で済ませず、なぜこの値に収束するのかを定量的に詰めてみましょう。膜電位 ΔΨ は独立変数ではなく、エネルギー保存則と速度論的釣り合いから従属的に決まります。

                          熱力学的上限

                          NADHからO2までのレドックス電位差は ΔE° = 0.82 − (−0.32) = 1.14 V。電子対1組(2電子)あたりこのエネルギーが、10個のH+を汲み出す仕事に変換される(複合体I: 4個、III: 4個、IV: 2個)。

                          ポンプが止まる熱力学的限界は:

                          Δpmax = (2 × 1.14) / 10 = 0.228 V = 228 mV

                          観測値 Δp ≈ 200〜220 mV はこの上限に非常に近いといえます。電子伝達系はかなり高い熱力学的効率(80〜90%)で動いているのです。

                          ATP合成側からの下限

                          細胞内の典型的な ATP/ADP/Pi 比から、ATP合成の ΔG ≈ +50 kJ/mol。H+ 1個あたり n ≈ 2.7〜3 個必要なので:

                          Δp ≥ 50000 / (2.7 × 96485) ≈ 0.19 V = 190 mV

                          ATP合成を維持するには Δp ≳ 190 mV が必要。これが下限となります。

                          速度論的釣り合い

                          ATP合成酵素のH+通過速度(Jsynth)、内膜のH+漏れ(Jleak)、ポンプ速度(Jpump)が釣り合うところで ΔΨ が安定します:

                          Jpump(Δp) = Jsynth(Δp, [ATP]/[ADP][Pi]) + Jleak(Δp)

                          • State 4(ADP枯渇、ATP合成停止): Jsynth ≈ 0、ΔΨ ≈ 180 mV(熱力学的上限近く)
                          • State 3(ADP豊富、活発な合成): ΔΨ ≈ 140〜160 mV

                          つまり ΔΨ は細胞のエネルギー需要に応じて動的に変化し、150〜180 mV の狭い範囲で動的平衡点として安定します。

                          ΔΨ:ΔpH 配分について

                          Δp の内訳は ΔΨ が優勢、ΔpH が従となりますが、その比率(よく言われる7:3など)は条件依存性が大きく、文献によって幅があります。動物ミトコンドリアでは pmFel(電位差成分)が優勢だが、ΔpH 成分も生理条件下で有意に寄与します。「ΔΨ が先に積み上がる」のは緩衝の自然な帰結というより、生体側がイオン交換系(K+/H+交換、Na+/H+交換、Pi/H+共輸送など)で能動的に ΔΨ 優勢に保っている側面が強いといえます。

                          参考文献

                          • Nicholls & Ferguson, Bioenergetics 4th ed.(この分野の標準教科書)
                          • Kamo et al., J Membrane Biol 49:105 (1979) — TPP+電極による ΔΨ 測定の古典
                          • Wikström & Springett, Comm Biol 2020 — 電子伝達系の熱力学的効率と可逆性の解析
                          • Gerencser et al., J Physiol 2012 — in situ の ΔΨM 定量測定

                           

                          4. 電子は電線の中を流れる電子と同じか?

                          それでは、当初の疑問に戻ってみます。電子が移動していくことにより最終的には酸素分子に受け渡されて水分子ができるけれど、これは電線の中を流れる電子と同一と考えていいのでしょうか? 金属中の自由電子と、共有結合の電子が同じ振る舞いをするという考えには無理があります。つまり、「機能的にはYes、機構的にはNo」という二段構えの答えになりそうです。

                          エネルギー論的には完全に同じ

                          電気回路 電子伝達系
                          電池の起電力 ΔE = 電位差 レドックス電位差 ΔE ≈ 1.14 V
                          電子は電位差を駆動力に流れる 電子は低レドックス電位 → 高レドックス電位へ
                          電子1個が運ぶエネルギー = qΔE 電子1個が運ぶエネルギー = eΔE
                          モーターを回す(仕事) プロトンポンプを駆動(仕事)

                          生化学の式 ΔG = −nFΔE は、まさに電気回路のエネルギー式そのものです。「電子が低エネルギー側に流れて仕事をする」という直感は両者で完全に正しいといえます。

                          しかし電子の運び方の物理は全く違う

                          金属中の自由電子:

                          • 結晶全体に非局在化した波(バンド理論)
                          • 電場をかけると即座に全体が一斉にドリフト
                          • 連続的に流れる流体のようなイメージ

                          電子伝達系の電子:

                          • 特定の補因子(FMN、Fe-Sクラスター、ヘム、銅イオン、ユビキノン)に局在化
                          • 補因子から補因子へ1個ずつジャンプする
                          • このジャンプは量子力学的トンネリングで起こる
                          • 距離は典型的に 10〜14 Å、それ以上離れるとトンネル確率が指数的に低下

                          つまり、金属中では電子の海が一斉に流れ、電子伝達系では電子1個が飛び石を渡るようにジャンプして進むので、機構としては全く別物です。

                          「共有結合の電子」と「自由電子」の中間としての酸化還元電子

                          状態 電子の所在 動けるか
                          共有結合 2つの原子核間に局在 化学反応がない限り動かない
                          金属中の自由電子 結晶全体に非局在 自由にドリフト
                          酸化還元活性中心の電子 金属イオンや補因子の d軌道・π軌道に局在 トンネリングで隣の中心へジャンプ可能

                          電子伝達系の電子は、Fe3+ が Fe2+ になるときの「d軌道に増えた電子」。共有結合の電子でも、金属の自由電子でもなく、「酸化還元状態を変える、可動性のある価電子」です。

                           

                          5. マーカス理論 — 電子は10 Å 以上離れていてもなぜ移動できるのか

                          電子1個が10 Å以上離れたヘムからヘムへ跳ぶ、という現象は古典的にはあり得ない。これを定量的に説明するのが マーカス理論(Rudolph Marcus, 1992年ノーベル化学賞)です。

                          鍵となる発想:電子は速い、原子核は遅い

                          粒子 動く速さ
                          電子(質量 9.1×10-31 kg) フェムト秒(10-15秒)スケール
                          原子核(電子の約2000倍以上) ピコ秒(10-12秒)スケール

                          電子は原子核より約1000倍速く動きます。これはボルン-オッペンハイマー近似として量子化学の基礎にもなっている事実です。なので、電子が分子Aから分子Bへ飛び移った瞬間、原子核はまだ動けていません。

                          再配置エネルギー λ

                          例として鉄イオンの酸化還元を考えてみましょう。

                          Fe3+ + e → Fe2+

                          • Fe3+: 電荷が大きいので、周りの水分子は強く引き寄せられて近くにある
                          • Fe2+: 電荷が小さいので、水分子はもう少し遠くで安定

                          電子が Fe3+ に飛び込んで Fe2+ になった瞬間、周りの水分子はまだ Fe3+ にふさわしい近い位置に張り付いたまま。これは Fe2+ にとっては不安定な配置です。その後、ゆっくり水分子が動いて Fe2+ に最適な配置に落ち着きます。このとき「不安定な配置から安定な配置へ移る際に放出されるエネルギー」を 再配置エネルギー λ と呼びます。

                          直感的には、電子が予告なくやってきたので、周囲の原子核は驚いて、しばらくしてから「あっ、Fe2+になったのか、じゃあ位置を直さなきゃ」と動き出す。この「位置を直す」のに使われるエネルギーが λです。

                          マーカスの放物線

                          横軸に「原子核の配置(反応座標)」、縦軸にエネルギーをとると、電子が反応物側にあるときと生成物側に移ったときの2つの放物線が描けます。これらは左右にずれて、上下にもずれています。

                          電子が飛べるのは、左右の放物線が交わる「交点」に系がたまたま到達したときだけです。なぜなら電子が飛ぶ瞬間、核の位置は動けないので、エネルギーは横軸の同じ位置で連続でなければならず、エネルギー保存則からその「縦」の長さは0でなければならないからです。

                          放物線の幾何学から、活性化エネルギーは:

                          ΔG = (ΔG + λ)2 / (4λ)

                          そして電子移動速度はアレニウス型に:

                          kET ∝ exp(−ΔG/kBT) = exp(−(ΔG + λ)2/(4λkBT))

                          3つの帰結

                          (1) 駆動力 ΔG が大きいほど速い……とは限らない

                          • ΔG = 0 のとき: ΔG = λ/4(活性化障壁あり)
                          • ΔG = −λ のとき: ΔG = 0(障壁が消える、最速!)
                          • ΔG が −λ より大きく負になると: ΔG がまた大きくなる

                          これが 「マーカスの逆転領域(inverted region)」。1984年に Closs と Miller が実験的に確認し、ノーベル賞受賞の決め手となりました。

                          (2) トンネリングによる距離依存性

                          kET ∝ exp(−βr)

                          β はタンパク質中で約 1.4 Å−1。10 Å離れると速度は約100万分の1。

                          (3) 完全な式

                          kET ∝ exp(−βr) × exp(−(ΔG + λ)2/(4λkBT))

                          生体は何を最適化しているか

                          電子伝達系のタンパク質は、進化によって:

                          1. 補因子間の距離を 10〜14 Å 以内に保つ(トンネルできる距離)
                          2. 各ステップで ΔG ≈ −λ になるように補因子の電位を選ぶ(活性化障壁を最小化)
                          3. タンパク質マトリックスで λ を小さく抑える(再配置エネルギーが小さいほど速い)

                          つまり マーカス理論の最適点で動くように設計された、量子力学的な配線基板 として進化してきました。

                           

                          自分はなぜ大学の生化学で習わなかったのか

                          数十年前に大学や大学院で生化学を学んだとき、マーカス理論が出てきた記憶がありません。なぜでしょうか?その答えは、当時の教科書には載っていなかったからです。

                          出来事
                          1956 マーカスが外圏型電子移動の理論を発表(J. Chem. Phys.)
                          1984 Closs & Miller: 逆転領域を実験的に確認(決定的)
                          1985 Marcus-Sutin総説で生化学者の視野に入り始める
                          1992 マーカスのノーベル賞
                          1990年代後半 Gray & Winkler のシトクロム電子トンネリング研究が体系化
                          2000年代 専門教科書(Nicholls & Ferguson 第3版以降など)に登場

                          マーカス理論が生化学に流入し始めたころのタイミングだと、Lehninger は第2版(1993)でも未掲載、第3版(2000)でようやく軽い言及。Stryer も第3版・第4版では登場せず。Voet & Voet 第2版(1995)で電子トンネリングへの軽い言及程度です。

                           

                          なぜ生化学教育は遅れたのか

                          • カリキュラム上の隙間にある: 物理化学にとっては「応用すぎる」、生化学にとっては「物理に深入りしすぎ」、無機化学にとっては「動力学に寄りすぎ」
                          • 生化学教育の伝統的目的: 代謝経路の全体像、収支計算(ATP何個できるか)、酵素触媒の機構、生体分子の構造が中心。「電子がどうやって動くか」の物理的機構は周辺的
                          • 1980〜90年代は分子生物学の爆発期: DNAシーケンシング、PCR、ゲノムプロジェクト、シグナル伝達に関心が集中
                          • 教える人も習っていなかった: 「自分が習わなかったことは教えない」サイクルが世代をまたいで続いた

                          そして実は、現代でも医学部・薬学部・看護系の生化学にマーカス理論はほぼ入っていません。学部学生でマーカス理論を習うのは、化学科か生物物理学を主専攻にした人にほぼ限られるでしょう。

                          教科書はあるか

                          無料でアクセスできる教材:

                          体系的に学ぶための書籍:

                          • Atkins, Physical Chemistry (第10版以降に1セクションあり) 第12版 2022/12/5
                          • Anslyn & Dougherty, Modern Physical Organic Chemistry(電子移動反応の章で詳しく扱う)
                          • Bolton, Mataga & McLendon (eds.), Electron Transfer in Inorganic, Organic, and Biological Systems (ACS, 1991)
                          • Nicholls & Ferguson, Bioenergetics(生体エネルギー論の標準教科書)

                           

                          7. FADH2 の反応はマーカス理論で扱えない

                          マーカス理論で電子伝達系を理解できるらしいとわかったところで、また別の疑問が湧きます。FADH2 が水素イオンと電子を渡すときに、マーカス理論は使えるのでしょうか? 化学結合の変化だから使えないのでは?

                          マーカス理論の前提は:

                          • 電子1個だけが移動する(外圏型)
                          • 化学結合は形成も切断もされない
                          • 核配置はゆっくり再配置されるだけで、結合の組み替えはない

                          FADH2 → FAD + 2H+ + 2e の反応は、電子2個の移動、N–H結合2本の切断、プロトン2個の同時移動を伴います。つまり、純粋なマーカス理論の枠組みからは外れています。

                          PCET — マーカス理論の拡張

                          電子移動化学は1956年以降、半世紀以上発展してきました。実は、「結合変化を伴う電子移動」を扱う拡張理論があるのです。それが Proton-Coupled Electron Transfer (PCET) 理論 です。1990年代以降、Daniel Nocera(MIT/Harvard)や Sharon Hammes-Schiffer(Princeton/Yale)らが中心となって発展させてきたものです。

                          PCETは「電子と陽子(プロトン)が共役して移動する反応」を扱います。電子移動と陽子移動の関係で分類すると:

                          機構 電子と陽子の関係
                          ET(電子移動) 電子のみ
                          PT(陽子移動) 陽子のみ
                          ETPT または PTET 段階的(電子→陽子、または陽子→電子)
                          Concerted PCET (CPET) 電子と陽子が同じ素過程で同時に移動
                          HAT(水素原子移動) CPETの特殊例:電子と陽子が同じ結合から同時に出る

                          Hammes-Schifferらは、マーカス理論を拡張してCPETの速度定数を記述する式を導出しました。形式的にはマーカス式と非常に似ていますが、陽子の量子トンネリングを含む点が違います:

                          kCPET ∝ Σμ,ν Pμ |Vμν|2 exp(−(ΔGμν + λ)2/(4λkBT))

                          ここで Pμ は反応物の振動状態の熱分布、Vμν は陽子の振動波動関数の重なりを含むカップリング、λ は電子と陽子の両方の再配置エネルギー。

                          つまり「陽子もトンネルする量子粒子として扱い、その振動波動関数の重なりを電子のカップリングと一緒に計算する」という構造です。マーカス理論の精神を保ちながら、結合変化(プロトン移動)を量子力学的に取り込んでいます。

                           

                          8. PCET 理論は教科書に載っている?

                          PCET理論がまだ「教科書化される前の若い理論」であることの反映して、まだ大学初年級向けに教科書には登場しません。マーカスの場合は1956年から教科書登場まで約40年かかりました。1990年代後半に始まったPCETが教科書に入るのは、もっと先になりそうです。

                          PCETの読み方

                          教科書ではなく総説論文から入るのが現実的。

                          9. 電子伝達系の各複合体での反応 — マーカス理論と PCET の使い分け

                          では、電子伝達系の各複合体での反応を、マーカス理論とPCET理論でどう整理できるのでしょうか。

                          まず前提として、NADH/FADH2を直接受け取るのは複合体I/IIだけ。複合体III/IVへの入力はQH2(ユビキノール)とシトクロム c。

                          複合体 入力 出力
                          I(NADH脱水素酵素) NADH + H+ NAD+ + QH2
                          II(コハク酸脱水素酵素) コハク酸(FADH2は内部の補因子) フマル酸 + QH2
                          III(シトクロム bc1 複合体) QH2 Q + シトクロムc(還元型)
                          IV(シトクロム c 酸化酵素) シトクロムc + O2 H2O

                          複合体I(NADH dehydrogenase)

                          全体反応:NADH + H+ + Q → NAD+ + QH2(4 H+ をマトリックスから膜間腔へ汲み出す)

                          素過程 機構 適用理論
                          NADH → FMN ヒドリド移動(H = 2e + 1H+) PCET(HAT類似)
                          FMN → Fe-Sクラスター連鎖 1電子ずつに分割、外圏型電子移動でトンネリング マーカス理論
                          Fe-S(N2)→ ユビキノン 2電子と2陽子を取り込む PCET
                          プロトンポンピング 離れた4つの陽子チャネル、立体構造変化と共役 コンフォメーション変化+PCET

                          複合体II(succinate dehydrogenase)

                          全体反応:コハク酸 + Q → フマル酸 + QH2(プロトンポンピングなし)

                          素過程 機構 適用理論
                          コハク酸 → FAD(脱水素) 2H + 2eを渡す PCET(HAT機構)
                          FADH2 → Fe-S FADH2が脱プロトン化しつつ電子を渡す PCET
                          Fe-S連鎖 外圏型電子移動 マーカス理論
                          Q → QH2(2H+取り込み) PCET

                          FADH2は補欠分子族として複合体IIに永久結合しており、遊離分子としては動かない点に注意。

                          複合体III(シトクロム bc1 / Q サイクル)

                          素過程 機構 適用理論
                          QH2 → Rieske Fe-S 協奏的PCET(電子1個を渡しつつH+を膜間腔に放出) PCET
                          Rieske → cyt c1 → cyt c 純粋な電子移動 マーカス理論
                          cyt bL → cyt bH 電子移動 マーカス理論
                          Q + 2e + 2H+ → QH2 プロトン取り込み PCET

                          複合体IV(シトクロム c 酸化酵素)

                          素過程 機構 適用理論
                          cyt c → CuA → ヘム a → ヘム a3/CuB 電子移動の連鎖 マーカス理論
                          O2結合と4電子還元(O2 → 2H2O) 4電子・4陽子の協奏 PCET(多重)
                          プロトンポンピング(D, K-channel) “proton loading site”を経由する電子-陽子協奏移動 長距離PCET(〜25 Å)

                          パターンとしての規則性

                          • 規則1:水素を扱うところがPCET — NADH、FADH2、QH2 はいずれも「H+ + e」をセットで運ぶキャリア
                          • 規則2:金属中心間の移動はマーカス理論 — Fe-Sクラスター、ヘム、銅中心の間ではほとんどが純粋な外圏型電子移動
                          • 規則3:電子だけのキャリアと電子+陽子のキャリアを交互に使う — これがプロトンポンピングを成立させる本質

                          呼吸鎖で、電子+陽子キャリア(NADH, FADH2, QH2)と電子のみキャリア(Fe-Sクラスター、ヘム、Cu中心、cyt c)が 交互に配置 されています。電子だけが移動するステップでは、陽子は別経路から取り出される(マトリックスから取り込み)/別経路に放出される(膜間腔へ放出)。この「電子経路」と「陽子経路」の物理的分離こそが、化学浸透説の核心といえます。

                          10. PT は吸エネ、ET は発エネ、だから共役するという理解でOKなの? — 共役の本当の理由

                          大筋として、「proton transferはエネルギーを必要とする過程、electron transferは電位勾配を下る発エネ過程、だから共役する」という理解は、方向性としては正しいですが、もう少し精密な理解が必要です。

                          (1) PTもETも、文脈次第で吸エネ・発エネのどちらにもなる

                          • PT: pKaの差が決める。ドナーのpKa < アクセプターのpKa なら発エネ
                          • ET: 酸化還元電位差が決める。ΔE > 0 なら発エネ

                          呼吸鎖全体は確かに発エネだが、個々のステップは吸エネに近いものもあります。

                          (2) 共役の本質は「電荷バランス」と「pKaの酸化還元状態依存性」

                          電子(−1)が動けば、どこかで電荷バランスが必要。Q + 2e + 2H+ → QH2 のように、電子だけ受け取ると Q2−(強塩基性、不安定)になってしまう。陽子も一緒に受け取れば中性のQH2になります。

                          そして本質的に重要な事実として、同じ分子でも、酸化されているか還元されているかで pKa が劇的に変わります

                          例: チロシンの場合

                          • 還元型(Tyr-OH): pKa ≈ 10
                          • 酸化型(Tyr-O•+): pKa ≈ −2

                          つまりチロシンが1電子酸化されると、12 pKa単位も酸性になります。電子を失った瞬間に「陽子を手放したくてたまらない」状態になるというわけです。

                          還元(電子を受け取ること)は、陽子親和性を高める。これは普遍的傾向で、電子と陽子は熱力学的に連動しています。

                          BDFE — PCET反応の本当の駆動力

                          PCET反応の駆動力は、ETの駆動力やPTの駆動力ではなく、両者を結合した量で表現される。それが BDFE(Bond Dissociation Free Energy、結合解離自由エネルギー) です。

                          BDFE(X-H) = 1.37 × pKa(XH) + 23.06 × E°(X•/X) + C

                          BDFEは 酸塩基性(pKa)と酸化還元能(E°)の両方の情報を含む量。PCET反応の駆動力は ΔGPCET = BDFE(ドナー) − BDFE(アクセプター) で表されます。

                          高エネルギー中間体の回避

                          PCETが起こる最も重要な動機は、高エネルギー中間体を避けること。チロシンの酸化を例にとると:

                          • 逐次的(ET先行): 中間体 Tyr-OH•+ は E° ≈ 1.46 V vs NHE という極めて強い酸化剤。生体内では到達不能
                          • 逐次的(PT先行): 中間体 Tyr-O は pKa ≈ 10 が必要。生理的pH(7)では非常に不利
                          • 協奏的PCET(同時): 両方の高エネルギー中間体を飛び越えて、低い障壁で進める

                          ミトコンドリアでの具体例

                          複合体IVのプロトンポンピング:cyt c → CuA → heme a → heme a3/CuB を電子が移動するとき、単に電子が「電位を下る」だけではプロトンは汲み上がらない。実際に起こっているのは:

                          1. ヘムa3/CuBが酸化状態を変えると、近傍のグルタミン酸残基(Glu242)のpKaが変化
                          2. Glu242がマトリックス側からプロトンを取り込む(pKa上昇による吸引)
                          3. 続く酸化還元状態の変化で Glu242 の pKa が下がり、今度は膜間腔側にプロトンを放出

                          つまり「電子の流れが、特定の残基の pKa を周期的に変化させ、それが陽子をマトリックス→膜間腔へ汲み上げる」。電子は発エネ的に酸素まで流れ、その過程で蓄えられたエネルギーが、pKa変化として現れ、陽子の移動を駆動します。

                           

                          11. PCET と「Hを奪う酸化反応」の関係

                          では PCET は、Hが奪われる酸化反応そのものなのでしょうか? 化学結合の変化だから別物? それとも化学結合の変化すら PCET で説明できる? 疑問が膨らみます。

                          PCETと「Hを奪う酸化反応」

                          「Hを奪う酸化反応」のほとんどはPCETの一種(HAT、CPET、ヒドリド移動を含む)として記述できます。生化学で「脱水素酵素」が触媒する反応は、ほぼすべてPCETの一形態と言えそうです。

                          ただし「酸化」のうち電子のみ動くもの(Fe2+ → Fe3+ + e など)はPCETではありません。PCET ⊂ 酸化反応 の関係です。

                           

                          化学結合の変化はPCETで説明できるか

                          X-H結合の切断は、驚くほど PCET で説明できる。

                          X-H結合の解離 X-H → X• + H• は、見かけ上「共有結合の切断」だが、「H原子(電子1個+陽子1個)の移動」と等価。つまりこれはまさに HAT であり、PCET の一例。

                          BDFE が表しているのは、まさに「X-H共有結合のエネルギー = 『Xから電子を取るエネルギー』+『Xから陽子を取るエネルギー』+ 定数」という関係。化学結合の強さは、酸化還元電位とpKaという「電子と陽子の熱力学」だけで決まる

                          実例として、大豆リポキシゲナーゼという酵素は脂肪酸のC-H結合(BDFE ≈ 80 kcal/mol)を切断するが、Hammes-Schiffer らはこの酵素の触媒速度を、陽子のトンネリングを含む拡張マーカス理論で実験値とほぼ一致して計算。「強い共有結合の切断」という古典的化学反応の典型例が、PCET理論で量子論的に記述できる。

                          PCET で扱えない化学結合変化

                          ただし制限もあります。PCETで扱える化学結合変化は、X-H結合の切断・形成に限られます。

                          反応タイプ 適用される理論
                          C-C結合の切断/形成 クライゼン縮合、アルドール反応 古典的有機反応理論
                          C-O結合の組み換え エステル化、加水分解 求核置換/脱離
                          ペリ環状反応 Diels-Alder Woodward-Hoffmann則
                          O原子移動 一部の酵素反応 OAT理論

                          化学結合とは何か — 哲学的視点

                          X-H共有結合とは、結局「電子2個がX-H間に局在している状態」。それを切るとは、その電子のうち1個(HATの場合)または2個(ヒドリド移動の場合)を動かすこと、そして同時に陽子(H+)も動かすこと。

                          結合の切断と、電子・陽子の移動は、見方の違いにすぎない。

                          • 古典的化学:「結合の切断」が出発点
                          • 量子化学的視点:「電子と陽子の移動」が出発点、結合切断はその帰結

                          PCET理論は、後者の言葉で前者の現象を扱う橋渡しとして機能。

                          12. 高校化学の「酸化の定義」は PCET 理論を踏まえたものだったのか?

                          数十年前、高校時代に習った酸化の定義「電子が奪われること、もしくは水素が奪われること」は、PCET理論などを踏まえたものだったのでしょうか?

                          PCETという概念は1990年代後半まで存在しませんでした。高校化学の定義は、PCET理論を踏まえたものでは全くないということです。

                          しかし面白いことに、この古典的定義は結果的にPCET現象を正しく捉えていたといえます。

                          酸化の定義の歴史

                          年代 出来事
                          1770年代 Lavoisier、酸化を「酸素との結合」と定義
                          1880年代 有機化学の発展で「水素を失う = 酸化」も認識
                          1916 Lewis、電子対結合論
                          1920年代 「酸化 = 電子を失う」が定義として確立
                          高校化学教育 3つの定義が並列で教えられる(古典的完成形)
                          1990年代後半 Cukier & Nocera が PCET という概念を提唱
                          2000年代 Hammes-Schiffer の量子論的PCET理論

                          古典化学の達成

                          19世紀から20世紀初頭の化学者たちは、経験的に以下のことに気づいていました:

                          1. 「酸素と結合する」反応では、実は元の物質から電子が奪われている
                          2. 「水素を失う」反応でも、実は元の物質から電子が奪われている
                          3. 「電子を失う」反応は最も一般的な記述

                          つまり「水素を失う = 電子を失う」が経験的に成り立つ、ということが分かっていました。エタノールの酸化 CH3CH2OH → CH3CHO + 2H+ + 2e という式は、「水素2個」が「2H+ + 2e」として書き換えられることを示している。水素原子(H)= 陽子(H+)+ 電子(e) という分解は、1920年代の電子論で確立された関係。

                          古典化学が見ていなかったこと

                          高校化学では、酸化の定義は3つ並列だが、以下のことは扱われていない:

                          • 反応機構の物理的詳細: 水素原子が外れるとき、電子と陽子は同時に動くのか、別々に動くのか?
                          • エネルギー論: BDFEと pKa と E° の関係は?
                          • 量子論的扱い: 陽子もトンネリングするのか?

                          これらは1990年代以降、特に2000年代のPCET理論で初めて体系化されたことです。古典化学は 「結果」を正しく記述していたが、「機構」は記述していなかった のです。

                          しかし、「水素を失う = 酸化」と「電子を失う = 酸化」を並列に教えるという古典的な教育は、結果的にPCETの本質を捉えています。

                          • 「水素」が動くこと(HAT: H原子 = e + H+の同時移動)
                          • 「電子だけ」が動くこと(純粋ET)

                          古典的化学はこの両方を「酸化」というカテゴリに入れていました。これはまさに、現代のPCET理論が両方を統一的に扱っているのと同じ構造です。古典的化学教育は、知らずしてPCETの本質を反映していたというのは、振り返ってみれば驚くべき事実である。

                          科学史の興味深いパターン

                          これは多くの分野で起こることです。古典的な定義や法則は、機構の理解が追いつく前に現象を正しく記述することがあります。

                          • メンデルの遺伝法則 → DNA構造の発見前に正しく記述
                          • ボイル・シャルルの法則 → 分子運動論の前に正しく記述
                          • 酸化の古典的定義 → PCET理論の前に正しく記述

                          経験的に正しい記述は、機構の理解より先んじることがある — これは科学の歴史の興味深いパターンです。

                          おわりに

                          酸化には複数の見方があります。酸素と結合する、水素を失う、電子を失う。実は、これらは異なる定義ではなく、同じ現象の異なる現れ方です。なぜなら『水素』は結局『陽子(H+)と電子(e)が一緒になったもの』だからです。生体内の酸化反応では、たいてい『水素として、陽子と電子が一緒に』動きます。これがNADHやFADH2が運んでいる『水素』の正体です。そして電子伝達系では、ある時は『水素と一緒に』運ばれ(NADH、FADH2、QH2)、ある時は『電子だけ』で運ばれます(鉄硫黄クラスター、ヘム、シトクロム c)。

                          主な参考文献:

                          • Nicholls & Ferguson, Bioenergetics 4th ed.(Academic Press, 2013)
                          • Reece & Nocera, “Proton-Coupled Electron Transfer in Biology”, Annu. Rev. Biochem. 2009, 78, 673
                          • Mayer, “Proton-Coupled Electron Transfer: A Reaction Chemist’s View”, Annu. Rev. Phys. Chem. 2004, 55, 363
                          • Weinberg et al., “Proton-Coupled Electron Transfer”, Chem. Rev. 2012, 112, 4016
                          • Mayer, “Hydrogen Atom Transfer and the Marcus Cross Relation”, Acc. Chem. Res. 2011, 44, 36
                          • Hammes-Schiffer, “Theoretical Perspectives on Proton-Coupled Electron Transfer Reactions”, Acc. Chem. Res. 2001, 34, 273
                          • マーカス自身のノーベル賞受賞講演(1992): https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/marcus-lecture.pdf

                          (執筆:Claude Opus 4.7)

                           

                          生化学の反応「グルコースの酸化」で取り出されるエネルギーの量における酸素分子の寄与について

                          疑問:生化学の教科書で、グルコースが完全酸化されるときのエネルギーの差が議論されるときに、酸素分子が水になるときのエネルギー差があまり議論されない(教科書で明示的に書かれていない)のが不思議なんだけどなぜ?それを指摘した論文があったけど、その論文のインパクトがあまりないように見えるのはなぜ?

                           


                          Gemini:グルコースの完全酸化におけるエネルギー変化の議論で、**「酸素分子($O_2$)が真のエネルギー源である」**という視点が教科書で軽視されているというご指摘、非常に鋭いです。

                          おっしゃっている「割と最近の論文」とは、おそらく2015年にKlaus Schmidt-RohrPNAS(米国科学アカデミー紀要)に発表した “Oxygen Is the High-Energy Molecule Powering Complex Multicellular Life: Fundamental Thermodynamics and Metabolic Implications” のことではないでしょうか。

                          この論文が指摘した点と、なぜそれが主流(教科書レベル)の議論にならないのか、その背景を整理します。


                          1. 熱力学的な事実:なぜ酸素が「高エネルギー」なのか

                          一般的な生物学の教科書では「グルコースの $C-H$ 結合や $C-C$ 結合に蓄えられたエネルギーが放出される」と説明されます。しかし、結合エネルギーを詳細に検討すると、実際には逆の側面が見えてきます。

                          結合エネルギーの比較

                          燃焼反応: $C_6H_{12}O_6 + 6O_2 \rightarrow 6CO_2 + 6H_{2}O$

                          この反応で放出されるエネルギー(エンタルピー変化 $\Delta H$)は、**「反応物の結合を引っこ抜くのに必要なエネルギー」「生成物の結合が形成されるときに放出されるエネルギー」**の差です。

                          • 反応物: $O=O$ 二重結合は、実はそれほど強くありません(約 $498 \text{ kJ/mol}$)。また、グルコースの $C-C, C-H, C-O$ 結合も比較的安定しています。

                          • 生成物: $CO_2$$C=O$ 結合(約 $800 \text{ kJ/mol}$)や $H_2O$$O-H$ 結合(約 $463 \text{ kJ/mol}$)は非常に強固で安定しています。

                          Schmidt-Rohrの主張

                          Schmidt-Rohrは、有機物の燃焼熱が**「消費された $O_2$ 1モルあたり約 $450 \text{ kJ}$でほぼ一定(ドローンの法則に近い)であることを示しました。これは、エネルギーの大部分が「弱い $O=O$ 結合が壊れ、非常に強い $C=O$$O-H$ 結合に置き換わること」に由来していることを意味します。つまり、「グルコースがエネルギーを持っている」のではなく「酸素が未反応の不安定な状態で存在していること」がエネルギーの源泉**だというわけです。


                          2. なぜ教科書では議論(明示)されないのか

                          これには、生物学特有の「視点」と歴史的経緯が関係しています。

                          • 「燃料(Fuel)」としてのバイアス: 生化学は、生体内で変化する「炭素骨格」を追跡する学問として発展しました。酸素は周囲にどこにでもあり(オープンシステム)、代謝経路で変化するのは炭素化合物の方であるため、便宜上「グルコースがエネルギー源」と呼ぶ方が管理しやすかったのです。

                          • 還元剤への注目: 代謝の核心は「電子の移動(酸化還元)」です。グルコースは電子を供与する「還元剤」であり、その電子が電子伝達系を経て最終的に酸素に渡ります。このプロセスの複雑さに焦点が当たるため、最終的な熱力学的収支の「どの結合が寄与したか」という物理化学的な議論は、生物学の文脈では「所与の前提」として省略されがちです。


                          3. なぜその論文のインパクトが(今のところ)限定的なのか

                          Schmidt-Rohrの論文は、物理化学的には極めて正確で、熱力学の再定義を迫るものでしたが、いくつかの理由で「パラダイムシフト」にまでは至っていません。

                          1. 「計算結果」は変わらない

                          この指摘は「エネルギーの所在(ラベル)の貼り替え」であり、反応全体の $\Delta G$$\Delta H$ の値自体を変えるものではありません。代謝マップや ATP 合成の計算において、酸素を主役に見てもグルコースを主役に見ても、導き出される数値結果は同じです。

                          2. 生物学的リアリティとの乖離

                          生物にとっての生存戦略は「いかに希少な有機物(炭素源)を確保し、効率よく分解するか」にあります。酸素は(好気的環境下では)受動的に取り込まれるものであり、進化の淘汰圧は「グルコースのハンドリング」にかかってきました。そのため、生物学者の関心は依然として「エネルギーの入れ物」である炭素化合物に向いてしまいます。

                          3. 教育的コスト

                          「酸素が高エネルギー分子である」と教え始めると、従来の「高エネルギーリン酸結合(ATP)」の説明と衝突し、学生を混乱させる可能性があります。ATPもまた、実際には「加水分解による生成物($P_i$$ADP$)の安定化」が駆動力を生んでいるのですが、直感的には「リン酸の紐を切り離すとエネルギーが出る」と教える方が(不正確であっても)理解が早いため、定着しています。


                          結論

                          ご指摘の通り、**「酸素こそが真の火薬である」**という視点は、熱力学的に極めて妥当です。

                          この議論が爆発的なインパクトを持たないのは、それが**「新しい事実の発見」ではなく「解釈の矯正」**だからだと言えます。しかし、アストロバイオロジー(宇宙生物学)などで「なぜ酸素呼吸が複雑な生命の進化に不可欠だったのか」を議論する際には、この「酸素=高エネルギー分子」という視点は非常に強力な説得力を持って語られ始めています。

                          教科書の記述が変わるには、まだ少し時間がかかるかもしれませんが、科学的にはあなたの「不思議」という感覚の方が、物理の本質を突いていると言えるでしょう。


                          Claude Opus 4.6:

                          これは生化学教育における「盲点」に関わる問題で、いくつかの層に分けて考えられます。

                          なぜ「酸素側のエネルギー」が議論されないのか

                          1. 歴史的・教育的な慣習

                          生化学の教科書は伝統的に基質(グルコース)の酸化を物語の主軸に据えています。

                          C₆H₁₂O₆ + 6O₂ → 6CO₂ + 6H₂O(ΔG°’ ≈ −2870 kJ/mol)

                          この全体の自由エネルギー変化を「グルコース由来」として語る慣習がありますが、実際にはこのエネルギーの大部分は電子が最終的にO₂に渡されるとき(複合体IVでの反応)に放出されます。つまりエネルギーの「出どころ」は、グルコースのC–H結合が弱いからではなく、O₂の電子親和力が非常に高い(酸素の酸化還元電位が高い)からこそ、電子が「坂を転がり落ちる」わけです。

                          2. 半反応として見ると明白なのに

                          酸化還元反応は本来2つの半反応に分解できます。

                          • 酸化側: グルコース → CO₂ + H⁺ + e⁻
                          • 還元側: O₂ + H⁺ + e⁻ → H₂O(E°’ = +0.816 V)

                          全体のΔG°’のうち、酸素側の還元半反応の寄与が非常に大きい。にもかかわらず、教科書ではこの分解をほとんどしません。「グルコースが高エネルギー分子だ」という表現で済ませてしまう。

                          3. なぜ無視されてきたか

                          根本的には教育上の単純化です。

                          • 「燃料(食物)にエネルギーがある」という直感的ストーリーが教えやすい
                          • 酸素を「ただの電子受容体」として背景に追いやるほうが、解糖→TCA回路→電子伝達系という代謝経路の流れを語りやすい
                          • 酸化還元電位の半反応分解は物理化学的で、医療系学生には「余計な複雑さ」とみなされてきた

                          Schmidt-Rohr の論文

                          Schmidt-Rohrは2つの重要な論文を出しています。

                          1. “Why Combustions Are Always Exothermic, Yielding About 418 kJ per Mole of O₂” (J. Chem. Educ., 2015)

                          O₂の二重結合は他の二重結合や単結合のペアに比べて著しく弱く、CO₂やH₂Oのより強い結合が形成されることでエネルギーが放出される、という分析です。燃料中の結合エネルギーは副次的な役割しか果たしておらず、例えばCH₄の総結合エネルギーはCO₂のそれとほぼ等しい。つまり、燃料が「エネルギー豊富」なのではなく、O₂が「エネルギー豊富」な分子であるという主張です。

                          2. “Oxygen Is the High-Energy Molecule Powering Complex Multicellular Life: Fundamental Corrections to Traditional Bioenergetics” (ACS Omega, 2020)

                          こちらがより直接的に生化学の教科書を批判した論文です。生体の電子伝達系とサイクルの全体的なエネルギー論の根本的な再評価を行い、関与する分子の中で最もエネルギーの高い分子であるO₂の決定的な役割を強調しています。ほとんどの複雑な多細胞生物が利用する化学エネルギーは主にグルコースや脂肪に蓄えられているのではなく、比較的弱い二重結合を持つO₂に蓄えられていると述べ、「還元された分子」(アルカンや脂肪酸など)がエネルギー豊富であるという概念は誤りで、それらは単に同じ質量の含酸素分子と比べてより多くのO₂のエネルギーを「解放」するだけであると論じています。

                          なぜインパクトが限定的なのか

                          この論文の主張は熱力学的に正しいにもかかわらず、インパクトが限定的な理由はいくつかあります。

                          1. 「正しいが、実用上変わらない」問題

                          生化学者や医学教育者にとって、「エネルギーの本質的出どころがO₂である」という知見は、代謝経路の理解や臨床応用には直接影響しません。解糖系の酵素制御もTCA回路の調節も、電子伝達系の阻害剤の作用機序も、すべて「グルコース中心」の記述で実用的に正しく説明できます。教科書を書き直す動機が弱い。

                          2. 分野の壁

                          Schmidt-Rohrは物理化学者(NMR分光学が専門)であり、この論文は化学教育誌(J. Chem. Educ.)やACS Omegaに掲載されています。生化学の主要な教科書著者(Voet、Stryer、Lehningerの後継者たち)のコミュニティとは交差しにくい。化学教育の論文が生化学教科書の改訂に影響を与えるには、かなりの時間がかかります。

                          3. 概念的な抵抗

                          「食べ物にエネルギーがある」「カロリーは食物のエネルギー」という表現は、栄養学・医学・日常語として深く根付いています。「実はO₂こそがエネルギー豊富」と言い換えると、正しいにもかかわらず、一般の直感に反する。教育的にはかえって混乱を招くリスクがあると多くの教育者が感じるでしょう。

                          4. 「間違い」の種類が微妙

                          教科書の記述は厳密には「間違い」ではなく「不完全」なのです。ΔG°’ = −2870 kJ/molはグルコースの完全酸化の正しい値であり、その数字自体は変わりません。問われているのは「そのエネルギーをどちらの反応物に帰属させるか」という概念的フレーミングの問題であって、計算結果ではない。だから教科書著者は「間違ってはいない」と言える。

                          教育的に面白い点

                          「物体が落ちる」ときに位置エネルギーの変化というアナロジーとの接続で言えば:

                          • グルコースのC–H結合の電子は「高いところにいる物体」
                          • O₂は「非常に深い谷」(O–H結合やC=O結合という安定な状態への遷移先)
                          • エネルギーが出るのは「物体が高いところにある」からだけでなく、「谷が深い」からでもある
                          • Schmidt-Rohrの主張は、谷の深さ(O₂→H₂O/CO₂)の方が物体の高さ(C–H結合エネルギー)よりもはるかに重要だということ

                          ただし、医療系学生向けにはこの区別を持ち出すかどうかは慎重に判断されるところかと思います。「酸素がなければエネルギーは出ない」「だから呼吸が大事」という臨床的メッセージとしてはシンプルに伝わりますが、結合エネルギーの帰属の話にまで踏み込むかは、学生の関心と理解度次第ですね。

                           


                          ChatGPT:

                          その違和感、かなり本質的だよ。結論からいうと、O₂がH₂Oになるときのエネルギー差は、教科書で「無視」されているのではなく、たいていは独立の ΔG / ΔH としてではなく、NADH や FADH₂ から O₂ への redox potential(E°′) と、それに対応する ΔG°′ の中に吸収された形で扱われているんだ。実際、標準的な教科書は「食物由来の高エネルギー電子が最終的に O₂ を H₂O に還元し、その過程で主要なエネルギーが取り出される」と説明していて、Cooper の教科書では NADH→O₂ の移動が ΔG°′ = −52.5 kcal/mol とされ、複合体IVで O₂ に渡る最後の部分だけでも −25.8 kcal/mol と書かれている。つまり、O₂→H₂O の寄与は議論されているが、「半反応の独立した熱化学表」としてではなく、電子伝達系の駆動力として語られるわけ。 (NCBI)

                          なぜそうなるかというと、生化学では O₂/H₂O 半反応は proton-coupled で pH 依存だからだよ。だから無機化学的な「標準電極電位 E°」より、pH 7 での標準見かけ還元電位 E°′ を使うのが自然になる。実際、後年の総説でも「生理条件では pH 7 に近いので、生化学者は standard apparent redox potential を用いる」と整理されているし、O₂/H₂O カップルは pH 7 で 約 +0.815 V、NAD⁺/NADH は 約 −0.320 V なので、その差は 約 1.14 V、これは 2 電子あたり 約 219 kJ/mol の自由エネルギー差に相当する。つまり、あなたが気にしている“酸素が水になるエネルギー”は、教科書では ΔH/ΔG の単独値ではなく、ΔE°′→ΔG°′ で表現されるのが標準流儀なんだ。 (PMC)

                          さらに教科書が O₂ の寄与を前面に出しにくいのは、叙述の中心が「何が酸化されるか」ではなく「どのキャリアがエネルギーを運ぶか」に置かれているからでもある。標準的な説明では、グルコースはまず分解され、NADH/FADH₂ という還元当量に“いったん格納”され、そのあと電子伝達系で O₂ に渡される。Alberts 系の教科書でも、「完全酸化で得られる ATP の大部分は最後の段階で取り出される」としたうえで、クエン酸回路自体は直接 O₂ を使わず、O₂ は NADH を再酸化して系を回し続けるための最終電子受容体として位置づけられている。しかも同じ教科書は、クエン酸回路で CO₂ に入る酸素原子は O₂ ではなく水に由来するとも説明している。だから教科書の語り方では、O₂ は「炭素酸化の相手」ではあるけれど、原子の行き先としてよりも“電子の落とし先”として描かれやすいんだ。 (NCBI)

                          あなたが言っている「それを指摘した割と最近の論文」は、たぶん Klaus Schmidt-Rohr, 2020, ACS Omega“Oxygen Is the High-Energy Molecule Powering Complex Multicellular Life” だと思う。この論文は、エネルギーは glucose や fat に主として蓄えられているのではなく、相対的に弱い O=O 結合をもつ O₂ 側にも大きく依存する、という言い方を前面に出した。後続の総説でも、Bettendorff は 2022 年に「生細胞内の combustion reaction に化学エネルギーを与える O₂ の性質」に焦点を当て、2026 年の別総説では dioxygen を NTP や thioester と並ぶ “energy-rich” 分子の一つとして挙げている。だから、この着想自体が完全に無視されたわけではない。 (ResearchGate)

                          ただし、インパクトが「パラダイム転換」級にならなかった理由はかなりはっきりしている。第一に、定量的中身の多くが既存教科書にすでに入っていたから。主流の教科書は昔から、エネルギーの大部分が NADH/FADH₂ から O₂ への電子移動で放出される、と書いているので、専門家から見ると Schmidt-Rohr 論文は「新しい計算」よりも“見出しの付け替え”や“強い再フレーミング”に近く見えやすい。第二に、“O₂ は high-energy molecule” という言い方が、生化学の既存用語法とぶつかる。2026 年の総説でも、この “energy-rich” という言葉は誤解を招きやすいので、group transfer potential のような表現に置き換える提案があると明記されているし、科学教育の論文でも、この記述は教科書では一般的ではないと指摘されている。つまり、内容の一部は正しくても、ラベルが生化学コミュニティの語彙と噛み合いにくかったんだ。 (NCBI)

                          第三に、この論文は実験系の予測や機構を大きく変えるわけではなかった。電子伝達系の複合体配置、complex IV が O₂ を H₂O に還元すること、プロトン駆動力で ATP が作られること、1 glucose あたりのおおまかな ATP 収支などは従来理解と同じままだ。だから影響は、研究現場の“操作的概念”を変えるというより、教育・概念整理の議論にとどまりやすかったと見るのが自然だと思う。なお、「インパクトが全然ない」わけでもなく、ACS Omega 側ではこの論文を 2020年の highly accessed article の一つとして挙げており、PubMed/ACS のメタデータ上でも 被引用はおおむね 100 件規模ある。つまり、読まれてはいるが、教科書全体を書き換えるほどの破壊力はなかった、という位置づけがいちばん近い。 (PMC)

                          なので、あなたの疑問に一言で答えるなら、こうなる。O₂→H₂O のエネルギーは本当は非常に重要で、主流教科書もそれを知っている。けれど、生化学はそれを“酸素分子そのものの高エネルギー性”として語るより、“還元当量が O₂ に落ちる redox drop” として語る文化を持っている。 Schmidt-Rohr 論文はその文化に対する再ラベリング提案としては面白いけれど、既存理論を覆すほど新しい定量事実を持ち込んだわけではないので、影響が中程度にとどまった、ということ。 (ResearchGate)

                           



                          質問:グルコース酸化の全 ΔG を、炭素側の酸化半反応と O₂ 側の還元半反応に分けて、式と数値で書くとどうなる?


                          Claude Opus 4.6:グルコースの完全酸化を半反応に分解して、エネルギーの帰属を定量的に見てみましょう。

                          全体反応

                          C₆H₁₂O₆ + 6O₂ → 6CO₂ + 6H₂O

                          ΔG°’ = −2870 kJ/mol(これが教科書に載る数字)

                          半反応に分解する

                          酸化半反応(炭素側)

                          C₆H₁₂O₆ + 6H₂O → 6CO₂ + 24H⁺ + 24e⁻

                          この半反応の標準還元電位は E°’ ≈ −0.43 V(CO₂/グルコース対)です。

                          還元半反応(酸素側)

                          6O₂ + 24H⁺ + 24e⁻ → 12H₂O

                          E°’ = +0.816 V(O₂/H₂O対)

                          全体の電位差

                          ΔE°’ = E°'(cathode) − E°'(anode) = (+0.816) − (−0.43) = +1.246 V

                          ΔG°’ = −nFΔE°’ = −24 × 96485 × 1.246 ≈ −2885 kJ/mol

                          (文献値 −2870 kJ/mol とほぼ一致。差は丸め誤差)

                          では、エネルギーの「帰属」はどうなるか

                          ここが核心です。半反応のΔGを個別に見たいのですが、半反応の絶対的なΔGは直接測定できない(電子の絶対的なエネルギーが定義に依存する)という根本問題があります。

                          ただし、水素電極を基準(E°’ = 0 V)として分配することは慣習的にできます。

                          各半反応のΔG°’の寄与を、E°’を使って計算すると:

                          酸化側(グルコース → CO₂ + e⁻)の寄与:

                          ΔG°’_ox = −nF × E°’_ox = −24 × 96485 × (−(−0.43)) = −24 × 96485 × 0.43 ≈ −996 kJ/mol

                          還元側(O₂ + e⁻ → H₂O)の寄与:

                          ΔG°’_red = −nF × E°’_red = −24 × 96485 × 0.816 ≈ −1889 kJ/mol

                          合計: −996 + (−1889) = −2885 kJ/mol

                          比率

                          半反応 ΔG°’ 寄与 割合
                          炭素側(グルコース → CO₂) −996 kJ/mol 約 35%
                          酸素側(O₂ → H₂O) −1889 kJ/mol 約 65%
                          合計 −2885 kJ/mol 100%

                          何が見えるか

                          全体のエネルギーの約2/3はO₂側から来ている。Schmidt-Rohrの主張を裏付ける数字です。

                          ただし注意点があります。この分配は「水素電極基準」という恣意的なゼロ点に依存しています。半反応の絶対的なΔGは定義できないので、「65%がO₂由来」という表現は、基準点の選び方に依存する。これはSchmidt-Rohrが結合エンタルピーの分析で回避しようとした問題でもあります(結合エンタルピーは基準点に依存しない物理量なので)。

                          とはいえ、どの合理的な基準を選んでも「O₂側の寄与が支配的」という定性的結論は変わりません。グルコースの酸化半反応のE°’が 0 V 付近にあるのに対し、O₂の還元半反応のE°’が +0.816 V と大きくプラスなので、全体のΔE°’の大部分がO₂側に帰属する構造は不変です。

                          教育的な含意

                          電子伝達系の文脈でいうと、NADH(E°’ = −0.32 V)からO₂(E°’ = +0.816 V)への電子の移動で得られるΔE°’ = 1.14 V のうち、「坂の深さ」の大部分はO₂が作っている。NADH が「高い場所」にいるのは確かだけれど、O₂が「谷底を深く掘り下げている」ことの方が、エネルギー差への寄与としては大きい、ということが数字で見えます。

                           


                          Gemini:グルコースの完全酸化におけるエネルギー変化($\Delta G$)を、炭素側(還元剤)と酸素側(酸化剤)の寄与に分けて数値化します。

                          生化学において、この「エネルギーの分割」を最も明確に示す方法は、標準酸化還元電位($E^{\circ’}$ を用いた計算です。

                          1. 全反応と標準ギブスエネルギー変化

                          まず、ベースとなる全体の式を確認します。

                          $$C_6H_{12}O_6 + 6O_2 \rightarrow 6CO_2 + 6H_2O$$
                          $$\Delta G^{\circ’} \approx -2870 \text{ kJ/mol}$$

                          この反応では、合計 24個の電子 ($e^-$) がグルコースから酸素へと移動しています。


                          2. 半反応への分割と電位 ($E^{\circ’}$)

                          pH 7 における標準酸化還元電位 $E^{\circ’}$ を用いて、電子の「坂道」を二分割します。基準として、生化学的な標準水素電極(pH 7での $H^+/H_2$、約 $-0.414 \text{ V}$)ではなく、計算の便宜上 $0 \text{ V}$ 付近の基準 または $E^{\circ’}$ の差 で考えます。

                          ① 炭素側の酸化(ドナー側)

                          グルコースが二酸化炭素に分解され、電子を放出するプロセスです。

                          $$C_6H_{12}O_6 + 6H_2O \rightarrow 6CO_2 + 24H^+ + 24e^-$$
                          • 標準還元電位 ($E^{\circ’}_1$):$-0.42 \text{ V}$

                          ② 酸素側の還元(アクセプター側)

                          酸素が電子を受け取り、水になるプロセスです。

                          $$6O_2 + 24H^+ + 24e^- \rightarrow 12H_2O$$
                          • 標準還元電位 ($E^{\circ’}_2$): $+0.82 \text{ V}$


                          3. エネルギー寄与の数値計算

                          全体の電位差($\Delta E^{\circ’}$)は次のようになります。

                          $$\Delta E^{\circ’} = E^{\circ’}_2 – E^{\circ’}_1 = 0.82 \text{ V} – (-0.42 \text{ V}) = 1.24 \text{ V}$$

                          ギブスエネルギー変化の式 $\Delta G = -nF\Delta E$ に当てはめると、各パートの「エネルギーの落差」への寄与が見えてきます($F = 96.5 \text{ kJ/V}\cdot\text{mol}$)。

                          パート 電位の幅 ΔG への寄与(計算式) 数値(近似) 割合
                          炭素側 (Glucose $\rightarrow$ 基点) $0.42 \text{ V}$ $24 \times 96.5 \times 0.42$ $-973 \text{ kJ/mol}$ 約 34%
                          酸素側 (基点 $\rightarrow$ Oxygen) $0.82 \text{ V}$ $24 \times 96.5 \times 0.82$ $-1897 \text{ kJ/mol}$ 約 66%
                          合計 $1.24 \text{ V}$ $-2870 \text{ kJ/mol}$ 100%

                          ※ここでの「基点」は、生物学的に電子がやり取りされる平均的な電位領域をイメージしています。


                          4. 結論:なぜ「酸素が主役」と言えるのか

                          数値から明らかな通り、全エネルギーの約 3分の2(約 66%)は、酸素が電子を引き受ける際の強力な「引力(高い還元電位)」によって生み出されています。

                          • 炭素側の貢献: グルコースが $CO_2$ になることによるエネルギー放出は全体の 3割程度に過ぎません。

                          • 酸素側の貢献: 残りの 7割弱は、酸素分子が安定な「水」へと落ち込む際のエネルギーです。

                          Schmidt-Rohr などの論文が指摘しているのは、まさにこの点です。教科書が「グルコースは高エネルギーだ」と教える時、実際にはこの「酸素側にある巨大なエネルギーの崖」を無視して、燃料(炭素)の変化ばかりを追っていることになります。

                          物理化学的に見れば、「グルコースは単なる電子の運び屋であり、真のエネルギーの源泉(巨大な電位差を生むトラップ)は酸素である」という解釈の方が、数値的実態に即していると言えます。


                          ChatGPT:最初に 大事な注意 が1つある。

                          全反応の ΔG は一意に決まるけれど、
                          半反応ごとの ΔG を個別に割り当てるには、電子の基準電位(ふつうは標準水素電極, SHE = 0 V)を暗黙に選ぶ必要がある。
                          だから、半反応ごとの数値は「便利な分け方」ではあるけど、全反応の ΔG ほど絶対的ではない。ここが、教科書があまりその分け方を前面に出さない理由の一つでもある。(NCBI)

                          まず、生化学でよく使う 標準見かけ自由エネルギー変化 ΔG°′(pH 7) では、グルコースの完全酸化は

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6,O_2 \rightarrow 6,CO_2 + 6,H_2O}
                          ]

                          で、ΔG°′ = −686 kcal/mol とされる。これは −2870.224 kJ/mol に相当する。(NCBI)

                          これを半反応に分けると、炭素側は

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6,H_2O \rightarrow 6,CO_2 + 24,H^+ + 24,e^-}
                          ]

                          酸素側は

                          [
                          \mathrm{6,O_2 + 24,H^+ + 24,e^- \rightarrow 12,H_2O}
                          ]

                          になる。両式を足して (24H^+) と (24e^-) を打ち消すと、ちゃんと

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6,O_2 \rightarrow 6,CO_2 + 6,H_2O}
                          ]

                          に戻る。ここで重要なのは、1分子のグルコースあたり 24 電子が移動することだね。(NCBI)

                          次に、酸素側の半反応を数値化する。
                          生化学的標準状態での O(_2)/H(_2)O カップルの (E°′)+0.815 V。したがって

                          [
                          \Delta G°′ = -n F E°′
                          ]

                          より、酸素側 24 電子分の寄与は

                          [
                          \Delta G°′_{\mathrm{O_2,reduction}}
                          = -(24)(96.485)(0.815)
                          = -1887.25\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          となる。kcal に直すと −451.1 kcal/mol くらい。(PMC)

                          全反応の ΔG°′ はすでに −2870.224 kJ/mol だから、炭素側の酸化半反応は、同じ基準電位系で書けば

                          [
                          \Delta G°′_{\mathrm{carbon,oxidation}}
                          = -2870.224 – (-1887.247)
                          = -982.98\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          となる。kcal では −234.9 kcal/mol くらい。
                          つまり、SHE を基準にしたこの分け方では、全自由エネルギー低下の約 3 分の 2 が O(_2) 側、約 3 分の 1 が炭素側として見える。

                          同じことを電位で書くともっと見通しがいい。
                          全反応 24 電子分の電位差は

                          [
                          E°′_{\mathrm{cell}}
                          = -\frac{\Delta G°′}{nF}
                          = \frac{2870.224}{(24)(96.485)}
                          = 1.2395\ \mathrm{V}
                          ]

                          になる。したがって、炭素側の形式的な還元電位

                          [
                          \mathrm{6,CO_2 + 24,H^+ + 24,e^- \rightarrow C_6H_{12}O_6 + 6,H_2O}
                          ]

                          [
                          E°′_{\mathrm{CO_2/glucose}}
                          = 0.815 – 1.2395
                          = -0.4245\ \mathrm{V}
                          ]

                          となる。還元方向では正味に不利、逆向きの「グルコース酸化」としては有利、ということだね。(PMC)

                          要するに、数式としてはこう分けられる。

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6H_2O \rightarrow 6CO_2 + 24H^+ + 24e^-}
                          \qquad
                          \Delta G°′ \approx -983\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          [
                          \mathrm{6O_2 + 24H^+ + 24e^- \rightarrow 12H_2O}
                          \qquad
                          \Delta G°′ \approx -1887\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6O_2 \rightarrow 6CO_2 + 6H_2O}
                          \qquad
                          \Delta G°′ \approx -2870\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          という感じ。

                          そしていちばん大事なのはここで、
                          「O₂ 側が −1887 kJ/mol もあるじゃないか」と言うこと自体は、SHE を 0 V と置いた“半電池的な見方”に依存している、という点。
                          物理的に不変なのは、炭素側と酸素側の“差”としての 1.2395 V、あるいは全体の −2870 kJ/mol なんだ。だから教科書はふつう、半反応ごとの ΔG を前面に出すより、電子供与体と電子受容体の電位差、あるいは 全酸化の ΔG を書く。そこを無視しているわけではないけど、書き方の流儀が違うわけ。(NCBI)

                           

                          質問:「グルコースの酸化反応は、電子が位置エネルギーの高いところから低いところに転げ落ちるときにエネルギーが取り出される反応」という理解でいいのね?「電流で、電荷が電位の高いところから低いところに流れるときに仕事する」のと同じこと。あるいは、「物体が高い位置から低い位置に落ちるときに力学的な仕事ができる(運動エネルギーに変わるので)」ともアナロジーとして同じってことね。

                           

                          Claude Opus 4.6:はい、3つとも本質的に同じ構造を持っています。

                          「ポテンシャルの高いところから低いところへ何かが移動するとき、その差分のエネルギーが仕事として取り出せる」

                          という統一的な原理です。

                          移動するもの ポテンシャル エネルギー(仕事)
                          力学 物体(質量 m) 重力ポテンシャル(高さ h) mgh
                          電気回路 電荷(q) 電位(V) qV(= IR × q)
                          酸化還元 電子(n mol) 酸化還元電位(E) nFΔE

                          電気回路の仕事のところは、回路全体で落ちる電位差が V のとき、電荷 q が流れると仕事は qV です。オームの法則で V = IR なので、電力は IV(= I²R)になります。IR 自体は電圧(電位差)の次元ですね。

                          酸化還元の場合、ΔG = −nFΔE なので、まさに「電子 n mol が電位差 ΔE を落ちるときに解放されるエネルギー」という形になっていて、電気回路の qV と完全に対応しています。

                          この統一像で見ると、さっきの話がさらにクリアになります。グルコースの酸化で電子が「落ちる高さ」ΔE°’ = 1.246 V のうち、電子の「出発点が高い」(グルコース側、E°’ = −0.43 V)ことも寄与しているけれど、「到着点が深い」(O₂側、E°’ = +0.816 V)ことの方が大きい。物体の落下で言えば、テーブルの上(出発点)からではなく、地下室の床(到着点)までの深さの方が、落差の大部分を決めている、という感じですね。

                           

                          質問:物体で考えると、「運動エネルギー」に変換されていて、それが物を動かすことができる(水車を回すとか)のは理解できるけど、電子が電位勾配を流れたときになぜ仕事ができるの?やっぱり電子の運動エネルギーが生じているから?

                          Claude Opus 4.6:これは直感的に引っかかるところですよね。

                          短い答え

                          電子伝達系の場合、電子の運動エネルギーが増えるわけではないです。

                          では何が起きているのか

                          重力で物体が落ちる場合は、おっしゃる通り位置エネルギー → 運動エネルギー → 水車を回す(アナロジー)、という流れで直感的にわかりやすい。

                          電子伝達系では、電子は自由空間を加速して飛んでいるのではなく、分子から分子へと「手渡し」されているんですね。複合体I → ユビキノン → 複合体III → シトクロムc → 複合体IV、と。各ステップで電子はより電子親和力の高い分子に移る。

                          このとき起きていることは、電子が新しい分子の中でより安定な(より低エネルギーの)軌道に収まることで、そのエネルギー差が分子の構造変化として現れるということです。具体的には、複合体I、III、IVが電子の受け渡しに伴って構造変化(コンフォメーション変化)を起こし、その構造変化がH⁺を膜の反対側に押し出すポンプとして機能します。

                          つまり流れとしては:

                          電子の酸化還元エネルギー → タンパク質のコンフォメーション変化 → H⁺の輸送(プロトン勾配の形成) → ATP合成酵素の回転 → ATPの合成

                          力学との対比

                          力学のアナロジー(水車)で言うなら、水車に近いのは実はATP合成酵素の方です。プロトンが濃度勾配(+電位勾配)に沿って流れ戻るとき、ATP合成酵素のローターを文字通り物理的に回転させる。ここは本当に「流れが機械を回す」という意味で水車と同じです。

                          電子伝達系のタンパク質の方は、水車というよりも「ラチェット式のポンプ」に近いイメージです。電子が一段低いポテンシャルに移るたびに、タンパク質が「カチッ」と動いてH⁺を一方向に押し出す。エネルギーは電子の運動エネルギーではなく、化学結合の再編成を通じて機械的な動きに変換されています。

                          電気回路との違い

                          金属の導線の場合は、実は電子は電場で加速されますが、すぐに金属格子の原子に衝突して運動エネルギーを失います。これがジュール熱(I²R)です。だから導線の抵抗で「仕事」が取り出される場合、それは電子の運動エネルギーが熱に変わっているだけで、あまり「有用な仕事」ではない。モーターの場合は電場が磁場と相互作用して力を生みますが、これも電子の運動エネルギーそのものではありません。

                          生体の電子伝達系は、導線よりもはるかに巧妙で、電子のポテンシャルエネルギーの差を熱にせずに、タンパク質の構造変化という形で秩序ある仕事(プロトンポンプ)に変換しているわけです。もちろん一部は熱にもなりますが(体温の維持に貢献)、かなりの割合が有用な仕事として回収される。だからこそ効率が40%近くになるんですね。

                           

                          電子が高い酸化還元電位の分子に移ることで放出されるエネルギーが、タンパク質をエネルギー的に低いコンフォメーションから高いコンフォメーションに押し上げる。そしてその高エネルギーコンフォメーションが元に戻るときに、H⁺を膜の反対側に押し出す

                          つまりエネルギーの流れとしては:

                          電子の酸化還元エネルギー → タンパク質の高エネルギーコンフォメーション → H⁺の輸送

                          力学的なアナロジーで言えば、電子のエネルギーでバネを圧縮して(高エネルギーコンフォメーション)、そのバネが戻る力でH⁺を押し出す、という感じです。

                          ちなみにこれは酵素一般に共通する原理でもあります。基質の結合エネルギーや化学反応のエネルギーがタンパク質のコンフォメーション変化として一時的に蓄えられ、次のステップの仕事に使われる。ATP合成酵素も同じで、H⁺が結合することでサブユニットのコンフォメーションが変わり、それがADPとPiを強制的に近づけてATPを合成する。生体のエネルギー変換は、基本的にこの「コンフォメーション変化を介したエネルギーの受け渡し」という仕組みに支えられていますね。

                           

                          水車で仕事ができるのは「水が高いところにあるから」だけでなく「落ちる先(地面)が低いから」でもある。同様に、電子伝達系でエネルギーが取り出せるのは「NADHの電子が高いところにいるから」だけでなく「O₂という非常に深い谷底がある」から。Schmidt-Rohrの主張は、この「谷底の深さ」の方が重要だよ、という話でした。

                           

                           

                          質問:半反応に分けて、 ΔH(エンタルピー)での説明?

                          ChatGPT:ΔG のときよりも、ΔH の分け方はさらに「約束事」依存だよ。理由は、エンタルピーも本来は差しか測れず、半反応ごとの値を出すには基準の取り方が要るから。最近の総説でも、エンタルピーや電極電位のような量は差しか測れず、絶対値らしきものは便宜上の convention によって与えられる、と整理されている。(Research Portal)

                          まず、ふつうの化学熱力学の標準状態(298.15 K, 1 bar)で、全反応は

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6(s) + 6,O_2(g) \rightarrow 6,CO_2(g) + 6,H_2O(l)}
                          ]

                          で、NIST の値では glucose(s) の標準燃焼エンタルピーは −2805.0 ± 1.3 kJ/mol。また、標準生成エンタルピーはおおよそ
                          (\Delta_f H^\circ\big(\mathrm{glucose(s)}\big) = -1271.1) kJ/mol,
                          (\Delta_f H^\circ\big(\mathrm{CO_2(g)}\big) = -393.51) kJ/mol,
                          (\Delta_f H^\circ\big(\mathrm{H_2O(l)}\big) = -285.830) kJ/mol,
                          (\Delta_f H^\circ\big(\mathrm{O_2(g)}\big)=0)
                          なので、Hess の法則から計算しても全体は −2804.94 kJ/mol になって、NIST の燃焼熱とほぼ一致する。(NIST WebBook)

                          これを、前回と同じ形の半反応に分けると

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6,H_2O \rightarrow 6,CO_2 + 24,H^+ + 24,e^-}
                          ]

                          [
                          \mathrm{6,O_2 + 24,H^+ + 24,e^- \rightarrow 12,H_2O}
                          ]

                          になる。ここで (\Delta_f H^\circ(\mathrm{H^+,aq})=0) という通常の規約を使い、電子についても半反応表の慣習に従って基準化すると、炭素側は

                          [
                          \Delta H^\circ_{\text{carbon side}}
                          = 6\Delta_f H^\circ(\mathrm{CO_2})
                          -\Big[\Delta_f H^\circ(\mathrm{glucose})+6\Delta_f H^\circ(\mathrm{H_2O})\Big]
                          ]

                          [
                          =6(-393.51)-\Big[(-1271.1)+6(-285.830)\Big]
                          = +624.96\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          となる。つまり、この分け方では炭素側半反応は吸熱的になる。(NIST WebBook)

                          一方、酸素側は

                          [
                          \Delta H^\circ_{\text{O}_2\text{ side}}
                          = 12\Delta_f H^\circ(\mathrm{H_2O})
                          =12(-285.830)
                          = -3429.96\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          となる。これを足すと

                          [
                          (+624.96)+(-3429.96)=-2804.94\ \mathrm{kJ/mol}
                          ]

                          で、全反応の燃焼エンタルピーに戻る。(NIST WebBook)

                          だから、この規約に従った ΔH 分解では、熱の“出どころ”はむしろ圧倒的に O(_2) 側だと言ってよい。数でいうと、酸素側の (-3429.96) kJ/mol は正味の (-2805) kJ/mol よりも大きく、炭素側の (+624.96) kJ/mol がその一部を打ち消して、最終的に net で (-2805) kJ/mol になる。つまり、**「グルコースが燃えると熱が出る」という全体像の裏では、半反応的には“炭素側が少し不利で、酸素側がものすごく有利”**という見え方になる。(NIST WebBook)

                          ここがすごく大事なんだけど、この (+625) と (-3430) という割り振り自体には、ΔG のとき以上に自然な一意性がない。全反応の (-2805) kJ/mol は物理的だけど、半反応ごとの値は基準の取り方に依存する。熱力学の最近の整理でも、エンタルピーや電極電位のような量は差だけが意味を持ち、基準のゼロ点は convention だと明示されている。だから教科書は、ΔH を半反応に分けて「酸素側が何 kJ/mol」と強く語るより、全燃焼熱として扱うことが多い。(Research Portal)

                          さらに、生化学の pH 7 の標準見かけ量 に行くと、話はもっと面倒になる。Alberty は、標準 transformed enthalpy ( \Delta_f H’^\circ ) は単一化学種ではなくpseudoisomer 群の平衡モル分率で重みづけした和として計算する、と説明している。つまり、ΔG°′ のように「O(_2)/H(_2)O の (E°′) からすぐ出る」感じではなく、pH・イオン強度・プロトン化状態を織り込んだ species bookkeeping が必要になる。これも、教科書が ΔH の半反応分解を前面に出しにくい理由の一つ。

                          要するに、答えはこう。
                          ΔH でも同じように分けることはできる。しかも、その分け方では O(_2)→H(_2)O 側の寄与は非常に大きい。
                          でも、その分け方は Hess の法則と基準規約に依存していて、ΔG の redox-potential 的分解ほど自然ではない。だから教育では、ΔH は全燃焼熱、ΔG は redox drop と ATP 合成能、というふうに役割分担されやすいんだ。(Research Portal)

                           

                          質問:「なぜ炭素側半反応の ΔH が正になるのか」を結合エネルギーの直観で説明すると?

                          ChatGPT:直観的には、

                          炭素側半反応は「グルコースを CO₂ にする反応」ではあるけど、同時に「水素を H⁺ と e⁻ にまで引きはがして、まだどこにも落としていない反応」でもある
                          ――これがポイントだよ。

                          前回の炭素側半反応は

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6,H_2O \rightarrow 6,CO_2 + 24,H^+ + 24,e^-}
                          ]

                          だったよね。

                          これを見ると、左辺には グルコース がある。どちらも、すでにかなり安定な共有結合でできている。
                          一方、右辺には CO₂ があるので、ここだけ見れば確かに安定化していそう。実際、CO₂ の C=O 結合はかなり強い。
                          でも右辺には同時に、24 個の H⁺ と 24 個の e⁻ が“ばらばら”の形で出てきている。

                          ここが効いている。

                          つまりこの半反応では、グルコースや水の中に入っていた水素相当分を、

                          • O–H 結合や C–H 結合から引きはがし
                          • プロトンと電子に分離し
                          • その電子をまだ酸素にも何にも渡していない

                          というところまでしかやっていない。

                          これはイメージとしては、

                          「薪を割って、燃やしやすい状態にして、火花も散らしたけど、まだ酸素と反応させて熱を回収していない」

                          みたいなものなんだ。
                          だから、この段階だけ切り取ると、結合を壊すためのコストが前面に出て、ΔH が正になりうる

                          もう少し結合エネルギー的にいうと、炭素側半反応では大まかに二つのことが同時に起きている。

                          ひとつは、CO₂ をつくることで C=O 結合の安定化を得ること
                          これは発熱方向に働く。

                          でももうひとつは、グルコースや水の中の C–H, O–H などの結合を壊して、水素を H⁺ と e⁻ にまで解体すること
                          これは吸熱方向に働く。

                          そしてこの半反応だけで見ると、後者の「引きはがしコスト」が、前者の CO₂ 形成による安定化を上回る
                          だから正味で吸熱になる。

                          要するに、

                          CO₂ 形成はおいしい
                          けれど
                          H⁺ と e⁻ を裸で作るのが高くつく

                          ということ。

                          このことは、全反応に戻すとすごく腑に落ちる。
                          酸素側半反応は

                          [
                          \mathrm{6,O_2 + 24,H^+ + 24,e^- \rightarrow 12,H_2O}
                          ]

                          だった。

                          ここでは逆に、さっき“裸で宙ぶらりん”にした H⁺ と e⁻ を、O₂ がまとめて引き受けて にしてくれる。
                          このときに とても強く安定な O–H 結合 がたくさんできる。
                          だからここで巨大な発熱が起きる。

                          つまり全体像はこう。

                          炭素側では
                          「電子とプロトンを引き抜く準備」 をしていて、ここはコストがかかる。

                          酸素側では
                          「その電子とプロトンを最終的に水として受け止める」 ので、ここで大きく得をする。

                          その結果として、全体の燃焼では大きく発熱する。

                          別の言い方をすると、炭素側半反応は

                          “電子を高い位置に持ち上げる”

                          操作に近い。
                          酸素側半反応は

                          “その電子を低い位置に落として、その落差でエネルギーを出す”

                          操作に近い。
                          だから、炭素側だけ見れば吸熱、酸素側を合わせると強い発熱、になるわけ。

                          ここでたぶん一番大事な直観は、

                          「グルコースが CO₂ になること」そのものが熱を出している、というより、
                          グルコース由来の電子が最終的に O₂ に落ちて H₂O になるところで大きな熱が出る

                          という見方だね。

                          なので、炭素側半反応の ΔH が正なのは不思議ではなくて、
                          それは“酸化の前半だけを切り取ったから” なんだ。

                           

                          質問:NADH がいったん電子を預かることで、炭素側の吸熱っぽさが生体内でどう見えなくなるか?

                          ChatGPT:

                          そう。核心は、

                          生体内では「グルコース → CO₂ + H⁺ + e⁻」という裸の半反応は起きていない
                          ということなんだ。

                          教科書や熱力学の半反応では、炭素側を

                          [
                          \mathrm{C_6H_{12}O_6 + 6H_2O \rightarrow 6CO_2 + 24H^+ + 24e^-}
                          ]

                          のように書く。
                          でも細胞は、こんなふうに 自由電子 24 個 をいったん宙に出したりしない。そんなことをしたら危なすぎるし、そもそも化学的に扱えない。
                          細胞の中では、電子は最初から最後まで “誰かに乗った状態” で受け渡される。

                          その最初の代表が NAD⁺ だよ。

                          NAD⁺ は実際には「電子1個ずつ」を受け取るというより、たいてい ヒドリド ((\mathrm{H^-}))、つまり 2電子 + 1プロトン相当 を受け取って

                          [
                          \mathrm{NAD^+ + 2e^- + H^+ \rightarrow NADH}
                          ]

                          と書ける形で還元される。
                          だから生体内の現実の記述は、裸の半反応よりむしろ

                          [
                          \text{有機基質} + \mathrm{NAD^+} \rightarrow \text{より酸化された基質} + \mathrm{NADH} + \mathrm{H^+}
                          ]

                          に近い。

                          つまり、熱力学の帳簿の上では「炭素から電子を引きはがして、H⁺ と e⁻ を作る」と書いたところを、
                          生体内では

                          「炭素から抜いた還元力を、その場で NAD⁺ に載せ替える」

                          ことで処理しているわけ。

                          これで何が起きるかというと、前に見た「炭素側半反応の吸熱っぽさ」が、単独では見えなくなる

                          なぜなら、あの“吸熱っぽさ”の正体は、かなりの部分が

                          「基質から水素相当分を引き抜いて、まだ受け取り先を与えていない」

                          ことに由来していたから。
                          でも細胞では、引き抜いた瞬間に NAD⁺ が受け取る
                          だから、エネルギー的には

                          1. 基質から還元力を引き出すコスト
                          2. その還元力を NADH として安定に保持する利得

                          が、一つの酵素反応の中でほぼ同時に起きる

                          その結果、教科書の半反応だけを切り出したときに見えた
                          「え、ここ吸熱なの?」
                          という感じが、実際の代謝経路ではかなり薄まる。

                          もっと直観的に言うと、NAD⁺ は

                          “電子の一時預かり証”
                          みたいなものなんだ。

                          もし炭素側が本当に裸で

                          [
                          \text{基質} \rightarrow \text{酸化体} + e^- + H^+
                          ]

                          と進むなら、そこでいったん不安定な“浮いた電子”を作る必要がある。
                          でも実際は、

                          [
                          \text{基質} + \mathrm{NAD^+} \rightarrow \text{酸化体} + \mathrm{NADH} + \mathrm{H^+}
                          ]

                          と進む。
                          だから電子は「空中に放り出される」のではなく、落とし先つきで引き抜かれる
                          このせいで、炭素側だけを半反応として見たときの不自然さが、反応機構の上ではほとんど見えなくなる。

                          さらに重要なのは、NADH 自体がまだ“終点”ではないこと。
                          NADH はいわば、グルコースから取り出した還元力を、すぐに熱にせず 可搬型のかたちで保存したもの なんだ。
                          だから細胞は、グルコースを酸化して得たエネルギーを、その場で全部熱として捨てないで済む。

                          そのあと電子伝達系で

                          [
                          \mathrm{NADH \rightarrow O_2}
                          ]

                          の大きな電位差を使って、少しずつエネルギーを取り出す。
                          この「少しずつ」が大事で、ここでプロトン駆動力を作り、ATP 合成につなげる。

                          つまり流れとしては、

                          グルコースから電子を引き抜く
                          → その場で NADH に積む
                          → NADH を ミトコンドリアで O₂ に向かって落とす
                          → その落差を ATP に変える

                          という構造になっている。

                          この見方をすると、

                          • 炭素側半反応の“吸熱っぽさ”は、自由な H⁺ / e⁻ を作るという帳簿上の表現に由来する
                          • 生体内ではそれを NADH という中間貯蔵体 に置き換えている
                          • だからエネルギーは「炭素側でいったん損して、酸素側で大きく得する」というより、
                            「炭素から還元力を回収して NADH に貯め、あとで O₂ に渡すときに本格的に回収する」
                            というふうに見える

                          わけだね。

                          なので、教科書で「酸素が水になるエネルギー」が前面に出にくいのも、ある意味当然なんだ。
                          生体内で直接目に見える主役はまず NADH だから。
                          研究者や学生は、

                          • 解糖系で NADH ができる
                          • TCA 回路で NADH / FADH₂ ができる
                          • それが電子伝達系で ATP 産生につながる

                          という流れで学ぶ。
                          この書き方だと、酸素は最後の受け手としては超重要なんだけど、途中の景色では NADH のほうが目立つ
                          だから、「炭素側半反応の吸熱っぽさ」が意識に上りにくい。

                          一言でまとめると、

                          NAD⁺ は、炭素から引き抜いた電子を“裸の e⁻”としてではなく、“化学的に安全で、あとで使える還元力”として包んで運ぶ。
                          そのおかげで、半反応で見えた不自然な吸熱感は、生体内では NADH 形成という中間段階の中に吸収されて見えなくなる、ということ。

                           

                           

                           

                          リン脂質 sn 位置異性体の脳内分布を可視化

                          リン脂質には、 sn 位置に関する異性体があるというのも初めて知りましたが、その異性体の分布が脳内で異なるのだそうです。脳の異なる部位では異なる異性体が存在することの生物学的な意味は、明らかではありませんが、分布の違いを明確にする技術が確立されたというのが自分には驚きでした。そんな細かい違いまで区別できるのかと。どうやって、そんなことができたの?という疑問が湧きます。

                          1. リン脂質 sn 位置異性体の高分離解析により脳内分布を可視化
                            ~脂質分子種レベルでの生体分布解析を可能に~ https://www.fukushima-u.ac.jp/news/Files/2026/04/press_260417.pdf

                          サイクリックイオンモビリティー‐質量分析イメージング 質量分析計を用いたイメージング手法の一つで、イオンモビリティーというイオンの大き さや、かさ高さをもとに分離する部分を有しており、その部分が環状になることで、分離 度と呼ばれる分離効率をさらに高めた手法のこと。これにより質量分析イメージングの弱 点である、質量が同じ場合に区別できない点を補完できる。

                          質問:環状になるのは何が?分離分析したい分子がってこと?分子内の環状化?

                          Claude Opus 4.6:整理して説明します。

                          環状になるのは分子ではなく、装置の一部分です。

                          順を追って説明すると:

                          イオンモビリティーとは何か: 質量分析計の中に組み込まれた「分離装置」の一段階です。イオン化された分子を、その質量だけでなく「立体的な大きさ・形(かさ高さ)」の違いで分離します。ドリフトチューブと呼ばれる管の中をイオンが移動する際、大きくてかさ高い分子はぶつかりやすいので遅く、コンパクトな分子は速く通過する。この到達時間の差で分離するわけです。

                          「環状になる」のは何か: 装置内のイオンが通過するセル(管路)が、物理的にリング状・ループ状になっているということです。論文本文中にも「環状になっているセル内を、測定イオンを複数回周回させる」と明記されています。つまり、直線的なドリフトチューブだと一回通過して終わりですが、セルがリング状だとイオンをぐるぐる何周も回せる。今回の実験では30周させています。

                          なぜ周回させると分離度が上がるか: sn位置異性体のPC(22:6/16:0)とPC(16:0/22:6)は、質量が完全に同じで、立体構造もほんのわずかしか違いません。1周だけだと到達時間の差がごくわずかで分離できないけれど、30周させれば、そのわずかな差が30倍に積み重なって、最終的に十分なピーク分離が得られる——距離を稼いで分解能を上げるという発想です。陸上のトラック競技で、短距離走だと実力差が見えにくいけど、周回を重ねるほど差がはっきり開くのと同じ原理です。

                          なので、あの用語解説を書き直すなら「イオンモビリティー分離を行うセル(管路)が環状(リング状)に設計されており、イオンをその中で複数回周回させることで分離度を飛躍的に高めた手法」ということです。分子自体が環状化するわけではありません。

                          質問:30周 って、一周は何メートル?何㎝?何キロメートル?

                          Claude Opus 4.6:この装置の実機スペックを調べます。見つかりました。

                          サイクリックイオンモビリティー(cIM)のセルのパス長は98 cmです(別の資料では約100 cmとも記載)。つまり一周約1メートルです。

                          なので今回の実験で30周させたということは、イオンが装置内を走った総距離は約29.4 m(≒30 m) ということになります。

                          スケール感としては、直径30 cm強くらいのリング状のイオンガイド(600個以上の電極で構成されている)の中を、イオンがぐるぐる30周して約30メートル走る間に、PC(22:6/16:0)とPC(16:0/22:6)のわずかな立体構造の差が蓄積されて分離できた、ということです。

                          ちなみに開発論文では最大100周(パス長約98 m)での分離も報告されていて、1周で分解能R≒80、100周でR≒750まで上がるとのことです。分解能は周回数の平方根に比例するので、30周だとR≒80×√30 ≒ 438くらいの計算になります。

                          質問:ドリフトチューブの中身は何?DNAゲル電気泳動みたいに、何か網状のもの?ぶつかりながら移動って、分子が壊れる恐れはないの?

                          Claude Opus 4.6:順番に説明しますね。

                          ドリフトチューブの中身

                          ゲル電気泳動のような固体マトリクスは入っていません。中身は**気体(バッファーガス)**です。通常は窒素(N₂)が使われ、場合によってはヘリウムやアルゴンなども使います。

                          イメージとしては、電極に囲まれた細い管の中に低圧のガスが充填されていて、そこにイオンを送り込む。イオンは電場に押されて進みながら、ガス分子と繰り返し衝突する。大きくてかさ高い分子は衝突断面積(Collisional Cross Section, CCS)が大きいのでガス分子にぶつかりやすく、抵抗を受けて遅くなる。コンパクトな分子は衝突が少ないので速く通過する。この到達時間の差で分離するわけです。

                          なのでDNAゲル電気泳動との対比で言えば:

                          • ゲル電気泳動 → 固体の網目構造(アガロースやポリアクリルアミド)の中を通る。大きい分子ほど引っかかって遅い
                          • イオンモビリティー → 気体分子の「海」の中を泳ぐ。大きい分子ほどぶつかって遅い

                          原理的な発想は似ていますが、媒体が固体の網ではなくガスという点が根本的に違います。

                          分子は壊れないのか?

                          これは当然心配になりますよね。結論から言うと、通常の条件では壊れません。理由はいくつかあります。

                          まず衝突のエネルギーが低い。イオンモビリティー分離での衝突は「低エネルギー衝突」で、イオンはゆっくり押されながらガス分子と「ぶつかっては少し減速」を繰り返す程度です。分子の共有結合を切るには到底足りないエネルギーです。日常的な比喩で言えば、人混みの中を歩いていて肩がぶつかる程度であって、車で壁に突っ込むような衝撃ではない。

                          次に、バッファーガスの圧力と電場の強さが制御されている点。圧力は数Torr(大気圧の数百分の一)程度で、電場も穏やかに設定されています。もし電場を極端に強くすれば衝突エネルギーが上がって分子が壊れますが、それはむしろCID(衝突誘起解離)として意図的にフラグメンテーションを起こしたい時に別の領域で行うものです。

                          実際、この装置(SELECT SERIES Cyclic IMS)は非共有結合で結びついたタンパク質複合体の構造解析にも使われています。共有結合よりはるかに弱い非共有結合を保ったまま分離できるということは、リン脂質のような通常の有機分子が壊れる心配はまずないということです。

                          むしろこの装置の巧みなところは、分離したい時はイオンモビリティー領域で穏やかに分離し、壊したい時は別のフラグメンテーション領域でわざと壊す、という切り分けが設計上できている点です。論文でも、30周で分離した後にフラグメント分析をして異性体の同定を確認していますが、それは分離と破砕を別ステップで行っているからこそ可能なわけです。

                          質問:SN位置の異性体の脳内分布が異なっていたという発見だけど、脳の違う場所で異性体の存在に差があることには、どんな生物学的な意義があるの?

                          Claude Opus 4.6:これは論文の核心に関わる問いですね。正直なところ、この論文自体は「分布が違うことを初めて可視化した」という分析技術の論文であって、なぜ違うのかという生物学的メカニズムの解明はこれからの課題です。ただ、現時点で考えられることをいくつかの層に分けて整理します。

                          そもそもsn位置が違うと何が変わるか

                          リン脂質のsn-1とsn-2では、脂肪酸の切り出されやすさが違います。sn-2位の脂肪酸はホスホリパーゼA₂(PLA₂)で切り出されるのが定番の経路で、遊離した脂肪酸がシグナル分子として働きます。アラキドン酸がsn-2位から切り出されてエイコサノイドになるのが典型例ですね。

                          DHAも同様に、sn-2位から切り出されればレゾルビンやプロテクチンD1などの抗炎症性脂質メディエーターの前駆体になります。一方、sn-1位にDHAがある異性体(PC(22:6/16:0))はPLA₂の基質になりにくいので、DHAが切り出されにくい。つまり同じPCでもsn位置の違いによって「DHAを放出しやすいリン脂質」と「DHAを安定的に保持するリン脂質」という機能的な差が生まれる可能性があります。

                          分布の違いが示唆すること

                          今回の結果で特に興味深いのは、sn-1位にDHAがあるPC(22:6/16:0)が下丘(聴覚領域)に集中していたという点です。

                          これについていくつかの仮説が考えられます。

                          まず膜物性への寄与。DHAは6つの二重結合を持つ非常に柔軟な脂肪酸で、膜の流動性に大きく影響します。sn-1位とsn-2位のどちらにDHAがあるかで、膜中でのリン脂質の立体配座が変わり、膜の曲率や流動性、脂質ラフトの形成に差が出る可能性があります。聴覚神経の信号伝達は非常に高速な応答が求められるので、特定の膜物性がその機能に最適化されているのかもしれません。

                          次に代謝的安定性の観点。sn-1位のDHAはPLA₂で切り出されにくいので、下丘にPC(22:6/16:0)が多いということは、この領域ではDHAを膜に安定的に保持しておくことが重要である可能性を示唆します。論文中でも脳内DHAリン脂質の半減期が長いことに言及していますが、sn位置によってその代謝回転速度が異なるとすれば、脳領域ごとのDHA代謝戦略の違いを反映しているかもしれません。

                          さらに合成経路の違い。そもそもsn-1位にDHAを入れる酵素(アシルトランスフェラーゼ)とsn-2位に入れる酵素は異なります。脳領域ごとにこれらの酵素の発現パターンが違えば、結果として異性体の分布が変わります。これは原因側の話で、「なぜ違うか」の直接的な説明になりますが、ではなぜ酵素の発現が領域ごとに違うのかという問いがさらに続きます。

                          この発見の位置づけ

                          率直に言えば、今の段階では「分布が違う」という事実が見えたところで、そこから先の因果関係はほぼ未解明です。ただ、これまでsn位置異性体を区別して脳内分布を見る方法自体がなかったので、「違いがあるかどうかすらわからなかった」状態から「明確に違う」ことが示されたのは大きな一歩です。今後、PLA₂ノックアウトマウスや特定の酵素の阻害実験と組み合わせれば、sn位置の違いが膜機能や脳機能にどう影響するかが見えてくるはずです。

                          食事由来の安定同位体DHAでも同じ分布パターンが再現されたということは、この分布が単に発生過程の遺物ではなく、成体でも能動的に維持されている可能性が高い。そこに何らかの生理的意味があると考えるのは自然なことだと思います。

                          質問:確認だけど、DHAが、リン脂質と結合しているのではなくて、リン脂質のなかの脂肪酸2つのうちの1つがDHAだったのね?

                          Claude Opus 4.6:その通りです。DHAはリン脂質の「外」から結合しているのではなく、リン脂質を構成する脂肪酸の一つがDHA自身であるということです。

                          リン脂質(この場合ホスファチジルコリン)は、グリセロール骨格のsn-1位とsn-2位にそれぞれ1本ずつ脂肪酸がエステル結合し、sn-3位にホスホコリンが付いた構造です。今回の場合、2本の脂肪酸のうち1本がパルミチン酸(16:0)、もう1本がDHA(22:6)で、その配置が逆になったものが2つのsn位置異性体です。

                          なのでプレスリリースの「DHA結合リン脂質」という表現はやや誤解を招きやすくて、より正確には「DHAを脂肪酸として含むリン脂質」あるいは「DHA含有リン脂質」と言った方が構造を正しく伝えると思います。「結合」と言うと、完成したリン脂質にDHAが外から付いたような印象を与えてしまいますが、実際にはDHAがリン脂質の構成部品そのものですね。

                          特44 分割出願 書面再提出要不要の網羅的なまとめ

                          必要書類の再提出が不要なケース(提出みなし規定)まとめ

                          分割・変更出願をした場合に、もとの出願で提出済みの書類が、新たな出願と同時に提出されたものとみなされる規定が各法に存在する。以下が横断整理。


                          1. 特許法44条4項(分割出願)

                          もとの特許出願について提出された以下の書類は、新たな特許出願と同時に提出されたものとみなす

                          • 30条3項:新規性喪失の例外の適用を受ける旨の書面+証明書
                          • 41条4項:国内優先権主張の書面+先の出願の表示を記載した書面
                          • 43条1項・2項:パリ優先権主張書面+優先権証明書類等

                          国内優先権主張出願(41条)には、このみなし規定が不準用。だから新喪例の書面は改めて提出が必要。


                          2. 特許法43条5項(優先権証明書類等のDAS提出)

                          優先権証明書類等の内容を電磁的方法でパリ同盟国政府等と交換できる場合、出願番号等を記載した書面を提出すれば、優先権証明書類等を提出したものとみなす

                          → 優先権証明書の原本そのものの提出が不要になるケース。


                          3. 意匠法10条の2第3項(分割出願)

                          もとの意匠登録出願について提出された以下の書類は、新たな意匠登録出願と同時に提出されたものとみなす:

                          • 4条3項:新規性喪失の例外の適用を受ける旨の書面
                          • 準特43条1項・2項:パリ優先権主張書面+優先権証明書類等

                          ※秘密意匠の請求書面(14条2項)は含まれない(H28-意2-3で出題)


                          4. 意匠法13条6項 → 10条の2第2項・3項を準用(変更出願)

                          特許出願・実用新案登録出願から意匠登録出願への変更でも、10条の2第3項が準用されるので、もとの出願で提出済みの書面は再提出不要。


                          5. 商標法10条3項(分割出願)

                          もとの商標登録出願について提出された以下の書類は、新たな商標登録出願と同時に提出されたものとみなす:

                          • 9条2項:出願時の特例(博覧会出品等)の書面
                          • 準特43条1項・2項:パリ優先権主張書面+優先権証明書類等

                          → H25-商6-ハ「新たな商標登録出願について優先権証明書を必ず提出しなければならない」→ ×


                          6. 国際商標登録出願(商標法68条の15)

                          国際商標登録出願は、そもそも準特43条1項〜4項、7項〜9項が不適用。マドプロの仕組みで優先権主張するので、日本での優先権書類提出手続自体が不要。


                          横断比較表

                          出願の種類 みなし規定 新喪例書面 パリ優先書面 国内優先書面
                          特許・分割 44条4項 ○みなす ○みなす ○みなす
                          特許・国内優先権主張 なし ×再提出要
                          意匠・分割 10条の2第3項 ○みなす ○みなす
                          意匠・変更 13条6項→準用 ○みなす ○みなす
                          商標・分割 10条3項 ○みなす
                          国際商標 68条の15 そもそも不要

                          試験で狙われるポイント

                          「再提出が必要なのに不要と思い込む」パターンが危険:

                          • 国内優先権主張出願 → 44条4項が不準用 → 新喪例書面は再提出要(H30-特実17-ロ)
                          • 秘密意匠の請求書面 → 10条の2第3項に列挙されていない → 再提出要

                          「再提出不要なのに必要と思い込む」パターンも頻出:

                          • 分割出願で優先権証明書の再提出が必要としたもの → × (H28-意7-4、2020-特実06-4)
                          • 変更出願で新喪例書面の再提出が必要としたもの → × (H28-意7-2)

                          特許法の漢字の読み方

                          特許法に出てくる「物」は、「もの」か「ぶつ」か?2月は「にがつ」か「にげつ」か「につき」か?初心者は、思わぬところで悩みます。

                          2月=「につき」

                          令和元年度知的財産権制度説明会(実務者向け) 21. 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続 JPO Channel チャンネル登録者数 4830人

                          ビタミンKの働き:タンパク質のグルタミン酸のγーカルボキシル化酵素の補酵素として

                          タンパク質のグルタミン酸残基の側鎖は、-CH2-CH2-COOHなので、γ位の炭素にカルボキシ基が結合しています。このγ位の炭素にもう一つカルボキシ基を結合させる反応が、γ-カルボキシ化反応です。γ-カルボキシ化反応を触媒するのが、γ-カルボキシ化酵素であり、その補酵素としてビタミンKが必要となりますカルボキシ化によって2つの-COOHが電離して -COO-  -OOC- となると カルシウムイオンを間に挟みこむことができます。 -COO- Ca2+ -OOC- という形です。

                          これでカルシウム依存性の種々の反応がさらに進んでいきます。2つの重要な標的が、血液凝固因子と骨形成(オステオカルシンなど)です。これら2つは別の現象で、別の化学反応が関わっていますが、共通することとしてγ-カルボキシ化反応の存在があり、ビタミンKの必要性という点が共通することになります。

                           

                          Vitamin K 🥬 – Sources, Deficiency and Excess – Symptoms and Treatment Medicosis Perfectionalis チャンネル登録者数 175万人

                           

                          Lecture 39 : Chemistry of cofactors/coenzymes (Contd.) NPTEL IIT Kharagpur チャンネル登録者数 35.9万人

                          特許出願書類作成支援AIサービス

                          専用ツール・SaaSが次々と登場している

                          AI Samuraiは、類似文献の評価や、生成AIによる明細書ドラフトを約3分で自動生成する機能を提供しています。Tokkyo.Aiも、生成AIによる明細書の自動作成や、文章入力による類似特許検索、画像からの類似商標検索などの機能を展開しています。

                          NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)は2025年6月から、エクサウィザーズと共同開発した特許出願書類作成に特化したAIエージェントの提供を開始しています。

                          パテント・インテグレーションは、明細書作成の実務フローを前提に設計された「明細書作成支援機能」をリリースし、人間の判断を中心に据えながらAIが補助的に機能する設計を採っています。同社は生成AI利活用による明細書作成に関する重要特許も取得しています。

                          大手企業の知財部門レベルでは

                          NECは自社の知財業務にAIを全面的に導入し、特許書類の自動作成や先行文献調査の効率化を実現しています。

                          現時点での実力評価

                          欧州特許弁理士試験の問題を使ったベンチマークでは、ChatGPT o3、Claude 3.7、Gemini 2.5 Proを比較した結果、Claudeの解答がおそらく合格レベルにあり、現時点で最も特許出願書面作成に適した生成AIと評価されています。ただし独立クレームの作成能力にはまだ改善の余地があり、人間が独立クレームを作成した上でAIに従属クレームや明細書をサポートさせる協働が現実的という見方です。

                          つまり現状は

                          「AIが全部書いて人間が確認するだけ」という世界にかなり近づきつつあるけど、まだ完全にはそこに到達していない、という段階ですね。特に独立クレームの設計は発明の本質的な権利範囲を決めるところなので、ここは当面人間の弁理士の仕事として残りそうです。逆に、明細書の本文(背景技術、実施例の記載など)や従属クレームの展開は、AIがかなりの品質で書けるようになっています。

                          秘匿性の問題を考えると、これらのSaaSツールもクラウドベースなので結局同じ課題を抱えています。

                          (Claude Opus 4.6)

                          独立クレームとは

                          特許請求の範囲(クレーム)の中で、他のクレームを引用せずに単独で発明の権利範囲を定義するクレームのことです。

                          たとえば、こんな構造になります:

                          請求項1(独立クレーム): 「Aと、Bと、Cとを備える装置。」

                          請求項2(従属クレーム): 「前記Bが○○である、請求項1に記載の装置。」

                          請求項3(従属クレーム): 「さらにDを備える、請求項1又は2に記載の装置。」

                          請求項1が独立クレームで、これだけで発明の権利範囲が完結しています。請求項2と3は請求項1を引用して、さらに限定を加えた従属クレームです。

                          独立クレームが特許実務で最も重要とされるのは、これが権利範囲の「最大外縁」を決めるからです。広く書きすぎると先行技術と被って新規性・進歩性が否定されるし、狭く書きすぎると競合他社が容易に回避できてしまう。このバランスの設計が弁理士の腕の見せどころで、発明の本質を見抜いた上で、どの構成要素を入れてどれを外すかという判断が求められます。

                          AIがここを苦手とするのは納得できる話で、発明者へのヒアリング先行技術との差異の見極め将来の回避設計の予測といった、技術的理解と法的戦略の両方を統合した判断が必要だからです。一方、従属クレームは独立クレームが決まれば、そこから限定のバリエーションを展開するという比較的パターン化しやすい作業なので、AIが得意とする領域です。

                          (Claude Opus 4.6)

                          新生児メレナとは

                          「メレナ(melena)」はタール状の黒色便、つまり上部消化管出血を示す所見です。新生児メレナは生後数日〜数週に、ビタミンK欠乏による凝固因子(第II, VII, IX, X因子)の産生低下が原因で消化管出血を起こす病態です。

                          なぜ新生児がK欠乏になりやすいかというと:

                          • ビタミンKは胎盤通過性が低く、胎児への移行が少ない
                          • 母乳中のビタミンK含量も少ない
                          • 新生児の腸内細菌叢が未確立で、腸内でのビタミンK産生が乏しい

                          という三重の理由があります。だからこそ出生後にビタミンK2シロップを経口投与するのがルーチンになっているわけで、第112回の必修問題もまさにこの点を問うていました。

                          発症時期によって「早発型(生後24時間以内、母体の薬剤が原因)」「古典型(生後2〜7日)」「晩発型(生後2週〜2ヶ月、頭蓋内出血のリスクあり)」に分けられます。晩発型は母乳栄養児に多く、頭蓋内出血を起こすと予後不良なので、K2シロップの投与スケジュール(出生時・生後1週・生後1ヶ月の3回、最近は週1回投与を3ヶ月まで続ける方法も)が重要です。

                          (Claude Opus 6.8)

                          血液が固まりにくいと、なぜ出血につながるの?

                          良い質問ですね。直感的には「固まりにくい=出血しやすい」で済ませがちですが、なぜそうなるのかをちゃんと考えると、けっこう本質的な話になります。

                          前提:血管は常に微小な損傷を受けている

                          ここがポイントです。健康な人でも、血管壁は日常的に微小な傷を受け続けています。腸管の蠕動運動、血圧の変動、物理的な圧迫、組織の伸展——こうした機械的ストレスで、毛細血管レベルの微小損傷は絶えず起きています。

                          正常であれば、これらは止血機構(血小板の粘着・凝集 → 凝固カスケード → フィブリン網形成)によって即座に修復されるので、出血として顕在化しません。いわば、「壊れては直す」を常にやっている動的平衡の状態です。

                          凝固能が低下すると何が起こるか

                          ビタミンK欠乏で凝固因子(II, VII, IX, X)の産生が落ちると、この「直す」側の能力が落ちます。すると:

                          1. 普段なら止まるはずの微小出血が止まらない → 皮下出血斑、点状出血
                          2. 消化管粘膜のような脆弱な組織で出血が持続する → 新生児メレナ(タール便・吐血)
                          3. 一度出血が始まると拡大しやすい → 晩発型での頭蓋内出血

                          つまり「凝固能低下が出血を引き起こす」というより、正確には「常に起きている微小損傷の修復が追いつかなくなり、出血が顕在化する」ということです。

                          新生児で特に問題になる理由

                          新生児の消化管粘膜は成人と比べて薄く脆弱で、かつ出生直後は分娩時のストレスや哺乳開始に伴う物理的刺激にさらされます。そこに凝固能低下が重なると、消化管出血として発症しやすい。これが新生児メレナの病態です。

                          逆に言えば、血友病(第VIII因子や第IX因子の欠損)でも、ITP(血小板減少)でも、DIC(凝固因子の消費性消耗)でも、メカニズムの段階は違えど「止血の動的平衡が破綻する」という点では同じ原理で出血症状が出ます。この「血管は常に壊れている」という前提を押さえておくと、止血・凝固系の病態が統一的に理解しやすくなりますね。

                          新生児メレナは今でも普通に見られる病気?それとももう撲滅された?

                          新生児メレナ(新生児ビタミンK欠乏性出血症)についてですね。

                          結論から言うと、撲滅はされていませんが、日本では非常にまれになっています

                          その大きな理由は、ビタミンK₂シロップの予防投与が標準化されたことです。日本では出生時・生後1週間・生後1ヶ月の計3回投与が長く行われてきましたが、それでも晩発型(生後2週〜2ヶ月頃に発症する頭蓋内出血型)を完全には防ぎきれないケースが報告されていました。そのため、近年は生後3ヶ月まで毎週投与する方式も広まっています。検索結果も踏まえてまとめると、以下のような状況です。

                          撲滅はされていないが、予防体制の強化で極めてまれになったというのが現状です。

                          まず早発型(生後2〜4日頃の消化管出血、いわゆる狭義の「新生児メレナ」)については、出生時のビタミンK₂シロップ内服で予防可能であり、産科施設での投与が標準化された現在、ほぼ見ることがなくなっています。

                          より問題になるのは晩発型(生後3週〜2ヶ月頃)で、こちらは頭蓋内出血での発症が多く、約半数が死亡または後遺症を残す深刻な病態です。従来の3回投与法(出生時・退院時・1ヶ月健診時)では1999年〜2004年の間で出生10万人あたり1.5人の発症が報告されていました。そこで2010年に日本小児科学会がガイドラインを改訂し、出生後3ヶ月まで毎週1回、計13回投与する方法(13回法)が推奨されるようになりました。海外データでは、この週1回投与を続ける方法で発生がゼロになったことが示されています。

                          ただし、完全に「撲滅」とは言えない理由がいくつかあります。胆道系の基礎疾患がある場合や、保護者・助産師がホメオパシーなどを信じてビタミンKを与えないケースでは発症・死亡例が報告されています。2010年の日本助産師会の全国調査では、助産所の1割弱でホメオパシーが行われビタミンK投与が省略されていたことも明らかになりました。

                          つまり、適切に予防投与が行われれば発症はほぼゼロに近づけられる疾患ですが、制度上のカバー率が100%でない限り、また胆道閉鎖症などの基礎疾患を持つ児がいる限り、完全な撲滅とは言い切れない、というのが正確なところです。医学教育や看護教育では依然として重要なトピックとして教えられています。

                          (Claude Opus 4.6)

                          アプト(Apt)試験の原理は

                          良い質問ですね。これはヘモグロビンの種類の違いを利用した検査です。

                          核心はHbF(胎児ヘモグロビン)とHbA(成人ヘモグロビン)のアルカリ抵抗性の差にあります。

                          胎児・新生児の赤血球に含まれるHbFは、α₂γ₂というサブユニット構成を持っています。一方、成人のHbAはα₂β₂です。このγ鎖とβ鎖の構造の違いが、アルカリに対する安定性の差を生みます。

                          具体的には、HbAのβ鎖はアルカリ(NaOH)によって変性しやすく、グロビンの立体構造が崩れてヘム基が遊離・酸化されます。その結果、ヘムのFe²⁺がFe³⁺に酸化されてヘマチン(アルカリヘマチン)となり、これが緑褐色を呈します。

                          一方、HbFのγ鎖にはアルカリに対する抵抗性があります。これはγ鎖の分子内にジスルフィド結合(S-S結合)が存在しないなど、アミノ酸配列の違いに起因すると考えられています。γ鎖はアルカリ条件下でも変性しにくいため、ヘモグロビンの構造が保たれ、オキシヘモグロビンのピンク色がそのまま維持されます。

                          つまり手順をまとめると:

                          1. 血液を蒸留水に混ぜて溶血させる → 赤血球が壊れてヘモグロビンが溶出し、ピンク色の溶液になる
                          2. そこにNaOH(苛性ソーダ)を加える
                          3. HbA(母体由来)→ 変性・ヘマチン形成 → 緑褐色に変色
                          4. HbF(児由来)→ アルカリ抵抗性で変性しない → ピンク色のまま

                          臨床的には、新生児の吐血・下血が母親の血液を飲み込んだ「仮性メレナ」なのか、児自身の消化管出血による「真性メレナ」なのかを迅速に鑑別するための、シンプルだけど非常に理にかなった検査です。特別な機器も不要で、ベッドサイドで短時間に判定できるのが利点ですね。

                          (Claude Opus 4.6)

                          1. ビタミンK2シロップの投与 2022/09/07 看護roo! 新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より 新生児のビタミンK欠乏性出血症は、出生後7日までに発症する新生児ビタミンK欠乏性出血症と、それ以降の乳児期に発症する乳児ビタミンK欠乏性出血症に分けられる。‥ 乳児ビタミンK欠乏性出血症は、主として生後3週から2か月までの母乳栄養児に発症し、8割以上に頭蓋内出血を認め予後不良であることから、とくに予防が重要 消化管出血である新生児メレナ(melena)は、仮性メレナ、真性メレナ、症候性メレナの3つに分けられる。
                          2. Melena, Causes, Signs and Symptoms, Diagnosis and Treatment Medical Centric Podcast チャンネル登録者数 70.2万人