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特070 技術的範囲

(特許発明の技術的範囲)
第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
2 前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
3 前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。

特許法 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121/20220401_503AC0000000042#Mp-Ch_4-Se_1

プロンプト:技術的範囲 って第70条で初めて登場する言葉だっけ?「定義」みたいなもの不要なの?

Gemini:「技術的範囲」という言葉の具体的な「定義規定(第2条のようなもの)」は、特許法の中に存在しません。なぜ定義がないのか、どう理解すべきかを整理します。


1. 第70条は「定義」ではなく「確定ルール」

特許法第70条第1項は、定義というよりも「権利の境界線を引くときの唯一のルール」を定めています。

第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

この条文があるおかげで、裁判所や特許庁は「発明者の頭の中にあるアイデア」ではなく、「書類に書かれた言葉(クレーム)」だけを見て、権利の範囲を決められるようになっています。

2. なぜ「定義」がないのか?

技術的範囲」という言葉自体が、「特許権という独占権が及ぶ、技術的な守備範囲」という、実務上の概念そのものだからです。もし「技術的範囲とは〜である」と定義してしまうと、時代とともに進化する新しい技術や、解釈の幅(均等論など)を縛ってしまうおそれがあります。そのため、あえて定義はせず、「クレーム(特許請求の範囲)という言葉の壁で囲まれたエリア」という運用ルールだけを第70条で決めているのです。


3. 【重要】過去問で問われる「第70条」の3層構造

試験では、第70条の「1項から3項」の使い分けがよく問われます。ここを整理すると得点源になります。

内容 試験でのポイント
第1項 **願書の記載(クレーム)**に基づいて定める。 **「唯一の基準」**であることを強調。
第2項 明細書や図面を考慮して解釈できる。 言葉の意味が不明なとき、**「辞書」**として使う。
第3項 要約書は考慮してはならない。 「要約書も参考にする」という選択肢は**×(引っかけ)**。

合格へのアドバイス

試験問題で「技術的範囲」という言葉が出てきたら、**「クレームという言葉の枠組みのことだな」**と脳内変換してください。そして、**「第70条1項(クレームが主役)」「第70条2項(明細書は脇役・説明役)」**の関係性を問う問題(例:明細書に書いてあってもクレームになければ権利にならない、など)に注意を払えば、この条文に関しては完璧です。

プロンプト:DVDって、1次元の紙テープを読むのと、大差ないことをやってるわけね?

Gemini:その通りです!まさに**「1次元の長いデータを、使い勝手のために畳んで円盤に押し込んだもの」**と捉えるのが本質を突いています。「1次元の紙テープ」という例えをベースに、光ディスクがどのようにそれを実現しているか整理すると、より構造がハッキリ見えてきます。


1. 「超・長い紙テープ」を折りたたむ

もし、100層の大容量ディスク(1TBクラス)のデータを1本のテープにしたとしたら、その長さは数千kmにも及びます。これを1枚のディスクに収めるために、2段階の「折りたたみ」をしています。

  1. 渦巻き状に巻く(2次元化): テープを円盤の上にグルグル巻きにします(トラック)。

  2. 層として積み重ねる(3次元化): その円盤を何枚も重ねます(多層化)。

2. 「読み取りヘッド」は紙テープのリーダーと同じ

紙テープのリーダーが「今、テープのどこを読んでいるか」を追いかけるのと同様に、光ディスクのピックアップ(レンズ)も常に1つの線を追いかけています。

  • 紙テープ: テープが物理的に流れていく。

  • 光ディスク: ディスクが回転し、レンズが「光の点」で線をなぞる。

層を切り替える瞬間は、紙テープで言えば**「1本目のテープが終わったから、2本目のテープにリーダーを差し替える」**ような動作です。この間、データの読み取りは一瞬止まります。


3. なぜ「ランダムアクセス」が遅いのか(紙テープとの比較)

紙テープで、一番最後のほうにあるデータを読みたくなったら、ひたすらテープを巻き取って送らなければなりませんよね。光ディスクもこれに似た弱点を持っています。

  • HDDやSSD: どこにでもすぐ飛べる「住所」が細かく管理されている。

  • 多層光ディスク: 「層」をまたぐ移動は、レンズの物理的なピント調整が必要なため、紙テープをリールで巻き戻したり、別のリールに架け替えたりするような**物理的な「待ち時間」**が発生します。


結論

おっしゃる通り、光ディスクの読み出しは、構造こそ3次元ですが、中身の扱いは**「極めて長い1次元のデータ」**です。そのため、大容量ROMディスクの主な用途は、バラバラのデータを頻繁に読み書きするPCの作業用ドライブではなく、**「一度記録したら、最初から最後まで順番に読み出すことが多い」**映画の視聴や、データの長期アーカイブ(バックアップ)に向いているのです。

プロンプト:てことは、紙テープのデータ保存に関する特許は、DVD-ROMによって侵害されているといえるよね?抽象的なアイデアは同一なわけだから。

Gemini:知財の視点からの非常に鋭いご指摘ですね!「長い情報を1次元の列として記録し、それを読み取る」という抽象的なアイデア(機能的・本質的な概念)で見れば、確かに両者は同じですしかし、特許制度のルールに照らし合わせると、残念ながら(あるいは幸いなことに)「紙テープの特許でDVDを訴えて勝つ」のは極めて難しいのが現実です。その理由は、特許が「アイデアそのもの」ではなく、そのアイデアを「どうやって具体的に実現したか(手段)」を守るものだからです。


1. 「技術的手段」が全く違う

特許権は、目的が同じでも「手段」が異なれば侵害にはなりません。

  • 紙テープ: 「紙という媒体に、パンチで物理的な穴を開け、光や電気接点で検知する」という技術。

  • DVD: 「ポリカーボネート樹脂に、ナノサイズの凹凸(ピット)を形成し、レーザー光の干渉や反射を利用して検知する」という技術。

たとえ「1次元のデータを順番に読む」というコンセプトが同じでも、「紙 vs 樹脂」「パンチ穴 vs レーザー」という具体的手段が異なれば、別の発明とみなされます。

2. 「公知の技術」の壁

「情報を1列に並べて記録する」というアイデア自体は、19世紀の自動ピアノのパンチカードや電信機(モールス信号)の時代から存在する**「公知の技術(みんなが知っている古い技術)」**です。

特許は「新しくて、誰も思いつかなかったこと」に与えられるため、あまりに抽象的なアイデアすぎると、そもそも特許として成立しないか、範囲が非常に狭く限定されてしまいます。

3. 特許の有効期限(20年の壁)

もし仮に、誰かが「どんな媒体でもいいから、情報を1列に並べて記録する仕組み」という非常に強力で広い特許を持っていたとしても、特許権の寿命は原則20年です。紙テープの全盛期に取られた特許は、DVDが登場する頃にはとっくに期限が切れて「人類共通の財産」になっています。


知財的な面白いポイント:

もしDVDが紙テープの特許を侵害するとしたら、以下のようなケースです。

**「記録媒体をぐるぐる巻きにして、端から順番に読み取っていく制御プログラム」**というソフトウェア的な特許を誰かが持っていて、その特許の有効期間内にDVDの読み取り方式が開発された場合。

しかし、実際にはDVDやBlu-rayの開発にあたっては、各メーカー(ソニー、パナソニック、フィリップスなど)が、**「どうやって多層化するか」「どうやってエラーを訂正するか」**といった、より具体的で高度な「独自の解決手段」について数万件の特許を出し合い、お互いにライバルを牽制しています。


まとめ

「情報を1列に並べる」という戦略は同じですが、それを実現するための**戦術(ナノテクノロジーや光学制御)**が全く新しいため、DVDは紙テープの単なる延長ではなく、新しい発明として認められているのです。知的財産の世界では、この「アイデア(抽象)」と「実施手段(具体)」の境界線が常に議論の的になります。

プロンプト:該当する条文は?

Gemini:「特許はアイデアそのものではなく、具体的な実現手段(技術的思想)を守るものである」という考え方の根拠は、主に特許法第2条第1項(発明の定義)にあります。直接的に「アイデアはダメ」と書いてある条文はありませんが、以下の条文を組み合わせることで、知財の実務上そのように解釈されています。

### 1. 特許法第2条第1項(「発明」の定義)

> この法律で「発明」とは、**自然法則を利用した技術的思想の創作**のうち高度のものをいう。

ここが最大のポイントです。

* **「技術的思想」であること:** 単なる「こうしたい」という願望や抽象的な「概念(アイデア)」だけでは足りず、それを実現するための**客観的な手段(技術)**として体系化されている必要があります。
* **「自然法則を利用」していること:** 数学の公式や、単なる「情報の並べ方のルール(取り決め)」だけでは、自然法則を利用していないとみなされ、特許の対象になりません。

### 2. 特許法第70条第1項(特許権の効力範囲)

> 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

特許権がどこまで及ぶかは、特許庁に提出した書類(特許請求の範囲/クレーム)に書かれた具体的な言葉で決まります。例えば「紙に穴を開ける」と書いてあれば、それは「樹脂にレーザーで跡をつける」ことには(原則として)及びません。抽象的なアイデアレベルで権利を認めてしまうと、他人の創作活動を過度に制限してしまうため、書かれた具体的な技術の範囲に限定されるのです。

### 3. 特許法第36条第4項・第6項(実施可能要件・明確性要件)

特許を取るための書類には、以下のことを書く義務があります。

* **第4項(実施可能要件):** その技術分野の専門家が、実際に作れるくらい**具体的**に書きなさい。
* **第6項(明確性要件):** 権利の範囲を**明確**に書きなさい。

「1次元に並べて記録する」というだけの記載では、「具体的にどうやって?」「何を使って?」が不明確なため、この条文に抵触して拒絶されます。

### まとめ:なぜ「紙テープ」で「DVD」を訴えられないのか

知財の世界には**「アイデア・表現二分論」**(主に著作権で使われる言葉ですが、特許でも根底の考え方は近いです)に近い考え方があります。

1. **アイデア(抽象):** 情報を1列に並べて保存しよう。
2. **技術(具体):** 紙にパンチで穴を開け、ピンで検知しよう。(紙テープ)
3. **技術(具体):** 樹脂にピットを焼き、レーザーで検知しよう。(DVD)

特許法は「1」のアイデアそのものを独占させるのではなく、「2」や「3」の「具体的な技術的解決策(技術的思想の創作)」に対して、それぞれ別個に権利を与えるというスタンスをとっています。もし「1」の段階で特許を認めてしまったら、人類はそれ以降、新しい保存技術を一切作れなくなってしまいますよね。それを防ぐためのバランスが、第2条の「技術的思想」という言葉に込められています。




プロンプト:多層構造をもつ大容量ROM型光ディスク ってどんなもの?典型的な構造を教えて。

Gemini:多層構造をもつ大容量ROM型光ディスク(Blu-ray Discの多層版や、次世代のアーカイブ用ディスクなど)は、限られた厚みの中に複数のデータ記録面を積み重ねることで、テラバイト級の保存容量を目指す技術です。一般的なDVDやBlu-rayが1〜2層(最大でも4層程度)なのに対し、研究開発されている大容量ROMディスクでは8層〜100層以上の積層が検討されています。


典型的な多層構造のメカニズム

多層ディスクの構造は、簡単に言うと「薄い情報の膜を、透明な接着剤で何枚もサンドイッチしたもの」です。

1. 層の構成要素

  • 基板(Substrate): ディスクの土台となるプラスチック(ポリカーボネート)です。

  • 情報層(Data Layers / Pit Layers): 0と1の信号(ピットとランド)が刻まれた層です。

  • 中間層(Spacer Layers): 各情報層を分けるための透明な樹脂です。隣り合う層の信号が混ざらないよう、一定の厚み(10〜20μm程度)を持たせます。

  • 反射膜 / 半透膜(Reflective / Semi-reflective Layers):

    • 一番奥の層(L0)は光をしっかり跳ね返す全反射膜(アルミニウムなど)。

    • 手前の層(L1, L2…)は、奥の層まで光を届かせるために、光を一部通しつつ一部反射する半透膜(銀合金や誘電体)が使われます。

2. 読み取りの仕組み

レーザー光の焦点(フォーカス)位置を上下に動かすことで、特定の層のデータだけを読み取ります。

  • 選択的フォーカス: レーザーを特定の層に絞り込むと、その層からの反射光だけが強く検出されます。

  • 透過性の確保: 多層化すればするほど、手前の層で光が弱まってしまうため、各層の透過率を精密に設計し、どの層からも均一な強度の信号が得られるように工夫されています。


課題と技術のポイント

多層化を進める上では、以下の点が技術的な壁となります。

  • 迷光(クロストーク): 隣の層からの反射光がノイズとして混ざってしまう問題。

  • 収差の補正: 厚いディスクの奥深くに焦点を合わせると、光が歪んで(球面収差)うまく読み取れなくなります。これをレンズ側でリアルタイムに補正する技術が必要です。

豆知識: > ソニーやパナソニックが開発した「アーカイバル・ディスク」などは、この多層技術を駆使して1枚で数百GB〜数TBの容量を実現しており、データセンターでの長期保存用として活用されています。

プロンプト:2層でも100層でもいいけどさ、読み取りのときに、どうして他の層が邪魔にならないの?ピントをその層に合わせて読むからということ?

Gemini:その通りです!基本的には**「読みたい層にだけピントを合わせ、他の層をボカす」**という仕組みが鍵ですが、実はそれだけでは足りません。100層もあるようなディスクで、他の層が邪魔にならない(=ノイズにならない)ようにしている、具体的な3つのテクニックを解説します。


1. 「共焦点(ピンホール)」による不要な光のカット

顕微鏡などでも使われる**共焦点(コンフォーカル)**という技術が重要です。

レーザーが反射して戻ってくる道の途中に、小さな穴(ピンホール)を置きます。

  • 読みたい層: ピントが合っているため、反射光がピンホールの位置で一点に集まり、穴を通り抜けます。

  • 邪魔な層(前後): ピントがズレているため、反射光がボヤけた状態でピンホールに届きます。その結果、光の大部分が穴の外側に当たってカットされ、検出器まで届きません。

2. 球面収差(レンズのゆがみ)のリアルタイム補正

ディスクの奥深くにピントを合わせようとすると、手前の層(樹脂)を通過する距離が長くなり、光が歪んでしまいます(これを球面収差と呼びます)。

  • 1層目: 樹脂を通る距離が短いので、普通のレンズでOK。

  • 100層目: 樹脂を深く通るため、光が一点に集まらなくなります。

これを防ぐために、読み取り装置側には**「補正レンズ」**が入っています。読みたい層の深さに合わせて、動的にレンズの形や位置を調整し、ターゲットの層でだけ「完璧な極小の点」になるように制御しています。

3. 層ごとの反射率と透過率の絶妙なバランス

100層もある場合、手前の層が光を反射しすぎると、奥まで光が届きません。逆に透過しすぎると、その層のデータが読めません。

  • 手前の層: ほとんどの光を通し、ほんの数%だけ反射するように設計されています。

  • 奥の層: 手前で弱まった光を効率よく返すため、反射率を少し高めに設定します。

このように、どの層で反射した光も、最終的に検出器に届くときには**「同じくらいの明るさ」**になるよう計算して、膜の厚みや素材が調整されています。


まとめ

「ピントを合わせる」のは基本ですが、大容量ディスクではさらに、**「ピントが合っていない光を物理的に遮断する(ピンホール)」ことと、「深さに合わせて光の歪みを直す(補正レンズ)」**ことで、他の層を「透明な壁」のように扱っているのです。「100層あっても、光から見れば読みたい層以外はただの素通りする景色」にしている、と言えるかもしれませんね。

プロンプト:読む順番は?ピント方向にずらしながら読むの?円周上に沿ってよんでからピントをずらした面を次に読むの?それともランダムアクセスが可能?ランダムアクセスだと遅くなりそうだよね?

Gemini:読み取る順番やアクセスの仕方は、**「用途(データの性質)」**によって大きく2つのパターンに分かれます。結論から言うと、基本は**「1つの層をぐるっと読んでから次の層へ」ですが、「ランダムアクセス」**も可能です。ただし、ご想像の通りピント移動には物理的なコストがかかります。


1. 基本は「層ごとに円周に沿って」

映画やバックアップ用など、大きなデータを連続して読む場合は、層を移動する回数を最小限にします。

  • ジグザグ走行(対向パス):1層目(L0)を内周から外周に向かって読み終わったら、レンズのピントを2層目(L1)に切り替え、今度は外周から内周に向かって読み進めます。こうすることで、レンズを元の場所(内周)に戻す時間を節約しています。

2. ランダムアクセスと「遅さ」の正体

特定のデータを探して別の層へジャンプすることは可能ですが、HDDやSSDに比べると**シークタイム(待ち時間)**が発生します。

  1. 平面移動: レンズを半径方向に動かす。

  2. 垂直移動(フォーカスジャンプ): ピントを別の層に合わせ直す。

  3. 補正の微調整: 深さが変わると「球面収差(光の歪み)」が変わるため、補正レンズを動かして信号がハッキリ見えるまで微調整します。

この「ピント合わせ+収差補正」のプロセスが数ミリ秒〜数十ミリ秒かかるため、細切れのデータをあちこちの層から読み出すと、全体的な速度はガクンと落ちます。


3. 多層ディスクが「ランダムアクセス」に向かない理由

ROM型(読み出し専用)の多層ディスクは、主に**コールドストレージ(アーカイブ)**用として設計されています。

  • 得意: テラバイト級の巨大なデータを一気に書き込み、一気に読み出すこと。

  • 苦手: OSのシステムドライブのように、小さなファイルを頻繁に書き換えたり、バラバラに読み出したりすること。

技術の工夫:

最近の研究(3次元光メモリなど)では、あらかじめ「どの層のどのあたりに何があるか」という目次情報(ファイルシステム)を特定の層にまとめて持たせ、レンズが無駄に上下動しなくて済むような工夫がされています。


4. 読み取りの優先順位(どっちから読む?)

通常は**「一番手前の層」または「一番奥の層」**から順番に埋めていきます。

これは、層を飛び越えて読み書きすると、レーザーの出力調整や管理が複雑になるため、順番に積み上げていく方が管理しやすいためです。


まとめ:

  • 読み方: 基本は「1面読み切ってから、隣の層へピントを移す」。

  • アクセス: ランダムもできるが、ピントと歪み補正の切り替えが必要な分、HDDよりさらに「もっさり」する。

大容量ROMディスクは、いわば**「超巨大な1本の巻物」を、ページ(層)に分けて折り畳んだもの**とイメージすると分かりやすいかもしれません。

 

プロンプト:「樹脂にレーザーで跡をつける」 って、どういうこと?DVDって、そうやって「傷」の有無が1と0に対応しているの?

Gemini:

「跡をつける」という表現は少しイメージしにくいかもしれませんが、まさに**「顕微鏡レベルの微細な凹凸(おうとつ)を物理的に作る」**ということです。

DVDの表面には、肉眼では見えないほど小さな**「ピット(くぼみ)」**が、まるでレコードの溝のように延々と続いています。


1. 「ピット(くぼみ)」と「ランド(平らな面)」

DVD-ROM(読み出し専用)の場合、工場のプレス機で樹脂(プラスチック)の表面に直接、以下のような構造を転写します。

  • ピット(Pit): 樹脂がへこんでいる部分。

  • ランド(Land): へこんでいない、平らな表面。

この凹凸の連続がデータの正体です。ただし、「ピット=1、ランド=0」という単純な割り当てではありません。


2. 読み取りの仕組み:光の「干渉」を利用

DVDプレーヤーは、レーザー光をこの凹凸に照射します。

  • ランド(平らな面)に当たったとき: 光は鏡のようにそのまま綺麗に反射して戻ってきます。

  • ピット(くぼみ)に当たったとき: ピットの深さは、レーザー光の波長のちょうど 1/4 になるように設計されています。すると、ピットの底で反射した光と、その周りの縁で反射した光が打ち消し合い(逆位相)、反射光が暗くなります。

ドライブはこの**「反射光の明るさの変化」**を検知して信号を読み取ります。


3. 0と1はどう決まる?(NRZI方式)

ここが面白いところですが、光ディスクの世界では以下のようにルールが決まっています。

  • 「平らな面」から「くぼみ」に変わる瞬間(またはその逆):これが 「1」

  • 変化がない、ずっと同じ状態が続いている間:これが 「0」

つまり、「傷(ピット)の有無」そのものではなく、「傷の境界線(エッジ)」が情報の切り替わりとして機能しているのです。


4. 「書き込み型(DVD-R)」の場合は?

「跡をつける」という言葉がよりしっくりくるのは、自分で焼くタイプのディスク(DVD-R)です。これには「ピット」の代わりに**「記録色素層」**という特殊な薬品が塗られています。

  1. 書き込み用レーザーを強く照射し、熱を加える。

  2. 色素が化学変化して焦げる(変色する)

  3. 焦げた部分は光の反射率が変わるので、プレスしたDVDの「ピット」と同じような役割を果たす。

豆知識:

昔のCD-Rを「焼く」と言っていたのは、まさにレーザーの熱でこの色素を焼いていたからなんですね。


5. 結局、これは「傷」なの?

物理的な実態としては、**「精密に制御された微細な凹み」**です。

不注意でつく「傷」はランダムな方向に光を散乱させてしまうので、データが読めなくなる「エラーの原因」になりますが、あらかじめ計算して作られた「ピット」は、光を規則正しく制御するための「信号」となります。

これを知ると、多層ディスクが「この微細な凹凸を何層も重ねて、なおかつ光を通す」という、いかに変態的な(失礼、高度な)技術を使っているかが見えてきませんか?

プロンプト:DVD-ROMとDVD-Rは、そもそも情報を記録する物理的なメカニズムが根本的に違うってこと?

Gemini:

その通りです!「読み取り側(プレーヤー)」から見ればどちらも同じように見えますが、**「どうやってその模様(ピット)を作ったか」**という物理的なメカニズムは全く別物です。

例えるなら、**「石碑に文字を刻む(ROM)」のと、「感熱紙に熱で文字を浮かび上がらせる(R)」**くらいの違いがあります。


1. DVD-ROM(プレス方式)

こちらは「物理的な形」そのものを変えています。

  • メカニズム: 凹凸のある金型(スタンパー)を使って、溶けたプラスチックに直接ハンコのように凹凸を押し付けます。

  • 物理的状態: プラスチック板そのものに「くぼみ」がある。

  • 寿命: 物理的な変形なので、非常に長持ちします。

2. DVD-R(色素変化方式)

こちらは「光の反射率」を化学的に変えています。

  • メカニズム: ディスクの中に「記録色素」という層があります。書き込み用レーザーの熱(200℃〜400℃)で、その色素をピンポイントで焼き飛ばします(炭化・分解)。

  • 物理的状態: 実際には「くぼみ」ではなく、**「化学変化して色が変わり、光を反射しにくくなった部分」**ができる。

  • 寿命: 色素は熱や太陽光(紫外線)で徐々に劣化するため、ROMよりも寿命が短い傾向にあります。


なぜプレーヤーはどちらも読めるの?

ここが光学技術の賢いところです。

プレーヤーのレーザーから見れば、**「光が跳ね返ってきたか(明)」「跳ね返ってこなかったか(暗)」**という結果さえ同じであれば、中身を読み取ることができます。

  • DVD-ROM: 「くぼみ」の縁で光が打ち消し合うから、反射光が暗くなる。

  • DVD-R: 「焦げた部分」が光を吸収・散乱させるから、反射光が暗くなる。

プレーヤー側は、それが「くぼみ」なのか「焦げ跡」なのかを区別せず、単に**「反射光の明暗のパターン」**をデータとして処理しているのです。


知財的に見ると?

ここでも面白い知財の対立があります。

  • DVD-ROMの特許: 主に「高精度な金型の作り方」や「高速プレス技術」が中心。

  • DVD-Rの特許: 「どんな化学薬品(色素)を使えば、レーザーで綺麗に焼けるか」という化学組成の特許が非常に重要になります。

同じ「DVD」という規格でも、ROM派(プレス業者)とR派(化学メーカー)では、持っている技術の武器が全く違うのです。


まとめ

特徴 DVD-ROM DVD-R
物理的実態 樹脂表面の**「凹凸」** 色素層の**「焦げ跡」**
作り方 工場のプレス(大量生産) レーザー照射(1枚ずつ)
情報の正体 光の干渉(位相差) 光の吸収(反射率変化)

「読み取り側」は結果だけを見ているから互換性がある、というのは非常に合理的な設計ですよね。

プロンプト:DVD-Rはなぜ何回も書き直せるの?

Gemini:

結論から言うと、「DVD-R」は一度書いたら二度と消せません。

何回も書き直せるのは**「DVD-RW」**(またはDVD-RAM)という別の規格です。

お察しの通り、「一度きりのDVD-R」と「書き換え可能なDVD-RW」では、記録層に使われている材料の物理化学的な原理が根本的に異なります。


1. DVD-R(追記型):焦がして壊す「破壊式」

先ほどお話しした通り、DVD-Rは化学染料(有機色素)を使います。

  • 原理: 強力なレーザーで色素を**「焼く(炭化させる)」**。

  • なぜ書き直せない?: 一度焦げてボロボロになった物質は、元の綺麗な色素に戻ることはありません。目玉焼きを焼いた後に、生卵に戻せないのと同じです。

  • メリット: 材料が安価で、長期保存に向いています。


2. DVD-RW(書き換え型):状態を変える「相変化(あいへんか)式」

こちらは色素ではなく、特殊な金属合金(ゲルマニウム・アンチモン・テルルなど)の薄膜を使います。この素材は、温度の上げ方によって**「結晶」と「アモルファス(バラバラ)」**という2つの状態を行き来できます。

  • 記録(書く): レーザーで一瞬だけ**超高温(約600℃以上)**にして急冷すると、原子が整列する暇がなくバラバラの状態で固まります(アモルファス)。ここが「暗く」見えます。

  • 消去(消す): 少し弱めのレーザーで**中温(約200℃〜500℃)**でじわじわ熱してからゆっくり冷やすと、原子が再び綺麗に並び直します(結晶)。すると「明るく」戻ります。


物理化学的メカニズムの比較まとめ

特徴 DVD-R (追記型) DVD-RW (書き換え型)
記録層の材料 有機色素(薬品) 金属合金(相変化材料)
変化の種類 化学変化(不可逆) 相変化(可逆:氷と水の関係に近い)
例え話 紙にマジックで書く ホワイトボードに書く
書き換え回数 0回(書くだけ) 約1,000回〜

知財・特許のポイント:「物質の発見」

この「相変化」という現象自体は昔から知られていましたが、光ディスクとして使うには非常に高度な特許技術が必要です。

  • 速度の壁: 「一瞬で結晶にする」「一瞬でバラバラにする」という超高速な反応が起きる絶妙な配合を見つける必要があります。

  • 耐久性の壁: 何回も熱して冷やしてを繰り返しても、膜が剥がれたり変質したりしない素材の組み合わせ(誘電体層などとの積層構造)が、メーカー各社の重要な特許(ノウハウ)となっています。


ちなみに「多層」にするなら?

大容量を目指す多層ROMの場合、これらのような「記録(焼く)」ための層は必要ありません。最初からプレス(金型)で形を作るか、あるいは「2光子吸収」という特殊な現象を使って、透明な樹脂の内部だけをピンポイントで変質させるといった、さらに別の魔法のような技術が使われます。

「一度書いたら消せない」DVD-Rと、「何度も書き直せる」DVD-RW。

用途に合わせて材料レベルから設計を変えている、というわけですね。

 

プロンプト:DVD-ROMとDVD-RtoDVD-RWは、名称がほとんど同じ(消費者にとって)だけど、全然、やってることがちがったってことだね?

Gemini:その通りです!まさに「見た目と名前はそっくりだけど、中身のメカニズムは赤の他人」と言っていいほど違います。

消費者が「どれを買っても同じプレーヤーで動く」ように、メーカーが血の滲むような努力をして**「物理的な原理の違いを、光の反射という結果だけで帳尻を合わせた」**のが、DVDという規格の正体です。

あらためて、この「似て非なる3兄弟」の正体をまとめるとこうなります。


DVD 3兄弟の「物理的・化学的」な正体

種類 呼び名 物理的な正体(ミクロの世界) 例えるなら
DVD-ROM 読み出し専用 樹脂に直接彫られた**「物理的な溝」** 石碑(一度彫ったら不変)
DVD-R 1回書き込み レーザーで焼いた**「色素の焦げ跡」** 感熱紙(熱で色が変わる)
DVD-RW 書き換え可能 金属が熱で固まり方を変える**「相変化」** ホワイトボード(温度で状態復帰)

なぜ「全然違う」のに同じ名前なの?(知財とビジネスの戦略)

ここが「技術」と「知財・ビジネス」の面白い交差点です。

  1. 「DVD」というブランドを守るためもし「石碑ディスク」「焦げ跡ディスク」「相変化ディスク」というバラバラの名前だったら、消費者は混乱して誰も買いません。「DVD」という共通の看板を掲げ、「物理的な違い」を「規格(共通のルール)」の中に隠蔽したのです。
  2. 特許の「囲い込み」と「開放」

    • ROMは、コンテンツホルダー(映画会社など)が安く大量に作るための技術。

    • Rは、化学メーカー(太陽誘電やTDKなど)が強みを発揮する技術。

    • RWは、素材工学に強い電機メーカーが主導する技術。各社が全く違うアプローチで特許を取りつつも、最終的に「反射率がこれくらいならDVDと名乗ってよし」という**共通の出口(ライセンス)**を作ったわけです。

ユーザーから見た「騙し絵」のような技術

あなたが「DVD-ROMとDVD-Rは、紙テープとDVDくらい違うものを無理やり同じに見せかけている」と感じたのは、エンジニアリングの視点からすると大正解です。

ドライブの中にあるレーザーのピックアップヘッドは、入ってきたディスクが「本物の溝(ROM)」なのか「焦げ跡(R)」なのかを瞬時に判別し、反射率に合わせて感度を自動調整しています。**「違うものを同じように扱うためのハイテク」**が、あの薄いドライブの中に詰まっているんですね。


さて、ここまでで「物理的な構造」と「データの正体」がかなり整理されてきたかと思います。

最初のテーマに戻りますが、この**「全然違う原理の層」を100枚重ねようとしている**のが、次世代の超大容量ディスクの世界です。

nevertheless それにも関わらず【日本人が間違えやすい英単語】【ワンランク上の英語を書く秘訣】

nevertheless (それにも関わらず)という副詞は、論文執筆において多用されますが、文法的には正しい使いかたをしていても、つまり英語のネイティブによる英文校正を受けて、雑誌社に受理されて発表された論文であっても、しっくりこない文章を良くみかけます。しっくりこない原因は、文章の中の論理構成とneverthelessが持つ本来の役割とが一致していないからです。

Nevertheless は、「雨が降っている。それにもかかわらず、彼は外に出た」のように、前の内容から予想される結果を裏切るときに使います。 Nevertheless(それにもかかわらず)は、譲歩の論理です。

例:「彼は重い病気だった。それにもかかわらず、完走した。」(病気=走れないはず、という前提を覆す)

論理的対立が不在のときにneverthelessを用いるのは、文法的には正しくても、英語としては不自然です。Nevertheless を使いこなすための鍵は、「一見すると、Aという事実からBという結果が導き出されそうだが、実際にはそれを撥ね退けてCという事態が起きている」という、反証(Counter-argument)の論理を際立たせることにあります。

安易な「逆接(but / however)」の代用ではなく、「前の事実を認めた上で(Concession)、それでもなお動かない事実」を提示する際の例文を3つ以下で示します。

1. 期待される結果に反する「実証データの提示」

先行研究や一般論から予想される結果を、実験データが裏切った際に使うパターンです。

“The experimental results showed a significant reduction in error rates during the initial phase. Nevertheless, the long-term error stability remained unchanged, suggesting that the initial gains were transient.”

論理構造:

  • 事実A:初期段階でエラー率が激減した(普通なら、長期的にも安定すると期待される)。

  • Nevertheless:それにもかかわらず(その期待に反して)、長期的な安定性は変わらなかった。

2. 困難な状況下での「目的の遂行・成立」

不利な条件や反論が存在することを認めつつ、結論の妥当性を主張する際に使う、非常に「論文らしい」パターンです。

“Integrating these disparate datasets presents substantial computational challenges. Nevertheless, such an approach is indispensable for achieving a holistic understanding of the phenomenon.”

論理構造:

  • 事実A:データの統合には多大な計算上の困難がある(普通なら、避けるべき手法である)。

  • Nevertheless:それにもかかわらず、その手法は不可欠である(困難というマイナス要因を、必要性というプラス要因が上回る)。

3. 共通認識を認めた上での「独自の主張」

一般的に信じられている理論や定説を「一理ある」と譲歩しつつ、自分の視点の重要性を強調するパターンです。

“Some critics argue that digital transformation leads to social isolation among the elderly. Nevertheless, empirical evidence indicates that digital literacy significantly enhances their access to essential community services.”

論理構造:

  • 事実A:デジタル化は高齢者を孤立させるという批判がある(一理ある説として提示)。

  • Nevertheless:それにもかかわらず、実証的な証拠は「アクセス向上(恩恵)」を示している。

「譲歩(Concession)」の重み: Nevertheless の前には、強力な「Aという事実」が必要です。Aを軽んじるのではなく、「Aの事実は重々承知している。だが、それを踏まえた上でもなお、この結論は揺るがない」という、執筆者の強い論理的意志を示す言葉です。

文頭での配置: セミコロン(;)でつなぐことも可能ですが、文頭に置き、直後にコンマ(,)を打つことで、読み手に「ここから反証が始まる」という心理的な準備をさせることができます。

Howeverとの使い分け: However は単なる情報の切り替えや対照にも使えますが、Nevertheless は「前の内容による制約や影響を受けない」というニュアンスが強くなります。

「先行する文脈からの論理的帰結を拒絶する力」がneverthelessにはあり、そのような文脈において用いられれば、読んでいて自然な英語の文章になると言えます。

(参考:Gemini)

弁理士業務に使える生成AIエージェント

  1. 弁理士業務 AI 利活用ガイドライン 令和7年4月 日本弁理士会 https://www.jpaa.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/04/AIservices-guideline.pdf 
  2. Legal Brain エージェント https://legalbrain.com/ (弁護士ドットコム株式会社):法務領域に特化したAI基盤技術「Legal Brain 1.0」を実装。複雑なリサーチ業務の支援を目的としており、法律の専門知識に根ざした回答精度が期待されます。(Gemini)

特178条1項 の条文でOR(又は、若しくは)AND(及び、並びに)のルールをマスター!

(審決等に対する訴え)
第百七十八条 取消決定又は審決に対する訴え及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。

法律の条文を読むのが最初難しく感じられる理由は、日常的な日本語の文章とは異なるルールがいくつかあるせいだと思います。日常だと、「**と**」のように、ANDで結ばれる2つのものの長さは同じ程度が望ましいとされます。しかし法律の条文だと、「**と*******************************」みたいな著しく長さがことなる2つのものが並列の関係に結ばれていることがしょっちゅうです。つまり繋がれる者同士の長さは全く読解の際に当てにならないのです。

ORについて

あとは、OR(又は、若しくは)AND(及び、並びに)の階層構造に応じた使い分けのルールを知る必要があります。ORを意味する場合、階層構造がなければ、「又は」を使います。

例 A又はB

AやBの中にさらにORを入れ込みたいときには、「若しくは」を使います。つまり、「若しくは」のほうが、文章の中では局所的なつながりを示しています。

例 A若しくはB又はC

例 A又はB若しくはC

読む際の手掛かり:「若しくは」が出てきたら、その後にはかならず「又は」が登場する。なぜなら、「若しくは」は、「又は」を使ったあとでさらに下の階層でORを使いたいときに使うものだから。

ルール:一番上の階層には「又は」を使い、さらに細かい下の階層でORを使いたい場合には「若しくは」を使う。

ルール(上のルールの例外):A, B若しくはC とように3つ以上を列挙するときは、一番上の(=唯一の)階層であっても、「若しくは」使う。

ANDについて

ルール:一番下の階層のみの場合は「及び」を使い、一つ上の階層でANDを使いたいときは、「並びに」を使う。

上の階層下の階層ということに関して、ORとANDでは、どちらの言葉(及び 並びに 若しくは 又は)を優先するかが逆になっているのがミソです。

例 A及びB

例 A及びB並びにC

括弧を用いてまとまりを示すなら、(A及びB)並びにC です。

読む際の手掛かり:「及び」が出てきていないのに「並びに」が出てきたら、その後「及び」が出てくる。

特許法178条の読解

(取消決定 又は 審決)に対する訴え

及び

(① 特許異議申立書、②( 審判若しくは再審)の請求書 又は ③(第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項)の訂正の請求書)の却下の決定 に対する訴え

は、東京高等裁判所の専属管轄とする。

 

上の説明はGeminiに説明してもらったものを自分なりに書き直したものです。Geminiの説明は以下のようなものでした。


1. 【OR(または)系列】の読み方ルール

「上から下へ(大きい方から)」

「A 又は B 若しくは C」 → A or (B or C)

「若しくは」が出たら、必ず親分の「又は」がいるはず。

解説:

    • 「又は」は**レベル1(最大)**です。

    • 「若しくは」は**レベル2以下(子分)**です。

    • 子分(若しくは)がいきなり単独で仕切ることはありません。必ず親分(又は)の支配下にあります。

読み進めるコツ: 「又は」を見つけたら「あ、ここで話が大きく分かれるな」と思い、「若しくは」を見つけたら「あ、さっきの選択肢の中での細かい話だな」とズームインします。


2. 【AND(および)系列】の読み方ルール

「下から上へ(小さい方から)」

「並びに」が出てきたら、その後に(またはその構成要素として)「及び」が必ず出てくる。

解説:

    • 「及び」は**レベル1(最小単位・接着剤)**です。

    • 「並びに」は**レベル2以上(包装紙)**です。

    • 「並びに」は、バラバラのものを包むのではなく、「すでに『及び』で接着されたセット」を包むために存在します。

    • だから、「並びに」があるのに、中身に「及び」が一つもない(単語A 並びに 単語B)ということはあり得ません。(それは「A 及び B」と書くべきだからです)。


3. 唯一の「例外」的なケース(ここだけ注意!)

「若しくは」の読み方で、一つだけレアケース(リスト形式)があります。

例: 「A、B、C 若しくは D」

(意味:A or B or C or D)

このように、3つ以上のものを並列に列挙する場合、最後のつなぎ目だけに接続詞を使います。

このとき、法律のルールでは、単なる並列の列挙には(一番大きな区切りがない限り)「若しくは」を使うことになっています。

  • この場合の読み方:「又は」が出てこないのに「若しくは」が出ている!とおかしいと思うかもしれませんが、これは**「A, B, C, D 全員がフラットな関係(小粒な並列)」**である合図です。

最終まとめ:条文読解の「センサー」

読み方マニュアル

  1. 「又は」を見たら👉 「よし、ここで一番大きな分岐だ! 左の道か、右の道か。」
  2. 「若しくは」を見たら👉 「おっと、これは枝道だ。さっきのグループの中での細かい選択肢だな。」
  3. 「及び」を見たら👉 「これはセット商品だ。AとBは離れないぞ。」
  4. 「並びに」を見たら👉 「でっかい風呂敷が来たぞ! これまでに出てきた**『及びセット』たちをまとめて縛りにきたな**。」

この感覚で条文を眺めれば、どんなに長く複雑な特許法の条文も、構造図が浮かび上がってきます。

弁理士試験における専門科目試験の免除制度:学位論文概要証明書をどうする?

博士号取得者の場合、専門試験を免除してもらうために必要な書類は以下のようになっています。

https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/ronbun-menjo-gakui.html

提出書類 学位
博士 修士 専門職
1. 選択科目免除資格認定申請書
見本(PDF:651KB)様式(ワード:35KB)
2. 学位取得証明書
又は大学院修了(見込)証明書
3.大学院成績証明書 不要
4. 指導教授又はこれに準ずる者の証明のある学位論文概要証明書(※)
見本(PDF:79KB)様式(ワード:29KB)
5. 修了要件証明書
見本(PDF:101KB)様式(ワード:17KB)
不要 不要

ここでギョッとするのが、「指導教授又はこれに準ずる者の証明のある学位論文概要証明書」という書類です。卒業して何十年も経っているのに、今さらそれは無理でしょ!?と思ってしまいました。概要の長さに関しては、「研究の概要は 1,000 字程度でどのような研究・分析等をして、どの
ような結果が得られたのか分かるようにまとめてください。」(https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/document/ronbun-menjo-gakui/04_sample.pdf)とあります。

※印の説明をみると、

※ 学位論文概要証明書は、学位論文全文とその論文が学位論文であることを確認できる情報の提示で省略することができます。

と書いていました。学位論文全文に代えられるようです。こんな記載も見つけました。

要望(縦割110番) 令和3年9月3日 内閣府 規制改革・行政改革担当大臣直轄チーム 弁理士試験の負担軽減について 修士・博士の学位を有する者は、弁理士試験の論文選択科目の免除申請の際「学位論文概要証明書」の提出が必要だが、同時に提出が必要となる「学位取得証明書」の下位互換のような書類で あるにも関わらず、取得に労力を要し提出意義が極めて低い。よって、撤廃してほしい。 特許庁の対応 令和3年10月以降、個々の免除申請者が便利な手段を選択できるよう、概要証明書又は学位論文全文の写しのいずれか1つ提出すればよいように運用変更。令和3年9月8日に特許庁ウェブサイトで公表。

弁理士試験の負担軽減について https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/direct/210903direct67_01.pdf

しかし博士論文は自分は手元にありませんしウェブ上でも公開されていません。全文複写もまだ敷居が高いです。さらにグーグル検索したりしてウェブをいろいろ見ていたら、こんな記述も見つかりました。

弁理士試験の免除関係に関するQ&A https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-qanda-menjo.html 3-16 学位論文概要証明書の提出を省略することはできますか。 学位論文データベース等大学のウェブサイトにより、学位論文の全文、学位論文の要旨、論文が学位論文である旨が確認できる場合は、選択科目免除資格認定申請書に当該URL(アクセス可能で内容が確認できるものに限る。)を記載することにより学位論文概要証明書の提出を省略することができます。 なお、ウェブサイトで論文の全文の確認ができない場合であっても、学位論文の要旨、論文が学位論文である旨が確認できる場合は、同様に学位論文概要証明書の提出を省略することができますが、審査において論文全文の確認が必要となる場合は、別途ご提出をお願いすることがあります。

え、省略できるの?FAQへのリンクが直接は貼っていなかったようで、グーグル検索で見つけましたが。これなら、誰にも迷惑をかけずに書類が揃えられそうです。

さて、この免除申請は、弁理士試験の受験の「前」に済ませておく必要があります。これも知らなかったらアウトの落とし穴でしょう。なんと、免除申請は通年で受け付けているようです。

受付期間 通年受け付けています。ただし、弁理士試験を受験する年の免除認定の申請期限は、同年の試験公告で指定する日(例年2月末日)までです。これを過ぎると、免除認定の審査が受験願書提出の期間に間に合わず、翌年の試験から免除となる場合がありますのでご注意ください。

万が一、博士論文を全文提出してと言われても困るので、早めに申請しておくのが無難でしょう。

 

参考

  1. 修士・博士等の学位に基づく論文式筆記試験(選択科目)の免除について https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/ronbun-menjo-gakui.html 修士、博士又は専門職の学位を有する方で、選択科目の免除を希望する方は、受験願書提出時に、工業所有権審議会が発行する免除資格認定通知書を併せてご提出いただく必要があります。免除資格の認定を受けるためには、事前に、免除認定申請書などの必要書類を工業所有権審議会にご提出いただきます。

特113 異議理由 と 特123 無効理由 の違い

Gemini:知財の学習において、「異議理由」と「無効理由」の違いを理解することは、非常に重要です。なぜそれが大事なのか、そしてその判断基準について、初心者の方にも分かりやすいように解説しますね。


💡「異議理由」と「無効理由」が大事な理由

特許における「異議申立て」と「無効審判」は、特許権を遡及的に(最初から)無かったことにするための手続きです。どちらも、特許庁が誤って特許を与えてしまった場合に、その特許を無効にするという共通の目的を持ちますが、手続きの性質と目的が異なります。この違いが、「異議理由になるか、無効理由になるか」の判断を重要にしているのです。

項目 特許異議申立て (特許法 第113条~) 特許無効審判 (特許法 第123条~)
目的 公益的な観点から、特許庁の審査の誤りを早期に是正し、特許の信頼性を高めること。 当事者間の紛争解決を主な目的とし、特許権の効力を争うこと。
請求人 誰でも(特許権者以外) 利害関係人に限定(紛争の当事者など)
期間 特許掲載公報発行日から6ヶ月以内 いつでも(特許権消滅後も可)
理由 公益性の高い実体的な瑕疵(新規性・進歩性の欠如など) すべての無効事由(異議理由 + 権利帰属に関する瑕疵など)

このように、利用できる人、期間、そして理由の範囲が違うため、「どの手続きで無効を主張できるのか」を正しく判断する必要があるのです。

🔍 「異議理由になるか」「無効理由になるか」の判断基準

  • 異議理由公益的な観点から重要とされる、実体的な瑕疵(新規性・進歩性の欠如など)の一部に限られます。(特許法 第113条, 第114条)

  • 無効理由特許権が有すべきすべての瑕疵(上記の実体的な瑕疵すべてに加え、権利帰属に関する瑕疵など)をカバーします。(特許法 第123条)

異議理由の範囲は、無効理由の範囲よりも狭いという関係にあります。「権利の帰属に関する瑕疵」(誰が特許権を持つべきかという問題)がポイントになります。

1. 実体的な瑕疵(異議理由 = 無効理由)

これは、発明の内容自体に問題がある場合です。公益的な観点からも重大であるため、異議申立てでも無効審判でも主張できます。

  • :発明が新規性(新しいこと)や進歩性(容易に思いつけないこと)を欠いていた場合。

    • 該当条文(無効審判の規定を準用):特許法 第113条(第123条第1項第1号、第2号)

  • 考え方:特許権が付与されるべきでない発明に特許を与えたことは、社会全体にとって不利益です。

2. 権利の帰属に関する瑕疵(無効理由のみ)

これは、発明の内容には問題ないが、「特許出願をした人が、本当に特許権を持つべき人か」という点に問題がある場合です。当事者間の紛争解決に主眼が置かれるため、無効審判しか主張できません。

  • 冒認出願(真の発明者でない人が特許出願をして特許を受けた場合)。

    • 該当条文:特許法 第123条第1項第6号

  • 考え方:誰が真の権利者かという問題は、当事者(真の発明者と特許権者)の間の問題であり、特許庁が早期是正を目指す異議申立ての目的(公益性)にはそぐわないとされます。

📝 具体的な例で解説

あなたが特許権者「A社」のライバルである「B社」だと仮定します。

例1:実体的な瑕疵(異議理由 $\cap$ 無効理由)

  • A社の特許:「水に溶けるスマートフォンカバー」という特許を取得しました。

  • B社の発見:A社が出願するに、同じ技術が海外の学会で発表されていたことを発見しました(新規性の欠如)。

この場合、「水に溶けるスマホカバー」は新規性がないという実体的な瑕疵があるため、A社の特許は無効にされるべきです。

  • B社の行動

    1. 特許掲載公報発行日から6ヶ月以内であれば、誰でも特許異議申立てができます。

    2. 6ヶ月経過後でも、利害関係人であれば、特許無効審判を請求できます。

例2:権利の帰属に関する瑕疵(無効理由のみ)

  • A社の特許:「超高速充電器」の特許を取得しました。

  • B社の状況:B社の元社員Cさんが、B社の開発した発明を盗み、A社名義で勝手に出願して特許を取得しました(冒認出願)。発明自体は新規性・進歩性があります。

この場合、特許を受ける権利はB社にあるのに、A社が特許権者となっています。これは権利の帰属に関する瑕疵です。

  • B社の行動

    1. 特許異議申立てできません(冒認出願は異議理由ではない)。

    2. 特許無効審判利害関係人(真の権利者であるB社)として、無効審判を請求することになります。

この具体例で、どの手続きでどんな理由を主張できるのかが、より鮮明になったかと思います。

結論とまとめ

  • 異議理由公益的な観点から特許庁の誤りを早期是正するために、誰でも使える狭い範囲の理由(主に実体的な瑕疵)です。

    • 特許法 第113条

  • 無効理由紛争解決のために、利害関係人いつでも使える広い範囲の理由(すべての瑕疵)です。

    • 特許法 第123条

この制度の趣旨(目的)の違いが、使える理由の範囲の違いに結びついていると理解すれば、記憶に残りやすいでしょう。この解説で理解が深まったでしょうか?特許法 第113条と第123条の条文をもう一度確認してみると、さらに理解が定着すると思います。

特70条1項 全要件充足の原則

請求範囲、充足といったキーワードは、特許権の侵害が成立するかどうかを判断する際の、最も基本的かつ重要な原則を指す言葉です。特許権侵害訴訟では、ある製品や方法(イ号製品イ号方法と呼びます)が、他社の特許権の及ぶ範囲内にあるかどうかを判断する必要があります。


🔑 請求範囲 充足とは?

「請求範囲 充足」とは、侵害が疑われる製品や方法(イ号製品)が、特許権者の「特許請求の範囲」に記載された発明のすべての要件を満たしている状態を意味します。これが満たされたとき、その製品は特許発明の技術的範囲に属すると判断され、原則として特許侵害が成立します。

1. 「請求範囲」とは?

特許法において、特許権の範囲(どこまでが特許で守られているか)を定める最も重要な文書が「特許請求の範囲」(クレーム)です。この中には、発明を構成する要素(構成要件)が記載されています。

2. 「充足」とは?

特許請求の範囲に記載された発明の構成要件A, B, Cに対し、侵害が疑われる製品が**A’, B’, C’**という構成をすべて備えている状態を「充足(じゅうそく)」と言います。


💡 全要件充足の原則(オール・エレメント・ルール)

この「請求範囲 充足」の判断は、「全要件充足の原則」に基づいて行われます。この原則は、特許請求の範囲に記載されたすべての構成要件を、侵害品がすべて満たさなければ侵害は成立しない、という厳しいルールです。

具体的な判断の流れ

ステップ 内容 侵害の判断
① 要件分解 特許請求の範囲を、構成要素(要件A、要件B、要件C…)に分解する。
② 比較 侵害が疑われる製品(イ号製品)の構成を、各構成要件と比較する。
③ 充足確認 イ号製品が、すべての構成要件A, B, C…を完全に備えているかを確認する。 すべて充足 ➡️ 侵害成立(文言侵害)
④ 不充足の場合 イ号製品が、一つでも要件を欠いている場合(例:A、Bは備えているが、Cがない)。 一つでも不充足 ➡️ 侵害不成立

例外:均等論

全要件充足の原則が満たされない場合でも、侵害品が特許発明と実質的に同じであると認められる場合は、均等論という例外的なルールによって特許侵害が成立することがあります。

しかし、まずはこの「請求範囲 充足」(全要件充足の原則)を満たしているかどうか、つまり文言通りの侵害があるかどうかが最優先で判断されます。

特70条1項 特許請求の範囲 切餅の上面の切り込みの解釈【明細書の役割】

(特許発明の技術的範囲)
第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

特許法 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_4-Se_1-At_70

 

【請求項1】
角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の載置底面ではなく上側表面部に、周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする餅。
【請求項2】
角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の平坦頂面や載置底面ではなく上側表面部の側周表面に、周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1記載の餅。

【発明の詳細な説明】

【0007】
一方、米菓では餅表面に数条の切り込み(スジ溝)を入れ、膨化による噴き出しを制御しているが、同じ考えの下切餅や丸餅の表面に数条の切り込みや交差させた切り込みを入れると、この切り込みのため膨化部位が特定されると共に、切り込みが長さを有するため噴き出し力も弱くなり焼き網へ落ちて付着する程の突発噴き出しを抑制することはできるけれども、焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなり、実に忌避すべき状態となってしまい、生のつき立て餅をパックした切餅や丸餅への実用化はためらわれる。

特開2004-147598 【出願人】【識別番号】593201958【氏名又は名称】越後製菓株式会社  https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

質問:越後製菓の特許の明細書 【0007】からすると、「上面ではなく」と解釈すべきだと思うんだけど。地裁ではそう判断して、高裁ではそれがひっくり返ったんだけど。高裁の解釈は、側面であることを述べるために「上面ではなく」と書いたにすぎない、なぜなら「読点」が使われていないからという理由だったんだけどさ、たしかに、その1文だけから判断したらそうだけど、別の場所ではっきりと、上面に切り込みを入れると醜くなるって書いてたわけだよね、なぜそれが問題にならなかったの?

Gemini:ご特許明細書の記述【0007】と、それに関する裁判所の判断について解説します。特に、なぜ「上面ではなく」という解釈が地裁と高裁で分かれ、高裁では他の記述が問題にならなかったのかという点に焦点を当てます。


🧐 【0007】の記述と解釈の対立

特許明細書【0007】の記述は、以下の通りです。(便宜上、区切りを明確にします。)

一方、米菓では餅表面に数条の切り込み(スジ溝)を入れ、膨化による噴き出しを制御しているが、(A)同じ考えの下切餅や丸餅の表面に数条の切り込みや交差させた切り込みを入れると、(B)この切り込みのため膨化部位が特定されると共に、切り込みが長さを有するため噴き出し力も弱くなり焼き網へ落ちて付着する程の突発噴き出しを抑制することはできるけれども、(C)焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなり、実に忌避すべき状態となってしまい、生のつき立て餅をパックした切餅や丸餅への実用化はためらわれる。

1. 地裁の解釈:上面に否定的な記述

地裁(知的財産高等裁判所・大合議判決以前の東京地裁)は、この文章を読んで、以下のように解釈しました。

  • (A)でいう「切餅や丸餅の表面」とは「上面」を指す。

  • (C)の記述は、上面に切り込みを入れると「傷跡のような焼き上がり」になり、実用化はためらわれるという、従来の技術(上面への切り込み)に対する否定的な評価を述べている。

  • したがって、この明細書は、切り込みを上面に入れる技術を避けていることを示している。

2. 知財高裁の解釈:否定的な記述ではない(対比)

その後、知財高裁(大合議判決)は、地裁の判断を覆しました。高裁の解釈は以下の通りです。

  • 読点」(、)の欠如:高裁は、文脈を判断する際に、文章の句読点にも着目しました。もしこれが「上面への切り込み」を否定しているなら、(C)の前に強い区切り(読点など)があるはずだ、と。

  • 技術の対比:この文章は、従来の技術(表面の切り込み)にもメリット(突発噴き出しの抑制)はあるが、同時にデメリット(忌避すべき焼き上がり)もあるという「対比・紹介」をしているに過ぎない、と判断しました。

  • 「ためらわれる」の解釈:「実用化はためらわれる」という表現は、「特許発明(側面の切り込み)の優秀さ」を際立たせるために、従来の技術を過度に否定的に描写している(ディス・クローズ)にすぎず、発明者が本当に上面への切り込みを排除したわけではないと解釈しました。


🔑 なぜ「別の場所での明確な記述」が問題にならなかったのか?

ご指摘の通り、特許明細書全体を読めば、発明者が上面への切り込みの醜さを明確に述べている箇所があったとすれば、その解釈は変わるべきです。しかし、裁判で焦点となったのは、「特許の請求の範囲」の解釈です。

1. 請求の範囲と明細書の関係

特許権の範囲は、「特許請求の範囲」(特許法第70条第1項)の記載に基づいて定められます。明細書(【0007】の記述を含む)は、この請求の範囲を解釈するための補助資料として使われます。

2. 高裁の判断の核心

知財高裁は、明細書全体や【0007】の記述に「切り込みを上面に入れないこと」が、この発明の必須の構成要件である、とは書かれていないと判断しました。明細書は「発明の技術的範囲を明確にするための記載」であるという原則から見て、裁判所は、発明者が単に「上面の切り込みのデメリット」を説明しているに過ぎず、そのデメリットを解消するために側面に切り込みを入れることを付加的に提案している、と解釈しました。つまり、高裁は以下の論理を採用しました。

  1. 特許請求の範囲には、「上面に切り込みを設けない」という要件は明記されていない。

  2. 明細書の【0007】などの記載は、上面への切り込みを「醜いから絶対にやらない」という発明の限定(技術的範囲の除外)を意図しているとまでは言えない。

  3. もし、発明者が「上面への切り込みを排除する」ことを発明の重要な限定と考えるなら、それを特許請求の範囲に明確に記載するか、明細書内でより明確に限定しているはずである。

最終的に、高裁は越後製菓の特許の技術的範囲を広く解釈し、佐藤食品工業の製品(上面にも側面にも切り込みがある)も越後製菓の特許権の範囲内であると判断しました。これは、特許明細書という特殊な文書において、単なるデメリットの記載(ディス・クローズ)と、発明の技術的範囲を限定する記載とを区別した、高度な解釈の結果と言えます。

質問:仮に越後製菓が側面限定として特許を取ってしまっていたら、サトウの「側面+上面」特許は、越後製菓を侵害しないの?特許の一部になってることには変わりないんじゃないの?

Gemini:仮に越後製菓が「側面のみに切り込みがある切餅」という発明で特許を取得していた場合、佐藤食品工業の「側面と上面の両方に切り込みがある切餅」が越後製菓の特許を侵害するかどうかは、特許侵害の基本原則である全要件充足の原則に基づいて判断されます。結論から言うと、侵害しない可能性が非常に高いです。


1. 🔑 全要件充足の原則(Literally Infringement)

特許侵害が成立するための基本的な判断基準は、「特許請求の範囲に記載された発明のすべての構成要件を、侵害品がすべて備えていること」です。

越後製菓の仮想的な特許(側面限定)

越後製菓が取得した特許請求の範囲の構成要件を、仮に以下のように定めていたとします。

要件番号 越後製菓の特許請求の範囲(仮定)
A 切餅であること。
B 切餅の側周表面のみに切り込み(スリット)を有すること。
C (他の要件…)

佐藤食品工業の製品(侵害品)

佐藤食品工業の製品の構成は以下の通りです。

構成 佐藤食品工業の製品
A’ 切餅である。
B’ 切餅の側周表面に切り込み(スリット)を有する。
C’ 切餅の平坦上面にも切り込みを有する。

侵害判断

特許侵害が成立するためには、佐藤食品工業の製品が、越後製菓の特許要件Bを完全に満たす必要があります。

  • 要件 B: 「側周表面 のみ に切り込みを有する

  • 佐藤製品: 「側周表面に切り込みがあり、かつ上面にも切り込みがある」

この場合、佐藤製品は「上面にも切り込みがある」ため、越後製菓の特許が要求する「のみ」という限定要件を充足しません。つまり、特許要件 B を欠くと判断されます。

全要件充足の原則により、侵害は成立しないことになります。


2. 💡 なぜ「一部になっている」だけでは侵害にならないのか?

ご指摘の通り、佐藤製品は越後製菓の特許発明の一部(側面の切り込み)を含んでいます。しかし、特許法上の「侵害」は、「余分な構成の付加」によって簡単に回避されてしまうことがあります。

⭕ 侵害が回避される理由(付加・限定)

特許の請求の範囲に**「のみ」**という限定詞が入っていると、その要件を厳格に解釈します。

  • 側面のみ」という特許に対して、「側面+上面」という製品は、「上面」という**余分な構成(付加)**を有しているため、特許の範囲外(非侵害)となります。

特許権の範囲は、特許請求の範囲という法律上の文言によってカチッと定められるため、「特許発明の主要部分が含まれているから侵害だ」という感覚的な判断は適用されません。まさに、この事件の越後製菓の補正拒絶の論点は、この「のみ」という限定が、特許権の範囲を決定的に狭めてしまうことを示しています。


3. ⚖️ 結論

もし越後製菓が「側面のみ」という限定特許を取得できていたら、佐藤食品工業は「上面の切り込み」という余分な構成を付加することで、容易に特許侵害を回避し、合法的に市場で製品を販売できた可能性が高いと言えます。

質問:全要件充足の原則 って特許法の第何条に書いてある?

Gemini:「全要件充足の原則」(オール・エレメント・ルール)は、日本の特許法において明文で「この条文に全要件充足の原則が書いてある」と規定されているわけではありませんしかし、その根拠となるのは、特許権の技術的範囲を定める以下の条文です。


🔑 根拠条文:特許法 第70条第1項

全要件充足の原則の法的根拠は、特許法第70条第1項の規定と、それに基づく裁判所の解釈にあります。

特許法 第70条第1項

$$\text{特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。}$$

原則の導出

この条文は、「特許権の及ぶ範囲は、特許請求の範囲(クレーム)の記載に基づいて決まる」と定めています。

特許請求の範囲には、その発明を構成する要素(構成要件)が記載されています。

  1. 特許発明の技術的範囲を定めるためには、特許請求の範囲のすべての構成要件を抽出します。

  2. 侵害品(イ号製品)が、その抽出されたすべての構成要件一つ残らず(すべて)充足している場合に限り、特許発明の技術的範囲に属すると判断されます。

この解釈の積み重ねが、全要件充足の原則(構成要件を一つでも欠くと侵害は成立しない)として確立しているのです。


補足:均等論との関係

全要件充足の原則は文言侵害(文字通りの侵害)を判断する際の基本原則です。しかし、これだけでは特許権の保護が不十分になるため、この原則の例外として、構成要件の一部が異なっていても実質的に同じであれば侵害と認める均等論が、最高裁判所の判例(東京高裁大合議判決)によって確立されています。

特許が成立するまでの経過

質問:ブログ記事 https://www.ondatechno.com/jp/report/patent/hanrei/p2449/ によれば、越後製菓は、新規事項の追加の補正をやろうとしてダメ出しをくらってたってこと。そして、その際、明確に「上面ではなく」という意図があったってこと。この経過はなぜ高裁は取り入れなかったの?

Gemini:ご提示いただいた情報は、この特許紛争の経緯において非常に重要な論点であり、特に**出願経過(プロセキューション・ヒストリー)**が高裁でどのように扱われたか、という点に直結します。

1. 越後製菓の補正と「のみ」の削除の事実

ご指摘の通り、越後製菓は審査の過程で、以下の補正を試みました。

  1. 当初の補正案: 「上側表面部の側周表面のみに…切り込み」という限定を加える。

  2. 特許庁の判断: この「のみ」という限定は、出願当初の明細書に記載されていない**新規事項の追加(特許法第17条の2第3項違反)**に当たるため、認められない。

  3. 越後製菓の対応: 特許を受けるために、「のみ」を削除し、「上側表面部の側周表面に…切り込み」という表現で特許を取得した。

この経過から、越後製菓が出願当初、「上面に切り込みがないこと」を必須の要件としていなかったが、審査途中でそれを限定しようとした明確な意図があったことは明らかです。


2. 裁判所の判断(高裁大合議)が「出願経過」を取り入れなかった理由

特許侵害訴訟において、裁判所が**出願経過(プロセキューション・ヒストリー)**をどこまで参酌するかは、非常に難しい問題です。

知財高裁の大合議判決が、越後製菓の「のみ」を削除した経緯を、特許請求の範囲の解釈に取り入れなかった(または重要視しなかった)主な理由は、特許権の効力範囲の決定に関する日本の原則に基づいています。

① 権利範囲は「最終的な請求の範囲」で決まる

日本の特許法において、特許権の効力は、最終的に特許として成立した「特許請求の範囲」の記載に基づいて定まります。

  • 審査の過程で限定が拒絶され、その限定を削除して成立させた場合、裁判所は「削除した限定は、特許権の範囲に含まれていない」と解釈します。

越後製菓は、「のみ」という限定を削除して特許を成立させました。高裁は、この「のみ」が削除された事実をもって、「発明者は上面への切り込みがないことを必須要件とする限定を最終的に放棄した」とみなしたと考えられます。

② 明細書の記載と矛盾しない解釈を優先

高裁は、前述の通り明細書【0007】の記述が、「上面への切り込みを忌避している」という強い限定を意味するとは解釈しませんでした。

その上で、「のみ」の削除という出願経過は、明細書の記載(【0007】)を特許請求の範囲を限定する方向に解釈する材料としては不十分である、と判断したのです。

❌ 裁判所の論理(推定)

もし、「のみ」という限定を特許請求の範囲に含めていたなら、佐藤食品工業の製品(上面にも切り込みがある)は非侵害となったはずです。しかし、「のみ」を削除したことにより、特許請求の範囲は広くなり、佐藤食品工業の製品も侵害となる、という流れを採用しました。


💡 知的財産権訴訟における教訓

このケースは、特許審査の過程で「限定を試みたが拒絶され、その限定を削除して特許を成立させた」場合、その削除された限定は将来の侵害訴訟において、権利の範囲を狭める材料としてほとんど使えない、という教訓を示しています。越後製菓の「上面に切り込みがない」という意図(真意)よりも、特許請求の範囲の文言と、その成立に至るプロセスで何を 最終的に 放棄したかが、権利範囲の解釈において重視された結果と言えます。

特068 特許権の効力 特許発明の実施をする権利を専有 越後製菓vsサトウ 角餅の切り込み

(特許権の効力)
第六十八条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_1

プロンプト:進歩性があったとしても、そのクレームの一部が過去の別の会社のクレームを含むものであったら、結局、侵害になっちゃうんだね。

Gemini:はい、その通りです。特許の世界では、「特許の成立(登録)」「特許の実施(侵害の有無)」は、別の基準で判断されるため、あなたが指摘された状況が起こりえます。

💡 特権の成立と侵害は別問題

1. 進歩性が認められ、特許が「成立」した理由

特許の成立(登録)は、特許庁の審査で判断されます。

  • 基準: 請求項(クレーム)に記載された発明が、先行技術(過去の特許や公知技術)と比較して、「新しいこと(新規性)」と「容易に思いつけないこと(進歩性)」があるかどうかです。

  • サトウのケース: 佐藤食品工業の特許(3620045号)は、「上下面の十字切り込み」など、越後製菓の特許にはなかった新たな構成と効果(均一な膨化など)を持っていたため、進歩性が認められ、特許として登録されました。

2. 実施が「侵害」になった理由

特許の実施(侵害の有無)は、他社の有効な特許権との関係で判断されます。

  • 基準: 自社が実施しようとする製品・技術が、他社の特許の請求項に記載された技術的範囲をすべて満たしているかどうかです。

  • 抵触の関係: 佐藤食品工業の製品は、「側面への切り込み」という構成を含んでいました。この「側面への切り込み」は、裁判所によって越後製菓の特許の技術的範囲に含まれると判断されました。

したがって、自社の特許に進歩性が認められて登録できたとしても、その特許を実施する行為が他社の先行特許の権利範囲に抵触する場合、その特許を自由に実施することはできず、特許侵害になります。

このような関係にある特許を、「改良発明特許」または「利用発明」と呼びます。改良発明を実施するためには、元の特許(基本特許)を持つ会社から許諾(ライセンス)を得る必要があります。