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生成AIが共感的なコミュニケーションに長けている理由
プロンプト:生成AIって、Empathyを重視した回答になるように設計されてない?
Gemini:
はい、その通りです。多くの対話型生成AIは、結果として**「Empathy(共感)を重視している」ように見える回答**を生成するよう、強く設計・調整されています。
ただし、それはAIが人間のように感情を「感じている」わけではありません。
なぜ共感的に設計されているのか?
主な理由は「AIの目的」と「安全性」にあります。
1. ユーザー体験(UX)の向上
AIの第一の目的は、ユーザーの役に立つこと(Helpful)です。
- ユーザーが質問や悩みを打ち明けたとき、機械的で冷たい回答を返すよりも、意図や感情を汲み取って寄り添う姿勢(のように見える言葉遣い)を選ぶ方が、ユーザーは安心感を持ちます。
- 共感的な態度は、ユーザーが「このAIは自分の言いたいことを理解してくれている」と感じさせ、よりスムーズな対話や問題解決につながります。
2. 安全性と倫理(Harmless)
AIがユーザーを傷つけたり、不快にさせたりしないこと(Harmless)は、設計上の最優先事項の一つです。
- 共感の欠如は、ときに「無神経」「冷酷」「攻撃的」な回答と受け取られかねません。
- AIが、ユーザーの立場や感情を無視した(ように見える)回答をしないよう制御することは、「無害性」を担保するために不可欠です。
AIの「共感」の正体
AIが感じているのは、人間の「感情移入」とは異なります。
AIは、膨大なテキストデータ(人間同士の会話、書籍、ウェブサイトなど)を学習しています。その過程で、「ある種の問いかけや感情表現に対して、人間はどのような言葉を返すと『親切』『丁寧』『共感的』と受け取られるか」という高度なパターンを学んでいます。
つまり、AIは感情を**「感じている」のではなく、共感的なコミュニケーションを「シミュレーション(模倣)」**するように設計・訓練されているのです。
(Gemini 2.5 Pro)
共感的なコミュニケーションは難しいものですが、生成AIに学べるのであれば、人間も同様に学べそうですね。先に学んだ生成AIを師として、今度は人間が生成AIから学べばよさそうです。
素粒子物理学の教科書
素粒子物理 パリティ物理学コース 牧二郎・林浩一 丸善 1995年 図書館で借りましたが200ページ余の薄さで、しかもスッキリとしたレイアウトなので読みやすいです。序説の素粒子物理学の進展の歴史が概観されているのも興味深いものがあります。
素粒子・原子核物理入門 改訂新版 (SPRINGER UNIVERSITY TEXTBOOKS) 単行本 – 2012/2/29 B. ポッフ (著), K. リーツ (著), C. ショル (著), 柴田 利明 (翻訳)
腹側腸間膜
発生の初期には「腹側腸間膜」も存在します。しかし、そのほとんどは発生が進むにつれて退化してなくなってしまいます。
発生学の教科書でよく描かれているのは、主に**「背側腸間膜」**です1111。これは、消化管を体の背中側の壁につなぎとめる、より広範囲に残る腸間膜です。発生の模式図では、この主要な背側腸間膜が強調して描かれることが多いです。
腹側腸間膜の運命 🗺️
発生の初期段階では、消化管は背側と腹側の両方の腸間膜によって体壁に固定されています。
- 背側腸間膜 (Dorsal Mesentery): 消化管の全長にわたって存在し、成長して小腸間膜や横行結腸間膜など、成体のお腹の中に見られる広範な膜になります。
- 腹側腸間膜 (Ventral Mesentery): こちらは、消化管の前方部分(将来の胃や十二指腸の上部あたり)にしか存在しません。肝臓がこの腹側腸間膜の中に発生・成長してくるため、腹側腸間膜は肝臓によって2つに分けられます。
- 肝臓と腹壁をつなぐ部分 → 鎌状間膜 (falciform ligament) として残ります。
- 肝臓と胃をつなぐ部分 → 小網 (lesser omentum) として残ります。
これら以外の大部分の腹側腸間膜は消滅してしまうため、成体では背側腸間膜ほど広範囲には見られません。
単純化のために教科書に描かれていなくても、実際には腹側にも腸間膜が存在し、それが肝臓周りの重要な構造を形成する、と理解しておくと良いでしょう。
(Gemini)
mesendodermマスター遺伝子(EMTマスター遺伝子)Eomesの役割
疑問:転写因子Eomesは、Eカドヘリンをダウンレギュレーションさせるが、タイトジャンクションの要素であるZO-1も同様に発現が落ちるのか?
Consensus:
EomesによるEカドヘリンのダウンレギュレーション時、ZO-1も同様に発現が低下する可能性が高いです
EMT(上皮間葉転換)におけるEカドヘリンとZO-1の発現変化
- EMTが進行すると、Eカドヘリン(CDH1)とタイトジャンクション構成因子ZO-1(TJP1)はともに発現が低下することが多くの研究で示されています (Chen et al., 2016; Wanna-Udom et al., 2024)。
- 例えば、HMGB1によるEMT誘導実験では、EカドヘリンとZO-1の両方がmRNA・タンパク質レベルで同時にダウンレギュレーションされることが確認されています (Chen et al., 2016)。
- EMTを抑制する因子(ARID1Aなど)を過剰発現させると、EカドヘリンとZO-1の発現がともに上昇し、細胞の移動能が低下します (Wanna-Udom et al., 2024)。
Eomesの役割と推察
- Eomesは中胚葉誘導やEMT促進に関与し、Eカドヘリンの発現抑制を通じて細胞接着性を低下させます。
- EMTの分子マーカーとしてEカドヘリンとZO-1の同時低下が広く観察されているため、EomesによるEカドヘリンのダウンレギュレーション時には、ZO-1も同様に発現が落ちる可能性が高いと考えられます (Wanna-Udom et al., 2024; Chen et al., 2016; Zeisel et al., 2018)。
EMTにおける主要マーカーの変化
マーカー | EMT時の変化 | 関連論文 |
---|---|---|
Eカドヘリン | 低下 | (Wanna-Udom et al., 2024; Chen et al., 2016) |
ZO-1 | 低下 | (Wanna-Udom et al., 2024; Chen et al., 2016; Zeisel et al., 2018) |
ビメンチン | 上昇 | (Wanna-Udom et al., 2024; Chen et al., 2016) |
Figure 1: EMT時のEカドヘリン・ZO-1・ビメンチンの発現変化
結論
EomesがEカドヘリンをダウンレギュレーションする状況では、ZO-1も同様に発現が低下する可能性が高いです。これはEMTの一般的な分子メカニズムに基づくものであり、多くの細胞種や発生段階で共通して観察されています。
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References
Wanna-Udom, S., Aluksanasuwan, S., Somsuan, K., Mongkolwat, W., & Sakulsak, N. (2024). ARID1A overexpression inhibits colorectal cancer cell migration through the regulation of epithelial‑mesenchymal transition. Molecular Medicine Reports, 30. https://doi.org/10.3892/mmr.2024.13325
Chen, Y., Statt, S., Wu, R., Chang, H., Liao, J., Wang, C., Shyu, W., & Lee, C. (2016). High mobility group box 1-induced epithelial mesenchymal transition in human airway epithelial cells. Scientific Reports, 6. https://doi.org/10.1038/srep18815
Zeisel, M., Dhawan, P., & Baumert, T. (2018). Tight junction proteins in gastrointestinal and liver disease. Gut, 68, 547 – 561. https://doi.org/10.1136/gutjnl-2018-316906
LEF1とLefty1は別物?
似た名前の物質が同時に出てくると非常に紛らわしいですが、LEF1とLefty1は別物です。
Excellent question — and it’s a very common source of confusion because LEF1 and Lefty1 sound deceptively similar but are completely different genes.
🧬 LEF1 (Lymphoid Enhancer-binding Factor 1)
- Full name: Lymphoid Enhancer Factor 1
- Family: Member of the LEF/TCF transcription factor family
(includes LEF1, TCF7 (TCF-1), TCF7L1 (TCF-3), TCF7L2 (TCF-4)) - Pathway: Canonical Wnt/β-catenin signaling
- LEF1 binds DNA at Wnt-responsive elements.
- When Wnt signaling is active, β-catenin binds LEF1 → co-activates target genes (e.g., Axin2, Cyclin D1, Myc).
- Role in development: Cell fate specification, axis formation, hair follicle and hematopoietic development.
- Type: Transcription factor
🧫 Lefty1 (Left–Right Determination Factor 1)
- Full name: Left-Right Determination Factor 1
- Family: Member of the TGF-β superfamily, closely related to Nodal antagonists (Lefty1, Lefty2, Cerberus).
- Pathway: Nodal/Activin signaling
- Lefty1 is a secreted protein that antagonizes Nodal by binding either Nodal itself or its co-receptors.
- Role in development: Establishing left–right asymmetry, controlling the spread of Nodal activity during gastrulation.
- Type: Secreted morphogen (signaling inhibitor)
✅ In summary
Gene | Full Name | Pathway | Function | Protein Type |
---|---|---|---|---|
LEF1 | Lymphoid Enhancer Factor 1 | Wnt/β-catenin | DNA-binding transcription factor | Nuclear TF |
Lefty1 | Left-Right Determination Factor 1 | Nodal/TGF-β | Secreted Nodal antagonist | Secreted protein |
So:
LEF1 belongs to the LEF/TCF transcription factor family, not to Lefty1.
They are unrelated in both function and pathway — one is a nuclear transcription factor, the other is a secreted signaling molecule.
nodalの標的遺伝子の中にはnodalだけでなくwnt3も含まれているか?
発生学の勉強をしていて、nodalの標的遺伝子の中にはnodalが含まれるという記述をみかけたのですが、nodalと協調してはたらくwnt3もやはりnodalの標的遺伝子の一つになっているのでしょうか?
その答えは、この論文のグラフィカルアブストラクトにはっきりと描かれていました。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1934590916303423
NodalはWnt3遺伝子の転写を活性化します。Wnt3は細胞外に分泌され、自身がそれをうけとりβカテニンを介してnodalシグナル経路のSmadと協働してEomesなどの中内胚葉(mesendoderm)の分化に必須の遺伝子を活性化します。
以下、Consensusによるまとめ:
NODALシグナルはWnt3遺伝子発現を活性化する:発生生物学における分子ネットワークの解明
NODALシグナル伝達は、胚発生や細胞分化の制御において中心的な役割を果たします。近年の研究により、NODAL/ActivinシグナルがWnt3遺伝子の発現を直接誘導し、その後のWNT経路活性化を通じて発生プログラムを制御する分子メカニズムが明らかになってきました。
NODALシグナルによるWnt3発現の直接誘導
NODAL/ActivinシグナルのエフェクターであるSMAD2は、Wnt3遺伝子のエンハンサー領域に結合し、クロマチンの開放とともにWnt3の発現を迅速に誘導します。特に、SMAD2と転写因子ZIC3の協調作用により、NODAL/Activin刺激後1時間以内にWnt3の発現が開始されることが示されています (Coda et al., 2022)。
Wnt3の役割とNODALシグナルとの協調
誘導されたWNT3は、WNT/β-カテニン経路を活性化し、遅延型NODAL/Activin標的遺伝子(EomesやTなど)の発現に必須です。Wnt3のノックダウン実験では、これら遅延標的遺伝子の発現が著しく低下することが確認されており、NODALとWNT経路の協調的な作用が発生運命決定に不可欠であることが示唆されています (Coda et al., 2022; Wang et al., 2017)。
発生分化における統合的ネットワーク
p53ファミリーもWnt3の発現制御に関与し、NODAL-SMAD2/3とWNT-TCF3の転写因子が協調して分化遺伝子のエンハンサーに結合します。Wnt3の発現開始は、胚発生の重要なタイミングと一致し、NODALとWNT経路の相互依存的な活性化が胚葉分化を駆動します (Wang et al., 2017)。
Wnt3発現制御の分子メカニズム
シグナル経路 | 主要因子 | Wnt3発現への影響 | 引用 |
NODAL/Activin | SMAD2, ZIC3 | 直接誘導 | (Coda et al., 2022) |
p53ファミリー | p53, p63, p73 | 直接誘導 | (Wang et al., 2017) |
WNT/β-カテニン | TCF3 | 下流標的活性化 | (Wang et al., 2017) |
Summary
NODALシグナルはSMAD2やZIC3などの転写因子を介してWnt3遺伝子発現を直接活性化し、WNT3はNODAL経路と協調して発生分化の遺伝子発現プログラムを制御します。これらの経路の統合的な作用は、胚発生や細胞運命決定に不可欠であることが明らかになっています。
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References
Coda, D., Patel, H., Gori, I., Gaarenstroom, T., Song, O., Howell, M., & Hill, C. (2022). A network of transcription factors governs the dynamics of NODAL/Activin transcriptional responses. Journal of Cell Science, 135. https://doi.org/10.1242/jcs.259972
Wang, Q., Zou, Y., Nowotschin, S., Kim, S., Li, Q., Soh, C., Su, J., Zhang, C., Shu, W., Xi, Q., Huangfu, D., Hadjantonakis, A., & Massagué, J. (2017). The p53 Family Coordinates Wnt and Nodal Inputs in Mesendodermal Differentiation of Embryonic Stem Cells.. Cell stem cell, 20 1, 70-86. https://doi.org/10.1016/j.stem.2016.10.002
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アクチビンの受容体とノーダル(nodal)の受容体は同一なのか?
NodalとActivinは「同じ」受容体を使うが、完全に同一ではありません
受容体の共通性と違い
NodalとActivinはどちらもTGF-βスーパーファミリーに属し、シグナル伝達には「アクチビン型I型(ALK4, ALK7)およびII型(ActRIIA, ActRIIB)」セリン/スレオニンキナーゼ受容体を共有します (Reissmann et al., 2001; Tsuchida et al., 2008; Preiß et al., 2022; Lee et al., 2011; Tsuchida et al., 2009; Nadeem et al., 2011; Miles et al., 2013)。
- Activin:主にALK4(ACVR1B)とActRIIA/ActRIIBを利用し、コレセプター(Criptoなど)は不要です (Gray et al., 2003; Lee et al., 2011; Tsuchida et al., 2009)。
- Nodal:ALK4またはALK7とActRIIB(主に)を利用しますが、CriptoなどEGF-CFCファミリーのコレセプターが必須です (Reissmann et al., 2001; Preiß et al., 2022; Gray et al., 2003; Lee et al., 2011; Tsuchida et al., 2009; Nadeem et al., 2011)。
分子機構の違い
- NodalはCriptoなどのコレセプターがなければ受容体複合体を形成できませんが、ActivinはCriptoなしで直接受容体複合体を形成しシグナルを伝達できます (Gray et al., 2003; Lee et al., 2011; Tsuchida et al., 2009)。
- ALK7はNodalに対してより特異的なI型受容体であり、Activinは主にALK4を介して作用しますが、両者ともALK4/ALK7とActRIIA/ActRIIBの組み合わせでシグナルを伝達できます (Reissmann et al., 2001; Tsuchida et al., 2008; Preiß et al., 2022; Tsuchida et al., 2009; Nadeem et al., 2011; Miles et al., 2013)。
受容体利用のまとめ
リガンド | I型受容体 | II型受容体 | コレセプター | 引用 |
Activin | ALK4, ALK7 | ActRIIA, IIB | 不要 | (Reissmann et al., 2001; Tsuchida et al., 2008; Gray et al., 2003; Lee et al., 2011; Tsuchida et al., 2009; Nadeem et al., 2011; Miles et al., 2013) |
Nodal | ALK4, ALK7 | ActRIIA, IIB | 必須(Cripto等) | (Reissmann et al., 2001; Preiß et al., 2022; Gray et al., 2003; Lee et al., 2011; Tsuchida et al., 2009; Nadeem et al., 2011; Miles et al., 2013) |
Figure 1: NodalとActivinの受容体利用の比較表
結論
NodalとActivinは「アクチビン型I型・II型受容体」を共有しますが、Nodalはコレセプター(Cripto等)が必須であり、受容体利用やシグナル伝達の詳細に違いがあります。完全に同一の分子機構ではありませんが、受容体の主要部分は共通です。
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References
Reissmann, E., Jörnvall, H., Blokzijl, A., Andersson, O., Chang, C., Minchiotti, G., Persico, M., Ibáñez, C., & Brivanlou, A. (2001). The orphan receptor ALK7 and the Activin receptor ALK4 mediate signaling by Nodal proteins during vertebrate development.. Genes & development, 15 15, 2010-22. https://doi.org/10.1101/gad.201801
Tsuchida, K., Nakatani, M., Uezumi, A., Murakami, T., & Cui, X. (2008). Signal transduction pathway through activin receptors as a therapeutic target of musculoskeletal diseases and cancer.. Endocrine journal, 55 1, 11-21. https://doi.org/10.1507/endocrj.kr-110
Preiß, H., Kögler, A., Mörsdorf, D., Čapek, D., Soh, G., Rogers, K., Morales-Navarrete, H., Almuedo-Castillo, M., & Müller, P. (2022). Regulation of Nodal signaling propagation by receptor interactions and positive feedback. eLife, 11. https://doi.org/10.7554/elife.66397
Gray, P., Harrison, C., & Vale, W. (2003). Cripto forms a complex with activin and type II activin receptors and can block activin signaling. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 100, 5193 – 5198. https://doi.org/10.1073/pnas.0531290100
Lee, K., Lim, S., Orlov, Y., Yit, L., Yang, H., Ang, L., Poellinger, L., & Lim, B. (2011). Graded Nodal/Activin Signaling Titrates Conversion of Quantitative Phospho-Smad2 Levels into Qualitative Embryonic Stem Cell Fate Decisions. PLoS Genetics, 7. https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1002130
Tsuchida, K., Nakatani, M., Hitachi, K., Uezumi, A., Sunada, Y., Ageta, H., & Inokuchi, K. (2009). Activin signaling as an emerging target for therapeutic interventions. Cell Communication and Signaling : CCS, 7, 15 – 15. https://doi.org/10.1186/1478-811x-7-15
Nadeem, L., Munir, S., Fu, G., Dunk, C., Baczyk, D., Caniggia, I., Lye, S., & Peng, C. (2011). Nodal signals through activin receptor-like kinase 7 to inhibit trophoblast migration and invasion: implication in the pathogenesis of preeclampsia.. The American journal of pathology, 178 3, 1177-89. https://doi.org/10.1016/j.ajpath.2010.11.066
Miles, D., Wakeling, S., Stringer, J., Van Den Bergen, J., Wilhelm, D., Sinclair, A., & Western, P. (2013). Signaling through the TGF Beta-Activin Receptors ALK4/5/7 Regulates Testis Formation and Male Germ Cell Development. PLoS ONE, 8. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0054606
(Consensus)
nodalとXenopus nodal-relatedとの関係:同一?異なる?
発生学の論文や教科書を読んでいると、中胚葉誘導の主役としてnodalが登場しますが、アフリカツメガエルの実験の記述ではXnr (Xenopus nordal-related)といった表現を目にします。nordal-relatedはnodalにrelatedな別の分子なのでしょうか?それとも同じ分子を指しているのでしょうか?ちょっと混乱させられたので、頭を整理したいと思います。
質問:nodal-related は、nordalとは別物?アフリカツメガエルにはnodal-related遺伝子以外に、別に、nodal遺伝子も存在するの?
Gemini:
いいえ、「nodal-related」は「nodal」と完全に別物というわけではありません。アフリカツメガエルには、「nodal遺伝子」が単独で存在するのではなく、「nodal-related遺伝子ファミリー」として複数のよく似た遺伝子が存在します。
用語の整理:NodalとNodal-related
アフリカツメガエルでは、中胚葉誘導などに関わるNodal様の遺伝子が、進化の過程で複数回重複した結果、6種類の遺伝子ファミリーを形成しています。
これらを総称して**「Xenopus Nodal-related (アフリカツメガエル・ノーダル関連) 遺伝子」**と呼び、Xnr1, Xnr2, Xnr3, Xnr4, Xnr5, Xnr6 と番号で区別します。
つまり、研究者がアフリカツメガエルの発生について語る場合、「Xnr (エックス・エヌ・アール)」と言えば、それはNodalファミリーに属する遺伝子を指しています。
結論:アフリカツメガエルには「nodal遺伝子」も存在するのか?
結論として、アフリカツメガエルには「nodal-related遺伝子群」とは別に、単独の「nodal遺伝子」が存在するわけではありません。
哺乳類ではNodal遺伝子は1つだけですが、カエルではそれが6つの「Nodal-related遺伝子」に増えている、と理解するのが正確です。
ただし、その中でもXnr1は哺乳類のNodal遺伝子に最も近いと考えられており、データベースなどでは**「Nodal homolog (Nodalホモログ)」**、つまりNodalの同等遺伝子として登録されています。
まとめると以下のようになります。
- 哺乳類: 1つの Nodal遺伝子
- アフリカツメガエル: 6つの Nodal-related遺伝子ファミリー (Xnr1〜6)
高校生物の教科書にある「アクチビン=中胚葉誘導物質」の記述は正しいのか?
発生生物学において、非常に重要な問題の一つに、中胚葉を誘導する物質は何か?というものがありました。多くの生物学者が人生を棒に振る(研究を頑張っても、何も結果が見出せなかったため)くらいに大変難しい問題だったわけですが、突破口となったのはアクチビンの作用の発見でした。
誘導物質がその学会でのメインテーマだったんです。それまではM-ファクターやP-ファクターなどと呼ばれていたものを、僕がいきなりアミノ酸の配列を提示して、アクチビンという具体的なタンパク質名を提示したものだからみんなびっくりしましたね。‥ その頃アメリカではアメリカ国立衛生研究所(NIH)が多額の研究費を使って誘導物質を探していましたし、イギリスは国家プロジェクトとして誘導物質の探索を進めていたからだったのです。‥60年以上ずっと混乱していた誘導物質の研究が、アクチビンという1つの物質に集約したのです。(変わらない熱情で、中胚葉へと変わる過程を見る Asashima Makoto 浅島 誠 JT生命誌博物館 https://brh.co.jp/s_library/interview/76/)
アクチビンの発見者は日本人の浅島誠博士で、アクチビンの中胚葉誘導作用は日本の高校の生物の教科書にも紹介されています。
ChatGPT 5:
高校生物の教科書に書かれている「アクチビン(Activin)は中胚葉誘導因子として働く」という説明は、発生学的に正しい内容に基づいています。ただし、その背景を少し深掘りすると理解がより正確になります。
🧬 1. アクチビンとは
- アクチビン(Activin)は TGFβスーパーファミリーに属する分泌性タンパク質です。
- もともとは哺乳類の下垂体ホルモン調節因子(FSHの分泌促進)として発見されましたが、
後に発生初期胚での中胚葉誘導因子であることが分かりました。 - 分子構造的には、ノーダル(Nodal)やBMPなどと近縁です。
🌱 2. 中胚葉誘導因子としての役割
- アフリカツメガエル(Xenopus laevis)やニワトリなどの実験で、
動物極側(将来外胚葉になる部分)の細胞にアクチビンを与えると、
筋肉・脊索・腎臓など中胚葉性組織に分化することが確認されました。 - これが「アクチビン=中胚葉誘導因子」と呼ばれる根拠です。
⚙️ 3. 分子機構(TGFβ/Smad経路)
- アクチビンは細胞膜上の Activin受容体(タイプII型・タイプI型) に結合します。
- その結果、Smad2/3 → Smad4 の経路が活性化し、
Eomes, Mixl1, Brachyury (T) などの中胚葉・内胚葉関連転写因子を誘導します。 - この経路は Nodalシグナル とほぼ共通しており、
実際、哺乳類では「中胚葉誘導の主因子」は Nodal とされています。
ただし、実験的モデルではアクチビンが代用できるため、
教科書では便宜的に「アクチビンが中胚葉を誘導する」と説明されています。
🧭 4. まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
分類 | TGFβスーパーファミリーの一員 |
主な経路 | Smad2/3 → Smad4 経路 |
作用部位 | 原始線条や原口周辺の細胞 |
生理的役割 | 中胚葉および内胚葉の誘導(特に実験モデルで) |
関連分子 | Nodal, Activin, Lefty, BMP4, TGFβ |
🔹簡潔に言うと:
高校教科書の「アクチビン=中胚葉誘導因子」は正しい。ただし、現在の理解では「アクチビンは Nodal/Activin系 シグナルの一部であり、発生初期において中胚葉・内胚葉を誘導する代表的な因子のモデルとして用いられる」と表現するのがより正確です。
以上、ChatGPT5の解説でした。
高校生物の教科書に書かれているアクチビンに関する記述は非常に正確であり、書かれている内容に関しては何の問題もないのですが、読んだ人は、アクチビン=中胚葉誘導物質と理解するのが普通ではないでしょうか。ところが、「アクチビン=中胚葉誘導能を持つ物質」ではありますが、「アクチビン=生体内で中胚葉を誘導する役割を担っている物質」ではありません。このような区別は、初学者には困難でしょうから、「アクチビン=中胚葉誘導物質」と理解して覚えてしまうのではないかと思います。
そんなわけで、自分は、高校の生物の教科書の記載はもっと事実をわかりやすく書いたほうがよいのではないかと思います。この点をさらに深く掘るために、質問をかなり具体的にしたうえで、生成AIに説明させてみましょう。
質問:日本の高校の教科書には、「アクチビン=中胚葉誘導因子」という記述がありますが、これは誤解を招きやすい説明ではないでしょうか。ある因子が発生に必要か十分かは、添加実験や過剰発現の実験で十分性を示し、ノックアウトやノックダウンにより必要性を示して、さらに、しかるべき時期にしかるべき場所で正常発現していることまで確認して、この3つがセットで揃ったときに初めて、この因子はこれこれの発生の過程で働いていると結論づけられます。アクチビンは十分条件を満たしたに過ぎません。発生学の研究者が納得するきちんとした説明、すなわち、現在におけるアクチビンの中胚葉における役割の見直しについて説明ください。
Geminiの回答:
はい、そのご指摘はまったくもってその通りです。「アクチビン=中胚葉誘導因子」という記述は、歴史的な経緯を反映したものではありますが、現在の発生生物学の知見からすると、誤解を招く非常に不正確な説明と言えます。
発生学の研究者が納得する形、すなわち**「必要十分条件」と「時空間的な発現」**という3つの観点から、アクチビンの役割を再評価し、現在の中胚葉誘導の理解について解説します。
1. なぜ「アクチビン=中胚葉誘導因子」とされたのか?【十分性の証明】
まず、なぜアクチビンが中胚葉誘導因子として教科書に載るようになったのか。それは、アフリカツメガエルの未分化な細胞塊(動物極キャップ)を用いた実験に由来します。
- 添加実験(十分性の証明): カエルの胞胚から将来外胚葉になる予定の動物極キャップを切り出し、そこにアクチビンを添加すると、本来は形成されないはずの中胚葉性の組織(筋肉や脊索など)が誘導されました。
この実験は、アクチビンが中胚葉を誘導する**「十分な」**能力を持つことを鮮やかに示しました。この発見が非常にインパクトが大きかったため、「アクチビンは中胚葉誘導因子である」という単純化された記述が広まったのです。
2. アクチビンは本当に「犯人」なのか?【必要性の欠如】
しかし、ご指摘の通り、ある現象を引き起こすのに「十分」であることと、生体内でその現象に「必要」であることは全く別の問題です。アクチビンの役割を見直す決定的な証拠は、遺伝子ノックアウト実験によってもたらされました。
- ノックアウト実験(必要性の検証): もしアクチビンが中胚葉誘導に**「必要不可欠」**な因子であれば、アクチビン遺伝子を破壊(ノックアウト)したマウス胚では中胚葉が形成されないはずです。しかし、実際にアクチビン遺伝子をノックアウトしたマウスは、中胚葉を正常に形成し、生存可能でした。
この結果は、**「アクチビンは正常な中胚葉形成に必須ではない」**ことを明確に示しています。つまり、アクチビンは十分条件は満たすものの、必要条件を満たさなかったのです。
3. 真の誘導因子は誰か?【Nodalの登場】
では、生体内で中胚葉誘導を担う真の因子は何なのでしょうか。その後の研究で、アクチビンと同じTGF-βスーパーファミリーに属するNodalという分泌性シグナル分子こそが、その主役であることが突き止められました。
- 必要性の証明: Nodal遺伝子をノックアウトしたマウス胚では、原始線条が形成されず、中胚葉と内胚葉が全く作られないという致死的な表現型を示しました 。
- 時空間的発現: Nodalは、原腸胚形成が始まる直前の胚盤葉上層(epiblast)で、まさに中胚葉が誘導されるべき時期と場所で特異的に発現しています。
このように、Nodalは**「十分性」「必要性」「時空間的な発現」**という3つの条件をすべて満たしており、現在ではNodalこそが哺乳類における中胚葉誘導の必須因子であると結論付けられています。
まとめ:アクチビンの現在の位置づけ
では、アクチビンとは何だったのでしょうか。
アクチビンとNodalは、細胞内では同じSmad2/3というシグナル伝達経路を使います。そのため、実験的にアクチビンを添加すると、本来Nodalが担うべきシグナル経路のスイッチを人為的にONにすることができ、結果としてNodalと同様に中胚葉を誘導できたのです。
結論として、アクチビンは中胚葉誘導の分子メカニズムを解き明かすための非常に重要な「鍵」であり、その発見が発生生物学の発展に大きく貢献したことは間違いありません。しかし、生体内でその現象を実際に引き起こしている内因性の「主役」はNodalであり、アクチビンはその主役の役割を代行できる「影武者」のような存在だった、と理解するのが最も正確です。
質問:哺乳類の話はわかったけど、アフリカツメガエルでは?
Geminiの回答:アフリカツメガエルの発生においても、哺乳類と同様に、かつての「アクチビン=中胚葉誘導物質」という仮説は現在では見直されています。結論から言うと、アフリカツメガエルでも中胚葉誘導の**内因性の主役はNodal関連因子(Xnrs)**であり、アクチビン仮説はもはや正確ではありません。
その理由を、哺乳類の時と同じく「必要十分条件」と「時空間的な発現」の観点から解説します。
カエルでも主役はNodalだった 🐸
かつてはアフリカツメガエルの胚を用いた動物極キャップの実験で、アクチビンが中胚葉を誘導する「十分性」が示されたことから、アクチビンが有力な候補とされていました。しかし、その後の研究で、状況は大きく変わりました。
1. 犯人は別にいた!【Nodal関連因子(Xnrs)の発見】
研究が進むにつれて、アフリカツメガエルの胚の、まさに中胚葉が誘導されるべき時期と場所(胞胚期の植物極側)で、**Nodalとよく似た遺伝子群(Xenopus nodal-related proteins; Xnrs)**が発現していることが発見されました。
2. Xnrsを止めると中胚葉ができない【必要性の証明】
決定的な証拠は、Xnrsの働きを阻害する実験によってもたらされました。
- 阻害実験(必要性の検証): Cerberus-Short (Cer-S) という、Xnrsの働きだけを特異的に阻害する分子を胚に導入すると、中胚葉の形成が完全にブロックされました。これは、正常な発生においてXnrsが中胚葉誘導に**「必要不可欠」**であることを強く示しています。
このように、アフリカツメガエルにおいても、Nodal関連因子(Xnrs)が**「必要性」と「時空間的な発現」**という条件を満たしており、真の内因性の中胚葉誘導因子であると結論付けられています。
まとめ:アフリカツメガエルにおけるアクチビンの役割
では、アフリカツメガエルにおいてアクチビンは何だったのでしょうか。
哺乳類の場合と同様に、アクチビンはNodal(Xnrs)と同じ細胞内のシグナル伝達経路を利用します。そのため、実験的にアクチビンを投与すると、本来Xnrsが担うべき役割を代行し、中胚葉を誘導することができたのです。
**「アクチビン=中胚葉誘導因子」**という仮説は、発生現象の分子メカニズムを探る上で歴史的に非常に重要な役割を果たしました。しかし、アフリカツメガエルにおいても、生体内で実際にその役割を担っているのはNodal関連因子(Xnrs)である、というのが現代の発生生物学の正しい理解です。
Consensusにも同じ質問をしてみます。
Consensusの回答:
Activinがオーガナイザー遺伝子と考えられた背景と、その後の見直し:実際はNodalシグナルの活性を観察していたのか?
Activinとオーガナイザー活性の歴史的経緯
初期の発生生物学研究では、ActivinはXenopusなど両生類胚で中胚葉やオーガナイザー(Spemann-Mangold organizer)を誘導できる強力な因子として注目され、「オーガナイザー遺伝子」とみなされていました (Asashima & Satou-Kobayashi, 2024; Reissmann et al., 2001)。しかし、その後の分子遺伝学的解析により、本来の胚内でのオーガナイザー活性は主にNodal関連因子(Xenopus nodal-related factors, Xnrs)によって担われていることが明らかになりました (Osada & Wright, 1999; Reissmann et al., 2001)。
Activin投与実験の分子実態
- Activinタンパク質を外部から投与すると、Xnrs(Nodal関連遺伝子)の発現が誘導されることが示されています。つまり、Activinによる中胚葉・オーガナイザー誘導は、実際には胚内Nodalシグナルの活性化を介して生じていた可能性が高いです (Osada & Wright, 1999; Reissmann et al., 2001)。
- cmXnr2(Nodal関連因子のドミナントネガティブ変異体)を用いた実験では、Activinタンパク質による中胚葉誘導が抑制される一方、Activin mRNAによる誘導は抑制されませんでした。これは、外来Activinタンパク質がまずXnrsの発現を誘導し、その下流で中胚葉・オーガナイザー活性が発揮されていたことを示唆します (Osada & Wright, 1999)。
シグナル伝達の分子機構
- NodalとActivinは同じTGF-βスーパーファミリーに属し、共通の受容体(ALK4/ALK7など)や下流のSMAD2/3経路を利用しますが、NodalはCriptoなどの補助因子を必要とする点でActivinと異なります (Reissmann et al., 2001; Kumar et al., 2001)。
- そのため、初期のActivin投与実験で観察された「オーガナイザー活性」は、実際にはNodalシグナルの間接的な活性化によるものだったと考えられます (Osada & Wright, 1999; Reissmann et al., 2001; Kumar et al., 2001)。
ActivinとNodalの関係まとめ
因子 | オーガナイザー誘導 | 胚内での主役 | 実験での観察 | 引用 |
---|---|---|---|---|
Activin | 可能(外来投与時) | × | Nodal誘導を介す | (Osada & Wright, 1999; Reissmann et al., 2001; Kumar et al., 2001) |
Nodal/Xnrs | 主要因子 | 〇 | 直接活性 | (Osada & Wright, 1999; Reissmann et al., 2001) |
Figure 1: ActivinとNodalのオーガナイザー誘導活性の比較表
結論
Activinは一時的にオーガナイザー遺伝子と考えられましたが、実際には投与Activinが胚内Nodalシグナルを誘導し、その活性を観察していたことが分かっています。現在では、オーガナイザー活性の本質的な担い手はNodal関連因子であると広く認識されています。
These papers were sourced and synthesized using Consensus, an AI-powered search engine for research. Try it at https://consensus.app
References
Reissmann, E., Jörnvall, H., Blokzijl, A., Andersson, O., Chang, C., Minchiotti, G., Persico, M., Ibáñez, C., & Brivanlou, A. (2001). The orphan receptor ALK7 and the Activin receptor ALK4 mediate signaling by Nodal proteins during vertebrate development.. Genes & development, 15 15, 2010-22. https://doi.org/10.1101/gad.201801
Osada, S., & Wright, C. (1999). Xenopus nodal-related signaling is essential for mesendodermal patterning during early embryogenesis.. Development, 126 14, 3229-40.
Kumar, A., Novoselov, V., Celeste, A., Wolfman, N., Dijke, T., & Kuehn, M. (2001). Nodal Signaling Uses Activin and Transforming Growth Factor-β Receptor-regulated Smads*. The Journal of Biological Chemistry, 276, 656 – 661. https://doi.org/10.1074/jbc.m004649200
Asashima, M., & Satou-Kobayashi, Y. (2024). Spemann-Mangold organizer and mesoderm induction.. Cells & development, 203903. https://doi.org/10.1016/j.cdev.2024.203903
高校生向けの記述をするとしたら、以下のようになろうかと思います。Geminiに作文してもらいました。ここでいう「鍵穴」とは、受容体のことです。鍵は、アクチビンやノーダルということになります
Gemini:高校生物の教科書の執筆者として、アクチビンの歴史的経緯を尊重しつつ、現代の発生生物学の正しい理解を伝えるための記述を作成します。
【発展】 中胚葉はどのようにつくられるか?-誘導因子の探求-
胚発生の初期段階で、私たちの体は外胚葉・中胚葉・内胚葉という3つの基本的な層(三胚葉)に分かれます。特に、筋肉や骨、循環器系など、体の主要な器官のもととなる中胚葉が、どのようにしてつくられるのかは、発生生物学における大きな謎でした。
発見:中胚葉をつくる力を持つ物質『アクチビン』
1980年代、アフリカツメガエルの胚を用いた画期的な実験が行われました。本来、表皮などになる運命の外胚葉の細胞(動物極キャップ)を切り出し、それに様々な物質を作用させたのです。
その結果、**「アクチビン」**というタンパク質を加えると、外胚葉の細胞がまるで運命を変えられたかのように、筋肉や脊索といった中胚葉性の組織に変化することが発見されました。
この発見は衝撃的で、「アクチビンは中胚葉を誘導する能力を十分に持っている(十分性)」ことが証明されました。このことから、アクチビンこそが、体内で働く「中胚葉誘導物質」の最有力候補だと考えられるようになったのです。
新たな疑問:本当にアクチビンが体内で働いているのか?
しかし、科学の探求はここで終わりませんでした。ある物質が「特定の現象を引き起こす能力を持つ」ことと、「体内で実際にその役割を担っている」ことは、厳密に区別して考える必要があります。後者を証明するには、その物質が体内で働くのに**「必要不可欠」**であること(必要性)を示さなければなりません。
もし、アクチビンが発生に必要不可欠なら、体内でアクチビンをつくれないようにした場合、中胚葉は形成されないはずです。遺伝子工学の技術を用いて、マウスのアクチビン遺伝子を破壊する実験が行われました。
その結果は驚くべきものでした。アクチビン遺伝子を失ったマウスは、正常に中胚葉を形成したのです。この事実は、**「アクチビンは正常な中胚葉の形成に必須ではない」**ことを意味していました。
現在の理解:真の誘導因子『ノーダル』
では、体内で働く真の誘導因子は何なのでしょうか?
その後の精力的な研究により、アクチビンと同じ仲間(TGF-βスーパーファミリー)に属する**「ノーダル(Nodal)」**というタンパク質こそが、その主役であることが明らかになりました。
ノーダルは、以下の3つの条件をすべて満たしています。
- 十分性:外胚葉の細胞に加えると、中胚葉を誘導する。
- 必要性:遺伝子を破壊すると、中胚葉が全く形成されない。
- 時空間的一致:胚発生において、中胚葉が誘導されるべき時期と場所で、実際に発現している。
これらの証拠から、現在では、**「ノーダルこそが、脊椎動物における内因性の中胚葉誘導因子である」**と結論付けられています。
まとめ:科学的発見のプロセスとアクチビンの役割
では、なぜアクチビンは中胚葉を誘導できたのでしょうか。それは、アクチビンとノーダルが、細胞内では同じシグナル伝達の仕組み(鍵穴)を利用するからです。アクチビンは、本来ノーダルという**「本来の鍵」が差し込まれるべき鍵穴にぴったり合う「合鍵」**のようなものでした。
アクチビンの発見は、中胚葉誘導のメカニズムという扉を開けるための、歴史的に非常に重要な「合鍵」の発見でした。この発見があったからこそ、私たちはノーダルという「本来の鍵」にたどり着くことができたのです。この一連の物語は、仮説が実験によって検証され、新たな事実に合わせて修正されていくという、科学のダイナミックな進歩そのものを示しています。