滲出(しんしゅつ exudation)とは

滲出(しんしゅつ exudation)

滲出とは、炎症が原因で血管から血液成分が組織や体腔へとにじみ出る現象のことです。このにじみ出た液体のことを滲出液(しんしゅつえき、exudate)と呼びます。けがをした時や火傷をした時に、傷口からじくじくと透明〜黄色っぽい液体が出てくることがありますが、これが滲出液の一例です。この液体は、体の正常な治癒反応の一部です。なぜ滲出が起こるのでしょうか?私たちの体は、細菌の感染や組織の損傷が起こると、その部位で炎症という防御反応を開始します。炎症が起こると、以下のような変化が血管で生じます。

  1. 血管の拡張: 炎症部位の毛細血管が広がり、血流が増加します。
  2. 血管透過性の亢進: 血管の壁を構成している細胞同士のすき間がゆるみ、通常は血管内に留まっているタンパク質白血球などの成分が血管の外へ漏れ出しやすくなります。

このようにして、血液中の液体成分(血漿)やタンパク質、白血球などが血管の外へにじみ出ることが「滲出」です。

滲出液は、その原因や炎症の程度によって、見た目や成分が異なります。浸出液の主な種類は以下の通りです。

種類 特徴 考えられる状態
漿液性滲出液 (Serous Exudate) 透明または淡い黄色で、サラサラしている。タンパク質を多く含む。 軽度の炎症、やけど、水ぶくれなど。創傷治癒の初期段階で見られる。
線維素性滲出液 (Fibrinous Exudate) 黄白色で、ネバネバしている。血液を固める成分(フィブリノーゲン)を多く含む。 比較的強い炎症。胸膜炎や心膜炎などで見られることがある。
化膿性滲出液 (Purulent Exudate) いわゆる**「膿(うみ)」**のこと。白血球(特に好中球)の死骸や細菌、壊死した組織を含み、白〜黄色、緑色で濁っており、粘り気がある。 細菌感染が起きている状態。
出血性滲出液 (Hemorrhagic Exudate) 血管の損傷が大きく、赤血球が多く含まれるため赤色を呈する。 激しい炎症や、結核、がんなどで血管が破壊された場合に見られる。

滲出液と似たものに漏出液(ろうしゅつえき transudate)があります。どちらも体内に液体が溜まる状態ですが、その原因と性質が異なります。

滲出液 (Exudate) 漏出液 (Transudate)
原因 炎症 非炎症性(心不全や肝硬変などによる圧力の変化)
メカニズム 血管の透過性が亢進する 血管内の静水圧の上昇、または膠質浸透圧の低下
タンパク質 多い 少ない
比重 高い 低い
細胞成分 多い 少ない

簡単に言えば、滲出液は「炎症」がキーワードであり、血管の壁がゆるんで成分が漏れ出たものです。一方、漏出液は炎症とは関係なく、主に体内の水分バランスの異常によって血管から水分が押し出されたものです。この違いは、病気の診断において非常に重要となります。

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