「予後因子」とは、基本的には「予後予測因子(prognostic factor / prognostic indicator)」のことを指します。
用語 | 英語 | 内容 |
---|---|---|
予後因子 | Prognostic factor | 治療に関係なく予後に影響する因子 |
予後予測因子 | Prognostic indicator | Prognostic factorとほぼ同義(指標という意味が強調される) |
治療予測因子 | Predictive factor | 特定の治療に対する反応性を予測する因子 |
「予後因子」と言うときには、通常「予後予測因子」の意味で使ってよく、英語では prognostic factor や prognostic indicator が対応します。ただし、治療との関連を論じる場合は「predictive」と混同しないよう注意が必要です。
(ChatGPT 4o)
SNSでも尿路感染や性器感染のリスクが話題になっていました。
糖尿病で弊院内科通院中、SGLT2阻害薬を内服している高齢女性患者さんが、
「排尿時に痛い」とのこと。更に聞くと、数日前の内科受診では「男の先生だし、黙ってた」。
急いで泌尿器科に回ってもらって案の定尿路感染(だけで済んだ)だったけど、返書に「視診は断られました」とのこと。
女医も大事。— あもう@心療内科医 (@QjadtncbKrPf3Ed) September 22, 2023
性器感染と尿路感染をちゃんと診断を分けられる必要があります☝️
そろそろSGLT2阻害薬で尿路感染のリスク↑っていうのは「木を見て森を見ない人」になりますね。
元々の尿路感染のリスク評価含めちゃんとチェックしていきましょう☝️おむつ排泄なら性器感染症のリスク↑↑です、ほぼ必発レベルかと😱 https://t.co/DVUCERZA9E
— 後藤礼司 Reiji Goto MD, PhD (@dr_reiji7) April 18, 2025
これ、真に受けてる人が多いけどネタツイだからね。AIが発達するのは放射線科医にとってもよいこと。
我々のような真摯に読影してる人にとっては何ら脅威ではない。むしろこれからAIを危惧して放射線科になる人が減れば、一人当たりの仕事が増えて負担が増えるはず。 https://t.co/chzjknURRm— 放射線科医ふくろう (@tk2cafe) June 18, 2025
放射線科医は右と左が分からなくなるという鉄板ネタ、そんな訳ないでしょと思い続けてきたけど今日普通に右のこと左と言い続けて指摘されるまで微塵も気付かない事案が発生してしまった…
— うな重 (@rFQOnZJvHEUKey0) May 13, 2025
米国で回診中よくある会話
肺塞栓症疑い
レジ 「CTA 終わってますが放射線科医の読影まだです」
私 「自分で画像見た?」
レジ 「は?!」
私 「。。。」
— 木岡 睦 (@johnkioka) October 30, 2024
利益相反(Conflict of Interest, COI)は、研究不正のニュースなどで出てくる話題のせいか、なんとなく「悪いこと」というイメージが付きまといますが、実際には、利益相反自体が「悪」というわけではありません。
利益相反が存在すること自体は不正ではありませんし、非倫理的であることを意味するものではありません。しかし、二次的利益(個人的収入の獲得等)を重視し、利益相反の存在を隠したまま、職業上の責務に関する一次的利益(公益等)に直接関係してくる研究計画、データ採取や分析等にバイアスが生じた結果、大切な研究成果がかえって有害となる危険があります。 (e-APRIN)
抗尿酸薬(尿酸値を下げる薬)とeGFRスロープには一定の関連があります。特に慢性腎臓病(CKD)や高尿酸血症の患者においては、腎機能の悪化(eGFR低下)と高尿酸血症の進行が関係しているため、抗尿酸薬がeGFRスロープに影響を与えるかどうかが研究されてきました。
例:
観点 | 内容 |
---|---|
理論的背景 | 高尿酸血症は腎機能悪化と関連があり、尿酸低下でeGFRスロープ改善が期待される。 |
エビデンス | 限定的。一部で改善効果が示されているが、大規模試験では明確な効果なし。 |
臨床での位置づけ | 抗尿酸薬は「腎保護目的」ではなく「尿酸管理目的」で処方されることが多い。 |
eGFRスロープとは、**estimated Glomerular Filtration Rate(推算糸球体濾過量)の時間的変化、つまりeGFRが時間とともにどの程度の速さで低下または改善しているかを示す傾き(slope)**のことです。単位は「mL/min/1.73m²/year」などで表されます。
SGLT2阻害薬(例:ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなど)は、糖尿病治療薬として使われるだけでなく、腎保護作用があることが多数の臨床試験で示されています。
スロープの傾き | 腎機能の状態 | 臨床的な意味 |
---|---|---|
急なマイナス(低下が早い) | 腎機能が急速に悪化 | 末期腎不全や透析リスクが高まる |
緩やかなマイナス(低下が遅い) | 腎機能がゆっくり悪化 | 治療介入の効果あり |
0に近い or プラス(安定または改善) | 腎機能が安定、または改善 | 治療が極めて有効、または自然回復 |
例えば、SGLT2阻害薬の大規模試験(CREDENCE, DAPA-CKDなど)では、プラセボ群と比較して、eGFRスロープが有意に改善したことが示されています。これは、腎保護作用の有力な証拠の一つです。
(ChatGPT 4o)
膠芽腫(こうがしゅ、グリオブラストーマ)は、脳に発生する悪性度の高い原発性脳腫瘍です。成人において最も頻度が高く、治療が非常に困難な疾患として知られています。本稿では、膠芽腫の罹患状況、発がんのメカニズム、現在の標準的な治療戦略、そして期待される将来の治療法について、最新の知見を交えて解説します。
罹患状況
膠芽腫の罹患率は、人口10万人あたり年間2〜3人程度と比較的稀な疾患ですが、原発性悪性脳腫瘍の中では約10%を占め、最も頻度の高いタイプです。日本国内では、年間約2,000人が新たに診断されていると推定されています。発症は50歳以降の高齢者に多い傾向がありますが、小児から若年成人まで幅広い年齢層でみられます。男女比では、男性にやや多く発症することが報告されています。
発がんの機序
膠芽腫の発生メカニズムは完全には解明されていませんが、複数の遺伝子異常や細胞内のシグナル伝達経路の破綻が複雑に関与していると考えられています。主要な要因は以下の通りです。
膠芽腫の治療は、複数の治療法を組み合わせた集学的治療が基本となります。しかし、脳内に染み込むように広がる(浸潤性)性質のため、完全な治癒は極めて困難です。
現在の標準治療
現在の標準治療は、以下の3つを組み合わせたものです。
その他の治療法
これらの治療法を駆使しても、膠芽腫の予後は依然として厳しく、5年生存率は10%未満とされています。
この厳しい状況を打破するため、世界中で精力的な研究開発が進められており、新たな治療法への期待が高まっています。
患者自身の免疫力を利用してがんを攻撃する治療法です。
がん細胞の増殖や生存に不可欠な特定の分子を狙い撃ちする薬剤です。
がん細胞でのみ増殖してがん細胞を破壊するように遺伝子改変したウイルス(オンコリティックウイルス)を用いる治療法です。ウイルスががん細胞を破壊するだけでなく、免疫応答を惹起する効果も期待されています。
mRNA技術などを応用し、がんの増殖に関わる遺伝子の働きを制御したり、がんに対する免疫応答を強めたりするアプローチも研究されています。
これらの新しい治療法は、単独で用いるだけでなく、既存の治療法と組み合わせることで、より高い治療効果を目指す研究が活発に行われています。膠芽腫の治療は未だ多くの課題を抱えていますが、分子生物学的な理解の深化と革新的な治療法の開発により、将来的には個々の患者さんの腫瘍の特性に合わせた「個別化医療」が実現し、予後が大きく改善されることが期待されています。
(Google Gemini 20250614)
速報!!!
今朝 義母が泣きながら起きてきてキッチンでご飯食べてる私に『部屋にあった20万が無くなっている!お前だろ?息子や娘にも言いつけて警察にも来てもらうから覚悟しろ!』
とうとうきたか…
— ネギしお (@TwC2BsIlbJ74100) June 12, 2025
ご家族の予期せぬ言動に直面し、「嫁があたしのお金を盗んだ!とわめきちらしたり、近所中に言いふらしたり、警察呼んだり、そこまでひどいの?」というお気持ちを抱えていらっしゃることに、深く心を痛めていらっしゃることと拝察いたします。大切なご家族がこれまでの性格とは異なる行動を見せることは、大きな混乱と不安をもたらすことでしょう。
こうした行動は、ご本人の性格が変わってしまったわけではなく、多くの場合、認知症という病気によって引き起こされる症状です。本稿では、ご家族が経験されているような金銭に関する妄想、暴言、そして警察を呼ぶといった行動がなぜ起こるのか、それが認知症のどのような症状と関連しているのかを詳しくご説明します。また、ご不安な気持ちに寄り添いながら、具体的な対応策と専門機関への相談の重要性をお伝えします。
「突然ぼけが始まるものなの?」という疑問は、認知症に関する一般的な誤解の一つかもしれません。多くの認知症、特に最も患者数の多いアルツハイマー型認知症は、通常、時間をかけてゆっくりと進行していく特徴があります 1。初期には「もの忘れ」から始まり、徐々に理解力や判断力の低下、集中力の散漫といった症状が現れ、段階的に進行していきます 2。症状を早期に発見し、適切な治療を開始することで、その悪化を遅らせることが期待できます 3。
しかし、「突然ぼけが始まる」と感じるような急激な認知機能の変化が見られる場合、それは典型的な認知症の始まり方とは異なる、別の原因が背景にある可能性も考えられます。
認知機能の急激な変化は、単なる「ぼけの始まり」として見過ごすべきではありません。せん妄や脳血管性認知症、特に治療によって改善が期待できる慢性硬膜下血腫など、緊急性のある、あるいは治療可能な別の状態である可能性を示唆しています。ご家族が「突然おかしくなった」と感じたら、すぐに専門医に相談することが極めて重要です。この迅速な対応が、ご本人の状態改善に大きく寄与する場合があります。
認知症の症状は、大きく分けて「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の二つに分類されます。ご家族が直面している「お金を盗んだと叫ぶ」「近所中に言いふらす」「警察を呼ぶ」といった行動は、主にBPSDに該当します。
中核症状とは、脳の神経細胞の障害によって直接的に引き起こされる認知機能の低下を指します。これらは認知症の診断において中心となる症状であり、ほぼ全ての人に初期から認められます 7。
BPSDは、中核症状に加えて、ご本人の性格、身体状態、周囲の環境、介護者の対応などが複雑に絡み合って生じる様々な精神症状や行動障害を指します 7。これらの症状は介護者の負担を大きくする要因となることがあります。
ご家族が直面している「お金を盗んだと叫ぶ」「近所中に言いふらす」といった行動は、ご本人の性格や悪意からくるものではなく、認知症の中核症状(記憶障害や判断力低下など)が、ご本人の不安や自尊心の低下、あるいは周囲の環境と複雑に絡み合って生じる「二次的な症状」です。例えば、実行機能障害によって今までできていた家事ができなくなり、家族に叱責されたことで自信を失い、抑うつ状態になることがあります。また、見当識障害によって時間や場所が分からなくなり、買い物に出たつもりが道に迷い、徘徊につながることもあります 10。
このメカニズムを理解することは、単に「困った行動」として捉えるのではなく、「病気が引き起こしている症状」として認識する上で極めて重要です。ご本人の「悪意」ではなく「病気」が原因であると理解することで、介護者の精神的負担が軽減され、より適切な対応へと繋がります。
また、ご本人が自身の能力低下を自覚し、それを認めたくないという気持ちが、妄想や攻撃的な言動につながることもあります 9。例えば、財布をどこかに置き忘れた事実を認めると、これまで家計を管理してきた誇りを失うと感じ、「誰かが盗った」と思い込んでしまうことがあります 15。これは、ご本人が失われゆく能力に対して感じる恐怖や自尊心の傷つきからくる防衛反応であり、この背景を理解することが、ご本人への接し方を変え、介護者の心の負担を軽減する第一歩となります。
以下に、認知症の主な症状をまとめた表を示します。
表1:認知症の主な症状:中核症状と行動・心理症状(BPSD)
症状の分類 | 症状名 | 具体的な症状例 |
中核症状 | 記憶障害 | 新しい出来事を覚えられない、同じ話を繰り返す、約束を忘れる、鍵や財布をなくす 3 |
見当識障害 | 日付や曜日が分からない、自分がどこにいるか分からない、目の前の人が誰か分からない 4 | |
理解力・判断力の低下 | 買い物の計算ができない、周囲の会話についていけない、危険な状況を判断できない 3 | |
実行機能障害 | 料理の手順が分からない、買い物の段取りができない、お金の管理が難しい 3 | |
失行・失認・失語 | 服のボタンがはめられない(失行)、目の前のものが何か分からない(失認)、言葉が出にくい・理解できない(失語) 7 | |
行動・心理症状 (BPSD) | 興奮・不穏、暴言・暴力 | 不安や混乱から大声を出す、怒りっぽくなる、他人に暴力を振るう、近所中に言いふらす 9 |
物盗られ妄想 | 家族や介護者が自分の物を盗んだと思い込む 10 | |
幻覚・幻視 | 実際には存在しないものが見えたり聞こえたりする 1 | |
徘徊 | 目的なく歩き回り、家を出て迷子になる 10 | |
介護拒否 | 食事や入浴、着替えなどを拒む 8 | |
抑うつ・無気力(アパシー) | 気分が落ち込む、何事にも意欲が湧かない、表情が乏しくなる 1 | |
叫声・奇声 | 自分の不快感を伝えられず大声や奇声を上げる 10 | |
睡眠障害 | 昼夜逆転、夜間の不眠 7 |
ご家族の「嫁があたしのお金を盗んだ!」という訴えは、認知症でよく見られる「物盗られ妄想」という被害妄想の一種です。認知症の方の約15%にみられる症状であり、特に身近な人、介護に長く関わる人が疑われるケースが多いとされています 15。
この妄想の主な原因は、認知症による記憶障害を受け入れたくないという気持ちにあります 15。ご本人が財布をどこかに置き忘れても、その事実を認めることが、これまで家計を管理してきた誇りを失うことにつながると感じることがあります。家族から「役に立たない」と思われることを恐れ、「誰かが盗った」と考えるようになるのです 15。物盗られ妄想は、認知症の初期症状として現れることが多く、1年以上続く場合もありますが、認知症が進行すると消失するケースも多いとされています 15。
このような妄想に対して、ご家族が「そんなことはない」「盗んでいない」と頭ごなしに否定したり、ご本人の訴えを無視したりすることは、ご本人の自尊心を深く傷つけ、かえって不安な気持ちを増幅させてしまう可能性があります 14。その結果、ご家族に対する不信感が強まり、症状がさらに悪化したり、暴言や暴力につながったりすることもあります 15。
大切なのは、ご本人の訴えをまずは受け入れる姿勢を示すことです。たとえそれが事実と異なっていても、「そう思われるのですね」「それは大変でしたね」と共感を示し、ご本人の気持ちに寄り添うことが、ご本人の不安を和らげる第一歩となります 16。その後、「一緒に探してみましょうか」と声をかけ、ご本人と一緒に物を探すのが良い方法です。もしご家族が先に見つけても、さりげなくご本人が見つけられるように誘導することで、ご本人が自信を取り戻し、物忘れへの不安が少しずつ解消されていく可能性もあります 15。無理にお金や財布を取り上げることも、ご本人の自尊心を奪い、不信感を生む可能性があるため、小銭を入れた財布くらいは持てるような配慮も必要です 14。
ご家族が「わめきちらしたり、近所中に言いふらしたり、警察呼んだり」といった行動は、認知症の様々な側面から引き起こされることがあります。
認知症の方が暴言や暴力に及ぶ理由は複数あり、ご本人の心身の状態と密接に関わっています 9。
認知症の種類によって、現れやすい行動・心理症状には特徴があります。
認知症の方が警察を呼ぶ背景には、強い不安や混乱、そして妄想や幻覚が関係しています。
警察を呼ぶ行為は、ご本人の不安の裏返しであり、その不安が解消されない限り、同様の行動を繰り返す可能性があります 16。ご家族がご本人の話を否定したり、無視したりすると、自尊心が傷つき、不安な気持ちがさらに増大し、悪循環に陥ってしまうことがあります 16。
以下に、認知症の種類と特徴的な行動・心理症状(BPSD)の関連をまとめた表を示します。
表2:認知症の種類と特徴的な行動・心理症状(BPSD)
認知症の種類 | 特徴的なBPSD | 暴言・暴力、警察を呼ぶ行為との関連 |
アルツハイマー型認知症 | 物盗られ妄想、徘徊、抑うつ、無関心 10 | 理解力・判断力低下、感情コントロール困難、自尊心損傷から暴言・暴力、物盗られ妄想による警察への通報 13 |
脳血管性認知症 | 感情失禁(怒りや悲しみが急に出る)、まだら認知症、意欲低下 10 | 感情失禁により、怒りや悲しみが急激に表出し、暴言・暴力につながりやすい 13 |
レビー小体型認知症 | 幻視、日内変動、パーキンソン症状、レム睡眠行動障害 10 | 幻視・妄想による恐怖・混乱から興奮状態となり、暴力的になる、警察を呼ぶ 13 |
前頭側頭型認知症 | 異常行動、暴言、性格変化、脱抑制(本能のまま行動) 10 | 感情コントロール困難、脱抑制が顕著で、興奮による暴力や暴言が最も多い 13 |
ご家族が経験されている「お金を盗んだとわめきちらしたり、近所中に言いふらしたり、警察呼んだり」といった行動は、確かに非常に厳しく、ご家族にとって深い苦痛と負担を伴うものです。2015年度の厚生労働科学特別研究事業による調査では、かかりつけ医が家族から最も困る症状として、物忘れとともに、暴力や徘徊など興奮性のBPSDが挙げられています 10。これは、ご家族が感じている「ひどさ」が、専門家や他の介護者も共通して認識する、認知症の特に困難な側面であることを示しています。
これらの行動・心理症状(BPSD)は、認知症の進行に伴って出現しやすくなります。例えば、アルツハイマー型認知症の進行度を評価するFASTスケールでは、中程度の段階(FAST4~5)で、暴力や暴言、徘徊といった他者との関係性に影響を及ぼす周辺症状が出現しやすくなり、対応が困難になる傾向があるとされています 19。
認知症が進行すると、記憶力だけでなく、理解力、判断力、実行機能など様々な認知機能が低下し、日常生活に介助が必要な場面が増えていきます 4。
ご家族が現在直面されている行動は、認知症の進行段階において、特に介護が困難になる時期に現れやすい症状です。ご本人の行動がご家族の社会生活に影響を及ぼし(例:近所中に言いふらすことによる周囲との関係性の変化)、介護者の精神的負担が増大することは、認知症介護の現実として広く認識されています。ご家族が感じている「ひどさ」は、この病気の進行と、それに伴う介護負担の増大を正確に捉えたものです。この理解は、ご家族が適切な支援を求めるための重要な一歩となります。
以下に、認知症の進行段階と主な症状、介護の目安をまとめた表を示します。
表3:認知症の進行段階と主な症状・介護の目安
進行段階 | 主な症状 | 介護の目安 |
前兆(軽度認知障害MCI) | 軽度の物忘れが見られるが、日常生活に支障はほとんどない 4 | 早期発見・治療で認知症の発症を遅らせる、または防ぐことが期待できる 3 |
初期 | 物忘れ、理解力・判断力低下、集中力低下、趣味への関心喪失、性格変化 3 | 早期発見・治療で症状の進行を緩やかにすることが可能。注意深い観察と、ご本人の自尊心を尊重したサポートが重要 3 |
中期 | 記憶障害が深刻化、見当識障害(場所・時間)、徘徊、自立生活困難。物盗られ妄想、暴言・暴力、幻覚、介護拒否などのBPSDが出現・増加 4 | サポートが必要な場面が増加。対応が困難なBPSDへの専門的ケアや療養環境の整備が不可欠。介護者の負担が増大しやすい時期 19 |
末期 | 意思疎通困難、身体機能低下(歩行、食事、排泄など)、寝たきり。失禁、異食、重度のBPSD(強迫行為など) 4 | 常に介助が必要。医療的サポートも必要となり、誤嚥性肺炎などの感染症リスクが増大。多職種連携でのケアと、ご家族の精神的サポートが極めて重要 8 |
認知症のご家族を支えることは、計り知れない精神的・身体的負担を伴います。しかし、適切な知識と支援を得ることで、ご本人もご家族もより穏やかな日々を送ることが可能になります。
ご本人の行動・心理症状(BPSD)に対しては、以下のような対応が有効です。
ご家族の認知症の疑いがある場合、できるだけ早く専門機関を受診し、診断を受けることが重要です 3。早期に適切な治療を開始することで、症状の進行を遅らせることが期待できます 4。
ご本人が受診を拒否する場合でも、ご家族だけで抱え込まず、まずは「もの忘れ外来」や精神科、心療内科を設置する病院に相談してみることをお勧めします 3。もの忘れ外来の中には、ご本人不在でも家族からの相談に対応しているところもあります 3。かかりつけ医に協力を仰ぐのも良いでしょう 3。
また、ご家族自身のストレス軽減のためにも、介護保険サービスや行政サービス、地域包括支援センターなどの活用を検討することが非常に大切です 16。これらの機関は、認知症に関する専門的な情報提供、介護サービスの紹介、介護者の相談支援など、多岐にわたるサポートを提供しています。ご家族だけで全てを抱え込まず、外部の支援を積極的に活用することで、介護負担を軽減し、ご家族自身の心身の健康を守ることができます。
認知症の症状はご本人だけでなく、ご家族の生活にも大きな影響を及ぼします。ご家族が「突然おかしくなった」と感じた時や、金銭に関する妄想、暴言、警察を呼ぶといった行動に直面した時、それは病気が進行しているサインである可能性が高いです。このような状況では、ご本人の悪意ではなく、病気による症状であることを理解し、専門家や支援機関の力を借りることが、ご本人とご家族双方にとって最善の道となります。
認知症は、もの忘れだけでなく、理解力・判断力の低下、実行機能障害といった「中核症状」に加え、ご家族を深く悩ませる「行動・心理症状(BPSD)」を伴う複雑な病気です。ご家族が経験されている「お金を盗んだとわめきちらす」「近所中に言いふらす」「警察を呼ぶ」といった行動は、記憶障害や自尊心の傷つき、感情のコントロールの困難さ、幻覚・妄想などが複雑に絡み合って生じる、認知症の典型的な症状です。これらの行動は、ご本人の性格や悪意からくるものではなく、病気が引き起こしていることを理解することが、ご家族の心の負担を軽減する第一歩となります。
認知機能の急激な変化が見られた場合は、せん妄や脳血管性認知症、慢性硬膜下血腫など、治療可能な原因が背景にある可能性もあるため、速やかに専門医を受診することが極めて重要です。また、ご本人の妄想や暴言に対しては、頭ごなしに否定せず、共感を示し、ご本人の不安に寄り添うことが大切です。
認知症の進行に伴い、介護の負担は増大しますが、ご家族だけで抱え込む必要はありません。もの忘れ外来や精神科、地域包括支援センターなど、様々な専門機関や行政サービスがご家族を支えるために存在します。早期の診断と介入、そしてご家族が積極的に外部の支援を活用することが、ご本人とご家族双方の生活の質を維持し、より穏やかな日々を送るための鍵となります。ご家族は決して一人ではありません。
認知症を分類するFASTとは?活用方法やステージごとの症状の詳細を解説, 6月 14, 2025にアクセス、 https://wellnesslab-report.jp/pj/gamma-tech/column/care-dementia-fast.html
(Gemini)