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特184の12第2項 の文章の構造?

特許法

(補正の特例)
第百八十四条の十二 日本語特許出願については第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、外国語特許出願については第百八十四条の四第一項又は第四項及び第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後であつて国内処理基準時を経過した後でなければ、第十七条第一項本文の規定にかかわらず、手続の補正(第百八十四条の七第二項及び第百八十四条の八第二項に規定する補正を除く。)をすることができない。
2 外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲については、第十七条の二第二項中「第三十六条の二第二項の外国語書面出願」とあるのは「第百八十四条の四第一項の外国語特許出願」と、同条第三項中「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)。第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。)」とあるのは「第百八十四条の四第一項の国際出願日(以下この項において「国際出願日」という。)における第百八十四条の三第二項の国際特許出願(以下この項において「国際特許出願」という。)の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の第百八十四条の四第一項の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の同項の翻訳文(同条第二項又は第六項の規定により千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約第十九条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあつては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下この項において「翻訳文等」という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)」とする。

第2項の括弧を除去した文章:

外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲 については、第十七条の二第二項中「第三十六条の二第二項の外国語書面出願」とあるのは「第百八十四条の四第一項の外国語特許出願」と、同条第三項中「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」とあるのは「第百八十四条の四第一項の国際出願日における第百八十四条の三第二項の国際特許出願の明細書若しくは図面の第百八十四条の四第一項の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の同項の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面」とする。

条による指定も取っ払って読みやすくした文章:

外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲 については、「外国語書面出願」とあるのは「外国語特許出願」と、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」とあるのは「国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の同項の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面」とする。

 

文章の構造

外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲 については、

「外国語書面出願」

とあるのは

外国語特許出願」

と、

「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」とあるのは

「国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の同項の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面

とする。

もっとも単純化した文章の構造

~については、AとあるのはA’と、BとあるのはB’とする。

特184の3~特184の20 まで国際出願(PCT出願)の条文の内容と主旨のまとめ 重要な順

184条の3(国際出願による特許出願) 趣旨は、「PCT出願は、日本でも出したことにしてあげるよ」という宣言です。 内容はというと、 日本を指定国に含むPCT出願は、その「国際出願日」に日本に特許出願されたものとみなすというもの。 これがないと、日本での審査が法的にスタートできないため非常に重要な条文です。

184条の4(翻訳文の提出) 趣旨は、日本語以外の出願すなわち外国語でされたt国試特許出願を日本の審査官が読めるようにするということ。 優先日から2年6月(30ヶ月)以内に翻訳文を出せ、出さないと取り下げとみなす(第3項) 取下げ擬制)は、暗記必須の重要事項です。 期限を過ぎると出願が死ぬため、実務上の最優先事項です。

184条の5 書面(氏名と住所)の提出  日本の特許庁に対して「これから日本で審査お願いします」という「挨拶状」のイメージ。しかし、特184の4で規定された国内書面提出期間内に、提出しないといけない。つまりこの期間内に、氏名・住所を書いた「書面」と、明細書などの翻訳である「国内書面」を提出しないといけない。

184条の6第1項:国際出願日における書類の効力。国際出願日における願書は、第36条の規定により提出した願書とみなす(184条の6第1項)。

184条の6第2項日本語でされた国際特許出願の場合の話です。明細書、特許請求の範囲、図面の中の説明、要約書の翻訳に関しても同様に36条の規定により提出されものとみなす(184条の6第2項)。

184条の6第2項:外国語でされた国際特許出願(外国語特許出願)における19条補正

184条の7:日本語でされた国際特許出願(日本語特許出願)における19条補正したらその写しを特許庁長官に提出。特17条の2第1項の規定と同じに扱う。

184条の8:34条補正(日本語特許出願、外国語特許出願)

184条の9第4項:第64条(出願公開)の規定は、国際特許出願には適用しない。

184条の9第5項:日本語特許出願の場合、出願公開⇒国際公開、外国語特許出願の場合、出願公開⇒国内公表 と読み替える。

 

国内書面という言葉について

条文での言葉の使い分けと、実務上の呼び方との間にギャップがありあす。なぜみんなが184条の5の書面のことを「国内書面」と呼ぶのかというと、特許法施行規則(省令)や特許庁の様式(ガイドライン)で、この184条の5第1項に基づいて提出する書類のタイトルが「国内書面」と定められているからです。 法律(特許法): 「書面」としか書いていない(内容は願書相当)。 運用(規則・実務): その書面を「国内書面」という名前で運用している。 このギャップが、法律を読み解く際のもどかしさの原因ですね。 3. なぜ「願書」をそのまま使わず、この書面(184条の5)が必要なのか? 「国際出願時に願書は出してるんだから、それでいいじゃないか」と思いますよね。これには**「情報のアップデート」**という趣旨があります。 趣旨: 国際出願から日本への移行までには2年半の月日が流れています。その間に、出願人の住所が変わっていたり、権利を譲渡していたりするかもしれません。 役割: 日本の特許庁が、最新の正しい情報(出願人の現住所など)を把握し、日本での手続きを円滑に進めるための**「日本支店への登録カード」**のような役割を果たしているのです。

  1. 2.3 第 184 条の 5 第 1 項に規定された書面 (1) 日本語特許出願、外国語特許出願を問わず、国際特許出願の出願人は、国内 書面提出期間(注)内に、出願人、発明者、国際出願番号等の事項を記載した 書面(以下この部において「国内書面」という。)を提出しなければならない(第 184 条の 5 第 1 項)。 https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/08_0100bm.pdf 特許庁

たしかに上の特許庁の文書には、はっきりと第184条の5第1項の書面のことを国内書面と呼ぶと書いてありますね。法律の条文にはそのようなことは書いていないのにも関わらずです。

 

184条の5 について

条文暗記における「184条の5」の真の重要性:この条文で最も重要なのは、1項の記載事項そのものよりも、2項と3項の「リカバリーの有無」です。

手続き   根拠条文   期限に遅れたら?   救済・猶予

翻訳文   184条の4   取り下げ擬制(即死) 184条の4第4項(故意でない場合のみ)

書面(願書相当)   184条の5   補正命令が来る   命令後の指定期間内に出せばOK

審査官の視点に立つと、「中身(翻訳文)がないと審査できないから即アウトだけど、事務的な紙(184条の5の書面)がないだけなら、後で出させればいいや」という、優先度の違いが現れている条文だといえます。この「184条の4(翻訳文)は厳しい、184条の5(書面)は甘い」という対比、試験ではよく狙われます。

184条の11 特許管理人 海外居住者が日本で手続きするための「窓口(代理人)」のルール。184条の11第5項(特許管理人不選任の取り下げ擬制)「通知」を受けた後、指定期間内に届け出ないと死ぬ。184条の4と並ぶ重要トラップ。

 

優先日について

優先日の定義は、優先権主張の有無で変わります。優先権主張がある場合、優先日 = 先の出願(パリ優先権のベースとなった出願)の出願日となります。例えば、日本で2024年1月10日に出願→これを基礎に2025年1月5日にPCT出願。この場合の優先日は2024年1月10日。国内移行期限は2024年1月10日から30月後。それに対して、優先権主張がない場合、優先日 = PCT国際出願日そのものです。例えば、2025年1月10日にいきなりPCT出願(先の出願なし)した場合の優先日は2025年1月10日で、国内移行期限は2025年1月10日から30月後です。実務上の注意点として、ほとんどのPCT出願は先の国内出願(日本出願など)を基礎として優先権主張するので、優先日=先の国内出願日というケースが圧倒的に多いです。このため「優先日から30月」という表現が使われています。PCT出願日ではなく、さらに1年前の日付が基準になるわけです。

 

 

関連するウェブ記事

  1. 外国語特許出願の国内書面提出を期限徒過しても救済可能 2023/07/04 kurikiyo https://techvisor.jp/blog/archives/6311
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  5. 特許法逐条解説 第184条の5 書面の提出及び補正命令 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=Rqumepp3Dak
  6. 特許法逐条解説 第184条の6 国際出願に係る願書、明細書等の効力等 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=UrQ7eci8Ric
  7. 特許法逐条解説 第184条の7 日本語特許出願に係る条約第十九条に基づく補正 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=gClkK3P9yL0
  8. 特許法逐条解説 第184条の8 条約第三十四条に基づく補正 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=DEfxlE68cpI
  9. 特許法逐条解説 第184条の9第1項及び2項 国内公表等 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=kYDDVeWb7TY
  10. 特許法逐条解説 第184条の10 国際公開及び国内公表の効果等 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=KC0XU5IHV_s
  11. 特許法逐条解説 第184条の11 在外者の特許管理人の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=aHFtfarjHlM
  12. 特許法逐条解説 第184条の12 補正の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=s2TxFmhbnPw
  13. 特許法逐条解説 第184条の12の2 特許原簿への登録の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=ZI9CqcaS0xY
  14. 特許法逐条解説 第184条の13 特許要件の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=Afxf9GaUT5o
  15. 特許法逐条解説 第184条の14 発明の新規性喪失の例外の特例 https://www.youtube.com/watch?v=jtRYispzHwU
  16. 特許法逐条解説 第184条の15 特許出願等に基づく優先権主張の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=-cAudW9oI9k
  17. 特許法逐条解説 第184条の16 出願の変更の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=zME5dpRz43w
  18. 特許法逐条解説 第184条の17 出願審査の請求の時期の制限 弁理士まっしーの知財教室  https://www.youtube.com/watch?v=MtdnL_r20Ig
  19. 特許法逐条解説 第184条の18 拒絶理由等の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=10gGDi2bFj8
  20. 特許法逐条解説 第184条の19 訂正の特例 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=dQaah6mI88s
  21. 特許法逐条解説 第184条の20 決定により特許出願とみなされる国際出願 弁理士まっしーの知財教室 https://www.youtube.com/watch?v=O3iHOG0oZ1k

Pct規則45の2.1 補充調査請求とは?

Pct規則45の2.1 補充調査請求って、何?趣旨?本調査してくれている機関とは別の機関に頼むの?

PCT規則45の2.1に規定されている「補充国際調査(Supplementary International Search: SIS)」は、「本調査をしてくれた機関(主たる国際調査機関)とは、また別の機関に頼む」制度です。「なぜわざわざ別の機関にお金と時間をかけて頼むのか?」という趣旨や、具体的なメリットについて整理します。


1. 補充国際調査(SIS)とは?
通常の国際調査(主調査)とは別に、出願人が任意で(希望する場合のみ)、別の国際調査機関に対して追加の先行技術調査を請求できる制度です。
* 請求先: 国際事務局(IB)
* 実施機関: 補充国際調査機関(SISA: Supplementary International Searching Authority)
* 期限: 優先日から22ヶ月経過するまで


2. 「別の機関」に頼むの?
はい、その通りです。
ここがこの制度の最大のポイントです。
規則上、**「主たる国際調査を行った機関以外の機関」**に対して請求しなければなりません。
> 例:
>  * 主調査: 日本国特許庁(JPO)で実施
>  * 補充調査: 欧州特許庁(EPO)に依頼する
>
という使い方が一般的です。


3. 制度の趣旨(なぜこれが必要なのか?)
主な趣旨は、**「言語や調査リソースの壁を越えて、先行技術の見落としを減らすこと」**です。
世界中のすべての文献を、一つの調査機関が完璧に網羅するのは物理的に不可能です。特に**「言語の壁」**が大きな理由となります。
具体的なメリット
* 言語的な補完(最大の理由)
   * 例えば、JPO(日本)は日本語や英語の文献調査は得意ですが、ドイツ語やスウェーデン語の文献は見落とす可能性があります。
   * そこで、EPO(欧州)やXN(北欧)に補充調査を頼むことで、それらの言語の先行技術を発見できる可能性が高まります。
* 各国移行後の「不意打ち」防止
   * 各国移行(国内段階)に入ってから、「実はこんな文献がありました」と拒絶されると、翻訳費用や代理人費用が無駄になります。
   * 早い段階(国際段階)で致命的な文献を見つけておけば、**「無駄な各国移行をしない(出願を取り下げる)」や「補正で回避する」**という戦略が立てやすくなります。
* セカンドオピニオン的役割
   * 別の審査官の視点で発明を見てもらうことで、発明の強さを客観的に評価できます。


4. 通常の国際調査と補充国際調査の違い
ざっくりとした比較表です。
| 項目 | 通常の国際調査 (Main Search) | 補充国際調査 (SIS) |
|—|—|—|
| 必須/任意 | 必須 (全出願で行われる) | 任意 (希望者のみ) |
| 実施機関 | 受理官庁が決めた機関 (日本ならJPO) | 主調査とは別の機関から選択 |
| 対象 | 出願全体 | 特定の請求項のみに限定も可能 |
| 目的 | 国際的な特許性の初期判断 | 特定言語・技術分野の穴埋め |


5. 注意点(実務的なポイント)
* すべての機関がやってくれるわけではない
   * 実は、日本国特許庁(JPO)は、現在「補充国際調査機関(SISA)」としての業務を行っていません。
   * つまり、「主調査:EPO → 補充調査:JPO」というルートは現在使えません。(逆に「主調査:JPO → 補充調査:EPO」は可能です)。
* 費用がかかる
   * 当然ですが、追加の調査手数料がかかります。EPOなどは費用が高額なので、費用対効果(本当にその国で権利化したいか)を考える必要があります。
まとめ
* 正体: メインの調査とは別に、おかわりで行う追加調査。
* 機関: 必ずメインとは違う機関(例:JPO以外の機関)に頼む。
* 趣旨: メインの機関が苦手な**「言語」や「技術分野」**をカバーし、後出しジャンケン(国内段階での新たな引用文献発見)のリスクを減らすため。
ご自身の出願戦略において、「欧州市場が重要だが、ドイツ語の文献が怖い」といった場合に非常に有効なツールです。

(Gemini3

青本は読むべき?

ちくじょう解説、通称「青本」は読まないとだめでしょうか?膨大なペエジ数がありますので最初から通読しようとすると、挫折します。

しかし、枝別たんとう過去問題集をやっても、解説が解説になっておらず、これだけよんでもどうしようもありません。どういうことかというと、問題文は法律の条文のいちぶをかえて答えがバツになるようにしているか若しくは変えずに答えがマルになるようにつくられていますそれにたいして、この問題集の解説は、法律の条文をけいさいして、だからただしいとか、だから間違いとかいているだけで、説明らしい説明にはなっていません。青本なら、丁寧な解説(趣旨の解説)があります。条文の丸暗記を避ける方法はその条文がなぜつくられたのかを理解するしかありません。なので青本を読むことは必要なことなのです。

商標法4条1項15号に関して レールデュタン 事件

商標法4条1項15号の理解において、極めて重要な最高裁判例である「レールデュタン事件」。この事件は、商標法における「広義の混同」という概念を最高裁が明確に認めたリーディングケースとして、弁理士試験や実務において頻出のトピックです。


事件の概要
* 事件名: レールデュタン事件
* 判決日: 最高裁 平成12年7月11日(平成10(行ヒ)85)
* 争点: 著名な香水ブランドと同じ名前を、別の商品(身飾品など)に使用した場合、**「出所が同じだと誤認しなくても、何か関係があると思われる(広義の混同)」**場合に4条1項15号が適用されるか。
登場人物と商標
* 原告(ニナリッチ社):
   * 著名商標:「L’AIR DU TEMPS」(レールデュタン)
   * 使用商品:「香水」(世界的に極めて著名)
* 被告(出願人):
   * 出願商標:「L’AIR DU TEMPS」(同一の綴り)
   * 指定商品:「身飾品、頭飾品、かばん類、袋物」など
何が問題になったのか?
商標法4条1項15号は、「他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標」を登録できないとしています。
通常、「混同」と言えば「あれ?これニナリッチが作った商品かな?」と勘違いすること(狭義の混同)を指します。
しかし、本件では指定商品が「香水」ではなく「かばんやアクセサリー」でした。消費者が「あの香水のニナリッチが、直接このカバンを作った」とまでは思わないとしても、「姉妹ブランドかな?」「ライセンス契約を結んでいるのかな?」と思う可能性がありました。
これを「混同」として保護すべきか? が最大の争点でした。
最高裁の判断(ここが重要!)
最高裁は、ニナリッチ側の主張を認め、4条1項15号の「混同」には「広義の混同」も含まれると明言しました。
1. 広義の混同の定義
最高裁は、4条1項15号にいう「混同」には、以下の2つが含まれるとしました。
* 狭義の混同: その商品が、他人の商品であると誤認されること(出所の同一性の誤認)。
* 広義の混同: その商品が、他人と「親子会社」「系列会社」「提携関係(ライセンス関係)」にある営業主の商品であると誤認されること。
2. 本件へのあてはめ
* 著名性: ニナリッチの「L’AIR DU TEMPS」は、香水分野で極めて著名である。
* 関連性: 有名なブランドが、香水だけでなく高級衣料品や身飾品(バッグ・アクセサリー)などを総合的に展開することは、商取引の実情としてよくあることである。
* 結論: そのため、指定商品(身飾品など)にこの商標を使うと、消費者は「ニナリッチと何か提携関係があるブランドかな?」と誤認するおそれ(広義の混同)があるため、登録は認められない。
勉強ノート:試験・実務対策のポイント
この判例から学ぶべき重要ポイントは以下の3点です。
* 「混同」の射程:
   4条1項15号の「混同」は、単に出所が同じだと思うだけでなく、「経済的な結びつき(提携・系列)」があると思う場合も含むことが確定しました。
* 商品・役務の非類似:
   商品が非類似(香水 \neq かばん)であっても、著名性が高く、かつ**「多角経営が一般的な分野(ファッションなど)」**であれば、混同のおそれが認められやすくなります。
* 引用商標の周知・著名性:
   この理屈を通すためには、引用商標(ここではニナリッチ側)が高い周知・著名性を持っていることが前提条件として非常に重要になります。
補足:防護標章との関係
この「広義の混同」の考え方は、防護標章登録(商標法64条)の要件ともリンクしています。著名ブランドを守るための理論的支柱となっている判決です。

Gemini3

特099 通常実施権の対抗力 (当然対抗制度)

特099 通常実施権の対抗力 (当然対抗制度)

特許法

(通常実施権の対抗力)
第九十九条 通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。

特068特権の効力、意23条、商25 語呂合わせ

語呂合わせ:「ムハーっ!効く~。兄さん、ニコっ♪」

(作画:ChatGPT5.2)

特68条 特許権の効力;意匠法23条 意匠権の効力、商標法25条 商標権の効力(、実用新案法16条 実用新案権の効力)

特許法

(特許権の効力)
第六十八条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

 

特017の3第6項 独立特許要件を準用する場合の補正

最後の拒絶理由通知に対応する 明瞭でない記載の釈明を目的とする補正については 独立特許要件は課されない。

Gemini:

その通りです。
「最後の拒絶理由通知」に対する応答として行う**「明瞭でない記載の釈明(第17条の2第5項第4号)」**を目的とする補正については、独立特許要件は課されません。
この点は、論文試験や担当官との応対において非常に重要な区別となりますので、整理しておきましょう。


1. 法的根拠(条文の構造)
特許法第17条の2(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正)の構造を見ると、このルールが明確になります。
* 補正の目的(第5項)
   最後の拒絶理由通知後の補正は、以下のいずれかに該当するものに限られます。
   * 1号:請求項の削除
   * 2号:特許請求の範囲の減縮
   * 3号:誤記の訂正
   * 4号:明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知で指摘されたものに限る)
* 独立特許要件の適用(第6項)
   > 「前項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする補正については、…独立して特許を受けることができるものでなければならない。」
   >
このように、条文上、独立特許要件(特許法第126条第7項の準用)が課されているのは**「第2号(減縮)」のみです。「第4号(釈明)」には適用されません。


2. なぜ「釈明」には独立特許要件が不要なのか?(趣旨)
* 減縮の場合:
   権利範囲を狭めて「特許可能」な状態に持っていく行為であるため、その狭めた範囲で本当に特許性(新規性・進歩性)があるかを厳格にチェックする必要があります。
* 釈明の場合:
   あくまで「不明確な記載をはっきりさせる(不備を治癒する)」ことが目的であり、発明の構成そのものを実質的に変更したり、新たな特許性を主張するものではないため、独立特許要件を課す必要性が低い(あるいは性質上なじまない)と考えられています。


3. 注意点:「新規事項」と「目的外補正」
独立特許要件は課されませんが、以下の制限は当然に適用されます。ここは混同しやすいポイントです。
| 要件 | 明瞭でない記載の釈明 (4号) への適用 | 備考 |
|—|—|—|
| 独立特許要件 | × 適用なし | これが今回のポイントです。 |
| 新規事項の追加禁止 | ○ 適用あり | 明瞭にするためであっても、当初明細書等に記載のない事項を追加することはできません(第17条の2第3項)。 |
| シフト補正の禁止 | ○ 適用あり | 発明の単一性を満たす範囲内である必要があります(第17条の2第4項)。 |
| 補正の目的 | ○ 適用あり | 拒絶理由で指摘された「不明瞭な箇所」に対応するものでなければなりません。「自発的な釈明」は認められません。 |
> 重要な実務ポイント
> 形式的には「釈明」として提出しても、審査官に「これは実質的に請求項の減縮(構成要件の限定)である」と認定されると、独立特許要件(進歩性など)の判断対象となるリスクがあります。補正書提出時の「補正の内容」の説明が重要になります。

特036条6項2号 明確性要件違反とは

特許法における**「明確性要件(特許法第36条第6項第2号)」**について、条文・審査基準・判例・試験対策の観点から整理しましょう。
ここは実務でも試験(短答・論文)でも超重要ポイントです。


1. 条文(何条?)
明確性要件は、特許法第36条第6項第2号に規定されています。
> 特許法第36条第6項
> 経済産業省令で定めるところにより、特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
> 第2号
> 特許を受けようとする発明が明確であること。
>


なぜ必要なのか?(趣旨)
* 第三者のため: 権利範囲が不明確だと、第三者が「何を作ったら特許侵害になるか」が分からず、事業活動が阻害される(不測の不利益防止)。
* 審査官のため: 発明が明確でないと、先行技術との対比(新規性・進歩性の判断)ができない。
2. どのような場合に違反となるか?(審査基準)


特許庁の審査基準では、主に以下のようなケースで「明確性要件違反」となります。
* 記載そのものが不明瞭
   * 例:「~等」「主として」「適宜の」といった用語で範囲があいまいな場合。
   * 例:「高温」「大型」などの比較基準がない相対的な用語(ただし、技術常識で定まる場合はOK)。
* 発明のカテゴリーが不明瞭
   * 例:「~方法およびその装置」のような記載(「物」なのか「方法」なのか不明)。
* 技術的に矛盾している
   * 明細書の記載と、請求項(クレーム)の用語の定義が食い違っている場合。
* プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PbPクレーム)
   * 「物」の発明なのに、その「製造方法」で物を特定している場合(後述の判例で厳格化されました)。


3. 重要判例(最高裁判決)
明確性要件で絶対に外せない判例は、いわゆる**「プラバスタチン事件」を受けた後の「リパーゼ判決」**(プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する最高裁判決)です。
【最判平27.6.5(平成24(受)1204/2658)】(リパーゼ判決)
* 論点: 物の発明について「製造方法」で特定する記載(PbPクレーム)は明確性要件を満たすか?
* 判旨(ルール):
   * 物の発明の特許請求の範囲に「製造方法」が記載されている場合、その記載は(製法限定ではなく)「その製造方法により製造された物」自体を意味するものと解釈する(物同一説)。
   * ただし、明確性要件(36条6項2号)との関係では、「不可能・非実際的事情」がある場合を除き、明確性要件違反として無効となる。
> 「不可能・非実際的事情」とは?
> その物を構造や特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情。
>
★試験対策ポイント:
「構造で書けるのに、あえて製法で書いたクレーム」は、原則として明確性要件違反(拒絶・無効)となります。


4. 弁理士試験 過去問の傾向
明確性要件は、短答・論文の双方で頻出です。
短答式試験(出題イメージ)
* ○×問題: 「特許請求の範囲に『約100℃』と記載した場合、直ちに明確性要件違反となる。」
   * 答え: ×(「約」等の用語があっても、技術分野の常識から範囲が理解できるなら違反とならない場合がある)。
* ○×問題: 「物の発明において製造方法を記載した場合、不可能・非実際的事情がなければ明確性要件違反となる。」
   * 答え: ○(リパーゼ判決の理解を問う問題)。
論文式試験(出題イメージ)
* 事例問題: 「化学物質Xの発明について、出願人Aは構造を特定できなかったため、製造プロセスを記載して出願した。この出願に対する拒絶理由を述べ、反論の道筋を論ぜよ。」
   * 解答構成:
     * 36条6項2号(明確性要件)違反の拒絶理由通知が来る可能性が高い。
     * 原則として、物は構造で特定すべき(判例基準)。
     * 反論として「不可能・非実際的事情」が存在することを主張立証する(構造解析が困難であること等)。


まとめノート
| 項目 | 内容 |
|—|—|
| 条文 | 特許法第36条第6項第2号 |
| 要件 | 発明が「明確」であること |
| 趣旨 | 第三者の予測可能性確保、審査の円滑化 |
| 代表的違反 | 相対的用語(高温など)、カテゴリー不明、PbPクレーム(原則) |
| 最重要判例 | リパーゼ判決(PbPは「不可能・非実際的事情」がない限り違反) |
明確性要件は、**第36条第4項第1号(実施可能要件)や第36条第6項第1号(サポート要件)**とセットで問われることが多いです。

特032 物質特許

「物質特許」は、特に化学・医薬分野では非常に重要な概念です。かつての日本との違いや、実務で必須となる要件・判例を整理しました。


1. 物質特許(Product Patent)とは?
**「化学物質そのもの」**に対して与えられる特許のことです。
その物質を「どうやって作ったか(製法)」や「何に使ったか(用途)」に関係なく、その物質(化合物)を作ったり売ったりする行為すべてに権利が及びます。そのため、特許の中でも非常に強力な権利と言われます。
特許の種類と権利範囲の違い
| 特許の種類 | 対象 | 権利範囲(強さ) |
|—|—|—|
| 物質特許 | 化合物そのもの
(例:新規化合物X) | 最強。
他社が「別の製法」で作っても、「別の用途」で売っても侵害になる。 |
| 製法特許 | 作る方法
(例:Xの製造方法) | 限定的。
他社が「全く別の方法」で同じ物質を作った場合は侵害にならない。 |
| 用途特許 | 使い道
(例:Xを成分とする○○剤) | 限定的。
その特定の使い道に対してのみ権利が及ぶ。 |


2. 日本で認められる?(歴史的経緯)
現在は認められます。
しかし、昔は認められていませんでした。この歴史的経緯は試験や実務の背景知識として重要です。
* 1975年(昭和50年)以前:
   * 認められていなかった。
   * 日本の化学産業が未成熟だったため、強い権利である物質特許を認めると、海外企業に市場を独占される恐れがあったからです。当時は「製法特許」でしか保護されませんでした。
* 1976年(昭和51年)1月1日以降:
   * 物質特許の導入。
   * 特許法の改正により認められるようになりました。日本の技術力が向上し、国際的な調和(パリ条約など)の観点からも導入が必要になったためです。


3. 根拠条文は?
「物質特許を認める」という条文が新設されたわけではなく、「物質特許を禁じていた条文」が削除されたというのが法的な説明になります。
* 旧・特許法 第32条(削除済み):
   かつてこの条文には「不特許事由(特許を受けられないもの)」として以下が挙げられていました。
   > 一 飲食嗜好品
   > 二 医薬(調合の方法によるものを除く)
   > 三 化学方法により製造すべき物質
   >
* 現在の特許法 第29条:
   旧32条が削除されたことで、要件(新規性・進歩性など)さえ満たせば、通常の第29条に基づき物質そのものも特許の対象となりました。


4. 登録のための要件(審査基準)
通常の特許要件(新規性・進歩性)に加え、化学物質特有のポイントがあります。
* 物質の特定(構造の明示)
   * 原則として、化学構造式で特定する必要があります。
   * 構造が不明な場合のみ、物理的・化学的性質(融点、スペクトルデータ等)での特定が許されます。
* 有用性の証明(Industrial Applicability)
   * 「新しい物質ができた」だけでは特許になりません。その物質が**「何の役に立つのか(有用性)」**を明細書に書く必要があります。
   * (例:「この新規化合物は、○○受容体に作用するため、高血圧治療薬として有用である」等)
* 実施可能要件(Enablement)
   * 当業者がその物質を実際に作れるように、製造方法を具体的に記載する必要があります。


5. 知っておくべき有名な判例
物質特許に関連して、実務への影響が大きい判例を2つ紹介します。


① プロダクト・バイ・プロセス(PBP)請求項に関する最高裁判決
* 事件名: プラバスタチンナトリウム事件(最判平27.6.5)
* 論点: 「物質の構造を特定できず、『製造方法』によって物質を特定したクレーム(PBPクレーム)」は認められるか?
* 結論: 原則としてNG(明確性要件違反)。
   * 「構造や特性による特定が不可能または非現実的である」という特別な事情がある場合のみ例外的に認められる、という厳しい基準が示されました。
   * これにより、安易に製法で物質を特定する書き方ができなくなりました。


② 選択発明(Selection Invention)の進歩性
* 概念: 既にある特許(先願)で「一般式(広い範囲)」が開示されている中で、その範囲に含まれる「特定の狭い範囲(下位概念)」の物質を後から特許にする場合。
* 判断基準: 先行発明の明細書に具体的に開示されておらず、かつ、先行発明からは予測できない顕著な効果(異質な効果や、同質でも際立って優れた効果)がある場合に限り、物質特許(選択発明)として認められます。


まとめ
* 物質特許とは: 化学物質そのものの権利(製法特許より強力)。
* 日本では: **1976年(昭和51年)**から導入(旧32条の削除)。
* ポイント: 構造の特定と、**「何に使えるか(有用性)」**の記載が必須。