免疫組織化学 immunohistochemistry は、見たいものに対する抗体を用いて、見たいものを可視化する実験手法です。一方、組織化学 histochemistry は、抗体は使わずに染色液(ヘマトキシリン・エオジン染色など)を用いて組織切片を染色して細胞を可視化する実験手法です。どちらも、大学院に入って実験を初めて以来、当たり前のように使ってきました。
組織化学 histochemistryといえば、染色液で染色することくらいの理解で、それ以上この名称について深く考えたことはありませんでした。しかし、病理学の教科書を読んでいたら、「無機・有機物質を対象として、組織内の存在を証明する研究方法は組織化学と呼ばれる」という説明があり、そうか、組織学+化学で、組織化学なのかと気づかされました。そのまんまなのですが、組織化学という実験があまりにも日常的なものだったので、今までそこまで思いが至りませんでした。組織切片内に存在する特定の物質を、化学反応によって検出するから、組織化学なのですね。
グーグル検索結果の説明によれば、例えば鉄イオンを検出する組織化学の場合、
鉄(II)イオンとヘキサシアニド鉄(III)イオンの化学反応:
3Fe²⁺ + 2K₃[Fe(CN)₆] → Fe₃[Fe(CN)₆]₂ + 6K⁺
(Fe₃[Fe(CN)₆]₂は、ベルリンブルーの組成式の一つ)
(Fe₃[Fe(CN)₆]₂は、ベルリンブルーの組成式の一つ)
となります。ベルリンブルー(ペルシアンブルー Prussian blue)は鮮やかな青色です。
ベルリンブルー染色が使われる例は、鉄芽球症で、骨髄中の赤芽球にヘモグロビン由来の鉄が過剰に蓄積し、ベルリンブルー染色で青く染まります。
- https://www.beckmancoulter.co.jp/dx/quiz_past/hematology/morphology/Fe.html