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暗記すべき法律の条文

特1条(目的)この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

特2条1項(定義)この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

特2条3項 「実施」とは、一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

著2条1号(定義)著作物 思想又は感情創作的表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著2条 定義 志賀直哉もガーナチョコレートを食べたい

 

(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演レコード放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 想又は感情創作的表現したものあつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二 著作者 著作物を創作する者をいう。
三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
四 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。
七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。
七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
九 放送事業者 放送を業として行う者をいう。
九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。
九の三 有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。
九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
九の六 特定入力型自動公衆送信 放送を受信して同時に、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。)をいう。
九の七 放送同時配信等 放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。以下この号において同じ。)のうち、次のイからハまでに掲げる要件を備えるもの(著作権者、出版権者若しくは著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして文化庁長官が総務大臣と協議して定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。
イ 放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(当該放送番組又は有線放送番組が同一の名称の下に一定の間隔で連続して放送され、又は有線放送されるものであつてその間隔が一週間を超えるものである場合には、一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われるもの(当該放送又は有線放送が行われるより前に行われるものを除く。)であること。
ロ 放送番組又は有線放送番組の内容を変更しないで行われるもの(著作権者等から当該自動公衆送信に係る許諾が得られていない部分を表示しないことその他のやむを得ない事情により変更されたものを除く。)であること。
ハ 当該自動公衆送信を受信して行う放送番組又は有線放送番組のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定めるものが講じられているものであること。
九の八 放送同時配信等事業者 人的関係又は資本関係において文化庁長官が定める密接な関係(以下単に「密接な関係」という。)を有する放送事業者又は有線放送事業者から放送番組又は有線放送番組の供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者をいう。
十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
十の三 データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
十二 共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十四 録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十五 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。
十七 上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。
十八 口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。
十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
二十 技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号、第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第四号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第六項において同じ。)を制限する手段(著作権者等の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
二十二 権利管理情報 第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項から第四項までの権利(以下この号において「著作権等」という。)に関する情報であつて、イからハまでのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの(著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る。)に用いられていないものを除く。)をいう。
イ 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報
ロ 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報
ハ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報
二十三 著作権等管理事業者 著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第三項に規定する著作権等管理事業者をいう。
二十四 国内 この法律の施行地をいう。
二十五 国外 この法律の施行地外の地域をいう。
2 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
4 この法律にいう「写真の著作物」には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含むものとする。
5 この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。
6 この法律にいう「法人」には、法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含むものとする。
7 この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。
8 この法律にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする。
9 この法律において、第一項第七号の二、第八号、第九号の二、第九号の四、第九号の五、第九号の七若しくは第十三号から第十九号まで又は前二項に掲げる用語については、それぞれこれらを動詞の語幹として用いる場合を含むものとする。

https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048

参考

  1. 著作物 定義 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/93726501_05.pdf
  2. 将棋ナレーション事件と著作権(1)知財高裁令和5年3月16日判決 弁護士クラフトマン https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20250121/
  3. 「はじめての著作権法」 著者:池村 聡 出版社:日本経済新聞出版社 出版日:2018年1月 基本書ですが、侮るなかれ。 https://www.ip-ginoushikai.org/view_popup.php?pageId=1495 知財を勉強された方であれば、著作物の4要件「思想又は感情を」「創作的に」「表現したものであって」「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」は、空で言えて当たり前。

特036第6項1号 サポート要件 アムジェンvsサノフィ事件:日米の判断ロジック完全比較

バイオ特許の歴史的転換点となった「アムジェンvsサノフィ(PCSK9)事件」。結論から言えば、日米ともにアムジェンの敗訴(特許無効)で幕を閉じましたが、そこに至る**「法的ロジック(無効理由)」**には、興味深い違いがあります。本記事では、この世紀の特許論争の論点を、日米の法制度と判決文を引用しながら徹底比較します。


1. 争点:何が問題だったのか?

全ての発端は、アムジェンが取得した特許の**「クレーム(請求項)の書き方」**にありました。

  • 対象: PCSK9に結合し、LDLRとの結合を阻害する(中和する)抗体。

  • アムジェンの主張(機能的クレーム):「私が発見した特定の抗体(26個の実施例)だけでなく、**『同じ場所に結合して、同じように中和する機能を持つ抗体』**なら、構造(アミノ酸配列)がどうであれ、すべて私の権利である」
  • サノフィの反論:「その定義だと、理論上数百万種類の抗体が含まれる。アムジェンはごく一部(26個)しか作り方を教えていない。残りの膨大な抗体まで独占するのは、発明の公開(代償)と独占権のバランスを欠いている」

2. アメリカでの判断: 「実施可能要件」の壁

米国連邦最高裁は、2023年5月、アムジェンの特許を**「実施可能要件(Enablement)」違反**として無効にしました。

根拠条文:米国特許法 112条(a)

35 U.S.C. § 112(a)

“The specification shall contain a written description of the invention, and of the manner and process of making and using it, in such full, clear, concise, and exact terms as to enable any person skilled in the art … to make and use the same…”

(明細書は、当業者がその発明を作り、かつ使用することができるように(enable)、十分、明確、簡潔かつ正確な用語で記述しなければならない…)

判決のロジック:「過度な実験(Undue Experimentation)」

最高裁(ゴーサッチ判事)は、以下の論理でアムジェンを断罪しました。

  1. 「作るための努力」が重すぎる:クレームされた範囲(Genus)に含まれる数百万の抗体を作るには、アムジェンが開示した方法(スクリーニング)だけでは不十分。研究者は無作為に抗体を作り、一つひとつテストする**「トライ&エラー」**を繰り返さなければならない。
  2. 構造と機能は予測不能:サノフィが示した実験データの通り、アミノ酸を一つ変えただけで機能が失われることがある。つまり、構造から機能を予測できないため、論理的な設計ができず、手当たり次第の実験が必要になる。

決定的な判決文(名言)

最高裁は、アムジェンの開示を「発明」ではなく「宿題」だと切り捨てました。

“That is not enablement; it is a research assignment.”

(それは実施可能要件を満たすものではない。それは**『研究課題(Research Assignment)』**である。)

Amgen Inc. v. Sanofi, 598 U.S. 594 (2023)


3. 日本での判断: 「サポート要件」の壁

日本の知財高裁(大合議)は、2023年1月、アムジェンの特許を**「サポート要件」違反**として無効にしました。

※米国と異なり、日本は「作り方(Enablement)」よりも「記載の整合性(Support)」を問題視しました。

根拠条文:特許法 第36条第6項第1号

特許法 第36条第6項第1号

「特許請求の範囲の記載は、…次の各号に適合するものでなければならない。

一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」

判決のロジック:「一般化・拡張できない」

知財高裁は、以下の論理を展開しました。

  1. 未知のメカニズムまで含んでいる:クレームは「競合阻害」という機能で定義されているため、明細書に書かれたメカニズムとは異なる結合様式や、異なる構造を持つ抗体まで含まれてしまう。
  2. 一部の例から全体は言えない:抗体の構造と機能の相関関係は予測し難い(Unpredictable)。したがって、少数の実施例(26個)のみに基づいて、クレーム範囲全体(数百万個)にわたって課題解決できると一般化・拡張することはできない。

決定的な判決文

「発明の詳細な説明に、クレームに含まれる広範な抗体等まで拡張ないし一般化できるといえるだけの具体的な例の記載があるか、そうでなくても、当業者が…(中略)…課題を解決できると認識できる程度の記載があることを要する」

知財高裁 令和2年(行ケ)第10093号


4. 日米比較まとめ

項目 🇺🇸 アメリカ (Supreme Court) 🇯🇵 日本 (知財高裁 大合議)
無効理由 実施可能要件 (Enablement) サポート要件 (Support Requirement)
重視した点

「実験の手間・労力」

 

(How to make)

「説明の論理・整合性」

 

(Description vs Scope)

キーワード

過度な実験

 

(Undue Experimentation)

 

研究課題

 

(Research Assignment)

拡張ないし一般化

 

(Generalization)

 

予測し難い

 

(Unpredictable)

判断の核心 スクリーニングで正解を見つけるのは「宝探し」であり、発明の完成とは言えない。 一部の例だけで、異なるメカニズムを含む全範囲を独占する理屈が通っていない。

5. 結論: 「機能的クレーム」の終焉

日米で適用した条文やロジックのアプローチは異なりますが、到達した結論は完全に一致しています。

それは、**「構造と機能の関係が予測できないバイオ分野において、少数の実施例だけで広範な権利(機能的クレーム)を独占することは、もはや許されない」**ということです。

アムジェン敗訴は、特許実務における「機能的クレーム時代の終わり」と、「構造(配列)に基づいた堅実なクレーム作成の重要性」を世界に知らしめました。


読者へのNext Step

より詳細な原文を確認したい方は、以下のリンクを参照してください。

 

(This blog article was generated by manus. Prompt used: アムジェンvsサノフィの特許論争の論点をまとめて。アメリカでの判断と日本での判断を対比させて。必要に応じて特許法の条文や判決文を引用して、根拠を示しながら。)

特036第4項1号 サポート要件 抗体の機能特許アムジェンの敗訴

# アムジェン対サノフィ特許論争:機能的クレームの有効性に関する日米の判断対比

## 1. 序論:論争の概要と核心的論点

本報告書は、高コレステロール血症治療薬であるPCSK9(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)を標的とする抗体を巡り、アムジェン社(Amgen Inc.)とサノフィ社(Sanofi)との間で繰り広げられた国際的な特許権侵害訴訟について、その核心的な論点と、米国および日本における司法判断の対比を、根拠となる特許法の条文や判決文を引用しつつ分析するものです。

この論争の核心は、**抗体の機能**によってその技術的範囲を定義する**機能的クレーム**(上位概念クレーム)が、各国の特許法における**記載要件**(米国ではWritten DescriptionおよびEnablement、日本ではサポート要件および実施可能要件)を満たすか否かという点に集約されます [1] [2]。

アムジェンが権利行使を試みた特許クレームは、PCSK9の特定の残基に結合し、かつPCSK9とLDL受容体との結合を阻害するという**機能**によって、無数の抗体を含む広範なクラスを定義していました。

## 2. 米国における判断:実施可能要件(Enablement Requirement)の観点

米国における訴訟は、連邦最高裁判所まで争われ、2023年5月18日にアムジェン敗訴の判決が確定しました [2]。

### 2.1. 根拠条文と判断の焦点

米国連邦最高裁判所は、アムジェンの特許が米国特許法第35編第112条(a)項に規定される**実施可能要件**(Enablement Requirement)を満たさないと判断しました。

> **米国特許法第35編第112条(a)項(35 U.S.C. § 112(a))**
> “The specification shall contain a written description of the invention, and of the manner and process of making and using it, in such full, clear, concise, and exact terms as to enable any person skilled in the art to which it pertains, or with which it is most nearly connected, to make and use the same…” [3]

この条文は、特許明細書が、当業者が**過度の実験**(undue experimentation)をすることなく発明を実施できる程度に、その製造および使用の方法を記載していなければならないと定めています。

### 2.2. 判断の理由

最高裁は、アムジェンの明細書に記載された26個の抗体の例示と、それらを作製するための2つの一般的な方法だけでは、クレームが定義する**膨大な数の抗体**のクラス全体を、過度の実験なしに作製・使用できるとは言えないと結論付けました [2]。

裁判所は、開示された方法が、クレームの範囲全体を実施可能にするための**共通の特徴**を特定しておらず、単に「**研究課題を設定したにすぎない**」(”research agenda”)と指摘しました。すなわち、クレームの範囲が広大であるのに対し、明細書の開示がその広範な技術的範囲を裏付けるには不十分であるという点が、実施可能要件違反の決め手となりました。

## 3. 日本における判断:サポート要件(Written Description Requirement)の観点

日本における訴訟では、2025年4月16日の知的財産高等裁判所(知財高裁)判決(令和5年(ネ)10107号)において、アムジェンの特許が**サポート要件**に違反するとして、特許権侵害に基づく請求が棄却されました [1]。

### 3.1. 根拠条文と判断の焦点

知財高裁は、特許法第36条第6項第1号に規定される**サポート要件**を主要な論点としました。

> **特許法第36条第6項第1号**
> 「特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものでなければならない。」 [4]

この要件は、特許請求の範囲に記載された発明が、明細書の発明の詳細な説明によって裏付けられていること、すなわち、発明の詳細な説明に記載された事項によって、請求項に係る発明が**課題を解決できる**と当業者が認識できることを要求します。

### 3.2. 判断の理由

知財高裁は、クレームが「参照抗体と競合する、PCSK9とLDLRの結合を中和する抗体」という機能的クレームであることに対し、明細書には、抗体が参照抗体と競合するという事実のみから、直ちに中和機能を備えると評価できるほどの**合理的なメカニズムの開示**がなされていないと判断しました [1]。

特に、より包括的な「競合」概念と「中和」機能との関係の不明確性に着目し、機能的クレームを裏付ける**技術的裏付けが不十分**であるとして、サポート要件違反を認定しました。これは、機能的クレームを用いる際には、それを裏付ける合理的なメカニズムの開示が不可欠であることを改めて示したものです。

## 4. 日米の判断の対比と論点の共通性

アムジェン対サノフィの特許論争における日米の判断は、異なる法制度の下で異なる記載要件を適用しながらも、実質的には**広範な機能的クレームの有効性**という共通の論点に帰着しました。

項目 米国(連邦最高裁) 日本(知財高裁)
最終判断 アムジェン敗訴(特許無効) アムジェン敗訴(特許無効)
主要な論点 実施可能要件(Enablement Requirement) サポート要件(Written Description Requirement)
根拠条文 35 U.S.C. § 112(a) 特許法第36条第6項第1号
判断の核心 過度の実験なしにクレーム範囲全体を実施できるか(実験の負担を重視)。 クレームが発明の詳細な説明に記載されたものと言えるか(技術的裏付けを重視)。
共通する問題 機能で定義された上位概念の抗体クレームの範囲が広大であるのに対し、明細書の開示がその広範な技術的範囲を裏付けるには不十分であった点。

米国では、クレームの範囲全体をカバーするために必要な**実験の負担**(過度の実験)が実施可能要件違反の根拠となりました。一方、日本では、クレームの範囲が明細書に記載された**技術的知見**によって裏付けられているか(課題解決の可能性)という**技術的裏付け**の観点からサポート要件違反が認定されました。

両国の判断は、バイオ医薬品、特に抗体のような複雑な技術分野において、**機能的クレーム**を設定する際には、そのクレームが包含する広範な技術的範囲に見合うだけの**具体的かつ網羅的な開示**が明細書に求められるという、重要な実務的指針を示しています。


### 参考文献

[1] 「2025.04.16 「アムジェン v. サノフィ」 知財高裁令和5年(ネ)10107 ― 機能的クレームにおけるサポート要件の適用と無効理由の再主張の可否 ―」. 医薬系 “特許的” 判例ブログ.
[2] 「【速報】【米国】【特許】Amgen v. Sanofiアメリカ連邦最高裁判決」. TMI総合法律事務所 Our Eyes.
[3] 「2164-The Enablement Requirement」. United States Patent and Trademark Office (USPTO) Manual of Patent Examining Procedure (MPEP).
[4] 「第 2 節 サポート要件(特許法第 36 条第 6 項第 1 号)」. 特許庁 審査基準.

 

(This article was generated by manus.im)

Prompt used: アムジェンvsサノフィの特許論争の論点をまとめて。アメリカでの判断と日本での判断を対比させて。必要に応じて特許法の条文や判決文を引用して、根拠を示しながら。

特041 国内優先権、 特043 パリ条約、 特184の3 PCT出願

プロンプト:パリ条約、PCT、国内優先権など国際出願に関するもろもろを、網羅的にかつわかりやすくまとめて。頭がこんがらがったので。

Gemini:その気持ち、痛いほどわかります!特許法の学習において、「パリ条約」「PCT」「国内優先権」が絡み合うこのエリアが、最大の挫折ポイントの一つです。「条文番号」と「中身」がごちゃ混ぜになる原因は、ルート(道筋)が整理できていないからです。シンプルに**「3つのルート」**に分けて整理しましょう。これで頭の中の地図が完成します。

【全体地図】3つのルートだけ覚えればいい

まず、以下のどれに当てはまるか?で適用条文が決まります。

  1. 【国内ルート】 日本 $\rightarrow$ 日本 (国内優先権)

  2. 【パリルート】 外国 $\rightarrow$ 日本 (直接)

  3. 【PCTルート】 どこか $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本 (国際特許出願)

これらを一つずつ解きほぐします。

1. 【国内ルート】 日本 $\rightarrow$ 日本

「去年の俺の出願(日本)をベースに、改良して出し直す」

  • 状況: 日本で出願Aをして、1年以内に内容を追加して日本で出願Bをする。

  • 使う条文:第41条(国内優先権)

  • 何が起きる?

    • 出願Bの審査時、共通する発明は「出願Aの日」に出したとみなされる。

    • 先願Aは「みなし取下げ」で消滅する(重複防止)。

  • ポイント: ここには外国も国際も関係ありません。「41条」はドメスティックな話です。

2. 【パリルート】 外国 $\rightarrow$ 日本(直接)

「アメリカで出した出願を、日本でも直接出しに来た」

  • 状況: 米国で出願Aをして、1年以内に日本国特許庁へ直接出願Bをする。

  • 使う条文:第43条(パリ条約による優先権)

  • 何が起きる?

    • 出願Bの審査時、新規性などの判断基準日が「米国出願Aの日」になる。

    • 手続き: 日本への出願と「同時」に優先権主張し、1年4ヶ月以内に証明書を出す。

  • ポイント: これが「THE・優先権」の基本形です。

3. 【PCTルート】 PCTを経由して日本へ

ここが混乱の元凶です。**「入り口」「優先権の処理」**の2段構えで考えます。

ステップ①:日本に入ってくる(入り口)

PCT出願(国際出願)を日本に入れるには、まずこの条文を通ります。

  • 使う条文:第184条の3(国際特許出願)

  • 何が起きる?

    • **「このPCT出願は、日本の特許出願とみなす!」**と宣言されます。

    • これによって初めて、日本の特許法の土俵に乗ります。

ステップ②:優先権はどう扱う?

土俵に乗った後、「そういえばこれ、優先権ついてるよね?」という処理をします。

ここで、**「元ネタ(基礎出願)がどこか」**によって2パターンに分かれます。

パターンA:外国 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本

(例:米国の出願を基礎にPCTをして、日本に来た)

  • 基本は「パリルート(43条)」と同じ考え方ですが、PCT用の特例を使います。

  • 使う条文:第184条の15(優先権主張の特例)

  • 仕組み: 「本来は日本出願と同時に主張しなきゃダメ(43条)だけど、国際段階で主張してあるから、それでOKとみなすよ」という読み替え規定です。

パターンB:日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本(自己指定)

(例:日本の出願を基礎にPCTをして、日本に戻ってきた)

  • これは実質的に「国内ルート(41条)」と同じことをPCT経由でやっています。

  • 使う条文:第41条第1項のカッコ書き & 第184条の15

  • 仕組み: 184条の3で「日本出願」とみなされた結果、**「日本の出願(基礎) $\rightarrow$ 日本の出願(PCT)」**という形になるので、第41条(国内優先権)のルールが適用されます。

    • 重要: だから、PCT経由であっても、基礎になった日本の出願は**「みなし取下げ」**になります。

【最終まとめ】 混乱解消マトリクス

この表だけスクショして保存してください。

ルート 状況 優先権の条文 基礎出願の運命
国内ルート 日本 $\rightarrow$ 日本

第41条

 

(国内優先権)

消える

 

(みなし取下げ)

パリルート 外国 $\rightarrow$ 日本

第43条

 

(パリ優先権)

消えない

 

(外国の主権だから日本は消せない)

PCTルート

 

(外国発)

外国 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本

第184条の15

 

(実質は43条の特例)

消えない

PCTルート

 

(日本発)

日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 日本

第41条

 

(184条の3を経由して適用)

消える

 

(国内優先権と同じ扱い!)

つまり…

  • 184条の3 は、PCTを日本出願に変身させる「入り口の魔法」。

  • 41条 は、日本と日本をつなぐ「上書き保存(古いの消去)」。

  • 43条 は、外国の日付を借りる「借用書」。

  • 184条の15 は、PCT経由の時に43条を使いやすくする「変換アダプタ」。

これで少し整理できましたでしょうか?

「日本発のPCT(自己指定)」が、実は41条の世界に引きずり込まれる…というあたりが、一番のハマりポイントだったかもしれません。

 

質問:今の回答で、PCTルートで 日本 → PCT → 外国 を含めなかったのは、日本の特許に絞ったってこと?

Gemini:その通りです!さすが、全体像が見えてきましたね。おっしゃる通り、先ほどのまとめは**「日本の特許法(日本の特許庁)がどう判断するか?」**という視点に絞っていました。なぜ「日本 → PCT → 外国」をあえて外したのか。理由はシンプルで、**「そこから先は日本の法律(特許法)の管轄外だから」**です。この違いを整理すると、特許法の勉強において「どこまで覚えればいいか」の境界線がハッキリします。

## 1. なぜ「日本 → 外国」は特許法の試験(条文)に出にくい?

日本の特許法(第1条~第204条)は、あくまで**「日本の特許庁と、日本の審査官のためのルールブック」**です。

あなたが「日本 → PCT → アメリカ」に出願した場合を想像してください。

  1. 日本でPCT出願する時:

    • 日本の特許庁(受理官庁)に書類を出します。ここまでは日本の特許法(国際出願法)のルールです。

  2. アメリカに移行した後:

    • 審査をするのはアメリカの審査官です。

    • 彼らが使うルールブックは**「米国特許法」**です。

    • 彼らがあなたの優先権を認める根拠は、日本の特許法43条ではなく、**「パリ条約(という国際条約)」と「米国特許法」**です。

つまり、「日本の特許法第43条(優先権主張)」は、外国へ出ていく時には使われません。(43条は、日本に入ってくる人に「優先権証書を出せ」と命令する条文だからです。)

## 2. ベクトル(方向)で整理すると完璧

混乱の原因は、**「Inbound(日本に入ってくる)」「Outbound(日本から出ていく)」**が混ざっていることです。

条文勉強のメインは、圧倒的にInboundです。

方向 ルート 適用される日本の法律 備考

Inbound

 

(日本へ入る)

外国 $\rightarrow$ 日本

 

PCT $\rightarrow$ 日本

第43条

 

第184条の3 など

試験のメイン!

 

「日本の審査官がどう扱うか」の規定。

Outbound

 

(日本から出る)

日本 $\rightarrow$ 外国

 

日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 外国

特になし

 

(条約に基づく権利)

日本の法律は「行ってらっしゃい(受理)」まで。

 

向こうでの扱いは現地の法律次第。

## 3. ただし、1つだけ「特大の落とし穴」がある

「じゃあ、日本から出ていくPCT(日本 $\rightarrow$ PCT $\rightarrow$ 外国)は無視していいんだね?」

ここで**「自己指定(日本も指定国に含む)」**という罠があります。

多くの日本企業は、PCT出願をする際、**「外国(アメリカ等)」だけでなく「日本」**も指定国に入れます(全指定が自動ですが)。

すると、1つのPCT出願の中に2つの顔を持つことになります。

  • 顔A(対 外国): 日本を出ていく出願 $\rightarrow$ 日本の特許法は関係なくなる。

  • 顔B(対 日本): ブーメランのように日本に戻ってくる出願 $\rightarrow$ 第41条(国内優先権)が発動!

先ほどの解説で「PCTルート(日本発)」を含めたのは、この**「顔B(ブーメラン)」**があるため、日本の特許法上、無視できない(みなし取下げ等の影響が出る)からです。

## まとめ:頭の中のスイッチを切り替える

  • **「第43条」「第41条」「第184条」**という単語が出たら $\rightarrow$ **「日本に入ってくる(日本の審査官が見る)」**話をしているんだな、と考える。

  • **「日本から外国へ出す」という話なら $\rightarrow$ それは「条約」「外国の法律」**の話だな、と割り切る。(日本の特許法の条文操作などの細かい議論は発生しない)

これで、「なぜ解説から省かれたのか」が腑に落ちましたでしょうか?

この「管轄(どこの国の法律か)」の意識を持つだけで、条文を読む解像度がグッと上がります!

 

特77 専用実施権

質問:専用実施権と独占通常実施権との違いは何?

Gemini:独占通常実施権と専用実施権の違い、および関連する特許法の条文について解説します。


💡独占通常実施権と専用実施権の違い

項目 専用実施権(特許法77条) 独占通常実施権(特許法に明文規定なし、契約による)
法的性質 物権的権利(特許権に準じる強力な独占排他権) 債権的権利(契約に基づく特約により独占性を付与)
独占性 法律上の独占・排他性が保証される(特許権者も実施できない) 契約上の独占性が保証される(特許権者も実施しない特約を付けることが一般的)
効力発生要件 特許庁への登録効力発生要件(特許法98条1項2号) 登録は不要(当事者間の契約のみで有効)
対第三者効 登録により第三者にも対抗できる(排他性がある) 原則として第三者に対抗できない(特許法上の排他性がない)
差止請求権 自己の名で侵害者に請求できる 原則として請求できない(特許権者が行う)
損害賠償請求 自己の名で侵害者に請求できる 原則として請求できない(独占侵害の場合など、限定的に可能とされる説もある)
情報公開 登録されるため、情報が公開される 登録不要のため、情報が公開されない

重要なポイント

  1. 専用実施権は、特許法に規定された独占的かつ排他的な物権的権利です。登録が必須であり、その範囲内では特許権者自身も実施できなくなり、実施権者自身が侵害者に差止請求などができます。

  2. 独占通常実施権は、特許法には直接的な規定がなく、通常実施権(特許法78条、債権的権利)に「特許権者が他に実施許諾をしない」という独占特約を付けたものです。契約上の独占性はありますが、法律上の排他性はないため、原則として侵害者に直接差止請求はできません。ただし、実務上は柔軟性があるため、広く用いられています。


📜特許法の関連条文

独占通常実施権については、特許法に直接その名称で規定された条文はありませんが、そのベースとなる通常実施権に関する条文があります。

専用実施権

  • 特許法 第77条(専用実施権)

    • 特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる(1項)。

    • 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する(2項)。

通常実施権(独占通常実施権の法的ベース)

  • 特許法 第78条(通常実施権)

    • 特許権者は、その特許権について他人に通常実施権を許諾することができる(1項)。

    • 通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を有する(2項)。

登録による効力発生

  • 特許法 第98条(登録の効果)

    • 次の事項は、登録しなければその効力を生じない。

      • 一:特許権の移転(相続その他の一般承継の場合を除く。)、変更、消滅(混同による場合を除く。)又は処分の制限

      • 二:専用実施権の設定、移転(相続その他の一般承継の場合を除く。)、変更、消滅(混同による場合を除く。)又は処分の制限

  • 特許法 第99条(通常実施権の対抗力)

    • 登録した通常実施権は、その特許権若しくは専用実施権又はその通常実施権について後に取得した者に対しても、その効力を有する(1項)。

    • (独占通常実施権は、この99条に基づく「登録した通常実施権」ではありません。独占通常実施権は、特許法上の排他性を伴うものではないため、原則としてこの登録をもって第三者への対抗力(排他性)は生じません。)

より詳しく、それぞれの実施権者が侵害者にどのような対抗措置を取れるか知りたいですか?

 

特許出願非公開制度(2024年5月1日~)

 

 

資料

  1. 特許出願非公開制度について令和7年7月4日特許庁 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/hikokai/index.html
  2. 特許出願非公開制度について内閣府・特許庁(特許出願非公開制度担当) https://www.nedo.go.jp/content/100975052.pdf
  3. 漫画で分かる特許出願非公開制度のポイント 第1章 特許出願非公開制度の概要 ブラウザ版 PDF版(4,486KB) 第2章 外国出願に関する留意事項 ブラウザ版 PDF版(4,383KB)https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/hikokai/comic_hikokai.html

論文

  1. 特許出願非公開制度の概要について 特許研究 PATENT STUDIES No.77 2024/3 https://www.inpit.go.jp/content/100881307.pdf
  2. 特許事務所における特許出願非公開制度への対応の考察 パテント2024 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4486

 

ニュース

  1. 特許庁、5月1日より経済安全保障推進法に基づき特許出願の非公開制度を開始 掲載日 2024/05/01 18:35 著者:丸山正明 https://news.mynavi.jp/techplus/article/20240501-2938063/ 当該の特許内容を非公開にするかどうかは(保全指定をするか否かは)の審査は、特許庁による第一次審査と、内閣府による保全審査(第二次審査)の二段階によって判断される仕組みになっており、同制度の実施後は、外国への出願(特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願制度、いわゆるPCT出願とも呼ばれ、1つの出願願書をPCT加盟国の国に出願することでPCT加盟国に同時に提出したことになる制度)が禁止される。このため、外国出願禁止の対象となるかどうかについて、特許出願前に事前に特許庁長官に確認を求めることができる制度(外国出願禁止の事前確認)も新設されている。
  2. 「経済安全保障推進法」企業に求められる対応機微技術の流出防止(特許の非公開)について2023-11-15 pwc https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/awareness-cyber-security/economic-security03.html 審査制度の概要 特許庁長官は、特許出願を受けた場合、出願から3カ月以内にスクリーニング審査(一次審査)を実施し、「特定技術分野」に属する発明が記載されているときは、出願者に予告通知したうえで、特許出願に係る書類を内閣総理大臣に送付します。
  3. 特許技術非公開の損失補償 経済安全保障法制、5月から新制度 2024/1/29 19:34 産経新聞 https://www.sankei.com/article/20240129-JCCFXDHSA5JPXNPIROXGKM5N2I/ 新制度は航空機を偽装・隠蔽する技術や高度な武器など25分野を対象に、5月1日から運用を始める。‥ 特許は通常、軍事用技術も含めて出願から1年半後に原則公開される。新制度で定められた25分野の特許情報は、先端技術の流出を防ぐため政府が非公開に指定したり、外国への出願を禁止したりできるようになる。
  4. 特許出願の非公開化時代の到来と新たな研究開発戦略 〜鍵となりうる「デュアルユース」とリスク回避〜 No.69 (2022年3月号)  https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/infofuture/69/report09/ かつて我が国にも類似の制度が存在しており、軍事上機密性を要する発明が秘密特許として非公開とされていた。しかし、戦後の昭和23年にこの制度が廃止され、それ以来、特許出願された発明は例外なくすべて公開されることになっている。‥ G20諸国の中で同様の制度がないのは日本とメキシコ、アルゼンチンのみとなっており、他の国では、多くの機密情報に関する特許出願は非公開とされている。
  5. 特許の非公開制度、来年5月から 高度な武器など対象、損失の補償も 目黒隆行2023年12月19日 19時35分 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASRDM5TKCRDMULFA01K.html 高市早苗経済安全保障相は19日の閣議後会見で、経済安保推進法に基づき高度な武器や原子力に関わる技術の特許を非公開にできる制度を、来年5月1日から実施すると表明した。同日以降の出願が対象になる。

特36第5項 請求項(多項制)独立項と従属項

質問:特許の請求項で、独立項、従属項って何?特許法の条文?

Gemini:ご質問ありがとうございます。特許の請求項における独立項従属項は、特許で権利化したい発明の範囲を定める上で非常に重要な概念です。

🧐 独立項と従属項の定義

特許請求の範囲は、特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要な事項を記載する部分で、この中に複数の請求項が設けられます。

  • 独立項(独立請求項):

    • 先行する他の請求項を引用しないで記載された請求項です。

    • 単独で発明を規定し、最も広い権利範囲を請求する中核となる項です。

    • 通常、「請求項〇に記載の〜」といった他の請求項を参照する文言がありません。

  • 従属項(従属請求項):

    • 先行する他の請求項を引用して記載された請求項です。

    • 引用した請求項の構成に、さらに特定の構成要素や限定(特徴)を付加することで、権利範囲を狭く限定します。

    • 通常、「請求項〇に記載の××において、〜を特徴とする」のような文言があります。

独立項で広い権利範囲を請求しつつ、従属項でその発明の好ましい実施形態や、より具体的な限定を加えることで、権利の有効性を高める戦略的な役割を果たします。


📝 具体的な記載例

鉛筆の発明を例に説明します。

請求項 種類 記載内容 権利範囲
請求項1 独立項 軸材と芯を備えることを特徴とする筆記具 広い (軸材と芯を備える筆記具全般)
請求項2 従属項 前記軸材が断面六角形であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。 請求項1より狭い (六角形の軸材を持つ筆記具)
請求項3 従属項 前記軸材の端部に消しゴムが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。 請求項1より狭い (消しゴム付きの筆記具)
  • 請求項1は他の請求項を引用していないため独立項です。

  • 請求項2請求項3は「請求項1に記載の」という引用が含まれるため従属項です。

  • 請求項2の発明は、「軸材と芯を備え、かつ軸材が断面六角形である筆記具」となり、請求項1の発明のすべてを含むものの、六角形に限定されるため権利範囲は狭くなります。

📜 関連する特許法の条文

「独立項」「従属項」という用語自体は、日本の特許法の条文には直接登場しませんが、その考え方の基礎となる規定は存在します。

📌 特許法第36条(特許出願)

  • 第5項:特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。

    • 「請求項に区分」する規定が、独立項と従属項を含む複数の請求項を設ける根拠となります。

この概念は、特許請求の範囲の具体的な記載方法を定める特許法施行規則や、特許庁の審査基準などで詳細に定められています。


独立項と従属項について、さらに詳しく知りたい場合は、 独立項と従属項 – YouTubeという動画が参考になるかもしれません。

 

臨床研究のCRO(Contract Research Organization、開発業務受託機関)とは?

質問:CROの必要は何ですか?無料EDCを利用したり、医療統計の講座に統計相談をお願いすればお金を掛けずに臨床研究が可能にはなりませんか?

Gemini:ごもっともな疑問です。費用対効果を考えると、「EDCは無料ツールで、統計は教授に」という発想は非常に理にかなっています。しかし、CROの価値は単なるツール専門家の確保ではなく、**「臨床研究の質(Quality)」「スピード(Speed)」「規制要件への適合(Compliance)」**を同時に、かつ大規模に実現することにあります。特に、医薬品や医療機器の承認申請を目的とした治験や特定臨床研究では、その必要性が高まります。

🚀 CROが必要とされる理由

CRO(開発業務受託機関)は、無料のツールや外部の専門家で代替できない、以下の重要な機能を提供します。

1. 「臨床研究の質とデータの信頼性」の確保

治験や特定臨床研究では、GCP(Good Clinical Practice)などの厳格なルールに基づいて実施・管理することが義務付けられています。

依頼者様の対応 CROの提供する価値
**EDC(REDCapなど)**でデータを集める モニタリング: 施設に出向き、カルテ(原資料)とEDCのデータが一致しているか、倫理的に問題なく実施されているかを全例チェックし、データの信頼性を担保します。
医療統計の教授に統計解析を依頼する データマネジメント・監査: 統計解析前のデータチェック(ロジカルチェック、クエリ対応、クリーニング)や、行政当局による査察に耐えうる厳格な監査証跡の作成を行います。

無料EDCであるREDCapは非常に優れたツールですが、REDCap自体がGCPを担保するわけではありません。規制当局(PMDAなど)に提出するデータは、その収集・管理プロセス全体が高い品質基準を満たしている必要があります。CROはこれを組織的に実行します。

2. スピードと効率性

臨床研究は時間との勝負です。新薬や新医療機器を早く世に出すことは、患者さんの利益に直結します。

  • 専門リソースの迅速な確保: CROは、**専門知識を持つCRA(臨床開発モニター)DM(データマネジャー)**を、プロジェクトの需要に応じて即座に提供できます。自前で専門家を採用・育成する時間やコストを削減できます。

  • 確立されたプロセス: 多くのプロジェクトで実績のある**SOP(標準業務手順書)**やシステム(EDCやTrial Management Systemなど)をすぐに適用できるため、研究の計画から完了までのリードタイムが短縮されます。

3. 法規制・行政対応への適合(Compliance)

特に薬事申請を目的とする場合、国や国際的な規制に完全に適合していることが求められます。

  • 最新の規制動向への対応: 薬機法、GCP省令、各種ガイドラインの改正に常に対応し、研究計画や手順が法的に適切であることを保証します。

  • 当局対応の経験: 承認申請資料の作成(メディカルライティング)、PMDAとの相談、治験実施中の問い合わせ対応など、行政当局との複雑なやり取りを代行・支援します。


⚖️ 無料EDC(REDCap)と商用EDC・統計相談の比較

項目 無料ツール(REDCap / 教授相談) CROサービス(商用EDC / 統計部門)
目的 研究者のデータ収集・解析の支援 規制当局への申請を念頭に置いた、データの信頼性・品質の担保
システム(EDC) REDCap: 構築の自由度が高いが、GCP対応には別途運用体制が必要。システム監査やバリデーションの工数がかかる。 商用EDC: GCP/CSV(コンピュータシステムバリデーション)に対応済み。CROのDMが即座にデータクリーニング監査証跡の管理を行う。
統計解析 教授・研究室: 高度な解析、新しい手法の相談が可能。 CRO統計部門:承認申請に必須の統計解析計画(SAP)作成、当局への説明経験が豊富。治験全体の管理と連携し、データと解析の整合性を確保。
品質保証 主に研究者自身の責任と力量に依存。 CRAによるモニタリング、DMによるデータ管理、QA(品質保証)部門による監査を通じて、組織的・体系的に品質を保証。
コスト ソフトウェア費用は無料だが、人件費・時間コスト(CRAの仕事、DMの仕事、事務手続きの負担)は発生する。 変動費として専門リソースをまとめて依頼できるため、トータルの開発コストは抑えられる可能性がある。

結論

CROは、「高品質なデータを、規制に則って、速やかに収集・管理・解析し、承認申請につなげる」ための専門家チームとインフラを、必要な期間だけ提供してくれるサービスです。もし研究が、規制当局への承認申請を目指すものであったり、大規模で高いデータ品質が求められる場合は、CROへの委託は必須に近い選択となります。一方で、小規模なアカデミア研究や予備的な研究であれば、REDCapと学内のリソースを最大限に活用するのが最も効率的でしょう。

質問:医薬品や医療機器の承認申請を目的としない臨床研究(例えば、ガイドライン改訂を目指した多施設研究)であれば、CROを使わずに大学の研究者たちが自分たちでやるのもあり?

Gemini:

はい、その通りです。承認申請を目的としない臨床研究、例えばガイドライン改訂特定の仮説検証を目的としたアカデミア主導の多施設研究であれば、CROを使わずに大学の研究者主導で実施することは十分に可能であり、多くの研究で実際に行われています。

👩‍🔬 アカデミア主導研究とCROの必要性

承認申請を目的としない研究の場合、CROの必要性は、主に以下の**「研究の規模」「求められる厳格さ」**によって判断されます。

1. CROが不要な場合(大学主導が適しているケース)

研究者が中心となって実施するのが適しているのは、主に以下の条件を満たす研究です。

  • 規制要件の緩和: 薬機法上の「治験」や「特定臨床研究(法で定められた範囲)」に該当しないため、**GCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)**のような厳格な規制要件に縛られません。

  • データの信頼性確保が自己完結できる:

    • 規模が小さい(参加施設・症例数が少ない)

    • 研究事務局、EDC(REDCapなど)のデータと原資料(カルテ)を照合する**SDV(Source Data Verification)**を自己で実施できる。

  • 予算の制約が大きい: 潤沢な研究費がない場合、無料のREDCapや学内の統計専門家を活用することで、コストを最小限に抑えられます。

この場合、研究の目的や科学的妥当性に基づいて**倫理審査委員会(IRB)**の承認を得て、各施設の長(病院長など)の許可の下、研究者自身が責任をもって進めます。

2. CROの活用が推奨される場合(大学主導でも)

承認申請が目的でなくても、以下の条件を満たす研究では、一部業務だけでもCROを活用することが有効です。

活用が推奨される条件 CROの役割
🚨 研究の規模が非常に大きい (例: 100施設以上、数千症例) プロジェクトマネジメント、モニタリングなど、事務局だけでは手が回らない組織的な管理業務を代行し、進行を加速させます。
📈 データの品質を特に重視する (例: 国際的なガイドラインに影響を与える研究) 統計解析、データマネジメントの専門家が、国際的な基準(CDISCなど)に準拠した高品質なデータセットと解析レポートを作成します。
🛡️ 治験薬・治験機器を用いる (探索的な臨床研究など) 治験薬・治験機器の品質管理、輸送・保管管理といった薬事的な厳格な手順が必要な場合、CROの専門知識が役立ちます。

💡 結論:研究の「重さ」で判断する

研究の実施方法を決定する際は、**「その研究の結果がどれだけ社会的な影響力を持つか(重さ)」「研究資金の状況」**を天秤にかけると良いでしょう。

  • 軽めの研究(パイロットスタディなど): $\rightarrow$ 大学主導(REDCap、学内リソース)

  • 重めの研究(大規模なガイドライン改訂のための研究など): $\rightarrow$ 大学主導+CROの部分的活用(モニタリング・データマネジメントなど特定業務のみを委託)

  • 最も重い研究(承認申請が目的): $\rightarrow$ CROへの全面委託(または主導)

ご検討の研究がガイドライン改訂を目指す多施設研究であれば、データ品質の確保(モニタリング、データマネジメント)や多施設間の連絡調整の部分で、メディトリックスのようなCROの支援を受けることを検討する価値はあります。

質問:大学内のEDC(REDCAPなど)を使って登録しているデータに対してCROがモニタリング、データマネジメントを行うということはできるのですか?

Gemini:はい、登録データをCROに触らせることは十分ありますし、特に大規模な臨床研究や、データの信頼性を高めたい場合に推奨される運用形態の一つです。この運用では、REDCap自体は研究者が主導して使い続けながら、専門的な管理業務のみをCROに外部委託する形になります。

✅ CROとREDCapの併用は可能

大学内で構築・運用しているREDCapを、外部のCROが利用してモニタリングやデータマネジメントを行うことは、以下の理由から技術的にも契約的にも可能です。

1. 権限と責任の明確化

  • REDCapのアクセス権限管理:

    • CROの担当者(CRAやDM)に対して、研究者側の管理者が必要な権限のみ(データの閲覧、クエリの発行など)を付与します。

    • 権限付与により、CROはデータ入力は行わず、データの確認・品質管理に特化できます。

  • SOP(標準業務手順書)の共有:

    • REDCapの使用方法やデータの扱いに関する研究事務局のSOPをCROと共有し、CROはそのSOPに従って業務を行います。

2. モニタリング業務(CRA)

CROの**CRA(臨床開発モニター)は、REDCapの画面上でデータを確認し、必要に応じて原資料(カルテなど)との照合(SDV)**を行います。

  • 施設訪問の効率化: 事前にREDCapでデータの抜け漏れなどを確認(セントラル・モニタリング)してから施設を訪問することで、現地での確認作業(SDV)を効率的に行えます。

  • データの監査証跡: CRAがREDCap内で行った作業(クエリ発行・回答確認など)は、REDCapの**監査証跡(Audit Trail)**機能で記録されるため、高い透明性が確保されます。

3. データマネジメント業務(DM)

CROの**DM(データマネジャー)**は、REDCapで収集されたデータの品質管理を担当します。

DMの主な業務 CROに委託するメリット
ロジカルチェックの実施 プログラムされたチェックをREDCapで実行し、データの矛盾や誤りを抽出します。
クエリの発行・管理 データに疑問点や修正が必要な場合に、施設へ問い合わせ(クエリ)を発行し、その回答を管理します。
データセットの作成 統計解析に使える形式(例:CDISC標準形式)にデータを加工・整理します。

⚠️ 外部委託時の注意点

CROにREDCapを用いた業務を委託する場合、以下の点に特に注意が必要です。

  1. 契約・秘密保持契約(NDA):

    • 研究データをCROが取り扱うため、個人情報の取り扱い秘密保持に関する厳格な契約(NDA、業務委託契約)を締結する必要があります。

  2. REDCapのバリデーション:

    • CROに委託する目的が「データ品質の向上」であるならば、使用しているREDCapシステムが**適切な検証(バリデーション)**を受けているかを確認し、その文書をCROと共有する必要があります。

  3. 役割分担表(R&R):

    • 研究事務局CROの間で、データ入力、修正、クエリ対応、SDV、システム管理など、どの業務を誰が担当するのかを明確にした文書(役割分担表)を作成し、遵守することが重要です。

このように、REDCapを使う研究であっても、モニタリングとデータマネジメント」という専門性が高く、かつデータ品質に直結する業務をCROに委託することは、研究の信頼性向上研究者の負担軽減のために有効な戦略と言えます。

質問:学内にAROがあれば、CROに委託するような業務は全部AROがやってくれるもの?

Gemini:

学内にARO(Academic Research Organization:アカデミア主導型研究支援組織)がある場合、CROに委託するような業務の大部分はAROが担当してくれることが期待されますが、「全部」ではありません

AROは、アカデミア主導の研究を支援するために設立された組織であり、その業務範囲や提供能力は、大学や組織によって大きく異なります


🏛️ AROとCROの業務範囲の比較

AROは、アカデミアの研究者が研究者主導臨床研究(医師主導治験含む)や特定臨床研究を適切に行えるよう、GCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)や倫理指針に基づいた支援を提供します。

業務カテゴリー AROの役割(学内) CROの役割(外部委託)
研究計画・規制対応 プロトコル作成支援、倫理審査委員会(IRB)対応、PMDA(医薬品医療機器総合機構)への相談支援など。 AROと同様。法規制対応の経験が豊富。
モニタリング (CRA) 研究の質と信頼性を確保するためのSDV(原資料との照合)や施設管理 AROと同様。大規模な多施設研究では、リソース量で有利。
データマネジメント (DM) データクリーニング、クエリ管理、データ固定(DBロック)など。 AROと同様。CDISC標準への対応や、大規模データの扱いで有利。
統計解析 統計解析計画(SAP)作成、解析実施、結果報告書作成。 AROと同様。専門性の高い解析や、薬事申請経験で有利。
プロジェクトマネジメント (PM) 研究全体の進捗管理、予算・リソース管理、多施設間の調整。 AROと同様。効率的な管理手法やシステムの活用に長ける。

AROが全てやらない/やれない可能性がある業務

AROは組織の規模や歴史によって、以下の業務については外部のCROに協力を仰いだり、研究者が自ら行うことが推奨されたりします。

1. 大規模なリソースが求められる業務

  • 大規模多施設研究のモニタリング: AROのCRAが少数である場合、全国の数十施設にわたるような大規模なモニタリングを迅速かつ網羅的に行うことが困難な場合があります。この場合、特定地域や特定施設のモニタリング業務をCROに委託することがあります。

  • 短期間での大量のデータマネジメント: 研究期間が短く、短期間に大量のデータを処理し、データベースを固定する必要がある場合、リソース不足になる可能性があります。

2. 特定の専門性が求められる業務

  • 治験薬・治験機器の品質管理: 治験薬の保管、分譲、回収といった厳格な品質管理業務(GDP: Good Distribution Practiceを含む)は、専門のCROやロジスティクス業者に委託されることが多いです。

  • CDISC標準データセットの作成: 特に国際的な学会発表や将来的な企業へのライセンスアウトを見据える場合、データの国際標準であるCDISC (Clinical Data Interchange Standards Consortium) への準拠が求められますが、これに特化したCROに委託する場合があります。


💡 結論:連携と使い分けが重要

学内のAROが提供する支援は、研究費の節約学術的意義の最大化に大きく貢献します。

しかし、AROのリソースは限られているため、AROの機能を最大限に活用しつつ、**「AROではリソースが足りない部分」「高度な専門性が求められる部分」**を、柔軟に外部のCRO(メディトリックスのような企業も含む)と連携して補うことが、大規模なアカデミア研究を成功させるための鍵となります。

まずは学内のAROに研究計画を相談し、**「どこまでAROが担当できるか」を確認し、その上で外部委託が必要な業務(ギャップ)**を特定することから始めるのが最善です。

URAはAROの仕事をやってくれるもの?URAの業務はAROの業務と重なる?

URA(University Research Administrator)の仕事は、ARO(Academic Research Organization)の仕事と一部重なる領域がありますが、その役割と焦点は根本的に異なります

🧐 AROとURAの役割分担

AROとURAはどちらも大学の研究を支援する組織ですが、**「研究そのものの実行支援(ARO)」「研究戦略・基盤の強化(URA)」**という点で明確に役割が分かれています。

1. 🔬 ARO(研究実施支援)

AROは、主に**臨床研究の「実行」**に関わる専門的かつ実務的な支援を行います。

  • 焦点: 個別の臨床研究プロジェクトの円滑な実施、データの信頼性確保、規制遵守。

  • 主な業務:

    • 実務支援: モニタリング(CRA)、データマネジメント(DM)、統計解析。

    • 規制遵守: GCP/倫理指針に基づくプロトコル作成、IRB/PMDA対応。

    • リソース管理: 治験・臨床研究の進捗管理、関連文書作成。

AROの業務は、「質の高い臨床研究を正しく行う」ためのハンズオン(実務的)な支援です。


2. 📈 URA(研究戦略・基盤強化)

URAは、大学全体の研究活動を俯瞰し、研究環境や競争力を高めるための戦略的な支援を行います。

  • 焦点: 研究資金の獲得、研究テーマの発掘・推進、知財戦略、広報、組織戦略。

  • 主な業務:

    • ファンディング(資金獲得): 競争的資金(科研費、JST、AMEDなど)の情報収集、申請書作成支援、予算管理。

    • 研究戦略: 大学全体の研究ポートフォリオの策定、大型プロジェクトの企画・推進。

    • 知財・外部連携: 企業との共同研究のコーディネート、知財戦略の策定。

    • 研究広報: 研究成果の可視化、プレスリリース作成支援。

URAの業務は、「研究者が研究に集中できる環境を整え、研究成果の最大化を図る」ための戦略的・経営的な支援です。


🤝 重なる領域(連携の必要性)

両者の業務が重なる、または密接に連携が必要なのは、大規模な臨床研究プロジェクトを推進する場面です。

連携が必要な場面 URAの役割 AROの役割
大型研究費の申請 研究費の戦略的獲得(例:AMEDの大型臨床研究費)に向けた申請書の内容構築、採算性の検討、予算計画策定。 申請した研究(臨床研究)が採択された後の実行可能性規制対応に関する専門的な知見提供。
研究成果の社会実装 臨床研究の成果を基にした企業連携・特許出願などの戦略立案、コーディネート。 実施した臨床研究の最終データセットの管理・提供や、薬事規制に関する専門的な情報提供。

このように、URAは**「プロジェクトの上流(企画・資金)」を、AROは「プロジェクトの中流・下流(実行・管理)」**を担当することが一般的です。

AROとURAが密に連携することで、資金獲得から臨床研究の実行、そして成果の社会還元までを一貫して強力に推進できます。

 

特許出単非公開制度(2024年5月1日~)

特許出願非公開制度は、経済安全保障推進法(正式名称:経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)および同法に基づく**内閣府令**(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく特許出願の非公開に関する内閣府令)によって規定されています。

 

経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)

第五章 特許出願の非公開

(特許出願非公開基本指針)
第六十五条 政府は、基本方針に基づき、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)の出願公開の特例に関する措置、同法第三十六条第一項の規定による特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面(以下この章において「明細書等」という。)に記載された発明に係る情報の適正管理その他公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明に係る情報の流出を防止するための措置(以下この条において「特許出願の非公開」という。)に関する基本指針(以下この条において「特許出願非公開基本指針」という。)を定めるものとする。
2 特許出願非公開基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 特許出願の非公開に関する基本的な方向に関する事項
二 次条第一項の規定に基づき政令で定める技術の分野に関する基本的な事項
三 保全指定(第七十条第二項に規定する保全指定をいう。次条第一項及び第六十七条において同じ。)に関する手続に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、特許出願の非公開に関し必要な事項
3 内閣総理大臣は、特許出願非公開基本指針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定により特許出願非公開基本指針の案を作成するときは、あらかじめ、安全保障の確保に関する経済施策、産業技術その他特許出願の非公開に関し知見を有する者の意見を聴くとともに、産業活動に与える影響に配慮しなければならない。
5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、特許出願非公開基本指針を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、特許出願非公開基本指針の変更について準用する。

(内閣総理大臣への送付)
第六十六条 特許庁長官は、特許出願を受けた場合において、その明細書等に、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野として国際特許分類(国際特許分類に関する千九百七十一年三月二十四日のストラスブール協定第一条に規定する国際特許分類をいう。)又はこれに準じて細分化したものに従い政令で定めるもの(以下この項において「特定技術分野」という。)に属する発明(その発明が特定技術分野のうち保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きいと認められる技術の分野として政令で定めるものに属する場合にあっては、政令で定める要件に該当するものに限る。)が記載されているときは、当該特許出願の日から三月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過する日までに、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、当該特許出願に係る書類を内閣総理大臣に送付するものとする。ただし、当該発明がその発明に関する技術の水準若しくは特徴又はその公開の状況に照らし、保全審査(次条第一項に規定する保全審査をいう。次項において同じ。)に付する必要がないことが明らかであると認めるときは、これを送付しないことができる。
2 特許出願人から、特許出願とともに、その明細書等に記載した発明が公にされることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きいものであるとして、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、保全審査に付することを求める旨の申出があったときも、前項と同様とする。過去にその申出をしたことにより保全審査に付され、次条第九項の規定による通知を受けたことがある者又はその者から特許を受ける権利を承継した者が当該通知に係る発明を明細書等に記載した特許出願をしたと認められるときも、同様とする。
3 特許庁長官は、第一項本文又は前項の規定による送付をしたときは、その送付をした旨を特許出願人に通知するものとする。
4 第一項に規定する特許出願が次の表の上欄に掲げる特許出願である場合における同項の規定の適用については、同項中「当該特許出願の日」とあるのは、同表の上欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の下欄に掲げる日(当該特許出願が同表の上欄に掲げる区分の二以上に該当するときは、その該当する区分に係る同表の下欄に定める日のうち最も遅い日)とする。
特許法第三十六条の二第二項に規定する外国語書面出願
当該特許出願に係る特許法第三十六条の二第二項に規定する翻訳文が提出された日(同条第四項又は第六項の規定により当該翻訳文が提出された場合にあっては、同条第七項の規定にかかわらず、当該翻訳文が現に提出された日)
特許法第三十八条の三第一項に規定する方法によりした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の三第三項に規定する明細書及び図面並びに先の特許出願に関する書類が提出された日
特許法第三十八条の四第四項ただし書の場合(同条第五項に規定する場合を除く。)における同条第二項の補完をした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の四第三項に規定する明細書等補完書が提出された日
特許法第四十四条第一項に規定する新たな特許出願
当該特許出願に係る特許法第四十四条第一項の規定による特許出願の分割の日
特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更に係る特許出願
当該特許出願に係る特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更の日
5 特許法第百八十四条の三第一項の規定により特許出願とみなされる国際出願については、第一項本文又は第二項の規定は、適用しない。
6 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をするかどうかを判断するため必要があると認めるときは、特許出願人に対し、資料の提出及び説明を求めることができる。
7 特許庁長官が第一項本文若しくは第二項の規定による送付をする場合に該当しないと判断し、若しくは当該送付がされずに第一項本文に規定する期間が経過するまでの間又は内閣総理大臣が第七十一条若しくは第七十七条第二項の規定による通知をするまでの間は、特許法第四十九条第五十一条及び第六十四条第一項の規定は、適用しない。
8 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をしてから第七十条第一項又は第七十一条の規定による通知を受けるまでの間に特許出願の放棄又は取下げがあったときは、その旨を内閣総理大臣に通知しなければならない。第一項本文又は第二項の規定による送付をしてから第七十一条又は第七十七条第二項の規定による通知を受けるまでの間に特許法第三十四条第四項又は第五項の規定による承継の届出があったときも、同様とする。
9 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をしてから第七十条第一項又は第七十一条の規定による通知を受けるまでの間に特許出願を却下するときは、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に通知するものとする。
10 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をする場合に該当しないと判断した場合において、特許出願人から内閣府令・経済産業省令で定めるところにより申出があったときは、これらの規定による送付をしない旨の判断をした旨を特許出願人に通知するものとする。
11 第一項の規定は、同項の規定に基づく政令の改正により新たに同項本文に規定する発明に該当することとなった発明を明細書等に記載した特許出願であって、その改正の際現に特許庁に係属しているものについては、適用しない。

(内閣総理大臣による保全審査)
第六十七条 内閣総理大臣は、前条第一項本文又は第二項の規定により特許出願に係る書類の送付を受けたときは、内閣府令で定めるところにより、当該特許出願に係る明細書等に公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載され、かつ、そのおそれの程度及び保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響その他の事情を考慮し、当該発明に係る情報の保全(当該情報が外部に流出しないようにするための措置をいう。第七十条第一項において同じ。)をすることが適当と認められるかどうかについての審査(以下この章において「保全審査」という。)をするものとする。
2 内閣総理大臣は、保全審査のため必要があると認めるときは、特許出願人その他の関係者に対し、資料の提出及び説明を求めることができる。
3 内閣総理大臣は、保全審査をするに当たっては、必要な専門的知識を有する国の機関に対し、保全審査に必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができる。
4 内閣総理大臣は、前項の規定により十分な資料又は情報が得られないときは、国の機関以外の専門的知識を有する者に対し、必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができる。この場合においては、当該専門的知識を有する者に発明の内容が開示されることにより特許出願人の利益が害されないよう、当該専門的知識を有する者の選定について配慮しなければならない。
5 内閣総理大臣は、前項の規定により国の機関以外の専門的知識を有する者に対し必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めるに当たり、必要があると認めるときは、その者(補助者の使用の申出がある場合には、その者及びその補助者。以下この項において同じ。)に明細書等に記載されている発明の内容を開示することができる。この場合においては、その者に対し、あらかじめ、第八項の規定の適用を受けることについて説明した上、当該開示を受けることについての同意を得なければならない。
6 内閣総理大臣は、保全指定をするかどうかの判断をするに当たり、必要があると認めるときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議することができる。
7 第四項及び第五項の規定は、前項の規定により協議を受けた関係行政機関の長について準用する。この場合において、第四項中「前項の規定により十分な資料又は情報が得られないとき」とあるのは、「第六項の規定による協議に応ずるための十分な資料又は情報を保有していないとき」と読み替えるものとする。
8 保全審査に関与する国の機関の職員及び第五項(前項において準用する場合を含む。)の規定により発明の内容の開示を受けた者は、正当な理由がなく、当該発明の内容に係る秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
9 内閣総理大臣は、保全指定をしようとする場合には、特許出願人に対し、内閣府令で定めるところにより、第七十条第一項に規定する保全対象発明となり得る発明の内容を通知するとともに、特許出願を維持する場合には次に掲げる事項について記載した書類を提出するよう求めなければならない。
一 当該通知に係る発明に係る情報管理状況
二 特許出願人以外に当該通知に係る発明に係る情報の取扱いを認めた事業者がある場合にあっては、当該事業者
三 前二号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
10 特許出願人は、特許出願を維持する場合には、前項の規定による通知を受けた日から十四日以内に、内閣府令で定めるところにより、同項に規定する書類を内閣総理大臣に提出しなければならない。
11 内閣総理大臣は、前項の規定により提出された書類の記載内容が相当でないと認めるときは、特許出願人に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。

(保全審査中の発明公開の禁止)
第六十八条 特許出願人は、前条第九項の規定による通知を受けた場合は、第七十条第一項又は第七十一条の規定による通知を受けるまでの間は、当該前条第九項の規定による通知に係る発明の内容を公開してはならない。ただし、特許出願を放棄し、若しくは取り下げ、又は特許出願が却下されたときは、この限りでない。

(保全審査の打切り)
第六十九条 内閣総理大臣は、特許出願人が第六十七条第十項に規定する期間内に同条第九項に規定する書類を提出せず、若しくは同条第十一項の規定により定められた期間内に同項の規定による補正を行わなかったとき、前条の規定に違反したと認めるとき、又は不当な目的でみだりに第六十六条第二項前段の規定による申出をしたと認めるときは、保全審査を打ち切ることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により保全審査を打ち切るときは、あらかじめ、特許出願人に対し、その理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面を提出する機会を与えなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定により保全審査を打ち切ったときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。
4 特許庁長官は、前項の規定による通知を受けたときは、特許出願を却下するものとする。

(保全指定)
第七十条 内閣総理大臣は、保全審査の結果、第六十七条第一項に規定する明細書等に公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載され、かつ、そのおそれの程度及び指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響その他の事情を考慮し、当該発明に係る情報の保全をすることが適当と認めたときは、内閣府令で定めるところにより、当該発明を保全対象発明として指定し、特許出願人及び特許庁長官に通知するものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による指定(以下この章及び第八十八条において「保全指定」という。)をするときは、当該保全指定の日から起算して一年を超えない範囲内においてその保全指定の期間を定めるものとする。
3 内閣総理大臣は、保全指定の期間(この項の規定により保全指定の期間を延長した場合には、当該延長後の期間。以下この章において同じ。)が満了する日までに、保全指定を継続する必要があるかどうかを判断しなければならない。この場合において、継続する必要があると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、一年を超えない範囲内において保全指定の期間を延長することができる。
4 第六十七条第二項から第八項までの規定は、前項前段の規定による判断をする場合について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。
5 内閣総理大臣は、第三項後段の規定による延長をしたときは、その旨を第一項の規定による通知を受けた特許出願人(通知後に特許を受ける権利の移転があったときは、その承継人。以下この章において「指定特許出願人」という。)及び特許庁長官に通知するものとする。

(保全指定をしない場合の通知)
第七十一条 内閣総理大臣は、保全審査の結果、保全指定をする必要がないと認めたときは、その旨を特許出願人及び特許庁長官に通知するものとする。

(特許出願の取下げ等の制限)
第七十二条 指定特許出願人は、第七十七条第二項の規定による通知を受けるまでの間は、特許出願を放棄し、又は取り下げることができない。
2 指定特許出願人は、第七十七条第二項の規定による通知を受けるまでの間は、実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第十条第一項及び意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第十三条第一項の規定にかかわらず、特許出願を実用新案登録出願又は意匠登録出願に変更することができない。

(保全対象発明の実施の制限)
第七十三条 指定特許出願人及び保全対象発明の内容を特許出願人から示された者その他保全対象発明の内容を職務上知り得た者であって当該保全対象発明について保全指定がされたことを知るものは、当該保全対象発明の実施(特許法第二条第三項に規定する実施をいう。以下この章及び第九十二条第一項第六号において同じ。)をしてはならない。ただし、指定特許出願人が当該実施について内閣総理大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の規定による許可を受けようとする指定特許出願人は、許可を受けようとする実施の内容その他内閣府令で定める事項を記載した申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項ただし書の規定による許可の申請に係る実施により同項本文に規定する者以外の者が保全対象発明の内容を知るおそれがないと認めるときその他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止の観点から内閣総理大臣が適当と認めるときは、同項ただし書の規定による許可をするものとする。
4 第一項ただし書の規定による許可には、保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために必要な条件を付することができる。
5 第六十七条第二項から第五項まで及び第八項の規定は、第一項ただし書の規定による許可について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。
6 内閣総理大臣は、指定特許出願人が第一項の規定又は第四項の規定により許可に付された条件に違反して保全対象発明の実施をしたと認める場合であって、特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び指定特許出願人に通知するものとする。指定特許出願人が第七十五条第一項に規定する措置を十分に講じていなかったことにより、指定特許出願人以外の者が第一項の規定又は第四項の規定により許可に付された条件に違反して保全対象発明の実施をした場合も、同様とする。
7 内閣総理大臣は、前項の規定による通知をするときは、あらかじめ、指定特許出願人に対し、その理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面を提出する機会を与えなければならない。
8 特許庁長官は、第六項の規定による通知を受けた場合には、第七十七条第二項の規定による通知を待って、特許出願を却下するものとする。

(保全対象発明の開示禁止)
第七十四条 指定特許出願人及び保全対象発明の内容を特許出願人から示された者その他保全対象発明の内容を職務上知り得た者であって当該保全対象発明について保全指定がされたことを知るものは、正当な理由がある場合を除き、保全対象発明の内容を開示してはならない。
2 内閣総理大臣は、指定特許出願人が前項の規定に違反して保全対象発明の内容を開示したと認める場合であって、特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び指定特許出願人に通知するものとする。指定特許出願人が次条第一項に規定する措置を十分に講じていなかったことにより、指定特許出願人以外の者が前項の規定に違反して保全対象発明の内容を開示した場合も、同様とする。
3 前条第七項及び第八項の規定は、前項の規定による通知について準用する。

(保全対象発明の適正管理措置)
第七十五条 指定特許出願人は、保全対象発明に係る情報を取り扱う者を適正に管理することその他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置を講じ、及び保全対象発明に係る情報の取扱いを認めた事業者(以下この章において「発明共有事業者」という。)をして、その措置を講じさせなければならない。
2 発明共有事業者は、指定特許出願人の指示に従い、前項に規定する措置を講じなければならない。

(発明共有事業者の変更)
第七十六条 指定特許出願人は、第六十七条第九項第二号に規定する事業者として同項に規定する書類に記載した事業者以外の事業者に新たに保全対象発明に係る情報の取扱いを認めるときは、あらかじめ、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。
2 指定特許出願人は、前項の場合を除き、発明共有事業者に保全対象発明に係る情報の取扱いを認めることをやめたときその他発明共有事業者について変更が生じたときは、内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、その変更の内容を内閣総理大臣に届け出なければならない。

(保全指定の解除等)
第七十七条 内閣総理大臣は、保全指定を継続する必要がないと認めたときは、保全指定を解除するものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により保全指定を解除したとき、又は保全指定の期間が満了したときは、その旨を指定特許出願人及び特許庁長官に通知するものとする。
3 第六十七条第二項から第八項までの規定は、第一項の規定により保全指定を解除する場合について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。

(外国出願の禁止)
第七十八条 何人も、日本国内でした発明であって公になっていないものが、第六十六条第一項本文に規定する発明であるときは、次条第四項の規定により、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全に影響を及ぼすものでないことが明らかである旨の回答を受けた場合を除き、当該発明を記載した外国出願(外国における特許出願及び千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約に基づく国際出願をいい、政令で定めるものを除く。以下この章及び第九十四条第一項において同じ。)をしてはならない。ただし、我が国において明細書等に当該発明を記載した特許出願をした場合であって、当該特許出願の日から十月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過したとき(第七十条第一項の規定による通知を受けたとき及び当該期間を経過する前に当該特許出願が却下され、又は当該特許出願を放棄し、若しくは取り下げたときを除く。)、第六十六条第一項本文に規定する期間内に同条第三項の規定による通知が発せられなかったとき(当該期間を経過する前に当該特許出願が却下され、又は当該特許出願を放棄し、若しくは取り下げたときを除く。)及び同条第十項、第七十一条又は前条第二項の規定による通知を受けたときにおける当該特許出願に係る明細書等に記載された発明については、この限りでない。
2 指定特許出願人に対する前項の規定の適用については、同項中「第六十六条第一項本文に規定する発明」とあるのは、「第六十六条第一項本文に規定する発明(第七十条第一項の規定による通知を受けた特許出願に係る明細書等に記載された発明にあっては、保全対象発明)」とする。
3 第一項ただし書に規定する特許出願が次の表の上欄に掲げる特許出願である場合における同項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「当該特許出願の日」とあるのは、同表の上欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の下欄に掲げる日(当該特許出願が同表の上欄に掲げる区分の二以上に該当するときは、その該当する区分に係る同表の下欄に定める日のうち最も遅い日)とする。
特許法第三十六条の二第二項に規定する外国語書面出願
当該特許出願に係る特許法第三十六条の二第二項に規定する翻訳文が提出された日(同条第四項又は第六項の規定により当該翻訳文が提出された場合にあっては、同条第七項の規定にかかわらず、当該翻訳文が現に提出された日)
特許法第三十八条の三第一項に規定する方法によりした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の三第三項に規定する明細書及び図面並びに先の特許出願に関する書類が提出された日
特許法第三十八条の四第四項ただし書の場合(同条第五項に規定する場合を除く。)における同条第二項の補完をした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の四第三項に規定する明細書等補完書が提出された日
特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更に係る特許出願
当該特許出願に係る特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更の日
4 特許庁長官は、特許法第百八十四条の三第一項の規定により特許出願とみなされる国際出願を受けた場合において、当該特許出願に係る明細書等に第六十六条第一項本文に規定する発明が記載されているときは、その旨を内閣総理大臣に通知するものとする。
5 内閣総理大臣は、特許庁長官が第六十六条第三項の規定による通知をした特許出願人(通知後に特許を受ける権利の移転があったときは、その承継人を含む。)が第一項の規定に違反して外国出願をしたと認める場合又は前項の規定による通知に係る国際出願が第一項の規定に違反するものであると認める場合であって、当該特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び特許出願人に通知するものとする。
6 第七十三条第七項の規定は、前項の規定による通知について準用する。
7 特許庁長官は、第五項の規定による通知を受けたときは、特許出願を却下するものとする。ただし、その特許出願が保全指定がされたものである場合にあっては、前条第二項の規定による通知を待って、特許出願を却下するものとする。

(外国出願の禁止に関する事前確認)
第七十九条 第六十六条第一項本文に規定する発明に該当し得る発明を記載した外国出願をしようとする者は、我が国において明細書等に当該発明を記載した特許出願をしていない場合に限り、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、特許庁長官に対し、その外国出願が前条第一項の規定により禁止されるものかどうかについて、確認を求めることができる。
2 特許庁長官は、前項の規定による求めを受けた場合において、当該求めに係る発明が第六十六条第一項本文に規定する発明に該当しないときは、遅滞なく、その旨を当該求めをした者に回答するものとする。
3 特許庁長官は、第一項の規定による求めを受けた場合において、当該求めに係る発明が第六十六条第一項本文に規定する発明に該当するときは、遅滞なく、内閣総理大臣に対し、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全に影響を及ぼすものでないことが明らかかどうかにつき確認を求めるものとする。この場合において、当該確認を求められた内閣総理大臣は、遅滞なく、特許庁長官に回答するものとする。
4 特許庁長官は、前項の規定により回答を受けたときは、遅滞なく、第一項の規定による求めをした者に対し、当該求めに係る発明が第六十六条第一項本文に規定する発明に該当する旨及び当該回答の内容を回答するものとする。
5 第一項の規定により確認を求めようとする者は、手数料として、一件につき二万五千円を超えない範囲内で政令で定める額を国に納付しなければならない。
6 前項の規定による手数料の納付は、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、収入印紙をもってしなければならない。ただし、内閣府令・経済産業省令で定める場合には、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、現金をもって納めることができる。
7 前条第一項の規定の適用の有無については、産業競争力強化法(平成二十五年法律第九十八号)第七条の規定は、適用しない。

(損失の補償)
第八十条 国は、保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。)について、第七十三条第一項ただし書の規定による許可を受けられなかったこと又は同条第四項の規定によりその許可に条件を付されたことその他保全指定を受けたことにより損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。
2 前項の規定による補償を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣にこれを請求しなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の規定による請求があったときは、補償すべき金額を決定し、これを当該請求者に通知しなければならない。
4 第六十七条第二項から第四項まで及び第五項前段の規定(保全指定の期間内にあっては、これらの規定のほか、同項後段及び第八項の規定)は、内閣総理大臣が前項の規定による決定をする場合について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。)」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。)」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。
5 第三項の規定による決定に不服がある者は、その通知を受けた日から六月以内に訴えをもって補償すべき金額の増額を請求することができる。
6 前項の訴えにおいては、国を被告とする。

(後願者の通常実施権)
第八十一条 指定特許出願人であって、保全指定がされた他の特許出願について出願公開がされた日前に、第六十六条第七項の規定により当該出願公開がされなかったため、自己の特許出願に係る発明が特許法第二十九条の二の規定により特許を受けることができないものであることを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した場合における当該他の特許出願に係る特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
2 前項に規定する他の特許出願に係る特許権又は専用実施権を有する者は、同項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。

(特許法等の特例)
第八十二条 特許法第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願について、特許庁長官が第六十九条第四項、第七十三条第八項(第七十四条第三項において準用する場合を含む。)又は第七十八条第七項の規定によりその優先権の主張の基礎とした特許出願を却下した場合には、当該優先権の主張は、その効力を失うものとする。
2 保全指定がされた特許出願を基礎とする特許法第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願がされた場合における同法第四十二条第一項の規定の適用については、同項中「経済産業省令で定める期間を経過した時」とあるのは、「経済産業省令で定める期間を経過した時又は当該先の出願について、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七十七条第二項の規定による通知を受けた時のうちいずれか遅い時」とする。
3 保全指定がされた場合における特許法第四十八条の三第一項の規定の適用については、同項中「その日から三年以内に」とあるのは、「その日から三年を経過した日又は経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七十七条第二項の規定による通知を受けた日から三月を経過した日のうちいずれか遅い日までに」とする。
4 保全指定がされた場合における特許法第六十七条第三項の規定の適用については、同項中「次の各号に掲げる期間」とあるのは、「次の各号に掲げる期間及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七十条第一項の規定による通知を受けた日から同法第七十七条第二項の規定による通知を受けた日までの期間」とする。
5 特許庁長官は、実用新案法第五条第一項の規定による実用新案登録出願を受けた場合において、当該実用新案登録出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に保全対象発明が記載されているときは、同法第十四条第二項の規定にかかわらず、その保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了するまで、同項の規定による実用新案権の設定の登録をしてはならない。

(勧告及び改善命令)
第八十三条 内閣総理大臣は、指定特許出願人又は発明共有事業者が第七十五条の規定に違反した場合において保全対象発明に係る情報の漏えいを防ぐため必要があると認めるときは、当該者に対し、同条第一項に規定する措置をとるべき旨を勧告することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、当該者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3 内閣総理大臣は、前二項の規定にかかわらず、指定特許出願人又は発明共有事業者が第七十五条の規定に違反した場合において保全対象発明の漏えいのおそれが切迫していると認めるときは、当該者に対し、同条第一項に規定する措置をとるべきことを命ずることができる。

(報告徴収及び立入検査)
第八十四条 内閣総理大臣は、この章の規定の施行に必要な限度において、指定特許出願人及び発明共有事業者に対し、保全対象発明の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該者の事務所その他必要な場所に立ち入り、保全対象発明の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(送達)
第八十五条 この章に規定する手続に関し、送達をすべき書類は、内閣府令・経済産業省令で定める。
2 特許法第百九十条から第百九十二条までの規定は、前項の送達について準用する。