- Google Gemini 2.5 Pro
AIになんか頼らずとも、自分でサクサクと仕事を先に進められればいいのですが、日によってはやる気が起きなかったり、眠かったり、頭が冴えなかったりすることもあるでしょう。そんなときにでも作業を止めないために、AIに仕事をさせてみるのもいいかもしれません。
授業の日時は予め決まっているので、講義の準備というものは待ったなしで、必ず間に合わせる必要があります。論文執筆は締切日がないので、ズルズルと遅れていく可能性があり危険です。講義と研究(論文執筆)を両立させることは、大学教員にとって非常に重要なことになります。そういった業務の効率を劇的に上げてくれるのが最近のAIだと思います。
論文検索に生成AIを活用する
ひと昔前の論文検索は、生命科学の分野であればPubMEDといったデータベース検索サイトを使って、いかに検索式を工夫して自分の興味にマッチする文献だけをヒットさせるかが最重要課題でした。しかし、近年の生成AIの隆盛により、研究者が文献を検索する方法がガラリと変わったと思います。もちろん網羅的かつ再現性よく検索するためには、今でも検索式を用いてデータベースを利用することが推奨されていますが、現実的には生成AIがどんどん検索精度を上げてきています。
検索結果に対してインタラクティブに確認作業ができるというのも非常に魅力的です。
Consensus.app
自分は、有料版を用いていますが、根拠となる文献を示しつつ、現在どんな知見があるのか、またその根拠となる論文は何かを教えてくれます。
プロンプトの例:光の粒子説を復興させたのは誰か
Elicit
Elicitは、複数の大規模な学術データベースを横断的に検索しています。主な情報源は以下の通りです。 Semantic Scholar: 2億件以上の論文を収録する非常に大規模なデータベースで、Elicitの主要な検索対象です。これには、PubMedのデータも含まれています。 PubMed: 医学・生物学分野の重要なデータベースであり、Elicitの検索対象に直接含まれています。 OpenAlex: オープンアクセスの学術データを集めた大規模なデータベースです。 Elicitのヘルプセンターによると、これらの情報源を組み合わせることで、2億5000万件以上の学術文献にアクセスできるとされています。(Gemini)
ConsensusとElicitの使い分け
ElicitとConsensus.appは、どちらもAIを活用した学術論文の検索エンジンですが、その目的と機能において明確な違いがあります。 Elicitは、複数の大規模データベース(Semantic Scholar, PubMed, OpenAlexなど)を横断的に検索し、2億5000万件以上の文献にアクセスできます。その主な強みは、自然言語での質問(例:「〜の主な原因は?」)に対し、関連する論文を検索するだけでなく、それらの論文から介入方法、サンプルサイズ、主要な結果といった詳細な情報を抽出し、自動で表形式にまとめる能力にあります。システマティック・レビューの補助や、特定のテーマに関する情報を網羅的に収集・比較する作業に適しています。 一方、Consensus.appは、主にSemantic Scholar(2億件以上)を情報源としています。このツールの最大の特徴は、「科学的コンセンサス(合意)」を視覚化することに特化している点です。「(物質A)は(症状B)に効果があるか?」といった「Yes/No」で答えられる具体的な質問に対し、AIが関連論文の結論を集計し、「Consensus Meter」という機能で、肯定的・否定的・不明瞭な見解の割合をグラフで示します。 両者を比較すると、Elicitは「研究テーマを深く網羅的に調査し、詳細データを抽出する」ためのツールであり、Consensus.appは「特定の疑問に対する科学界の全体的な傾向や合意を素早く把握する」ためのツールと言えます。 したがって、使い分けとしては、研究テーマについて幅広く文献を探し、そこから詳細なデータを比較検討したい場合はElicitが適しています。対して、特定の疑問について「結局、科学的にはどう言われているのか」という主流な見解を迅速に知りたい場合や、研究デザイン(例:ランダム化比較試験など)を指定して傾向を見たい場合にはConsensus.appが有効です。(Gemini 2.5 Pro)
講義スライドのための原稿作成
毎年講義をしているので講義スライドは既にあるとして、じゃあそのスライドを使ってどんなふうに話そうか?で悩むこともあります。もちろん自分がストーリーを語れるようにしっかりとスライドを作り込んで、スライドの順番も吟味しておく必要があるわけですが、1年経ったらどんな風にしゃべったか忘れたということもあるでしょう。そんなときに重宝するのが、生成AIにスライド原稿を作らせるという裏技です。
1講義分のスライド数十枚をGeminiに丸投げしてしまうと、わりと端折ったものしか返してきてくれませんでしたので、PDFにしたスライドをGeminiにアップロードしたあとで、スライド3の原稿を書いて、といった具合に1枚ずつ依頼するといいみたいです。ちゃんと前のスライドからのつながりも含めて、また、次のスライドへの遷移も考慮して、原稿を書いてくれます。
しかし、Geminiはどうもスライドに貼り付けた写真の内容まで理解してくれているようです。きちんと内容に合った原稿を書いてくれます。これには驚きを禁じ得ません。なぜ写真の内容が分かるのか不思議です。スライドに合わせた、授業でしゃべる内容の原稿のクオリティは非常に高いと思います。正直、自分で思いついた言葉よりももっと的確のような気がしています。もちろん、間違いがないかしっかり吟味して、参考にしますが、今のところ、ウソを言っていることに気付いた例はありません。
1枚ずつ依頼すると、50枚分などやると毎回毎回うっとおしいと思います。こういう繰り返し作業は、AIエージェントにでもやらせればいいのかもしれません(試したことはない)。
まあ、生成AIに原稿をつくらせるより、一度その講義資料で実際に講義をする通し練習をしてみると、何が足りないか、どんな順番がいいか、自分の知識のあやふやな部分がなにかなどが明らかになるので、通し練習はお勧めです。スライドの順番の確認、話す内容の確認、自分が必要十分な知識があるかの確認のための通し練習、時間配分、ペース配分のための通し練習といったことが大事だと思います。
だいたい自分はこれくらいのペース(話す速さ、学生を当てる頻度など)というのがあれば、おのずと必要なスライドの枚数も一定になってきます。
講義音声の文字起こし
自分の講義を改善するためには、講義を録画したり音声を録音してあとで見返したり聞き返したりするのがいいでしょう。ZOOMなどでオンライン授業をする場合にはたいてい録画していると思うので、それを見直すことができます。対面授業の場合にビデオで撮影するのは学生の許可もいるでしょうし、少しハードルが高いことだと思いますが、音声を録るだけならICレコーダーをポケットに差しておけばいいだけなので簡単です。
その音声ファイルの文字起こしは、いまどきは生成AIに頼むと簡単にやってくれます。どのAIでもやってくれるというわけではなくて、いまのところGeminiならやってくれるようです。有料版でも100MBまでの制限があるので、もし超えていたら、予め100MB未満になるように音声ファイルを分割する必要があります。ファイルを分割するPythonスクリプトはAIに頼むと書いてくれます。
Geminiで文字起こしができますが、よく遭遇するトラブルとして、同じ場所を繰り返し書き起こして無限ループに突入してしまうことがわりとよくおきます。いまのところ、この回避策は見つかっていません。