弁理士試験対策の勉強で覚えるべき民法

弁理士試験における「民法」は、深入りすると沼にハマりますが、「特許法を理解するための土台」として必須の条文がいくつかあります。

弁理士試験で必須の「民法」条文リスト

弁理士試験(特に短答・論文)では、「民法(一般法)の原則」「特許法(特別法)の修正」の違いを問う問題が頻出です。

以下の条文だけは、**「特許法の条文の親」**だと思って、番号と内容をリンクさせておいてください。

A. 不法行為・不当利得(侵害系)

侵害訴訟の根拠となる、最も重要なグループです。

民法 内容 特許法との関係(ココが出る!)
709条

不法行為

 

(故意・過失により他人に損害を与えたら賠償する)

特許侵害の損害賠償の根拠条文

 

※特許法103条で「過失の推定」があるため、原告は立証が楽になる。

703条/704条

不当利得

 

(法律上の原因なく利益を得たら返還する)

損害賠償(3年で時効)が間に合わなかった時の「最後の手段」。

 

特許法には規定がないので、民法を直接使う。

719条 共同不法行為 複数人で侵害した場合の連帯責任。
724条

時効

 

(損害賠償請求権は、知ってから3年で消滅)

特許侵害の損害賠償も3年で時効にかかる。

B. 共有(共同出願・共同権利)

特許権を複数人で持つ場合、民法の「共有」がベースになりますが、特許法は別ルールが多いです。

民法 内容 特許法との関係(ココが出る!)
264条

共有の性質

 

(この節の規定に従う)

特許権の共有も基本はここ。
251条

共有物の変更

 

(他の共有者の同意が必要)

特許法73条(持分の譲渡・ライセンス)で、**「他人の同意が必要」**とするルールの元ネタ。
252条

共有物の管理

 

(持分の過半数で決める)

【超重要例外】

 

民法なら「実施(使用)」は自由だが、特許法(73条2項)では**「同意なしで実施できる」**と明記。ここが違う!

C. 代理・行為能力(手続総則系)

未成年者の出願や、代理人(弁理士)の権限に関するルールです。

民法 内容 特許法との関係(ココが出る!)
5条

未成年者の法律行為

 

(法定代理人の同意が必要)

特許法7条(未成年者等の手続能力)のベース。

 

※ただし特許法は「同意」だけじゃダメで**「代理」**が必要という厳格化がある。

99条 代理行為の要件 特許法9条(代理権の範囲)等のベース。
106条

復代理

 

(代理人がさらに代理人を選ぶ)

弁理士がさらに別の弁理士に頼むケース。

D. 物権変動(権利の移転)

「権利がいつ移るか?」という話です。

民法 内容 特許法との関係(ココが出る!)
176条

物権の設定及び移転

 

(意思表示のみで効力を生ずる)

民法では「売ります」「買います」だけで権利が移る。

 

【超重要例外】特許法98条

 

特許権の移転は**「登録」しないと効力が発生しない**。民法と真逆!


まとめと学習アドバイス

  1. 民法709条(不法行為)は、特許侵害の親玉。絶対暗記。

  2. 民法176条(意思主義特許法98条(登録主義)の対比は、短答の鉄板。

  3. 民法250条系(共有)と特許法73条の違い(勝手に実施していいか?)も鉄板。

民法をこれ以上詳しくやる必要はありません(コスパが悪すぎます)。「特許法が民法をどう修正しているか(=特許法に特有の事情は何か)」という視点で、上記の条文番号が出てきたときだけチェックすれば十分です。

 

知的財産権管理技能試験対策の勉強で知っておきたい民法

(履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由)
第四百十三条の二 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
2 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

同時履行の抗弁
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

 

(解除権の行使)
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする
2 前項の意思表示は、撤回することができない。

催告による解除
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

催告によらない解除
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。