インスリンの作用
ご飯を食べると唾液内のアミラーゼや膵臓から分泌されたアミラーゼの腸管における作用によって炭水化物がグルコースにまで分解されて、腸管の上皮細胞からグルコースが吸収され血流に入ります。血液中のグルコースの濃度、すなわち血糖値が上昇すると、膵臓のランゲルハンス島(膵島とも呼ばれる)にあるβ細胞がそれを検知してホルモンの一種であるインスリンを分泌し、インスリンは血流にのって全身の細胞にグルコースを取り込むように指令を出します。そうすることで血糖値が下がり、血糖値が一定の範囲内に調節されるわけです。
血流から組織内へのインスリンの移動
インスリンが全身の細胞に働きかけるためには、血管の中から組織のほうに出ていく必要があります。血管の一番内側は血管内皮細胞があるわけですが、どのようにして血管を出ていくのでしょうか。
そのメカニズムはというと、血管内皮細胞の表面にはインスリン受容体があり、血流の中のインスリンはこのインスリン受容体に結合することによって、血管内皮細胞の中にいったん取り込まれ、反対側に移動して血管の外に出ていくか(transcytosis)、もしくは、血管内皮細胞と血管内皮細胞との間をすり抜けて移動していく(paracellular diffusion)という2つのメカニズムが想定されています。
- Endothelial Transcytosis of Insulin: Does It Contribute to Insulin Resistance? Warren L. Lee and Amira Klip 10 AUG 2016 https://doi.org/10.1152/physiol.00010.2016 insulin must exit capillaries, which (in tissues like skeletal muscle and fat) are lined by a layer of continuous endothelium. Insulin must therefore pass between endothelial cells (paracellular diffusion, green arrow) or be transported across individual cells by transcytosis (red arrow) to access the interstitium.
血流から組織内へのグルコースの移動
細胞の代謝活動は,血管を循環する血液により供給される糖や酸素などにより支えられている.体の大部分においては,これらの物質は血管壁を容易に通過して組織へと浸透していく.しかしながら,脳など一部の器においては血液と組織細胞の間に関門が形成され,このような自由な物質の移動が妨げられている。この「血液一組織関門」(blood-tissuebarriers)の存在により得られる特殊な環境は,光にする透明度が要求される眼球をはじめとして,その器特有の機能の発揮に大きく寄与している.それでは,関門で取りまれた細胞へはどのようにして栄養が届くのであろうか.ここでは,最近明らかになった糖輸送体GLUT1やギャップ結合蛋白質コネキシンの関与する糖の関門通過機構について,関門の構造とも関連づけながら述べる. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo1950/33/2/33_2_99/_pdf