卵子の形成過程 第一減数分裂前期での停止と再開、第二減数分裂中期での停止

人間の細胞は46本の染色体をもっています。親由来の23本、父親由来の23本を合わせて46本になります。つまり精子や卵子といった配偶子をつくるためには、染色体の数を半減させる過程、すなわち減数分裂が必要になります。この配偶子形成の最初の段階は、まだ胎児のときに起きています。しかも最初のステップでは、男性も女性も共通になっています。

発生の早い段階ではまだ、生殖細胞の性は決まっておらず始原生殖細胞と呼ばれています。

脊椎動物では、発生が進むと始原生殖細胞が大挙して移動し、やがて中胚葉起源の生殖隆起(genital ridge)へ落ち着く。

個体の発生と分化-配偶子形成と受精 https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/pdf2/develop.pdf

女性が成熟して子供をつくるときに、受精直前に減数分裂が起きるのかというと実はそうではありません。なんと減数分裂が始まるのはその女性が生まれる前の胎児の時期なのです。つまりお母さんのお腹の中にまだいる状態ですでに次の世代をつくるための減数分裂を初めていたというわけです。もっというと、生まれるまえにすでに卵になる細胞は体細胞分裂を終了しているので、それ以上増えることはなく、女性が生まれたときにはすでに卵の数は一定の数しかないということになります。といってもその数は少なくなくて、誕生時には200万個くらい用意されています。その後減っていきますが、生殖する年齢のころには30万個程度あります。

哺乳類の雌では、卵子のもととなる細胞(卵母細胞)は胎児期に増殖し、卵巣に蓄えられ、出生後に新しく作り出されることはありません。一つ一つの卵母細胞は、母体の体細胞である扁平な前顆粒膜細胞に包まれた「原始卵胞」と呼ばれる構造をとり、活性化されるまで休眠しています。性成熟後に原始卵胞は徐々に活性化され、卵母細胞は成長を開始し、前顆粒膜細胞は顆粒膜細胞に分化して成熟した卵胞となり、排卵に至るという周期的な生殖サイクルを支えます。https://www.riken.jp/press/2021/20210528_1/index.html#note8

  1. 妊娠の流れ 下田産婦人科 神奈川県茅ケ崎市

もっと驚くべきことは、胎児の時期に始まった減数分裂ですが、第一減数分裂前期で停止しているのです。この段階は「一次卵母細胞」と呼ばれます。一次卵母細胞をもった状態で赤ちゃんとして誕生し、子供時代を過ごし思春期に入って生理周期が始まってから、その減数分裂の続きを再開するのです。

生理周期で何がおきるのかというと、脳下垂体前葉から分泌されるホルモン「性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)」のひとつである卵胞刺激ホルモン(FSH)が卵巣に働きかけると、卵胞が発育します。

卵も減数分裂を経て形成されるが,ホ乳類では胎児期に開始された減数分裂が第一分裂前期 の状態で長期間休止する。個体が性成熟すると,排卵直前に脳下垂体から分泌される生殖腺刺激ホルモンによって減数分裂が再開される。その後,減数分裂の第二分裂中期の状態で再び休止し,二次卵母細胞の状態で排卵される。受精によって精子が卵に進入すると,精子の進入が 刺激となって減数分裂が再開され,卵の核と精子の核が融合する前には ( ウ ) が放出される。https://service.zkai.co.jp/ad/mihonpdf/kouhanki/igakuka_b.pdf

卵母細胞を第一減数分裂前期で停止させておくメカニズム

In mammals, meiotic arrest is regulated by a high level of cAMP in the oocyte (). When oocytes are isolated from the antral follicles, the cAMP levels within the oocytes decrease and meiosis resumes spontaneously (). On the contrary, when they are cultured with the cAMP analog dibutyryl cAMP (dbcAMP) or cAMP phosphodiesterase (PDE) inhibitors such as isobutyl methyl xanthine (IBMX) and milrinone, the spontaneous meiotic maturation of mouse oocytes is prevented (). Therefore, a constantly higher level of cAMP becomes the priority for oocytes to sustain meiosis at the GV stage. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8025927/

  1. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5305431/
  2. The molecular regulatory mechanisms of meiotic arrest and resumption in Oocyte development and maturation Reproductive Biology and Endocrinology volume 21, Article number: 90 (2023) 02 October 2023

卵胞細胞の発育

卵胞は、約6カ月をかけて、原始卵胞一次卵胞前胞状卵胞胞状卵胞成熟卵胞(グラーフ卵胞育します。原って3れます。第1で、この時期の卵胞発育はゴ性です。発育を促進する因子は、卵内で分泌されていて、GDF9BMP15EGFTGFAどの局子がいます。

原始卵胞は、出生前から思春期にいたるまでの長い年数を、第一減数分裂前期の複糸期で減して休眠した状態でいます。思春期を迎えて性立されると、約1,000個/周期の休眠原始卵胞れて発し、一胞になります。

  1. https://www.shindan.co.jp/view/2191/pageindices/index9.html

卵胞の発育は、原始卵胞(primordial follicle)から一次卵胞(primary follicle)、二次卵胞(secondary follicle)、すなわち前胞状卵胞(preantral follicle)胞状卵胞 (antral follicle)を経て、成熟卵胞(mature follicle)であるグラーフ卵胞 (Graafian follicle)となり、排卵のへ準備を整える。一次卵胞と二次卵胞は形態変化による分類であり、原始卵胞を立方化した顆粒膜細胞が単層で取り巻いているものを一次卵胞、多層に取り巻いているのを二次卵胞と呼んでいる3)。
二次卵胞の時期には、多層化した顆粒膜細胞を取り囲む卵胞膜(theca folic)が形成され、卵胞膜の内側(theca interna)を構成している莢膜細胞(theca cell)が黄体化ホルモン受容体(luterinzing hormone receptor)を、顆粒膜細胞は卵胞刺激ホルモン受容体(follicle stimulating hormone receptor)が現れてくる。

https://www.jaog.or.jp/lecture/3-妊娠まで%E3%80%80卵胞発育、卵の成熟、排卵、受精、着/

その後LHサージによって、第一減数分裂前期で停止していた一次卵母細胞の一部が、細胞周期を再開します。

During estrus phase in animals or the menstrual cycle in humans, the resumption of meiosis occurs in certain oocytes due to a surge of luteinizing hormone (LH) levels. https://rbej.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12958-023-01143-0

LHサージにより第一減数分裂前期で停止していた減数分裂が再開し、第二減数分裂中期で停止する

https://www.jaog.or.jp/lecture/3-妊娠まで%E3%80%80卵胞発育、卵の成熟、排卵、受精、着/

第一減数分裂の完結により細胞は2つに分裂しますが、細胞の大きさには大きな偏りがあり、一方はほぼ同じ大きさなのに対して、もう一つは第一極体と呼ばれる小さな小さな細胞になります。もちろん極体ではないほうの大きな細胞が将来の卵子になります。さて第一減数分裂を終えてそのまま第二減数分裂に入り、第二減数分裂の中期で再度停止します。この状態が、受精をスタンバイしている状態になります。精子がやってきて受精すると、第二減数分裂中期から細胞周期を再開して細胞分裂して第二極体を放出し、10年以上かけてきた(10代の女性の場合)減数分裂が完了します(40代の女性なら40年以上ということ)。第二極体放出後、卵子の前核と精子の前核は融合して一つの核となり、これで受精卵というひとつの細胞ができたことになります。

  1. 妊娠の流れ 下田産婦人科 神奈川県茅ケ崎市
  2. 性腺ホルモン 1.成人男女の生殖機能 2.性の決定分化 ・ 3.性の発達 – 思春期(二次性徴) https://www.genken.nagasaki-u.ac.jp/genetech/genkenbunshi/pdf/H24.1.12.pdf