炎症とがんの関係 

炎症とがんとの関係

消化器系の組織では、原因に関わらず、炎症が慢性的に持続すると、高率にその臓器組織での腫瘍形成を見る(肝臓がん・胃がん・大腸がんなど)。‥ 私たちは先行研究で「慢性炎症の刺激が、細胞内の遺伝子発現の調節を司る小分子RNA(microRNA)の機能を全般的に低下させ、その結果 腫瘍が発生する」という、これまで知られていなかった持続炎症に続発する腫瘍の形成メカニズムを明らかにしました(RNA機能変化を端緒とした炎症細胞社会学の確立 大塚 基之 東京大学医学部附属病院 消化器内科 予防を科学する炎症細胞社会学 文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究(研究提案型)」平成29年度~令和3年度 公募研究(~令和元年度)

炎症反応は組織傷害や微生物感染に対する防御機構の1つであるが、近年、がんの発生や悪性化の促進にも関与することが明らかになってきた。炎症性細胞から産生されたサイトカインや増殖因子は発がん促進に作用している。またがん細胞は、本来がん細胞自身を排除するための生体応答である炎症反応を乗っ取り、炎症性細胞を自身の周囲にリクルートして“がんニッチ”を形成し、増殖・浸潤等の自己の悪性化に利用している。(弓本 佳苗 九州大学 生体防御医学研究所 分子医科学分野 特任助教 予防を科学する炎症細胞社会学 文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究(研究提案型)」平成29年度~令和3年度 公募研究(~令和元年度)

 

肝炎と肝がん

慢性化した肝炎を放置していると、肝臓の線維化が進み、約25〜30年で約50%が肝硬変となり、 さらに10年以内に80%が肝がんとなります。(知っておきたい身体の危険信号 すぎやま病院

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の1~2割の症例は、NASHと呼ばれる炎症と線維化を伴った進行性の病態に陥っており、最終的には肝硬変や肝がんに至ることがわかってきました。(肝臓研究室 病態制御内科学(第三内科)九州大学大学院医学研究院

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が注目されています。NAFLDの一部は肝細胞壊死・炎症所見から線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に移行し、このうち一部は肝硬変や肝細胞癌を発症します。近年、直接作用型抗ウイルス薬や核酸アナログが使用されるようになりウイルス性肝疾患に起因する肝細胞癌は減少傾向にありますが、生活習慣の欧米化に伴ってNASH肝癌の罹患率が増加しています。(炎症細胞社会に焦点を当てた閉経後NASH肝癌の発症機構の解明と予防戦略の開発 小川 佳宏 九州大学大学院 医学研究院病態制御内科学分野(第三内科) 教授 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野 教授 予防を科学する炎症細胞社会学 文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究(研究提案型)」平成29年度~令和3年度 公募研究(~令和元年度)

日本人の肝臓がんのほとんどはB型C型肝炎ウイルス持続感染者で、慢性肝炎・肝硬変を経て肝臓がんに至るという経過をたどっています。肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変になった肝臓は、肝臓全体が発がんしやすい状態になっているため、一つの腫瘍を消滅させても、他の場所に新たに発生するリスクが高いのが特徴です。最初にみつかった肝臓がんを治療したあと、1年以内に約30%が再発し、5年以内に70%以上が再発しています。‥ 肝臓の発がんを促進する最大の要因は、炎症の持続によって活性酸素の害(酸化ストレス)が増えることと、細胞死に伴って細胞の増殖活性が促進されるからです。(肝臓の慢性炎症が肝臓がんの再発を促進する 肝臓がんの再発予防 銀座東京クリニック

C型肝炎は、HCV感染急性肝炎となり、その70~80%が慢性化し、その内80%が肝硬変となり、年に7~8%の人が肝細胞癌を発症する経過を取っていた。‥ 肝癌による死亡者数は2003年頃の年3万5千人をピークに、現在は年3万人前後にまで減少してきた。肝癌の原因疾患の第一は、依然C型肝炎ウイルスであるが、その頻度は減少してきており2011年に発表された九州地区の肝癌の調査では、68%にまで低下してきており、B型・C型以外のNASHに伴うものが増加してきている。(2017年7月27日 高齢者におけるC型肝炎治療の現状 中馬 誠 先生 川村内科診療所

 

慢性胃炎と胃がん