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ニューロフィードバックに関する科研費研究183採択課題

バイオフィードバックは自分の身体の状態(発汗、心拍数など)を計測・可視化しリアルタイムで自覚することにより、よりよい身体の状態になるようにするトレーニングです。脳波も身体の状態を表しますが、望ましい脳波の状態を得るためのトレーニングが、ニューロフィードバックです。

  1. ハイパーニューロフィードバックによる個人間脳同調の制御手法の開発 21K19787 2021-07-09 – 2024-03-31 野澤 孝之 東京工業大学, その他部局等, 准教授 (60370110) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(萌芽) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. 脳内サウンド刺激による新奇ニューロフィードバック手法が挑む自己想起型BCI創生 21K18304 2021-07-09 – 2025-03-31 和田 安弘 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70293248) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(開拓) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. 妬みのサブタイプを制御する脳内処理メカニズムの同定 21K13758 2021-04-01 – 2024-03-31 土元 翔平 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特別研究員 (80849315) 小区分10040:実験心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:私たちは他者が自分よりも優れていたり、多くの報酬をもらっている状況を見たときに羨んだり妬んだりする。自分よりも優れている他者の中には、他者を目標として自分も頑張ろうと励みになる他者がいる一方で、その他者に不幸が起きれば良いのにと妬みの対象になる他者が存在することが知られている。虐待やいじめの原因の根底にあるネガティブな妬み感情のコントロールは解決すべき社会問題である。そこで本研究では、相手の報酬に対する帰属先に着目して、妬みのサブタイプに対応する脳活動パターンを同定する。そして同定した脳活動パターンをニューロフィードバック法にて制御することで、妬みの感情と行動の因果関係を明らかにする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. ニューロフィードバックを用いた認知行動療法の補強効果 21K13727 2021-04-01 – 2024-03-31 横山 仁史 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (40727814) 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:本研究は、うつ病の治療成績を向上させるための認知行動療法とニューロフィードバックのハイブリッド治療戦略の提案を通して、脳科学に基づく治療開発に向けた実用的・学術的な知見の拡大を目指す。うつ病に対する認知行動療法(CBT)への期待はますます高まっているが、ここ20年の治療効果量は大きく変化してない。CBTが引き起こす脳の機能的変化から、CBTがうまく作用しない脳作用経路が明らかになってきている。ニューロフィードバックはCBTが直接作用しない脳回路に働きかけることが可能であるため、CBTの作用を補強するニューロフィードバックを開発し、それがCBTの治療効果を向上させるかについて検証を行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 発達性協調運動障害に対する前頭-頭頂ニューロフィードバックトレーニングの効果検証 21K11258 2021-04-01 – 2024-03-31 信迫 悟志 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (50749794) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)は,運動の不器用さを主症状とする神経発達障害の一類型である.この運動の不器用さの原因として,運動学習や運動制御を担う脳機能に問題が生じていることが分かってきている.本研究では,脳波測定によって,DCDにおける脳機能の問題を詳細に明らかにすると共に,問題が生じている脳機能を直接的に活性化させるニューロフィードバック・トレーニングを実施することによって,DCDを有する児の運動の不器用さが改善するか否かを検証するものである. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  6. 脳状態依存刺激を活用した手指分離運動の神経基盤解明とリハビリへの応用 21K11174 2021-04-01 – 2025-03-31 緒方 勝也 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 教授 (50380613) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:本研究計画ではこれまで明らかにしてきた運動誘発電位(MEP)の時間的揺らぎに対して、MEPの標的筋と周囲筋の応答の差異(空間的揺らぎ)に着目する。MEPを多チャンネル(ch)で同時記録し、MEPの空間的揺らぎと脳波の関連(脳波-多chMEP連関)のシステムを構築、分離運動時の脳波律動を解析する。続いて脳波律動に合わせ磁気刺激を行う脳状態依存刺激で分離運動の誘発を行い、脳波-多ch MEP連関を検証する。これらの研究を基に、脳波律動を被験者に視覚提示するニューロフィードバックに応用する。
    一連の研究を通じて手指分離運動の神経基盤の理解を深め、新たなニューロリハビリテーション方法の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  7. 個人の脳活動制御能を予測する脳指標の特定とメカニズム解明 21K07521 2021-04-01 – 2024-03-31 高村 真広 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (50720653) 小区分52030:精神神経科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:うつ病等の精神疾患に対する新規治療法の候補としてニューロフィードバック治療(NF治療)の研究が進められている。NF治療とは、患者の脳活動状態をリアルタイムでフィードバックし、患者自身が脳活動の制御法を学習することで、疾患によって変化した脳機能を回復させる治療である。これまでNF治療の有効性を示唆する報告がある一方で、脳活動の制御そのものが得意か不得意かという個人差が治療効果を左右してしまう問題が認識され、実用化にむけた課題となっている。本研究はこの問題の解決にむけて、この個人差を事前に予測する脳画像指標や個人差が生まれるメカニズムを検討し、より効果的なNF治療の開発に資する基礎研究を展開する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  8. 神経振動異常と言語性幻聴の因果関係:聴覚訓練とニューロフィードバックによる検討 21J40073 2021-04-28 – 2024-03-31 小区分10040:実験心理学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:統合失調症の新たな病態基盤として大脳皮質における興奮性と抑制性の神経伝達バランスの障害が注目されている。このような障害を反映する神経生理学的な指標として30 Hz以上の頻度で起こる神経活動であるγオシレーションの異常が知られておりその異常の度合いが統合失調症者の約8割に見られるとされる「言語性幻聴」の症状の強さと相関することが知られている。本研究では言語性幻聴の症状と関連が深いと考えられる統合失調症者の聴覚皮質におけるγ及びθオシレーションの異常に注目し、その異常と言語性幻聴の症状を改善するための、聴覚訓練課題とその訓練効果を促進させるニューロフィードバック課題を開発することを最終目的とする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  9. 感覚運動ネットワークの再編成を誘導する標的定位型ニューロフィードバック法の開発 21J20955 2021-04-28 – 2024-03-31 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:ヒトは与えられた環境に対して感覚情報をもとに動的に適応する。しかしながら、感覚運動適応を実現する脳と行動変化の対応関係は未だ十分に明らかにされていない。そこで本研究では、運動関連脳領域の活動パタンから同定される感覚運動ネットワークを標的とした神経機能修飾技術を確立し、運動技能への影響を検討することを目的とする。上肢運動の遂行に関連する感覚運動ネットワークの機能変化を誘導するニューロフィードバック法を開発し、訓練前後での行動学的評価から神経活動パタンと運動機能の関係を因果的に検証する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  10. 観察学習を促進する脳波フィードバック訓練の検討 21J00886 2021-04-28 – 2024-03-31 小区分90030:認知科学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:本研究では、動作の観察時のニューロフィードバックがミラーシステム(動作観察時に賦活する脳の運動関連領野)の状態にどのように影響するか、活動脳領域の変化を調べる。また、ニューロフィードバックを用いた運動の観察学習を行い、運動学習が促進されるか検討する。実験では、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)と脳波の同時計測システムを使用し、動作観察中の活動脳領域について調査する。また、動作の観察と実行を1 セットとし、それを繰り返す訓練(観察学習訓練)を行う。訓練中の動作観察時にニューロフィードバックを行い、運動学習や運動機能の変化について調べる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  11. スマート端末を用いた脳状態計測技術の開発とビッグデータ解析 21H04909 2021-04-05 – 2025-03-31 天野 薫 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (70509976) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要:知覚,認知,運動など多くの機能を司る脳の状態を知ることは心身の健康維持にとって不可欠であるにもかかわらず,脳の状態を測る機会は極めて限定的である.そこで本研究では,脳波計やMRIなどの脳計測装置を使わずに,スマート端末だけを使っていつでもどこでも気軽に脳の状態を計測する技術を開発し,日常的な脳の健康管理による健康寿命の延伸を実現することを目的とする.この目的を達成するため,①スマート端末だけを使っていつでもどこでも気軽に脳の状態を計測するための技術開発,②その技術に基づく,脳状態と活動量や認知機能の関係に関するビッグデータ収集と分析,③脳状態の変調による機能向上,の3つのステップで実現する. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  12. TMSニューロフィードバック学習によるヒト脳活動制御と神経疾患への応用 20K21770 2020-07-30 – 2023-03-31 小金丸 聡子 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40579059) 中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(萌芽) 研究概要:経頭蓋磁気刺激(TMS)により、一次運動野(M1)を刺激すると、筋電図上、運動誘発電位(MEP)が生じる。MEPの振幅を被験者にフィードバックし、被験者が内因性にMEP振幅の大きさを変化させることを学習する『TMSニューロフィードバック学習システム』を用いることで、TMSニューロフィードバック学習により脳内神経活動を内因性に変化させることを学習させ、脳内神経活動の制御を目指す。健常者においては、新たな学習法の確立をめざす。また患者においては異常な神経活動を内因性に修復することを学習させることにより、新たな治療法の確率をめざす。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  13. ミラーシステムの活動強化による観察学習促進効果の検討 20K15887 2020-04-01 – 2023-03-31 池田 悠稀 九州大学, 芸術工学研究院, 学術研究員 (60868800) 小区分45060:応用人類学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:観察学習を行うときに、脳ではミラーシステム(動作観察と動作実行の両方で活動する脳の運動関連領域)が賦活する。ミラーシステムは模倣や動作の習得に重要な神経機構であるが、ミラーシステムの活動と動作習熟の関係は不明瞭な点が多い。また、ミラーシステムの活動を向上させることで動作の習得が促進されるかは明らかでない。本研究では、観察学習を行う際にミラーシステムの活動を向上させる訓練を行い、通常の観察学習や観察を行わない運動学習をした群と比較することで、ミラーシステムと動作習熟の関係について明らかにする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  14. 神経生理学的「あがり」指標の開発とニューロフィードバックトレーニングへの応用 20K11367 2020-04-01 – 2023-03-31 佐藤 大樹 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (90416933) 小区分59020:スポーツ科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:精神的重圧がかかるスポーツ競技や人前での発表において、緊張に伴いパフォーマンスが低下する現象を「あがり」と呼ぶ。その発生メカニズムの解明は未だ不十分であるが、近年では神経生理学的研究も進みつつあり、「『あがり』は脳で生じた現象である」ということが分かってきた。本研究では、脳血流信号や脳波、心拍、呼吸を含む複数生体信号群の同時計測、および機械学習を用いた解析を用いて、「あがり」と「良い緊張」を切り分ける総合的な神経生理指標(「あがり」指標)を確立することを目的とする。また、その「あがり」指標を用いたニューロフィードバックトレーニング法を開発し、その有効性の評価を試みる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  15. ニューロフィードバックによる事象関連電位調節手法の開発 20K11176 2020-04-01 – 2023-03-31 高野 弘二 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究員 (00510588) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:ニューロフィードバックは対象者に自身の脳活動を評価し、視覚・聴覚などの何らかの形で対象者に提示することで、脳活動を自発的に制御し、目的に合わせた脳内ネットワークの構造に誘導する技術である。
    発達障害や高次脳機能障害などでは、特定の認知機能の強弱により、日常に困難が生じることがあり、その解決手法が求められている。
    本研究では、特定の認知課題に対する脳活動を判別する手法を開発、その脳活動の強化・抑制を可能とするニューロフィードバック手法の開発を行う。これによって従来手法では困難であった脳活動を選択的に強化ないし抑制することが可能とし、それにより認知リハビリテーション技術の向上に当てるものである。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  16. 脳卒中片麻痺上肢に対するテーラーメイド型ニューロフィードバック法の開発と効果検証 20K11173 2020-04-01 – 2023-03-31 中野 英樹 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (60605559) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:高齢者医療費・要介護認定要因の第一位である脳卒中患者の運動機能回復を促進させることは喫緊の学術的・社会的課題である.しかし,脳卒中患者の上肢機能を改善させるエビデンスの高い治療法は未だ確立されていない.本研究は,脳卒中患者の脳機能個人差を考慮したテーラーメイド型ニューロフィードバックトレーニングを開発し,それが脳卒中患者の上肢機能に及ぼす効果を運動機能と脳機能の観点から明らかにすることを目的とする.本研究により,個々の脳の特性に基づいたテーラーメイド型ニューロフィードバックトレーニングが開発されれば,脳卒中患者の運動機能回復を最大限に引き出すことが可能になると考える. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  17. ニューロフィードバック技術を応用した前庭リハビリテーション法の創成 20K09752 2020-04-01 – 2023-03-31 高倉 大匡 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (50345576) 小区分56050:耳鼻咽喉科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:慢性めまい・体平衡障害患者の治療には前庭リハビリテーション(前庭リハ)が行われているが、十分回復しない難治性症例も存在し、従来の治療法に代わる新たな治療アプローチが求められている。我々は、同患者群への前庭リハとして、従来の手法とは異なった、めまいの認知に関与している大脳皮質機能を直接調節する、ニューロフィードバック(NF)療法の応用を試みる。正常被験者および慢性めまい患者に対して、めまいに対する慣れと代償を促進する従来の前庭リハに対して、NF療法を単独もしくは付加して行い、その臨床効果を検証するとともに、至適な治療条件を決定し、NF療法を応用した前庭リハの実用化を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  18. 認知機能障害と情動調整障害を同時に回復するうつ病のニューロフィードバック法の開発 20K07920 2020-04-01 – 2023-03-31 松原 敏郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60526896) 小区分52030:精神神経科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:われわれは、情動・認知相関の知見をもとに、陽性情動刺激課題を用いた前頭部ニューロフィードバック(NF)を用いて、うつ病患者の認知機能回復も目指した情動調整法とその脳病態を明らかにする。具体的には、うつ病患者をRCTにて、NF介入群と非介入群に分け、光トポグラフィー装置を用いて、NFを介入群、sham-NFを非介入群に、週1回6ヶ月間行い、0ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後の情動・認知機能検査および0ヶ月、6ヶ月後のDTIを測定する。またNF終了6ヶ月後に、情動認知機能が維持されていることを確認する目的で、もう一度情動・認知機能検査を行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  19. 多チャンネル脳波を用いた身体所有感の脳基盤の同定と介入法の開発 20K07714 2020-04-01 – 2023-03-31 大木 紫 杏林大学, 医学部, 教授 (40223755) 小区分51010:基盤脳科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:身体所有感は「自分の身体が自分に所属している」という感覚で、健常者では当然の身体意識である。しかし、例えば脳卒中の片麻痺患者では麻痺肢に対する身体所有感が低下し、不使用につながることが知られている。本研究では身体所有感をモニターし改善することを目的に、多チャンネル脳波を用いて身体所有感の脳活動マーカーの同定を行う。更に、マーカー部位に対し、経頭蓋磁気刺激、直流電気刺激、neurofeedbackで介入し、マーカーと身体意識の因果関係を明らかにすると同時に、介入法を確立する。本研究では、脳波によるマーカーの同定から介入まで統一的に行うことで、そのまま臨床応用できる方法の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  20. ADHD動物研究によるニューロフィードバ ック・薬物療法・応用行動分析の相乗化 20K03029 2020-04-01 – 2023-03-31 麦島 剛 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (40308143) 小区分09060:特別支援教育関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:この研究では、注意欠如・多動症(ADHD)モデル動物を用いて、ニューロフィードバック(NFB)療法の有効性を検討し、NFB療法と薬物療法の相乗効果の解明し、音への事象関連電位を指標とした前注意過程(注意が生じる前の認知過程)の不全に対する治療薬効果を検討し、オペラント行動に基づく確率割引を指標とした衝動性との関係の解明する。これらによって、ADHDの不注意と衝動性を神経と行動の両面で解明し、NFB療法・行動療法・薬物療法の3者をクロスさせてADHDの療育の相乗化と理論統一をめざす。また、生理心理学領域の基礎研究そのものの進展と、発達障害の臨床応用への将来的な架け橋の一端を築く。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  21. 身体意識の拡張を伴う身体部位拡張の実現 20J12569 2020-04-24 – 2022-03-31 小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:義手を代表とする補綴や新たな身体を獲得する身体拡張技術は身体の制約を超えて人の活動および機能を支援することができる.日常生活だけでなく遠隔手術ロボットにみられるように医療など幅広い場において多くの波及効果を生む重要な技術である.人の身体図式は不変のものではなく,四肢の追加や増強といった試みは多くあるものの,身体認識を拡張する明確な方法論は語られていない.
    そこで本研究では,身体認識の変容を順応学習であると捉えなおし,ニューロフィードバックにより身体認識の変容を促進することを試みる.これにより本来の身体と等価な身体認識を身体拡張部位に獲得することができる身体認識の拡張を伴った身体拡張を実現する. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  22. ニューロフィードバックで思考習慣を変える: fMRIと脳波による認知活動の可視化 20J01375 2020-04-24 – 2023-03-31 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  23. 聞こえているのに聞こえない:高齢リハビリ患者の聴覚異常の可視化と新規治療法の開発 20J00552 2020-04-24 – 2023-03-31 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要:多くの高齢者は、「聞こえているのに理解できない」と訴え、この症状は中枢性聴覚処理(CAP)異常に基づくと考えられる。CAP異常と海馬異常とには密接な関連があることが示唆されているが、隠れたCAP異常を検出する技術は確立されていない。CAP異常とリハビリとの関係性を明らかにするため、本研究では、(実験1; 海外研究施設にて)高齢者てんかんに対して、脳磁図と非侵襲的聴覚刺激を用いたニューロフィードバック治療法を開発することにより、CAPをモデュレートすることができるかどうかを検討する。また(実験2)高齢リハビリ非効率患者に対して、脳磁図を用いて、隠れたCAP異常を検出することを目的とする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  24. 心脳限界認識の哲学と心脳限界突破の倫理学 20H05717 2020-10-02 – 2023-03-31 中澤 栄輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90554428) 学術変革領域研究区分(Ⅰ) 研究開始時の概要:学術変革領域研究(B) 研究概要:本研究は心脳限界の認識と突破に関する科学哲学・倫理学である。領域に特有の倫理的・法的・社会的課題を人文学的に掘り下げ、限界認識・突破の概念を彫琢することで、心脳限界突破という新たな融合学問領域に社会的・学問論的位置づけを与える。
    本研究は心脳限界認識の哲学と心脳限界突破の倫理学に二分される。哲学的考察においては心の哲学、現象学、社会哲学の知見を援用しながら人間の認識、知識、能力の限界を規定する人間の自己反省的な認識のあり方、その限界を突破する人間の欲求を検討する。
    倫理学的考察においては、理論的方法、経験的方法双方を混合させ、心脳限界突破の倫理的妥当性を人間的および社会的側面から検討する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  25. テイラーメード神経活動修飾法による注意機能改善がもたらす高齢者の運動学習促進 20H05485 2020-04-01 – 2022-03-31 櫻田 武 立命館大学, 理工学部, 助教 (40588802) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要:本研究では、認知機能個人差を考慮したテイラーメードニューロフィードバック訓練環境・プロトコル確立とそれを用いた運動学習効果促進を目指す。これを検証するため、まず個々の脳機能特性を脳活動から定量化したうえで、ニューロフィードバック訓練において賦活させる神経回路(ゴール) を適切に切り替える。最終的には、このような個人差を考慮するプロトコルを適用することで、高齢者の認知機能(注意制御能力)・運動機能(適応能力・運動学習能力) の保持・再獲得が促進することを示す。さらに、その訓練効果を予測するモデルの提案を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  26. 検出不可能なドーピング技術に関する生命・スポーツ倫理学的研究 20H04084 2020-04-01 – 2023-03-31 近藤 良享 名古屋学院大学, スポーツ健康学部, 教授 (00153734) 小区分59020:スポーツ科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:2003年に「遺伝子治療を応用する方法」がドーピングとして禁止されて以来、今まさに新しい局面を迎えようとしている。その1つが遺伝子編集技術、CRISPR-Cas9の開発(2012年)である。もう1つが脳科学のニューロフィードバック技術である。これらの方法はドーピングとして検出困難もしくは不可能な方法になりうる技術である。よって、本研究は、これらの検出困難もしくは不可能とも言えるドーピング方法がどのような影響をスポーツ界に招来させるかを生命倫理やスポーツ倫理の視点から考察する。遺伝子ドーピングや脳ドーピングのスポーツ界への影響を論じる中で、私たちの未来社会のあり方も問うことになる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  27. パーキンソン病の歩行障害に対するNIRS-ニューロフィードバックシステムの応用 20H04044 2020-04-01 – 2023-03-31 三原 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80513150) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:本研究では、パーキンソン病の歩行障害に対して、歩行運動の想像中の脳活動を患者に提示し、その活動を大きくする、”ニューロフィードバック”と呼ばれる介入が、通常のリハビリテーション以上の介入効果をもたらすかどうか、およびその効果がどの程度持続するかを多施設共同研究、並行群間デザインによる臨床研究によって明らかにし、併せて脳機能画像を用いた評価で、介入前後の脳内の機能的ネットワークの変化を検討することで、パーキンソン病の歩行障害改善効果をもたらす神経基盤についても検討を行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  28. 主体的多感覚統合による知覚・認知過程の新しい枠組みの構築 20K20423 2019-06-28 – 2022-03-31 乾 敏郎 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (30107015) 中区分10:心理学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(開拓) 研究概要:本研究プロジェクトでは、外受容感覚、自己受容感覚、内受容感覚(内臓感覚で自己の内部状態の情報)、全ての感覚の統合を扱う新しい理論的枠組みの構築を目指す。さらに内受容感覚に着目し、以下の2つの処理過程のメカニズムを実験的に解明し、Karl Fristonの「自由エネルギー原理」を基礎とした新しい枠組みの構築を目指す。
    ①外受容・自己受容・内受容感覚の統合過程
    ②外受容感覚と内受容感覚の統合過程
    最終年度は前年度までの実験データに基づき、自由エネルギー原理に基づく、より一般的な多感覚統合過程の原理を構築する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  29. アスリートを対象とした簡便なあがり防止法の開発: 脳活動の偏側性を利用した試み 19K19956 2019-04-01 – 2023-03-31 平尾 貴大 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (70824572) 小区分59020:スポーツ科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:本研究では,脳活動の偏側性(右半球優勢)に着目し,アスリートを対象とした効果の高いあがり防止法の確立を目指す.左手でボールを把握すること(以下,反復把握法と呼ぶ)が,アスリートのあがり対策として有効視されている.本研究では,反復把握法がなぜあがり防止に有効であるのか脳機能の観点から解明した上で,反復把握法とニューロフィードバック訓練(右半球活動の増強)の相乗効果を検証する.相乗効果の検証については,大学生アスリートおよびトップレベルアスリートを対象とすることで,本研究で確立するあがり防止法が競技レベルによらず効果的なものであるか確かめる. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  30. 脳卒中患者の認知機能個人差に根ざしたニューロフィードバック訓練と運動機能への影響 19K19917 2019-04-01 – 2021-03-31 手塚 正幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (40721311) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:認知機能個人差により運動学習効果も変化する。このような認知機能個人差は背外側前頭前野の神経活動に反映する。この個人差神経基盤の知見に基づき、これまで急性期脳卒中患者を対象として近赤外分光法を用いたニューロフィードバックを適応し、体性感覚認知機能が高い患者ほど背外側前頭前野活動量が向上する結果を得てきた。しかし、このようなニューロフィードバック訓練で得られた脳活動が運動機能改善に及ぼす影響は明らかではない。そこで本研究は、急性期脳卒中患者におけるニューロフィードバック訓練効果差と訓練後の運動機能改善との関連性を解明することを目指す。最終的には患者の早期社会復帰に貢献する訓練手法を提案する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  31. 難治性ADHDの新規治療・『ニューロフィードバック経頭蓋直流電気刺激法』の開発 19K17016 2019-04-01 – 2022-03-31 門田 行史 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80382951) 小区分52020:神経内科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要:小児神経発達症の代表疾患である注意欠如多動症(ADHD)の既存治療に難治な症例の症状を改善させる全く新しい治療法の開発を目的とする。そのために、磁気刺激を用いた介入治療を行う。脳機能のリアルタイムに観察できるfNIRS(光トポグラフィー)を用いてtDCS刺激中に変化する脳機能を可視化する。正常な脳機能変化が生ずるために必要なtDCS刺激をfNIRS計測を行いながら検証する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  32. 認知機能のリアルタイム個人差判別によるテイラーメード脳卒中リハビリ環境の確立 19K11400 2019-04-01 – 2022-03-31 櫻田 武 立命館大学, 理工学部, 助教 (40588802) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:運動機能障害を持つ患者が行うリハビリテーションでは、できる限り短い期間において最大限の訓練効果を得ることが重要となる。この際、患者の脳機能特性を事前に明らかとすることで、その人に適した訓練内容や指示を決めることができる。このような個人差を脳活動に基づき客観的かつ短時間で評価し、より多くの患者が最大限の訓練効果を得られるシステムの提案を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  33. 月経随伴症状を有する若年女性への聴覚ニューロフィードバックトレーニングの基礎研究 19K11103 2019-04-01 – 2022-03-31 松尾 奈々 京都橘大学, 健康科学部, 専任講師 (50633351) 小区分58070:生涯発達看護学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:女性は身体的・精神的に多岐にわたる月経随伴症状を経験することが多く、症状をセルフケアできずに不快な情動体験が情動痛症状に変質して身体的・精神的症状に現れると考えられる。このような症状は、ストレス要因と連動して脳内神経回路の可塑的変化を引き起こすとされている。よって、月経随伴症状有訴者には脳機能状態を正常化へ向けたマネジメントが有用であると考える。
    本研究では月経随伴症状を有する若年女性に対して脳波周波数のフィードバックとして聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施し、月経随伴症状への効果検証を行い、身体的・精神的な月経随伴症状に対する新たな改善プログラム創出のための基礎研究とする。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  34. マルチスケール侵襲型BMIによる発声のニューロフィードバック 19K09452 2019-04-01 – 2022-03-31 國井 尚人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80713940) 小区分56010:脳神経外科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:発声障害をターゲットとしたブレインマシンインターフェース(BMI)の研究は端緒についたばかりである。我々は、先行研究において、ひとつひとつの神経細胞の活動と沢山の神経活動の総和としての脳波を同時に計測できる電極を開発して特許を取得した。これにより、発声した母音を脳信号から予測することが可能となった。本研究では、予測した内容を被検者に提示する訓練を行うことで、予測精度を向上する技術の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  35. ニューロフィードバック制御型の神経結合動態計測による認知過誤リスク推定の研究 19H04025 2019-04-01 – 2022-03-31 中井 敏晴 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教授 (30344170) 小区分59030:体育および身体教育学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:加齢により認知機能の予備能力(CR)が減少すると普段は明確な支障が無くても強い認知負荷が加わると急に認知過誤が発生して適切な対応ができず、予期せぬ事故や問題を引き起こしうる。本研究では高齢者に対する神経リハビリを最適化するために、神経回路の可塑的変化を非侵襲脳機能計測と行動データに基づいて定量化する手法を開発する。運動・認知機能の個人差が大きい高齢者のCRを推定する方法として神経フィードバック制御型の神経結合動態計測法を開発する。加速度計を使った日常動作記録や神経心理検査との相関を機械学習(AI分析)により明らかにし、指標の連続的拡張性を確保する。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  36. ニューロモジュレーションによる周辺視野機能の拡張 19H03992 2019-04-01 – 2022-03-31 中村 仁洋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 主任研究官 (40359633) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:ヒトの視覚機能には、視野中心部の対象を高速かつ正確に分析する「中心視」と、その外側のより広い範囲の視野情報の処理を担当する「周辺視」がある。周辺視は、日常生活の様々な局面に関わるほか、視覚障害や読み書き障害との関連も注目されており、周辺視機能の向上のために様々な訓練プログラムが考案されてきた。最近の神経科学研究から、周辺視には大脳皮質レベルにおける機能的制約のため、中心視のように精密な視覚分析は難しいことが示されている。本研究計画では、周辺視と脳機能との関係に着目し、経頭蓋脳刺激法とニューロフィードバックを組み合わせて、周辺視の機能増幅のための安全で新しい介入手法の開発を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  37. 重度手指麻痺患者の機能回復を促すマルチモーダル・ニューロリハビリテーションの創生 19H03985 2019-04-01 – 2023-03-31 小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10360207) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要:脳血管障害患者の手の運動意図に同期した「マルチモーダル感覚フィードバック」を付与するブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を構築し,重度の手指麻痺を回復へ導くニューロリハビリテーション技術の確立を目指す。残存する視覚・運動感覚・触圧覚刺激による手の運動経路の再構築を促す介入を行い,回復期患者に対する臨床効果を検討する。機能回復指標による評価に加え,運動関連脳活動の機能的結合性解析ならびに電気生理学的検査による脳-脊髄興奮性変化を評価し,中枢から末梢に至る手指機能回復の神経機構を明らかにする。通所・在宅訓練にも適用可能な、慢性期患者を対象とした低コスト・自立型システムの開発と検証も行う。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  38. 身体意識の拡張技術 19H01121 2019-04-01 – 2024-03-31 前田 太郎 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00260521) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要:人の身体図式は生得的な特徴を備えているとはいえ,不変のものでは無く,発達や受傷の過程などを経て変容することが知られている.身体の機能拡張技術においては知覚能力や効果器としての四肢の追加・増強の試みは多くあるが,これらの追加要素を新たな身体として認識し行動を決定する「身体意識」そのものを高いリアリティを伴って拡張する明確な方法論については未だ語られていない.本研究では身体拡張技術の観点からこの「身体意識」の変容を狙う.感覚伝送と身体応答計測,ニューロフィードバック技術を駆使して,身体拡張に伴う身体意識の拡張の可能性について解明し,身体意識の再構築を実現する誘導・制御技術について開発を行う. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  39. 興奮抑制バランス操作による脳の可塑性メカニズムの理解 19H01041 2019-04-01 – 2023-03-31 柴田 和久 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20505979) 中区分51:ブレインサイエンスおよびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要:ピアノ演奏や宝石鑑定といったスキルの学習には、訓練に応じて脳を変化させる可塑性と、無用な脳の変化を防ぐ安定性が不可欠である。本研究では、この可塑性と安定性を制御する仕組みとして、脳の興奮性・抑制性神経修飾物質の変化に焦点をあてる。第一に、研究代表者が開発した脳の状態を操作する技術を援用し、特定脳部位の興奮抑制バランスを操作するための技術を開発する。第二に、この技術を用い、興奮抑制バランスがスキル学習における可塑性・安定性を決めることを実証する。本研究の成果は、興奮抑制バランスの変調に起因する脳機能不全の治療法開発にも貢献し、科学・社会の両面で強い波及効果をもたらす。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  40. fMRIニューロフィードバック法による慢性疼痛の神経科学的修復機構の解明 18K07561 2020-03-01 – 2022-03-31 吉野 敦雄 広島大学, 病院(医), 講師 (90633727) 小区分52030:精神神経科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要:研究の説明・同意が得られた上で、健常者においてfMRIニューロフィードバック法を行い、制御可能性および安全性の確認を行う。また行動指標としての認知・注意課題の成績変化や、反芻に関する変化、脳内ネットワークの活動変化などのデータ解析を行ったうえでfMRIニューロフィードバック法を確立し、慢性疼痛患者に対する施行を目指す。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  41. 複数モダリティ脳イメージングに基づく集中時脳状態の解読技術とその応用 18KK0284 2018-10-09 – 2021-03-31 川鍋 一晃 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (30272389) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  42. 極度の忘我状態が引き起こす脳状態の変容-対人相互作用時のフローとチョーキング 18KK0280 2018-10-09 – 2024-03-31 中内 茂樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00252320) 中区分61:人間情報学およびその関連分野 研究開始時の概要:国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. ニューロフィードバックを用いた言語的直観の神経基盤と可塑性の研究 18K18512 2018-06-29 – 2020-03-31 時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849) 中区分2:文学、言語学およびその関連分野 研究開始時の概要:挑戦的研究(萌芽) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ある文に対する適格性判断は、それぞれの話者について不変だと考えられている。しかし、Carroll, et al. (1981, Language)は、英語文に対する適格性判断を母語話者に求める際に、鏡を眼前に置いて自身の姿を見せると、適格性判断が体系的に変化することを示した。本研究では彼らの知見を日本語文において検証すると共に、文呈示に伴う脳波計測によって文の適格性判断の神経基盤を考察した。実験の結果、鏡を眼前に置いた場合、文が非適格として多く排除される傾向があり、また、脳波のシータ帯域ならびにベータ帯域の信号強度が増大した。また適格性判断と話者の対人傾向とは有意な相関を示した。
  44. ブレイン・マシン・インタフェースを使ったベットサイド脳卒中リハビリシステムの開発 18K17707 2018-04-01 – 2021-03-31 橋本 泰成 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80610253) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 脳波を用いたニューロフィードバックによりエラー行動を予防する手法の開発 18K15338 2018-04-01 – 2021-03-31 大良 宏樹 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (80612069) 小区分51010:基盤脳科学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. ASDの安静時脳機能結合評価と介入法の検討:より良い治療効果を得るために 18K13352 2018-04-01 – 2021-03-31 土屋垣内 晶 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任助教 (30778452) 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 脳波と人工知能を用いた条件づけによるマインドワンダリングへのメタ的気づき能力上昇 18K13332 2018-04-01 – 2021-03-31 川島 一朔 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (90773292) 小区分10030:臨床心理学関連 研究開始時の概要:若手研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  48. テーラーメイドニューロリハビリテーション実現に向けた多感覚刺激治療装置の開発 18K10798 2018-04-01 – 2021-03-31 兒玉 隆之 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (80708371) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. 非侵襲脳活動計測を用いた一次運動野刺激の疼痛認知抑制機構の解明 18K08993 2018-04-01 – 2021-03-31 細見 晃一 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (70533800) 小区分56010:脳神経外科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. ニューロフィードバックによる社交不安傾向が高い中学生のポジティブ思考教育法の開発 18J12527 2018-04-25 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. 脳活動の偏側性を利用したアスリートのあがり防止法の確立 18H06421 2018-08-24 – 2020-03-31 平尾 貴大 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (70824572) 0909:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野 研究開始時の概要:研究活動スタート支援 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 時の流れの神経基盤 18H05522 2018-06-29 – 2023-03-31 北澤 茂 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00251231) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 個体間脳波オシレーションのニューロフィードバックコントロール 18H04954 2018-04-01 – 2020-03-31 大須 理英子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (60374112) 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. 脊髄損傷後の機能回復を促進する脳活動の解明と制御 18H04085 2018-04-01 – 2023-03-31 貴島 晴彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10332743) 中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 薬理遺伝学的手法を用いた前頭前野ー頭頂葉経路と前頭前野ー線条体経路の機能分離 18H03662 2018-04-01 – 2021-03-31 坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782) 中区分10:心理学およびその関連分野 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 重度の上肢麻痺に対するニューロフィードバックを併用した複合的CI療法の開発 18H03136 2018-04-01 – 2023-03-31 道免 和久 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 記憶・想起の脳機能ネットワークの解明と認知症早期治療システムの構築 18H01411 2018-04-01 – 2022-03-31 呉 景龍 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 教授 (30294648) 小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  58. 予測誤差と運動主体感をつなぐ神経機構の解明 18H01098 2018-04-01 – 2021-03-31 今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123) 小区分10040:実験心理学関連 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  59. オラリティを核とする共在や共感の質の定量評価と介入応用 17KT0056 2017-07-18 – 2021-03-31 川島 隆太 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90250828) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  60. 脳血管疾患患者へのニューロフィードバックを用いた摂食嚥下リハビリテーションの確立 17K17386 2017-04-01 – 2020-03-31 元開 早絵 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60792877) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:要介護高齢者が増加する日本では、介護負担を軽減するため有効な機能回復手法の開発が重要である。申請者は運動課題時の脳血流量の増加に注目し、他者の運動映像を視聴することによっても十分な脳機能活性が得られるのではないかと考えた。測定時、他者の運動映像を視聴することにより脳血流増加は認められたが、課題を施行した時ほどの効果は見られなかった。そのため、他者の運動映像を視聴しながら運動課題を施行する場合の検討を行った。結果、運動課題を施行するのみの場合より脳機能が活性化されることが考えられた。
  61. ニューロフィードバックトレーニングを応用した新しい口腔機能訓練法の開発とその評価 17K17374 2017-04-01 – 2019-03-31 後藤 崇晴 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (00581381) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、ニューロフィードバックトレーニングを用いた口腔機能訓練法の開発として、咬合力と前頭前野の活動に着目し、健常歯列を有する若年者と高齢者、およびインプラントを用いた固定性補綴装置を装着している高齢者を対象にその関連を検討した。本研究により、高齢者同士で比較した場合、インプラントは、天然歯と同等の咬合力調節が可能であり、感覚統合における前頭前野の脳血流量の増加は、天然歯に劣ることはなく、若干増加傾向にあると考えるが、発現する咬合力はやや高くなる傾向で、高齢による調整能力低下には注意を要することが示唆された。
  62. 徳倫理学における「道徳的な性格」という考え方の意義と可能性についての研究 17K13318 2017-04-01 – 2020-03-31 立花 幸司 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (30707336) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:道徳を探究する現代の学問分野群にとって、アリストテレスを始祖とする徳倫理学のもつ可能性が注目されて久しい。本研究課題では、アリストテレス的徳倫理学のもつ優れたアイデアの一つである「倫理的な反応が求められている状況において、道徳原則に頼ることなく適切な反応を可能とする〈道徳的な性格〉」に焦点をあて、(1)現代の倫理学研究における「道徳的な性格」という考え方のもつ哲学的な意義を検討し、そして(2)この考え方が狭義の哲学倫理学のみならず、道徳性を研究する今日の経験科学に対してもつ可能性を明らかにした。
  63. 脳卒中患者のニューロフィードバックを用いた運動リハビリテーションの効果 17K13096 2017-04-01 – 2019-03-31 手塚 正幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (40721311) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いた神経活動を修飾する系を構築した。健常者と脳卒中患者を対象とし、視覚条件と振動条件の探索課題を行った結果、振動条件にのみ個人差を認めた。fNIRSを用いて課題中の前頭前野活動も測定しており、その個人差が反映する脳基盤が背外側前頭前野であることを示した。この背外側前頭前野の機能に介入する新たな手法としてfNIRSを使ったニューロフィードバック系を構築し、片側麻痺を持つ急性期脳卒中患者に実施した結果、脳機能が高い個人ほど背外側前頭前野活動が上昇する傾向が得られている(n=20、群間差 p=0.072)。
  64. 違和感の少ない舌動作推定手法を利用した嚥下リハビリテーションシステムの構築 17K13089 2017-04-01 – 2021-03-31 中谷 真太朗 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (10781700) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  65. 脳卒中患者の麻痺側上肢の運動機能回復を促進させるニューロフィードバック法の開発 17K13078 2017-04-01 – 2020-03-31 中野 英樹 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (60605559) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的は,聴覚ニューロフィードバックトレーニングを用いた運動イメージトレーニングが脳卒中患者の麻痺側上肢機能と運動イメージ能力に及ぼす効果を検証することである.対象者は通常のリハビリテーションに加え,運動イメージを用いた聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施した.その結果,麻痺側上肢機能と運動イメージ能力のスコアはトレーニング後に改善を示した.本研究により,運動イメージを用いた聴覚ニューロフィードバックトレーニングは,脳卒中患者の麻痺側上肢機能と運動イメージ能力の改善に貢献することが示唆された.
  66. 舌痛症に対する抗うつ薬と認知行動療法による治療効果の脳機能画像的評価 17K11908 2017-04-01 – 2021-03-31 土井 充 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (30412620) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  67. ニューロフィードバックを用いた革新的前庭リハビリテーションシステムの開発 17K11321 2017-04-01 – 2020-03-31 高倉 大匡 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (50345576) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、めまい時の大脳活動の変化を解明し、脳神経科学を応用した前庭リハビリテーションシステムを開発すること目標とした。主な成果は以下の通りである。
    1) 前庭覚・視覚・体性感覚の不一致によって、縁上回、頭頂側頭接合部などの自己運動認知に関連した大脳皮質が活動することを解明した。2)一側前庭障害後の慢性めまい患者の大脳活動の違いから、患者毎に正常感覚入力(視覚・体性感覚)への依存度が異なる可能性を明らかとした。3)主観的めまい感覚の強さが背側縁上回の活動性と負の相関をもつ事を解明した。4)大脳血流リアルタイムフィードバック装置を導入し、同装置により背側縁上回付近の血流が増加する事を確認した。
  68. 霊長類視床痛モデルにおける中枢性疼痛メカニズムの解明 17K10893 2017-04-01 – 2020-03-31 齋藤 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (20252661) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:肥後博士の協力で、マカクサルの片側視床(VPL核)に微小な破壊を行いアロジニアを示す個体を作成した。その2頭のマカクサルの行動データ(温度刺激、触覚刺激)を検討。片側VPL核破壊後、数週間後からアロジニアが反対側に現れ数か月かけて減少していく傾向が見られた。VPL核破壊後の経時的な構造画像では1ヶ月ほどで破壊巣は小さくなった。拡散テンソル画像ではVPL核と一次感覚野を結ぶ神経束の密度が減少した。
    経時的なrs-fMRIデータを解析したところ、アロジニアが発生後は、破壊と同側の視床(MD/Pf核)と扁桃体間の機能結合が上昇していた。rTMSを施行すると、MD/Pf核と扁桃体間の機能結合が低下した。
  69. ニューロフィードバックの倫理―医工連携の研究倫理と社会的受容性 17K08905 2017-04-01 – 2020-03-31 中澤 栄輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90554428) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、近年、脚光を浴びつつあるニューロフィードバックに焦点を絞り、その倫理的問題について検討し、社会的受容性を評価することを目的とした。ニューロフィードバック技術は近年、急速に進歩している一方で、倫理的視点による分析はいまだ萌芽的段階にとどまっているものの、その倫理的要点は社会受容性、インフォームド・コンセント、リスク・ベネフィット評価である。とりわけ、ニューロフィードバック技術の不可逆性に関するリスク評価と社会的受容性は本技術の倫理的な要点になることが分かった。
  70. 長期間にわたって繰り返し利用可能なブレイン・マシン・インタフェースの開発 17K01992 2017-04-01 – 2020-03-31 森重 健一 富山県立大学, 工学部, 講師 (30433197) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:異なる日に同じ人の脳波を記録する際、毎日まったく同じ位置にヘッドキャップを被ることはできないため、脳波電極の位置ずれを避けることは困難である。そのため、これまでのBMIでは、脳波電極を頭に取り付けるたびに、脳活動とノイズを分離し直したり、解読器を用意し直したりすることで、脳波データから脳情報を解読していた。これらの計算には長い時間を要するため、日常生活の中でインタフェースとして毎日使い続けるには大きな障害であった。本研究課題では、電極の位置ずれがある脳波データであっても、アーチファクトを分離して、短時間で精度よく脳電流を推定でき、その時系列データを長期間にわたって繰り返し再構成できた。
  71. 脳活動の変調に伴う運動記憶の獲得 17K01618 2017-04-01 – 2020-03-31 門田 宏 高知工科大学, 情報学群, 准教授 (00415366) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:我々が日常生活を営むうえで運動は欠かせないものであり、その多くは学習によって獲得されたものである。本研究では、実験参加者の脳の活動状態と運動学習との関係を明らかにしていくことを目的とした。実験参加者は視覚的に提示される脳活動情報に基づいて、自己の脳活動状態を変化するようトレーニングを行った。また、トレーニング後に2種類の相対する環境を学習する課題を行った。その結果、トレーニングによって自己の脳活動を変調させることができるようになること、しかし異なる運動記憶を獲得するには今回の脳活動の変調では不十分であることが示唆された。
  72. 機能回復を促進する意識と工学的デバイスとの相互作用解明 17K01503 2017-04-01 – 2020-03-31 浦川 将 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (30445811) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:リハビリテーション領域で活用される工学的手法を用いる際の、利用者の脳活動と意識に着目して研究を行った。自らの脳活動をフィードバックしながら運動想像を行う研究では、前頭極の脳活動をフィードバックしながら制御することで、効果的なパフォーマンス向上が得られることが明らかとなった。ロボットHALを装着して、意識的に運動を制御する場合には、前頭葉-頭頂葉の運動関連領域の活動上昇が得られ、パフォーマンス制御に関わっていることが示唆された。
  73. ニューロフィードバックが高齢者の認知機能に及ぼす効果の解明 17K01474 2017-04-01 – 2021-03-31 山口 哲生 東邦大学, 医学部, 講師 (70464592) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  74. 歩行律動同期型脳・末梢神経筋ハイブリッド刺激による神経可塑性誘導と歩行機能回復 17K01453 2017-04-01 – 2020-03-31 小金丸 聡子 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40579059) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:これまで手術を必要としない非侵襲的な脳刺激法が広く、脳神経損傷患者において使用されており、多くの機能回復の報告が出ています。しかしながら、脳刺激法により歩行機能を再建するには、まだまだ報告が少なく、効果的な刺激法がわかっていません。そこでこの研究では、電流強度が一定のリズムで変化する脳刺激を用いて、これがヒトの歩行を変化させることができるか、まず健康な成人で検討しました。その結果、歩行リズムが脳刺激のリズムに同期していくことが分かりました。そこで、歩行に同期した脳刺激を行い、歩行障害のある脳卒中患者で検討しました。その結果、脳卒中患者にて歩行機能を回復させることが分かりました。
  75. チックの抑制のための神経認知行動療法:バイオフィードバックの新たな応用可能性 17J40054 2017-04-26 – 2021-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  76. 行動設計時の海馬発火シークエンスの意義の解明 17J10777 2017-04-26 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  77. うつ病の再発防止のためのマインドフルネスのニューロフィードバック介入法の開発 17J10680 2017-04-26 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  78. 脳卒中片麻痺の皮質ー視床ループの異常興奮を抑制するニューロフィードバック法の開発 17J04792 2017-04-26 – 2019-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  79. ミラーシステムの活動向上は他者感情知覚時の反応を変化させるか? 17J02763 2017-04-26 – 2019-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  80. 適応的記憶忘却メカニズムの解明―行動およびfMRIデータモデリングの活用― 17J01808 2017-04-26 – 2020-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  81. 双方向ニューロフィードバックによる神経刺激型再運動学習パラダイムの開発 17H06504 2017-08-25 – 2019-03-31 林部 充宏 東北大学, 工学研究科, 教授 (40338934) 研究開始時の概要:研究活動スタート支援 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  82. 皮質脳波ビッグデータによる革新的人工知能の開発 17H06032 2017-04-01 – 2019-03-31 柳澤 琢史 大阪大学, 高等共創研究院, 教授 (90533802) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  83. ヒト前頭・頭頂葉内の脳内身体表現:皮質脳波解読と刺激・病変研究による包括的研究 17H05907 2017-04-01 – 2019-03-31 松本 理器 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00378754) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  84. 柔軟な学習の調整を可能にする脳メカニズムの解明 17H04789 2017-04-01 – 2020-03-31 柴田 和久 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 主幹研究員(任常) (20505979) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:学習内容を長期的に保持すること、必要に応じてこれを強化することは、学習全般に普遍的に求められる重要な機能である。一見相反するこれらの機能が脳でどう実現されるかを調べるために、本研究では、視覚における見分けの課題訓練と核磁気共鳴分光法を組み合わせた実験的検証を行い、以下の成果を得た。第一に、視覚課題訓練後の学習内容の固定化、脱固定化、再固定化に伴い、脳の低次視覚野における興奮・抑制バランス(グルタミン酸・GABA比)が変化することを突き止めた。第二に、脳の興奮・抑制バランスを操作するためのニューロフィードバック技術の開発に着手した。この開発は、発展的な形で次の基盤研究Aに引き継がれる。
  85. 運動学習に対する安静時脳活動の影響とニューロフィードバックによる促進 17H04683 2017-04-01 – 2020-03-31 小川 健二 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (50586021) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、安静時脳活動が運動学習に果たす役割を機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)で検討した。運動学習課題としてMRI内で視覚追随運動を用いた。まず、感覚運動野の脳活動パターンから運動学習試行とコントロール試行との識別を行い、次にその識別器を学習前後の安静時脳活動パターンに対して適用した。その結果、学習後の安静時において運動学習時と同じ脳活動パターンが再現されることが明らかとなった。次に安静時脳活動を計測し、ニューロフィードバックとして学習時の脳活動との類似度を、被験者に視覚的にリアルタイムに提示した。その結果、ニューロフィードバックにより運動時と類似した活動に誘導可能である点が示された。
  86. 注意の逆説的投資効果とニューロフィードバック 17H02648 2017-04-01 – 2020-03-31 河原 純一郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30322241) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究はトップダウンの認知制御が3つの注意の下位成分を変調しうるかを調べた。注意ネットワーク課題を用いて,認知エフォートをすべて投入する場合と,自分がもつ半分の認知エフォートのみを投入する場合を設けた。行動成績は当初の通り,予定した効果を概ね再現することができたため,この手法は妥当であるといえる。一方で,前年までに実施した脳機能計測実験の結果を再分析したが,予測した部位での神経活動と,認知資源の意図的配置との関連は得られなかった。しかし,意図的な注意制御に関して,視覚探索中の抑制テンプレートを調べたプロジェクトが派生し,その生起要因を特定することに成功した。
  87. 身体的表象から自他分離表象にいたる発達プロセスの解明 17H01016 2017-04-01 – 2021-03-31 明和 政子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (00372839) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  88. 難治性疼痛患者の脳波周波数解明と聴覚ニューロフィードバックトレーニングの基礎研究 16K21475 2016-04-01 – 2018-03-31 松尾 奈々 京都橘大学, 健康科学部, 専任講師 (50633351) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、難治性疼痛患者の脳波周波数パターンの解明および聴覚刺激をフィードバック情報とするニューロフィードバックトレーニングを実施し、難治性疼痛症状の効果を検証した。その結果、聴覚ニューロフィードバックトレーニングを実施することで身体知覚異常の改善および痛みの破局的思考に改善がみられ、トレーニング終了後3週においてもその効果を認めることができた。このことから、聴覚刺激を用いたニューロフィードバックトレーニングの実施は、脳波周波数をコントロールすることができ、痛みの破局的思考および身体知覚異常などの難治性疼痛症状の改善に有効である可能性が示唆された。
  89. 脳の使い方を学ぶ精神活動・運動トレーニング法の提案 16K16649 2016-04-01 – 2020-03-31 廣瀬 智士 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (70590058) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:課題中の脳活動が空間解像度高く計測できる機能的磁気共鳴装置(以下fMRI)で撮像した脳機能画像から機械学習を用いて課題の成績と関連する脳活動のパターンを取り出し、成績が高い人の活動パターンを真似ることで、脳の使い方を模倣し、学習を促進することを目指した。しかし、本研究期間内では、学習に使用するのに十分な精度で課題の成績と関連する脳活動のパターンを同定することができず、学習促進を達成するには至らなかった。目的を達成するにはよりfMRI信号内のノイズに頑強な機械学習法、画像処理法の開発を進めるとともに、より多人数を対象とした実験が必要であると考える。
  90. 脳卒中後の認知機能障害に対するニューロフィードバック介入の試み 16K16451 2016-04-01 – 2019-03-31 大杉 紘徳 城西国際大学, 福祉総合学部, 助教 (00708159) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  91. 小型ヒューマノイドを使った自己動作モニタリングによる運動訓練支援システムの開発 16K13063 2016-04-01 – 2019-03-31 中井 敏晴 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 神経情報画像開発研究室, 室長 (30344170) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究ではリアルタイムfMRIにより抽出された脳活動を小型ヒューマノイド(SHR)の動作に反映させ、其の映像をニューロフィードバック(NF)情報として利用する運動学習法を開発した。訓練学習の進行に伴う逐次的な二重判別分析法を考案し、身体座標系を直感的に反映するMI学習方法としてBrain Machine Interfaceに応用する見通しを得た。加齢による脳活動領域の非特異的拡大は必ずしも判別分析に不利ではなく、高齢者でも本法による運動学習が有効である事を見出した。実際のロボットの動作による印象評価実験では、高齢者でも自己動作表象を使った視覚的NFはモチベーションを促進する事が判明した。
  92. 階層化ニューロフィードバックによる認知制御機能の改善 16K12443 2016-04-01 – 2018-03-31 齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、理論指向と応用指向のニューロフィードバック研究を架橋し、複雑な注意機能を改善するために、認知制御課題を題材として、課題間転移が可能なニューロフィードバック技術の確立を目指した。頑健な干渉効果が知られている多資源干渉課題に着目し、行動フィードバックによる干渉効果の減少を試み、有効に干渉を減少させることができる方法を発見した。並行して、多資源干渉課題遂行時の脳活動を計測し、干渉効果の個人差と相関する脳活動、特に干渉の小さな協力者で賦活する領域、大きな協力者で賦活する領域を同定した。これらの知見を基に、今後、ニューロフィードバック信号の設計を行い、その有効性を検証する。
  93. 脳内身体マップに基づく手指運動能力の個人差の解明および介入法の開発 16K12440 2016-04-01 – 2018-03-31 小川 健二 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50586021) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は手指運動能力に関する神経基盤の検討を行った。健常成人を対象にし、示指、中指、環指、小指を使ったタッピングを実行してもらい、脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測した。空間的なボクセル活動パターンを解析した結果、一次運動野の活動を使ってそれぞれの指パターンを識別できた。さらに参加者のピアノ練習経験の有無に応じ、タッピング運動中の指の神経表現が異なっていることが示された。またニューロフィードバックを使って一次運動野の活動レベルを視覚提示するシステムを開発し、運動イメージ化を用いて一次運動野の活動を上げることにより、手指運動のパフォーマンスが促進される可能性を示した。
  94. 再発予防を目的としたneurofeedbackと情動調整によるうつ病治療法の開発 16K10215 2016-04-01 – 2021-03-31 松原 敏郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60526896) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  95. セロトニン神経系が司る辛抱強さの神経機構の解明 16K07008 2016-04-01 – 2019-03-31 宮崎 勝彦 沖縄科学技術大学院大学, 神経計算ユニット, 研究員 (10426570) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:申請者はこれまでの研究から、背側縫線核のセロトニン神経活動と将来報酬を辛抱強く待つことの因果関係を明らかにしてきた。本研究では、将来の報酬のための辛抱強い振る舞いで「待つ」場合だけでなく「行動する」場合も背側縫線核セロトニンは関与してるかを光遺伝学行動実験により調べた。その結果、辛抱強く待つ場合と行動する場合で、背側縫線核セロトニン神経は異なった関与をしていることが明らかになった。
  96. バイオフィードバックによる心拍変動の増大が圧受容体反射に及ぼす影響 16K04395 2016-04-01 – 2019-03-31 榊原 雅人 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (10221996) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:バイオフィードバックを通じて心拍変動を増大させると、自律神経障害やストレスに関わるさまざまな症状(特に抑うつや不安)が緩和することが報告されている。この臨床的効果の背景には圧受容体反射機能の活性化が仮定されているが実際的な検討は少ない。本研究は心拍変動の増大によって圧受容体反射の感度が増加するかどうか、さらに認知機能に関わる皮質活動の指標として脳波の随伴性陰性変動が変化するかどうかを検討した。実験によって得られた結果から、バイオフィードバックによって引き起こされた心拍変動の増大は自律神経系ホメオスタシス機能を向上させるとともに、認知/注意過程に関わる皮質活動に影響を与えていることが示唆された。
  97. 重度手指麻痺患者の手の機能回復を目指す「脳波+ロボット」リハビリテーションの創生 16K01520 2016-04-01 – 2019-03-31 小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10360207) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳血管障害患者の手の運動意図に同期した感覚フィードバックを付与するロボットシステムの構築を通じて,重度の手指麻痺を回復へ導く自立的なリハビリテーションシステムを作成した。これまで運動機能リハの対象から外れてきた最重度の麻痺症例に対しても咀嚼刺激や視覚,運動感覚刺激による運動経路への介入を行い,週・日単位の運動機能変化を感度良く追跡する手指機能評価装置を開発・適用して機能回復の可能性を探索した。従来廃用手とせざるをえなかった随意運動がみられない患者においても随意運動が回復した症例を経験し,患側運動野における事象関連脱同期(ERD)信号強度の回復が,手指機能回復に寄与していることを明らかにした。
  98. 運動習慣がパーキンソン病に与える影響:マルチモーダルイメージングを用いた解析 16K01453 2016-04-01 – 2020-03-31 三原 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80513150) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:我々は、パーキンソン病における日常生活活動が、ドーパミン変性と密接に関連していることを明らかにし、また、併せてパーキンソン病の運動機能特に立位バランス機能については大脳皮質活動の機能低下も関連していることを明らかにした。大脳皮質活動と歩行バランス機能との関連においては、前頭前野における認知処理リソースが重要な役割を果たしていることを健常者での検討によって明らかにし、パーキンソン病においても大脳皮質の賦活が立位歩行能力の向上につながる可能性を示唆する知見を得た。
  99. 発話・上肢・下肢の運動制御の個人差に着目した吃音の神経メカニズムの探求 16K00366 2016-04-01 – 2020-03-31 豊村 暁 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (90421990) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:疑似対面発話時の脳活動を計測したところ,吃音の頻度と扁桃体の活動が有意に相関していた。下肢運動時の脳活動を計測するために,非磁性の円筒型トレッドミルを作成し,評価した。8週間のマインドフルネス瞑想法の練習が聴覚フィードバックを介した発話の知覚・生成過程に影響を及ぼした。3歳児の吃音の割合は1.41%,回復率は82.8%であり,1歳半における言語発達の程度によって回復率が有意に異なっていた。口唇運動の模倣時の運動野の働きには左右差があり,親密度によって異なっていた。
  100. スポーツスキル向上を目指した神経科学的研究 16J01324 2016-04-22 – 2019-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  101. 前頭前野における情報の抽象化と演繹的情報創生の神経メカニズムの研究 16H06571 2016-06-30 – 2021-03-31 坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  102. 「コグニティブライフシステム」の創出を目指して 16H03250 2016-04-01 – 2020-03-31 野田 隆政 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医長 (50446572) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:衝動性の神経基盤に関する検討を行い、事象関連電位において課題提示から300ms以降に生じる脳活動(P300)が衝動性のコントロールに関連している可能性を確認した。安静時の脳活動を利用していた従来のニューロフィードバック(Neurofeedback: NF)手法を改良し、課題中にフィードバックするタスク型NFを開発した。効果検証試験においてもタスク型NFは脳活動の良好な変化を認めた。また、タスク型NFトレーニングは従来法よりも短い期間で効果が発揮されることも分かった。また、NFと併用することで増強効果が期待できる知覚感度に関する自律神経系フィードバックを考案した。
  103. 動物モデルを用いた中枢性脳卒中後疼痛の病態および神経刺激療法の除痛機序の解明 15K21142 2015-04-01 – 2018-03-31 細見 晃一 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (70533800) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:霊長類中枢性脳卒中後疼痛(CPSP)モデルを作成し、行動評価および高磁場MRIを用いた脳機能評価を行った。疼痛発症後には、痛み関連領域内における領域間の機能的結合が増加していた。その疼痛モデルザルに一次運動野に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を実施したところ、感覚過敏が改善すると共に、痛み関連領域内における領域間の機能的結合が減弱していた。CPSPの発症機序やrTMSの除痛機序に痛み関連領域内の領域間機能的結合が関与していることが示唆された。
  104. 情動制御を実現する脳内ネットワークの解明 15K17318 2015-04-01 – 2019-03-31 村上 裕樹 大分大学, 福祉健康科学部, 准教授 (40600325) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:マインドフルネス傾向の高い参加者に対して,実験的なストレス場面として,不快な画像を呈示した際の脳活動を測定した。その結果,右前部島皮質においてより高い活動が見られた。前部島皮質は情動の自覚に関する脳領域とされていることから,マインドフルネス傾向の高い人では,身体の情動反応における気づきが高いことを表している。また,前部島皮質と右扁桃体の機能的結合が,マインドフルネス傾向の高い人で低下していることが確認された。
  105. 脳可塑性への働きかけに基づく言語障害リハビリテーション 15K16386 2015-04-01 – 2018-03-31 岩渕 俊樹 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (20711518) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ニューロフィードバックに代表されるような脳の可塑性を利用する手法を用いて、言語の神経メカニズムの解明および言語リハビリテーション法への応用可能性の探索を目的として研究を行った。機能的MRIによる2つの研究(研究1、研究2)を行い、文処理の神経メカニズムを検討した。研究1により、文処理の負荷が統語処理とワーキングメモリに分離され、前者に左下前頭回弁蓋部が、後者に左前頭弁蓋(op9)が関与することが示された。研究2は、背側言語経路が統語処理に、腹側言語経路が意味的統合に関わることを示した。これらの研究に基づきfMRIニューロフィードバックによる統語障害リハビリテーションの確立を目指す。
  106. 感性的好意度評価の変動と脳内可塑的変化との因果性の解明 15K16080 2015-04-01 – 2019-03-31 緒方 洋輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (60641355) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では脳領域の活動をフィードバックし脳活動を変化させる際にタイミングを個人ごとに変化させることで効果の確度が増す傾向は見られ、同時にEEGを用いた計測により機械学習アルゴリズムを用いて好意度を200msから400msの事象関連電位成分から読み取ることに成功した。
    以上の結果から、好意度変化に関与する可能性のある脳活動情報は刺激呈示より比較的短時間の成分であり、精度の高いニューロフィードバックを行うためには、時間解像度に優れるEEGなどに由来する時間成分情報抽出やミリ秒単位でのfMRI高速撮像法による活動量の抽出が必要になることが示唆された。
  107. 米国での調査を踏まえて長期間ニューロフィードバック訓練の効果検討 15K13136 2015-04-01 – 2019-03-31 山口 浩 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (20174625) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は抑うつ傾向に対して効果の考えられる脳波neurofeedback(NF)法で特に前頭部脳波非対称性(左前頭部賦活>右前頭部賦活を訓練)のNF訓練を長期間(20日間)実施し効果を検討した。
    実験は、統制群(8名;BDI-2平均23.1,SD=6.6)とNF実験群(8名;同23.5,SD=5.1)を設け、実験群に毎回25分間のNF訓練を実施。訓練未終了の被験者がいるため途中結果報告だが、抑うつ傾向に関し実験群でのみ得点が有意に低下。学習法について集中学習法の有利を予測したがそうとも言えなかった。更に訓練効果を上げるためには今回収集した内省報告をもとに修得方法や訓練時間配分の検討が必要である。
  108. fMRIニューロフィードバックを用いた吃音の発話流暢性改善手法の開発 15K12594 2015-04-01 – 2018-03-31 錦戸 信和 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (60610409) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:発話の流暢性が損なわれる発話障害である吃音のある成人に対して,fMRIニューロフィードバックを用いた流暢性改善手法を検討する前に,発話の流暢性に関する神経基盤を調べるために,発話時および発話のイメージ時の脳活動と生体信号を同時に計測した.
    また,吃音のある成人と無い成人の脳形態の比較および,心理的特性や吃症状との関係を調べた.その結果、吃音のある成人は無い成人に比べ,左の楔部および,紡錘状回の体積が有意に小さいことが示された.また,楔部に関しては心理的特性と負の相関があることも示された.これらの結果は,心理的特性が脳形態に影響する可能性を示唆する.
  109. 脳血流BFトレーニングシステムの開発と評価 15K12040 2015-04-01 – 2017-03-31 川島 隆太 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90250828) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:機能的MRIを用いた個人脳活動解析によって、食欲の制御に関わる脳領域を同定し、それらの領域内に超小型NIRS装置を用いたバイオフィードバック訓練のターゲット領域が含まれることを確認した。しかし、実生活環境でシステムを稼働させると、ベースラインシフトへの対応、脳活動をフィードバック信号に変換する係数の設定が非常に困難であることが判明し、プログラムの修正を行ったが、目的とする実証実験を行うことができなかった。
  110. 運動想起型相互適応BCIにおけるフィードバック訓練のための信号取得法 15K01852 2015-04-01 – 2018-03-31 加納 慎一郎 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00282103) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ユーザが身体動作を想起した際の脳波を検出する運動想起型BCIの正答率向上のため,脳活動信号をユーザにリアルタイムで提示しながら課題の遂行を求めるニューロフィードバック(NF)訓練を行う際,被験者に提示するフィードバック情報を統計的手法により取得する方法を検討した.本研究の結果,多チャネル脳波に適用する空間フィルタによってNF訓練の効果が向上することがわかった,また,脳波から脳内信号源の電気活動を推定してNFに供することでNFの効果が向上する可能性が示された.
  111. 運動錯覚と運動イメージを同期させたニューロリハビリテーションデバイスの開発 15K01439 2015-04-01 – 2018-03-31 兒玉 隆之 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (80708371) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的は、運動錯覚生成メカニズムに及ぼす運動イメージ能力の影響を解明し、ニューロリハビリテーション介入時に運動イメージ能力を高めながら、感覚運動機能を改善させる効果的な脳内神経機能再編成システムを構築することであった。振動刺激時の脳内神経活動についてMicrostate法解析を行った結果、錯覚誘起には運動イメージ能力が影響を及ぼすことが明らかとなった。また、脳卒中片麻痺患者に対して、我々が開発した脳波周波数パターン認識型システムを用いた介入を実施した結果、感覚運動関連脳領域の神経活動性に向上を認め運動主体感も改善を認めた。以上より、本システムの介入手法としての有用性が示唆された。
  112. リアルタイムfMRIによるニューロフィードバックを用いた慢性不眠症治療法の開発 15J12161 2015-04-24 – 2018-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  113. NIRSと機械学習を用いたアレキシサイミアに対するニューロフィードバックの開発 15J07284 2015-04-24 – 2017-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  114. 精神疾患の次世代治療法に繋がるfMRIニューロフィードバックトレーニングの開発 15J06788 2015-04-24 – 2017-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  115. 発振操作による動的ネットワークの再組織化 15H05880 2015-06-29 – 2020-03-31 美馬 達哉 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (20324618) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、精神神経疾患の発症とそこからの機能的回復には、発振現象を基盤とした動的ネットワークの変化(再組織化)が関わっているという「ネットワーク病態」仮説を元にして新しい着想での研究を展開した。実験研究班として、Aグループ、Cグループ、公募班と共同研究を行い、健常人および神経精神疾患患者での新規の発振現象を探索し、脳卒中やパーキンソン病など運動障害のバイオマーカを開発するとともに、発振制御によるヒト脳可塑性誘導手法を開発することを達成し、リハビリテーション効果を実証した。
  116. ネットワーク自己再組織化の数理的基盤の創成 15H05878 2015-06-29 – 2020-03-31 津田 一郎 中部大学, 創発学術院, 教授 (10207384) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳の病態を非線形振動子ネットワークの異常ととらえ、特にてんかん患者の脳波の異常発振とレビー小体型認知症の複合型視覚性幻覚に対するバイオマーカーを提案することを目標にした。拘束条件付き自己組織化理論を構築し、ミクロとマクロのニューロフィードバックを実現する計測システムをネコなどの動物で構築した。これらの理論的基盤、実験的基盤に基づき、てんかん患者の脳波データを複雑系解析し、少数自由度力学系の出現、パワースペクトル揺らぎの減少をバイオマーカーとして提案した。また、視覚性幻覚に関する数理モデルを構築しネットワークの自己再組織化過程においてネットワーク病としてのシナプス学習異常を発見した。
  117. 心的イメージの神経基盤の解明 15H05710 2015-05-29 – 2020-03-31 神谷 之康 京都大学, 情報学研究科, 教授 (50418513) 研究開始時の概要:基盤研究(S) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:イメージはわれわれの心の状態を構成するもっとも重要な要素の一つである。本課題では、脳情報デコーディングを活用して知覚、想起、および、夢に共通する神経情報処理とその相違を明らかにすることを目標とした。イメージの種類による脳情報表現の類似性・相違を、画像特徴の階層性と脳部位の両面から解析する方法を確立し、世界で初めて想起イメージを脳から画像として可視化することに成功するなど、分野を超えたインパクトをもたらす成果が得られた。
  118. 過剰訓練が引き起こす脳神経疾患の神経リハビリテーション法の開発 15H05358 2015-04-01 – 2018-03-31 古屋 晋一 上智大学, 音楽医科学研究センター, 特任准教授 (20509690) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を両側の大脳皮質運動野に印可しながら両手指鏡像動作を行う介入(ニューロリハビリテーション)を実施し,その前後に神経生理学評価(経頭蓋磁気刺激:TMS)と巧緻運動機能評価(データグローブ,MIDI)を行うことで,当該介入効果の神経生理学的機序を明らかにした.さらにTMSと動作分析により,大脳皮質運動野の興奮性異常と巧緻運動機能低下の間にある詳細な関連を,機械学習手法を用いて明らかにした.加えて,経日介入を行うことで,当該介入効果の漸増が認められた.
  119. 運動機能再建を目的としたreal-timefMRIニューロフィードバックの構築 15H05357 2015-04-01 – 2019-03-31 北 佳保里 千葉大学, フロンティア医工学センター, 助教 (60550548) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  120. 共鳴の輪の中で:音楽の場とその形成について 15H03175 2015-04-01 – 2018-03-31 古川 聖 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40323761) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:3人~5人の参加者の脳波計測データの実時間分析しそのデータを音や映像に変換し芸術表現を行った、さらにこのシステムを双方向化、つまり、参加者がその音や映像を再び体験し、その結果を脳波が変化し音や映像も変化するという、フィードバックループする状況をインスタレーションとして発表した。多数の人が簡単に装着できる脳波計を開発し、10人以上の人が同時に脳波計測できるシステムの準備をおこなっており、次のフェーズで実施公開する。
  121. 運動処方への初期応答による高齢者の分類法の確立 15H03104 2015-04-01 – 2019-03-31 中井 敏晴 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 神経情報画像開発研究室, 室長 (30344170) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:fMRIを用いて高齢者に対する介入開始4週間後に運動処方の効果予測を行ない、運動処方の長期的効果を反映する脳活動指標を探索した。何れも前部帯状回の安静時脳活動が有力な指標候補と考えられた。認知負荷への応答特性を高精度で抽出するためのNeurofeedback fMRIを開発し年齢群間比較を行なったところ、若年者では後部帯状回と視覚野群の活動が脱賦活化されるが高齢者ではこの傾向は見られず、認知処理の予備能力減少を反映すると考えられた。対人認知機能の評定実験では高齢者は第一印象と一致しない情報処理への動機付けが弱いと考えられた。
  122. 超多点BMI環境におけるニューロフィードバックによる神経系の可塑的変化の研究 15H03049 2015-04-01 – 2018-03-31 鈴木 隆文 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 室長 (50302659) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:BMI接続による神経系の変化が注目されている。本研究は申請者が開発中の超多点BMIシステム等の技術を統合させた実験システムを構築して、神経系の可塑的変化の特性や限界を解明し、その制御・誘導を図ることを目的として行った。なお本研究における動物実験は、大阪大学生命科学研究科の承認のもと、大阪大学にて実施された。まず、(1)実験用統合システムの構築と評価として高密度柔軟電極を試作し、BMIデコーディングなどの用途における高密度電極の設計指針を得た。次に(2)多点柔軟神経電極を利用した可塑特性解明実験を動物モデルにより行い、BMI接続によりハイガンマ帯域の信号などに変化がみられることが観察された。
  123. 音声の病態分析を用いた治療効果のフォローアップ技術の開発 15H03002 2015-04-01 – 2018-03-31 徳野 慎一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40508339) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:診療上で医師の主観的評価や自記式質問紙による患者本人の主観的判断に頼らざるを得ない疾患が少なからずある。我々は患者の音声を解析して客観的な指標を示すことで、そうした疾病のスクリーニングやモニタリングを可能とする技術を開発した。うつ病においては、十分な感度と特異度を持った指標が完成した。また、その指標が医師の評価と相関が取れることも確認した。さらにこの指標を用いてスマートフォンアプリケーションを作成し一般に公開した、また、この指標を用いたクラウドシステムが商品化された。パーキンソン病についても同様の指標を開発したが、更なる検証が必要である。双極性障害や認知症の指標については現在なお開発中である。
  124. 多利用者・多状況に共通する特性の抽出による情報転移BMI 15H02759 2015-04-01 – 2018-03-31 川鍋 一晃 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (30272389) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳活動パターンは、同一の認知課題であっても利用者間で異なる上、同一利用者でも状況により揺れが存在する。このような脳計測データの不均質性を把握する解析手法を開発し、fMRIや脳波の実データに適用した。また、利用者や計測状況に共通した特徴を発見するために、変動の軽減に役立つノイズ除去法の評価、およびロバストな特徴抽出法の構築を行った。さらに、利用者への負担が軽いブレインマシンインタフェース(BMI)をめざして、辞書学習法や多変量自己回帰モデルなどに基づく転移学習法の枠組みを提案し、30日間分の筋電データを用いて転移学習法の有効性を検証した。
  125. うつ病の神経回路病態の解明とそのリモデリングに関わる基盤研究 15H02552 2015-04-01 – 2018-03-31 山脇 成人 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特任教授 (40230601) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的はうつ病の病態を局所の神経活動の異常および関連する神経回路の機能異常として理解し、神経回路のリモデリングによる治療法を解明することである。本研究の成果として、① 前頭前野と前帯状皮質を含めたうつ病患者の特異的な機能的結合の同定、②ラットの前頭前野の神経活動変化による行動変化の同定、③ラットの行動変化と前頭前野における電気生理学的変化との関連、④ ①から③の基礎検討を元にうつ病患者に対してNeurofeedbackを実践し、前頭前野と前帯状皮質の機能的結合の改善、を明らかにすることができた。社会実装の観点から今後さらなる症例の蓄積や方法論において修正を重ねていく必要がある。
  126. 身心変容技法と霊的暴力ー宗教経験における負の感情の浄化のワザに関する総合的研究 15H01866 2015-04-01 – 2019-03-31 鎌田 東二 上智大学, グリーフケア研究所, 教授 (00233924) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:「身心変容技法」がもたらす負の側面の考察を主軸に考察した。例えば、気功修行で言う「入魔」、禅の修行で問題とされる「魔境」、諸宗教で信仰されてきた「悪魔・悪霊」などの観念や経験を含む「霊的暴力」という観点から総合的に研究を進め、研究成果を『身心変容技法シリーズ第1巻 身心変容の科学~瞑想の科学』『同2巻 身心変容のワザ』(ともにサンガ、2017年9月、2018年2月)として出版した。また、2018年9月9日に日本宗教学会で分担研究者5名と共に成果をパネル発表し、同学会誌『宗教研究』に掲載した。本科研の全活動と全成果は研究年報『身心変容技法研究』に掲載し、HP上でPDF全頁公開し社会還元している。
  127. 認知モデルを利用した自伝的記憶のミラーリングエージェント 15H01615 2015-04-01 – 2017-03-31 森田 純哉 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40397443) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  128. 統合失調症・気分障害における「寛解」と「回復」の脳機能基盤に関する縦断的研究 26860914 2014-04-01 – 2016-03-31 滝沢 龍 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30420243) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:精神症状のみの軽減を目指した「寛解」だけでなく、社会的機能や幸福感の改善も含めた「回復」の脳機能基盤の背景を明らかにすることを目的とした。うつ状態の診断の補助に資する指標として、NIRSによる脳機能計測法が2013年に保険適応となったが、いまだ状態把握や予後予測に資する客観的・生物学的な指標は確立されていないため、縦断的研究により個人内の継時的変動を明らかにすることを目指した。
    脳部位によって、特性依存的と状態依存的なNIRS信号がそれぞれ存在する可能性を示した。臨床応用には、さらなる検討が必要であるが、NIRSにより計測された局所脳機能が状態依存性に変動し、予後を予測する可能性が示唆された。
  129. 発達性ディスレクシアのリスク児における病態解明と早期支援システムの導入 26780524 2014-04-01 – 2018-03-31 北 洋輔 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的障害研究部, 室長 (90627978) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:文字の読み書きに著しいつまずきのある発達性ディスレクシアは、小学校入学後に初めて診断を受けるものの、既に著しい学習困難に陥っていることが少なくない。そのために、就学前の段階で早期に発見し、適切な支援を行うことが効果的とされる。この研究では、ディスレクシアの可能性のある子どもを年長の段階で発見し支援につなげるための方法を、心理学・教育学・認知神経科学の観点から開発した。そして、年長の時点から行うことが可能な支援の方法を、神経生物学的エビデンスに基づいて提案することを達成した。
  130. 脳波による難治性疼痛症例の運動療法の治療効果の予測 26750207 2014-04-01 – 2017-03-31 西上 智彦 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (60515691) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:慢性痛の多くは器質的な問題だけでなく心理的・社会的な要因、さらには、中枢神経系の変調が関与しあっている。本研究の目的は,慢性痛患者の初期評価時の脳活動が運動療法の治療効果を予測できるか検証することである。対象は慢性痛患者(男性12名,女性23名)であった.初診時及び3ヶ月後に疼痛強度,疼痛生活障害尺度、不安、抑うつの評価指標、痛みの破局的思考、生活の質の指標及び脳活動を評価した。結果、20%以上疼痛が改善した患者は14名で,20以内であった患者は21名であった.初期評価時に両群間に有意な差を認めたものは、EQ-5Dのみであり、各周波数解析の結果に両群に有意な差を認めなかった。
  131. 脳波による指運動情報の予測 -脳波バーチャルキーボードに向けて- 26560303 2014-04-01 – 2017-03-31 南部 功夫 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (40553235) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、直感的で操作が容易な脳情報バーチャルキーボード構築に向けた基礎検討を行った。最初に、脳波(EEG)を用いて、運動実行時および想起時の個々の指運動(想起)を予測できる可能性を明らかにした。次に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により、運動準備時には対側の運動前野や補足運動野に高精度な指運動情報(系列)が含まれることがわかった。最後に、機能的近赤外分光計測(fNIRS)を用いた運動情報の抽出を目指し、fNIRS信号に混在する頭皮血流アーチファクトを除去し、脳活動の推定精度を向上させる手法を開発した.以上の結果は、脳情報を利用したバーチャルキーボード構築に貢献すると期待される。
  132. 動作主体感を生み出す脳内機構の操作的検証 26540059 2014-04-01 – 2016-03-31 小川 健二 北海道大学, 大学院文学研究科, 准教授 (50586021) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、fMRIニューロフィードバックを利用し、脳の感覚運動学習に関わる神経表象、および学習に付随する運動主体感の操作を試みた。まず研究代表者の所属機関に新規導入されたMRI装置に対して、新たにfMRIのリアルタイム処理系およびフィードバック・システムを構築した。そのシステムを使って実験参加者は感覚運動学習時の感覚運動領域の脳活動パターンを変化させた。本研究からニューロフィードバックにより感覚運動領域における脳活動パターンの操作が可能である点が示された。
  133. Learning to control brain activity pattern using real-time functional MRI: A feasibility study 26350993 2014-04-01 – 2017-03-31 BAGARINAO E. 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任准教授 (00443218) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、即時に脳機能状態を識別して可視化する、リアルタイム機能的MRIによる脳機能識別システムを独自に開発し、被験者が自分の脳の状態を観察しながら、目的とするパターンに制御する、つまり、ニューロフィードバック制御、の可能性について検証した。結果では、開発したシステムは、全体の処理を、画像取得時間(2秒)よりも速く行う事が出来た。3つのタスク(指を鳴らす行為を想像、語想起、引き算)について、リアルタイム機能的MRIを撮像しながら、被検者に識別、再現させるフィードバック実験では、サポートベクターマシンを用いる事により、一貫して80%以上の平均識別精度で、目的とする脳状態を再現する事ができた。
  134. 内的思考への注意揺らぎ神経基盤の解明と集中持続支援への応用 26330171 2014-04-01 – 2017-03-31 野澤 孝之 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60370110) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本課題の目的は,思考の諸次元における揺らぎの神経基盤を解明し,その知見をもとに日常的思考活動を支援する脳計測応用の基盤を確立することである.一連の研究を通じて以下のような成果を得た:(1)自発的に生じる内的思考への注意・意識状態の揺らぎの神経基盤を同定した; (2)ポジティヴ/ネガティブな思考の持続や移り変わりの背後にある脳活動ダイナミクスを同定した; (3) 思考の多様性を支える,時空間的に非一様な高次元機能的結合ダイナミクスの存在を明らかにした; (4) コミュニケーションを介した集団的思考の評価における多人数同時脳計測と脳活動同調分析の有効性を明らかにした.
  135. 脳内身体表現のスローダイナミクスモデル 26120005 2014-07-10 – 2019-03-31 淺間 一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50184156) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:運動主体感や身体保持感などの身体意識は,脳内身体表現に基づき実時間で創出される(Fast dynamics).一方,脳内身体表現は知覚運動経験を通してゆっくりと生成・更新され,変容する(Slow dynamics).研究項目B01では,この身体意識に関する脳内身体表現の生成・更新のダイナミクスのモデル化を行った.具体的に、身体意識の創出と脳内身体表現の変容の数理モデル化,認知身体マッピング器モデルの検証,およびモデルベーストリハビリテーションへの応用の検討を行った.
  136. 脳内身体表現の変容を促す神経機構 26120002 2014-07-10 – 2019-03-31 今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:人間が適切に身体を動かしているときには“自身が運動している”という運動主体感や“これが自身の身体である”という身体所有感などの身体意識を得られる.本研究は,身体意識の神経基盤が,主に右半球の下頭頂小葉と前頭回を結ぶ神経回路網に存在することを,健常者における行動実験・脳活動計測・非侵襲脳刺激,身体意識に変容のある統合失調症患者における脳内ネットワーク解析で明らかにした.また,身体意識の基礎となる感覚抑制のメカニズムを,サルの神経活動記録により,ニューロンレベルで明らかにした.
  137. 運動学習の獲得と実現に関わる神経回路の構造基盤と機能変化 26112006 2014-07-10 – 2019-03-31 藤山 文乃 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20244022) 生物系 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:最近この運動学習の過程には、線条体の異なる領域間での機能シフトが関与するという報告がある。しかし大脳皮質―基底核―視床ループは、点対点の、あるいは部位ごとの整然とした中継によって構成されているわけではなく、獲得期から熟練期への機能シフトを担う“真の機能領域”がこのループにおいて何に規定されているのかはほとんどわかっていない。そこで本計画研究では、まず形態学、電気生理学、光遺伝学を系統的に組みあわせて解析し、線条体コンパートメントと大脳皮質―基底核―視床ループにおける機能的な結合様式を同定した。さらに皮質入力と視床入力の差異を調べることで、各々のシナプス特性の違いを解明した。
  138. ニューロフィードバックを用いた患側手の自発的使用の意思決定介入 14J11742 2014-04-25 – 2016-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  139. ニューロフィードバックを用いた位相同期ダイナミクスの制御と脳機能解明 14J08352 2014 – 2015 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  140. 高機能自閉症スペクトラム障害における共感の神経基盤の解明と育成に関する研究 14J04621 2014-04-25 – 2016-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  141. オプトジェネティクスを応用した特異的セロトニン神経刺激による強迫性障害の病態解明 25893204 2013-08-30 – 2015-03-31 酒井 雄希 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (60714475) 研究開始時の概要:研究活動スタート支援 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:麻酔下マウスで海馬を対象としたオプトジェネティクス特異的刺激を行うことで、マウス機能的MRIで光刺激による変化を全脳評価できることが確認できた(Takata 2015)。無麻酔でマウス用MR画像を撮像する実験系を確立し、オプトジェネティクスを用いた刺激を行っても、体動アーチファクトがほとんど起きないことを確認した。麻酔下と覚醒下や、セロトニン作動性抗うつ薬投与前後での検討では有意な差を検出し、高い精度で測定できていることが確認できた。
    ヒトOCD患者の安静時機能的MRIデータ収集を行い、脳ネットワークを対象とした判別解析にて、線条体・前頭葉ネットワークと関連した仮説を裏付ける結果が得られた。
  142. 数学認知と神経基盤を共有する高次認知機能の学習効果 25871252 2013-04-01 – 2016-03-31 丸山 雅紀 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教 (70443033) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:数学能力と神経基盤を共有する認知機能を示すために、日常で得られる経験学習の差異で生じる個人差に着目し、数感覚と、痛覚などの認知課題を20名の健常成人に遂行させ、収集した行動データの相関を調べた。簡易的な解析を行った結果、数感覚と有意に正の相関を示す認知課題は得られなかった。今後、高度な解析の導入や被験者数の追加などにより統計解析の精度を高め、更に検証を進める。
    学習課題を遂行させて計算式の文法認知を強化または弱化させ、その効果の言語機能への汎化も調べた。16名の健常成人が実験に参加し、課題成績の上昇が確認された。今後、学習課題の前後に収集した言語機能のデータを比較し、学習効果の汎化を検証する。
  143. NIRSを用いたrealtimeneurofeedbackによるうつ病治療の開発 25861011 2013-04-01 – 2017-03-31 松原 敏郎 山口大学, 大学教育機構, 准教授 (60526896) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:ニューロフィードバック(Neurofeedback:NF)とは,被験者が脳機能測定中に自身の脳活動をモニターでリアルタイムに見ながら,脳活動コントロールを学ぶことである。 うつ病患者で情動刺激に対する前頭葉の機能異常が報告されており、その機能異常をNFを用いて改善できれば,有用な治療法となる可能性がある。われわれは脳機能測定装置として、被験者に副作用のない光トポグラフィーを用いた。研究成果としては、1)うつ病患者に脳の情動調整障害があることを明らかにした、2)健常人を対象に前頭部NFを行い、NFは1)気分を改善する効果があり,2)陰性情動刺激に対して,前頭部血流を上昇させることを明らかにした。
  144. 吃音者・児の発話における運動前野の役割-近赤外分光法による検証- 25770169 2013-04-01 – 2017-03-31 青木 淳 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 流動研究員 (00633174) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:発話時の左前頭皮質における脳血液応答について近赤外分光法(NIRS)を用いて測定し、吃音者・非吃音者間で差異があるか検討した。その結果、被験者群と単語種類(高親密度単語、低親密度単語、無意味単語)の間で、ブロードマンエリア(BA)46における脳血液応答に有意な相互作用がみられた。一方でブローカ野では差がみられなかった。本研究より、左BA46が単語親密度と関連し、発話において吃音者・非吃音者間で応答が異なることが示唆された。本研究では発話に関わる神経応答を定量する新しい方法を示し、吃音の発達問題をより理解するために吃音児へ適用できる可能性がある。
  145. 動作に対する好ましさの感性とその感性脳機能学的情報処理モデルの検討 25730172 2013-04-01 – 2015-03-31 緒方 洋輔 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 流動研究員 (60641355) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の目的は、運動・動作を美しく、または好ましく感じる際にどのような神経基盤によって表象されているかを明らかにすることであった。研究の結果、反復模倣・観察を行った動作に対して好意度評価の増加が認められた。関連して、反復模倣・観察を行った動作刺激に対する好意度の評価時には、報酬価値の表象に関与する腹側線条体を含む部位の活動増加が認められた。加えて、動作を反復している際に下頭頂小葉の活動が減少し、その減少量と好意度の増加量の相関が認められた、これらの結果から、動作の反復模倣・観察が、刺激に対する価値表象の変化を誘発し、選好に影響を与えている可能性が示唆された。
  146. ニューロフィードバックを利用した直接伝送型脳波コミュニケーションの実現 25560430 2013-04-01 – 2015-03-31 飯塚 博幸 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30396832) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:通常,ニューロフィードバックは自分の脳波を観察することによって行われるが,本研究では,計測された脳波を直接伝送し,2者の間においてニューロフィードバックを行う実験を行った.フィードバックする脳波はα波帯域のパワーを視覚刺激で表示する方法を用いた.結果として,この相互の脳波を伝え合うコミュニケーション状態を利用し,双方のα波を高める訓練が成功した.2者間でのコミュニケーション型ニューロフィードバックで訓練をした場合には,その後,1者でニューロフィードバックを行ってもその効果が継続していることがわかった.
  147. ニューロフィードバックを用いた知的障害者のための言語学習支援システム 25560287 2013-04-01 – 2016-03-31 伊良皆 啓治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (20211758) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:発達障害児や知的障害児の学習をサポートするため、脳情報を計測しフィードバックする学習支援システムを開発することを目ざしたが、脳波や脳血流の情報を非拘束状態で計測するシステム開発、特に脳波の動きによるノイズ除去法の提案、フラクタルディメンジョンを用いた脳波、NIRS解析法の構築、また、重度心身障害児に対する脳波応答の特徴抽出により、シータ波の事象関連位相解析が言語の応答に対して有効であるという研究成果を得た。
  148. こころの時間長・同期・クロックを作り出す認知メカニズムの解明 25119003 2013-06-28 – 2018-03-31 村上 郁也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60396166) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:主観的現在の時間スケールにおいて私たちが感じる時間長や時間差などをつかさどる脳内メカニズムが、視覚運動・位置知覚・注意・多感覚統合などの処理プロセスと階層的に相互作用している計算枠組みが、心理物理学と機能的脳計測の手法で解明された。心的時間に関わる神経表現が感覚モダリティごとに特有の同期周波数をもつことが示唆され、また感覚証拠が乏しい際に事前確率が重視されるなどの最適推定が行われることがわかった。
  149. 感性特性に着目した自閉性障害者の視覚的短期記憶機構の解明と感性知能検査の開発 13J09521 2013 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的は, ①「自閉症者を対象としたパターン認知と視覚的短期記憶における感性特性の影響に関する心理物理的検討, および個人差の検討」, ②「心理物理データ蓄よび個人差に関する生理学的基盤の証明」, ③「感性知能検査の開発」から構成されている。
    研究時間およびエフォートの多くは, 研究所における研究課題と日常業務に充てられた。研究所の研究課題としては, 本年度は脳波に着目したニューロフィードバック訓練の導入を試みた。ニューロフィードバック訓練は, 注意などの高次視覚機能の改善を目的とする訓練法である。海外では導入が検討され始めているものの, 日本では学術的検討がなされてこなかった。このため, 注意欠陥多動性障害(ADHD)のある児童に対してニューロフィードバック訓練を実施することは, これらの児童の高次認知機能を検討するために有益であると考えられる。本年度も結果から, ニューロフィードバック訓練に関する一定の効県が認められた。この結果は, neuroReport誌に掲載された。
    日本学術振興会特別研究員としての研究課題に関しては, 満足な研究時間とエフォートを充てることはできなかった。したがって, これまで行なってきた研究内容を論文化することに尽力した。これらは研究課題で対象としている自閉症スペクトラムに関する研究であり, 「Journal of Autism and Developmental Disorders誌」を始めとして5本が掲載された。また, 自閉症スペクトラムの早期診断と関連があるとされている低出生体重児の研究についても1本が掲載された。学会発表も積極的に行ない, 発達障害や低出生体重児に関する内容を7つの国際・国内学会で発表した。研究実績の概要:
  150. ヒトの知覚における確率共振現象の生理学的メカニズムの解明 24700617 2012-04-01 – 2015-03-31 相原 孝次 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 専任研究員 (10600918) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:脳内で確率共振が起きる証拠を示すために、脳波から逆問題を解いて脳内ノイズレベルを推定することを試みたが、計算機シミュレーションの結果から正確な推定は困難であることが明らかになった。次に、経頭蓋ランダムノイズ刺激により脳内ノイズレベルを操作できる証拠を得るために、心理物理実験により脳内ノイズレベルを推定した。操作できることが示唆されたが、さらなる実験的裏付けが必要である。最後に、安静状態ネットワークのノードに経頭蓋磁気刺激を行い、誘発反応を脳波で計測した。脳波からアーチファクトを除去する方法を検討し、安静状態ネットワークに固有の神経振動周波数が存在するかどうかを調べた。
  151. ニューロフィードバックを利用した複数運動課題の同時学習 24700615 2012-04-01 – 2014-03-31 池上 剛 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (20588660) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:申請者は,ある一定方向(運動方向に対して左向き)に外乱が生じる新奇な力場課題を用いた腕到達運動学習実験を行なっている際に,獲得される運動記憶が,運動計画と運動実行に対応する階層的な2つの学習プロセスによって構成され,それらの相互作用によって形成されることを示唆する興味深い結果を得た.
    力場環境下において、多くの被験者が,6~7試行に一回程の頻度で,力場の影響を“過補償”し,それまでとは逆方向の右向きの弧を描くように大きく軌道を修正することが分かった.この軌道修正は,直前の試行で課題を失敗した場合に観察された.この結果は,課題が成功していた際に活性化していたプロセスだけでなく,課題が失敗した場合に活性化する別の学習プロセスが存在する可能性を示唆している.そこで、意図的に課題の失敗を誘起させるため,運動終点で外乱が最大になる力場を開発した.実験の結果,課題が失敗した直後の試行で,力場を過補償する程大きな軌道の修正が観察された.さらに驚くべき現象が,力場学習後の脱学習過程(力場なし環境)において観察された.力場環境から力場なし環境に移行する際,力場学習の後効果によってターゲットに到達できず課題を失敗するため,次の試行では軌道が大きく修正される.さらに課題を継続すると,運動はある曲線軌道に収束した.この軌道は,力場学習前に力場なし環境下で観察される直線軌道とは明らかに異なっていた.その曲線軌道は20分以上も保持されたことから,単なる力場学習の後効果の持続では説明できない.むしろ,課題の失敗を誘起する力場学習前後において,異なる運動計画によって異なる運動が実行されたことを示唆している.
    本研究によって得られた知見は,運動学習過程において,運動計画と運動指令の学習プロセスがどのように相互作用し,どのように潜在的な運動記憶を形成するかという神経メカニズムに示唆を与える.研究実績の概要:
  152. 異なる変形性膝関節症モデル動物に対する歩行エクササイズの効果 24700569 2012-04-01 – 2014-03-31 西上 智彦 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (60515691) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:歩行エクササイズが関節炎モデル,関節不安定性モデルの痛みを抑制するか検討した。結果,関節炎モデルラットにおいて,トレッドミル歩行群はトレッドミル開始2週間後のみ通常飼育群より,疼痛閾値が改善していた。一方,関節不安定モデルではトレッドミル歩行群はトレッドミル開始4週間後より通常飼育群と比較して疼痛閾値が改善していた。脊髄後根神経節においてCGRPやASIC3といった疼痛関連分子に歩行エクササイズ群と通常飼育群に有意な差は認めなかった。関節炎モデルと関節不安定性モデルではトレッドミル歩行による疼痛抑制効果の減少には時間的な差があることが示唆されが,疼痛抑制メカニズムは明らかにできなかった。研究実績の概要:
  153. 脳磁計による神経義手の開発と上肢運動機能再建による大脳皮質再構築の検討 24700419 2012-04-01 – 2014-03-31 柳澤 琢史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90533802) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:本研究では臨床用脳磁計からオンラインで脳磁場信号を取得し、リアルタイムで脳情報抽出処理を行い、その結果に基づいて、患者が思った通りに動作する神経義手を開発した。また、これを腕神経叢引き抜き損傷や脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、脳性麻痺等により重度の運動麻痺がある患者に適用した。麻痺で動かない上肢を動かす想起時の脳信号から運動情報を抽出し、麻痺患者でも脳信号で義手操作が出来る事を示した。また、この操作に習熟することで、脳活動自体も変化する事が示され、リハビリテーションなどへの応用が示唆された。本研究により非侵襲的BMIの新たな可能性が示された。研究実績の概要:
  154. リアルタイムfMRIを用いたバイオフィードバックによる社会認知機能改善プログラム 24659546 2012-04-01 – 2014-03-31 松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、リアルタイムfMRIによるバイオフィードバック法を用いて、局所脳活動を改善させることで高機能自閉症・アスペルガーの社会的認知機能を改善させることを目指し、感情機能や社会認知機能の改善・回復への有用性を調べ、臨床応用の可能性について検討することを目的とした。
    その結果、アスペルガー症候群もニューロフィードバックによるトレーニングにより扁桃体の活動を制御することが可能であることが確認され、トレーニング後に扁桃体の活動がトレーニング前と比較し活性化されていた。これらのことから、今後このようなトレーニング法は精神科のリハビリテーションにも十分応用できる可能性があることが示唆された。研究実績の概要:
  155. 痛みと共感―“痛みの社会性”の認知・生理・神経的基盤に関する萌芽的検討 24653160 2012-04-01 – 2014-03-31 亀田 達也 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20214554) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:「他者の不遇や痛みをどのように共有できるか」という問いは、社会科学の根本的な問いであると共に、災害・格差を含む今日的問題の中核を形成する。本研究は“痛みの社会性”を領域交叉的な形で検討するための有効な概念的フレームを構築することを目的とした。本研究は多領域にまたがる経験的知見を整理し、“痛みの社会性”に関わる複数の鍵次元を概念的に析出した上で、そのフレームがどの程度有効かを見極めるため、「他者の痛みに対する共感」を出発点に、行動・認知・生理・脳機能画像計測を組み合わせた一連の実験を実行した。この結果、他者の苦痛に対して、その身体状況に応じた共感反応が生理レベルで起きることが明らかになった。研究実績の概要:
  156. 随意性の低い効果器の訓練及び非侵襲脳刺激法による随意性向上と神経基盤の変化 24300210 2012-04-01 – 2016-03-31 荒牧 勇 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (40414023) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、非利き手や足など随意性の低い効果器を対象として、その随意性を向上させ、その随意性向上に伴う神経基盤の変化を明らかにする研究を行った。足によるボールリフティングや非利き手による投球訓練により、運動制御・学習に重要な役割を果たす小脳の灰白質量が増加することが明らかとなり、成人でも脳構造が発達する証拠を示した。また、一次体性感覚・運動野への非侵襲的な経頭蓋直流電気刺激により、足関節の関節可動域を変調することに成功し、ヒト運動システムに対する神経モジュレーションの可能性を示した。
  157. 多様な記憶情報の活用を担う機能的神経回路の解析 24243069 2012-04-01 – 2016-03-31 櫻井 芳雄 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (60153962) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、多様な記憶情報の活用を担う機能的神経回路、すなわちセル・アセンブリの活動を神経科学的に実証することを目的とした。様々な記憶課題を考案し、それらを遂行中のラットからマルチニューロン活動を記録し解析した。その結果、時間弁別課題、報酬確率予測課題、順序弁別課題など多様な記憶課題の遂行中に、海馬、扁桃体、前頭前野などでニューロン活動が変化することがわかり、さらにそれらの部位間で同期的に活動するニューロン集団、つまりマクロなセル・アセンブリの活動を検出することができた。
  158. 思春期および小児期・青年期における精神疾患の治療と予防に関わる脳神経倫理学 24118502 2012-04-01 – 2014-03-31 石原 孝二 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30291991) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:本年度は昨年度に引き続き、自閉症に対するオキシトシンの治療適用に関する倫理的問題の検討を中心に研究を進めた。オキシトシンは向社会性を高める効果があるものとされ、自閉症への適用が期待されてきたが、近年オキシトシンの向社会性の効果に関する文脈依存性を示唆する結果や効果に関する矛盾する結果が報告されるようになっている。本研究では、オキシトシン効果の向社会性に関する文脈依存性が倫理的問題に対してもつ意義の明確化を試みるとともに、オキシトシンと自閉症の関係を扱った論文における「社会性の障害」の捉え方を検証し、倫理的問題を分析するための基盤について検討した。また、2013年に発表されたDSM-5における診断基準の変更が自閉症(自閉症スペクトラム)の診断や教育などに対して与える影響についても検討を行った。
    自閉症の治療に関する倫理的問題に関しては、ハイデルベルク大学において討論会(Extended Colloquium: New Ethical Issues on Autism)を開催し、ハイデルベルク大学の研究者などと自閉症の診断や治療に関わる倫理的問題に関する討論を行った。また、東京大学においてワークショップを開催し、オキシトシンに関する臨床試験を行っている研究者、当事者、東京都自閉症協会の関係者をスピーカーとして招き、オキシトシンの治療適用に伴う倫理的問題などについて討論を行った。
    自閉症の治療に関する問題以外では、薬物療法が精神病理学に与えた影響についての論文を執筆したほか、投薬に依らない精神病早期介入のアプローチとして注目されつつあるOpen Dialogueに関する調査などを行った。研究実績の概要:
  159. ハイパースキャン手法による協調的動作の解明:個人差と注意量の観点から 12F02747 2012 – 2014-03-31 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  160. ニューロフィードバックを応用した新たなリハビリ手法の開発 23700500 2011 – 2012 三原 雅史 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教 (80513150) 研究開始時の概要:若手研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、多チャンネル近赤外分光法(NIRS)を用いたリアルタイム解析システムを構築し、そのシステムを用いて脳卒中後片麻痺患者を対象に、リハビリテーションと組み合わせた際の NIRS を用いたニューロフィードバックの効果を検討する目的で、プラセボ群を用いたランダム化試験を行い、対象脳領域の賦活効果と、麻痺側手指機能回復促進効果を確認し、ニューロフィードバックが安全で侵襲性の低いリハビリテーション手法として有効であることを証明した。研究実績の概要:
  161. 神経経済学の手法を用いた「幸福度指標」の確立 23683005 2011-04-01 – 2015-03-31 田中 沙織 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (00505985) 研究開始時の概要:若手研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:満足度・幸福度が生物学的指標で記述できるかを検証した。経済的な満足度を測定する実験課題の作成および脳活動データ、経済学・社会・生物学的属性データを収集し、経済学・社会・生物学的属性と満足度に関連する脳活動との関係を明らかにした。頭頂皮質と線条体が主観的効用の表現にかかわり、また島皮質と背外側前頭前野が社会的効用にかかわりかつ性別という個人属性によってその活動が異なることを明らかにした。これらの幸福度に関わる脳部位の具体的な機能の検証を行うためにfMRIによるニューロフィードバック実験を検討し、主観的効用に関わる線条体の活動の変化とそれに伴う意思決定行動の変化を示唆する予備的な結果を得た。
  162. 二者同時計測によるインタラクティブなニューロフィードバックシステムの提案 23653196 2011 – 2012 大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90431634) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、セルフコントロールの効果的なトレーニングを促進するために、モバイル計測に適した携帯型脳波計を用いた二者同時計測によるニューロフィードバックシステムの提案を目的とした。従来の単独型とは異なる対戦型というインタラクティブなトレーニングスタイルを導入することによって、より短時間にトレーニング効果を引き出しうるニューロフィードバックシステムを構築し、そのシステムの信頼性・妥当性を検証した。研究実績の概要:
  163. ポータブルNIRS計測装置を用いた実利用型ブレイン・マシン・インタフェースの構築 23560286 2011 – 2013 伊藤 友孝 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283341) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:本研究は,脳機能計測装置を用いて人の脳活動を計測し,その情報を各種機器の操作やコミュニケーションに用いる「ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)」の構築を目的とした.本研究では,ポータブルNIRS計測装置を用いて,脳血流変化から人の思考や感情を識別するための手法を考案し,有効性を確認した.また,日常生活で利用可能なBMIの構築を目指し,使用状況の変化に対応すべく識別精度を向上させるための方法を検討した.さらに,将来の双方向BMIの実現を目指して,外部刺激が脳血流に与える影響についても実験的に検討を行った.今回の研究によりBMIの応用可能性を高める上での重要な指針が得られた.研究実績の概要:
  164. 脳卒中片麻痺上肢に対するニューロフィードバック療法の開発とその効果検証 23500630 2011 – 2013 森岡 周 畿央大学, 健康科学部, 教授 (20388903) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、まず健常者の道具操作および観察・イメージ時の運動関連領域の脳活動をNIRS-EEGシステムを用いて検出し、それから得た脳活動を基に閾値を設定し、その閾値を超えると視覚フィードバックを与えるニューロフィードバック装置を開発した。なお全ての対象者において左運動前野の活動が明確であったため、その領域の活動に焦点を置いた。この装置を用いて、脳卒中後に上肢運動障害を呈した10名の患者に対して2週間の介入を行った。結果、道具操作観察・イメージ時に左運動前野の閾値を超える活動を認めた6名は、介入によって有意な機能改善を認めた。一方、閾値を超えなかった4名は介入によって著明な効果が見られなかった。研究実績の概要:
  165. 運動想起型BCIへのユーザ適応を促すニューロフィードバック手法の開発 23500483 2011 – 2013 加納 慎一郎 東北工業大学, 工学部, 准教授 (00282103) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:ヒトの感覚運動野の脳活動から運動の想起の有無やその種類を検出するBCI(brain-computer interface)における適用性や検出成績を向上させるために,脳波やNIRS(近赤外分光法による脳血流計測)によって得られたヒトの運動想起に伴う脳活動信号から生成された情報をユーザにフィードバックするニューロフィードバック(NF)を用いるための方法論について検討を行った.本実験の結果,計測信号からの情報抽出法,NF実験の実施方法などの知見が得られた.研究実績の概要:
  166. アレキシサイミアにおける、自己意識・メタ認知に関する統合的脳機能画像研究 23390192 2011-04-01 – 2016-03-31 守口 善也 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 客員研究員 (40392477) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:アレキシサイミアとは自己情動の同定や表現困難を主徴とする心身症での重要な病態生理である。今回は,自己の身体―情動状態の変化とその認知の脳内基盤に関する知見を,fMRIを用いて得ることが目的である。’自伝的記憶に立脚した自己継続感’について日常の出来事を記録するwebシステムにより,ポジティブな記憶の方が保持され,海馬の活動の関与を明らかにした。情動刺激の際の脳活動と心拍変動との同時測定では,心拍変動の副交感成分と島皮質・腹側前帯状回の活動・機能的結合が関連していた。さらに、内受容感覚の認知の鋭敏さが不安を増大させ,内受容感覚への気づきに重要な島皮質の活動が,アレキシサイミア群で低下していた。
  167. 発達性「読み」障害に関する臨床的、計算論的、脳機能研究 23330201 2011-04-01 – 2016-03-31 宇野 彰 筑波大学, 人間系, 教授 (10270688) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究の結果、ひらがなの習得には、過去に報告されていた音韻認識能力だけでなく、記号や意味から素早く音韻に変換する自動化能力が重要であることが分かった。そして、良好な認知能力を活用することにより、3条件を満たす場合には、かなをほぼ完璧に習得できる方法を開発できた。このような発達性読み書き障害のある方の多くが習得困難である漢字の脳内処理部位に関して、非言語的図形から漢字という言語的図形に変化するにつれて、処理する部位が連続的に移動することが分かった。そして、トライアングルモデルにて、子ども達の仮名の習得や、習得困難さが計算論的研究によりシミュレイションされた。
  168. 運動療法によるストレス緩和作用の神経基盤に関する生涯発達研究 23300247 2011-04-01 – 2014-03-31 酒谷 薫 日本大学, 工学部, 教授 (90244350) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:現代社会に蔓延するストレスは、様々な疾患の主要原因の一つである。本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、前頭前野の神経活動を計測し、自律神経系・内分泌系機能及び心理状態とともに、ストレスを客観的に評価する方法を開発した。さらに本法を用いて、中高齢者における運動療法のストレス緩和効果について検討し、軽い運動でもストレス緩和効果があることを明らかにした。さらに高齢者に軽い運動を負荷することにより、前頭前野のワーキングメモリー課題に対する反応性が上昇し、パフォーマンスが向上することが示唆された。本ストレス評価法と運動療法を組み合わせることにより、ストレス性疾患を予防できる可能性がある。研究実績の概要:
  169. 知的エージェント介在型運動機能再建手法の開発 23300216 2011-04-01 – 2015-03-31 近藤 敏之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60323820) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は運動関連領野の損傷による下肢運動麻痺患者に対するBCIリハビリシステムの開発を目的とした.本研究の成果は以下の3つである.第1に,運動想起型BCIの特徴量である事象関連脱同期/同期(ERD/ERS)の発現には,運動想像に加え,運動計画が重要であることを実験的に検証した.第2に,健常者の運動学習をモデルとして用いて,麻痺患者の運動機能再建過程における自発的な運動企図と運動機能向上の関係を調査した.第3に,上記BCI型リハビリシステムによって随意的な下肢筋活動に回復が見られた患者等に対し,自発的な筋活動を入力として実世界の自由な移動を実現する下肢筋活動駆動型電動車椅子システムを開発した.
  170. 自己と外界の関係を表現する脳内機構 23300151 2011-04-01 – 2015-03-31 神作 憲司 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 室長 (60399318) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究では、脳で自己と外界の関係がどのように表現されているかを解明するための研究を行った。まず、腕を交差した状態で左右の手を触覚刺激すると時間順序判断の逆転が生じる現象に着目して研究を進め、神経画像にて交差逆転現象に左後部頭頂皮質が関与していることを示し、さらに自閉症児では腕交差時に生じる時間順序判断の逆転が定型発達児に比べて少ないことを見出した。また、マウスが自己と外界の関係をどのように処理しているかについて評価するための新しい行動実験系を開発し、これによりマウスにも自己身体表象が存在する可能性を示唆する結果を得た。これらの研究を続けることでこうした脳内表現が明らかとなることが期待される。
  171. 熟慮的判断のための神経基盤の研究 23243077 2011-04-01 – 2014-03-31 坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:思考の基礎過程を調べるために、独自開発の推論課題(Pan et al., 2008)を使い、サルの脳の推論機能について調べた。その結果、①単一ニューロン活動記録から、前頭前野外側部のニューロンは推移的推論機能を反映した活動を見せたが、大脳基底核線条体にはそのような活動が見られなかった(Pan et al., 2014)。②前頭前野外側部の推移的推論機能は、カテゴリカルな処理と密接な関係があることが示された(Pan & Sakagami, 2012)。さらに③多電極同時記録による局所場電位解析から、前頭前野外側部から線条体への情報伝達が、正しい課題遂行に重要な役割を果たしていることが示唆された。研究実績の概要:
  172. 分子から社会までの統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援 23118004 2011-04-01 – 2016-03-31 笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:人間の精神機能は、自分自身を知り(自己意識・自我・メタ認知[=自分自身の認知・行動を対象化し、自己像として認識すること])、社会環境適応的な自己制御性を持つという、他の動物にない特長を持つ。ヒトの自己制御をその神経基盤も含めて包括的に解明し、それにもとづいて自己制御の形成・修復の支援方法を開発することは、精神疾患が急増していることを鑑みれば喫緊の課題である。本領域では、5年間の研究を通して、自己制御の障害を呈する思春期精神病理における神経基盤を明らかにし、自己制御の支援方法を具体的に提案することに成功した。
  173. メタ認知と社会行動の発達にもとづく自己制御 23118003 2011-04-01 – 2016-03-31 藤井 直敬 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (20392095) 複合領域 研究開始時の概要:新学術領域研究(研究領域提案型) 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本課題では動物とヒトを対象とした比較認知科学的アプローチを用いて、内的・外的過程であるメタ認知・社会行動にもとづく自己制御とその思春期発達の神経基盤を明らかにすることを目的とした。その結果、社会性の行動基盤としての脳内ネットワークの解明、メタ認知の動物実験プラットフォームの構築、 言語的アプローチによる自己認知メカニズム、因果推論や対人コミュニケーションの神経メカニズム等を明らかにすることが出来た。
  174. 神経科学的アプローチによる倫理的行動モデルの研究 23011005 2011 – 2012 松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720) 人文・社会系 研究開始時の概要:特定領域研究 研究概要: 研究成果の概要:これまでの脳科学研究によって、社会規範を犯した人に対する制裁の欲求など道徳や倫理のメカニズムが脳内に存在することが示されてきた。その一方で、私たちは、そのような人の不遇な境遇や事情を知ることで、その人を哀れみ、同情することがある。その際に、同情と犯罪者への責任追及との関係性が問題となるが、脳内でどのようなメカニズムが働いているかについては未解明のままであった。そこで今回の研究では情状酌量に着目し、同情と量刑判断に関連する脳機能を探索した。被験者は、模擬裁判の裁判員として、被告人が犯罪行為に至った背景を基に量刑を決定するとともに、被告人に対してどの程度同情できるかを評定した。被告人が犯罪に至った背景に関する説明書を被験者に読んでもらい、そのときの被験者の脳活動をfMRIにより解析した。その結果、被告人への同情と量刑判断は、他者理解や道徳的葛藤に関わる内側前頭前皮質と襖前部という共通した脳領域の働きによるものであることが判明した。一方で、情状酌量傾向には個人差があり、その個人差は、主観的体験に関わる右島皮質の活動と関連しており、同情により刑を軽くしやすい人ほど島皮質の活動が高いことが明らかとなった。2009年に裁判員制度が我が国において導入され、法律に基づき人を裁くことは、とても身近な話となった。今回の研究の成果は、法律的判断の訓練を必ずしも十分には受けていない一般人の、裁判審理における情状酌量に関連する脳機能メカニズムを調べた世界で最初の研究成果である。研究実績の概要:
  175. 社会的評価ストレス下における運動パフォーマンスとその神経基盤 11J09607 2011 – 2013 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:日常的に, 他者から評価される状況で行動する際, 他者の反応によって知覚や行動そのものに影響が生じることがある。本研究では, 社会的評価を受けている際の運動知覚や運動制御の特徴を明らかにし, 身体教育等の実践に役立てることを目指した。
    最終年度である本年度は, 「研究実施計画」に記載の通り, 主に昨年度までに得たデータの分析及び論文の執筆を行った。まず, 英国University College LondonのPatrick Haggard教授と共同で行った心理物理学実験のデータを分析した。本実験では, 自分の行為が外界に結果を生み出したという感覚である「行為主体感」を客観的に測定するため, 自発的な運動(ボタン押し)とその結果として生じる感覚(音)の主観的時間間隔が狭まるという時間知覚のイリュージョン(intentional binding)を用いた。すると, ボタン押しの際に, 他者が快反応を示した条件に比べて, 不快反応を示した条件では, intentional bindingが小さくなり, 行為主体感が弱まったことが示された。すなわち, 他者から不快反応が生じると, 「自分のせいではない」と感じる知覚的バイアスが存在することが示唆された。本研究成果は, Current Biology誌より出版され, 海外のメディアにも報道された。また, データの分析と並行して, イタリア・ミラノのサンパウロ病院と共同で, 気分障害の患者様を対象に実験を行った。本実験により, 行為者の気分によって, 他者からの感情的反応が行為主体感に与える影響が変化するかが明らかになると見込まれる。年度中, 2編の原著論文が出版された他, 2013年度包括脳ネットワーク夏のワークショップや第7回Motor Control研究会など, 6件の研究発表を行い, 包括脳ネットワークより若手優秀発表賞を受賞することができた。研究実績の概要:
  176. ニューロフィードバックによる行動制御の発達支援に関する実証的研究 22530765 2010 – 2012 篠田 晴男 立正大学, 心理学部, 教授 (90235549) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:近年、ニューロフィードバックは、発達障害に適応され、非薬物療法として、自己制御能力を高め、問題を軽減することが報告されている。本研究では、健常者および発達障害事例を対象に、その効果を多面的に検討し、臨床適用上の手がかりを探索した。トレーニングにより、主観的自己制御感が変容するとともに、前頭部におけるN2事象関連脳電位、右前頭前野における脳血流の亢進が生じることを見出し、制御的注意の活性化が示唆された。研究実績の概要:
  177. 社会性の個人差を決める脳メカニズムの解明とその利用 22300139 2010-04-01 – 2014-03-31 春野 雅彦 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (40395124) 研究開始時の概要:基盤研究(B) 研究概要: 研究成果の概要:本研究では社会性の個人差における前頭葉皮質と皮質下の領域の役割を調べることが目的であった。 向社会的な被験者と個人的な被験者に公平性に基づき意思決定を行うゲームをfMRI計測時に行ってもらった。この課題には、ゲームと同時に乱数を記憶させ背外側前頭前野を使用、そのような要求がない2条件がある。背外側前頭前野を乱数記憶に使用すると、向社会的な人はより向社会的、個人的な人はより個人的な行動を示した。この時のfMRIデータを解析した結果、両者の差は扁桃体と側坐核の活動に現れることが明らかとなった。 さらにこの扁桃体と側坐核の脳活動に機械学習技術を適用することで被験者の行動を予測できる可能性を示した。研究実績の概要:
  178. 機能的近赤外分光装置を用いた高次脳機能の計測とその評価に関する研究 10J01118 2010 – 2012 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:近年,非侵襲式の脳活動計測方法の発展に伴い,ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)が注目されている.BCIとは,脳活動から使用者の意図を検出し,様々な機器を操作する技術であり,医療・福祉・エンターテインメントなど幅広い分野への応用が期待されている.BCIにおげる非侵襲式の脳活動計測方法としては,脳波(EEG),近赤外分光法(NIRS)が挙げられる.特に,NIRSは空間分解能が高く,環境ノイズに強いという特徴を持つことから,新しいBCIの脳活動計測方法として注目されているしかし,NIRSを用いたBCI(NIRS-BCI)においては,BCIを目的とした信号処理方法が確立されていないため,BCIを開発する上での大きな障害となっていた.
    本研究では,小型で汎用性が高いBCIシステムの開発のために,まずNIRS-BCIのための信号処理方法の検討を行い,次に検討した信号処理方法をもとに運動野を対象としたBCIと前頭連合野を対象としたBCIシステムの開発を行った.その結果,運動野を対象としたBCIの開発では,NIRSを用いて運動意図を識別し,筋刺激装置やロボットアームを操作できることを確認した.これにより,片マヒ患者などのリハビリテーションにBCIを応用できる可能性を示した.
    前頭連合野を対象としたBCIでは,BCI使用者の訓練とニューラルネットワークによる識別を組み合わせることで,計測できる情報が少ない小型BCIでも,約80%の正答率を実現できることを確認した.この結果から,NIRSを用いた小型で汎用性が高いBCIシステムを実現した.また,前頭連合野を対象とすることで,NIRS-BCIの新しい応用としてメンタルヘルスケアへの応用の可能性を確認した.研究実績の概要:
  179. ブレイン・コンタクトによる予測協調制御に向けた適応型BMIの展開 21240013 2009 – 2011 和田 安弘 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (70293248) 研究開始時の概要:基盤研究(A) 研究概要: 研究成果の概要:非侵襲の脳活動計測(近赤外分光法: fNIRS)によって,ヒトが外部装置を思い浮かべるだけで制御できるようにするための基礎研究を実施した。ヒトが前後左右4方向への等尺性収縮運動を行った際のfNIRS信号を測定し、得られた信号から腕の力方向の時間的・空間的な特徴量選択を行い,方向推定を行い, 80-90%程度の推定精度が得られた。結果,運動情報の空間的、時間的局在が示された。研究実績の概要:
  180. 「身体で覚える」ニューロフィードバックを用いた自己コントロールプログラムの開発 20653047 2008 – 2009 大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90431634) 研究開始時の概要:挑戦的萌芽研究 研究概要: 研究成果の概要:昨年度に引き続き、前半は据置型の脳波計を利用した脳波・皮膚電位・脈波を用いたニューロフィードバックシステムの構築をメインに行っていたが、より簡便で広範囲かつ効率的な利用を目指すために、後半からはモバイル型の生体アンプを利用したシステムへと移行した。移行に際し、自律神経系の指標としては脈波から導出される心拍および心拍変動を、中枢神経系の指標としてはθ/βパワーを選出し、ターゲットとする指標を絞り込んだシステムを確立するようにした。大学生3名を対象とした予備実験を継続的に実施し、試行錯誤を繰り返しながら、システムの基本形を完成させた。このシステムの妥当性を検討するために、数名の参加者を対象に、1セッション(10分×3セット)からなるトレーニングを長期間縦断的に試用し、トレーニングを通じての認知・情動的変化の観察を継続中である。
    さらに、このフィードバックを用いたセルフコントロールプログラムを適用した場合に、どのようにセルフコントロールが改善されたのかを評価検討するために、プログラム適用前と適用後に実施する心理生理実験の検討を行った。前年度の行動実験に加え、今年度は多チャンネル脳波計を利用した事象関連電位(P300)を指標として導入し、連続遂行課題(Continuous Performance Task : CPT)と時間評価課題を中心に、心理・生理の両面からトレーニング効果を評価できる方法を検討した。
    前年度同様に、研究分担者を中心にプログラム適用前の衝動性傾向を広く検討するための質問紙調査を行った。大学生の基本的生活習慣がセルフコントロールに及ぼす影響を検討し、規則正しいリズムがより高いセルフコントロールにつながることが示され、その成果は学会で発表された。今後はこの知見をニューロフィードバックプログラムの総合的な事前事後指導に導入する。研究実績の概要:
  181. 神経行動科学的アプローチによる芸術的パフォーマンスの向上を目指して 08J11133 2008 – 2010 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:公での音楽演奏場面で演奏者に引き起こされる演奏不安は,多くの演奏家を悩ませる深刻な問題であり,その適切な対処法を探ることは急務である。本研究では,運動生理学・心理学・神経科学を組み合わせた学際的アプローチを用い,不安喚起がピアノ演奏のパフォーマンスに及ぼす影響について包括的に検討し,教育場面で役立つ実践的知見を得るとともに,情動が身体運動に影響を及ぼす機構の解明に寄与することを目指した。本年度は,「研究実施計画」に記載の通り,社会的評価ストレスがピアノ奏者の脳波に及ぼす影響に関する実験を東京大学駒場キャンパスにて実施した。昨年度実施した質問紙調査に基づき,低不安群8名,高不安群9名の計17名の熟練ピアノ奏者に参加してもらった。分析の結果,ストレス下での自律神経系反応(心拍数の増加)には群間で差がなかったが,高不安群においてのみ,唾液中ストレスホルモン(コルチゾール)濃度や筋活動強度が上昇するとともに,前腕の屈筋・伸筋が同時に収縮する傾向が強まったことが明らかとなった。さらに,こうした反応の違いの背景には,脳の感覚運動関連領域由来の律動波であるμ波の変化があることが示された。本研究成果より,演奏不安の悪影響を緩和するために,脳波ニューロフィードバックを利用できる可能性が示唆された。また,脳波の実験の分析と並行して,英国サセックス大学のHugo D.Critchley教授の研究室にて,健常被験者を対象として,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と脳波,心電図,筋電図を同時計測する実験を行った。空間解像度の優れた本実験データの詳細な分析により,不安による運動パフォーマンス低下を媒介する脳部位を特定することができると考えられる。研究実績の概要:
  182. 脳波を用いたユーザ適応型ヒューマンインターフェース(BCI)のシステム化 19560414 2007 – 2009 加納 慎一郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00282103) 研究開始時の概要:基盤研究(C) 研究概要: 研究成果の概要:従来の非侵襲計測によるBCI(brain-computer interface)で問題になっていたユーザへの適応性を改善する方法論を提案し,ユーザ適応性の高いBCI を実現するための手法を検討した.運動のイメージによって生じる脳活動を検出するBCI のための特徴抽出,パターン分類,ユーザ訓練の手法を脳波,近赤外分光法(NIRS),機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により検討した,また,事象関連電位を用いたBCI を開発し,そのユーザへの適用性の向上のための検討を行った.研究実績の概要:
  183. プライミング効果に対応したMEG応答を用いた多義的仮現運動における知覚交代の予測 07J03670 2007 – 2008 研究開始時の概要:特別研究員奨励費 研究概要: 研究成果の概要:我々は,先年度,武田研究室が有する440ch全頭型MEGを用いて,(1)多義図形の一種での知覚交替を予測する事,(2)その知覚が意図によりコントロール可能な事などを明らかとしてきました.成果(1)は本年度,生体磁気学会にて若手奨励賞を受賞しました.さらに,同学会の査読付き学会誌にて出版されました.さらに,日本機械学会から招待論文のご依頼を頂き,出版される事となりました.成果(2)は,英文雑誌への出版を直前に迎えている段階にあります.
    また,その解析技術を土台として,ATR(国際電気通信基礎技術研究所)との共同研究を行いました.ここでは,画像情報をオブジェクトカテゴリー情報に変更した上で,オフラインで高精度のクラシフィケーションに成功いたしました.この成果は,国際学会(Biomag2008)において,Young Investigator Award(U35)を受賞いたしました.
    さらに,先年度から開発を進めておりました脳信号をリアルタイムで画像もしくは音声刺激に反映させるニューロフィードバックシステムの改良(高速化など)を進めました.ニューロフィードバックの効果を調査する中で本年度の終了を迎える事となりましたが,近い将来にそのシステムを用いた波及的な成果が得られる事が期待されます.研究実績の概要:

rTMS療法を用いたうつ病治療に関する科研費研究

  1. 培養神経細胞を用いた反復経頭蓋磁気刺激法の効果機序の解析 2021-04-01 – 2024-03-31 池田 哲朗 青森大学, 薬学部, 准教授 (10360489) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は非侵襲的に脳内に電流を発生させ、うつ病、統合失調症、神経変性疾患や脳血管障害等による高次脳機能障害に効果があると考えられている。しかし、rTMSの作用機序は不明な点が多く、その解明は急務である。申請者は、rTMSがマウス脳内で抗うつ薬の作用するノルエピネフリントランスポーター(NET)を変動することを報告した。より詳細に神経様細胞PC12でrTMSの効果を調べたところ、NETとそのドミナントネガティブ型NETbを変動していた。そこで、NETとNETb遺伝子を神経細胞に共発現し、未知のシグナルカスケードが変動するのかどうかを調べる。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. うつ病へのrTMS治療の機序を解明し効果予測指標を確立する包括的神経生理学的研究 2021-04-01 – 2024-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:治療抵抗性うつ病に対するrTMS治療が2019年6月に保険収載されたことは精神科臨床において画期的なことであるが、臨床効果の個人差および邦人での治療エビデンスの不足という問題が指摘されている。本研究では、多施設で臨床データを共有して豊富な症例数のもとrTMSの治療効果を予測する臨床指標を探索し、さらに生物学的指標として神経炎症マーカ―、脳画像(構造・機能)、脳波を測定し、物質レベルの異常と脳構造的・機能的結合障害を評価してrTMS治療の生物学的基盤を明らかにし、治療反応の予測指標を確立する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. 反復経頭蓋磁気刺激による脳の長期的な可塑性誘導を支える神経生理学的基盤の解明 2021-04-01 – 2024-03-31 中村 晋也 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20570055) 小区分51010:基盤脳科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、近年本邦においてもうつ病治療の保険適用になるなど、精神・神経疾患に対する有用な治療法として注目されている。rTMS治療においては通常数週間に及ぶ施術によりその治療効果が現れることが多く、これは長期にわたる脳の可塑的変化によるものと推定されているが、その作用機序については不明な点が多い。そこで本研究では、サルをモデル動物とした基礎実験により、rTMSが脳の長期的な可塑的変化をもたらす神経生理学的基盤について直接的な科学的根拠を提供することを目指す。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. アセチルコリン/GABA機能に着目した老年期うつ病へのrTMS治療の有効性の検討 2020-04-01 – 2023-03-31 喜多 彬 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20735914) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要:本研究は2019年6月に保険収載された治療抵抗性うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療の有効性について、臨床的検討が不足している老年期うつ病への有効性を明らかにすることを目標としている。なかでも老年期うつ病に併存しやすい認知機能障害の病態を神経生理学的に客観的に評価することを目標にppTMSとSAIを用いてGABA機能、アセチルコリン機能を測定する点で独自性が高い研究であり、rTMS治療の生物学的基盤の解明につながる可能性がある。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 反復性経頭蓋磁気刺激による治療抵抗性うつ病の治療メカニズムの探索 2020-04-01 – 2023-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:薬剤治療抵抗性うつ病患者に対する反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)による治療の前後に、脳脊髄液・血液・唾液中のバイオマーカー、頭部MRI検査及び前頭葉機能検査を行い、それらの結果から認知機能障害を含むrTMSの治療効果のメカニズムを探索することを目的とした研究である。さらに、うつ病における神経炎症、特にミクログリアのうつ病における関与に着目し、得られた血液サンプルから作成できるミクログリア様細胞(induced microglia-like cells; iMG)のうつ病への関与について探索する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  6. 神経炎症・酸化ストレスに着目したうつ病へのrTMSの治療機作と反応予測指標の探索 2020-04-01 – 2023-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  7. rTMSの脳卒中後うつ改善効果と神経可塑性関連物質との関係性の調査 2021-03-01 – 2023-03-31 新見 昌央 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30760970) 若手研究(B) 研究開始時の概要:反経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)はうつ病に有効であることがわかっており、薬物治療とは異なる治療方法として、うつ病だけではなく、さまざまな神経疾患の新しい治療法として期待されている。しかしながら、rTMSによる治療効果がどのようなメカニズムによって生じているのかは不明な点が多い。そこで本研究では脳卒中後うつ患者においてrTMSの治療前後で生体内のバイオマーカーを測定することでrTMSが生体にもたらす影響を調査する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:運動療法によるリハビリテーション施行のために我々の施設に入院した30歳から90歳の慢性期脳卒中患者を対象とした。対象患者のうち、62名に対しては14日間のリハビリテーション治療と反復経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)の併用療法を行った。対象患者のうち、33名に対しては14日間のリハビリテーション治療のみ行った。治療前後のうつ状態の評価をBeck depression inventoryにて行い、治療前後の血液検体を採取した。採取した血液検体を用いて、NMDA受容体関連物質である、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、L-セリン、D-セリンの血中濃度測定を行った。その結果、Beck depression inventoryによるうつ状態の評価において、いずれの治療群でも治療前後で有意にうつ状態は改善していた。NMDA受容体関連物質の治療前後の血中濃度変化については、リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では、リハビリテーション治療のみを行った群に比して、血中のD-セリンが有意に減少していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群ではグルタミン、グルタミン酸、グリシンが減少傾向にあり、リハビリテーション治療のみを行った群では増加していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では血中のL-セリンは増加し、リハビリテーション治療のみを行った群では減少していた。
  8. マインドフルネスへの経頭蓋直流刺激tDCSによるオーギュメンテーション法の確立 2018-04-01 – 2020-03-31 西田 圭一郎 関西医科大学, 医学部, 講師 (40567567) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:「不安」や「恐怖」は危険な時に起こる感情で、状況を解決するために動き出す動機になるなど、生きていく上で必要かつ重要である。しかし、最近は社会の変化に伴い、人前で話す、といった今までと種類の異なる「不安」を感じる状況が増加している。
    過度の「不安」は健康的で充実した毎日を送る、という人として基本的な生活を送ることが難しくなることがある。また、苦手な状況を避け続けることで社会生活に問題を抱えると、不安障害やうつ病といった、色々な精神の病気を引き起こすことがある。つまり、健康な状態でも「不安」の調節はメンタルヘルス上重要となる。このような背景のなか、「マインドフルネス」というリラックス法が近年注目されており、専門書のみではなく、一般書でも取り上げられている。
    一方脳刺激法は臨床での応用を目指して様々な試みが行われており、経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation: 以下tDCS)といった手法が注目されている。tDCSは装置自体がシンプルであり、比較的小さく、安い、といった大きな利点がある。2000年代になりtDCSによって脳の神経細胞の興奮を抑えたり、上げたりできることが明らかになって以降、世界的に論文数が増えており、様々な効果報告が増えてきている。
    この研究の最終的な目的は「マインドフルネス」に「tDCS」を組み合わせ、相乗効果を生み出す手法の開発である。そのため、脳の神経ネットワークの変化に注目し、マインドフルネスと同時にtDCSを施行した時の神経活動や気分・感情の変化などを調べることを目的とする。
  9. T1w/T2w比画像と領域間時間ずれを考慮したネットワーク解析によるうつ病の研究 2018-04-01 – 2021-03-31 石田 卓也 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (10549728) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:今年度は、昨年T1w/T2w比画像を作成するために確立したMRI撮像プロトコルに基づいて、うつ病患者を含めたMRIの被験者の撮像を行なっている。また、T1w/T2w比画像を用いたうつ病の皮質ミエリン異常を示す脳領域間の因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法(Dynamic Causal Modelling)はこれまではstochastic modelという手法が用いられていたが、近年はより計算的に効率的でかつ正確なspectral modelの手法が開発されてきた。そこで、昨年度施行したHuman Connectome Project (HCP)から健常者100人の安静時機能的MRI画像を用いて3つのうつ病関連ネットワークである側坐核ネットワーク、扁桃体ネットワーク、腹内側前頭前野ネットワークとうつ病への治療として使用される反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の刺激箇所である左右背外側前頭前野(DLPFC)におけるDCM解析に新たにspectral DCMを行い、stochastic modelよりも安定した結果を得た。そこでは、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの機能的結合は主にうつ病関連ネットワークからDLPFCへの方向性を持った情報の流れから説明されることがわかった。さらに、もう一つの因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法であるGranger causal modellingの解析法を組み合わせることで、これまでの相関をとるだけの機能的結合だけではわからなかった、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの結びつきの左右差や、DLPFCがどのうつ病関連ネットワークにより結合しているかなどを見ることができることを示した。これは、うつ病患者のrTMS治療においてどの刺激箇所が最も効果が高いかを個人のうつ病患者ごとに予測できる可能性を示している。
  10. 経頭蓋磁気刺激誘発脳波を応用した薬物治療抵抗性うつ病の神経生理学的病態の解明 2018-04-01 – 2022-03-31 野田 賀大 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (20807226) 小区分51030:病態神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:2019年度は前年度以上にTMS-EEG実験の遂行が円滑となり、リクルートも順調に進んだ。2019年3月時点で、治療抵抗性うつ病患者の組み入れは、既に目標人数の30名に到達し、対照健常被験者は16名まで組み入れと実験を終えている。本研究では、TMS-EEG実験と同時期にマルチモーダルMRI撮像、研究採血、包括的臨床評価・認知機能検査も実施している。TMS-EEG実験では、左背外側前頭前野におけるコリン作動性神経生理機能(SAI)・GABAA作動性神経生理機能(SICI)・グルタミン酸作動性神経生理機能(ICF)・神経可塑性神経生理機能(PAS)パラダイムを実施しているが、これらの生物指標・臨床認知尺度も網羅的・包括的に測定している。現時点でのプレリミナリー解析結果では、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、ICF指標におけるグルタミン酸作動性興奮機能が相対的に上昇している可能性が示唆された。また、PAS指標による神経可塑性機能に関しては、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、神経可塑性の誘導発現が低下している可能性が示唆された。この結果は、我々の先行研究結果(Noda et al., Depress Anxiety. 2018)を再現するものとなった。
  11. 多発性硬化症の認知機能障害に対する、経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の開発 2018-04-01 – 2021-03-31 中辻 裕司 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20332744) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:多発性硬化症(MS)患者に対して疾患修飾薬(DMD)の早期使用により、ある程度の脳萎縮進行予防効果が期待されるが、高次脳機能障害を改善できるエビデンスレベルの高い報告は無い。また視神経脊髄炎(NMOSD)も病初期から認知機能障害を呈し、有効な治療法が無い。経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)や、経頭蓋直流電気刺激療法(tDCS)はワーキングメモリー機能、脳活性化、脳の機能的接続性を高めるという報告があり、本研究ではMS、NMOSDの高次脳機能障害に対してrTMSを用いる予定であった。しかし、より非侵襲的かつ簡便であり、将来の汎用性が高いと考えられ、さらに当院での使用経験が豊富なtDCSを用いてその有効性を検証することを目的とし、以下の方法で本研究を遂行するものである。
    富山大学附属病院脳神経内科外来に通院あるいは入院されているMSおよびNMOSDの患者で本臨床研究への参加に書面で同意をいただいた患者を対象とし、2週間の経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を施行し、療法の前後で高次脳機能を評価し、その効果を検証する。ベースラインの評価としてtDCS療法前に認知機能評価をRao’s Brief Repeatable Battery of Neuropsychological Tests (BRBN)、疲労度を簡易倦怠感調査票 (BFI)、うつをベックうつ病調査表 (BDI)、重症度を重症度分類総合障害度(EDSS)で評価する。また認知機能に関連した異なる脳領域の機能的接続性の評価はresting stateでfunctional MRI (fMRI) を用いて行う。BRBN、BDI、BFI、EDSSはtDCS療法終了直後(2週)、4週、および12週に再評価し、MRI/fMRIは4週に再検する。
  12. ナビゲーションシステムを用いた小児期発症てんかんに対する反復経頭蓋磁気刺激療法 2018-04-01 – 2021-03-31 下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (60403185) 小区分52050:胎児医学および小児成育学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:小児期発症の難治てんかんの治療としての反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の可能性について検討する研究である。 rTMSは刺激頻度を低頻度刺激にすることにより神経活動を抑制的導き、一方高頻度刺激をすることにより神経活動を興奮性にも誘導することができる。成人領域においてはうつの治療として保険適応があり、重篤な副作用もなく安全性も検証されている。また脳卒中後のリハビリテーションにおいて神経疎通性の向上のためにリハビリと組み合わせてTMSを行うなど様々な疾患に対象を広げている。一方、小児におけるTMS治療の経験は我が国ではほとんどなく、またてんかんの治療として使う場合にはてんかん原性領域あるいはてんかん活動の広がりを見据えた領域を対象として刺激を行う必要があるため、ナビゲーションシステムを用いてターゲットを絞って刺激することが望ましい。従って、小児期発症のてんかん治療に用いる場合にはこれらの技術的な点において課題は多い。当院ではrTMSシステムを導入し、成人においてrTMSをナビゲーション下で行うことはできるようになった。思春期以上の小児においても有害事象なく行えることを確認した。ただし刺激閾値を設定するためのMEPにはばらつきが大きく安定しないことがわかった。患者の状態および施術者の技術的な要因が考えられる。治療前後には脳波の比較により治療効果を判定する必要があることからてんかん患者の他の様々な治療の前後における脳波の解析を行い、spike rate、周波数解析を含めた指標の変化について検討を行っている。
  13. rTMSによる顕著性回路を介したアンヘドニアの治療メカニズムの解明 2018-04-01 – 2021-03-31 小高 文聰 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10349582) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究計画は反復経頭蓋磁気刺激療法による「アンヘドニア」の治療メカニズムを探索することを目的としている。その評価に安静時機能的MRIを用いたlarage scale networkの評価と、行動指標として「アンヘドニア」にかかわる精神症状の評価と「handgrip force task」と名付けた持続握力計を用いた行動モデリングを行う予定であった。
    2019年度は治療抵抗性うつ病に対して、反復経頭蓋磁気刺激療法の治療前後の安静時機能的MRIの測定を開始した。
    神経画像の撮像に関しては、事前に撮像データのノイズ低減のための撮像パラメータ調整を行った。その結果、撮像時間を短縮しつつ位相によるノイズを大幅に減することが可能となった。被験者のエントリーは堅調に推移しており、2020年度に20例前後のデータセットが集まり次第、予備解析を行いsalience network内の脳領域の機能的結合解析を行う予定である。ドパミンあるいはノルアドレナリン神経系の機能的結合抽出のために、神経メラニンの撮像も行っている。
    行動指標に関しては、気分障害を対象として抑うつ症候とドパミン神経系にかかわる行動、特にアンヘドニアを反映する精神尺度である「SHAPS」との関係を調べるための予備評価を行った。結果は現在解析中である。「SHAPS」を用いた症状尺度に加え、アンヘドニアを測定するためのhandgrip force task(HFT)を用いる予定であった。HFTは健常者への予備実験の段階で、握力計の把持について患者負担が大きいことが予測されたため、被験者への導入は一時見送る形とし、質問紙によるeffort discounting課題に切り替えを行う予定である。
  14. うつ病重症度や自殺願望を予測する新たな臨床検査法の確立 2018-04-01 – 2021-03-31 瀬戸山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (30550850) 小区分52010:内科学一般関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:メンタルヘルス分野に対する客観的な臨床検査法の開発が世界規模で望まれている。我々は、質量分析装置を駆使し、臨床検体を用いた新たな検査技術の開発およびそれに基づくバイオマーカーの探索に取り組み、これまでに、未服薬のうつ病患者の検体から重症度に関連する代謝物バイオマーカーを発見するとともに、血しょうの「遊離型代謝物」に着目した新たなバイオマーカーの実証研究を進めている。検体は引き続き九州大学病院精神科との共同研究によって収集された未服薬の大うつ病患者および健常者からの血しょうを用いている。今年度は、遊離型代謝物の結合タンパク質探索を進める一方で、個々人の性格(パーソナリティ)情報を用いた層別化がうつ病の血液バイオマーカーの性能を高めるという新たな発見に遭遇し、当初想定していた以上の研究成果を得ることができた。
  15. 治療抵抗性統合失調症における興奮抑制バランスの破綻:TMS-EEG/MRS研究 2018-04-01 – 2022-03-31 中島 振一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60383866) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:慶應義塾大学病院だけでなく関連病院の協力を得て、順調に被験者のリクルートを進めている。現時点で本研究に関する有害事象、実施計画書からの逸脱は認められていない。また脱落例も認められていなく、本研究における研究全体の基本的な手順は遵守されていると判断する。TMS誘発脳波研究の実験系を確立し、その後、TMS誘発脳波の解析パイプラインを確立し、GABA(A)受容体介在性神経生理機能(short-interval intracortical inhibition: SICI)検査およびグルタミン酸NMDA受容体介在性神経生理機能(intracortical facilitation: ICF)検査の指標を定量化することが可能となった。
  16. うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激の有効性と効果予測に関する研究 2017-04-01 – 2021-03-31 大久保 裕章 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50792115) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation; rTMS)のうつ病への治療効果を包括的に検証することを目的とする。近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy; NIRS)VBM(Voxel Based Morphometry)を用いて、rTMSの有効性判定におけるNIRSの有用性および脳形態との関連を明らかにするものである。本研究により、うつ病に対するrTMSの有効性を予測することが可能となれば、rTMSを新たな治療の選択肢として患者に提供できるようになることが期待できる。
    これまでに得られた結果の一部について検討し、平成29年6月に開催された第113回日本精神神経学会学術総会にて「うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激法の効果の検討」を発表し、優秀演題賞を受賞したことについては前年度の同報告で述べた通りである。現在、うつ病症例をさらに多数収集し、結果を論文化することを目標としている。
  17. 経頭蓋磁気刺激の精緻化と個別化によるうつ病に対する有効性向上に向けた探索的研究 2017-04-01 – 2019-03-31 柴崎 千代 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 助教 (10790561) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:近年、脳活動をより選択的に操作する方法として経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に大きな注目が集まっているが、反復TMS(rTMS)治療による反応率は30%程度に留まる。本研究は、薬物治療抵抗性のうつ病患者に対して事前の脳活動の評価と単発TMS刺激(sTMS)による脳活動予測マップで想定される変化に基づき(個別化)、脳MRI画像検査とナビゲーションシステムを用いてrTMSを適切な刺激部位と刺激方向にかけるをすることで(精緻化)、予想された脳活動上の変化およびうつ症状の改善がえられるかを探索的に検証する。うつ病患者に対してrTMSの精緻化と個別化により、脳活動上予想された変化が確認でき、うつ症状の改善率の向上が図れれば、rTMSの治療効果の改善だけでなく、うつ病の神経生理学的な理解につながる基礎的知見を得ることができ、学際的な貢献も極めて高い。
    平成29年度は健常者に対して、研究用3T MRI(SIEMENS社)を用いて刺激部位の特定用の脳構造画像(sMRI)、TMS前の脳活動評価として全脳の安静時機能画像(rs-fMRI)および白質の繊維走行を評価するために拡張テンソル画像の撮像を行い、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。MRI室内で使用可能なコイルを使用しMRI室内でsTMSを施行し、sTMS刺激中の刺激部位(左前頭前野)と脳深部(線条体)との脳活動の同期性を確認した。
    平成30年度は、前年度の結果を応用し、うつ病患者に対して、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。ナビゲーションシステムを用いて設定した部位を正確に特定し、rTMSを計20回行い、症状評価とrTMS前後での脳活動の変化を確認した。また、有害事象評価表を用いて有害事象の発生状況を確認し、有害事象の発生は認めなかった。
  18. ヒト前頭前野の可塑的変化に基づく脳刺激の最適化と個別化 2017-04-01 – 2021-03-31 中村 元昭 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:令和元年度は、RCTの解析を実施して、研究計画を一部変更して発達障害者を対象としたデータも取得した。うつ病患者計25名が反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)のRCTにエントリーして、7名はエントリー基準に合致せず、18名が3群にランダマイズされた。rTMS介入の前後において、頭部MRI、DTI、脳波のデータを縦断的に取得した。rTMSの総セッション数は、347セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が24.2%認められ、脱落者は1名であった。安全性情報に関しては、脳プロ・DecNef安全性検討委員会に定期報告を行い、外部委員の判断も含めて、安全性に問題のないことを確認することができた。刺激プロトコールとしては、iTBS(間歇性シータバースト刺激)やQPS(反復単相性4連発磁気刺激法)といった新規性の高い刺激プロトコールを安全に実施することができた。有効性に関しては、3群共に有効性が示されたが、QPSによる有効性が最も優れていた。認知機能については、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)、言語流暢性課題、対連合記憶課題、作動記憶において有意な改善が認められ前頭葉機能との関連性が示唆されたが、刺激プロトコールによる違いは認められなかった。また、発達障害当事者13名と定型発達者16名に対し、iTBS・cTBS・シャム刺激のrTMSを行い、その前後で実行機能、注意機能を評価した。rTMSの総セッション数は、87セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が19.2%認められ、脱落者は0名であった。
  19. 反復性経頭蓋磁気刺激による大うつ病の治療メカニズム及び治療反応性予測因子の探索 2017-04-01 – 2020-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:2013年8月より治療抵抗性うつ病患者に対しrTMSを開始し、2020年3月までで、32症例に対しrTMSを実施した。これまでの検討から、rTMS治療により一部の前頭葉機能の改善及び異方分画性(fractional anisotropy: FA)の増加を認めたものの、前頭葉機能の改善とFAの増加との間には相関を認めなかった。また、rTMS治療によって、rTMS治療前後で炎症性サイトカイン単独(IL-1β, IL-6, TNF-α)では有意な変化を認めなかったが、一部の認知機能の変化量とIL-1βの変化量とが有意な相関を認めた。研究実績の概要:
  20. 認知症治療薬はミクログリアを含む脳神経血管機構にどう作用するのか 2017-04-01 – 2020-03-31 溝口 義人 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60467892) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アルツハイマー型認知症(AD)の治療で最も用いられている認知症治療薬ドネペジルには病態そのものを改善する働きはなく、進行するもの忘れに対して対症療法的にしか働かないものと報告されている。しかし、それらの報告は脳内のグリア環境を想定せず、ニューロンにのみ着目した知見による。本研究により、ドネペジルは脳内の免疫担当細胞であるミクログリアに直接働き、ADを発症させる引き金となるアミロイドβの貪食能(除去する能力)を増強する働きも持ち合わせている可能性が高いことを初めて報告した(Haraguchi, Mizoguchiら,J Neuroinflammation 2017他)。研究実績の概要:
  21. 非侵襲脳刺激法の統合失調症治療にむけた臨床症状及び客観的指標での検証 2016-04-01 – 2019-03-31 池田 俊一郎 関西医科大学, 医学部, 助教 (40772231) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:近年、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)が注目されているが、本研究では統合失調症の認知機能障害、精神病症状に対するtDCSの有効性、安全性を検証し、臨床応用にむけたエビデンスを構築することを目的とした。うつ病患者への研究も行い国内外の学会で発表した。また、Clinical EEG and NeuroscienceとClinical Neurophysiologyなどを中心に筆頭著者として3本、その他、共著者として論文化した。結果としては、tDCSの統合失調症への効果は限定的であり、また、実験的な段階であることがわかり今後もさらに症例・経験を積むことが必要である。研究実績の概要:
  22. うつ病を伴う強迫性障害に対する経頭蓋磁気刺激法の神経画像研究 2016-04-01 – 2019-03-31 中前 貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50542891) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では強迫性障害(OCD)に対する反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性について文献的考察を行った。刺激部位の候補として、背外側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、補足運動野が考えられたが、現時点ではどの刺激部位が最適かを結論付けることができず、さらなる知見の蓄積が必要と考えられた。
    また、OCD病態生理を解明するために、OCD群と健常群の拡散強調画像について、脳内の主要な白質線維を自動的に描出する解析手法を用いて比較したところ、OCD群における大鉗子と帯状束の異常が見出された。OCDの病態には皮質-線条体-視床回路以外の後頭葉や側頭葉領域も関与している可能性が示唆された。研究実績の概要:
  23. 「コグニティブライフシステム」の創出を目指して 2016-04-01 – 2020-03-31 野田 隆政 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医長 (50446572) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:衝動性の神経基盤に関する検討を行い、事象関連電位において課題提示から300ms以降に生じる脳活動(P300)が衝動性のコントロールに関連している可能性を確認した。安静時の脳活動を利用していた従来のニューロフィードバック(Neurofeedback: NF)手法を改良し、課題中にフィードバックするタスク型NFを開発した。効果検証試験においてもタスク型NFは脳活動の良好な変化を認めた。また、タスク型NFトレーニングは従来法よりも短い期間で効果が発揮されることも分かった。また、NFと併用することで増強効果が期待できる知覚感度に関する自律神経系フィードバックを考案した。研究実績の概要:
  24. 神経ネットワークに着目した治療抵抗性うつ病へのECTとrTMSの治療機作の解明 2015-04-01 – 2018-03-31 山田 信一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70549716) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:双極性障害(BD)群、うつ病(MDD)群においては、HC群と比較し、脳梁を含む広範な脳領域でFA値の低下が認められた。双極性障害(BD)群において平均FA値の低下と言語性記憶課題の低成績との有意な相関が認められ、うつ病(MDD)群において平均FA値の低下と数字順列課題・トークン運動課題・符号課題の低成績との有意な相関が認められた。本研究の結果は、気分障害では白質神経線維の微細構造という解剖学的なレベルの異常が共通して存在し、それぞれにおいて特異的な認知領域と関連していることを示唆する。研究実績の概要:
  25. 口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激による治療戦略 2015-04-01 – 2019-03-31 成田 紀之 日本大学, 松戸歯学部, 客員教授 (10155997) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、口顎ジストニアのQOLならびに皮質活動性に対する一次運動野への経頭蓋磁気刺激の効果を検討した。口顎ジストニアは、健常者と比較して、Symptom Checklist-90-R(SCL-90R)による抑うつと身体化、ならびに口腔QOLと身体QOLに有意な変調を示した。口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激は、術前と比較して、SCL-90Rによる抑うつと身体化、口腔QOL、さらには皮質活動性(運動前野と補足運動野、一次感覚運動野)に有意な改善を示した。以上のことから、口顎ジストニア患者への経頭蓋磁気刺激は、精神心理、口腔QOL、一次感覚運動野口顎領域の皮質活動性に有意な改善を示唆した。研究実績の概要:
  26. 治療抵抗性うつ病のGABA機能評価によるrTMSの治療機作と反応性予測指標の解明 2015-04-01 – 2019-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究開始当初の目的は、治療抵抗性うつ病におけるGABA機能の障害を示し、GABA機能の障害とrTMSへの反応性の関連を明らかにすることであったが、脳の機能障害の評価には新しい脳構造・機能画像解析を用いて脳内神経ネットワーク障害でも評価することとした。うつ病に対するrTMSが治療機器の国内承認が遅れたために延期となり、脳構造・機能画像解析によるrTMSの作用機作と治療反応性の予測指標の解明を優先した。これにより、精神疾患に対する種々の脳構造・機能画像解析法を開発するとともに、それらの手法によって精神疾患の病態研究について多くの研究の成果を得ることができた。研究実績の概要:
  27. うつ病患者の自伝的記憶の概括化に対する治療法の検討 2015-04-24 – 2018-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究は順調に進捗し,成果をあげることができた。本年度は最終年度にあたるため,前年度から引き続き収集されたデータを統合的に解析しまとめた。具体的には,うつ症状を有する者および健常被験者を対象に,これまでの申請者の検討で治療の有効性が示唆された行動活性化プログラムを適用し,その前後で記憶の概括化の評価とfMRIによる脳機能測定を実施した。当該プログラムではその個人にとって快感情が随伴するような行動を特定し,それを増やす計画を作成・実施しながら行動を活性化することを目的として作成された心理療法プログラムである。よりうつ症状の高い症例については,将来の目標を設定しそれに沿った行動を増やすことで回避行動を減らすプログラムも加えられた。これらのプログラムはうつ病の治療に効果があることが示されているが,同時に行動を増やすことで記憶情報が増え概括化が減少する可能性が考えられたため本課題に適用した。解析の結果,プログラム前後で記憶の概括化が減少した症例が一定数みられ,その改善度とfMRIによる安静時脳機能結合性評価の得点が関連することが明らかになった。これらの検討内容は現在,関連学術領域に公表すべく準備中である。近年,うつ病患者の再発要因としての記憶の概括化に対する介入の必要性が指摘される中,効果的な治療法の開発には至っていなかった。申請者の試みはいまだ先行例がなく行動変容による記憶の概括化の変化およびその神経基盤までも明らかにしようとしたものであり,再発が多いうつ病治療への新規介入提案が実現でき大いに有益である。
  28. うつ病の神経回路病態の解明とそのリモデリングに関わる基盤研究 2015-04-01 – 2018-03-31 山脇 成人 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特任教授 (40230601) 基盤研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的はうつ病の病態を局所の神経活動の異常および関連する神経回路の機能異常として理解し、神経回路のリモデリングによる治療法を解明することである。本研究の成果として、① 前頭前野と前帯状皮質を含めたうつ病患者の特異的な機能的結合の同定、②ラットの前頭前野の神経活動変化による行動変化の同定、③ラットの行動変化と前頭前野における電気生理学的変化との関連、④ ①から③の基礎検討を元にうつ病患者に対してNeurofeedbackを実践し、前頭前野と前帯状皮質の機能的結合の改善、を明らかにすることができた。社会実装の観点から今後さらなる症例の蓄積や方法論において修正を重ねていく必要がある。研究実績の概要:
  29. 統合失調症におけるアセチルコリン、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連 2014-04-01 – 2017-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的は、経頭蓋磁気刺激を用い、統合失調症のアセチルコリン機能、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連を検討することである。2連発経頭蓋磁気刺激(ppTMS)を用いたGABA/グルタミン酸機能の評価では、統合失調症における皮質興奮性の増強と認知機能障害、皮質興奮性の増強と罹病期間の関連が明らかになった。アセチルコリン機能の評価については、経頭蓋磁気刺激と正中神経の電気刺激を組み合わせ、アセチルコリン機能を反映するとされるShort latency afferent inhibition(SAI)の簡便な測定法の開発に取り組み、健常者を対象にデータを収集した。研究実績の概要:
  30. 経頭蓋磁気刺激による気分変調に伴う脳活動の変化のPET測定-霊長類モデル研究 2014-04-01 – 2017-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アカゲザルを対象として、内側前頭前皮質の腹側部(vmPFC)に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(lf-rTMS)を行い、それが抑うつ状態を誘発することを見出した。一方で、前帯状回後部(pACC)や、その他の領域にに対する lf-rTMS では、そのような症状が誘発されることはなかった。これら3頭のサルについて、内側前頭皮質腹側部刺激、前帯状回後部刺激、および、内側前頭皮質腹側部へのシャム刺激を行った後の、安静時脳活動を fMRI にて計測した。このデータの解析によって、正常時と抑うつ状態で、どのような脳活動の違いがあるのかが明らかになることが期待される。研究実績の概要:
  31. 慢性疼痛に対する反復経頭蓋磁気刺激のメカニズム解明 ラットモデルのfMRI解析 2014-04-01 – 2017-03-31 齋藤 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (20252661) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:難治性神経障害性疼痛に対して反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の需要が高まっている。本研究は11.7Tという高磁場のMRIを用いて、坐骨神経を結紮する慢性疼痛モデルラットの詳細な画像解析をして、その病態を究明し、rTMSの最適な刺激条件を同定することを目的とした。ラットにrTMSを施行するための麻酔や磁気刺激装置、筋電図の準備を整えた。7Tの先行研究に基づいた麻酔や撮像パラメータに準じて、11.7TのMRIでの撮像を行い、解剖的MRI撮影に成功した。しかし今回の11.7TのMRIは動物を縦入れするタイプのもので、持続した麻酔した状態のラットの安静時機能的MRI撮影を安定して行うことはできなかった。研究実績の概要:
  32. 脳部位間結合性の包括的な神経生理学的検討による統合失調症と気分障害の病態解明 2014-04-01 – 2018-03-31 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:統合失調症、大うつ病、双極性障害などの白質異常をMRIで検討した。MRI拡散テンソル画像/異方性係数FA、安静時機能MRI/機能結合解析、T1/T2比ミエリン強調画像を用いた。統合失調症ではミエリン障害が広範な領域で確認され、血中ω-3脂肪酸と認知機能が相関した。双極性障害と大うつ病では共に前頭葉を結ぶ脳梁でFA値低下が解析を変えても確認された。大うつ病ではFA値と実行機能、注意機能が相関した。双極性障害では左右半球・体制感覚運動ネットワークの機能的結合が躁病スケール値と相関した。次の課題はrTMS、ω3脂肪酸による神経ネットワークの改善と治療効果の確認である。研究実績の概要:
  33. 気分障害・適応障害における反復経頭蓋磁気刺激法を応用した鑑別診断法の検討 2014-04-01 – 2017-03-31 青山 義之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)に際する脳の反応性パターンに違いに基づき、気分障害(大うつ病性障害、双極性障害)、および適応障害の脳機能の特徴を明らかにし、鑑別診断への応用可能性を検討するものである。大うつ病性障害では、明らかな刺激中の反応を認めず、双極性障害では健常者と同様の変化を示し、適応障害でも健常者と同様の変化を示し、刺激時間として60秒間、120秒間の2設定の検討でも同様の反応を認めた。反復経頭蓋磁気刺激中の対側脳機能反応性は疾患特異的な反応を示していると考えられ,鑑別診断に利用できる可能性への示唆が得られた。研究実績の概要:
  34. 急性期脳卒中の内側皮質に対する深部rTMS 2014-04-01 – 2017-03-31 佐々木 信幸 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (60328325) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:急性期脳卒中の下肢麻痺およびアパシーに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の報告はない。21人の急性期脳卒中患者を無作為に高頻度rTMS群と偽刺激群に割り付け5日間連続介入を行った結果、下肢麻痺の改善はrTMS群で有意であった。次に13人の慢性期脳卒中患者を無作為にrTMS群と偽刺激群に割り付け、背側前部帯状回(dACC)~内側前頭前野(mPFC)へ高頻度rTMSもしくは偽刺激を5日間施行したところ、アパシーはrTMS群で有意に改善した。なお、この介入は急性期脳卒中患者のアパシーに対しても安全かつ有用であった。rTMSは急性期脳卒中に対する新たな有用なリハビリテーション介入と考えられる。研究実績の概要:
  35. 情動・注意の制御に関わる大脳皮質間神経回路の適応動態 2014-07-10 – 2019-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 生物系 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:注意や情動にかかわる大脳皮質間神経回路の動態をしらべるため、経頭蓋磁気刺激による局所神経活動の操作、および、広域的な電気生理学的計測を行った。注意に関しては、前頭連合野背外側部と運動前野背側部がそれぞれ、注意や作業記憶の視空間的および運動的な側面を担っていることが明らかになった。一方で、情動や気分の制御には、内則前頭皮質の腹側部がとりわけ重要な役割を果たしており、その機能の破綻が、うつ病などの気分障害につながることが示唆された。また、特に注意や作業記憶の機能の発揮には、前頭皮質から後部皮質へのトップダウン的な情報の流れが重要な役割を果たしていることも明らかになった。研究実績の概要:
  36. 広汎性発達障害における高次連合野の刺激応答特性と神経可塑性 2013-04-01 – 2016-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:TMS(経頭蓋磁気刺激法)と脳波を組み合わせた実験の方法論を確立し、定型発達者29名、自閉症スペクトラム障害者20名のデータを取得した。前頭前野へのシータバースト刺激(TBS)前後で経時的にTMS誘発電位と認知機能を測定した。定型発達者において、TBS群はシャム刺激群と比較して、TBS実施後10分~50分においてN45成分の振幅が増幅効果を示し、20分~40分において作動記憶の一時的な増強効果を示すことが確認された。その一方で、発達障害者においては、N45成分や作動記憶の増強効果を認めなかった。前頭前野の神経可塑性様変化において、定型発達者と発達障害者の間で顕著な違いを見出すことができた。研究実績の概要:
  37. うつ病及び摂食障害の認知柔軟性を高める経頭蓋的脳刺激法に関する研究 2013-04-01 – 2017-03-31 中里 道子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (10334195) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、神経性過食症患者を対象として,経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の効果を、過食衝動の頻度低下、食への渇望(craving)を用いた主観評価主観評価に加え、客観的な至適治療パラメータの検討を目的に、近赤外光スペクトロスコピー(NIRS)を用いて評価した。rTMSの刺激部位は、左前頭前野とし、10Hzの磁気刺激を、1セッション、合計1000パルスで実施した。rTMS実施2時間後に、食物画像を用いた課題に対する過食衝動等を0-10点で点数化し評価した。全症例に安全に施行され脱落例はなく、介入後に過食衝動が減少し、不安尺度の軽減、左前頭前野で課題遂行中のoxyHbの減少が認められた。研究実績の概要:
  38. 医療従事者の睡眠状態と脳高次機能についての生理学的研究 2013-04-01 – 2016-03-31 西多 昌規 自治医科大学, 医学部, 講師 (10424029) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:医療従事者の疲労・睡眠不足は、医療事故の温床である。本研究では研修医を対象に、当直前後での採血手技中の脳血液量変化を比較検討した。当直前後において、採血練習用の模擬血管を協力者に装着し、被験者に採血手技を行わせた。被験者にはウェアラブル光トポグラフィを装着し、関心領域を前額部付近として採血手技中の脳血液量変化を記録し解析を行った。当直後における2回の採血手技で比較したところ、2回目は1回目に比較して、右前頭前皮質領域の有意な血流量変化の減少が認められた。ヒヤリ・ハットに通じるイージーミスを発生しやすい神経学的証拠であると考えられた。研究実績の概要:
  39. 脳卒中後疼痛に対する脊髄刺激によるニューロモデユレーション 2012-04-01 – 2015-03-31 山本 隆充 日本大学, 医学部, 教授 (50158284) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:脳卒中後疼痛症例に対して、Dual-lead SCSを施行し、半身に刺激感覚を誘発することができた。また、モルヒネ、ケタミン、ラボナールを用いたドラッグチャレンジテストでは、ケタミンが有効な症例に脊髄刺激の有効例が多いことから、患者選択に有用であった。脳卒中後疼痛27例に対してDual-lead SCSを用いたテスト刺激を行い、21例(77.7%)に慢性植え込みを行った。慢性刺激開始後12カ月の結果では、excellent(60%以上VASが減少)4例、good(30-60% VASが減少)11例、fair (VASの減少が30%以下)6例で、15例(71.1%)で満足できる効果が得られた。研究実績の概要:
  40. 統合失調症の認知機能障害に対するrTMSの治療機作のGABA機能評価による検討 2012-04-01 – 2016-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:うつ病の新しい治療法である反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が、統合失調症の認知機能障害の治療にも応用されつつある。一方で、大脳皮質のGABA機能の障害が統合失調症の認知機能障害に関与する可能性が指摘されている。そこで、rTMSの治療機作やエビデンスを、ヒトの大脳皮質のGABA機能を評価できる2連発経頭蓋磁気刺激を中心に、rTMS刺激中の皮質の血流反応性、脳機能・構造画像などを相補的に用いて検討することを本研究の目標とした。時間的制約から、rTMS治療と各種の評価を並行実施する最終段階には至らなかったが、これらの手法を用いて統合失調症をはじめとする神経・精神疾患の病態等の研究に多くの成果を得た。研究実績の概要:
  41. 情動的ストレスによる心血管系の応答に対する圧受容体機能の役割 2012 – 2016 上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50264875) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:圧受容体反射経路と情動的ストレスの回路で、共通する箇所を神経解剖学的手法で探索することを探索することを目標とした。圧受容体反射弓除神経群とSham群で、不動化(情動的)ストレスで変化する領域として不確体や淡蒼球縫線核が抽出された。そこでより上位の自律神経から影響され、また圧受容体反射経路からは上位にあたると考えられる分界条床核(BST)に注目し、その求心路を逆行性トレーサーChlera toxin b subunit(CTb)をBSTに注入し、ストレス負荷を加え、CTbと神経興奮マーカーであるc-Fosとの二重染色を行い、mappingを行った。CTbをLSDの一部と中隔海馬采や三角中隔核に注入し、側脳室に漏れた。CTb陽性細胞としては、辺縁系として知られるD1・島皮質(GI)、帯状回(Cg)、下辺縁皮質(IL)、前辺縁皮質(PrL)、背側脚皮質(DP)やそれ以外の大脳皮質としも運動野(M1、M2)、感覚野(S1, S2)の場所に見られた。また、視床下部として腹側内側核(VMH)、視索前野(LPO, MPA)、ブローカの体格帯(HDB, VDB)が見られ、小脳皮質巣小葉(Sim)、中脳の淡蒼縫線核(RPa)の場所でも観察することができた。次にCTbとcFos二重陽性は中脳の青斑核(LC)、延髄の尾側オリーブ周囲核(CPO)、視床下部室傍核(PaLM)、視床下部外側核(LH)の場所で見られた。
  42. ヒト高次連合野の成熟前後における神経回路特性と神経可塑性の検証 2012-04-01 – 2014-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要:平成25年4月以降は、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と脳波を組み合わせたTMS-EEG実験(研究目的1および3)を中心に実施した(n=10)。TBSの前後でTMS誘発電位を測定したところ、N100、P180などの成分の振幅の経時的変化をとらえることができた。この予備的結果はTMS誘発電位が前頭連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を示唆した。平成25年9月以降は、被験者負担が少なくTMS-EEG実験に特化した実験環境を追求した。新しい実験システムと研究プロトコールによって、TMSアーティファクトの混入が劇的に低減され、TMS誘発電位の超早期成分(N45など)の解析が可能となった。新規プロトコールを用いて、健常成人被験者計13名のデータを取得して、予備的解析を行い、平成26年3月の領域会議にて次の2点を報告した。1)TBS前後でTMS誘発電位を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、N45成分の振幅においてTBSによる増幅効果が40分程度確認された。2)TBS前後で認知機能課題を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、TBSによる作動記憶課題の増強効果が40分程度確認された。
    本課題で検証されたTMS誘発電位を用いることで、前頭連合野の成熟前後で刺激応答特性や可塑性を比較することが可能となる。さらには、成熟への途上にある前頭連合野と共に過ごす思春期において、必要となる支援の方向性を提言できる可能性に期待している。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. rTMS・tDCSの定量的評価および治療応用システムの開発 2012 – 2013 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は脳の興奮性を変化させることができることから, うつ病, パーキンソン痛, 脳卒中の後遺症, 慢性疼痛, ジストニアなどの治療に応用されている. しかしながら, rTMSやtDCSの臨床応用に関する報告では, 疾患に対する効果や有効性は確認されているものの, 刺激を行う際の刺激条件が客観的に定められていないとう問題がある. そこで, 本研究ではrTMS・tDCSの刺激効果を定量的に評価し, 疾患を入力することで, rTMS・tDCSの最適な刺激条件が出力されるシステムの開発を行う.
    まず, 運動野において, μ波とrTMS・tDCSの刺激効果の関係性について調べた. その結果, μ波のERDは促進性の刺激であるAnodal tDCSにより, 有意的に増加し, 抑制性の刺激である1Hz110%RMT rTMSとCathdal tDCSにより有意的に減少した.
    次に, rTMSの刺激条件と刺激効果の関係性を調べるために, 抑制効果を誘発すると言われている1HzのrTMSを左半球の第一次運動野に与え, 運動誘発電位(MEP)を計測することで, 大脳皮質興奮特性の変化を評価した. 更に, その実験結果を用い, 重回帰分析によりrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 実験により, 刺激強度が強いほど, パルス数が多いほど, 抑制効果が強く生じることが分かり, MEPの振幅変化と刺激強度, パルス数の関係が非線形である可能性があることが分かった. また, 樹木モデルを計測データにあてはめ, 独立変数間の交互作用を調べた. その結果, 刺激強度とパルス数の間に交互作用がある可能性が示唆された. これらの結果から, 初期のモデルに, 刺激強度の二乗, パルス数の二乗, 刺激強度とパルス数の積を含むモデルを用い, 重回帰分析を行うことでrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 刺激の効果が被験者により異なることがある為, クラスター分析により被験者を分類し, モデルを分けて作成することで, モデルの精度向上を行った。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  44. 経頭蓋磁気刺激法の気分障害に対する治療プロトコールの最適化と神経可塑性変化の検討 2011 – 2012 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:薬物治療抵抗性のうつ病の患者群を対象として、反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性を厳密に調べるランダム化比較試験(RCT)のデザインを開発した。精度の高いシャム刺激を対照群として、複数の治療プロトコールの直接比較や、再発予防効果の検証が可能となる臨床試験である。現時点で RCT の被験者数は目標数に達していないため、rTMS前後の生物学的変化も含めた本研究の最終的な解析は RCT終了時点にて行なう。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 脳卒中後歩行障害に対する機能回復型ブレイン・マシンインターフェイス開発 2011 – 2013 竹内 直行 東北大学, 大学病院, 助教 (10374498) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:脳卒中患者の運動野に陽極経頭蓋直流電気刺激、麻痺側下肢の腓骨神経に機能的電気刺激を同時に行ったが歩行機能改善効果は認めず、ブレイン・マシンインターフェイス(BMI)を歩行障害の治療に応用するため経頭蓋直流電気刺激にて運動野の興奮性を変化させ、BMIに用いる下肢の感覚運動リズムを調節できるか検討を行った。経頭蓋直流電気刺激後の足運動イメージ時のβ帯域感覚運動リズム変化は健常者と下肢切断患者では異なり、BMIを歩行障害に応用するためには、興奮性・抑制性刺激を使い分ける必要があり、BMI情報の変動に対し経頭蓋直流電気刺激が有益である可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. 運動療法によるストレス緩和作用の神経基盤に関する生涯発達研究 2011-04-01 – 2014-03-31 酒谷 薫 日本大学, 工学部, 教授 (90244350) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:現代社会に蔓延するストレスは、様々な疾患の主要原因の一つである。本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、前頭前野の神経活動を計測し、自律神経系・内分泌系機能及び心理状態とともに、ストレスを客観的に評価する方法を開発した。さらに本法を用いて、中高齢者における運動療法のストレス緩和効果について検討し、軽い運動でもストレス緩和効果があることを明らかにした。さらに高齢者に軽い運動を負荷することにより、前頭前野のワーキングメモリー課題に対する反応性が上昇し、パフォーマンスが向上することが示唆された。本ストレス評価法と運動療法を組み合わせることにより、ストレス性疾患を予防できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 分子から社会までの統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援 2011-04-01 – 2016-03-31 笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:人間の精神機能は、自分自身を知り(自己意識・自我・メタ認知[=自分自身の認知・行動を対象化し、自己像として認識すること])、社会環境適応的な自己制御性を持つという、他の動物にない特長を持つ。ヒトの自己制御をその神経基盤も含めて包括的に解明し、それにもとづいて自己制御の形成・修復の支援方法を開発することは、精神疾患が急増していることを鑑みれば喫緊の課題である。本領域では、5年間の研究を通して、自己制御の障害を呈する思春期精神病理における神経基盤を明らかにし、自己制御の支援方法を具体的に提案することに成功した。研究実績の概要:
  48. アットリスク精神状態の介入指標の確立と病態解明を目指す縦断的TMS-NIRS研究課題名 2010 – 2012 辻 富基美 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10347586) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:幻聴や思考障害の基盤とされる上側頭回(STG)と前頭葉の結合性を検討するため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)中に刺激遠隔部で起こる血流変化をNIRSで測定した。対象は健常男性12名。左STG 後部をrTMS 中の左前頭部、右前頭部の血流変化をNIRS で測定した。左STG へのrTMS では、左前頭部、右前頭部において、シャム刺激中と比較し、実刺激中に有意に血流が低下した。本研究の結果から、TMS-NIRS がSTG -前頭葉の機能的結合性の指標となる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. 気分障害・適応障害の反復経頭蓋磁気刺激法に際する脳機能反応性の検討 2010 – 2012 青山 義之 群馬大学, 医学部, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴の検討,および適正な刺激条件の設定を目的とした。rTMS中の対側脳機能反応性は疾患群によって異なる反応を示し,その反応は状態像による相違を認めなかった. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. 経頭蓋直流刺激のうつ病治療の可能性についての研究 2009 – 2011 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:電気けいれん療法(ECT)に代わる治療法として期待されている左背外側前頭前野に対する反復陽性経頭蓋直流刺激(tDCS)の気分と認知機能に与える影響を検討した。健常男性に対し偽刺激を対照とするクロスオーバー法試験を実施したところ、視覚性再認記憶課題の正答率のみが時間とともに上昇しており、実刺激で開始した群で変化が顕著であった。これらの所見より、tDCSは特に有害な作用を示すことなく、視覚性再認学習機能を高める可能性が示唆され、うつ病の新たな治療法として検討を進める価値があると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. アットリスク精神状態の前向き追跡による神経生理学的介入指標の確立と発症機序の解明 2009 – 2011 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の病態仮説と関連するGABA系、NMDA系の機能を評価できる2つの神経生理学的検査を用いて統合失調症の発症早期群、超ハイリスク群を横断的に検討した。発症早期群において皮質のGABA機能の低下を認め、さらにワーキングメモリーの障害と相関することから、認知機能障害の軽減にGABA系の機能回復を目指す治療的介入が役立つ可能性が示唆された。超ハイリスク群では発症群と同様に皮質のNMDA系の機能低下が認められ、顕在発病前からの脳灰白質の体積の減少にNMDA系の機能低下が関与するとの仮説を支持した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 統合失調症と漢方-認知機能障害の治療と客観的神経生理指標の確立 2008 – 2009 正山 勝 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70364081) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究の目的は統合失調症の認知機能障害の治療を漢方製剤と生物学指標によって行うことである。最初に経頭蓋磁気刺激手法を応用したshort latency afferent inhibition(SAI)を統合失調症患者群と健常対照群で測定した。SAIは患者群で有意な低下を認めた。次に漢方製剤の抑肝散により、精神症状や認知機能の改善を認めた統合失調症、妄想性障害、皮質下認知症での症例を検討した。統合失調症の認知機能障害の治療において、漢方製剤や中枢性のコリン系伝達の評価が有用であることを示唆するものと考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 統合失調症の神経回路網の機能障害に対する連続経頭蓋磁気刺激の効果の検討 2008 – 2009 奥村 匡敏 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00464678) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:very late onset schizophrenia like psychosisの基準を満たす薬物治療抵抗性幻聴をもち、低頻度rTMS治療を行った62歳女性についてSPECTで評価した。同時に、我々はPANSSや幻聴スケールで精神症状とBACSで認知機能を評価した。rTMS前後の血流変化は3DSRTを用いて評価した。rCBFは側頭皮質で減少し、基底核で増加していた。認知機能では言語性記憶と運動機能が改善した。側頭皮質の血流減少は既報と一致しているが、基底核での増加はvery late onset schizophrenia like psychosisの病態に起因しているのではないかと考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. ナビゲーションガイド下経頭蓋磁気刺激の気分障害への治療応用と治療反応性の予測因子 2008 – 2010 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:目的:薬物治療抵抗性の気分障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の安全性、有効性と治療反応性を検討する。神経画像を用いてrTMS前後での脳形態の変化を調べる。
    方法:単極性及び双極性のうつ病を対象としてrTMSを計10セッション施行。刺激頻度は20Hz又は1Hzで、刺激強度は安静時運動閾値の90-100%、週の総パルス数は5000とした。頭部MRIと超音波によるナビゲーションを用いて前頭前野背外側面(DLPFC)を刺激した。
    結果:被験者51名(平均年齢:48.2歳、男36名、女15名)の中でrTMS開始前のハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)は12.9±4.6点で、rTMS終了後は8.0±5.1点であり、有意な改善を認めた(Z=5.88,p<0.0001)。治療前後で50%以上の改善を認めた群は41.2%で、25%以上50%未満の部分改善群は29.4%で、25%未満の非改善群は29.4%であった。前頭葉機能の改善も認められた(言語流暢性:Z=2.62,n=40,p=0.009)。重篤な有害事象は認められなかったが、33.3%において一過性に軽度~中等度の頭皮痛を認めた。治療反応性の予測因子としては年齢や運動閾値に加えて臨床像との関連が推測された。rTMS前後の脳形態変化は刺激部位である左DLPFC(t37=5.53,p<0.0001)を中心として前帯状回などにおいても灰白質体積の増加が認められた。さらには刺激部位を中心として両側DLPFCにおいて拡散係数の低下を認めた(t20=8.12,p<0.0001)。改善群と非改善群を比較した場合に、改善群において左DLPFCの体積増加と拡散係数低下が認められた。
    結論:非盲検デザインではあるが、ナビゲーションガイド下rTMSの安全性と有効性が示唆された。rTMS後の灰白質の体積増加や拡散係数低下はrTMSによる神経可塑性変化を示唆する所見であり、抗うつ効果発現との関連が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 反復経頭蓋磁気刺激と脳画像によるうつ病の治療反応性の解明 2008 – 2010 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:【実験1】ラットでのrTMS施行群ではControl 群と比較し、BrdU-positive cellsが有意に増加した。rTMSの抗うつ効果発現に海馬神経細胞新生が関与する可能性がある。
    【実験2】脳血流に関して難治性うつ病でのrTMS治療のレスポンダーでは治療前のCg25野の血流が上昇し治療後には低下した。rTMSによりCg25野が調節される可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 近赤外分光法による脳血流同時測定を用いた精神疾患の経頭蓋磁気刺激治療法の開発研究 2008 – 2011 岩瀬 真生 大阪大学, 医学系・研究科, 助教 (60362711) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 統合失調症と気分障害における意欲症状の脳基盤の解明と改善のためのNIRS研究 2008 – 2010 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症や気分障害における意欲症状の脳基盤を解明するために、MRI・NIRS・MEGを用いた検討を行なった。健常者においては眠気・疲労感・幼小児期の養育・協調性が前頭前野の体積や賦活反応性と関連すること、統合失調症の前頭極部機能が機能の全体的レベル(GAF)やσ1受容体・COMT遺伝子多型と関連すること、摂食障害の前側頭部機能が臨床症状と関連すること、双極性障害ではMMNm成分の潜時延長が認められることを明らかにし、前頭葉の体積や賦活反応性が健常者や精神疾患における意欲と密接に関連することを示した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  58. こころの健康増進のための脳機能自己モニタリング・システムの確立 2007 – 2008 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:脳機能の自己モニタリングを可能にするために、健常者を対象として頭部用の多チャンネル近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)装置を用いて大脳皮質の賦活反応性を検討し、さまざまな精神状態との関連を検討した。(1)頭皮上のNIRS測定チャンネル位置と標準脳における脳回との対応を確立し、fMRIやPETにおいてアーチファクトのために測定の信頼性が低いとされる前頭極部frontal pole(Brodmann 10野)についてNIRSの測定が可能であるという利点を明らかにした。(2)時間分解能が高いというNIRSの特徴を生かし、運動課題における大脳皮質の賦活反応性について、運動野については「課題区間における持続的な賦活」、体性感覚野については「課題開始時の-過性の賦活」、前頭葉については「課題区間における累積漸増的な賦活」、という時間経過の特徴があることを明ならかにした(Neurosci Res 58:297,2007)。(3)言語流暢性課題において、自覚的な軽度の眠気が前頭葉背外側面の内側部における賦活反応性と負の相関をすることを示し、高次脳機能の軽度の変化がNIRSデータに反映されることを明らかにした(Neurosci Res 60:319,2008)。(4)同じ言語流暢性課題において、自覚的な疲労感は前頭葉腹外側面の賦活反応性と負の相関を、検査前夜の睡眠時間が前頭葉背外側面の賦活反応性と負の相関を示し、眠気と疲労感の自覚はそれぞれ前頭葉背外側と腹外側によって担われることを明らかにした(Brain Res1252:152,2009)。(5)以上の結果から、「自然な状態における検査が可能」という特徴をもつNIRSは、健常者の精神状態の自覚の脳基盤を明らかにするうえで有用であり、脳機能の自己モニタリング装置として適切であることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  59. 脳磁図による機能画像を用いた統合失調症の磁気刺激療法の作用機作と有効性予測の検討 2006 – 2008 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の治療には通常薬物療法が選択されるが、今後期待されるその他の治療法のひとつに反復的経頭蓋磁気刺激療法がある。この治療法は幻聴や陰性症状の改善に有効である可能性が指摘されているが、その作用機作は不明であり、個々の症例での有効性の予測の指標も確立されていない。本研究では脳磁図を用いた時間分解能の高い脳機能画像を得る手法を確立するとともに、それを用いて本治療法の作用機作や有効性予測の指標を確立することを最終目標として基礎的な研究をおこない、いくつかの重要な成果を得た。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  60. 低頻度反復的経頭蓋磁気刺激の抗うつ作用と認知機能に及ぼす影響に関する検討 2005 – 2006 松本 直起 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60326361) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:難治性うつ病に対する反復的経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation、rTMS)の有効性と認知機能へ影響の検討を行った。rTMSのパラメータは直近の報告(Savitha E. Am J Psy 2007など)でも総パルス数が10000発以上が推奨されているため、本研究でも当初の予定より多くした。すなわち、左背外側前頭前野に対して、刺激強度は運動閾値の110%、刺激頻度10Hz、刺激時間5秒間、1日刺激総数1000発、刺激日数15日間、総刺激数15000発とした。症例の取り込みのためにマスメディアなどを通じて啓発活動を行った。最終的に応募者の中から除外基準に抵触しない数名の難治性うつ病患者を抽出し本研究を行った。結果は、約半数の患者においてうつ状態評価尺度であるHAM-Dスコアの軽度から中等度の改善(開始時スコアの50%以上の低下)を認めた。またその改善は、刺激期間終了後も2ヶ月にわたって持続した。Frontal Assessment Battery (FAB)、Wisconsin Card Sorting Test (WCST)による評価で認知機能に悪影響は認めなかった。また臨床上も問題となる副作用はなかったが、刺激部位の不快感ゆえ脱落する症例があった。
    既報でも難治性うつ病患者に対するrTMSの有効性は着実に追試されてきており、薬剤抵抗性の症例や高齢者において有効な選択枝となりつつある。今後も症例を重ねて有効性と安全性に関するエビデンスを集積していく予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  61. 経頭蓋磁気刺激による統合失調症患者の大脳皮質の抑制・興奮性の検討 2005 – 2006 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の生理学的指標の開発を目指して、2連発刺激による抑制効果を統合失調症患者で検討した。2連発経頭蓋磁気刺激pp-TMSで大脳運動野のGABA神経機能を、また2連発聴覚性驚愕反応(prepulse inhibition : PPI)でNMDA受容体機能を検討した。
    pp-TMSでは2,3,4msの短間隔刺激による抑制効果(SICI)と10,15msの長間隔刺激による側通効果(LICF)を検討した。刺激強度は1発目80%MT、2発目130%MTとした。統合失調症患者群は健常群と異なりSICIで障害を認めた。SICI障害は定型抗精神病薬服用群、症状重症群、認知・社会機能低下群で強く、病形では解体型で強く妄想型で軽症となる傾向があった。一部の患者ではstate markerとなる可能性が見られた。
    PPIは刺激間隔60,120,480,2000ms、一発目20ms、82dB、2発目40ms、112dB、背景雑音70dBとした。統合失調症群はISI60ms,480msにおいて有意な障害を認めた.患者背景(発症年齢、罹病期間、薬物クロールプロマジン換算量、ニコチン量)、精神症状(PANSS,GAF)、認知機能(MMSE,FAB,ATMT)との有意な関連は見出せなかったことよりtrait marker候補と考えられた.他方、olanzapine単独服用群は定型薬服用群よりPPI障害が有意に小さかったが、統制研究ではないため薬理作用によるものと結論するには至らなかった。
    この研究によりpp-TMS,PPIはそれぞれstate marker, trait markerの候補となる可能性が得ら眼球追跡運動なども含め、早期統合失調症の早期介入、初発統合失調症の最適治療管理など臨床への応用開発を目指す予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  62. 反復経頭蓋磁気刺激法による発現変動遺伝子の解析 2004 – 2005 池田 哲朗 理研, 研究員 (10360489) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域では長年電気痙攣療法(ECT)が行われてきたが、最近ではより安全で非侵襲的代替療法として、磁場を応用した反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS : repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)の有用性が、多くの臨床的研究で示されている。特に、難治性うつ病、気分障害、統合失調症(精神分裂症)、アルツハイマー病、パーキンソン病等の患者で、磁場刺激による症状改善報告が示されている。磁場刺激後の変動遺伝子の解析をGeneChipで現在解析した。その結果、モノアミン神経系に関与するモノアミントランスポーターに変化があった。モノアミン神経系は上記疾患と深く関わることが知られており、rTMS刺激後のモノアミントランスポーターの機能解析を行った。モノアミントランスポーターは、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミントランスポーター(DAT)、ノルエピネフリントランスポータ(NET)からなり、シナプス前膜部から放出されたモノアミン神経伝達物質を再取込みし、シナプス伝達を終結させる重要な細胞膜蛋白である。20日磁気刺激後、マウス脳においてSERT mRNA,[3H]Serotonin uptake, [3H]Citalopram bindingはいずれも増加した。一方、DAT, NET mRNA, [3H]Dopamine, [3H]Norepinephrine uptake,3H]Nisoxetine binding(not [3H]GBR12935 binding)は増加した。これらのことは20日磁気刺激がモノアミントランスポーターを変化させることを示しており、モノアミン神経系が関与していると考えられている上記疾患へのrTMSの分子メカニズムを提供するものと考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  63. Restless Legs syndromeに対する高頻度磁気刺激の治療応用 2004 – 2005 佐久間 研司 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (70311199) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激(TMS)は非侵襲に中枢神経を刺激して錐体路機能評価の他に,うつ病をはじめとする精神疾患やパーキンソン病,脊髄小脳変性症,神経リハビリテーションなどの治療目的で臨床応用が期待されている.体性感覚誘発高周波応答(high frequency oscillation ; HFO)は体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential ; SEP)のN20の主にascebding slopeに重畳する500-800Hzの電位である.前半部は視床,視床皮質路由来であり,後半部はBA 3bの第4層にあるGABA抑制性ニューロン,又は第3層にあるChattering錐体細胞などが起源であると推定されている.
    Theta burst stimulation(TBS)は動物実験ではシナプスの可塑性に影響を与えることが知られ,ヒトの運動野に対するTBSでは数十秒から数分の刺激によって運動神経シナプスの可塑性に影響を与えることを証明し,効果が数十分から一時間程度持続することがわかっている.非常に短時間の刺激で脳の可塑性に変化をきたす方法の治療応用への可能性を検討するべく本年度においてはTBS前後における体性感覚誘発電位の変化について検討を行った.18人の健常成人を対象とし,TBS前後での両側正中神経刺激にてSEPを測定した.SEP測定の方法については平成16年度のものを踏襲した.TBSは200msec間に50Hzの刺激を3回行うことをひとつの単位とし,それを2秒間刺激して8秒間休むを繰り返し合計600回刺激するまで継続する方法をiTBSとし,連続的に600回刺激する方法をcTBSとした.刺激部位はM1とし,刺激強度は80%AMTとした.
    Motor evoked potential(MEP), Short-latency intracortical inhibition(SICI)はiTBSでは増大傾向,cTBSでは減少傾向を認めた.HFOについてはiTBSにて刺激側で有意に振幅増大を認めたが,cTBSについては有意に減少した.
    TBSではMEPとSICI,HFOの動きが相関していた.SICIにはGABA抑制性ニューロンが関与しているとされており,HFO, SICIの両者に同方向め変化をきたしたことはTBSによりGABA抑制性ニューロンへの変化をきたすと考えられた.HFOの変化についてはiTBSによる促通効果は前半部に強く,cTBSによる抑制効果は後半部に強く見られた.HFOの前半部は視床,視床皮質路など皮質下由来であり,後半部は皮質領域由来と考えられ,TBSではまず表層に近い皮質神経細胞の可塑性に変化を与えて,二次的に深部である皮質下領域に影響が伝播する可能性があると考えられた.
    平成16年度の結果と合わせ,TMSにはSensorimotor integrationをmodifyする作用が確認できた.Restless legs syndrome(RLS)において磁気刺激治療を行った.運動閾値,MEP振幅,SICIについては健常人と差がなかった.M1への10Hz,1500発の治療を行った.
    足が勝手に動く症状,RLSの自覚症状,QOL, CGI(Clinical Global Impressions)について問診により変化をたずねた.結果としては明らかな前後での変動は認めなかったが副作用も認めていない. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  64. 脳磁図と反復的経頭蓋磁気刺激による統合失調症の幻聴発生機構の解明と治療法の開発 2004 – 2005 石井 良平 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40372619) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMSを用いて、視床痛などの求心路遮断痛患者7症例について、患側の第1次運動野や前頭前野に与えたrTMS(1Hzまたは10Hz)の治療前後でのMEG、EEG、SPECTの変化と治療効果との比較検討では、MEG、EEGの改善は疼痛症状の改善と関連なくほとんどの症例で認めるのに対し、SPECTの改善は疼痛の改善を伴う症例に多く認める傾向がみられた。このことは、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法が血流変化を測定するSPECTよりもより鋭敏にrTMSによる脳活動の変化を捉えている可能性を示唆している。今後、rTMSの種々の刺激条件と、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化の相関を詳細に検討していくことが必要であると考えられた。
    MEGの空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で機能画像化し、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した結果、DLPFCでの活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となった。このことから、統合失調症患者において、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症群においても入力-組織制御-出力という脳内神経ネットワーク上の基本的な情報処理過程の流れは保たれていることが示された。今後は、統合失調症患者の左DLPFCの機能不全をrTMSによって活性化させることで、幻聴症状にどのような治療効果がもたらされるのかをMEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化との相関も会わせて、詳細に検討していくことが必要であると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  65. 脳磁図による脳機能画像法を用いたアスペルガー症候群の社会機能障害の神経基盤の研究 2004 – 2005 廣常 秀人 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70346203) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムの一角をなす発達障害の一群である。最近、複数の重大犯罪に本症候群の患者がかかわったと判断されて社会問題となる一方、本症候群の病態が誤解される恐れが指摘されるなど、本症候群の病態を科学的に解明し、治療・介入・教育方法を確立することが急務となっている。本研究では、アスペルガー症候群の中心症状である社会性の障害の神経基盤を、脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群の病態メカニズムを明らかにするために、本症候群に特徴的な高次機能障害に関連するMirror Neuron課題(模倣、感情の伝達や共有などの情動・認知能力に関連する課題)を用いて、我々が独自に開発してきた脳磁図の空間フィルタ解析による脳機能画像法により、脳内の各領域の健常群との神経活動の差異とともに、脳内神経ネットワーク全体の障害を時間・空間的に検討することかできた。MEGのSAMを用いたpost-movement ERS研究によって、成人Asperger disorder患者におけるMirror neuron systemの障害を捉えられる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  66. 反復性経頭蓋磁気刺激のうつ病治療に対する有用性と作用機序についての研究 2004 – 2005 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激法repetitive transcranial magnetic stimulation(rTMS)の有用性と脳内^<11>C-raclopride結合に与える影響を検討した。薬物療法に反応を示さなかったうつ病の患者9名(男性4名、女性5名;平均年齢36.4±6.1歳)を対象とした。刺激部位は左背外側前頭前野とし、1回のセッションにつきmotor thresholdの100%の強度で10Hzの刺激を計1000発、合計10セッションを2週間で行った。症状評価には、Hamilton Rating Scale for Depression(HRSD)とBeck Depression Inventory(BDI)を用い、治療前後の認知機能の評価として、Mini Mental State Examination、Wechsler Memory Scale-Revised中の視覚再生と言語性対連合、Trail Making Test、生活健忘チェックリストを使用した。また、治療前後で尾状核と被殻の^<11>C-raclopride結合をPETにより測定した。rTMSにより、HRSDは17.4±2.6点から10.4±6.0点に、BDIは20.7±6.6点から13.6±7.7点にそれぞれ減少した。5人の患者が軽度の頭痛を訴えたがまもなく改善し、他の副作用は認めなかった。また、治療前後で認知機能の悪化は認めず、言語性対連合の無関係言語の即時、遅延再生、生活健忘チェックリストの得点が有意に改善した。以上より、rTMSは軽度から中等度のうつ病の治療に有効であり、重篤な副作用のない安全な治療法と考えられた。さらに、言語性記憶機能の一部を改善する可能性が示された。しかし、脳内ドーパミン系には影響を与えないことが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  67. 随意運動遂行障害に対する連続経頭蓋磁気刺激を用いた臨床応用 2004 – 2005 中馬 孝容 北海道大学, 病院, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、中枢性神経疾患やうつ病などの難治性疾患に対する臨床応用の検討が数多くの検討がなされている。今回、パーキンソン病を対象としてrTMS投与部位による影響について検討した。
    平成16年度では、13名のパーキンソン病を対象(男性3名、女性10名、平均年齢69.2±6.2歳)とし、8の字コイルを用いて低頻度rTMSを行った。rTMS投与部位は(1)前頭前野背外側部、(2)補足運動野、(3)運動前野、(4)第一次運動野の4箇所で、各々0.3Hz、50回のrTMSを投与した。rTMS前後において、短母指外転近(APB)のcortical mappingを測定し、APBのMEPの振幅の総和について比較した。結果は、(1)へのrTMS投与後においてのみ、APBのMEPの振幅は高くなり、MEPのareaは拡大する傾向がみられた。パーキンソン病に関しては、前頭前野背外側部への低頻度rTMSは大脳皮質の興奮性が増強する可能性が推測された。
    平成17年度では、9名のパーキンソン病患者を対象とし、高頻度rTMSの投与部位による影響を測定した。rTMSは10Hzの刺激頻度で総計1000回施行し、投与部位は左第一次運動野、左前頭前野背外側部の2種類とシャム刺激の3パターンについて検討した。rTMS投与前後において、運動機能(歩行・握力等)および前頭葉機能(stroop test)への影響について検討した。前頭前野背外側部刺激では、stroop test II-I時間の短縮傾向がみられた。左前頭前野背外側部への高頻度rTMSは、前頭葉機能に影響を与える可能性がある。高頻度rTMSの投与部位や刺激条件を検討する必要はあるが、前頭葉機能に対する臨床応用の可能性が推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  68. 神経生理学的脳機能画像による反復的経頭蓋磁気刺激治療の刺激条件の確立 2003 – 2005 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究では、反復的経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療に用いる具体的な最適刺激条件を、神経生理学的脳機能画像、脳機能測定・解析法から検討するとともに、当該治療法の作用機作を解明することを目標とした。3年間の主な研究実績は下記のとおりである。
    1.HFOsの増強効果からみたrTMSの作用機作の検討
    体性感覚誘発電位(SEP)の高周波振動(HFOs)の変化を指標として、健常者の体性感覚野に与えた低頻度rTMS(0.5Hz、50回、運動誘発閾値の80%強度)が、皮質興奮性に与える影響について検討したところ、SEPには変化を認めない一方、HFOsには有意な増強を認めた。HFOsは皮質内GABA系抑制性介在ニューロンの活動を反映すると考えられているので、低頻度rTMSによる皮質興奮性の抑制は、抑制性介在ニューロンの作用の増大を介して行われている可能性が示唆された。また、HFOsがrTMSの最適刺激条件を検討する際の客観的な指標になりえることが示された。
    2.StrooP課題遂行時における統合失調症患者の脳内情報処理のMEGによる脳機能画像化
    脳磁図の空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で脳機能画像化する方法を開発するとともに、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した。前頭前野背外側部(DLPFC)での活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となることから、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症の臨床特性やrTMS前後で異なると想定される神経ネットワークのダイナミクスの差異を、われわれが開発したMEGの脳機能画像法が捉えうる可能性が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  69. 連続磁気刺激(rTMS),脳深部刺激(DBS)の作用機序に関する研究 2002 – 2003 宇川 義一 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)に関する研究
    rTMSの臨床効果については以下の研究を2年間で行った。パーキンソンにしては日本全国規模の効果判定を行い、シャム刺激と比較して有意な効果が得られない事を報告した(文献2)。排尿障害、急性の痛みのに関しては治療効果を認める報告をした(文献1、4)。さらに、rTMSの効果を考える時には、刺激コイル直下の大脳皮質部位だけでなく、その部位と密接な連絡を持つ離れた部位への刺激が及ぼす効果も考慮すべきであることを報告した(文献3)。さらに猿にrTMSを行い、そのときの脳の代謝の変化などを検討した。まず、猿用のコイルを作成した(図書)。このコイルにより、猿の脳でも効果的に限局した部位のみに、電流を誘発できることを証明した。このコイルにより猿の運動野を連続刺激したときの、大脳基底核でのドーパミン代謝の変化を分析した(文献5)。運動野の連続磁気刺激により、腹側線条体での内因性ドーパミンの放出が上昇した。このドーパミン代謝の上昇が、本刺激の鬱病などの治疲機序を一部説明していると考えた。今後は、マイクロダイアリシスによりドーパミンの放出を確認するサルでの実験を計画している。さらに、rTMSの今後の臨床応用が期待されるため、いくつかの神経疾患に刺激パラメータを変えて、治療を試みる予定である。
    脳深部刺激(DBS)に関する研究
    視床下核のDBSで治療を行っているパーキンソン病患者に関して、刺激オンをオフでFDG PETを行い、両者を比較した。刺激オンの時はオフの時と比べて、刺激側の前運動野と前帯状回で糖代謝の亢進が観られた。DBSがパーキンソンなど運動障害に効果を示す機序の一つとして、前運動野の機能亢進が関連していると結論した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  70. PETによる気分障害患の病態と治療法の作用機序に関する研究 2002 – 2005 須原 哲也 独立行政法人放射線医学総合研究所, 脳機能イメージング研究開発推進室, 研究員 (90216490) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:無けいれん性電気けいれん療法(mECT)は難治性うつ病等に非常に有効な治療であり臨床的に確立した治療法であるが、その機序は不明な点が多い上研究も遅れている。本研究ではmECTの適応となったうつ病患者9名を対象にmECT治療前後でのセロトニン1A受容体の変化を[^<11>C]WAY100635を用いて検討した。mECT開始前日、1クール終了1日後にPET検査および精神症状評価を行った。mECT後に9名全例で精神症状の改善を認めた。ECT前後での海馬の結合能(BP)は一部上昇傾向は認めたが統計学的には有意な変化とは認められなかった。今後は海馬5HTIA受容体以外の受容体変化を検討していく必要があると考えられた。
    抗うつ薬などの向精神薬は脳内の受容体やトランスポーターなどに結合し、その薬理作用を発揮している。そのような結合部位での動態を生体内で検討することは薬物の作用機序の解明や用量用法を決定する際に重要である。本研究では健常男性6名を対象とし、SSR1の一つ、フルボキサミンによるセロトニントランスポーター(5HTT)占有率の経時的変化を[^<11>C]DASBを用い、PET測定を行った。また、5HTT占有率の経時的変化を5HTT親和性特性(ED50値;占有率が50%を呈する値)と血中濃度の経時変化をパラメーターとしてシミュレーションし、実測値との相関を検討した。フルボキサミンによる5HTTの平均占有率は5時間後で約73%、26時間後で約50%、53時間後で約25%であった。また、シミュレーション結果は実測値と良く相関した。抗うつ薬の用量用法の決定の際には血中濃度のみならず、脳内セロトニントランスポーター占有率の経時的変化の検討が重要な指標を与えると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  71. 経頭蓋磁気刺激法(TMS)によるうつ病および強迫性障害の治療 2001 – 2002 太田 龍朗 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00109323) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激法の臨床応用は、平成13年度に当大学の倫理委員会に受理された。治療は安全性を考慮して外来では行わず、入院治療で行う事として受理されたものである。平成13年度に血液中のテトラヒドロビオブテリン測定系は完成し、いつでも運転可能となった。本年度も当院精神科および関連医療機関で、上記倫理委員会で受理された基準に基づき同治療法の適応患者を募集した。8月に1例慢性うつ病患者に実施すべく、患者および家族に治療について説明し同意を得たので、入院し、治療チームを編成したが、入院後、経頭蓋磁気刺激法の実施予定日までの間に症状が軽快し、ハミルトンスコア(うつ病重症度スコア)が10点以下にまで軽快したため協議の末実施に至らなかった。その他にも数例紹介された候補患者はあったが、いずれも治療に導入する基準(特に診断名と合併症)を満たさず、実施出来なかった。実施0例に至った事態について、その理由としてまず適応の基準が厳しかったことが挙げられる。安全な方法とはいえ、同治療法を将来定着させるためにも事故を防ぎ、きちんとした理論的根拠をもって適用し効果判定を行うにはやむを得ない事と考えている。次に、同治療法の利点である速効性、簡便性と安全性が、厳密に入院治療で実施することにしたことで、患者側のメリットが減少し、わざわざ入院するくらいなら外来での薬物療法の工夫で何とかしてほしいと思わせてしまった事がある。うつ病は生活の質を低下させるが直ちに生命を侵す疾患でないだけに、患者には、確実に治癒するのでなければわざわざ入院して、難解な説明や検査や採血を受ける必然性が無くなる。今後改善すべきことは、同治療法の利点をより明確に患者および精神科医に宣伝すること、国内では外来治療で実施している施設もあるので外来で実施可能な根拠について情報収集し、外来で実施できるよう倫理委員会に再申請することをまず行いたい。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  72. 高頻度磁気刺激による不安モデル動物作成とその機能の解明 2001 – 2002 龝吉 條太郎 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00159344) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:高頻度磁気刺激(rTMS)が、ラットにおいて不安を形成するか否かを調べる研究を計画した。不安をしらべる方法として恐怖条件付け試験、高架十時迷路、明暗箱を用いた。また選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor : SSRI)や抗不安薬であるdiazepam, alplazolam and buspironeがrTMSによる不安を抑制するか否かも調べた10日間のrTMS慢性照射は、Elevated plus maze, Black & white boxテスト,Conditioned fear stressテストによってラットに対して不安を惹起することが明らかとなった。この不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制されたがparoxetineの急性投与では抑制さえなかった。rTMSは従来うつ病や神経症の治療に使用されてきたので、我々は最初rTMSが不安を抑制するものと予想していた。しかし結果は逆であった。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。このrTMSによる不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制された。このことはrTMSによる不安は、セロトニンやGABA-ベンゾジアゼピン系の神経伝達が関与している可能性が考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  73. 反復的経頭蓋磁気刺激によるneurogenesisの誘導 2001 – 2002 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMS(反復的経頭蓋磁気刺激)の作用機作についてneurogenesisの促進効果、および神経生理学的側面から検討した。
    1.neurogenesisの誘導の実証とその最適パラメータの決定のための基礎的データの取得を目指した。健常ラットを2群に分け、一方の群には磁気刺激装置でラットの前頭部を局所刺激して運動誘発閾値を決定し、その120%強度で、頻度10Hz、刺激時間5秒、1日3回刺激した。他方の群には同様の条件でシャム刺激を与えた。両群のマウスにneurogenesisのマーカーとなるBromodeoxyuridine(BrdU)を12時間おきに腹腔内に注入、本操作を14日間連続施行の後、灌流固定した。neurogenesisの指標となるanti-BrdU抗体、ニューロンの指標となるanti-NeuN polyclonal抗体で蛍光色素を変えた二重免疫染色をし、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、neurogenesis促進効果を、側脳室近傍、海馬、刺激直下の新皮質で定量し検討した。
    2.健常被験者での磁気刺激前後の誘発電位変化を体性感覚誘発電位高周波振動HFOs(high frequency oscillations)を用いて検討した。健常被験者7名に0.5Hz、50回の低頻度rTMSを実施し、刺激前後でのHFOsの変化を測定した。被験者全員にHFOsを認め、7名中6名にはHFOsのパワー値の有意な増大を認めたが、シャム刺激によるコントロール実験では変化を認めなかった。rTMSが直接皮質内GABA系介在神経細胞の活動を増大させ、介在神経細胞を通して抑制性入力を増強し、皮質興奮性を抑制するメカニズムが推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  74. パーキンソン病への経頭蓋連続磁気刺激の効果に関する運動学的解析 2000 – 2001 中馬 孝容 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋連続磁気刺激(rTMS)は、種々の中枢性変性疾患やうつ病に試みられている。8の字コイルを用いて前頭前野を局所的に刺激し、第1次運動野への影響について検討した。
    平成12年度は、パーキンソン症候群7名(男性1名、女性6名、平均年齢56.4±8.1歳)を対象とし、インフォームドコンセントを行った上で施行した。方法は8の字コイルを用いて、APBでの120%motor thresholdの刺激強度で、対側の前頭前野に0.3Hz、30回のrTMSを投与した。rTMSの前後にて、APBにおけるmotor threshold、silent period、cortical mappingを測定した。また、rTMS施行中は、ビデオ、APBの表面筋電図、脳波によるモニターを施行し、rTMSの安全性の確認も検討した。結果は、全例において,rTMS後の第1次運動野におけるAPBにおいてMEPの振幅の増大がみられた。APBのmotor threshold、silent periodの著変はなかった。以上より、前頭前野への局所的なrTMSは運動系への効果が推測された。また、全例において安全性の確認ができた。
    平成13年度は、19名のパーキンソン病(男性10名、女性9名、平均年齢62.8±11.0歳)を対象とした。方法は同様で、APBにおけるrTMS前後のcortical mappingを行った。結果では、19例中13例において、rTMS後のMEPの振幅は増大し、その中にmappingのareaが拡大していた例があった。MEPの振幅の総和におけるrTMS前後での差において、振幅の低下がみられたものは6症例あり、その中の3症例は、rTMS後のmotor thresholdが低下していた。前頭前野における局所的なrTMSは、第1次運動野への促通効果あるいは興奮性の上昇傾向があると推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  75. 強性水泳ラットにおける継頭蓋的磁気刺激法の効果 2000 – 2001 堤 隆 大分医大, 医学部, 助手 (60284791) 奨励研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要:(1)、18時から6時を明期とする明暗条件下で飼育したウイスター系成熟雄性ラットを用いた。ラットは恒温(23±0.5℃)、恒湿(50±5%)で、照明時間は午後6時から午前6時までの動物舎で飼育した。水および固形資料は自由に与えた。ラットは少なくとも3週間以上飼育した後実験に用いた。(2)、ラットは2群(rTMS群、sham rTMS群)に分け実験を行った。rTMS群にはコイル径5cmの8の字コイルを用い、刺激頻度は運動閾値上で52パルス、刺激頻度15Hz、刺激時間3.5秒の磁気刺激で17-18時の間に施行した。1日または10日間連続してラットにrTMSを施行した。(3)、rTMSの第10回施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様に行った。(4)、急性実験として第1回強制水泳施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察、測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様におこなう。(5)、記録したビデオからラットの行動を静止状態、水泳状態、登坂状態に分けてカウントした。(6)、10日間の連続施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ有意に静止状態が少なかった。単回施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ特に行動面では有意な変化は認めなかった。この結果よりrTMSの連続施行はラットのうつ病モデルである強制水泳において有意な抗うつ作用効果が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  76. 連続磁気刺激によるヒト中枢神経系の長期的興奮性変化の機序に関する研究 2000 – 2001 宇川 義一 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)がうつ病などの精神疾患、パーキンソン病などの神経疾患の治療に使用されている。この作用機序として、何らかの長期的効果が生じているはずである。この機序を解明する目的で以下の2点についてこの2年間で研究した。
    1.rTMSは直接の刺激点以外に効果を示すか。
    中枢神経は、線維を介して離れた部位が連絡し合って、その機能を発揮している。そこでrTMSの効果も、この連絡を介して発生していると考えれる。運動野を刺激した時の効果を対側運動野へのTMS(文献3,4)、同側感覚野のSEP(文献5)、SPECT、PETなどを用いて検討した。運動野のrTMSにより、同側の感覚運動野のみならず、対側の感覚運動野、同側の視床、対側の小脳などの離れた部位に機能変化が生ずることが証明された。以上より、rTMSにより刺激部位と離れた部位にも機能変化が生ずると考えた。
    2.rTMSは、刺激終了後にも持続する効果を誘発するか。
    rTMSが治療効果を発現するためには、rTMS終了後も持続する効果(after effect)を誘発しなければならない。この点を検討するために、SEP(文献5)、ABR, VEPなどを用いて、運動野へのrTMS後に持続する効果を誘発できるかを研究した。1HZ,200発のrTMSにより、2時間位続く効果を誘発できた。さらに、PET、SPECTなども用いてafter effectについて検討している。以上により、rTMSは刺激終了後も時間単位で持続する効果を誘発できると結論した。
    以上の結果から、パーキンソン病にrTMSが効果を出す機序として、rTMS後に視床に持続する変化を誘発した(functional thalamotomy)可能性を考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  77. 反復経頭蓋磁気刺激法の臨床応用への安全性の検討 1999 眞野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激を与えると、神経系の機能に変化を与えることが観察されるようになり、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)が中枢神経疾患の治療に用いられようとしている。そこで、rTMSの安全でかつ有効な投与法の検討が、求められている。これまで副作用として痙攣や機能異常、脳波上の異常波の誘発などの指摘がある。これらの研究は世界的規模で行われており、国内、国外の治験の集積により、より有効でかつ安全な施行方法を追求する、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の臨床応用を検討する国際会議を開催した。
    本シンポジウムの目的はrTMSのヒトへの応用での安全性と効果であり、またそのメカニズムの解明である。シンポジウムでの結果をまとめると、rTMSでは大脳皮質の興奮と抑制をひきおこしている。rTMSで大脳の局所を刺激した時に、その反応は局所にとどまらず、経シナプス的に他部位に強い影響を及ぼす。また脳の再構築にはその闘値などの関与がある。最近低頻度rTMSが使われ始めているが、高頻度rTMSとその作用機構に質の差があることが示唆された。さらに、ヒトへの治療の応用にあたって、安全域の設定には慎重である必要があり、危険をよく知り、動物実験などの結果も重視する必要があると思われた。うつ病への応用にあたって、電気痙攣療法(ECT)を受けている患者さんにとっては、意識消失、痙攣、記憶障害などのETCの副作用を本法はさけれるため、rTMSの方がより安全であると思われる。刺激最適部位といわれる前前頭野の左右にbalance theoryが存在し大脳の左右への刺激の効果には差があると議論された。
    パーキンソン病(PD)へのrTMSの応用では、PDではうつ症状がよくなればQOLはかなり改善するといわれており、rTMSの抗うつ作用が改善に一定の役割をしていると考えられる。PDでの治療では刺激部位が運動野と前前頭野での差はあるのか、あるいは大脳への刺激が経シナプス的に基底核に影響を及ぼしているのかがさらに解明されれば、rTMSはさらに発展すると思われた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  78. 経頭蓋的高頻度磁気刺激の安全性と作用機序に関する基礎的研究 1999 – 2001 滝川 守国 鹿児島大学, 医学部, 教授 (70041423) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域における磁気刺激療法は臨床応用が先行し、基礎的研究とその安全性、特に高頻度磁気刺激(rTMS)に関しては試行錯誤の段階が現状である。精神科に置ける電気ショック療法の歴史がその治療機序が解明されないまま、ただ臨床に効果的であるとの理由で実施されてきた。このような理論に裏付けのないrTMS療法とならないよう本研究では以下のように実施した。
    (1)動物実験に本法を適用し脳にrTMSがいかなる影響を及ぼすかを検討した。
    (2)次に臨床に置いて健常コントロール群にrTMSが及ぼす作用をこの3年間において検討し、その結果は国際誌に掲載された。
    まず、rTMSの反復刺激によりラット脳におけるc-Fos発現を分子生物学的に検討した。その結果は、神経活動変化を反映するc-Fosは、脳内の広範囲の部位に出現するが電気ショックと比べて線条体に有意に多くc-Fosが出現するという興味ある結果を得た。
    次にrTMSの脳機能に与える光誘発電位法(VEP)で経時的に調べた。
    その結果、家兎対側後頭葉のYEPは潜時(N_2,P_2成分)は短縮しその振幅は有意に増大した。このことは、rTMSの反復刺激は脳に新しい神経回路網すなわち脳の可塑性が形成されることが判明した。また、反復rTMSはヒト脳波を指標として調べた。その結果、健常コントロール群の刺激部位の周辺の脳波周波数が1Hz以上早い周波数に刺激後の2分間位ではみられた。
    このことはヒトにrTMSで治療する場合、刺激後数分間は脳機能を活性化するので、その間は異常脳波の出現に注意すべきであることが示唆された。
    上記の結果は、rTMSが脳に新しい可塑性を生じることを意味し、また、rTMS後、短時間で脳を活性化することからrTMSの精神科領域への新しい治療法となることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  79. 反復経頭蓋磁気刺激法のリハビリテーション医学への応用 1998 – 1999 真野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度には、経頭蓋磁気刺激法(rTMS)法の安全性を検討する目的で、行動学的に分析した。32匹の正常マウスと31匹のcytosine arabinosideを注射した運動失調マウスを対象とした。週5回3週間、運動皮質閾値の130%の強度でrTMSを施行した。A群(正常11匹、失調マウス10匹)では、10Hz刺激を10秒間与えた。B群(正常11匹、失調マウス10匹)では、3Hzを60秒間与えた。C群(正常10匹、失調マウス11匹)には磁気刺激を与えなかった。オープンフィールド法で、運動回数と転倒率を測定した。失調群は対照群に比べ有意に運動回数が低下した(p<0.05)。rTMSは対照群でも失調群でもこの運動回数に影響しなかった。転倒率は、失調A群(10Hz×10秒)では平均36%の転倒率で、磁気刺激をしない失調C群(59%)に比べ有意の低下を示した(p<0.05)。長期効果は認めなかった。また、B群(3Hz×60秒)は、非刺激C群との差違を認めなかった。以上、失調マウスに対する反復経頭蓋磁気刺激の治療効果を確認した。
    平成11年度には、大学の倫理委員会の承認を得て、rTMSを、薬物療法、運動療法、心理療法などで充分な効果がなく、意欲が下十分であった6名のパーキンソニズム、不随意運動を呈する患者に試みた。rTMSのパラメーターは低頻度(0.3Hz)、30回を1日2回、刺激強度は運動閾値の110〜120%、一週間に5日間で2週間、平円形コイルを用いて行った。1例の脳波モニターで一側大脳にrTMS時に3Hzのslow waveが出現し、長くrTMSを続けるとそれは延長する傾向があった。日をかえて同様なslow waveを認めたため、以後この症例へのrTMSは中止した。臨床症状の改善は除外した1例を除く5例中4例にみられた。改善内容ではうつスケールは3例に、パーキンソン病スコア(UPDRS)は2例で改善、痴呆を呈した1例では長谷川式痴呆スケールでの著明な改善があった。UPDRSでの改善では抑うつ、意欲などの改善は著明であり、運動機能評価も軽度〜中等度の改善を認めた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  80. 運動失調症に対するリハビリテーションの研究(磁気刺激を用いた研究) 1998 – 1999 中馬 孝容 北海道大学, 医学部, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度は、うつ症状に効果があるといわれている経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)の安全性について正常マウスを用いて検討し、臨床応用への可能性について検討した。rTMSを10Hz、100回投与群と3Hz、180回投与群とrTMS非投与群の3群に分け、各群に刺激閾値の130%、90%の2種類の刺激強度で磁気刺激を行い、学習・記憶能への影響について検討した。学習.記憶能の検討には、Morris水迷路試験を用いた。結果は、rTMS投与した群では、一過性に影響がみられるものの、記憶の保持には影響はみられなかった。また、実験中にけいれんがみられたマウスはいなかった。rTMSは、磁気刺激の強度、頻度、回数、一連の反復刺激を繰り返す回数を検討することにより、安全に臨床応用が行なうことができると考えられた。
    平成11年度は、健常者に反復磁気刺激を行ない、臨床応用について検討した。上腕二頭筋を磁気刺激し、筋収縮パターンを記録し、収縮時間、弛緩半減時間を測定した。次に、50Hz、0.5秒間の反復磁気刺激を行ない、強縮性収縮を起こさせ、その前後にて単収縮を行なった時の筋収縮パターンにおける張力の変化について検討した。結果は、男性では出力50%の時に張力比は最大に達し、女性では出力70%の時に最大に達した。収縮時間では男女差はみられなかったが、弛緩半減時間では女性の方が有位に長く、これは、slow twitsh unitとfast twitch unitの比率が男女間で差が見られるためと考えられた。強縮性収縮前後での単収縮の張力比は、男女ともに反復磁気刺激後において単収縮の張力は増大していたが、これは男性においてより増大傾向であった。この現象は、Post-tetanic potentiationを示していると考えられた。連続磁気刺激は、ヒトの近位筋の生理学的解析に有用な方法であり、臨床応用に発展させることができると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:

ニューロモジュレーション、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)などについて

ニューロモジュレーションとは

  • 電気・磁気刺激や薬剤を用いて神経活動を改善させる治療法
  • 反復経頭蓋磁気刺激療法(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)
  • ディープ経頭蓋磁気刺激療法(deep TMS)(H-coilを用いる)
  • 磁気けいれん療法(magnetic seizure therapy:MST)
  1. 治療抵抗性うつ病に対するニューロモデュレーションの可能性 野田 賀大 慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室精神病態生理学研究室  特集 定型的な薬物療法に行き詰まったときの新たな治療戦略―難治性精神症状への挑戦― 精神神経学雑誌 122: 456-462, 2020

rTMS療法とは

脳の背外側前頭前野(記憶、認知、意欲、判断などに関連する部分)を磁気によって刺激する治療法。日本では2019年に、治療抵抗性うつ病に対する治療法として薬事承認。双極性障害など他の精神疾患に対する有効性および安全性の検討もなされている。

  1. rTMS療法で禁煙継続率高まる 2021年10月19日 17:38 MedicalTribune

 

虫垂と盲腸と虫垂炎と虫垂炎の治療方法について

「虫垂炎の抗菌薬による保存治療は約9割で2日以内に初期改善見られるが、約3割で手術に至る。糞石がある場合は8割初期改善するが、4割は手術に至る。ただし回腸・盲腸切除まで至ることはまれ。」(NEJMに学ぶ急性単純性虫垂炎の治療 西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正 2021年10月19日 18:14 MedicalTribune)という文を読んで、「盲腸?盲腸って、場所のことだっけ?」と思いました。虫垂と虫垂炎と盲腸がごっちゃになっていたので整理しておきます。

小腸から大腸につながる部分に、行き止まりの部分があってそこが「盲腸」。盲腸の先にさらに小さな袋小路みたいになっている部分があってそこが「虫垂」。虫垂が炎症を起こした状態が虫垂炎だが、虫垂炎は俗に盲腸とも呼ばれる。だから、「盲腸になった。」という言い方をよく耳にするわけです。医学教育を受けたことが無い人間としては、本当にややこしい話。

  1. 盲腸炎って何? 大阪市立十三市民病院 虫垂炎とは、何らかの原因で虫垂に炎症が起こる病態を指し、一般的には「もうちょう」として知られています。‥実は「もうちょう」とは病気の名前ではなく、虫垂の根元にある大腸の一部分をさす言葉なんです。

切るべきか切らざるべきか

”もうちょう”になったら、もうちょう(実際には虫垂)を切るのが治療だと大昔には思っていました。ところが、今ではそうでもないようです。薬で治療するという選択肢があるからです。

  • 虫垂を切らずに薬で治療した場合、10~35%くらいの人で再発
  • 虫垂を切ると、その後3年半の間、大腸がんのリスクが2.1倍に
  1. 突然の激痛!盲腸(虫垂炎)の新事実 2017年3月8日(水)午後7時30分 NHKガッテン!GATTEN
  2. Association between Appendectomy and Subsequent Colorectal Cancer Development:An Asian Population Study Shih-Chi Wu et al. PLoS One. 2015 Feb 24;10(2)

杉本彩さんは、仕事先で突然もうちょうになったときに、切らない(手術しないで薬で治す)という選択をしたそうです。

病院での検査結果は、急性虫垂炎。緊急オペが必要と大阪で診断されました。けれど、なんとか東京に帰りたい旨を伝え、二度の抗生剤投与のあと、翌日東京に戻りその足で東京の病院に行き、再検査を受け入院ということになってしまいました。‥ オペは、今回私の希望通り回避できたものの、一週間くらいの抗生剤の投与と絶食が必要ということで、ただいま点滴に繋がれた不自由と、絶食の空腹に耐えている最中です。(昨日より入院しました 2011-12-19 12:02:31 杉本彩のブログ)

虫垂炎の治療方針に関する最近の論文

  1. Treatment of Acute Uncomplicated Appendicitis. David A. Talan, M.D., and Salomone Di Saverio, M.D., Ph.D. September 16, 2021 N Engl J Med 2021; 385:1116-1123 DOI: 10.1056/NEJMcp2107675
  2. 上の論文の解説記事:NEJMに学ぶ急性単純性虫垂炎の治療 西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正 2021年10月19日 18:14 MedicalTribune

急性虫垂炎(いわゆる、”盲腸”)の症状

典型的には、みぞおちから始まった腹痛が次第に右下腹部に移動するとされています。食欲不振や、時に嘔気・嘔吐を伴うことがあり、発熱を伴うことも多いとされます。なお、炎症が進んで虫垂に穴があくと、痛みが下腹部全体に広がることもあります。(急性腹症1 急性虫垂炎 2018年3月27日 カテゴリー: 医療コラム(堀部大輔医師) ラッフルズジャパニーズクリニック)

脳波の読み方に関する教科書

脳波の読み方

臨床脳波を基礎から学ぶ人のために

モノグラフ 臨床脳波を基礎から学ぶ人のために / 日本臨床神経生理学会編. — 第2版. — 診断と治療社, 2019

脳波判読step by step

入門編 脳波判読step by step / 大熊輝雄, 松岡洋夫, 上埜高志著 ; 入門編, 症例編. — 第4版. — 医学書院, 2006

よくわかる脳波判読

よくわかる脳波判読 / 音成龍司, 辻貞俊著. — 第3版. — 金原出版, 2014

問題形式になっていて、脳波の判読を独学しやすい。全79問。大判で脳波のチャートも大きくて見やすい。初版が1997年で、第2版が2008年、第3版が2014年の刊行なので、いかにロングセラーかがわかる。お勧め度★★★★★

デジタル臨床脳波学

デジタル臨床脳波学 / 末永和榮, 松浦雅人著. — 医歯薬出版, 2011

デジタル脳波判読術

脳波の行間を読む デジタル脳波判読術 / 飛松省三, 重藤寛史著. — 南山堂, 2019

誘発電位ナビ

ここに気をつける! 誘発電位ナビ : はじめの一歩から臨床と研究のヒントまで / 飛松省三著. — 南山堂, 2017

哺乳類が腸で空気呼吸?腸呼吸が治療に使えるか

「腸呼吸」なる言葉を初めて聞いたのですが、ドジョウでは有名なことのようです。

ドジョウの腸呼吸

ドジョウがときどき水表面に浮かび出て水面上の空気をのみこみ,肛門より気泡を放出する特殊な習性をもっていることは,古くから知られている。のみこんだ空気が腸管を通って肛門より排出されることは末広1)により証明され,腸管表面の粘膜に毛細血管が密に分布すること2),排出されるガスを分析した結果,酸素が減少し炭酸ガスが増加していることなどが報告されている。(ドジョウの腸呼吸について 水産増殖 15(3) 1967 THE AQUICULTURE)

ドジョウの腸呼吸について 水産増殖 15(3) 1967 THE AQUICULTURE

ドジョウがぐるぐる廻りながら時々水面にやってきては空気を飲み込み、お尻からあぶくを出しながら水底に戻っていく光景を興味深く思ったものです。‥ 空気呼吸をする魚は他にもいますが、そのやり方はいろいろです。ドジョウの場合、その名も腸呼吸といい、口から飲み込んだ空気を腸管内に密に分布する毛細血管でガス交換を行います。腸が肺の役割をしているわけです。ドジョウは魚ですので、当然、鰓呼吸もしていますが、水が乏しくなったときや、水中の酸素が少なくなったときに、腸呼吸によって補っているのです。(第20回「ドジョウ」 さかな博士)

腸呼吸する種

Breaking wind to survive: fishes that breathe air with their gut. J. A. Nelson 2014 The Fisheries Society of the British Isles When gut segments evolve into an air-breathing organ (ABO), there is generally a specialized region for exchange of gases where the gut wall has diminished, vascularization has increased, capillaries have penetrated into the luminal epithelium and surfactant is produced. This specialized region is generally separated from digestive portions of the gut by sphincters.

哺乳類で腸呼吸?

研究グループはマウスブタ直腸酸素ガス多量の酸素が溶け込んだ液体を入れる方法を試した。その結果、何もしなければ5分程度で死んでしまう低酸素の環境でマウスの直腸に酸素ガスを入れた場合、生存時間が2倍程度に延びた。腸の粘膜をはがした状態にすると1時間以上生存し、呼吸不全の状態は改善された。血中の酸素量も大幅に増加した。酸素が溶け込んだ液体を入れた場合も呼吸不全が改善。ブタでも同様の効果が確認された。(朝日新聞 尻から酸素、腸呼吸で呼吸不全を改善 コロナ治療に期待 2021年5月15日 0時00分 )

 

ドジョウなどの水棲生物の一部は、泥池における低酸素環境を生き抜くために、副呼吸機構として、肛門側近傍の腸を活用して酸素換気を行う「腸呼吸」を有している。最近、研究代表者らは、この腸呼吸システムを活用することで、マウスブタなどの哺乳類において、致死的な低酸素条件下でも生存可能である、という驚くべき知見を得た。本研究では、「進化的に廃絶した機能と考えられてきた腸呼吸が、なぜ哺乳類でも機能するのか?」という問いに迫る。本研究を通じて、腸呼吸の生物学的理解を深めるとともに、肺移植に代替する治療法確立に貢献する革新的な技術の創出につなげる。(武部 貴則 基盤研究(A)  東京医科歯科大学 2021-04-05 – 2025-03-31 KAKEN

  1. Clinical and Translational Resource and Technology Insights Mammalian enteral ventilation ameliorates respiratory failure. Med Volume 2, Issue 6, 11 June 2021, Pages 773-783.e5
  2. 腸呼吸の応用により、呼吸不全の治療に成功 -腸換気技術を用いた新たな呼吸管理法の開発へ光-  2021年05月19日 京都大学プレスリリース https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2021-05/210515-date-5b169b4c37f36459545f90ab144cbc60.pdf

ノーベル賞を受賞した田中耕一氏は、2003年に島津製作所質量分析研究所を訪れた当時の皇太子殿下ご夫妻に対して、「血液一滴で数百の病気の早期診断を可能にする」と語ったのだそうです(MedicalTribune 「血液一滴から」の約束は果たされたか 2021年10月18日)。病気を早い時期に見つけて早くから治療を開始することが大事ですが、そのためには検査を受ける人があまり負担を感じないような簡便な診断スクリーニング方法が望まれます。田中耕一氏の言葉にあった血液だけでなく、「鼻腔・咽頭拭い液」、呼気、唾液、尿、糞便などに、病気の「証拠」となる「マーカー」が見つけられないかという研究が盛んです。とくに侵襲性がなく、心理的な負担も少ない方法として唾液、呼気が注目されます。

呼気に排出される微量の物質を病気になったときのバイオマーカーとして用いて、診断に役立てようという研究があるそうです。KAKENデータべ―スで「呼気 マーカー」で検索すると8件の研究課題が見つかりました。

  1. 前立腺癌バイオマーカーとしての呼気中アルデヒド類の有用性の検討 2021-04-01 – 2024-03-31 若手研究 小区分90130:医用システム関連 佐々木 陽典 東邦大学, 医学部, 助教 (80744151) 研究開始時の概要:呼気中には癌細胞が抗腫瘍免疫による活性ラジカルを介した攻撃を受けた際に生成されるアルデヒド類が排泄されることが報告されており、癌のバイオマーカーとして精力的な研究が行われているが、前立腺癌のバイオマーカーとなりうるアルデヒド類の同定には至っていない。本研究は、この現状を踏まえてアルデヒドと特異的に反応する性質をもつO-(2,3,4,5,6-Pentafluorobenzyl) hydroxylamine (PFBHA)を用いたPFBHAサンプラー捕集・溶媒抽出-ガスクロマトグラフィー/質量分析法を用いて、前立腺癌のバイオマーカーとなりうる呼気中のアルデヒド類の同定を目指すものである。 研究概要: 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  2. 呼気癌マーカー複数同時検出のための酵素電気化学センサアレイの開発 2020-04-24 – 2022-03-31 特別研究員奨励費 小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連 研究開始時の概要:近年、予防医学という観点から呼気中に含まれる病気に関連したバイオマーカーを非侵襲に検出し、病気の初期段階を手軽に診断可能な医療用デバイスが注目されている。診断に使用するセンサーには選択性・感度が求められるが、従来の無機半導体ガスセンサーでは選択性・感度が不十分であった。本研究では、選択性の高い酵素と高感度測定可能な電位差測定を組み合わせたセンサー・システムを構築し、センサー表面を気相中の呼気癌マーカーを取り込むハイドロゲルで被覆することで、呼気癌マーカー検出を試みる。また、酵素の組み合わせを変えて様々な癌マーカーに対応したセンサーをアレイ化することで、1次スクリーニングデバイス開発を目指す。 研究概要: 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  3. 呼気癌診断を実現する嗅覚センサシグナルの「マーカー特徴量」の網羅的探索と最適化 2018-04-01 – 2021-03-31 基盤研究(A) 中区分90:人間医工学およびその関連分野 吉川 元起 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70401172) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要: 研究実績の概要:1000種類以上の多成分混合ガスである呼気は、疾患によって数十種類のガス濃度比が微妙に変化すると考えられており、疾患の状態を反映する「マーカー分子」の特定が難しい。またそれらのピンポイント測定だけでは情報不足となる可能性が報告されている。
    そこで本研究では、呼気全体を多種類のセンサ素子でパターン化する嗅覚センサを用いて、疾患に起因する複雑なガス濃度比の変化全体を捉え、この嗅覚センサシグナルのうち、がん関連の医療メタデータと明確な相関を示す特徴を「マーカー特徴量」と定義し、その網羅的な探索を行う。本研究では、小型嗅覚センサ素子として高い感度や多様性を有する「MSS」を利用する。このMSSに関しては、産学官連携によって、嗅覚センサに必要となるハードウェア/ソフトウェア両面の包括的な技術体系を構築しており、これらと密に連携することにより、嗅覚センサの呼気診断への適用可能性を最大限追求する。
    2018年度は、可能な限り効率よく信頼性の高いデータを収集するために、呼気の採取から測定までの一連のプロトコルの確立を進めた。具体的には、温度や湿度の揺らぎやサンプルの経時変化など、センサシグナルの信頼性や再現性の低下の原因となる不確定な要素の徹底的な排除を行った。その結果、センサシグナルに影響を与えている要因が明らかになり、その影響の少ないサンプルを用いた解析では良好な結果が得られることも明らかになってきた。
  4. 呼気ガスバイオマーカーの周術期管理における有用性の検討 2012-04-01 – 2014-03-31 挑戦的萌芽研究 松永 明 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70284883) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究は、周術期の患者管理に有用な呼気ガス中の揮発性有機化合物(volatile Organic Compounds: VOCs)を特定し、そのガスセンサを開発することである。ガスクロマトグラフィーを用いて侵襲度の高い手術における呼気ガス中VOCsの変動を測定したが、有用なマーカーを特定できなかった。
    VOCs測定のためのガスセンサは、水蒸気の影響や触媒活性の低下などがその測定精度に影響を与えることが分かった。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  5. 喫煙者の呼気中ガス成分と酸化ストレスマーカー及び吸煙行動の因果関係の解明 2010 – 2012 若手研究(B) 稲葉 洋平 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (80446583) 研究開始時の概要: 研究概要:我々は,固相抽出とGC/MS またはLC/MS/MS を組合せた呼気中の 揮発性有機化合物,尿中の8-isoprostane 及びニコチン代謝物の測定法の確立を行った。これ らの手法を用いて喫煙者の酸化ストレスマーカー,ニコチン代謝物及び喫煙行動との関連性を 解析した。その結果,8-OHdG は1 日の喫煙本数,1 日の総吸煙量,尿中コチニンに有意であ った(p<0.05)。iPF_<2α->は,年齢,唾液中コチニン,尿中3-ハイドロキシコチンンに有意であっ た(p<0.05)。一方で,呼気中一酸化炭素と尿中酸化ストレスマーカーとの関連性は,認めら れなかった。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  6. 呼気凝縮液中バイオマーカーの迅速診断法の開発と難治性喘息管理への応用 2010 – 2012 基盤研究(C) 片岡 幹男 岡山大学, 大学医保健学研究科, 教授 (50177391) 研究開始時の概要: 研究概要:呼気凝縮液(EBC)を用いて、喘息患者の気道炎症状態を反映する炎症性マーカーを見いだし、point of care testing (POCT)に応用可能な迅速診断法の確立を試みた。EBC中の好酸球性炎症マーカーとして主要塩基性蛋白(MBP)が、好中球性炎症マーカーとしてミエロペルオキシダーゼ(MPO)がELISA法により測定可能であった。POCTとして免疫クロマト法によりEBC中のMBPとMPOを半定量的に測定できる迅速診断デバイスの構築と測定結果の評価を行った。本法によりMPOとMBPが同時に測定できた喘息患者では好中球性マーカーが優位の群と、好酸球性マーカーが優位の2群にわかれることが判明した。気道炎症状態をベッドサイドで把握し、喘息患者の治療、管理に応用可能と考えられた。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  7. ヘムオキシゲナーゼ1による生体保護作用:バイオマーカーとしての呼気一酸化炭素 2006 – 2008 基盤研究(C) 野口 宏 愛知医科大学, 医学部, 教授 (20065569) 研究開始時の概要: 研究概要:集中治療室に敗血症にて入室患者の、血中一酸化炭素(CO)濃度(ガスクロマトグラフィー)、単球中ヘヘムオキシゲナーゼI蛋白量(フローサイトメトリー)、血液中酸化ストレス度(分光高度計)、炎症性サイトカイン(ELISA)等を測定することにより、侵襲による酸化ストレス、ヘムオキシゲナーゼI発現、CO濃度の相関を検討した。その結果、ヘムオキシゲナーゼI蛋白発現と血中CO濃度間に正の相関が認められた。COはNOとともにグアニールサイクラーゼ活性化による血管拡張作用を有するが、それ以外に抗炎症作用も有する。内因性COの起源は、その代謝経路からヘムオキシゲナーゼ系由来と推察されていたが確証はなかった。今回の結果は、内因性のCOとヘムオキシゲナーゼ経路との関連性を強く推察するものである。次にヘムオキシゲナーゼ1を調節する要因として酸化ストレスをはじめとした生体侵襲が重要視されている。今回、APACHE IIによる重症度スコアー、酸化ストレス度、およびヘムオキシゲナーゼI発現間に正の相関が認められた。この結果は、強い侵襲が生体に加わり酸化ストレス度が増加した状態下で、抗炎症作用を有するヘムオキシゲナーゼ1蛋白質が増加している可能性を強く示唆する。ヘムオキシゲナーゼIの上昇しない敗血症患者は予後が悪いことも今回の検討から明らかになっており、ヘムオキシゲナーゼI-CO系は生体防御系として重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  8. 新しい酸化ストレスのバイオマーカー:呼気一酸化炭素濃度 2006 – 2008 基盤研究(C) 松三 昌樹 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 准教授 (70219476) 研究開始時の概要: 研究概要:医学の発達により心臓や肝臓などに対する侵襲の大きな手術が行われるようになってきた。しかし、手術自体が成功しても、その後、呼吸不全・腎不全などの多臓器不全に陥って死亡する症例が後を絶たない。本研究では、ストレスにより細胞内に誘導される蛋白Heme Oxygenase-1 (HO-1)の酵素反応産物である一酸化炭素(CO)が呼気に排出され、これが臓器不全の指標となり治療に応用できる可能性を示した。 研究成果の概要: 研究実績の概要:

心不全と心腎連関に関する科研費研究87件

心不全は心腎連関ぬきには考えられないのだそうです。心不全と心腎連関に関する最新の研究を網羅するため、KAKENデータベースで採択研究課題を調べてみました。科研費研究が87件見つかりました。

ちなみに採択された研究課題の概要を読むと、科研費計画調書の概要の書き方を学ぶことができます。以下、太字や下線は、私が自分で読み解くときの手がかりとして付したものです。

  1. 心不全における腎交感神経求心路の役割:「腎→脳→心」の臓器連携機序の解明 2021-04-01 – 2024-03-31 基盤研究(C) 小区分53020:循環器内科学関連 篠原 啓介 九州大学, 医学研究院, 助教 (30784491) 研究開始時の概要:心臓病と腎臓病が互いに関連しあう「心腎連関」の機序はいまだ不明な点が多い。交感神経系は心臓や腎臓のコントロールを含む循環調節に重要であり、交感神経活動を最終的に規定するのは脳である。腎臓交感神経求心路の興奮は脳に入力し、交感神経制御に関連することが示唆されている。応募者らは、脳内レニン・アンジオテンシン系の亢進が交感神経活性化を引き起こすことを示してきた。本研究の目的は、「腎交感神経求心路の心不全病態への寄与」を調べ、さらに「腎→脳→心の連携における脳内機序」を明らかにすることであり、特に脳内レニン・アンジオテンシン系に着目した脳内機序を検証する。 研究概要: 研究成果の概要
  2. 心腎連関におけるミトコンドリア代謝 2020-04-01 – 2022-03-31 若手研究 小区分53040:腎臓内科学関連 松浦 亮 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (30847041) 研究開始時の概要:心不全患者における慢性腎臓病(CKD)の合併率は高く、CKDを合併している場合には予後が不良である。しかし、その病態は明らかではなく、有効な治療方法もない。本研究では心不全による腎障害の進展は、腎交感神経活性化を介したミトコンドリア生合成の低下が主病態であるという仮説を立て、それを証明することを目的とした。またミトコンドリア生合成を活性化する物質を投与することで心不全における腎障害の改善がみられることも検証する。 研究概要: 研究成果の概要
  3. 超音波検査で犬の心腎連関を解明できるか:右心室機能と腎うっ血に注目した検討 2020-04-01 – 2023-03-31 若手研究 小区分42020:獣医学関連 森田 智也 岩手大学, 農学部, 助教 (60862282) 研究開始時の概要:人医療において心臓と腎臓の密接な関わり「心腎連関」が心不全患者の寿命に大きく影響を与えていることが近年明らかとなってきた。また心腎連関の主要因である腎臓のむくみ「腎うっ血」を超音波検査で評価することが可能であり、その有用性が示されてきた。しかし犬においての研究はほとんど行われていない。本研究では、臨床例の心疾患犬とモデル犬における検討を行うことで、犬において腎うっ血が実際に起こるのか、もし起こるのならどのような因子によって引き起こされているかを明らかにすることを目的とする。その結果、犬における心腎連関に関する基礎的な情報が得られるとともに、高リスク患者の選別や治療選択への応用が期待できる。 研究概要: 研究成果の概要
  4. 尿細管上皮のNaチャネル発現亢進を標的とした心腎連関に対する新規治療の確立 2020-04-01 – 2023-03-31 基盤研究(C) 小区分53040:腎臓内科学関連 草場 哲郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60367365) 研究開始時の概要:本研究では腎近位尿細管Naチャネルの抑制を標的とした心-腎連関に対する治療法の確立に向けた基盤となる研究を行う。具体的に、①心不全モデルマウスの腎臓でのNaチャネルを中心とした遺伝子発現を網羅的に解析し、候補分子(今回はNaPi2aが第一候補)を同定する。②同分子の遺伝子改変もしくは薬物を用いた機能抑制により、心不全の予後改善、心機能保護効果を検討する。 研究概要: 研究成果の概要
  5. 慢性腎臓病進展における心腎連関の機序解明 2020-04-01 – 2023-03-31 基盤研究(C) 小区分53040:腎臓内科学関連 横井 秀基 京都大学, 医学研究科, 講師 (90378779) 研究開始時の概要:近年、心臓と腎臓の生理学的・病理学的な密接な関係性を「心腎連関」と呼称し、包括的な病態理解・治療介入探索が検討されるようになってきている。心臓・腎臓の一方に生じた障害が、他方にも影響して障害を引きおこすcardio-renal syndrome (CRS)という疾患概念も広く受け入れられている。本研究は心不全マウスを用いて、そのマウスに腎障害を起こすことにより心腎連関の機序を解明する研究である。 研究概要: 研究成果の概要
  6. 心腎連関において長期的運動が酸化ストレスにおよぼす影響について 2019-04-01 – 2023-03-31 若手研究 小区分59010:リハビリテーション科学関連 高橋 麻子 東北医科薬科大学, 医学部, 講師 (20825773) 研究開始時の概要:腎不全と心不全の病態はお互いに密接に関係しており、心腎連関と呼ばれる。このメカニズムには、レニン-アンジオテンシン系、nitric oxide系、交感神経、酸化ストレスが関与していると考えられているが、その詳細は不明である。心不全患者への運動療法の有効性は示されている一方で、腎不全患者の心機能への運動療法の有効性は明らかでない。そこで、腎不全モデルラットを用いて長期的運動が心臓の酸化ストレスに及ぼす影響を検証することを本研究の目的としる。運動療法と薬物療法の併用の有効性を提言し、ひいては心不全・腎不全患者の予後改善、透析導入患者数の減少に寄与できることを期待する。 研究概要: 研究成果の概要
  7. 腎尿細管における受容体随伴性プロレニン(RAP)系による循環調節の解明 2019-04-01 – 2021-03-31 若手研究 小区分53020:循環器内科学関連 木野 旅人 横浜市立大学, 医学部, 客員研究員 (00829608) 研究開始時の概要:心疾患と腎疾患には、共通する病態があり心腎連関と呼ばれている。慢性腎臓病は心血管疾患の強いリスクであり、急性心不全には高頻度に急性腎障害を合併する。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系や自律神経系が、この病態に深く関与しており、RA系阻害薬、アルドステロン拮抗薬、β遮断薬が臨床応用されている。本研究は、近年明らかにされた、RAA系の新たなコンポーネントであるRAP(Receptor Associated Prorenin:受容体随伴プロレニン)系に注目して、腎尿細管でのRAP系の機能、心腎連関の病態への関与を、遺伝子改変動物を用いて分子レベルで解明することを目的としている。 研究概要: 研究成果の概要
  8. 血液透析患者における歯周病が心血管病に与える影響 2019-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(C) 小区分57080:社会系歯学関連 大田 祐子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90610973) 研究開始時の概要:慢性腎臓病(CKD)における心血管疾患による死亡原因は最も多く、CKDは心血管病の危険因子であることが明らかになっている。また、歯周病は、心血管病とCKDに共通する危険因子である。歯周病が予防可能、治療可能な疾患であることを考慮すると、歯周病と心血管病の関連を明らかにする意義は大きいが、歯周病とCKDの関連性を検討した臨床研究のほとんどは欧米人が対象で、コホート研究は少ない。本研究では、日本人の血液透析患者を対象とした心血管病データベースを再構築した疫学研究の成績を用いて、心血管病発症とそれによる死亡を標的として、歯周病重症度との関連を評価し、歯周病が心腎連関進展へ与える影響について検討する。 研究概要: 研究成果の概要
  9. 尿毒素による心不全発症・再発の病態解明と新規治療戦略の基盤構築 2019-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(C) 小区分53020:循環器内科学関連 伊藤 浩 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90446047) 研究開始時の概要:慢性腎臓病は心血管疾患発症のリスク因子である。心腎連関の主因物質は十分明らかでないが、血液中の尿毒素の一つであるインドキシル硫酸の関与が示唆されている。本研究では、基礎研究として尿毒素が心不全発症に関与する分子病態を動物実験にて明らかにし、心臓における心腎連関の新規標的分子の探索を行う。同時に、臨床研究として血中インドキシル硫酸と心不全発症の関連を前向きの多施設レジストリーにて検証する。このように、基礎と臨床の両面からインドキシル硫酸の心臓への影響を明らかにし、心不全に対する新規治療戦略の基盤を構築する。 研究概要: 研究成果の概要
  10. グルカゴン依存性交感神経制御機構の解明と心血管病での役割ー心事故予防を目指して 2019-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(B) 小区分53020:循環器内科学関連 暮石泰子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60452190) 研究開始時の概要:代表者らは、グルカゴン欠損マウス(Gcg-null)の心臓を解析し、高血圧と心肥大を伴う収縮機能不全性心不全を呈することを発見した(投稿準備中)。その機序には、Gcg欠損により、副腎アドレナリン分泌を制御する責任分子の生理的抑制制御の逸脱が起こり、Adrの過剰分泌を引き起こすことを解明し現在その責任分子X関連シグナリングの探索と、このGcgによる新たな神経―内分泌制御系の病態意義に関して研究を継続している。本研究は糖尿病専門医との連携により代表者らが発見したGcg依存性交感神経制御機構の解析結果を発展応用させ、交感神経活性評価の血液サンプルによる簡便なサロゲート診断法や治療法の開発を目指す。 研究概要: 研究成果の概要
  11. 慢性腎臓病におけるPlGFとsFlt-1の発現不均衡に関する機序の解明 2018-04-01 – 2020-03-31 若手研究 小区分53020:循環器内科学関連 中田 康紀 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70812379) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:慢性腎臓病患者では心血管疾患が,逆に心疾患患者では腎機能低下が予後に大きな影響を与えている.この心腎連関の機序の一つとして,動脈硬化を促進する胎盤増殖因子(PlGF)とPlGFに拮抗的に働く可溶性Flt-1(sFlt-1)の発現不均衡がある.本研究では既存薬剤である球形吸着炭AST-120の投与によりsFlt-1の発現低下が抑制され,抗動脈硬化作用を示すことが示唆された.また,慢性腎臓病を多く含む急性心不全患者において,血清PlGF値の上昇が予後悪化に強く関連していることを示した.
  12. 臓器連関を介した心機能制御:一酸化窒素を基軸とした糖尿病性心筋症の新たな治療戦略 2018-04-01 – 2021-03-31 若手研究 小区分48030:薬理学関連 三上 義礼 東邦大学, 医学部, 助教 (80532671) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  13. 心筋傷害と心筋保護に与えるミッドカインの作用機構の解明と新規心不全治療法の開発 2018-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(C) 小区分53020:循環器内科学関連 宍戸 哲郎 山形大学, 医学部, 助教 (60400545) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  14. 腎尿細管糖取り込み調節による心腎血管障害治療戦略の構築 2018-04-01 – 2021-03-31 基盤研究(C) 小区分48030:薬理学関連 中野 大介 香川大学, 医学部, 准教授 (30524178) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  15. 新しい急性心不全治療戦略構築への基盤的研究-利尿薬反応性とバイオマーカーの応用- 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(C) 吉原 史樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (70393220) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:急性心不全は呼吸苦や全身浮腫を来し、適切な治療が実施されなければ死に至る病である。高齢化に伴う心不全患者の増加はわが国の社会問題のひとつである。急性腎障害は急性心不全に合併し易く、心不全治療を困難にする重要な要因のひとつである。今回我々は、急性腎障害を合併した急性心不全患者が重症化する際の関連因子を検討した。利尿薬の反応性(単位投与量当たりの尿量)や右心房と右心室を隔てている三尖弁の逆流の程度、尿中バイオマーカーの検討を実施した。
  16. 犬における心不全による膵炎発現のメカニズムの解明と新規の治療法の確立 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(C) 福島 隆治 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10466922) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:心不全(HF)を呈した犬において、膵炎の罹患率が高いことが報告されている。また、以前より人医療においても、心機能低下に伴う膵炎の発生が報告されている。そこで、HFがもたらす膵細胞傷害発生のメカニズムを解明するとともに、それに基づいた新しい治療法の確立を目指した。その結果、犬においてHF時の心拍出量と血圧低下に起因し、膵血流量の減少が引き起こされることが明らかとなった。また、それにより膵腺房細胞のチモーゲン顆粒の減少を伴う細胞萎縮が発現することが判明した。この結果を受けて、新しい膵臓障害の治療法の確立を期待しピモベンダンを投与したところ、膵臓の血流量の維持と病理学的変化の軽減が確認できた。
  17. タンパク質アルギニンメチル化修飾の個体機能の解明 2017-04-01 – 2021-03-31 基盤研究(C) 加香 孝一郎 筑波大学, 生命環境系, 講師 (60311594) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  18. 臓器連関によるストレス応答機構の解明 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(B) 藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30422306) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、心臓の恒常性維持機構として、新たに心臓・脳・腎臓が連携して心臓に圧負荷が掛かった際に、それを補正するシステムが存在することを明らかにした。この恒常性維持機構が機能しないマウスを作成すると、心不全を発症し心不全死した。このことから、この新しい恒常性維持機構は心不全発生と関係している可能性が高い。さらに、新しい臓器間連携として、心臓・脳・臓器Xという連携を発見した。この臓器X内において、心臓へのストレス時の応答を行っており、この反応によって心臓のストレスに対する反応が変化した。このことは、心不全発症に臓器Xも関与していることを示唆した。
  19. 臓器障害・線維化に対するリハビリテーション運動療法の有効性の機序解明 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(B) 伊藤 修 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (00361072) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:腎障害モデルにおける長期的運動による糸球体硬化や腎間質線維化抑制効果とその機序を検討した。5/6腎摘腎不全ラットでは、腎のコラーゲン産生低下と分解亢進、腎レニン-アンジオテンシン系の改善が明らかになった。高フルクトース摂取ラットでは、腎内脂肪酸代謝やミトコンドリア機能の改善が明らかになった。高フルクトース摂取は、Dahl食塩感受性ラットにおいて腎レニン-アンジオテンシン系の亢進を伴って血圧上昇、糸球体過剰濾過、腎障害が増強しており、長期的運動はレニン-アンジオテンシン系阻害薬と同様な有効性が明らかになった。
  20. 循環器疾患におけるSDF-1αのバイオマーカーとしての臨床的有用性の検討 2016-04-01 – 2019-03-31 若手研究(B) 植松 学 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00622151) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:Stromal cell-derived factor-1α(SDF-1α) は炎症性ケモカインの一つで、心血管病の病態に深くかかわっていることが報告されている。本研究は循環器疾患におけるSDF-1αの臨床的意義を明らかにすることを目的とした。その結果、①末梢血のSDF-1α値は心筋梗塞後の二次心血管イベントの予測因子になること、②アンギオテンシン受容体拮抗薬は心筋からのSDF-1αの産生を抑制すること、③腎不全進行の予測因子になることがわかった。SDF-1αは心血管病の臨床病態に深くかかわっており、新しいバイオマーカーになりうる可能性がある。
  21. 心腎連関における新規アペリン受容体リガンドの機能的意義の解明 2016-04-01 – 2018-03-31 若手研究(B) 佐藤 輝紀 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30733422) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究においてまず、心機能調節における、新規APJリガンドELABELA(ELA)の機能的意義を明らかにした。APJ受容体のリガンドはこれまでApelinのみと考えられていたが、新規にELAが同定されたことを受け、そのペプチドを心不全モデルマウスに投与することによって心保護効果を発揮することを明らかにした。Apelin同様にレニンアンジオテンシン系の亢進を抑制する一方で、そのメカニズムはApelinと異なり、ACEを転写性に抑制することを解明した。さらに、腎集合管特異的なELA欠損マウスの作製、機能解析を行った。
  22. 急性腎障害回復後の腎障害進展における病態解明 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 土井 研人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80505892) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では急性腎障害(acute kidney injury: AKI)回復後の慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)進展を動物モデルで再現することを目的とした。大動脈縮窄(Transverse Aortic Constriction:TAC)圧負荷心不全モデルと腎虚血再灌流モデルを組み合わせることで、臨床的に数多くみられる心腎連関症候群を再現し検討を進めた。心不全マウスにおける腎虚血再灌流障害の長期的な影響を線維化進展を中心に検討を行い、交感神経活性の亢進が腎障害に対して保護的に作用しているのではないかという知見を得た。
  23. 心腎脳連関におけるバゾプレッシン系と交感神経系のクロストークの解明 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 岩永 善高 近畿大学, 医学部, 准教授 (80360816) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要「バゾプレッシン系と交感神経系のクロストークを心腎脳ネットワークの観点より検討し、その修飾による新規治療の可能性を探ること」を目的とした。心不全モデル動物では、腎臓交感神経切除術、β遮断薬のみならず、イバブラジンも全身および心臓感神経活動を抑制すること、更にはそれを介しバゾプレッシン系にも作用することを明らかにしクロストークの存在を明らかにした。また敗血症性臓器障害モデルにて、腎臓交感神経切除術は心機能障害の発現および生命予後を改善すること、バゾプレッシン受容体ノックアウトマウスでは、更なる心腎機能改善および生命予後改善がもたらされることを明らかにし、両システム遮断の相乗効果も存在した。
  24. 長期的有酸素運動の抗加齢効果とその機序の解明および高齢化社会問題解決策の検討模索 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 伊藤 大亮 東北大学, 医工学研究科, 特任助教 (50466570) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要高齢ラット、若齢ラット、運動介入高齢ラット(Sprague-Dawley (SD)ラット)の3群について、心臓・腎臓機能および機序として、一酸化窒素(NO)系、酸化ストレス系、老化関連指標への長期的運動の影響を比較検討した。運動はトレッドミル有酸素運動を2カ月間行った。血圧は3群間で有意差は認めなかった。NO系、酸化ストレス系パラメータは運動で変化が認められる傾向があり、今後解析を進める。老化関連指標の細胞老化特異的βガラクトシダーゼ活性を免疫染色で評価したが、運動介入による変化が認められており、今後統計学的検証を進める。腎臓のその他免疫組織化学的検討においても現在解析中である。
  25. Flt-1系を介する心腎連関分子機序の解明:新規LncRNAの関与 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(B) 斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心腎連関の分子機序は十分に理解されていない。本研究では、慢性腎臓病では胎盤由来増殖因子(PLGF)の産生が増加し、PLGFの内因拮抗物質であるPLGF特異的受容体(Flt-1)の可溶性アイソフォームであるsFlt-1の産生が低下することにより、PLGF/Flt-1系が活性化していることを証明した。その結果その下流に存在するMCP-1の活性化が心不全発症に関係していること、また、Flt-1下流でMEKに直接結合し、MEK活性を抑制する新規のLnc RNAXを同定し、それが心肥大や心不全の発症に関係していることを発見した。これらの分子は心腎連関の分子機序に関与し、創薬の対象となる可能性を示した。
  26. 心血管疾患の多臓器連携機序の解明と臨床応用 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(B) 眞鍋 一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70359628) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要世界的な心不全の急増は医療上の重要な課題となっている。我々はこれまでに、肥満脂肪組織に始まった炎症が遠隔組織に波及し、糖尿病や動脈硬化を促進することを見いだしていた。本研究ではさらに、慢性腎臓病において心不全が増加する心腎連関のあらたなメカニズムを明らかにした。心臓へのストレスに対して体が心臓-脳-腎臓を連携するネットワークによって適切に応答していることを見いだした。
  27. 心臓リハビリテーションによる骨髄老化への有効性の検証 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(B) 礒 良崇 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60384244) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究は、急性心筋梗塞後における運動耐容能に焦点をあて、バイオマーカーとしてmicroRNA(miR)に着目し、その関連性を検討した。網羅的small RNA解析・定量的RT―PCR解析により、急性心筋梗塞の急性期経過中に大きな変動を示す一群のmiRを同定した。その中で、免疫老化関連miRであるmiR-181cが、急性心筋梗塞例の運動耐容能・換気効率と統計学的に相関することが明らかになった。また、心臓リハビリテーションにおける換気効率の改善効果とも関連していた。
  28. 心腎連関における炎症とキニン系、アンジオテンシン系の役割 2016-04-22 – 2019-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  29. 重症心不全における自由水排泄促進に抗する代償機構の解明 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 日浅 謙一 九州大学, 大学病院, 助教 (00380452) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要薬物治療抵抗性心不全症例において、トルバプタン投与後のカリウム排泄率(FEK)亢進は予後不良と有意に相関していることが判明した。トルバプタンは他のナトリウム利尿薬と異なり、カリウム排泄に全く関与しない薬剤であり、投与後の腎におけるカリウム排泄率増加は腎血流量低下もしくはレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系亢進を反映すると考えられ、FEKは利尿薬の中では唯一トルバプタンによる過度の除水を早期に発見することが出来る簡便かつ有用な指標と考えられた。
  30. アクアポリン2で選定したレスポンダーにおけるトルバプタン長期投与の有効性の検討 2015-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 絹川 弘一郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00345216) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要リアルワールドに近い患者背景のもとではほとんどすべての心不全患者はレスポンダーであった.しかしながら,以前の検討と著しい違いはトルバプタンを継続投与したレスポンダーでも予後が悪い群が存在することである.トルバプタンの急性期のレスポンスは尿中AQP2/血漿AVP比0.5×10^3以上で担保されるが,予後改善効果はより高い尿中AQP2/血漿AVP比が必要となる可能性がある.多変量解析ではより強い因子としてeGFRが存在し,腎機能低下とともに尿中AQP2/血漿AVP比が低下することを考えると,腎機能が一定以上低下した場合にはトルバプタンの長期継続投与も入院回避効果が少なくなると考えられる.
  31. 深部静脈血栓形成におけるオートファジーのメカニズムの解明とその法医学への応用 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 野坂 みずほ 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00244731) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要血栓陳旧度にともなうオートファジー機能の動態を検討するために,LC3及びp62について実験的マウス血栓における両者の陽性細胞数や,両者の比(p62/LC3 ratio)の変化を明らかにした.血栓溶解過程では,オートファジーが関与していることが明らかとなり,法医診断学的には,血栓中のオートファジーの動態が,剖検例においても血栓の陳旧度判定の有用な指標となると考えられた.
  32. 心不全における腎髄質循環とNa貯留メカニズムの解明 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(B) 伊藤 貞嘉 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40271613) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要腎臓は体液・ミネラルの恒常性維持を介して循環血漿量を調節し、心臓は腎臓により調節された血漿量を血液として拍出することから、心機能と腎機能は互いに影響しあっている。従って、心機能の低下は腎機能を低下させ、腎機能の低下は心機能を低下させることとなり、結果として心腎症候群を形成する場合がある。我々は心腎症候群モデル動物として脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHR-SP)ならびにDahl食塩感受性高血圧(DahlS)ラットを対象として、体液貯留の改善される薬剤数種類を投与して心腎症候群の発症機序解明を試みるべく、検討を行った。
  33. 基礎研究の臨床応用による心血管病の新しい早期診断・予防・治療法の開発 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(B) 佐藤 公雄 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (80436120) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要遺伝子改変動物を用いた基礎研究により、CyPAが肺高血圧症にとって重要蛋白であることを確認した。さらに、ヒト肺高血圧症患者の末梢血での血漿中CyPA濃度の測定法を開発し、患者群で健常者群に比較して、濃度が上昇していることを確認した。さらに、CyPA高濃度群と低濃度群に分け、長期的な予後調査を行ったところ、血漿中CyPA濃度が高い群で、明らかに生命予後が不良であった。さらに、患者由来の組織や血液検体およびハイスループット・スクリーニング(HTS)システムを用い、CyPA分泌抑制・細胞外CyPA受容体阻害に着目した治療薬のスクリーニングを進め、肺高血圧モデルマウスにおける有効性を検証した。
  34. 肺高血圧症の新規標的蛋白に関する基礎的・臨床的研究 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(A) 下川 宏明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00235681) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要肺動脈性肺高血圧症(PAH)は重篤かつ致死的であり、本質的治療薬の開発が待ち望まれている。PAHの血管平滑筋細胞は癌類似の増殖性を有し、肺動脈抵抗血管の狭小化を来す。そこで、患者由来肺動脈平滑筋細胞(PAH細胞)の網羅的遺伝子解析および各種のオミックス解析により新規病因蛋白の探索を進め、合成病因蛋白によるPAH細胞増殖性試験、血管平滑筋特異的遺伝子欠損マウスでの検証を行い、複数の新規病因蛋白を同定した。また、一部の病因蛋白は血漿中に分泌されることが分かり、患者血清中濃度が、予後予測能を有することが判明した。このように、PAH患者由来の臨床検体を用いた基礎研究の臨床応用研究を進めた。
  35. 都市部地域住民を対象とする血漿Na利尿ペプチドと頸動脈硬化の進展に関する追跡研究 2014-04-01 – 2016-03-31 挑戦的萌芽研究 小久保 喜弘 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (20393217) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要ベースライン時の3239名を対象に、hANP 43 pg/mL以上をhANP高値、BNP 100 pg/mL以上をBNP高値とした。頸動脈エコー検査において、平均、最大内膜中膜複合体厚がそれぞれ、1.1mm、1.7mm以上を平均IMT、最大IMTで有意プラークありと定義した。BNP高値郡において最大IMTプラークの危険度(95%信頼区間)が性年齢調整で、1.28 (1.01-1.61)、多変量調整で1.27 (1.01-1.60)であった。hANP高値と平均、最大IMTとの関係は見られなかった。
  36. 睡眠時無呼吸症候群における腎交感神経と高血圧のメカニズム解明 2014-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 小倉 彩世子 日本大学, 医学部, 助教 (30618202) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要間欠的低酸素は腎臓尿細管においてNCC(The thiazide-sensitive Na+-Cl- cotransporter)の膜への移行を増加させ、食塩負荷によっても持続的に活性化していることが明らかとなった。そのほかの腎臓NaCl輸送体については検討したがNCCの様な変化は認められなかった。またHCTZ(サイアザイド)負荷試験においても間欠的低酸素ではNa排泄が亢進し、NCCが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
  37. 骨格筋由来ホルモンによる心腎連関の新たな治療介入 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 泉家 康宏 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10515414) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要我々は運動療法の臓器保護作用を骨格筋由来ホルモンの観点から検討した。筋肥大が誘導できる遺伝子改変マウスでは腎疾患モデル後の組織障害が減弱しており、機序として腎臓でのeNOSの活性化が関与していた。骨格筋由来ホルモンを網羅的に探索し、Heme oxygenase-1 (HO-1)とThrombospondin-2 (TSP-2)をスクリーニングした。骨格筋特異的HO-1欠損マウスの解析から、HO-1は血管内皮細胞やマクロファージ由来である可能性が示唆された。TSP-2は心不全患者のバイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。本研究成果は骨格筋を中心とした臓器連関の機序解明に寄与すると考えられた。
  38. 心腎連関を考慮した新しい心不全治療の開発 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 浅沼 博司 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (20416217) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全発症や進展のプロセスに腎機能障害が関与することが報告され、心腎連関として知られている。本研究では、まず前臨床段階研究として、大動物心不全モデルにおいて、慢性腎不全用剤である炭素微粒体(AST-120)投与が腎機能低下および血中インドキシル硫酸(IS)濃度増加を抑制し、心筋アポトーシス・線維化を抑制することで心不全の病態を改善させることが明らかになった。次に、慢性腎臓病を合併する心不全患者でAST-120投与前後のISと心機能を、AST-120を投与されていない患者とでレトロスペクティブに比較検討した結果、AST-120投与群でのみ腎機能が改善しISが低下し、心機能の改善が認められた。
  39. グリコーゲン合成酵素キナーゼ3βのミトコンドリア移行抑制による心不全治療の開発 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00398322) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要GSK-3β活性によるミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)開孔の機序解明を目的として研究を行った。(1) GSK-3βはvoltage dependent anion channel 2との相互作用によりミトコンドリアへ移行すること、(2) N末端のK15がミトコンドリア移行シグナルの機能に重要であること、 (3) GSK-3βの上流のERKおよびAktは酸化ストレスによりミトコンドリアへ移行し、脱リン酸化されること (4) ERKおよびAktの特異的な脱リン酸化酵素であるDusp5およびPHLPP1は酸化ストレスによりミトコンドリアへ移行することを見出した。
  40. 心臓マクロファージによる不整脈発症機序の解明と治療法開発 2014-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30422306) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要これまで我々は心臓内に存在している炎症細胞である心臓マクロファージが心臓にどのような役割をしているのかを明らかにすることを検討してきた。この研究の中で我々はまず、心臓マクロファージが心臓の収縮を正常に保つために必要であることを見出した。さらに心臓には収縮を行う機能に加えて、脈を正確に打つという機能がある。心臓マクロファージを除去したマウスは、不整脈を発症することを見出した。このことから、心臓マクロファージのもう一つの機能として心臓の脈を正常に保つことが存在することを明らかにした。
  41. 心-肺腎連関に与えるミッドカインの役割の解明 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 宍戸 哲郎 山形大学, 医学部, 助教 (60400545) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要腎臓病において、心臓リモデリングが観察されることが知られているが、我々はその肥大に先立って腎臓と血中のミッドカイン濃度が亢進することを見出した。その上昇はGPCR依存性に細胞内シグナルの活性を促、MAPK活性の亢進、ANPなどような胎児型遺伝子発現の亢進と心肥大に関与していた。さらにミッドカインノックアウトマウスで腎臓病モデルを作成すると、これらの細胞内シグナルや心臓肥大が野生型マウスと比べて抑制されており、心不全の進展が抑制されていることを超音波心臓図で確認した。これらのことから、腎臓から発現するミッドカインが心臓リモデリングの進展に関与していることを明らかにした。
  42. 臨床データとエピジェネティックスの統合に立脚した急性心不全の病態解明と治療応用 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 松下 健一 杏林大学, 医学部, 講師 (10317133) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要急性心不全のデータベースの解析を中心に研究を遂行した。左室駆出分画による分類や入院時血圧による分類からの解析で、心エコー指標の有用性の相違や予後増悪因子として知られている急性腎障害合併の危険因子の相違等の臨床的に意義ある結果が得られ、報告を重ねた。また、急性心不全の発生母地としての肥満・メタボリックシンドロームにおけるエピジェネティックスについて纏め、報告した。さらに、急性心不全の病態・予後を規定する心腎連関におけるエピジェネティックスについても纏め、報告した。
  43. 腎除神経による心不全の自律神経概日リズム異常への介入に関する研究 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 平井 忠和 富山大学, 附属病院, 講師 (10303215) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全では交感神経機能が賦活し、心不全の発症・進展に重要な役割を果たしている。最近、腎除神経により全身の交感神経の賦活を抑制できることがわかってきた。本研究では慢性心不全の自律神経機能の日内リズムを評価し、腎除神経により心不全ラットの自律神経機能の異常が是正できるかどうか検討した。腎除神経を施行したラットに心筋梗塞による心不全モデルを作成し、腹部大動脈に挿入した血圧テレメーターの動脈圧波形をスペクトル解析することにより、自由行動下での自律神経機能の日内リズムを評価した。腎除神経により早朝覚醒時の一過性の交感神経機能の賦活および中枢性二酸化炭素化学反射感受性の亢進が是正されることがわかった。
  44. 受容体間相互作用を介した血管平滑筋APJ受容体による血管狭窄メカニズムの解明 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 石田 純治 筑波大学, 生命領域学際研究センター, 講師 (30323257) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要血圧調節に重要な血管の平滑筋細胞で、7回膜貫通型受容体APJを過剰発現するマウス・SMA-APJを作製し、APJ受容体がα1アドレナリン受容体(α1-AR)と機能的に相互作用することで血管の強縮や血圧上昇、心臓冠動脈の狭窄を誘導することを見出した。本研究では、血管平滑筋APJ活性化による血管の収縮反応をマウス心臓で直接証明し、また、APJがα1-ARと物理的に相互作用すること、さらに、細胞内シグナルや血管異常収縮にてAPJはα1A-ARと最も強い協調的な増強反応を示すことが判明し、生体内での血管収縮制御におけるAPJとα1A-ARとの機能的相互作用の重要性を初めて明らかにした。
  45. 進行性臓器障害におけるリハビリテーション運動療法の有効性の機序解明 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(B) 伊藤 修 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00361072) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要進行性臓器障害における運動療法の有効性の機序を明らかにするため、高食塩食摂取下のDahl食塩感受性ラットと高フルクトース食摂取下のSprague-Dawleyラットにおいてトレッドミルによる長期的運動の効果を検討した。長期的運動は高食塩食や高フルクトース食による腎機能障害、糸球体効果、腎間質線維化を軽減し、これらの腎保護効果には腎内レニン-アンジオテンシン (RA)系の改善、腎トリグリセライド含有量の低下、xanthine oxidase (XO)活性の抑制を伴っていた。これらの結果から、長期的運動による腎保護効果には、腎内RA系、脂質代謝、酸化ストレスの改善が関与していると示唆された。
  46. PETによる腎臓の新規画像評価法の確立 2013-04-01 – 2016-03-31 挑戦的萌芽研究 伊藤 貞嘉 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40271613) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究ではポジトロン断層法(PET)を用いて腎臓をイメージングによる解析する方法を開発することを目的とした。健常人と末期腎不全患者を対象として[15O]H2O-PETを施行したところ、軽度飲水制限下と飲水負荷後の比較においては有意な変化を認めなかったものの、健常人と比較して末期腎不全患者において腎局所血流量が低下していることが明らかとなり、重要な機能を果たしている腎髄質機能の臨床評価法につながる知見を得るに至った。
  47. 重症虚血性心筋症に対する心移植代替療法の開発 2013-04-01 – 2014-03-31 挑戦的萌芽研究 佐田 政隆 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80345214) 研究開始時の概要: 研究概要:虚血性心筋症と呼ばれる重症心疾患患者に対して唯一の治療法は心臓移植であるがドナーは絶対的に不足している。そこで、心移植の代替となる革新的治療法の開発を試みた。冠動脈バイパス手術中に得られたヒト心臓周囲脂肪ならびに冠動脈内膜摘出標本の解析から、動脈硬化部位では血管壁のみでなく周囲脂肪組織に慢性炎症が生じていることが明らかになった。また、脂肪細胞死により放出された核酸がマクロファージのTLR9と相互作用することが、脂肪組織における慢性炎症の惹起機構として重要であることが判明した。この知見をもとに、血管と同時に良質の脂肪組織を移植する画期的なバイパス手術法の開発に着手した。 研究成果の概要
  48. 急性腎障害における心腎連関とミトコンドリア障害 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 土井 研人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80505892) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心腎連関症候群は、急性および慢性心不全が腎障害を惹起する、あるいは急性腎障害と慢性腎臓病により心疾患が発症・増悪する、という臨床的な観察に基づいて定義されているが、心臓と腎臓という二つの臓器をつなぐ病態メカニズムについては十分明らかにされていない。特に、急性腎障害が原因で心機能低下を呈するとされるType 3心腎連関症候群については基礎的な検討がほとんどなされていなかった。本研究では、腎虚血再灌流モデルを用い、急性腎障害が心臓組織におけるミトコンドリア断片化とアポトーシスを惹起すること、ミトコンドリア制御蛋白の一つであるDrp-1がこの現象において重要な役割を示していることを見出した。
  49. 腎不全合併による循環器疾患増悪の機序解明と新規治療法の開発 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 鈴木 淳一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (90313858) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要腎不全患者の主な死因は心血管疾患である。腎機能障害が循環器疾患にどのように影響するかを、新しい心腎連関動物実験モデルを用いて検討した。5/6腎臓摘出モデルに心筋梗塞を発症させ、アンジオテンシンII受容体阻害剤(ARB)を投与した。このモデルは無治療で13%しか生存しなかったのに対し、ARB治療により生存率が28%まで改善した。ARBが心筋梗塞後の心機能を著しく改善しており、残存心筋細胞の肥大、炎症細胞浸潤、酸化ストレスを抑制していた。これらの結果より、レニンアンジオテンシン系が腎不全状態における心筋虚血および心不全の増悪に影響していることが明らかとなった。
  50. 可溶性Flt-1のCKD関連心不全における役割と肺水腫発症抑制効果の検討 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 竹田 征治 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60398443) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要慢性腎臓病(CKD)は、心肥大を呈し心不全をよく合併することは臨床的によく観察されるが、その分子機序は不明であった。今回の研究で、CKDでは慢性炎症や血管新生を惹起するサイトカインであるPLGFの産生が増加し、その内因性の拮抗物質である可溶性Flt-1の産生が低下することによって、CKDで心肥大や心不全の発症に関与していることを、sFlt-1を特異的に欠損するマウスを用いて証明した。PLGFの働きを抑制することや、sFlt-1の産生を増加させることが、CKDに合併する心肥大や心不全の治療に応用される可能性を示した。
  51. 睡眠時無呼吸症候群合併及び非合併心不全患者に対する呼吸補助療法の確立 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 義久 精臣 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (40448642) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全における呼吸補助療法(持続気道陽圧療法、順応性制御換気療法、酸素療法)による心機能、血管機能、呼吸機能、自律神経機能、神経体液性因子、心負荷、心筋障害などに対する多面的な効果について検討を行った。心不全や睡眠時無呼吸症候群の病態に応じた適切な呼吸補助療法を行うことで、心機能、呼吸機能、血管機能や予後など多面的な改善効果が得られた。なかでも、標準的な薬物療法の存在しない左室収縮の保持された心不全に対する呼吸補助療法にて、左室拡張能、血管機能、呼吸機能、運動耐用能、予後の改善を認めた。各結果詳細については、適宜学術誌にて公表を行っている。
  52. リハビリテーション運動療法における一酸化窒素系および交感神経系の役割の解明 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 伊藤 大亮 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50466570) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要高血圧自然発症ラット(SHR)を、偽手術群、除神経処置群、運動群、除神経処置+運動群の4群に分け、トレッドミル運動を8週間施行した。収縮期血圧は、開始後2週間で偽手術群に比較して他3群が低値を示し、最終8週間後では、加えて除神経処置+運動群が除神経処置群と運動群より更に低値を示した。尿中アルブミンクレアチニン比は、偽手術群に比較して他3群が低値、体重当たりクレアチニンクリアランス値は、偽手術群に比較して他3群が高値を示し、両介入共腎機能改善効果が示唆されたが相加効果は認めなかった。その他、血漿および腎組織のノルエピネフリン濃度、NO系、酸化ストレス系、免疫組織化学的検討は現在解析中である。
  53. 腎ミトコンドリア酸化ストレスをターゲットとした慢性腎臓病の治療戦略の開発 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(B) 森 建文 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40375001) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要ラット腎臓髄質ヘンレのループ太い上行脚(mTAL)において、生理的刺激に対するミトコンドリアにおける活性酸素種(ROS)産生について検討を行った。アンジオテンシンII刺激はミトコンドリアROS産生上昇を介して細胞質内ROS上昇を誘導した。高濃度ブドウ糖は糖分解産物産生を介してミトコンドリアROS産生を上昇させた。低酸素はミトコンドリアROS産生を上昇させ、この消去薬であるmitoTEMPO投与は腎虚血再灌流時に低下する腎臓髄質血流量の低下を抑制した。
  54. 動脈壁と周囲脂肪組織における慢性炎症の可視化と病態解明 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(B) 佐田 政隆 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (80345214) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要慢性炎症の起点となるインフラマソームの活性化をCaspase1活性をでFRETを用いて評価する系の確立を試みたが困難を極めた。また他のグループから、当初の計画では低強度の慢性炎症を可視化することが不可能であることが報告された。そこで、慢性炎症の機序を明らかにすることにした。肥大化によって変性した脂肪細胞から遊離したDNA断片が病原体センサーを活性化することで、無菌的慢性炎症の契機となるという仮説を、遺伝子改変マウスやオリゴヌクレオチドを用いた実験で証明した。変性脂肪細胞から遊離するDNA断片が、TLR9を介してマクロファージを活性化することで脂肪組織の慢性炎症を引き起こすことが明らかとなった。
  55. 電気刺激による筋力維持・廃用防止と膀胱機能改善効果の確立:リハ物理療法の新展開 2012-04-01 – 2014-03-31 挑戦的萌芽研究 上月 正博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70234698) 研究開始時の概要: 研究概要:膀胱尿道カテーテル長期留置者は、一日中活動に制限を受け、感染症罹患率や死亡率が高い。そこで今回、2週間以上膀胱尿道カテーテル留置された虚弱高齢患者(平均年齢83±3.1歳、FIM43±0.3)に対して、腹部電気刺激を行った。電気刺激箇所は、両側腹斜筋部とし、周波数は30Hzで、1日30分間を8週間施行した。介入前後で、肺活量(VC)、1秒量(FEV1)、吸気終末圧(MIP)、呼気終末圧(MEP)、最大呼気流気量(PEFR)の測定を行い、さらに日常生活動作を測定した。その結果、対照群では低下がみられたが、介入群では、VC、FEV、MEPは改善し、感染症や死亡による脱落もなく安全に実施できた。 研究成果の概要
  56. 心臓手術後心房細動発生のメカニズム解明に関する臨床研究 2012-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 瀬在 明 日本大学, 医学部, 講師 (70350006) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究で我々はその発生を予防するために術前に術後心房細動を予測しうる因子を特定することが目的である。本研究で、術後心房細動は24%に認め、その発生危険因子は、75歳以上、慢性腎臓病、緊急手術、体外循環時間>180分、術中カルペリチドと塩酸ランジオロール非使用、術前ARB、β遮断薬非使用、術前カルシウム拮抗薬、スタチン使用、術後β遮断薬非使用であった。術前ANP、angiotensin-II, KL-6, ヒアルロン酸、1型コラーゲンC端テロペプタイドは心房細動発生の新しいマーカーになりうると考えられた。線維化と術前、術中、術後の薬剤が術後心房細動に強く関与していることも明らかにされた。
  57. 大動脈瘤形成過程におけるHMGB1蛋白の役割 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(C) 安斉 俊久 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (60232089) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要核内非ヒストン蛋白であるHMGB1は、強力な炎症反応を惹起することが知られている。我々は、大動脈瘤形成過程におけるHMGB1の役割を明らかにするため、塩化カルシウム刺激によるマウス大動脈瘤モデルを用いて検討を行った。HMGB1中和抗体の投与により、6週後の腹部大動脈瘤径縮小、炎症細胞浸潤の軽減、大動脈中膜層の菲薄化とエラスチンの波状構造の破壊軽減が認められた。同時に、HMGB1発現の低下、Mac-3陽性マクロファージの浸潤軽減、MMP-2、MMP-9の活性低下、TNF-α、CD68、MCP-1の発現低下が認められ、HMGB1が炎症惹起を介して、大動脈瘤進展を促進している可能性が示唆された。
  58. 慢性心不全における東洋医学的アプローチの有用性に関する検討 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(C) 伊澤 淳 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (50464095) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心腎連関を呈する慢性心不全症例を対象とし,従来の内服薬に加えて最大7.5 g/日の防已黄耆湯を併用し,平均3.5ヵ月および9.4ヵ月後の有効性と安全性を評価した。BUN値, 血清クレアチニン値, 推定糸球体濾過量,脳性ナトリウム利尿ペプチドを測定した結果,いずれも治療経過中に有意に改善した。心不全および腎機能の両面において防已黄耆湯の利水作用は有効であり,治療経過中の安全性も確認できた。
  59. 心腎貧血連関ネットワークの解析と新規治療戦略の開発 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(C) 増山 理 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70273670) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全・腎不全・貧血連関の分子機構について、鉄代謝調節機構に着目し、基礎および臨床研究より検討した。心不全モデル及び慢性腎臓病モデル動物を用いた検討より、十二指腸鉄吸収蛋白の発現異常が明らかとなり、これが心不全・腎不全・貧血連関の増悪因子の一つであることを示された。また、臨床研究より心不全患者には貧血や鉄欠乏合併例が多く、心不全患者の鉄吸収能は貧血合併例で低下傾向にあることも明らかになり、十二指腸における鉄吸収能を改善することが心腎貧血連関ネットワークの新たな治療標的になることが示唆された。
  60. 慢性腎臓病の基盤病態と心血管病との連関機序の統合的理解と新規治療法開発 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(B) 柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要慢性腎臓病CKDは末期腎不全のみならず、脳卒中、心血管病、認知機能障害等の独立したリスク因子である。アルブミン尿はごく微量から心血管病と強く連関している。血管障害の最早期病態は内皮障害と微小炎症である。アルブミン尿が内皮障害を反映すると想定されてきたが、糸球体内皮が有窓性であるため、仮説に止まっていた。微小循環動態、透過性変化を生体において解析しうるin vivo imaging技術を確立し、血管内皮障害の役割を解明した。加齢腎、腹膜組織線維化にも内皮障害が関与することも明らかにした。CKDと心血管病の共通基盤病態は内皮機能障害であり、CKD・心血管病予防・治療のための標的病態を確定した。
  61. 鉱質コルチコイド/糖質コルチコイド受容体パラドックスの解明と腎臓病治療への応用 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(B) 長瀬 美樹 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60302733) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究では、Rac1によるMR活性化と臓器障害の機序につき検討した。足細胞特異的Rac1活性化、同Rac1 KOマウスは足細胞障害、アルブミン尿、糸球体硬化を自然発症し、Rac1活性とMR活性、MR阻害薬の保護効果が平行していた。マクロファージや心筋特異的Rac1/MR KOマウスでは心腎障害が軽微であった。肥満糖尿病性腎症、TAC心障害モデル、Ang II/食塩腎障害モデル、皮膚老化モデルにおいてRac1やMRの活性化、慢性炎症が関与し、Rac阻害薬やMR拮抗薬により病変が改善した。以上、Rac1-MR系の標的細胞とシグナルカスケードを同定し、この系が関与する新たな病態を明らかにした。
  62. 心臓病と腎臓病の臓器間相互作用(心腎連関)を制御する分子機構の解明と新規治療戦略 2011 – 2013 若手研究(B) 藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30422306) 研究開始時の概要: 研究概要:腎臓の集合間上皮細胞が腎臓の炎症を惹起するために重要な細胞であることを初めて見出した。その機序として転写因子KLF5は定常状態ではCdh1遺伝子を転写調節しているが、腎臓ストレス時には、S100A8, S100A9を誘導し、炎症性マクロファージを骨髄から腎臓へリクルートすることによって腎臓の炎症が惹起されることを見出し、Journal of Clinical Investigationに発表した。 研究成果の概要
  63. Endothelin-1(ET-1)高値は腎不全悪化の予知因子である。 2011 – 2012 若手研究(B) 横井 加奈子 久留米大学, 医学部, 助教 (80569385) 研究開始時の概要: 研究概要:血漿エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮物質である。血漿ET-1の上昇は心血管疾患及び悪性腫瘍患者の予後マーカーである。しかし、これまでに住民検診の場で多人数に対してET-1を測定した報告はなく、本研究は10年に及ぶ予後調査の結果から、世界において初めて血漿ET-1の上昇が健常者において死亡の予知因子であることを立証した極めて意義深い研究である。しかし10年の追跡調査において血漿ET-1上昇は総死亡と有意な関連を認めたものの、死亡原因として多い、脳・心血管死および癌死との関連は得られず、さらに追跡調査を行うことにより臨床的エビデンスが得られると考えられる。今後、死因別に血漿ET-1がどのように関連しているのかを分析し、予防法や治療法にまで言及することが期待される。 研究成果の概要
  64. 心不全における脳自律神経異常のシステム同定とバイオニック心不全治療の探索 2011 – 2012 若手研究(B) 佐田 悠輔 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (70570258) 研究開始時の概要: 研究概要:心不全の最多原疾患である高血圧(高血圧性心肥大)ラットにおける自律神経制御機構(脳特性および末梢特性)をシステム生理実験により解析し、脳特性の異常(血圧に対する交感神経応答の亢進)を突き止め、一方の末梢特性(交感神経活動に対する昇圧反応)は正常であることを明らかにした。更に、腎臓交感神経除神経による自律神経介入治療を行い、脳特性異常の是正による降圧効果を確認した。しかし、正常血圧対照ラットと比較すると、脳特性の完全な正常化には至らなかった。 研究成果の概要
  65. 心不全における心腎連関のメカニズム-機能的腎予備力評価からのアプローチ- 2011 – 2013 基盤研究(C) 真野 敏昭 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (90379165) 研究開始時の概要: 研究概要:心不全における腎機能障害は重要な予後規定因子であるが、腎機能障害が心不全の病態にどのような影響を持っているかについては不明な点が多い。本研究では、心不全のうち特に拡張不全患者における機能的腎予備力評価を、腎血流ドプラを用いた生理学的指標、探索的研究による生化学的代謝指標を用いて行い、腎動脈抵抗が拡張不全患者で増加しており、また特異的な免疫因子の拡張不全患者血中での増加が認められ、心機能と関連があることがわかった。 研究成果の概要
  66. 心不全の心腎連関における自律神経機能の概日リズム異常に関する研究 2011 – 2013 基盤研究(C) 井上 博 富山大学, 事務局, 理事・副学長 (60151619) 研究開始時の概要: 研究概要:ラット心不全モデルにおいて慢性腎臓病の自律神経機能の概日リズムへの影響を検討するため、雄性ラットを用いて5/6腎摘除し、さらに左冠動脈結紮による心筋梗塞を作成し慢性腎臓病合併心不全モデルを作成した。自律神経機能の概日リズムを評価するため、腹部大動脈に挿入した超小型血圧テレメータから送信される動脈圧波形をA/D変換し,24~48時間連続的にラットの自由行動下で記録した。拡張期血圧のスペクトル解析の結果、交感神経活動を反映する低周波成分は、慢性腎臓病合併ラットにおいて早朝覚醒期に一過性に亢進しており、その交感神経の賦活は、間歇的二酸化炭素負荷により評価した中枢性化学反射感受性と関連していた。 研究成果の概要
  67. 細胞間接着装置の障害としての蛋白尿ー他臓器疾患との関連ー 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400) 研究開始時の概要: 研究概要:蛋白尿と他臓器疾患の発症に関連がある分子としてEphrin-B1とSV2Bを同定し、これら分子の性状、機能解析を行った。Ephrin-B1は、神経細胞の軸索誘導に関与する分子で、腎ではポドサイトの膜部に局在し、細胞外部でネフリンと結合しスリット膜のバリア機能維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。シナプス小胞関連分子であるSV2B、その関連分子がポドサイトに発現していることを観察した。KOマウスを用いた検討で、SV2Bはスリット膜、足突起、基底膜の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。これらの観察はポドサイト障害と他臓器疾患の関連を考えるうえで極めて重要な知見である。 研究成果の概要
  68. 難治性コモン不整脈における遺伝子ー環境因子相互作用:GWASデータに基づく検討 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 古川 哲史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80251552) 研究開始時の概要: 研究概要:不整脈の疾患研究では、心房細動と心室細動の機序と対策が問題として残されている。全ゲノム関連解析(GWAS)は網羅的な遺伝的リスクの検討で、今まで同定されなかった疾患パスウェイが同定される可能性がある。そこで、自験・他験の心房細動、心室細動/心臓突然死に関するGWASから得られた新規遺伝子と心房細動・心室細動の関係を生物学的に検討した。その結果、心房細動は1つの不整脈のトリガーに関係する強い遺伝的リスクと複数の不整脈の維持に関係する弱い遺伝的リスクがあることが分かった。心室細動では、His-Purkinje系に発現する転写因子が運動誘発性不整脈に関連することが明らかとなった。 研究成果の概要
  69. 臓器連関と慢性炎症による心血管疾患発症・進展分子機構の解明と診断・治療法への応用 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 眞鍋 一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359628) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究計画は、メタボリックシンドロームによる心血管系での慢性炎症プロセス惹起とそれによる病態進行機序を解析し、また、臓器連関によって、さらに病態と臓器機能障害が拡大する可能性を検討した。その結果、肥満脂肪組織から放出が増加する遊離脂肪酸が、心血管系での炎症を誘導するという心血管-脂肪連関がメタボリックシンドロームにおける心血管疾患リスクの増大に重要であることを見いだした。また、心-腎連関が心臓のストレスへの応答に重要であるとともに、心不全の進展にも寄与することを明らかにした。また、この臓器連携のメディエータが病態を修飾することを見いだした。 研究成果の概要
  70. リハビリテーション運動療法の多面的効果における臓器連関の機序解明 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 伊藤 修 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00361072) 研究開始時の概要: 研究概要:Wistar-Kyotoラット(WKY)と高血圧自然発症ラット(SHR)において、長期的な運動による大動脈のnitric oxide (NO)合成酵素(NOS)発現増強効果はNADPH oxidase依存性であり、腎のNOS発現増強効果はWKYではNADPH oxidase依存性、SHRではxanthine oxidase依存性であることを明らかにした。食塩感受性高血圧ラットにおいても、長期的な運動は腎保護作用を有することを明らかにし、その作用機序は 血圧とは独立したものであり、運動による酸化ストレスの軽減、NO産生系、腎アラキドン酸代謝の改善が関与している可能性が示唆された。 研究成果の概要
  71. 腎臓リハビリテーション:有効性の機序解明と臨床応用 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(A) 上月 正博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70234698) 研究開始時の概要: 研究概要:長期的運動の腎保護相加・相乗作用およびその機序をラットで検討し、運動療法を腎不全患者に適用して、それらの臨床的有効性を検証した。慢性腎不全ラットにおいて、長期的運動とアンジオテンシンII受容体拮抗薬の併用療法は腎保護効果を示し、カルボニルストレス軽減の関与が示唆された。食塩感受性ラットにおいても長期的運動は腎保護作用を示し、酸化ストレスとNO産生系の改善の関与が示唆された。透析中の運動療法に使用できる、安価・軽量で、負荷量を調整できるエルゴメータを開発・試用し、透析中の血圧過降圧の頻度の減少、身体機能やQOLの向上を認めた。 研究成果の概要
  72. 貧血合併心不全における分子機構解明と新規治療への応用 2010 – 2011 若手研究(B) 内藤 由朗 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10446049) 研究開始時の概要: 研究概要:貧血、特に鉄欠乏性貧血が心機能に及ぼす分子機構について、ノックアウトマウスを用いた基礎研究より検討した。エリスロポエチン(EPO)受容体ノックアウトマウスを用いた検討より、鉄欠乏による貧血合併心において心臓の内在性EPO-EPO受容体を介したシグナル伝達系が心保護に作用していることが示された。一方、アンジオテンシンII受容体(1a型;AT1aR)ノックアウトマウスを用いた検討では、鉄欠乏による貧血合併心において腎臓AT1aRを介したEPOが心保護に作用していることが示唆された。以上より、貧血合併心不全において腎臓AT1aR-EPO-心臓EPO受容体を介した経路が心保護に作用していることが示された。 研究成果の概要
  73. 慢性心不全患者における悪性新生物の発生・進展に関するコホート研究 2010 – 2012 基盤研究(C) 柴 信行 東北大学, 大学院・医学系研究科循環器内科学分野, 非常勤講師 (60374998) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究では、心血管疾患症例(N=10,114)における悪性新生物の既往と予後に関する検討を行った。症例は平均68±12歳、男性は70%、悪性腫瘍の既往は12%であった。悪性腫瘍の既往がある症例は、既往のない症例と比較し高齢で男性が多く、特に心不全症例ではBMIが低く、収縮期血圧が低く、心拍数が早かった。約3年間の追跡では悪性腫瘍の既往のある症例は、心血管疾患のステージ(BまたはC/D)に関係なく予後不良であった。 研究成果の概要
  74. KLF転写因子による生活習慣病・癌の病態分子機構解明と治療応用 2010-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(S) 永井 良三 東京大学, 医学部附属病院, 名誉教授 (60207975) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要KLFファミリーはzincフィンガー型転写因子であり、現在17種類が知られている。本研究では、KLF5とKLF6に着目し、生活習慣病とがんにおける機能の解明をめざした。心臓においては心筋細胞ではKLF6が、線維芽細胞ではKLF5が働き、心臓肥大や線維化を制御している。また、KLF6は大動脈瘤と解離の病態に重要である。腎臓においては、KLF5が腎傷害に対する炎症を制御しており、慢性腎臓病に寄与することを見いだした。またKLF5が大腸癌と関連することを明らかとした。本研究で明らかにされたメカニズムは、新しい治療法や診断法開発の標的となる。
  75. 心腎連関におけるレニン-アンジオテンシン系の役割の解明 2010 – 2012 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:生活習慣病の広がりに伴い、糖尿病や高血圧に関連した腎機能障害患者数が著しく増えている。腎不全をもった心疾患患者はより重度の心不全を引き起こすことや治療効果の低下が問題点である。この現象は「心腎連関」とやばれており、この病態を明らかにすることは医学的に解決すべき重要な点である。「心腎連関」の病態解明と治療法の開発が進まないのは、適切な疾患解析モデルがこれまでに開発されていないためと考えられる。腎不全の存在により心筋梗塞後の進展が助長されることを確認でき、その病態機序の一つとしてレニンの上昇とそれによる酸化ストレスの産生によりこの現象が引き起こされていることを証明した。この研究は論文として学術誌への掲載が決定した。これにより心腎連関の新しいモデルとしての可能性や新たな病態機構の解明に繋がる研究だと考えている。またこの実験モデルの良い点は、糖尿病モデル等による糖代謝異常を起こすことがなく腎不全を誘導できることが可能なため、腎機能の低下が直接的に心機能の低下を誘導する証拠となることが示唆される。更なる心臓と腎臓をつなぐ因子として自然免疫についても検討している。腎臓の傷害によって産生されるHMGB-1やATP、AGEはそれぞれTLRやP2×7、RAGEに結合する。これにより自然免疫が助長されその後の炎症を誘導することが知られている。これらのノックアウトマウスを用いてこの病態に対する影響を確認することにより、更なる心腎連関の機構の解明と新たに治療法の確立に役立つと考えている。 研究成果の概要
  76. 心臓組織内の内皮細胞を起点としたシグナルネットワークによる心筋保護の分子機構 2009 – 2011 基盤研究(C) 中岡 良和 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (90393214) 研究開始時の概要: 研究概要:心筋から分泌されるangiopoietin-1(Ang1)の機能を解明するため、Ang1 floxマウスを作成してα-MHC-Creマウスと交配して、心筋特異的Ang1欠損(Ang1CKO)マウスを作成した。Ang1 CKOマウスはE12. 5-E14. 5で胎生致死を呈し、(1)心内膜と心筋肉柱層の接着不全、(2)心筋肉柱と緻密帯の発達不全、(3)冠血管形成異常などの表現型を呈した。Ang1 CKOマウスと野生型マウスの心臓で内皮細胞を抗CD31抗体で免疫染色すると、野生型で心室壁の心外膜直下と一層内側に形成される冠静脈と冠動脈の2層の血管構造のうち、外側の冠静脈のみがAng1 CKOマウスで特異的に欠損していた。 研究成果の概要
  77. 薬剤溶出性ステント後の再内皮化誘導療法に関する研究 2009 – 2011 基盤研究(C) 野出 孝一 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359950) 研究開始時の概要: 研究概要:ヒト末梢血単核球の培養にて、シロスタゾール処理で内皮細胞への分化が誘導されることが示された。又PKA阻害薬がシロスタゾールの内皮細胞誘導作用を抑制することが明らかになった。臨床研究の方は、シロスタゾールはSESによる血管内皮再生遅延を改善する明らかな効果は認められなかった。 研究成果の概要
  78. 心不全患者,虚血性心疾患患者に対する新たな診断マーカー 2009 – 2011 基盤研究(C) 長谷川 洋 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教 (50375656) 研究開始時の概要: 研究概要:心不全患者の血液サンプルを用いて,既知の血中因子や治療薬の心不全との関連,および,新規心不全関連血中因子の探索を目標とた。血中P53抗体は,本来変異p53に対するもので,循環器疾患患者において,優位な変化は認められなかったが,患者末梢血由来mRNAの発現変化をみたところ,p53および関連する因子に年齢および各種危険因子と相関する変化が認められた。一方,心不全において,心不全の進展に大きく関連している,各種のアンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker, ARB)を投与している患者において,各種因子と内服しているARBの種類から,ARBの作用の薬剤間の違いについて検証を行ったところ,テルミサルタンはロサルタン内服患者に比較して,動脈硬化進展のサロゲートマーカーである内頚動脈壁厚(IMT)の進展が有意に抑制されており,一方,やはり心血管疾患の予測因子である血中尿酸値は,ロサルタン内服患者で低い傾向にあることが示された。また,カンデサルタン内服患者では,家庭血圧測定において,心血管死と大きく関連する早朝高血圧が改善されていることを明らかにした。 研究成果の概要
  79. 熱ショック蛋白と酸化的DNA塩基損傷修復による心血管リモデリング抑制の研究 2009 – 2011 基盤研究(C) 長谷部 直幸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272) 研究開始時の概要: 研究概要:動脈硬化性心血管障害の主要な機序として酸化ストレスによるDNA塩基損傷がある。この修復に関わる塩基除去修復(base excision repair : BER)機構の主要酵素であるApe1に着目し、Ape1の障害心血管局所での発現亢進を検出し、遺伝子導入による心血管リモデリングの抑制効果を明らかにした。また、温熱刺激(41℃)が熱ショック蛋白(HSP)72の発現亢進を介して酸化ストレス軽減効果をもたらすことを明らかにし、両者の相加的な抗動脈硬化作用が、心血管リモデリング抑制の新たな戦略となる可能性が示唆された。 研究成果の概要
  80. 慢性腎不全における心血管病発症の分子機構:血管内皮機能の視点から 2009 – 2011 基盤研究(B) 今泉 勉 久留米大学, 医学部, 教授 (60148947) 研究開始時の概要: 研究概要:心・血管・腎連関は臨床的に注目されているが、その分子メカニズムは不明である。本研究は、腎不全患者の血中において上昇が報告されているAsymmetric Dimethylarginine(ADMA)が血管内皮機能障害を引き起こすことが、心腎連関の重要なメカニズムであることを初めて明らかにした。さらに、ADMAの従来報告されていたL-アルギニンアナログとしての内皮型NO合成酵素(eNOS)阻害作用とは独立したeNOSリン酸化抑制作用が、このADMAによる内皮機能障害を起こすことを報告した。 研究成果の概要
  81. 心筋リモデリングにおけるミトコンドリア転写因子制御の分子機構の解明と治療への応用 2009 – 2011 基盤研究(B) 筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017) 研究開始時の概要: 研究概要:活性酸素は、ミトコンドリアDNA・機能障害をもたらし、さらなるミトコンドリア酸化ストレスと細胞障害を引き起こす。酸化ストレスは肥大・アポトーシス・細胞外マトリックスリモデリングを惹起する。心筋リモデリングにおけるミトコンドリア転写因子による機能制御機構を解明するとともに、ミトコンドリアDNA・ミトコンドリア機能の保持による心筋保護基盤をあきらかにした。さらに、これらは心筋リモデリング・心不全の形成・進展に密接に関与した。 研究成果の概要
  82. 生活習慣病の病態におけるアルドステロン/鉱質コルチコイド受容体活性化機構の解明 2009-05-11 – 2014-03-31 基盤研究(S) 藤田 敏郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員、名誉教授 (10114125) 研究開始時の概要: 研究概要:私達はアルドステロンがRac1を介して直接受容体(MR)を活性化することを報告した(Nat Med 2008)。本研究でRac1-MR活性化が腎糸球体足細胞で糸球体障害、腎尿細管細胞で食塩感受性高血圧の原因となり(JCI 2011)、メタボリックシンドロームの臓器障害に関わることを示した。一方、糖質コルチコイド受容体は交感神経亢進からWNK4-NCC系を介し食塩感受性高血圧を発症させることを発見した(Nat Med 2011)。この過程にエピジェネティクスが関わっていた。食塩感受性高血圧及び臓器障害発症の新機序を確立し、心腎連関形成でのエピジェネティックス研究へと発展させることが出来た。 研究成果の概要
  83. 循環器疾患におけるアルドステロンの病態生理学的研究 2008 – 2010 基盤研究(C) 吉村 道博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30264295) 研究開始時の概要: 研究概要:アルドステロンは心不全の病態に深くかかわっているが,副腎における古典的アルドステロン産生経路に加え,近年我々は心臓でもアルドステロンが産生されていることを報告した.今回の研究では,これまで神経終末にのみ存在が知られていたN型カルシウムチャネルが実は副腎におけるアルドステロン産生について深く関与していることを初めて報告した。また,心臓での組織アルドステロンの産生についても食塩や糖濃度,時間の関与が強く示唆された。これらの知見は将来的に糖と食塩と心疾患の関連の解明と心血管病の新たな治療戦略の開発に重要な意味をもたらすものと考えられる. 研究成果の概要
  84. 慢性心不全におけるthrombospondinのβ遮断薬反応性への関与と機序 2008 – 2010 基盤研究(C) 竹本 恭彦 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 非常勤講師 (20364002) 研究開始時の概要: 研究概要:非虚血性慢性心不全例へのアドレナリンβ受容体遮断薬治療前後で、thrombospondin-1濃度へのthrombospondin-1Ala523Thr多型(G/A)の影響は認めなかった。thrombospondin-1濃度のアドレナリンβ受容体遮断薬投与前と開始後12ヶ月後の間の変化は、BNPの同期間中変化と相関し、慢性期血行動態安定化へのthrombospondin-1の関与が推察された。 研究成果の概要
  85. 心腎連関の基盤たる分子機序の解明 2008 – 2010 基盤研究(B) 斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260) 研究開始時の概要: 研究概要:心腎連関が大変注目されているが、分子機序は不明である。今回、我々は、腎機能の低下に伴い可溶型Flt-1の体内での発現が減少し、相対的にPlGF/Flt-1系が活性化することにより動脈硬化が増悪すること、また、糖尿病性腎症でKlotho遺伝子の発現が特異的に低下し、尿中Ca排泄が増加し、動脈硬化の増悪に関連する可能性を示した。 研究成果の概要
  86. 心血管ストレス応答におけるミトコンドリア活性酸素シグナル制御 2008 – 2012 新学術領域研究(研究領域提案型) 生物系 筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017) 研究開始時の概要: 研究概要:ミトコンドリアの生体維持機能は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)によって動的に制御されている。近年、mtDNAの酸化損傷およびそれに起因する活性酸素の過剰産生が、種々の疾病の発症、さらには老化にも関与することがあきらかにされ、疾病発症の共通基盤としてのミトコンドリア機能不全が注目されている。本研究では、心血管ストレス応答におけるミトコンドリア転写因子およびミトコンドリア酸化ストレスの役割をあきらかにした。 研究成果の概要
  87. 成人した先天性心疾患患者の管理における心機能、運動耐容能と神経体液性因子の意義 2006 – 2007 基盤研究(C) 武田 裕 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70381837) 研究開始時の概要: 研究概要:平成18年度に引き続き研究を継続し、通算で成人先天性心疾患患者20名からデータを収集した。NYHA心機能クラスは2.4±0.6で、問診法による運動耐容能は5.1±1.3METsであった。単変量回帰分析によると、血漿エンドセリン-1濃度(標準化回帰係数[β]=-0.446,p=0.049)、尿中ノルエピネフリン濃度(β=-0.536,p=0.015)、尿中バイオピリン濃度(β=-0.535,p=0.015)がそれぞれ運動耐容能と逆相関した。SpO_2が90%以上か未満かで分けた場合、低酸素を呈する群で運動耐容能が低い傾向があった(β=0.396,p=0.084)。一方、血漿ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド濃度は理論に反して運動耐容能と正相関した。前方ステップワイズ法で変数を選択して重回帰分析を行うと、低酸素の有無(β=-0.439,p=0.023)と尿中ノルエピネフリン(β=-0.569,p=0.005)が有意な因子として残った。尿中ノルエピネフリンと尿中バイオピリンとの間に強い正相関を認めた(β=0.806,p<0.001)。本研究において、脳性ヒトナトリウム利尿ペプチドが重症度の指標性を失っていることを示し、これに代わり尿中ノルエピネフリン、尿中バイオピリン、血漿エンドセリン級が重症度指標となりうることを示した。また、尿中ノルエピネフリンと尿中バイオピリンが強い相関を示すことから、酸化ストレスの制御や交感神経の過剰充進の制御が、成人先天性心疾患の治療戦略となる可能性があるとの知見を得た。 研究成果の概要

アンケート調査に基づく研究デザインの実践

アンケート調査票を作成のための仮説の必要性

  1. 仮説構築と調査検証 株式会社 日立インフォメーションアカデミー 調査結果を考察することで「何が言えそうか」という新たな仮説が導けます。その新たな仮説を調査検証することで、さらに深い仮説が導けます。仮説検証は繰り返すことでより高い価値を発揮します高い価値を発揮します。
  2. アンケートの計画
  3. アンケート調査実施前の注意点ー計画編ー アンケート調査には、2つの種類があります。①発見型アンケート②仮説検証型アンケート
  4. アンケート調査を成功させるコツ Point1. 調査目的を明確にする  調査結果をどう活用するかが明確に定まっていないと、調査をやっただけで終わってしまうことがあるため、調査を実施する前に、「今回の調査結果をもとに、どのようなアクションを起こすのか」を決めておくことが重要です。Point2. 調査課題をモレなく整理する 調査課題とは、調査の目的を達成するために、得るべき知見のことです。 Point3. 仮説を立てる アンケート調査の本質は、仮説検証です。仮説を立てる際に重要なのが、検証により仮説が肯定された際の次のアクションまでがきちんと描かれていることです。 
  5. アンケート調査の方法とコツ② 課題設定~仮説構築~調査手法の選び方編 手法 ネットリサーチ 2019.07.26 アンケート調査の企画をする時には、具体的な方法や質問の内容を考え始める前に、解決すべき課題の設定仮説の構築~調査の企画というプロセスが必要です。ここで重要なのは、調査結果が課題の解決に向けたアクションに繋がるように企画することです。このプロセスでしっかり準備することが、調査結果の価値の大半を決めます。問題の原因を次のアクションにおとしこめるレベルまで具体化することで、アンケート調査の結果をマーケティングに活かすことができる 最初に考えた仮説が本当に原因であるとは限りません。考えられる原因=仮説を出来るだけアンケート調査に盛り込んでおく
  6. マーケティングリサーチの成功の秘訣は「仮説」にある 2018 / 02 / 15 市場調査における仮説は成功の鍵 現状仮説とは具体案を提示する際に「現在の状況は、このような状態になっているのではないか」という推測です。実行仮説とは(戦略推定ともいう)ビジネス展開するにあたり「このような方法で実行すればうまく行くのではないか」という仮定です。現状推定は次の実行推定の立案に結びつくような項目でなければならない。想定作りの前の事前調査の方法は、インターネットは基より実際の現場を訪れて生きた情報を集める事が大切である。
  7. 調査仮説の立て方 「調査仮説」がない場合 例えば、「売上不振の理由(商品の不満内容)を把握したい」というだけでは、調査設計まで落とし込めません。「調査仮説」がある場合  例えば、「売上不振の理由(商品の不満内容)は、 商品パッケージのデザインが良くないからだと考えられる」という仮説がある場合、その仮説に沿って踏査を設計することができます。
  8. https://www.advertimes.com/20180308/article266951/ 考察 → 分析 → 設計 という順で考えていく 調査項目を考える、いわゆる調査設計から考え始めると、必ずと言っていいほど後から『あれも聞けば良かった、こう聞けば良かった』という声が聴かれる
  9. https://www.and-d.co.jp/researches/form-hypothesis/ マーケティング上の課題を整理し、リサーチによって明らかにすべきテーマに変換したうえで、「仮説の構築」を行い、マーケティングリサーチで「何を」「どんなふうに」明らかにしていくのかの骨格を作っていきます。
  10. はじめての市場調査:アンケート調査票の作り方は?良い例・悪い例 精度の高いアンケートを作る9つのステップとポイント 2021年05月10日 精度の低いアンケートを行ってしまうと正しい調査結果が得られず、知りたかったことが分からなかったり、間違った結論を導いてしまったりすることがあります。
  11. https://globis.jp/article/5823 アンケートが長くなりすぎるのはもちろんのこと、レイアウトが見づらいとか、ウェブアンケートの場合は操作性が悪いと、答える方が面倒くさくなって、いい加減に答えてしまうことがあります。たとえば、ウェブのスピードが遅く、アンケートで20分以上かかるようなものでは、すべて真面目に答える人は多くありません。
  12. https://www.kcsf.co.jp/marketing/column.html 理想を言えば、設問数は10問~20問程度ではないでしょうか。・最初の数問で、回答者の頭をウォーミングアップ。 (前菜)・その後、やや、本題に近寄りながら、 (スープ)・本題に数問。 (メインディッシュ)・最後は、必要な属性などを確認します。 (デザート)

その他

  1. https://www.marketing-literacy.org/blog/hypothesis-excavation-method/
  2. 課題を把握し、商品・サービスの改善で売り上げを上げるための情報は『顧客』が持っています。「Consumer is Boss」(お客様はボス)はP&G社で徹底されている考え方であり、「ファブリーズ」に代表される徹底的なマーケティング・リサーチ実施による成功例は、まさに好事例と言えます。 https://www.startrise.jp/columuns/view/4179
  3. マーケティングを学ぶ学生たちには、仮説をもつことの重要さを説いています。リサーチの講義においては、そのことはリサーチの位置づけを理解することにもつながるので、とりわけ重要なことと考えています。ここで言う仮説とは、市場における消費者やブランド等の現況に関わる仮説にはじまり、それにもとづいて設定する課題の仮説、さらにはそれを解決するための戦略や施策の仮説まで、すべてを含みます。 https://insight.rakuten.co.jp/knowledge/researchcolumn/vol21.html