当たり前すぎて誰も教えてくれない科研費申請書の書き方の作法、暗黙のルール

当たり前なので誰も言わないけれども、初心者にとっては当たり前でないことが、科研費研究計画調書(申請書)の執筆において重要になります。

申請書を書く際の態度について(*最重要)

研究計画だから、まだデータが出ていないことを書くべきだと誤解する初心者が多いですが、そうではありません。実験データが得られていても「論文化(受理;アクセプト)されていないものは、何も行われていないものと同じ」いうスタンスで書くのが、申請書を書く際の原則です。ですから、もう研究が一通り終わっていると思われると研究費がもらえないのではないか?という初心者にありがちな心配は無用です。

建前の本音が大きく矛盾しているのですが、だからこそ公で誰もはっきりとは言わないことなのですが、ほとんど研究が上手くいっているくらいの状態でデータをバンバン申請書に盛り込んでいるほうが採択されます。なぜなら、研究計画の実現可能性に疑問が挟まれないからです。実験なんてほとんどは思った通りの結果は出ないということは審査委員もみな知っていますので、机上の空論を書かれても真に受けるわけにはいかないのです。

事務が聞いたら怒りそうですが、研究費が得られたら本来の計画書に書いた実験ではなく、「次の」研究のアイデアを纏めるための新たな実験に使ったほうがいいのです。そうしないと、次の申請のときに採択可能性がさがります。「研究費をもらって、実験して論文化」というサイクルではなく、「研究費をもらって、さっさと論文化を済ませて、次に申請するための実験をして論文化の準備をする」というサイクルを回し続けることが、研究者として生き残るための条件なのです。

これは成功している研究者を見れば、皆があたりまえにやっていることです。悪い環境で研究を孤独にやっていると、こういう当たり前のことを教えてくれる人がいないという不幸なことになります。

自分はアメリカのRO-1(大型研究予算)の申請書や、日本の基盤研究(A)の申請書などを見たことがありますが、ぱっと見ほとんど「論文」でした。主要なデータがきちんと論文レベルのクオリティで図として埋め込まれているのです。金額が大きければおおきいほど「ほとんど論文」の傾向が強い(それが要求される)と思いますが、少額である基盤研究(C)や若手研究であっても、基本的な考え方は同じです。

申請書に書くべきこと

申請書には、やることを書きます。また、なぜやるのかという理由も書きます。なぜその研究が大事なのかという説明を書きます。科研費の申請書は、将来の希望を書くための書類ではありませんし、心情を吐露するためでもありません。主観を排して客観的に、すなわち、文献や予備実験データに基づいて、論理的に話を進める場所です。唯一主観を交えて書いても良い場所が、本研究の着想に至った経緯のセクションです。申請者が何を考えているのかを書くべきですが、それは根拠のない思い付きや心情を書くということではなく、どうロジカルに考えた結果そのような主張をしているのかがわかるように書くべきなのです。

3年なら3年という限られた年数の間に、何をやって何を明らかにするつもりなのかを書く代わりに、医療の発展に寄与したいとか、あやふやな願望ばかり書いていては、採択はおぼつきません。

申請書はいくつかのセクションに分かれていて、このセクションにはこれを書くというのがある程度決まっています。研究目的なら、研究目的のセクションに書くわけです。当たり前ですね?このあたりまえのことを守らない人も結構います。書くべきことを書いていなかったり、逆に、書く必要のないことを書いていたりします。そんな申請書は、もちろん採択されるわけがありません。

申請書作成にあたっての態度

なぜ申請書に書かれた指示を守らない書き方を平気でするのか?それは一言でいうと、独りよがりだからです。独りよがりは物事に対する態度なので、申請書のいたるところでその独りよがりぶりが見てとれます。例えば、論文の図などをコピペした際の英語のフォントが小さく読めないのに気にしないなど。独りよがりでない、すなわち、読み手を意識して読みやすい申請書を作成する心の態度ができている人は、ちゃんと読める大きさに図を作ったり、理解しやすいように英語の部分を全部日本語に直したりといった工夫をするわけです。「独りよがりな人=実験データを客観的に解釈できず、自説に引き寄せてしまう人」の恐れが大きいため、研究者としての評価が低くなり、審査委員にしてみれば研究費をあげたい人には入らないでしょう。

申請書の言葉遣いに関する掟

研究目的のセクションに、研究目的を書かずに、研究目的の意義を書く人もたくさんいます。「細菌叢を解析することにより、疾患Aとの関連性を明らかにする」というのが研究目的だったとしたら、研究目的のセクションに「細菌叢を解析することにより、疾患Aとの関連性を明らかにすることにより効果的な治療戦略の開発に貢献できる」などと書くのが典型的な失敗例です。研究目的の文と、その意義を述べる文は一続きの文にせず、2文に分けましょう。

プロポーズするときに、「あなたと結婚したらきっと幸せな家庭が築けると思うよ」と言っても、言われた相手はプロポーズされたとは思わないでしょう。「あなたと結婚したい」と言わなきゃだめです。科研費の研究目的の書き方も、それと同じです。

申請書は書き言葉で書きます。話し言葉やくだけた表現を用いてしまうのもよくある失敗例です。また、ラボで飛び交う日常語と正式な言葉とは使い分けましょう。ラボでは、「サザン」をするというかもしれませんが、書くとときは「サザンブロット法」です。「それで、」とは書かず、「そこで、」と書きます。「そして」も普通使いません。「また」あるいは「その後」といった言葉を使います。使う言葉で、その人がプロフェッショナルな研究者なのかそうでないのかは、一瞬でバレてしまいます。

概要で書くべきこと

概要は、指示にもある通り、本文の要約です。この指示を無視して、本文に書いていない情報を盛り込む人が多数います。これは申請書に整合性がないもの判断される材料になるでしょう。

概要で大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)と書いたからといって、本文でいきなりASと書くのは、「概要は本文の要約」という鉄則に反した行為です。本文でも繰り返しになって全然OKなので、初出時は大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)と書きましょう。そもそも本文のスペースが十分余裕があるのであれば、わざわざASなどど略さなくてもよいでしょう。

概要のところを10行分くらい空けておき、本文4ページ分を書きあげてから4ページ分の要約を概要に書けば、上のようなつまらないミスは起こしようがありません。様式をダウンロードしたあと、まず概要を書き、続けて本文を書き進むといった作成方法をしている人は要注意です。

背景に書くべきこと

その次に来る学術的な問いの妥当性を客観的に説明するために書きます。客観性を出すためには、文献を引用しながら書くのが鉄則です。自分の個人的な体験や考えをただ書いても説得力が出ません。

ただし2025年度科研費から、着想に至った経緯が(1)に入ってきたので、ある程度自由度があるかもしれません。

着想に至った経緯

業績がほぼない臨床医であれば、日常臨床でどのようなクリニカルクエスチョンを得てそれをリサーチクエスチョンとしたのかを書いてもいいでしょう。しかし、研究業績のある人で、テーマに関連する論文の積み上げがある人であれば、自分の論文業績に基づいて書くのが普通です。

2025年度科研費(2024年度応募)から様式に変更があり、着想に至った経緯は、(3)の中ではなく、(1)に書くことになりました。毎年、前年度の申請書のコピペで申請書を作っている人は要注意です。背景~着想~問い はひと続きに書いても、それぞれ分けて書いても、どちらでもいいと思います。ただし、背景を書く目的がそもそも問いを導くためなので、このセクションは一まとまりで書くほうが自然のような気がします。

学術的な問いに書くべきこと

あくまで明らかにしたい学術的な問いであって、「こんな研究は可能か?」という疑問を書くのではありません。日常語としての「問い」の意味に引きずられないようにしましょう。

学術的な問いは、文字通り「学術的な問い」です。ある実験系においてどういう結果が出るか?という具体的なものではなく(それは研究目的)、もっとその研究領域の他の研究者とも共有されるような大きなものであるべきです。「抽象度ー具体度」の軸で考えると、研究目的よりも学術的な問いのほうが抽象度が高くないとおかしいのです。思い付きで例を挙げると、以下の項目は上ほど抽象度が高く、下に行くほど具体性が増します。

  • がんの撲滅
  • 抗体医薬の開発
  • 免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証
  • ヒト大腸がんの細胞株を用いた免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証
  • ヒト大腸がんの細胞株の担癌マウスを用いた免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証

学術的問いと研究目的を設定する場合、どの「大きさ」で設定するかは本人次第ですが、どうであれ、問いは目的より抽象度を高くした記述になっているのが普通です。ただし、「同じ」というのもあり得ます(問いと研究目的が、言葉としては裏返しの関係)。

研究目的に書くべきこと

初心者でときどき勘違いしている人がいて、研究目的として、がんを撲滅して人類に貢献したいといった内容を書く人がいます。これは将来の願望や希望であって、このセクションに書くべきことではありません。通常の日本語でいう「目的」であれば、がんの撲滅は立派な目的ですが、申請書における研究目的とは、「何をどう研究して何を明らかにするのか」という意味です。研究期間内(3~4年)の間に何をやるかを書くのです。将来的な目標を書く場所ではありません。通常の日本語に惑わされないようにしましょう。これは、採択されている人間にとっては当たり前すぎることですが、初めて科研費に応募する人の中にはわかっていない場合があります。どうしても将来的な目標まで書きたければ、期間内の目標と将来のことをハッキリと書き分けましょう。

「研究目的は、~を目的として~を行うことである。」と書いてしまうと、前半部分だけが目的のようになって、分かりにくくなりますので、「研究目的は、~を明らかにするために~を行うことである。」と書いたほうがよいでしょう。

独自性に書くべきこと

「他に論文報告がない研究だから独自性がある」と書くのがダメです。重要な研究なのになぜ誰もやっていないのか、できなかったのか、なぜ自分ならできるのかを説明しましょう。誰もやっていないということは、誰も興味を持たないくらいに面白くない研究テーマであることが多いはずです。

「本研究は~を~して~を明らかにする点で独自性がある」と書く人も多数います。「本研究は~を~して~を明らかにする」の部分が、単に研究目的に書いたことそのままだとしたら、それは独自性を説明したことには全くなりません。AならばAである、とトートロジーを述べているようなものです。独自性=他者と比べて何がどうなのか という説明が必要です。

創造性に書くべきこと

創造性という言葉の意味が広すぎて、人によって書くべきことのイメージが大きく異なる可能性があります。アイデアの斬新さや、研究成果の波及効果(社会に対する貢献や、おなじ研究領域の他の研究者に対する貢献、ベネフィット)を書けば良いでしょう。ぶっちゃけ、審査委員(=同じ研究領域の研究者)が自分たちの役に立つと思ってくれればよいのです。

もう一つの考え方として、自分の研究に将来的な広がりがあるという観点で書くのもありでしょう。しかし、上で書いたことのほうが強力です。自己的な人より他己的な人のほうが評価されるのは当たり前。

創造性という言葉はかなりビッグワードなので、~という点で創造性があると書いても、日本語として不釣り合いなことが多いです。そういうときは、~という点に特色がある。程度で済ませましょう。いろいろな意味でバランスが悪い人は、研究能力も低いのではないかと疑われます。

 

研究動向と位置づけ

他人の研究と自分の研究を紹介すればそれが動向であり位置づけになりますので、動向と位置づけは表裏一体であって、分けて書かないほうがいいと思います。また研究動向はあくまでその申請書の研究テーマに関する研究動向(それくらい広く捉えるかはケースバイケースで正解はない)であって、あまり関係がない研究を紹介するのは意味不明です。

「着想に至った経緯や、研究動向と位置づけ」という指示があるせいか、着想を書いて、そのあと書くことがなくてなのかスペースがなんとなく埋まったせいなのか、動向・位置づけを何もかかずに済ませる人がいます。これは絶対にダメです。着想は主観を書く場所なので、評価のポイントになりえません。しかし動向と位置づけは、客観性をもってその研究の意義をアピールするために必須なので、それを書かなければ採択されるはずもありません。

本研究で何をどのように、どこまで明らかにするのか

このセクションはいわゆる研究計画欄であって、方法や計画、実験課題を具体的に書きます。具体的といっても何を何ml採取して何と混ぜてとか、何gで遠心してなどとプロトコールを書いてはいけません。実験をやり慣れている人が読んだときに何をするのかが分かる程度の詳しさで十分です。遺伝子発現を調べるのであれば、RNAseqなのかreal time PCRなのかウエスタンブロットなのか免疫組織なのかといったことを書く必要があります。関連する実験の論文を多数出している人は、細かいことを書かなくても信用してもらえますし、関連論文ゼロの人は自分がその実験をできるんだというアピールが必要です(予備データを見せるとか、publishableなデータでなくても少なくとも自分のいる研究で自分自身で実験をこなせることを示す写真を見せるとか)。

また、実験の作業工程をえんえんと書いてお仕舞いにしても、読んだほうにはちんぷんかんぷんですので、それぞれの実験を行う意図や目的を必ず書きます。このセクションの最初と最後には実験目的や得られる結果の予測と結論などを書きましょう。

準備状況

予備実験データなどがあればそれを書いてもいいでしょう。予備実験データは計画欄においてもいいですし、背景などもっと前のほうにおいてもいいと思います。ただ単に、準備は万端整っていて採択されれば確実に研究計画を実施可能である。と書いてもあまり説得力がありません。準備できているのなららその中身を書いて、判断は審査委員に委ねましょう。

研究者の遂行能力

ここはいわゆる業績欄で、昔は単に論文のリストを書く場所でした。科研費の様式も変遷を経ていて、今ではかなり自由に何を書いてもよいことになっています。そうは言っても、論文リスト+それらの論文の解説というパターンで書く人がほとんどでしょう。

  1. 査読付き原著英語論文(筆頭著者論文、責任著者論文、共著論文)
  2. 査読付き原著和文論文、英語論文(総説)、症例報告論文、和文商業誌の記事、論文
  3. 学会発表(筆頭演者)

人によって考え方が違うかもしれませんが、上のようなことを書くといいと思います。特に、研究計画に関連する論文はしっかりとアピールします。関連論文がないなら、関連性が薄い論文でもなんでもとにかく余白を作らないように書けるだけ書きます。

関連論文の内容を、場合によっては図なども提示しながら日本語の文章で解説するというのもありです。論文数が少ないほど、日本語の文章が増えることになります。

研究分担者の業績も書きますが、分担者の業績が大半を占めるのはNGです。代表者の業績が少なければ、より詳細に説明することにより、スペース的には代表者がメインになるように印象付けましょう。分担者が他大学の他の専門領域の人の場合で、相補的な関係がある場合は、分担者も代表者と同じ程度にしっかりかくというのは当然のことです。

研究環境

2ページのうち1ページを遂行能力、1ページを環境に当てる人もいますが、それはバランスが悪すぎます。環境は半ページ以下で十分。4~5行でも十分です。研究遂行能力に十分なスペースを割きましょう。

経費

経費を非常に細かく人がいますが、ある程度ざっくりでも大丈夫です。分子生物学用試薬10万円など。抗体は一つ5万円くらいしますので、経費の説明で何に対する抗体かも書いたりしたほうが良いと思います。経費は雑に書いても採択される人は採択されますが、ボーダーライン上のどんぐりの背比べの中に入っている人は、少しでも印象を良くするために、経費の理由をきちんと、研究計画と整合性があるように書きましょう。誰であれ、整合性がないことを書くと、印象が非常に悪くなります。

国内学会の出張費に10万円などと書かれていると、自分はちょっと高くない?と思ってしまいます。東京の研究者が横浜の学会に行くのか、沖縄や札幌の学会に行くのかで旅費は全然違ってくるでしょうから、第XXX回XXX学会(福岡市)などと具体的に書いて常識的な経費を申請したほうが印象が良くなります。逆に海外の学会でヨーロッパ15万円などと書いていると、それで行けるの?と思ってしまいます。エコノミーの座席で格安航空券を買うにしても、宿泊代と航空運賃合わせて30~40万円はかかるのではないでしょうか。

基盤研究(C)や若手研究の助成金額の上限は500万円ですが、それを458万円などとしている人もいます。まず、金額を低くすれば採択可能性が上がるかと言うと、そういうことは全くありません。希望金額と採否は無関係です。また、採択された場合の充足率(実際にもらえる金額)は70%くらいです(最近の挑戦的研究は、100%の充足率になって、話題を呼びましたが)。真面目に書いてしまうと30%削られた金額しかもらえないので、馬鹿正直に書くより少し多めに書いておいてちょうどよくなるということは知っておくべきでしょう。採択されても30%減ということは、それくらいが誤差と考えて金額を書いてもいいのだと自分は思っています。英文校正費用が5万円で済むところを6万円と書いてもなんの問題もないでしょう。

熱量

レベルの高い競争だと、熱意があるのが当たり前なのでそこで差がつくことはないですが、若手研究くらいだと、きちんと申請書を書いていて熱意が感じられるほうが印象が断然よいと思います。採否のボーダーラインにたくさん並んでしまった場合には、熱量があるものが拾われることもあるのではないでしょうか。誠心誠意頑張っているのが伝わる申請書を採択させるという審査委員の言葉を聞いたことがあります。もちろんボーダーライン上でどんぐり状態になった場合の話だとは思いますが。熱量というのは言葉であからさまに表現するものではなくて、申請書の隅々にまで神経がいきわたっていることも、熱量を感じさせる大きな要素になります。

科研費の教科書

いちばんわかりやすい科研費申請書の教科書」(amazon.co.jp)は発売日が2023年9月7日のため、まだ中身を読んでいませんが、科研費.comさんの著作ですので期待が持てます。アマゾンで予約購入すると発売日当日に到着するように発送してもらえるようです。 買って読みました。参考になること(他の類書に書いていないこと)がいくつもあって、自分には非常に参考になりました。

科研費 採択される申請書のまとめ方」(amazon.co.jp)は、近年のベストセラーだと思います。特に審査委員がどうやって審査しているのかという実際や審査委員がどう感じるのか、どう考えるのかといったことも細かく紹介されており、それを踏まえてどのように申請書を作成すればいいのかがわかるようになっています。繰り返し読んで血肉とすべき良書でしょう。

科研費獲得の方法とコツ」(amazon.co.jp)はベストセラーかつロングセラーで、系統だって書かれた正統派教科書の趣があります。初心者はまずこれを読んでから執筆にとりかかるのが良いでしょう。それに対して、「科研費 採択される申請書のまとめ方」は、何度も応募していて書きなれてはいるけれども採択されたことがない人に一番効果がありそうです。

科研費申請書の書き方

採択される科研費申請書の作成方法:仮説を図で示そう!

科研費の申請書に研究計画を書くわけですが、分野が違う審査委員が初めてその研究テーマに関する話を読んで、スッと理解できるかというとそれは難しいはずです。どうすればスムーズに理解してもらえるのか?一番良いのは、その研究計画で検証しようとしている作業仮説の図(いわゆるポンチ絵)を示すことです。

自分のは探索型研究なので仮説がない?いやいや、むやみに探索しても結果がでるはずがありません。探索型と言いつつ、必ず何かしらの仮説が頭にあって、探索研究をやろうとしているはずです。データ駆動型研究でも同様です。ビッグデータの解析をやみくもにできるはずがありません。解析する以上なにかしらの仮説があってのことのはずです。科研費の申請書は仮説駆動型で書きましょう。論文を書くときだって、仮説駆動型で論文をつくったほうがトップジャーナルに掲載されやすくなるのは自明のことです。

作業仮説が描けない人は、多くの場合、そもそも作業仮説が頭の中でまだ固まっていないからです。白い紙を用意して、自由に描いていきましょう。何回も描きなおすのは当然のことです。そうしているうちに、自分がやりたいことや、どのステップにエビデンスがあって、どのステップがまだ未知なのか、どういう可能性があり得るのか、いろいろと頭の中が整理されてきます。この作業をやったかやらないかで、科研費の採否が決まるといっても過言ではありません。頭を使い、知恵を絞り、文献を確かめる作業なのでしんどくて当たり前です。文章を書く前に、作業仮説の図を描きましょう。いったん図が出来上がれば、あとはその図を説明するようにして本文を書いていけばいいので、本文はさくさく書けます。

科研費申請書で業績が少ないときの業績欄の埋め方

申請書には、研究計画の実行可能性を示すため、研究者の遂行能力を書く欄があります。論文がいくつかある人は論文リストを見せることが多いのですが、論文が一報しかなかったり、原著英語論文が一報もない場合には何を書けばよいのでしょうか?

そもそも基盤研究(C)の場合、査読付き英語原著論文が0~1報で採択される可能性は非常に低いです。ただしゼロではありません。その場合は、審査種目(小区分)選びが重要です。0~1報の論文業績でも採択された人を自分は知っています。

若手研究の場合は、今は博士号取得者しか出せませんので少なくとも1報は論文がある(=学位論文)ということになるかと思います。ただし大学医学部の紀要に和文で博士論文を出して学位を取る人もいるかもしれませんので、英語論文ゼロで若手研究を狙うという状況もあり得るでしょう。

さて、そういう論文業績が少ない応募者がとるべき戦略とは何でしょうか?研究計画の実現可能性がどうやって測られるのかというと、予備実験データが出ているか、過去に関連する研究で論文が出ているかの2つだと思います。論文がないのなら、予備実験データを見せることは必須です。どっちもないと無理でしょう。

それで業績欄の埋め方の話に戻りますが、まず余白を作らないことです。余白=業績ゼロということです。よく、筆頭著者論文しか載せてはいけないんでしょうか?とか、学会発表は載せたらだめですよね?とか、考える人がいます。余白よりマシというのが私の答えです。余白をつくるくらいなら、臨床医なら臨床経験を語り、症例報告の論文を紹介し、学会発表や和文商業誌の論文でもいいので示すべきです。実のところ、臨床医の場合、臨床医としての経歴を最初に書いている人も(それで採択されている人も)結構います。臨床研究の場合は、臨床医であることも立派な「実現可能性の判断要素」になります。臨床医であることを明示しない限り、読み手には応募者が医師なのかどうかはわかりません。医師であることを正式に書く場所というものは申請書に存在しないからです。

論文が一報しかなければ、その論文の紹介を日本語の文章で書きましょう。論文がないならせめて熱意だけでも示すべきです。論文が多い人は、当然学会発表もしているのが普通なので、学会発表の記載は一切しなくても全く問題ありません。査読付き原著英語論文に勝るものはないからです。

科研費の教科書

  

科研費申請書の書き方

科研費申請書の書き方の作法:審査委員が審査しやすいように書く!

科研費の審査委員は、一人あたり80件~100件程度の応募書類を限られた期間内で審査するそうです。もちろん大学教員として講義を持っていたり、実習を担当していたり、自分の研究をして論文の執筆をしたり、学会に出かけたり、大学運営のためのさまざまな学内の委員会、会議に出席したり、学生の指導に当たったり、臨床医であれば診療に従事したり、そしてもちろん家庭との時間を大切にしたりと、超、超、超多忙ななかで審査をします。そうなるとどう頑張っても、一件あたりに割ける時間というのは限られており、自分が聞いたところでは15分~20分で一件を終わらせないと審査業務を期間内に終えられないとのことです。10分読んで5分で評価(コメント作成、評点)あるいは15分読んで5分で評価といったところでしょうか。15分x80件でも1200分(=20時間)です。毎日2時間やっても10日間かかります。20分x100件だと2000分(=33.3時間)です。毎日2時間やっても17日間かかります。こうしてみると、どれだけ審査委員の負担が大きいかがわかることでしょう。

申請書を一読するだけでも15分かかるのではないでしょうか。すると一読して理解できなかった申請書をもう一度読み直す時間があるでしょうか?そう考えると、一回読んだだけでは理解できないような申請書が高い評価を受ける可能性は低いということがわかります。審査委員は理解できなかった研究計画に高評価を付けることはありえません。

頭からじっくり読むと15分では読み切れないとしたら、概要を読んで内容をつかんで、いきなり学術的な問いや研究目的を読み、最も重要なセクションである研究計画を読むということも考えられます。まずは業績欄を見るという審査委員もいるでしょう。

ここまで考えてきてわかることは、頭から読まれてもスムーズに読み進めてもらえるように書かれていないといけないだけでなく、いきなり研究計画を読まれても内容が理解してもらえないといけないということです。つまり、各セクションをできるだけ独立させるということです。研究計画欄にいきなり実験課題の作業手順をダラダラ書き始めるのではなく、冒頭には研究目的を簡潔に書く必要があります。研究計画の最後は、作業工程の説明で切れさせるのでなく、以上の実験課題を遂行することで何が明らかにできるのかを再度まとめて、締めの言葉とすべきです。

申請書にぎっちり書いて、そもそも各セクションがどこにあるのか何秒もかかて探さないといけないというのは大きなストレスです。ページをめくった瞬間にパッと何がどこに書いてあるのかがわかるように、セクションタイトルは太字で強調したり空白をうまくつかったり、網掛け(ハイライト)を利用したりといった工夫をしましょう。

研究計画欄に実験課題を書くときも、各実験の項目を立てて、それらの項目を読むだけで研究の流れがわかるようにしておくことが大事です。実験手技名で項目を立てる人も多いですが、それだと研究音流れが見えません。かならず実験目的名で項目を立てましょう。

自殺および自殺関連行動に関する科研費研究の採択課題

精神神経科学関連 自殺関連

  1. 体内微量リチウム濃度と攻撃性・自殺関連行動の関係の解明 23K07028 2023-04-01 – 2026-03-31 安藤 俊太郎 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20616784) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C)
  2. コホート研究による子どもの自殺関連因子と予測因子の解明 21K07475 2021-04-01 – 2024-03-31 栗林 理人 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (80261436) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C)
  3. がん患者の自殺の実態調査と医療者を対象とした自殺予防研修プログラムの開発研究  19K08051 2019-04-01 – 2023-03-31 河西 千秋 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50315769) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C)
  4. 自殺企図者の微量リチウム濃度:症例対照研究 18K15488 2018-04-01 – 2022-03-31 兼久 雅之 大分大学, 医学部, 客員研究員 (40555190) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究
  5. 認知症予防に着眼した日本全国を対象とした調査:水道水リチウムの効果 18K07605 2018-04-01 – 2022-03-31 石井 啓義 大分大学, 医学部, 准教授 (00555063) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C)

臨床心理学関連 自殺関連

  1. 自殺予防のための自閉スペクトラム症のある子どもの自殺リスクと自尊感情の検討 22K03102 2022-04-01 – 2025-03-31 太田 豊作 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10553646) 小区分10030:臨床心理学関連 基盤研究(C)
  2. 自殺関連行動に関連した青年期情緒障害のスクリーニングに関する総合的研究 20K14185 2020-04-01 – 2022-03-31 岡田 優 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (00836421) 小区分10030:臨床心理学関連 若手研究

社会福祉学関連 自殺関連

  1. 地域の中高年者自殺予防における一般医とソーシャルワーカーの連携構築(G-Swネット) 23K01813 2023-04-01 – 2028-03-31 坂下 智恵 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (70404829) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  2. ソーシャルワーカー養成課程で包括的な自殺予防教育推進に必要なプログラム等開発研究 19K02198 2019-04-01 – 2023-03-31 小高 真美 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (60329886) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)

教育心理学関連 自殺関連

  1. 性の多様性をめぐる対話的関係の形成を目指したゲーミング教材の開発と実践 22K03082 2022-04-01 – 2027-03-31 荘島 幸子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 准教授 (70572676) 小区分10020:教育心理学関連 基盤研究(C)
  2. 健康診断におけるこころの状態スクリーニング面接が視覚障害学生の健康度に果たす役割 19K03252 2019-04-01 – 2023-03-31 佐々木 惠美 筑波技術大学, 保健科学部, 客員研究員 (70251056) 小区分10020:教育心理学関連 基盤研究(C)

家政学および生活科学関連 自殺関連

  1. 妊産婦の自殺予防に向けた死への不安・恐怖に関する総合的発達モデルの構築 18K13034 2018-04-01 – 2023-03-31 田中 美帆 武庫川女子大学, 文学部, 助教 (80802678) 小区分08030:家政学および生活科学関連 若手研究

教育工学関連 自殺関連

  1. 自殺予防のためのスマートフォン・アプリケーションの開発 20K03151 2020-04-01 – 2023-03-31 白石 将毅 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (60438059) 小区分09070:教育工学関連 基盤研究(C)

衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない 自殺関連

  1. 慢性自殺傾向を呈す自殺ハイリスク者に対する継続的地域支援のための基礎研究 19K10648 2019-04-01 – 2024-03-31 勝又 陽太郎 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30624936) 小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない 基盤研究(C)

臨床看護学関連 自殺関連

  1. 若年者の自殺予防チェックリスト開発と対策モデルの構築 19K19561 2019-04-01 – 2023-03-31 青石 恵子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (00454372) 小区分58060:臨床看護学関連 若手研究

社会福祉学関連 自殺

  1. 18歳以前の逆境体験と若者の自殺リクスの関連に関するコホート研究 23K01890 2023-04-01 – 2026-03-31 大場 義貴 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 教授 (20440604) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  2. 地域の中高年者自殺予防における一般医とソーシャルワーカーの連携構築(G-Swネット) 23K01813 2023-04-01 – 2028-03-31 坂下 智恵 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (70404829) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  3. クライエントの自殺発生時にソーシャルワーカーが活用する対応マニュアルの開発研究 22K02076 2022-04-01 – 2025-03-31 小高 真美 武蔵野大学, 人間科学部, 准教授 (60329886) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  4. 精神保健福祉士によるソーシャルアクション研修プログラム開発と普及啓発に関する研究 22K01987 2022-04-01 – 2025-03-31 小沼 聖治 聖学院大学, 心理福祉学部, 准教授 (80737247) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  5. Age Friendly Cities指標を用いた介護予防政策評価と社会実装研究 21H00792 2021-04-01 – 2026-03-31 鄭 丞媛 新見公立大学, 健康科学部, 教授 (50553062) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(B)
  6. 都市部における勤労世代の生活困窮者が適切な支援に繋がる総合的支援モデルの構築 20K13793 2020-04-01 – 2023-03-31 松永 博子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70811272) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究
  7. 社会起業による開発的ソーシャルワークの実践効果と支援体制に関する実証研究 20K02310 2020-04-01 – 2023-03-31 呉 世雄 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (00708000) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  8. クィア視点に基づく性的指向・性自認に関する社会福祉士養成教育プログラムの開発 20K02267 2020-04-01 – 2023-03-31 長澤 紀美子 高知県立大学, 社会福祉学部, 教授 (50320875) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  9. 「雇用なき成長」下における若者の自立支援のあり方の国際比較研究 20K02206 2020-04-01 – 2023-03-31 佐々木 宏 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (50322780) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  10. 機械学習を用いた生活保護受給者の精神保健支援の検討 20J01910 2020-04-24 – 2023-03-31 小区分08020:社会福祉学関連 特別研究員奨励費
  11. 自殺率の高い離島の市における自殺の現状分析と自殺防止に関する研究 19K14003 2019-04-01 – 2023-03-31 波名城 翔 琉球大学, 人文社会学部, 講師 (70768811) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究
  12. 障害者の平等権としての合理的配慮 19K13990 2019-04-01 – 2023-03-31 村山 佳代 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (20823066) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究
  13. 福島県の吃音問題の解決に向けたアクションリサーチ 19K13978 2019-04-01 – 2023-03-31 森 弥生 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (90816399) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究
  14. 発達障害児の家族の相互交流支援プログラムの開発と効果評価 19K13976 2019-04-01 – 2023-03-31 平田 祐太朗 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80770817) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究
  15. 認知症カフェスタッフの認知症の人とその家族の顕在的・潜在的ニーズに対する認識 19K02283 2019-04-01 – 2023-03-31 山田 裕子 同志社大学, 研究開発推進機構, 名誉教授(嘱託研究員) (80278457) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  16. 犯罪被害者の「回復」過程を促進する要因に関する研究 19K02221 2019-04-01 – 2023-03-31 伊藤 冨士江 上智大学, 総合人間科学部, 研究員 (00258328) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  17. ソーシャルワーカー養成課程で包括的な自殺予防教育推進に必要なプログラム等開発研究 19K02198 2019-04-01 – 2023-03-31 小高 真美 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (60329886) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  18. 生活困難状況にある若者への離家支援としての共同生活型支援の実態及び有効性の検討 18K13012 2018-04-01 – 2023-03-31 岡部 茜 大谷大学, 社会学部, 講師 (20802870) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究
  19. きょうだいを自殺で亡くした遺族への情報提供と支援のあり方に関する質的研究 18K13011 2018-04-01 – 2023-03-31 大倉 高志 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (00761769) 小区分08020:社会福祉学関連 若手研究
  20. 政策決定過程における精神障害当事者委員参画と当事者活動との関連 18K02113 2018-04-01 – 2023-03-31 松本 真由美 日本医療大学, 保健医療学部, 教授 (20738984) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(C)
  21. 統合データに基づく高齢者への社会的孤立軽減にむけた地域福祉実践のプログラム評価 18H00953 2018-04-01 – 2022-03-31 斉藤 雅茂 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (70548768) 小区分08020:社会福祉学関連 基盤研究(B)

肝臓の解剖学と機能

生化学の勉強をすると、小腸で吸収された栄養分(糖類、アミノ酸など)は小腸に張り巡らされた毛細血管の中に入って門脈に送られるという説明を受けます。門脈というのは、肝臓に入っていく静脈です。

肝臓の位置

右上腹部にあり,右側が大きくなっています。 https://pt-dodo.com/article/liver-essentials.html

門脈とは

門脈系毛細血管二回通過する特殊な形態をもっています。具体的に説明すると、心臓から出た動脈は各消化管の毛細血管を通過して静脈になります。この静脈は消化管で吸収された栄養を多く含んでおり、肝臓内の毛細血管で吸収されたのち、静脈になり心臓に灌流されます。https://goukaku-ptot.com/veins-flowing-into-the-portal-vein/

門脈は一本の太い静脈の血管でそれが肝臓の中にはいって枝分かれして細かくなっていき毛細血管となります。そして肝臓の毛細血管が再度集まってしだいに太い幹になりやがて一本の太い血管(下大静脈)になります。下のリンクの肝臓の血液供給の図をみるとわかりやすい

  1. 肝臓の血管障害の概要 MDDマニュアルプロフェッショナル版 肝臓の血液供給

門脈へつながる消化器の静脈

門脈は、胃・小腸・大腸・脾臓からの栄養をそれぞれ、左胃静脈、上腸間膜静脈、下腸間膜静脈、脾静脈を通じて門脈に集めて肝臓に送り込んでいる (花子のまとめノート https://www.hanakonote.com/kaibouseiri/kanzou.html)

【基礎から勉強・解剖生理学】下大静脈(門脈・奇静脈)【理学療法士・作業療法士】【西島ゼミ】PTOT国試対策チャンネルチャンネル登録者数

肝臓の区画

肝臓は解剖学的には、前面から見ると肝鎌状靭帯により右葉と左葉の2つに分かれている。しかし実際臨床では実用性から、胆嚢底と肝背面の下大静脈を無結ぶ線カントリー線)を堺に右葉と左葉に分けて考えられている。(花子のまとめノート https://www.hanakonote.com/kaibouseiri/kanzou.html)

肝はまず,右葉と左葉の2区域に区分される.両者は下大静脈と胆嚢窩を結ぶ仮想の線(cantlie線)によって分けられる.https://www.chiringi.or.jp/k_library/kaishi/kaishi2012_2/index.html

肉眼的には大きく左葉右葉に分かれます。胆嚢窩下大静脈を結ぶ線によりその左側を左葉、右側を右葉とします(下図:肝臓の部位)。それぞれは門脈の走向に従って前・後側、内・外側の4つの区域尾状葉に分けられます(ヒーリーとシュロイの分類)。あるいは、S1-8の8つに分けることもあります(クイノーCouinaudの分類)。肝癌取扱い規約第5版補訂版では両者の分類が組み合わせて使われ、S1-8は亜区域と呼ばれます(下図:Couinaud区域分類)。肝に入る血管(門脈と肝動脈)、肝から胆汁を分泌する胆管の3つは結合織によって束ねられており、それをグリソン鞘と呼びます。https://www.palana.or.jp/ipath/manual/1-digestive/5_liver

Palmoplantar Pustulosis (PPP)とは

Pustular psoriasis, distinct disease or part of psoriasis spectrum? | Hervé Bachelez, PhD | France International Psoriasis Council チャンネル登録者数 801人

What are the genetic causes of Palmoplantar Pustulosis (PPP)? Psoriasis Association チャンネル登録者数 991人

科研費の審査種目(小区分)の選び方:プライドは捨てて実を取れ!

医学部の先生は科研費の審査種目(小区分)を、自分の所属する診療科名で選ぶ人が多いようです。神経内科医なので神経内科学関連。消化器外科なので消化器外科学関連。循環器内科医なので循環器内科学関連。基礎系の研究者であれば、免疫学講座に所属しているので、免疫学関連。こうやって、なんとなく当たり前のように審査種目を選ぶ心理だけでなく、自分は~医だから~学関連で採択されたい、~学関連の審査委員の先生たちに認められたいというプライドもあるような気がします。自分が所属する研究者コミュニティに自分の研究を認めて欲しいと思う気持ちはとっても自然なことで理解できます。しかし、それはそれ、科研費は科研費。分けて考えましょう。

実のところ、日本は免疫学は世界のトップレベルなので免疫学関連は大激戦区ですし、伝統的な診療科の名前がついているような審査区分は一般的に激戦区になっていることが多いと思います。科研費の小区分リストを眺めていると、そういった伝統的な名称ではないものがたくさんあります。医用システム関連とか医工学関連とか、学際的なものですね。また、伝統的な分野であっても、「業績格差」で採択されやすい審査区分というものがあります。

実は、科研費で採択されている人はみな、そうやって楽に勝てそうな審査区分を探し回ってそこに応募しているのです。プライドがあったとしても、そんなプライドは科研費採択には不要です。不採択になるよりどこの審査区分でもいいので採択されたほうがよいのは明らかでしょう。だれも、採択された人の審査区分なんて気にしません。「あの人は科研費に採択された人」と思われるだけです。

自分で思いつけない審査区分の候補をどうやって見つければよいのか?というと、自分の研究のキーワードでKAKENを検索してみればよいのです。初めて聞く名前の審査区分で採択されているものが見つかることでしょう。

テーマと審査種目とのマッチングも大事です。科研費の審査の手引きなどの資料を見ると、分野違いだからという理由で低評価をつけてはならないということが書かれています。しかし、研究の意義を認めるかどうかとなると、どうしても、その研究テーマが審査委員にとって重要と思えるかどうかという主観が入るはず。なので、あまりにも場違いなところに応募してしまうと、正しく評価してもらえないでしょう。類似課題(キーワードが一致する課題)がその小区分で採択されているかどうかはしっかり確認しましょう。キーワードがあっていても不十分で、研究の方法などまであっているかどうかも大事なことがあります。しっかりと吟味して決めてください。

プロピオン酸とは

プロピオン酸の構造

プロピオン酸はカルボン酸の一つで、炭素数3です。

炭素数1が蟻酸(ぎさん)で、化学式はHCOOH

炭素数2が酢酸(さくさん、acetic acid)で、化学式はCH3-COOH

炭素数3がプロピオン酸(propionic acid)で、化学式はCH3-CH2-COOH

となります。3つまとめて覚えたほうが楽でしょう。アルカンは炭素数の順に、メタン(炭素数1)、エタン(炭素数2)、プロパン(炭素数3)なので、prop-an  + ionic acid でpropionic acidというわけ。

プロピオン酸は脂肪酸か

http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~lipo/lecture/fa/fa.html

炭素が十数個つながって末端にカルボキシ基がついている化合物は脂肪酸と呼ばれます。何個から何個までが脂肪酸なのかというのは、あまり明確に決まっていないような気がします。構造的には1個でも100個でも、統一性はあるわけですが、そこは、生物の話ですので、適切な長さというものがあります。

酢酸プロピオン酸は構造的には一連の物質であるが、脂肪酸というには抵抗がある。結局、炭化水素鎖の一端にカルボキシル基を有し(カルボン酸)水に溶けないものという定義になるのではないだろうか。http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~lipo/lecture/fa/fa.html

  1. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/13/1/13_1_12/_pdf/-char/ja

プロピオン酸の産生

生化学講義のどこでプロピオン酸が出てきたかというと、奇数個の炭素をもつ脂肪酸のβ酸化の最後のステップでした。偶数個であれば、CH3-COO-S-COAで、アセチルCoAとして短くなっていき、最後に残るのもアセチルCoAなわけですが、炭素が奇数個の場合は、最後は炭素数3つのプロピオニルCoA(プロピオン酸とCoAとが結合したもの)になります。

奇数個の炭素鎖を持つ脂肪酸の酸化では最後プロピオニルCoA (C3) が生産される。プロピオニルCoAは別の代謝経路で脱炭酸されてアセチルCoAとなり、クエン酸回路などの反応系に組み込まれる。また一部はアラニン合成に使用される。(β酸化 ウィキペディア)

プロピオン酸の意義

トリグリセリドから遊離されたオレイン酸やプロピオン酸などはph5~6(ph0=酸性、ph7=中性、ph14=アルカリ性)であり、それらの酸が皮膚に遊離する事で皮膚表面を弱酸性にしています。皮膚表面を弱酸性に保つことによって、アルカリ性を好む黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌などの増殖を抑制し、一方で弱酸性を好む表皮ブドウ球菌やプロピオニバクテリウムといった常在菌の増殖を促進します。https://www.doctors-organic.com/jyozaikin/

細菌によるプロピオン酸産生

Bacteroidesは酢酸とコハク酸が主要な糖代謝物であるが,炭素源やエネルギー源が少ないときコハク酸脱炭酸してプロピオン酸を生成する.また,コハク酸からプロピオン酸を生成する過程でビタミンB12コバルトイオンの存在が必要とされている.また,プロピオン酸はBifidobacteriumの増殖を促進するのでエネルギー源になっていると考えられる.

生体内ではビタミン類や微量元素の欠乏が起こりにくいのでBacteroides属による糖の代謝は速やかにプロピオン酸まで進むと考えられる.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/19/3/19_3_169/_pdf

細菌によるプロピオン酸産生と人体への供給

腸内フローラは経口摂取した難分解性多糖から短鎖脂肪
(酢酸、酪酸、プロピオン酸、乳酸)を発酵により生成し、宿
主であるヒトに成人1人あたり300-700kcal/日のエネルギーを
供給している。

酢酸とプロピオン酸は門脈を経て肝臓で代謝され、プロピオン酸は血清コレステロール値や血糖値を低下させるが、酢酸の一部は末梢
組織に到達し脂肪組織等で代謝される。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/31/5/31_1095/_pdf

短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸はヒトを含む多くの動物の腸内における主要な微生物発酵代謝物であり、心肥大や線維化の予防、血管機能障害の抑制、大腸炎症の改善など、腸を越えて全身に多彩な健康増進効果を発揮していることが明らかになりつつあります。https://www.riken.jp/press/2023/20230510_2/index.html

システイン、ホモシステイン、ホモシスチン、メチオニンの構造

ホモシステイン、ホモシスチンといった言葉が出てくると、同じもの?違うもの?と混乱しますが、ホモシステイン、ホモシスチンは別ものです。ホモシステインが2つつながったものがホモシスチン。ちなみに、ホモシステインとシステインも別物です。タンパク質を構成する20種のアミノ酸の中の一つであるシステインは側鎖がーC-SHですが、ホモシステインもアミノ酸の一種で、側鎖はーC-CーSHと炭素が一つ多いです。ちなみに側鎖がーC-C-S-CH3のメチオニンが代謝されてホモシステインが作られます。

  1. LC-MS/MSによるろ紙血及び尿中総ホモシステインの測定 札幌市衛生研究所年報 47, 39-47 (2020) – 39 –
  2. No.073 ホモシステインについて 田中消化器クリニック 静岡県静岡市葵区音羽町
  3. 中高齢者が特に注意すべき様々な疾患に関与!ビタミンB群の不足による「高ホモシステイン血症」のリスクとは 大塚製薬 栄養素カレッジ