最近は学会のときに手術をライブ配信することが一般的なようですが、ネットで「Changing Debulking Live’s Spirits #02 / 第2部:Rotablator」という企画があったのでごく一部を視聴しました。知らない言葉のオンパレードだったので、言葉や概念を整理するためのまとめ。必ずしもこの動画と直接の関係はありません。
IVUS
- IVUSはPCI(経皮的冠動脈形成術)の手技でなくてはならない重要な検査だ。ほとんどのPCI症例でIVUSによって得られた情報を元に、ステントのサイズ決めや、血栓吸引や末梢保護デバイスの使用の検討などなど様々なPCIの治療戦略を組立てていく(IVUS(血管内超音波検査)を覚えるエクササイズだ 心カテブートキャンプ!)
パラレルワイヤー法
- パラレルワイヤー法とは,ガイドワイヤーを2 本以上用いてCTO 病変の通過を試みる方法であり,1 本目のワイヤーが病変の真腔を確保しえない場合に,そのワイヤーを偽腔に留置した状態で 2 本目のワイヤーを操作し,真腔を確保する方法である。1 本目をメルクマールとして2 本目を操作するため,造影剤の使用量を減ずることが可能である。また,偽腔には1 本目が存在するために,その偽腔進入路には2 本目が入りにくく,さらに1 本目により血管が固定され,2 本目を真腔に導くことが容易となる。 この方法は現在,CTO に対する基本的なワイヤー操作法となっている。(Parallel wire technique の基本的考え方と使うタイミング Coronary Intervention Vol. 2 No. 6 2006)
- PCIで、一つの病変に2本のガイドワイヤーを挿入するのはなぜ?(心カテブートキャンプ)思いつくだけでも3パターンあります。①分岐部病変を治療する際のプロテクトワイヤー(protect wire) ②ステントの通過性が悪い時に行うバディーワイヤー(buddy wire) ③CTO病変治療時に行うパラレルワイヤー(parallel wire)
ガイドワイヤーの病変通過
- ガイドワイヤー:カテーテルを病変部まで運ぶ(Stories テルモのテクノロジー #08 カテーテル治療の質を高める血管内イメージング技術の追求)
- PCI㊙︎裏技テクニック【電子版】 伊藤 良明 (編集) 出版社 メジカルビュー社 電子版ISBN 電子版発売日 2019/11/18
- こうすれば必ず通過する!PCI医必携ガイドワイヤー”秘伝”テクニック【電子版】 村松 俊哉 (編) 総合東京病院 出版社 南江堂 電子版ISBN 978-4-524-24657-1 電子版発売日 2018/04/23
- ガイドワイヤーの病変部通過:例えどのようなデバイスで治療するにも、閉塞した血管が石灰化病変などで固くガイドワイヤーが病変部を通過できなければ開通させ血管内治療を成功させることはできません。また通過できても固い病変で十分にバルーンで拡張できなければ再狭窄の要因となります。ワイヤー通過は術者の技量にも大きく左右されるところですが、欧米諸国ではワイヤー通過のために様々なデバイスが開発されております。(獨協医科大学日光医療センター循環器・腎臓診療チーム)
- 病変クロス後の造影でワイヤー先端がどえらい所に @readyhourglass1
- 病変のワイヤクロスに難渋し,0.035 inch stiffness wire,debulking deviceを用いても病変を通過できず,最終的に40 g の先端荷重のtapered wireで通過した.(左浅大腿動脈のステント内に新たに形成された高度石灰化病変のため治療に難渋した1症例)
- 0.014inch guidewire(GW)では病変通過(lesion cross)が困難であり,0.035inch GWを用いて行った. (手技の工夫を要した頚動脈仮性閉塞の1例 済生会滋賀県病院医学誌 第28巻(2019))
- そのためGuideLinerをできるだけ冠動脈末梢まで進めた。ガイドカテーテルもなるべくディープエンゲージをした状態で再度TAZUNAを病変へ押し付けながら何度か拡張を行い、病変への押し付けを持続させたところ病変クロスに成功した。(デバイスデリバリーに難渋した高度閉塞病変においてGuideLinerが有用であった1例 JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT Vol.038)
デバイスデリバリー
- デバイスデリバリーに難渋した高度閉塞病変においてGuideLinerが有用であった1例 JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT Vol.038
逆行性アプローチ
- 閉塞部の遠位端まで側副血行路から逆行性にガイドワイヤーを進めバルンで偽腔を作り、その偽腔に順行性にガイドワイヤーを進め遠位部と近位部を交通させるCART(Controlled Antegrade Retrograde Subintimal Tracking)法(日本冠疾患学会2010 CTOへのPCI逆行性アプローチ、成功率は84% 安全性は高いが手技の難易度もまた高い 2011/01/21 軸丸 靖子=医療ライター 日経メディカル)
デバルキング
- debulking 名《医》病変の大部分の除去(アルク)
- デバルキング debulking: 腫瘍が一度では除去し切れないほど広がっている場合に、できる限りの範囲で切除することを意味する語。主に進行した卵巣がんについて用いられることが多い。(Weblio)
- debulking: Surgical removal of as much of a tumor as possible. Also called tumor debulking. (NIH)
- Efficacy of plaque debulking for bifurcated or ostial lesions by directional coronary atherectomy prior to second-generation drug eluting stenting. … We sought to evaluate the efficacy of plaque debulking by directional coronary atherectomy (DCA) prior to second-generation drug-eluting stent (DES) implantation for bifurcated coronary lesions. … Pre-second-generation DES plaque debulking with a novel DCA catheter (ATHEROCUT®, Nipro Co., Osaka, Japan) was conducted.
- 当院は治療デバイスについては,デバルキングを得意としており,ロータブレーター,ダイアモンドバック,ELCA,DCAを備えており,県内のみならず県外からの紹介もあり,スキルアップには応えられると考えています。急性冠症候群が全PCI治療の3割以上を占め,年間300件以上の緊急治療を行っております。(医療従事者向け紹介ページ 宮崎市郡医師会病院心臓病センター)
DCA
- DCA(方向性冠動脈粥腫切除術):バルーンを膨らませることで刃のついている部分を動脈硬化に押しつけ、刃を回転させて削りとる治療(洛和会音羽病院)
ロータブレーター
- 透析患者さんや糖尿病患者さんに多く認められる高度石灰化病変では、留置後のステントの拡張が不十分になりやすく、再狭窄率が高いとされているばかりか、ステントそのものの通過が困難な症例もあります。当院ではこのような症例に対し、先端にダイヤモンドチップを有し、高速(15-20万回転/分)で回転して石灰化プラークを削りとるロータブレーターを積極的に使用しています。(順天堂大学)
- 動脈硬化が進み石灰化が強くなった病変では、バルーンだけでは十分な拡張を得ることができません。高度石灰化病変に対する治療法としてロータブレーターという機械があります(図1)。ロータブレーターは先端に人工のダイヤモンドで作られたドリルを備えていて、1 分間に約 20 万回転し、石灰部分を削り、血管を拡張しやすい状態にします。(東京都健康長寿医療センター)
- ロータブレーター: 先端に小さなダイヤモンドの粒を装着した丸い金属を高速に回転させることで石灰化病変を削る治療(洛和会音羽病院)
- ロータブレーター:先端にダイヤモンドをちりばめた高速回転ドリルで、冠動脈の狭窄病変を削るRotational Coronary Atherectomy、いわゆるロータブレーターは、その使用効果は絶大ですが、重大な合併症も起こりうるため、習熟した医師が行わなければ危険が伴います。(千葉西総合病院)
ダイアモンドバック
- ダイアモンドバック Diamondback 360® Coronary Orbital Atherectomy システム アテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル メディキット社
大腿動脈
- 大腿動脈(だいたいどうみゃく、英: Femoral artery)(ウィキペディア)
- Femoral Artery and Branches dissection of cadaver- human anatomy lab- 1st MBBS 2017/09/16 Dr Govinddas akbari (YOUTUBE 2:16)解剖学講義動画
PCIの例
薬剤溶出ステント(DES)
- coronary artery angioplasty with stenting 2013/02/17 escolantonio(YOUTUBE 1:48 音声無し) 手術例の動画
PCIの合併症
ガイドワイヤー抜去困難
- 冠動脈血管内治療中にガイドワイヤーが抜去不能となり緊急手術となった1例(冠疾患誌 2009; 15: 35‒39)
参考
- エキシマレーザ冠動脈形成術(ELCA):冠動脈に挿入されたカテーテルの先端から照射されるエキシマレーザによって、閉塞した血管を開通させるという治療方法(心臓病センター榊原病院)
- 冠動脈インターベンション (PCI;Percutaneous Coronary Intervention) :バルーン(風船)を用いて開大、ステント(金属製のコイル)を血管内に植え込む、高速回転式ドリルで血管内をきれいにするなどの方法がある。(金沢循環器病院)
- EVT(EndoVascular Treatment):末梢動脈疾患のカテーテル治療のこと。以前は 、PTA (Percutaneous Transluminal Angioplasty: 経皮的血管形成術)と呼ばれていた。
- 冠動脈の番号(=AHA分類)(心カテブートキャンプ)
- 左冠動脈の前下行枝 冠動脈の走行(まえだ循環器内科)
心カテ総数:1,388(緊急心カテ 215:15.5%)
- EP study(カテーテル・アブレーションを含む):250
- カテーテル・アブレーション:229
- 冠動脈インターベンション(PCI):433 (緊急 PCI:140(32.3%)) 成功率:98.4%
- POBA のみ:27(内 drug-coated balloon:9)
- ステント:399 症例 600 個
- DCA:3
- ロータブレータ使用:39
- PTA:72
- 下大静脈フィルター:12(内 他科入院中:9)
- PTSMA:1
- PTMC:2
- PTAV:6
飯 塚 病 院 年 報Annual Report of Iizuka Hospital201 7第30号 (平成29年)