サイバネティック・アバター(CA)が生み出す未来の生活

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ムーンショット研究開発事業の目標1によれば、「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」することになるそうです。

CAというのはキャビン・アテンダント(昔のスチュワーデス)のことではなくて、サイバネティック・アバターのこと。ネット上で似顔絵をアイコン化したアバターがありますが、それを三次元化して、しかも感覚情報・動作まで加味したもののようです。本人はどこか別の場所にいて、アバターがその場所でその場所の人たちとコミュニケーションをとれるというのが構想みたいですね。その場で、アバターが周囲の人とアイコンタクトがとれたり、握手ができたりといったことまで実装される(ことが目標)とのこと。

一体、2050年に私たちはどんな生活をしているのでしょうか。身体も不要、脳も不要、空間も超える、時間も超える、そんなにいろいろなものを人間から取り払ってもなおそこに存在するものって一体何なのでしょうか?喜怒哀楽の感情や心だけでいいということなのでしょうか。

それが本当に人間の幸せにつながるのかどうか、なんとも想像がつきません。正直、自分は、自分のアバターが活躍してくれなくても、自分自身が周囲とコミュニケーションを取れたらそれで充分な気がします。自分よりも優雅にふるまい、エネルギッシュで、人々の尊敬を集められるアバターができてしまったとき、それは単なる虚像にすぎなくて、自分の実体との乖離に悩んだりしないのでしょうか。逆に、それを悪用/利用して、自分とは似てもにつかぬ素晴らしいアバターを世に広めて、自分をブランディングすることもできそうです。

デジタル省のデジタル大臣 河野太郎 氏がさっそく自分のアバターをつくって社会とのコミュニケーションの実装テストをするそうです。国民は、アバターが言うことを信じていいのかどうか、悩ましい気がします。赤の他人にアバターを勝手に作られて、本人とは全くことなる言動をとられたりしたら、SNSのアカウント乗っ取りの3D版みたいな事件になりそうです。

研究者としては面白そうだからやってみた、で済む話でしょうが、ムーンショットなどで莫大な研究予算が投入されて、国民総アバター化がまるで当然のことのように突っ走ることには、非常に違和感を覚えます。

サイバネティック・アバターが普及したら、自殺率は減少するのでしょうか。本人が自殺してこの世から消えても、亡くなった人のアバターが永遠に生き続けて、誰も本人の不在を気に留めないようなことになりはしないのでしょうか。

ムーンショット型研究開発事業(MS)

研究開発プログラム 「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」
(プログラムディレクター:萩田 紀博 大阪芸術大学 教授)
研究開発プロジェクト名 「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」
(プロジェクトマネージャー:石黒 浩 大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)
研究開発課題名 「存在感CAの開発とCA自在操作インターフェースの研究開発」
課題推進者 (石黒 浩 大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授)
研究開発課題名 「CA基盤構築及び階層的CA連携と操作者割り当ての研究開発」
課題推進者 (宮下 敬宏 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 インタラクション科学研究所 所長)
研究開発期間 令和2年12月~令和7年11月

研究開発プログラムでは、2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現するため、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用し、人の身体的能力、認知能力および知覚能力を拡張するサイバネティック・アバター技術を、社会通念を踏まえながら研究開発を推進していきます。
研究開発プロジェクトでは、利用者の反応をみて行動するホスピタリティー豊かな対話行動ができる複数のCAを自在に遠隔操作して、現場に行かなくても多様な社会活動(仕事、教育、医療、日常など)に参画できることを実現します。2050年には、場所の選び方、時間の使い方、人間の能力の拡張において、生活様式が劇的に変革するが、社会とバランスのとれたアバター共生社会を実現します。(引用元:https://www.jst.go.jp/pr/announce/20221021/index.html)

マイナンバーカードが事実上、義務化され強制されていますが、やがて、アバターの作成も国民の義務になるのでしょうか。

人間の脳は年をとると衰えていきますが、本人の能力をすべてアバターのコンピューターに移送することができたら、その人のベストパフォーマンスを永久に実行可能なアバターができそうです。例えば、ストライヤー博士は有名な生化学の教科書を書き残していますが、彼がこの世を去ってもストライヤー生化学は生き残って学生の教育に資することでしょう。もしストライヤー博士のアバターがこのよに残り続ければ、まるで生きているかのようなストライヤー博士の生き生きとした講義を学生が聴くことができるということになるのかもしれません。アインシュタイン博士のような優秀な物理学者のアバター(脳内の全てをコンピューター上に再現)がもしあれば、彼は永久に生き続けて、一般相対性理論に匹敵する壮大な理論を新たに開拓するのでしょうか。

あるいは、核物理学者の純粋な探求心とは裏腹に軍事転用された核兵器のように、人類の存続を脅かすような存在にアバターがなってしまうこともあるかもしれません。

  1. サイバネティック・アバターとは ムーンショット目標1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
  2. 22B19 メタバースで未来のサイバネティック・アバター生活を考えよう Science Agora Channel
  3. 河野 太郎 大臣のサイバネティック・アバターについて ~年内に実証実験、社会利用に向けた課題を検討~ 令和4年10月21日 科学技術振興機構(JST) 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 大阪大学
  4. 河野デジタル大臣のアバターが開会宣言 「Web3分野のスタートアップ支援」(2022年10月2日) テレ東BIZ(YOUTUBE)
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