科学研究論文の書き方

科学研究論文には作法があります。作法を知らずになんとなく書いていても、決して良い論文は書けません。作法を学ぶベストな方法は、良い論文を読んで分析してみて、それを真似することだと思います。

仮説の提示

科学研究の作法は、仮説の検証です。ですから論文では仮説を提示する必要があります。We hypothesized that ~というのが一番あからさまな仮説の提示方法ですが、必ずしもhypothesizeという言葉を使う必要はありません。疑問の形だったり、知識のギャップに言及する形でも、間接的に仮説を提示することが可能です。

例 Despite the experimental tractability of developmentally patterned processes in mice, a molecularly specified neural circuit that governs male mating remains to be defined. マウスにおける定型的な発生過程は実験的に操作しやすいがそれにもかかわらず、オスの交尾行動を支配する分子的に特定された神経回路はまだ同定されていない。https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(23)00798-5

上の例文では、知識のギャップを提示していますが、そこで暗に示されている仮説は、「分子的に規定された神経回路によって交尾行動は支配されている」というものです。

別の論文の例も観てみましょう。

例  It is unknown whether multiple or a single neuronal type is responsible for the control of mammalian locomotion. 哺乳類における運動の制御が複数の神経細胞タイプによって担われているのか、それとも単一の神経細胞タイプが担っているのかは不明である。https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(21)01452-5

知識のギャップの提示していますが、同時に、「運動の制御を担うのは1種類の細胞であるか、それとも、複数種類の細胞であるか」という仮説の提示にもなっています。