がん抑制遺伝子RB, p53, p21の働き

がん細胞ではしばしば、がん抑制遺伝子RB, p53などの変異が見られます。野生型のRBやp53の本来の働きはどのようなものなのでしょうか。

p53は転写因子で、CDKN1A遺伝子(遺伝子産物はp21と呼ばれるたんぱく質)の発現をオンにします。p21はCDKと結合することにより、CDKがRBをリン酸化することを抑制します。RBはリン酸化されていない場合には、転写因子E2Fと結合することにより、様々な細胞周期を進行させる遺伝子の発現をオフにしています。

p53の働きがもしなくなってしまうと、p21が発現されなくなり、その結果CDKに対する抑制が解除されて、CDKはRBをリン酸化します。リン酸化されたRBはE2Fと結合できずに標的遺伝子のDNAから離れていきます。その結果、細胞周期を進行させる遺伝子群の転写がオンになり、細胞周期が進行することになるわけです。

Cell cycle regulation: p53-p21-RB signaling Kurt Engeland Cell Death & Differentiation volume 29, pages946–960 (2022) https://www.nature.com/articles/s41418-022-00988-z