グルコース
グルコースは、炭素5個と酸素1個が6角形の環状構造をつくっており(ピラノース)、グルコピラノース(D-glucopyranose)とも呼ばれます。D-は自然界の存在する異性体D-型という意味。
単糖の水酸基やその他の官能基が別の官能基に置き換わった誘導体が多数存在しています。
グルコサミン
グルコースの2位の炭素についている水酸基がアミノ基に置換したもの。カタカナにするとわかりにくいですが英語で書くと、glucoseにアミノ基がついたのでamineと総称されるものになりますから、glucose+amine= glucosamine という名前になっています。glucoseの語尾のeは、次とのつながりをよくするためにとれています。
グルクロン酸
糖の主鎖の末端のヒドロキシメチル基がカルボキシ基に置換したものがウロン酸(uronic acid)と呼ばれます。グルコースのウロン酸はglucuronic acid(グルクロン酸)となります。日本語名だとわかりにくいですが、英語名で考えるとgluc+uronicと分解できるので覚えやすいです。
ミオイノシトール(myo-inositol)
イノシトールは炭素6個が6角形の環状につながってそれぞれに水酸基がついた化合物です。水酸基と水素の配置の違いで異性体が存在しますが、1,2,3,5位の炭素についた水酸基が同じ側にある異性体がミオイノシトールと呼ばれます。
イノシトールという名前は、「甘い」という言葉に由来するそうです。
Inositol (myo-inositol, see below) was first isolated by Scherer (7), and called “inosite” because of its sweet taste.(A short history of inositol lipids Robin F. Irvine Journal of Lipid Research Volume 57, Issue 11, November 2016, Pages 1987-1994)
別の論文だと筋肉を意味するinosから来ているとも説明されています。またmyo-も筋肉のという意味です。
Inositol (hexahydroxycyclohexane) was first isolated from muscle in 1850 by Scherer. He coined the name “inositol” from the Greek inos (muscel). Nine stereoisomers of inositol are theoretically possible but only seven occur naturally, the exception being epi- and allo-inositol. Because myo-inositol is regarded as the major isomer among the inositols, with regard to both distribution and fuction, particular attention has been devoted to this compound. Although the name myo-inositol is in fact a pleonasm (it is derived from another Greek word for muscle, myo), its use has become generally accepted, and in this paper, myo-inositol will be refeerred to simply as inositol. (Plant inositides and intracellular signaling Plant Physiol (1993).103:705-709. Bjorn K. Drobak)
イノシトールは、1,4,5ーイノシトール3リン酸(IP3)というセカンドメッセンジャーとして重要な働きをします。これは、膜の成分の一つであるフォスファチジルイノシトールが、フォスフォリパーゼC(PLC)によってジアシルグリセロール(DAG)とIP3に分解され、IP3がセカンドメッセンジャーとなり細胞内の小胞体(カルシウム貯蔵庫)の膜上にあるIP3受容体カルシウムチャンネルに結合して開口しカルシウムを動員するという細胞内情報伝達系をなしています。
- Turtles All the Way: Reflections on myo-Inositol Bernard W. Agranoff J Biol Chem. 2009 Aug 7; 284(32): 21121–21126. PMCID: PMC2755834
アスコルビン酸(ビタミンC)
ヒトとモルモットはビタミンCを合成できませんが、ほとんどの動物はグルコースからビタミンCを合成することができます。アスコルビン酸はグルコース同様、炭素6個からなる化合物で、酸素を骨格に含む5員環を持っています。
ビタミンCはコラーゲンのプロリンとリシンを水酸化する酵素の補酵素として重要です。ビタミンCは、抗壊血病因子(antiscorbutic factor)として発見された歴史的な経緯から、アスコルビン酸(ascorbic acid)という名称がつきました。scorbicは壊血病の、a-は「非、無」の意味をあらわす接頭語です。例えばasexual といえば「性がない、無性の」と言う意味。
- 壊血病(かいけつびょう、英: scurvy、独: Skorbut)ウィキペディア
アスコルビン酸のIUPC名は、(R)-3,4-ジヒドロキシ-5-((S)-1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5H)-オンです。フランは酸素を含む5員環で二重結合を2つもつ化合物。フランの酸素が1番で、酸素が二重結合でついている炭素が2番、そっちまわりで1,2,3,4,5です。3,4位の炭素に水酸基がついています。5番の炭素には、1,2-ジヒドロキシエチル基が結合しています。
環状エステルのことをラクトンと呼びますが、アスコルビン酸はラクトンの骨格を持っているともいえます。