特許法第94条 通常実施権の移転等:先使用権の移転の要件は?

関連する問題:令和8年度意匠問題5枝(ホ)

【意匠】5意匠法における実施権に関し、次のうち、正しいものは、いくつあるか。

(ホ) 甲は、意匠イの意匠権者である。乙は、意匠イと類似する意匠ロに係る乙物品の製造 販売について、先使用による通常実施権を有する。丙は、乙から乙物品の実施に係る事 業を譲り受けた。甲からの承諾がない場合、当該先使用による通常実施権は、丙に移転 することができない。

解答:本枝は誤り。承諾がなくとも移転できる。

根拠条文:意匠法第34条第1項

意匠法

(通常実施権の移転等)
第三十四条 通常実施権は、前条第三項若しくは第四項、特許法第九十二条第三項又は実用新案法第二十二条第三項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、意匠権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、意匠権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

2 通常実施権者は、前条第三項若しくは第四項、特許法第九十二条第三項又は実用新案法第二十二条第三項の裁定による通常実施権を除き、意匠権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、意匠権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。

3 前条第三項、特許法第九十二条第三項又は実用新案法第二十二条第三項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該意匠権、特許権又は実用新案権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その意匠権、特許権又は実用新案権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。

4 前条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該意匠権、特許権又は実用新案権に従つて移転し、その意匠権、特許権又は実用新案権が消滅したときは消滅する。

 

意匠法34条第1項の条文の読み取り

通常実施権は、

  • ~の裁定による通常実施権を除き、
  1. 実施の事業とともにする場合、
  2. 意匠権者の承諾を得た場合
  3. 及び相続その他の一般承継の場合 に限り、

移転することができる。

先使用は一般承継に含まれますので、上記の要件に該当します。条文の語法として「Aその他のB」は、「Aを含むB」の意味で、AはBの例示です。集合の包含関係でしめせば、「A ⊂ B」。つまり相続は、一般承継の一例です。

一般承継とは、権利や義務の一切を引き継ぐこと。一般承継に対する言葉は、特定承継で、特定の財産だけを引き継ぐこと。

上の条文では、除外される場合を除けば、「事業とともに の場合」、「承諾を得た場合」、「一般承継の場合」に限り移転できると言っています。一般承継の場合であれば、承諾を得ている必要はないということになります。

 

意匠法34条は特許法94条と同じ構造なので、特許法94条を勉強しておいて、意匠法も特許法と同じ と覚えておけば事足ります。

問題の分析:

特許法 先使用権  94条との関係?先使用権は、一般承継の場合に該当する?

結論からいくで。

Q: 先使用権は一般承継の場合に該当する? → ○(該当する)

79条の先使用権(先使用による通常実施権)も、移転は94条1項に従う。で、94条1項の移転OKパターンは3つや:

移転パターン 先使用権
① 実施の事業とともにする場合
② 特許権者の承諾を得た場合
③ 相続その他の一般承継の場合

だから一般承継(相続・合併・会社分割なんか)の場合は、特許権者の承諾なしで当然に移転する。これは普通の許諾通常実施権と一緒の扱いやね。

94条との関係を整理すると:

先使用権は79条で発生する「法定通常実施権」やけど、いったん発生した後の移転ルールは94条1項がそのまま当てはまる。79条が「移転」について特別に規定しとるわけちゃうから、94条1項が効いてくる、っちゅう構造や。

⚠ここがド頻出のトラップ

「先使用権は事業の保護のための権利やから、実施の事業とともにする場合に限り移転できる」── これ、×やで。過去問にもまさにこの肢があった:

(ニ) 先使用による通常実施権は…実施の事業とともにする場合に限り移転することができる。 → (×)

「事業とともにする場合のみ」に限定されるのは、94条3項の裁定通常実施権(83条2項=不実施裁定、93条2項=公益裁定)の話。ここを先使用権にスライドさせてくるのが定番の引っかけや。

📝記憶のコツ

  • 法定実施権(先使用権・79条の2・80条・82条 etc.)→ 94条1項の「事業とともに/承諾/一般承継」フルセット
  • 公益系の裁定(83Ⅱ・93Ⅱ)→ 94条3項「事業とともにのみ」

公益のためにムリヤリ与えた裁定は、勝手に承諾移転や承継移転させへん(事業とともにだけ)」って立法趣旨で押さえとくと、94条1項と3項を取り違えへんで。

ちなみに条文上、94条1項柱書は「83条2項・92条3項4項・93条2項…の裁定による通常実施権を除き」って書き方やから、裁定実施権を除いた残り全部(=先使用権含む法定実施権&許諾実施権)が1項のルールに乗る、っていう読み方もできる。除外リストに何が載ってないかで判断するパターンの典型やな。

(Claude Opus 4.8)