NAD+が還元されたときの式でNADHの隣にいるH+は誰?

生化学の教科書を読んでいると酸化還元反応のステップにおいて、NAD+が還元されたときにNADHの隣にいるH+が添えられています。

 還元物質 {\displaystyle {\ce {(2{\it {e^{-}}}{+}2H^{+})<->{NADH}+{H^{+}}+}}} 酸化物質

上図では、水素原子が1つだけ付加されたように見えるが、ニコチンアミドのN+が電子によって還元されるために、結果として2つの水素原子を運搬しているのと同じ状態となる。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド

なぜ右辺にH+ が存在するのか?この右辺で、NADHの隣のH+は一体何者なのでしょうか?

NAD+が電子を受け取る式は、

NAD+ + 2e- + H+ →NADH

でいいのではないでしょうか?

Claude AI (Opus 4.6)に訊いてみましたところ、非常に明解な答えが返ってきました。

Claude Opus 4.6:ここは正確に区別すべきところです。NAD⁺の場合に限って言えば、基質から移動するのはヒドリド(H⁻)です。Hそのもの(水素原子、H·)ではありません。

具体的には、基質から2つのHが外れるとき、こうなっています:

  • 1つ目のH → プロトン(H⁺)と電子2個のセット、つまりH⁻(ヒドリド)として、NAD⁺のニコチンアミド環のC4位に直接移動する
  • 2つ目のHH⁺として溶媒中に放出される

だからNAD⁺ + 2H → NADH + H⁺ という式になるわけです。NADHの「H」はヒドリドとしてC-H結合で環に共有結合しているのであって、プロトンがくっついているのではありません。NAD⁺系では移動の実体はヒドリドです。

一方、FADの場合は事情が違って、2つのHがどちらもN-H結合としてFAD分子に付加されます。こちらは水素原子的な移動に近い。FADの場合は、

コハク酸デヒドロゲナーゼ(複合体II)の反応がわかりやすいです。

コハク酸 → フマル酸

コハク酸のC2とC3から、それぞれHが1つずつ抜けて二重結合ができる

succinate: -OOC-CH₂-CH₂-COO⁻ → fumarate: -OOC-CH=CH-COO⁻

このとき外れた2つのHがFADに渡されます

FAD側で何が起きているか

FADのイソアロキサジン環にはN1とN5があって、それぞれに1つずつHが付加されます:

FAD + 2H → FADH₂

具体的には、N5にひとつ、N1にひとつ、どちらもN-H結合として共有結合で付く。電子の移動の観点で言えば、2電子と2プロトンが段階的に移動しています。

NAD⁺との違い

NAD⁺の場合は、ヒドリド(H⁻)がC4に1本のC-H結合として付き、もう1つのHはH⁺として溶媒に放出される。だから NADH + H⁺。

FADの場合は、2つのHがどちらも環の窒素にN-H結合として取り込まれる。だから FADH₂ であって、H⁺は放出されない。この違いは、受け取る側の化学構造の違いに由来していて、酸化還元の本質(電子が基質から補酵素に移る)は同じだけど、Hの受け渡し方の「物理的な様式」が違うわけです。

以上、Claude Opus 4.6の回答でした。NADH/H+ の長年の謎がようやく解けました。

グリセルアルデヒド3リン酸の酸化

グリセルアルデヒド3リン酸が酸化されて1,3,ビスホスホグリセリン酸になるときにNAD+が還元されてNADH+H+が生じます。教科書によってはNADH/H+ とかいたり、NADH2+ と書いたりもするようです。

CH2(-OH)-CH(-OH)-CH2(-OH)はグリセロール

CH(=O)-CH(-OH)-CH2(-OH)はグリセルアルデヒド

CH(=O)-CH(-OH)-CH2(-O-PO4 2-)がグリセルアルデヒド3リン酸

グリセリン酸は

C(=O)(-OH)-CH(-OH)-CH2(-OH)

1,3,ビスホスホグリセリン酸は

C(=O)(-O-PO4 2-)-CH(-OH)-CH2(-O-PO4 2-)

反応式は

CH(=O)-CH(-OH)-CH2(-O-PO4 2-) + NAD+  + HPO4 2-

→ C(=O)(-PO4 2-)-CH(-OH)-CH2(-O-PO4 2-) + NADH + H+

となりますでしょうか。これでHの数が合うはず。と思っていたのですが、Claudeに訊いたらそういうわけではありませんでした。最終産物だけ見ると、一見そうかと思いますが、H+がどこから来たのかというと、無機リン酸のHではないというのが本当のところです。以下、Claudeに説明してもらいます。

 

 

  1. Reaction 6: G3P ↔1,3 BPG. libretexts. Fundamentals_of_Biochemistry (Jakubowski_and_Flatt)/II_Bioenergetics_and_Metabolism   Glycolysis この教科書の図にもNAD + H+と書かれています。

  2. リン酸 H3PO4
  3. http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/glyclysis.htm

 

エタノールの酸化反応

例で考えたほうがわかりやすいです。エタノールCH3CH2OHが酸化されてアセトアルデヒドCH3CHOになる反応は、半反応式を書くと

CH3CH2OH → CH3CHO + 2H+ + 2e-

NAD+  + H+ + e-  → NADH

両者を合わせると

NAD+ + CH3CH2OH →NADH + H+ + CH3CHO

で右に水素イオンがあります。

なぜこのようなことになるのかというと、酸化反応では水素原子が一つだけ引き抜かれることはあまりなく(その場合は、ラジカルが発生する)、2つ引き抜かれるのが普通だからのようです。だからもうひとつの電子供与体FADH2に関しても

FAD⇔FADH2 と水素原子2つの変化なんでしょうね。

  1. ChatGPT 4o