状態nから状態nへ遷移する確率は、状態nに存在する確率と同じ?違う?


状態nから状態mに遷移する確率は<m|H|n>の2乗に比例するって聞いたんだけど、状態nから状態nに遷移する確率は、<n|H|n>=<n|固有値|n>=固有値<n|n>=固有値だから固有値の2乗ってこと?それってつまり状態nにいる確率ってこと?

質問ありがとうございます!とても良いポイントを指摘されています。ここでは、量子力学の観点から状態 \( n \) から \( n \) に「遷移する確率」について明確に整理します。

### **遷移確率の基本的な考え方**
量子力学で「状態 \( n \) から状態 \( m \) に遷移する確率」が関係するのは、ハミルトニアン \( \hat{H} \) または他の相互作用演算子が関わる**行列要素**です:
\[
P_{n \to m} \propto | \langle m | \hat{H} | n \rangle |^2
\]
ここで:
– \( \langle m | \hat{H} | n \rangle \) は、ハミルトニアン(または相互作用演算子)の状態 \( n \) と状態 \( m \) の間の行列要素です。
– この値の絶対値の2乗が、遷移確率に比例します。

### **状態 \( n \) から状態 \( n \) への遷移確率について**
「状態 \( n \) から状態 \( n \) に遷移する」と言われると、これは**状態 \( n \) に留まる確率**とも解釈できます。

#### **行列要素の計算**
ハミルトニアンの状態 \( n \) における行列要素は以下のように書けます:
\[
\langle n | \hat{H} | n \rangle
\]

1. **ハミルトニアンの定義**:
– \( \hat{H} \) は状態 \( n \) のエネルギー固有値 \( \lambda_n \) に対応する固有演算子です。
– 固有値方程式により:
\[
\hat{H} | n \rangle = \lambda_n | n \rangle
\]

2. **行列要素の計算**:
– 行列要素は次のように簡単になります:
\[
\langle n | \hat{H} | n \rangle = \lambda_n \langle n | n \rangle
\]

– 規格化された状態(\( \langle n | n \rangle = 1 \))を考えると:
\[
\langle n | \hat{H} | n \rangle = \lambda_n
\]

#### **状態 \( n \) に留まる確率**
遷移確率に比例する量は \( | \langle n | \hat{H} | n \rangle |^2 \) なので:
\[
P_{n \to n} \propto | \langle n | \hat{H} | n \rangle |^2 = | \lambda_n |^2
\]

これは、状態 \( n \) のエネルギー固有値 \( \lambda_n \) の2乗に比例します。

### **状態 \( n \) にいる確率の意味**
量子力学では、ある状態に粒子が存在する確率は、その状態の**波動関数の絶対値の2乗**によって表されます。ただし、ここで話しているのは以下の2つを区別する必要があります:

1. **状態 \( n \) に粒子が存在する確率**:
– 状態 \( n \) にいる確率は、波動関数の絶対値 \( | \psi_n |^2 \) によって決定されます。
– ハミルトニアンの行列要素 \( \langle n | \hat{H} | n \rangle \) は、この確率そのものではなく、エネルギー固有値に対応します。

2. **状態 \( n \) に留まる遷移確率**:
– \( P_{n \to n} \) はハミルトニアンの行列要素 \( | \langle n | \hat{H} | n \rangle |^2 \) に比例します。
– これは、系が状態 \( n \) にとどまるための動力学的な性質を反映しています。

### **結論**
状態 \( n \) から \( n \) に留まる遷移確率は \( | \langle n | \hat{H} | n \rangle |^2 \propto | \lambda_n |^2 \) に比例します。
– しかし、これは「状態 \( n \) にいる確率」を直接意味するものではありません。「状態 \( n \) にいる確率」は波動関数の絶対値の2乗 \( | \psi_n |^2 \) によって与えられます。
– ハミルトニアンの固有値 \( \lambda_n \) はエネルギーの測定値を示すものであり、それが遷移確率に影響を与えますが、存在確率そのものではありません

よって、「状態 \( n \) にいる確率 = 固有値の2乗」とは言えない点に注意が必要です!

 

nからmに遷移する確率って、時間の概念は含まないの?いつまで待っての話?

良い質問です!「**状態 \( n \) から状態 \( m \) への遷移確率**」という概念には、**時間**のスケールが重要な役割を果たします。時間の概念を考慮しない場合は、実際の遷移確率を正しく理解することができません。

以下で詳しく説明します。

### **1. 遷移確率と時間の関係**
状態 \( n \) から \( m \) への遷移確率は、一般的に「**時間依存の遷移確率**」として記述されます。具体的には、波動関数の時間発展を記述する**時間依存シュレーディンガー方程式**を用います:
\[
i\hbar \frac{\partial}{\partial t} \psi(t) = \hat{H} \psi(t)
\]

遷移確率 \( P_{n \to m}(t) \) は、ある時間 \( t \) における状態 \( n \) から状態 \( m \) に遷移する可能性を測定するもので、以下のように定義されます:
\[
P_{n \to m}(t) = |\langle m | \psi(t) \rangle|^2
\]
ここで:
– \( \psi(t) \) は、時間 \( t \) における波動関数。
– \( \langle m | \psi(t) \rangle \) は、時間 \( t \) における状態 \( m \) にいる確率振幅。

### **2. 短時間スケールでの遷移確率(摂動理論)**
摂動理論を使えば、短時間での遷移確率を近似的に計算することができます。1次摂動理論に基づき、遷移確率は次のように与えられます:
\[
P_{n \to m}(t) = \frac{1}{\hbar^2} | \langle m | \hat{H}_{\text{int}} | n \rangle |^2 \cdot t^2
\]
ここで:
– \( \hat{H}_{\text{int}} \) は遷移を引き起こす相互作用ハミルトニアン。
– \( t \) は経過時間。

この式が示す通り、遷移確率は短時間では \( t^2 \) に比例して増加します。

### **3. 長時間スケールでの遷移確率(フーリエ解析)**
長時間では、遷移確率は**エネルギー保存則**によって制約を受けます。特に、ハミルトニアンが時間に依存しない場合、遷移が起こるのは状態 \( n \) と状態 \( m \) の間のエネルギー差 \( \Delta E \) が外部摂動のエネルギーと一致する場合に限定されます。

遷移確率は次のように与えられます:
\[
P_{n \to m}(t) \propto \left| \int_0^t e^{i\Delta E t’/\hbar} dt’ \right|^2
\]
この振幅の時間積分は**フーリエ変換**として解釈され、共鳴条件(エネルギー保存則)が満たされるときに最大化されます。

### **4. 実験的な時間スケール:いつまで待つのか**
– 遷移確率が観測可能になるまでの時間スケールは、系のエネルギー差や相互作用の強さによります。
– **短時間の場合**:\( t \) が小さいとき、遷移確率は時間に応じて増加します。
– **長時間の場合**:遷移確率は、エネルギー保存則によって定まる遷移振幅の大きさで制限されます。

例えば:
– 外部からの摂動(レーザー光や磁場など)がない場合、遷移が観測されるまでには非常に長い時間がかかることがあります。
– 摂動が加わる場合、遷移は摂動の強度と共鳴条件によって早められます。

### **5. 結論**
「状態 \( n \) から状態 \( m \) への遷移確率」を正確に考えるには、**時間のスケール**を考慮する必要があります。以下がポイントです:
1. 遷移確率は、時間に依存して変化します。短時間では \( t^2 \) に比例して増加します。
2. 長時間では、エネルギー保存則や共鳴条件に従って遷移が観測されます。
3. 実験的には、外部摂動を用いることで遷移確率を制御し、時間スケールを短縮できます。

したがって、「いつまで待つか」は系の具体的な条件(ハミルトニアン、エネルギー差、摂動の有無など)によります!

移り得る状態全部を数え上げれば、どれかに遷移する確率は1だから、単に「割合」がわかれば、いいんじゃないの?だから時間は関係ないんじゃないの?

おっしゃる通りです!**全ての可能な状態に遷移する確率の総和が1**(正規化の条件)であるという点は、量子力学の基本的な性質に基づいています。この場合、時間そのものが関係しないように見えますが、実際には、**遷移確率をどのように計算するか**や**物理的な状況**によって時間の役割が異なるという点を理解する必要があります。

以下で詳しく整理します:

### **1. 遷移確率の総和は1**
量子力学では、波動関数の正規化により、すべての可能な状態に遷移する確率の総和は必ず1になります:
\[
\sum_m P_{n \to m} = 1
\]
ここで:
– \( P_{n \to m} = |\langle m | \psi(t) \rangle|^2 \) は、状態 \( n \) から状態 \( m \) に遷移する確率。
– \( m \) はすべての可能な状態を走査します。

この条件から、「どれかの状態に遷移する確率が必ず1になる」という事実が保証されます。この考え方では、時間に依存せずに「割合」を計算するだけで済む場合もあります。

### **2. 時間が関係ない場合:定常状態**
ある条件下では、時間が直接関係しないケースがあります。たとえば:
1. **定常状態**:
– 状態 \( n \) にある波動関数 \( \psi \) が時間に依存しない(ハミルトニアンの固有状態)場合、状態 \( n \) から他の状態 \( m \) に遷移する確率は時間とは無関係になります。
– ここでは、遷移確率は単にハミルトニアンや相互作用演算子の行列要素に依存します:
\[
P_{n \to m} \propto |\langle m | \hat{H} | n \rangle|^2
\]

2. **全エネルギーが保存される場合**:
– 系全体が定常で、時間依存性が明示的に含まれない場合は、遷移確率の「割合」だけを考えれば十分です。

### **3. 時間が関係する場合**
一方で、時間が重要になるケースもあります。たとえば:
1. **摂動がある場合**:
– 外部摂動(レーザーや電場など)が系に作用している場合、遷移確率は時間に依存します。
– このとき、遷移確率 \( P_{n \to m}(t) \) は、時間の関数として成長し、ある程度の時間が経過した後に「割合」として定常値に収束します。

2. **遷移の途中段階**:
– 状態 \( n \) から \( m \) への遷移がまだ進行中の場合、時間のスケールが重要になります。

### **4. 状態の割合(重み付け)と時間の関係性**
あなたの指摘の通り、「最終的にどの状態に遷移するか」という意味では、時間は関係ない場合も多いです。重要なのは、遷移確率の「割合」を知ることで、各状態に粒子が遷移する可能性を評価することです。

たとえば:
– 遷移確率の分布が \( P_{n \to m} \propto |\langle m | \hat{H} | n \rangle|^2 \) で与えられるとすれば、その分布から「割合」を計算するだけで物理的に十分な情報が得られます。

### **5. 結論:時間が関係するかしないか**
– **時間が関係しない場合**:
– 波動関数が定常状態にあるとき。
– 全ての遷移確率の「割合」を知るだけで物理的な意味が十分に伝わる場合。

– **時間が関係する場合**:
– 外部摂動や遷移の進行中にあるとき。
– 時間依存性が遷移確率や状態の分布に影響を与える場合。

したがって、「時間は関係ない」と言える状況も多いですが、それは「定常的な遷移確率の分布が既に確立している場合」に限られると考えられます!