PCT規則67.1の規定の趣旨は?(ii)但し書きで、微生物学的方法を除外した理由

PCT規則67.1とは——一言でいうと

「国際予備審査機関が、国際予備審査を行わなくてもよい6つの対象事項のリスト」

これはPCT条約34条(4)(a)(i) が「規則で定める対象に当たる場合は予備審査をせんでもよい」と委任してるもんを、規則で具体化した条文やね。日本特許法29条1項柱書(産業上利用可能性)や32条(不特許事由)のPCT版、と思てもらえばいい。


立法趣旨——なぜこの6つを除外しとくのか

ポイントは2つや。

① 各国制度の違いを国際段階で押し付けへんため

これら6項目は、国によって特許適格性(保護対象)の扱いが大きく違う

  • 「事業活動に関する方法」(ビジネスメソッド) → 米国は広く認める/欧州・日本は厳格
  • 「コンピュータ・プログラム」 → 国によって扱いがかなり違う
  • 「手術・治療・診断方法」 → 多くの国で除外(日本29条1項柱書、EPC53(c))/米国は認める

PCTの国際予備審査は予備的かつ拘束力のない見解(PCT33条(1))を出すもの。国際機関が「これは特許性なし」と一律に判断したら、広く認める指定国にとっては余計なお世話になる。

そやから、こういう国際的にコンセンサスのない/争いのある対象については、国際予備審査機関の負担を軽くしつつ、最終判断は各国に委ねるという設計にしてある。

② 国際予備審査機関の能力・態勢への配慮

特に(vi)の「コンピュータ・プログラムのうち国際予備審査機関が国際予備審査を行う態勢にある範囲外のもの」は、機関の現実的な能力・リソースへの配慮が露骨に出てる。プログラムの先行技術調査は専門性が高くて、機関によってカバー範囲が違う。「無理ならやらんでええ」という割り切り。

③ 「行うことを要しない」=任意であって禁止やない

⚠ ここ要注意ポイント。 〔2023-条約4〕の問題でも問われてるように、「行うことを要しない」やから、機関が望めば行ってもよい。「行ってはならない」ではない。日本29条1項柱書(産業上利用可能性なし=拒絶)とは構造が違う。


🧠 6項目の覚え方(語呂)

「リカ、植物、ビジネス、医療、情報、プログラム」

= 理科理論/植物動物・生物的方法/ビジネスメソッド/医療方法/情報の単なる提示/プログラム

なお、これらはEPC53条・規則の「特許性除外」とほぼパラレル。国際的に「特許保護がふさわしくない/争いがある」と認識されてる定番の対象群やと思て覚えとくとええ。


🌱 (ii)但し書き:微生物学的方法を除外した理由

これが今日の本題やね。

条文構造

(ii) 植物及び動物の品種、又は植物及び動物の生産の本質的に生物学的な方法

ただし、微生物学的方法及び微生物学的方法による生産物については、この限りでない。

つまり、微生物学的方法(とその生産物)は除外対象から外す=ちゃんと予備審査の対象にする

立法趣旨——3つの理由

① 「本質的に生物学的な方法」の対概念としての「微生物学的方法」

「本質的に生物学的な方法」=交配・選抜のような、人間の技術的介入が薄く、自然の生物プロセスがメインの方法。これらは伝統的に各国で「発明性が薄い」「品種改良の領域」として特許対象から除外されてきた。

これに対して微生物学的方法=微生物を使った発酵、遺伝子組換え、抗生物質生産など、人間の技術的介入が濃厚で、再現性・産業性が明確な方法。これは伝統的な化学・産業技術の延長線上にあって、世界中でほぼ例外なく特許対象として認められてきた。

そやから「植物・動物の生産方法」とひとくくりに除外すると、本来特許性があって争いのない微生物学的方法まで巻き込んでしまう。それを防ぐための但し書き。

② TRIPS協定27条3項(b)との整合性

TRIPS協定27条3項(b)は、加盟国が以下を特許対象から除外できるとしている:

  • 植物・動物(微生物を除く)
  • 植物・動物の生産のための本質的に生物学的な方法(非生物学的方法および微生物学的方法を除く

つまり、TRIPS自体が「微生物学的方法は特許対象として保護しなあかん」という国際的合意になってる。PCT規則64.3の但し書きはこの国際合意と整合してる。

(厳密にはPCT規則67.1の方がTRIPSより古い1970年代からあったけど、両者とも当時のEPC53条(b)の構造を踏襲してて、国際的に共通の特許制度の構造を反映してる)

③ ブダペスト条約の存在

微生物学的発明については、ブダペスト条約(特許手続上の微生物の寄託に関する国際的承認)という独立した国際枠組みがあって、国際的に保護インフラが整備されとる。「除外せんとちゃんと審査する」という前提で国際協力体制が組まれてる対象、ということやね。


⇔ 横断比較:日本特許法との対応

対象 PCT規則67.1 日本特許法
科学・数学の理論 (i) 予備審査不要 29条1項柱書(発明性なし)
動植物の品種・本質的生物的方法 (ii) 予備審査不要 特許対象(植物特許)
ビジネス方法等 (iii) 予備審査不要 自然法則利用性で個別判断
手術・治療・診断方法 (iv) 予備審査不要 29条1項柱書(産業上利用可能性なし)
情報の単なる提示 (v) 予備審査不要 29条1項柱書(発明性なし)
プログラム (vi) 予備審査不要 特許対象(2条3項)

日本との大きなズレは(ii)と(vi)。日本では植物の品種は特許対象だし、プログラムも特許対象やから、PCTで除外されとっても日本国内段階では普通に審査される。


⚠ 出題ポイント

「行うことを要しない」≠「行ってはならない」 〔2023-条約4〕の論点。「動物の体の診断方法」を含む出願でも、機関が望めば予備審査できる。逆向けの肢(「予備審査を行うことができない」「行ってはならない」)は×。

(vi)プログラムの「機関の態勢」要件 〔2021-条約3〕の論点。「プログラム=常に予備審査不要」ではなく、「機関が態勢にある範囲外のもの」だけが除外対象。機関が態勢を整えてるプログラムについては予備審査の対象になる。

規則39.1(国際調査の除外対象)と同じ構造 規則39.1は国際調査の除外対象、規則67.1は国際予備審査の除外対象。両者は同じ6項目で構造もそっくり。横断的に「PCTにおける予備的判断の除外対象リスト」として一括理解しとくとええ。