和書
新発生学 Qシリーズ
これはA4サイズの大きさで、図がとても見やすく親しみのもてる描き方、図柄です。発生学の大著を読んでも何がポイントなのかつかめませんが、Qシリーズ新発生学はポイントが見開き2ページにすっきりとまとまっていて、素晴らしい本だと思います。左側のページの日本語による説明と、右側のページの図とが見事に一致しているので、非常に理解しやすいのです。この本だけ読むとこの本の良さはあまりわからないかもしれませんが、大著を読んでいてポイントが何かわからなくてQシリーズを読むと要点が見事にまとめられていることに気付き、感動を覚えます。逆にQシリーズを読んで気になったトピックの詳細を確認するために大著の教科書を読むということもできます。自分は結局、Qシリーズとカールソンとをいったりきたりしながら発生学の勉強をしています。2012年の出版なのでやや出版年が古くなってきていますが、内容は古典的な解剖学的な発生学で、分子生物学の話はまったくないので、全然問題ないと思います。
ビジュアル人体発生学
山田 重人, 山口 豊 ひと目でわかるビジュアル人体発生学 2022/11/1 189ページ 羊土社
人体発生学は大著は読み通すのが大変で、そもそもどこに何が書いてあるのかを把握するだけでも骨が折れます。とりあえず発生学を一通り押さえておきたいと思ったときには、こういうコンパクトな教科書が役立ちます。複雑な発生学が非常にすっきりと要点を整理してまとめられています。図もわかりやすくて、数日で読み通せるいい本です。
人体発生学 (大著のもの)
カールソン、ムーア、ラーセン、ラングマンと有名な大著の教科書がいくつもあります。それぞれ特徴があるので自分の好みにあったものを選んで買ったほうがいいです。これらの大著をいきなり端から読み始めるのは、よっぽどの人でない限り分厚すぎて読みのに挫折します。自分は最初に200ページ弱と薄めの和書を通読するところから始めました。そうやってまずは「森」の外観をつかんでから、大著を開いて森の中に入ってみるというかんじです。
カールソン Carlson
Human Embryology and Developmental Biology, 7th Edition Author : By Bruce M. Carlson, MD, PhD 第7版 528ページ 2023/12/5 ELSEVIER
カールソンの教科書の読者対象は、for those who want to truly understand both the morphological and molecular aspects of human embryological development.と商品説明にかいてあります。人が発生するときの形態的な変化だけでなく、分子メカニズムも学びたい人のための教科書。分子生物学の最新の知見がとりこまれているので自分はこれが一番気に入って読んでいます。
新版が出たばかりのタイミングだったので、分子生物学的な知識はこれが最新かなと思い、カールソンのキンドルを自分は買いました。
Lecturioの発生学講義の動画を視聴しているとそこで見せられている多くの図がこのカールソンの教科書から取られていましたので、カールソンの教科書とLecturioでの勉強は相性がよいと思います。
ラーセン人体発生学 Larsen
ヒトだけでなく、動物の発生学の知見もかなりスペースを割いて、併せて紹介されているのが特徴的です。文章がわりとメリハリがあってreadableな教科書だと思います。結局カールソンだけをよんでいてもなかなか頭に入ってこないので、自分はカールソンとラーセンの2つを買って、2冊の間をいったりきたりしながら読んでいます。同じことに関する説明が、違う言葉で説明されているので、そいういうことだったのかとお互いにおもうことがあります。
Larsen’s Human Embryology 6th Edition – November 29, 2020 Authors: Gary C. Schoenwolf, Steven B. Bleyl, Philip R. Brauer, Philippa H. Francis-West Paperback ISBN: 9780323696043 9 7 8 – 0 – 3 2 3 – 6 9 6 0 4 – 3 eBook ISBN: 9780323696050 ELSEVIER 608ページ デジタル版も含まれているようです。
カールソンとラーセンは甲乙つけがたいですが、中途半端にならないようにカールソンを熟読すると決めて、理解を確かめるために同じ内容のところをラーセンを読み直すということをしています。カールソンのほうがイラストが「上品」な感じ、ラーセンのほうが文章にメリハリがある感じがしますが、大きな差はないです。が、細かいことをいうとそれぞれが工夫を凝らしています。
ムーア人体発生学 Moore
原書は2024年10月に第13版が出ました。著者からムーアの名前がなくなっていて「なぜ?」と思って調べたら2019年にムーアさんは亡くなっていました。
原書13版 英語版 The Developing Human: Clinically Oriented Embryology 2024/10/18 T. V. N. Persaud and Mark G. Torchia. (amazon.co.jp)
Clinically oriented embryologyという副題が示すように、臨床寄りの内容です。ELSEVIER社の発行で、講義資料用に図などがデジタルで利用可能なようです(本を購入して、シールをこすってはがすとアクセスコードが現れる)。
Lecturioの発生学の講義を視聴していると、カールソンの図が多いのですがときどき非常に見やすいポイントを押さえた図が紹介されていて、どの教科書からとってきたのかと思ってみたらこのムーアのDeveloping Humanでした。この本も買いたいのですが、すでにカールソンとラーセンを買っていて、ちょっと経済的に手をだしにくくなってしまいました。ムーアはムーアでまた特徴を感じます。
日本語訳の最新版は原書第11版です。
邦訳 ムーア人体発生学 原著第11版 K.L.Moore 大谷 浩 (翻訳), 小川 典子 (翻訳), 松本 暁洋 (翻訳) 2022/4/4 医歯薬出版
- Keith L. Moore (5 October 1925 – 25 November 2019) (Wikipedia)
- The Developing Human Clinically Oriented Embryology 11th Edition – December 23, 2018 Authors: Keith L. Moore, T. V. N. Persaud, Mark G. Torchia ISBN: 9780323611541 9 7 8 – 0 – 3 2 3 – 6 1 1 5 4 – 1 eBook ISBN: 9780323611565 522ページ
ラングマン Langman
Langman’s Medical Embryology 15th edition 2023/1/14 最新版は2023年現在、第15版です。
日本語版 ラングマン人体発生学 第11版 サドラー,T.W.Sadler,Thomas W.メディカル・サイエンス・インターナショナ 2016/02 427p 原書名:Langman’s medical embryology , 13th edition
日本語版はB5の大きさでページ数が427ページですが、持ち歩ける大きさ、重さです。しかし原書は15版が出ていますので、原書を買ったほうがよいでしょう。解剖学的な記述の部分はあまり古くならなくても、遺伝子発現制御など分子メカニズムの知見は日進月歩です。写真は奇形の胎児の写真がかなり多く、純粋な発生学よりも、臨床医学寄りの内容だと思います。
グレイ解剖学
グレイ解剖学は解剖学の大著ですが、人体発生学に関してもかなりの記述があります。最新は42版(October 21, 2020)ですが、下は39版に対する書評です。
For those of you who have not perused Gray’s Anatomy, is not just plain old anatomy. It gives detailed stand-alone chapters of embryology and integrates a very healthy amount of histology, physiology, and pathology. It also starts off with a 225-page introduction, which is a good primer on, and quick review of, cell structure and function, tissues, and overall systems. The second section (213 pages) is on neuroanatomy, which includes chapters on the autonomic nervous system, neuroembryology, meninges, CSF and the ventricular system, vasculature of the brain, spinal cord, brain stem, cerebellum, diencephalon, cerebral hemispheres, basal ganglia, and special senses.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7976199/
キンドルのサンプルで最初の何ページかを読むことができるので、ちょっと見てみましたが、セルシグナリングのイラスト(Fig. 1.12など)はちょっと素朴すぎる印象があります。いまどきもっといい画がたくさんあるのにもったいない。分子生物学はあまり強くなさそう(詳細を省いている)ですね。シンプルに書いているのですが、シンプルに書きすぎるとむしろわかりにくくなることもあります。
人体発生学の教科書 学生向け
Singh
Textbook of Clinical Embryology, 2nd Updated Edition 2020/5/20 Vishram Singh