基礎系の研究者が動物を用いた実験を行う場合には、動物愛護に関する法律や遺伝子組み換えに関する倫理指針などの遵守が求められますが、医師が臨床試験を行う場合には人を対象とするため、非常に厳しき規制にもとで行う必要があります。診療行為と研究との境界が曖昧だった昔と同じようなことを万が一やってしまうと、違法行為として処罰の対象となる可能性があります。
診療と研究との違い
診療は既に有効性が確立していることを医師が目の前の患者さんに利益をもたらすために行う行為です。それに対して、研究は、目の前の患者さんの利益のために行うわけではなく、将来の大勢の患者さんのために、 まだ有効性が確立していないことを行ってその有効性を検証するものです。
診療:ある患者 もしくは受診者個人の福利を高めるためだけに考案され、それなりに成功が見込める介入行為
研究:仮説を検証し、結論を導き出すことを可能とし、それによって、一般化可能な知識を開発したり、そのような知識に貢献したりするように考案された活動
(参考:ベルモントレポート)
- 研究倫理は何のため?
- 10 研究倫理 日本医療研究開発機構 臨床研究・治験推進研究事業先端医療開発を担う人材養成のための標準化教育プログラムの策定と実践研究班
臨床研究は大きくわけると、介入研究と観察研究の2つ分けられます。
倫理手続き
「侵襲」と「介入」がキーワードであり、『侵襲あり‐軽微な侵襲‐侵襲なし』と『介入あり‐介入なし』の二つの条件軸を対比した座標のいずれに該当するかによって、倫理的な手続きに差異が生じてきます (<介入の意味>)
侵襲ありならば介入研究ということのようですが、介入ならば侵襲ありというわけではありません。侵襲なしの介入研究はあります。例えば、2群に分けて片方だけエクササイズの習慣を指導するなど。
以前の指針では「侵襲」を伴う研究は「介入研究」と定義されていましたが,今回の指針では,定義が区別されました.(人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 日本腹部救急医学会)
- 「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を制定しました2021年3月23日同時発表:文部科学省、厚生労働省 経済産業省
- 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス 平成27年2月9日 (平成27年3月31日一部改訂) (平成29年3月8日一部改訂) (平成29年5月 29 日一部改訂)