遺伝子発現やクロマチンの話で、H3K4me3というものをしばしば見かけますが、これは何を意味するのでしょうか?
consensus.appに訊いてみました。
ヒストン修飾は、遺伝子発現の調節において重要な役割を果たします。特に、ヒストンH3のリジン4のトリメチル化(H3K4me3)とリジン27のトリメチル化(H3K27me3)は、遺伝子の活性化と抑制に関連しています。本分析では、これらの修飾が遺伝子発現にどのように影響を与えるかについての研究結果をまとめます。
主要な研究結果
- H3K4me3は遺伝子活性化、H3K27me3は遺伝子抑制に関連
- H3K4me3とH3K27me3のバランスが遺伝子の「ポイズド」状態を維持
- 発生過程におけるH3K4me3とH3K27me3の動的変化
- がんにおけるH3K4me3とH3K27me3の役割
- 前立腺がんでは、H3K4me3とH3K27me3のエピジェネティックなスイッチが遺伝子発現の変化と関連している3。
結論
H3K4me3は遺伝子の活性化に、H3K27me3は遺伝子の抑制に関連しています。これらの修飾は、発生や分化、がんなどのさまざまな生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たします。特に、H3K4me3とH3K27me3のバランスが遺伝子の「ポイズド」状態を維持し、適切なシグナルを受け取ると遺伝子の活性化または抑制が起こることが示されています。
転写が活性化される場合に、ヒストンH3の中に多数含まれるリジンのうちの4番めのリジンがトリメチル化(H3K4me3)されます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1097276514002044
逆に、転写が抑制される場合に、ヒストンH3の中に多数含まれるリジンのうちの27番めのリジンがトリメチル化(H3K27me3)されます。
下の論文の纏めの模式図は、逆みたいなので、生物種や文脈で異なるのかもしれません。
https://www.researchgate.net/publication/266084583_Poised_chromatin_in_the_mammalian_germ_line/figures?lo=1
K4は4番目のアミノ酸残基という意味ではありません。4番目のリジンという意味です。アミノ酸の配列を見てみましたが、確かに4番めのアミノ酸残基はリジンではありませんでした。
遺伝子発現の制御機構は結構複雑なようです。
植物を用いた研究から、真核生物に広く保存されたヒストン修飾であるH3K9メチル化が、これまでの常識に反して転写の抑制のみならず促進する機能を持つことを明らかにしました。 https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/10403/
- ヒストンH3(ウィキペディア)
- Histone H3 lysine 4 methylation is mediated by Set1 and required for cell growth and rDNA silencing in Saccharomyces cerevisiae doi: 10.1101/gad.940201 Genes & Dev. 2001. 15: 3286-3295 https://genesdev.cshlp.org/content/15/24/3286.long
- Strahl B.D., Ohba R., Cook R.G., Allis C.D.(1999) Methylation of histone H3 at lysine 4 is highly conserved and correlates with transcriptionally active nuclei in Tetrahymena. Proc. Natl. Acad. Sci. 96:14967–14972. https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.96.26.14967