病原体が侵入してきたときにおこる免疫反応のストーリー

スポンサーリンク

初学者が免疫学の教科書を読んでいて感じる一番のフラストレーションは、結局病原体の侵入に対してどんな免疫応答が起こるのかが、順を追って説明されていないということなのではないでしょうか。一番知りたいことが、書いていないのです。しかもたとえ免疫学の教科書を一冊読み終えてもいまひとつよくわからないという読後感が残ってしまいます。

病原体の侵入から始まって、免疫系のどんな細胞が何をするのか、どうやって病原体を撃退するのかをストーリーを追って説明している教科書は少ないながらもいくつかあります。ブルーバックスの『新しい免疫入門』が自分は一番わかりやすいと思いました。ただし、免疫系の細胞はたくさんの種類があり、それらの細胞が起こす反応も多岐にわたっており、また病原体の種類(細菌か、ウイルスか、寄生虫か)によってもストーリーが異なるため、なかなか全体像をつかむのは容易ではありません。自然免疫、獲得免疫の細胞性免疫と液性免疫、それらの相互作用と、ストーリーは途中で枝分かれしたりまた枝がつながったりして、本当にドラマチックだと思います。

こうした複雑なストーリーを理解するには、説明された文章を追って自分で絵をかいてみることでしょう。もしくは、そのように描かれた画を眺めてみることです。また小説の冒頭に登場人物の説明があったりしますが、あらかじめ登場人物の簡潔な紹介を読んでおくのも助けになります。

登場人物

マクロファージ:食細胞の一種で、自然免疫に属する細胞。異物を食べて処理する。

下の動画は、マクロファージが細菌をガンガン食べていく様子を示しています。

Bacterial phagocytosis by macrophage -マクロファージによる細菌の貪食- TIMELAPSE VISION

食べたものを分解してペプチドを抗原提示することもできる。ただし抗原提示能は、プロフェッショナル抗原提示細胞である樹状細胞には劣る。

好中球:白血球の数で過半数を占める細胞。食細胞であり、細菌などを食べて処理する能力が高い。自然免疫に属する。

Phagocytosis of MRSA by a human neutrophil NIAID チャンネル

Crawling Neutrophil Chasing a Bacterium YouTube·Andres Trevino·2006/05/21

中性色素で細胞がよく染色されることからこの名がある。

樹状細胞:食細胞の一種で、自然免疫に属するが、自然免疫と獲得免疫とを結びつける非常に重要な役回りを果たしている。活性化すると文字通り樹状の形状になる。

Dendritic cell -樹状細胞- TIMELAPSE VISION タイムラプスビ

病原体などを食べて、病原体由来のタンパク質を分解したペプチドをMHCクラスI分子の上に載せてナイーブキラーT細胞に提示したり、MHCクラスII分子の上に載せてナイーブヘルパーT細胞に提示したりすることができる。

T細胞とB細胞:多様な抗原に対する特異的な抗原受容体をもった細胞として、T細胞とB細胞とがある。T細胞はT細胞抗原受容体(TCR)を表面に発現している。B細胞はB細胞抗原受容体(BCR)を表面に発現している。B細胞は活性化すると、形質細胞(プラズマ細胞)に変化し、BCRを発現するのをやめるかわりに、BCRと同じ抗原特異性を持つ抗体(免疫グロブリン)を産生するようになる。抗体にはIgA,IgG,IgD,IgE,IgMの5種類(アイソタイプと呼ばれる)が存在し、膜結合型もしくは分泌型(水溶性)である。T細胞はキラーT細胞とヘルパーT細胞の種類に分かれる。

ナイーブキラーT細胞:別名CD8細胞。細胞表面のマーカー分子としてCD8を発現している。またT細胞抗原受容体(TCR)を表面膜状に発現している。TCRは、遺伝子再編成により構築されるため一つ一つの細胞が異なる抗原を認識することができる。MHCクラスI分子上に提示されたペプチド抗原を認識する際に、CD8は相手の細胞のMHCクラスI分子と結合することにより、細胞同士の結合を安定化する働きがある。抗原提示細胞との相互作用により、「活性化」して増殖し、抗原特異的に相手を殺傷することができるため、キラーT細胞の名がある。ナイーブの意味は、まだ抗原と出会っていないという意味であり、抗原と出会って活性化されると、活性化キラーT細胞になる。

ナイーブヘルパーT細胞:別名CD4細胞。細胞表面のマーカー分子としてCD4を発現している。またT細胞抗原受容体(TCR)を表面膜状に発現している。TCRは、遺伝子再編成により構築されるため一つ一つの細胞が異なる抗原を認識することができる。MHCクラスII分子上に提示されたペプチド抗原を認識する際に、CD4は相手の細胞のMHCクラスII分子と結合することにより、細胞同士の結合を安定化する働きがある。抗原提示細胞との相互作用により、「活性化」して増殖し、抗原特異的にB細胞やキラーT細胞の活性化をヘルプすることができるため、ヘルパーT細胞の名がある。Th細胞とも呼ばれる。まだ抗原と出会っていない細胞がナイーブヘルパーT細胞で、抗原との反応により活性化された場合は、活性化ヘルパーT細胞と呼ばれる。ヘルパーT細胞にはTh1、Th2、Th17などの種類がある。

 

 

タイトルとURLをコピーしました