月別アーカイブ: 2020年7月

ゴールドスタンダード (Gold Standard) とは?

臨床研究の世界では良く耳にするゴールドスタンダードという言葉、一体、どういう意味で使われているのでしょうか?貨幣制度として金(きん)を基準とする金本位制という制度が昔はありました。gold standard は金本位制を意味する英語です。

A gold standard is a monetary system in which the standard economic unit of account is based on a fixed quantity of gold. The gold standard was widely used in the 19th and early part of the 20th century. (Wikipedia)

The gold standard is a monetary system where a country’s currency or paper money has a value directly linked to gold. (investopedia.com)

ここから転じて、絶対的に正しい、あるいは最も標準的とされる手法を比喩的にゴールドスタンダードと呼ぶようです。例えば、研究のデザインに関して言えば、ランダム化ランダム化比較試験(randomized controlled trial; RCT)が一番理想的なので、RCTがゴールドスタンダードという言われ方をします。

When R.A.Fisher (1926) was pioneering experimental methods by comparing crop yields in the 1920s, he was constructing the metaphorical ‘gold standard’ in research methods, the randomized controlled trial (RCT). (Page 294, The SAGE Handbook of Innovation in Social Research Methods. Edited by Malcolm Williams, W. Paul Vogt)

 

クロストリディオイデス・ディフィシル感染症(Clostridioides difficile infection; CDI )とは?

クロストリディオイデス・ディフィシル感染症(Clostridioides difficile infection; CDI )の症状

Symptoms include watery diarrhea, fever, nausea, and abdominal pain. (Wikipedia)

呼称について

Clostridioides difficile (formerly known asClostridium difficile”) is one of the most common healthcare-associated infections. This organism is an anaerobic, spore-forming, toxin-producing bacterium capable of causing severe diarrhea, pseudomembranous colitis, toxic megacolon and death. (premiersafetyinstitute.org)

CDI発症の要因

Clostridioides difficile [klos–TRID–e–OY-dees dif–uh–SEEL] (C. diff ) is a germ (bacteria) that causes life-threatening diarrhea. It is usually a side-effect of taking antibiotics. (cdc.gov)

CDIは抗菌薬投与などによって腸内細菌叢が乱れ、菌抗体減少としてC. difficileが消化管内で増殖することで起こる。下痢や腸炎といった症状を呈し、重症化する場合もある。C. difficileは多くの消毒薬に耐性を示し長期間生存し、患者と接触した医療従事者の手指を介して感染拡大しやすい。(C. difficileの家庭内感染にも注意 米・世帯対象の症例対象研究 2020年07月09日 05:15 Medical Tribune)

科研費研究

  1. クロストリディオイデス・ディフィシル感染症の新規治療法の開発 20K07508 基盤研究(C) 細菌学関連 国立感染症研究所  2020-04-01 – 2023-03-31
  2. One Healthに基づくクロストリディオイデス・ディフィシル伝播様式の解明 20K12288 基盤研究(C) 環境政策および環境配慮型社会関連 東邦大学 2020-04-01 – 2023-03-31
  3. 胆汁酸代謝からみたクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症の制御に関する研究 18K07920 基盤研究(C) 消化器内科学関連 東京医科大学 2018-04-01 – 2021-03-31
  4. 胆汁酸代謝からみたクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症の制御に関する研究  18K07920 基盤研究(C) 消化器内科学関連 東京医科大学  2018-04-01 – 2021-03-31 clostridium difficile関連下痢症(CDAD)の発症は、C. difficileに対して抗菌活性を有する二次胆汁酸の減少が一因とされている。その二次胆汁酸は、肝臓由来の一次胆汁酸を基質にして、大腸内でClostridium subcluster XIVa (XIVa) によって生成される。申請者らは作年度までに、極微量の糞便(肛門部拭い綿棒)または血清を用いて、大腸内XIVaの多寡を1時間以内に判定する新しい方法を確立した。
  5. クロストリジウム・ディフィシル感染症に対するDNAワクチンの開発と応用  16K19132 若手研究(B)  細菌学(含真菌学)  国立感染症研究所 2016-04-01 – 2019-03-31
  6. 腸内クロストリジア群のクオラムセンシングの解明と疾病予防・健康増進に向けた制御 16F16101 特別研究員奨励費 応用微生物学  九州大学 2016-04-22 – 2018-03-31 ヒト腸内フローラの中核を占めるクロストリジア綱細菌群には、善玉菌から悪玉菌そして病原菌も含まれ多種多様である。これまでの申請者らの研究および細菌ゲノム配列データから、このクロストリジアの多くが、種特異的な環状ペプチドシグナル(AIP)を用いて同種菌間でコミュニケーションを行い、遺伝子の発現を特異的にコントロールし(クオラムセンシング)、また、時には他種細菌のクオラムセンシングを干渉(クオラムクエンチング)していることが示唆されている。本年度は、プロバイオティクスとして知られる酪酸菌(Clostridium butyricum)のQSについて、AIPで誘導される遺伝子をRNAseq法により解析した。また、酪酸菌とウェルシュ菌(Clostridium perfringens)および酪酸菌とディフィシル菌(Clostridium difficile)間のクオラムセンシングのクロストークを調べた。
  7. 診療科別調査によるC. difficile関連下痢症発症予測の可能性検証  16H00581 奨励研究 薬学Ⅳ-B  東京大学 2016 本研究では、当院における診療科毎のClostridium difficile(CD)関連下痢症(CDAD)発症リスクおよび抗菌薬使用状況をレトロスペクティブに調査・解析することで、診療科別のCDAD発症リスクを局所的な抗菌薬使用サーベイランス結果に基づき予測することが可能かを検証することを目的とする。
  8. 強毒株クロストリディウム・デフィシル菌アウトブレイク防止体制構築についての研究 23591487 基盤研究(C) 感染症内科学 産業医科大学2011-04-28 – 2015-03-31 高齢者長期療養型病院入院患者の35.7%(61名/171名)がクロストリディウム・デフィシル(以下CD)菌のキャリアであった。年齢、性、BMI、入院期間、入院の契機、診断、栄養、合併症、薬物使用歴について多変量解析を行ったところ、プロトンポンプ阻害薬が有意なキャリア化のリスク因子であった。
  9. 長期入院がん患児のディフィシル関連下痢症の予防ケアに関する教育プログラムの開発  21792283 若手研究(B) 生涯発達看護学 三重大学 2009 – 2011
  10. ディフィシル菌の分子疫学 12670252 基盤研究(C) 細菌学(含真菌学) 金沢大学 2000 – 2001 異なる9群の社会集団における健康成人、合計1,413名中108名(7.6%)においてディフィシル菌の腸管保有が認められた。また、各集団の本菌保有率は4.2〜15.3%であった。

炎症とがんの関係 

炎症とがんとの関係

消化器系の組織では、原因に関わらず、炎症が慢性的に持続すると、高率にその臓器組織での腫瘍形成を見る(肝臓がん・胃がん・大腸がんなど)。‥ 私たちは先行研究で「慢性炎症の刺激が、細胞内の遺伝子発現の調節を司る小分子RNA(microRNA)の機能を全般的に低下させ、その結果 腫瘍が発生する」という、これまで知られていなかった持続炎症に続発する腫瘍の形成メカニズムを明らかにしました(RNA機能変化を端緒とした炎症細胞社会学の確立 大塚 基之 東京大学医学部附属病院 消化器内科 予防を科学する炎症細胞社会学 文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究(研究提案型)」平成29年度~令和3年度 公募研究(~令和元年度)

炎症反応は組織傷害や微生物感染に対する防御機構の1つであるが、近年、がんの発生や悪性化の促進にも関与することが明らかになってきた。炎症性細胞から産生されたサイトカインや増殖因子は発がん促進に作用している。またがん細胞は、本来がん細胞自身を排除するための生体応答である炎症反応を乗っ取り、炎症性細胞を自身の周囲にリクルートして“がんニッチ”を形成し、増殖・浸潤等の自己の悪性化に利用している。(弓本 佳苗 九州大学 生体防御医学研究所 分子医科学分野 特任助教 予防を科学する炎症細胞社会学 文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究(研究提案型)」平成29年度~令和3年度 公募研究(~令和元年度)

 

肝炎と肝がん

慢性化した肝炎を放置していると、肝臓の線維化が進み、約25〜30年で約50%が肝硬変となり、 さらに10年以内に80%が肝がんとなります。(知っておきたい身体の危険信号 すぎやま病院

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の1~2割の症例は、NASHと呼ばれる炎症と線維化を伴った進行性の病態に陥っており、最終的には肝硬変や肝がんに至ることがわかってきました。(肝臓研究室 病態制御内科学(第三内科)九州大学大学院医学研究院

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が注目されています。NAFLDの一部は肝細胞壊死・炎症所見から線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に移行し、このうち一部は肝硬変や肝細胞癌を発症します。近年、直接作用型抗ウイルス薬や核酸アナログが使用されるようになりウイルス性肝疾患に起因する肝細胞癌は減少傾向にありますが、生活習慣の欧米化に伴ってNASH肝癌の罹患率が増加しています。(炎症細胞社会に焦点を当てた閉経後NASH肝癌の発症機構の解明と予防戦略の開発 小川 佳宏 九州大学大学院 医学研究院病態制御内科学分野(第三内科) 教授 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野 教授 予防を科学する炎症細胞社会学 文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究(研究提案型)」平成29年度~令和3年度 公募研究(~令和元年度)

日本人の肝臓がんのほとんどはB型C型肝炎ウイルス持続感染者で、慢性肝炎・肝硬変を経て肝臓がんに至るという経過をたどっています。肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変になった肝臓は、肝臓全体が発がんしやすい状態になっているため、一つの腫瘍を消滅させても、他の場所に新たに発生するリスクが高いのが特徴です。最初にみつかった肝臓がんを治療したあと、1年以内に約30%が再発し、5年以内に70%以上が再発しています。‥ 肝臓の発がんを促進する最大の要因は、炎症の持続によって活性酸素の害(酸化ストレス)が増えることと、細胞死に伴って細胞の増殖活性が促進されるからです。(肝臓の慢性炎症が肝臓がんの再発を促進する 肝臓がんの再発予防 銀座東京クリニック

C型肝炎は、HCV感染急性肝炎となり、その70~80%が慢性化し、その内80%が肝硬変となり、年に7~8%の人が肝細胞癌を発症する経過を取っていた。‥ 肝癌による死亡者数は2003年頃の年3万5千人をピークに、現在は年3万人前後にまで減少してきた。肝癌の原因疾患の第一は、依然C型肝炎ウイルスであるが、その頻度は減少してきており2011年に発表された九州地区の肝癌の調査では、68%にまで低下してきており、B型・C型以外のNASHに伴うものが増加してきている。(2017年7月27日 高齢者におけるC型肝炎治療の現状 中馬 誠 先生 川村内科診療所

 

慢性胃炎と胃がん

 

Intra-Aortic Balloon PumP (IABP) とは?

IABPとは

The concept of counter pulsation in the management of left-ventricular failure was first described by Kontrowitz and Kontrowitz more than 60 years ago [1].

[1]. Surgery . 1953 Oct;34(4):678-87. Experimental Augmentation of Coronary Flow by Retardation of the Arterial Pressure Pulse A KANTROWITZ

A few years later, in 1962, Moulopoulus et al. [2] introduced the counter pulsation via device inserted into the aorta. Since then the IntraAortic Balloon Pump (IABP) has become a valuable minimally invasive method of augmenting left-ventricular function.

[2]. Am Heart J . 1962 May;63:669-75. doi: 10.1016/0002-8703(62)90012-1. Diastolic Balloon Pumping (With Carbon Dioxide) in the Aorta–A Mechanical Assistance to the Failing Circulation S D MOULOPOULOS, S TOPAZ, W J KOLFF

参考元:Intra-Aortic Balloon Counterpulsation in Low Cardiac Output Noncardiogenic Shock – Case Report and Review. Case Report Published: 15 Jun, 2020. Annals of Clinical Case Reports http://www.anncaserep.com/pdfs_folder/accr-v5-id1851.pdf

 

IABPの動作

With the IABP in place in the thoracic aorta, inflation of the balloon in diastole and active deflation in systole induces higher perfusion pressures in the brain and the coronary arteries in diastole and unloads the diseased heart by reducing left ventricular afterload in systole.

参考元:Intra-aortic Balloon Counterpulsation in Cardiogenic Shock K. Werdan, M. Russ, and M. Buerkeのイントロダクション

 

参考

K. Bendjelid, Cardiogenic shock and systemic diastolic pressure: A subtle association, Journal of Critical Care(2019), https://doi.org/10.1016/ j.jcrc.2019.09.003 (PDF)