基礎疾患がある人ほど新型コロナウイルスによる症状(COVID-19)が重症化しやすいという報道により一般の人にもなじみのある単語となった、基礎疾患という言葉ですが、どういう意味でしょうか。頻繁に使われているにも関わらず、はっきりとした説明が見当たりません。
中国、武漢からのレポートによると、新型コロナウイルス感染症により死亡された方々のなかで、50%の方に高血圧、次いで25%の方に糖尿病の基礎疾患がありました[1]。(東京大学保健センター)
基礎疾患とは
基礎疾患(きそしっかん) さまざまな疾患の原因となっている病気を指す。樹木の枝葉に対する幹の存在ともいえる、心筋梗塞や脳梗塞に対する動脈硬化症や糖尿病などをいう。(日本心臓財団)
この定義に当てはめると、新型肺炎の原因として糖尿病があるかのようですが、因果関係は全く解明されていないわけですから、そうではないでしょう。この定義は狭すぎるようです。
Q2:新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい、「基礎疾患」とは何のことですか? A2:基礎疾患とは、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等),透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方を指します。(慶應義塾大学保健管理センター)
上の解説は、重症化しやすい基礎疾患の具体例を並べただけであって、そもそも基礎疾患とは何なのかという質問に答えていません。医学用語が説明抜きで一般の人向けに使われていることに、違和感を覚えます。
新型コロナで言われている基礎疾患とは 新型コロナウイルスで基礎疾患がある人が重症化のリスクが高いとありますが、「基礎疾患」をネットで調べてもいまいちはっきりした事がわかりません。 例えば「心筋梗塞や脳梗塞に対する動脈硬化症や糖尿病などをいう」と載っていたりするのですが、動脈硬化症や糖尿病だけでなく全体的な病名などを素人の私が理解したり調べたりするにはどうしたら良いですか?(person70代以上/男性 – 2020/02/10 AskDoctors)
登録が必要なため上の質問の回答は読んでいませんが、同じような疑問を持つ人がやはりいました。
明確な定義が無い場合、その使われ方を見ることによって言葉の意味を知ることができます。
9つに分類された基礎疾患を有し、入院中または通院中の方は、新型インフルエンザにり患した場合に重症化するリスクが高いと考えられるため、「基礎疾患を有する者」としてワクチン優先接種の対象とします。 基礎疾患の分類 1.慢性呼吸器疾患 2.慢性心疾患 (高血圧を除く) 3.慢性腎疾患 4.慢性肝疾患 (慢性肝炎を除く) 5.神経疾患・神経筋疾患 6.血液疾患 (鉄欠乏性貧血と、免疫抑制療法を 受けていない特発性血小板減少性 紫斑病・溶血性貧血を除く) 7.糖尿病 8.疾患や治療に伴う免疫抑制状態 8-1悪性腫瘍 8-2 関節リウマチ・膠原病 8-3 内分泌疾患(肥満含む) 8-4 消化器疾患 8-5 HIV感染症・その他の疾患 や治療に伴う免疫抑制状態 9.小児科領域の慢性疾患
上のインフルエンザに関する基礎疾患の説明だと、「原因」というよりも「リスク」ということのようです。ある疾患が生じるリスクになる疾患と考えればよいのでしょう。
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リスクという言葉自体、原因というニュアンスを含みますが、因果関係がわかっていない、あるいは存在しなくても、「関連」でしかない可能性もあると思います。そのへんはあまりこだわらずに、使われているのかもしれません。
糖尿病の持病があるとなぜ新型肺炎が重症化しやすいのかは全く謎のままであって、因果関係を説明するメカニズムはわかっていません。しかし、重症化の原因、リスク要因になっているのだろうという仮定のもとに、基礎疾患という言葉が使われているようです。
ネット上には、しっくりくる基礎疾患の説明が見当たりませんでした。明解な説明なしに言葉が使われているのが、不思議な気がします。