肺MAC症とは Mycobacterium avium complex

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MACとは

抗酸菌は細菌を色素で染めたときに、酸で色素が脱色されない、つまり酸に抵抗性を示す性質から名付けられています。抗酸菌(マイコバクテリウム)は、結核菌、らい菌、非結核性抗酸菌に大別されます。… 肺非結核性抗酸菌(肺NTM)症の原因となる非結核性抗酸菌の頻度は、日本ではMycobacterium avium (マイコバクテリウム・アビウム)とMycobacterium intracellulare (マイコバクテリウム・イントラセルラー)が約90%です。Mycobacterium aviumMycobacterium intracellulareMycobacterium avium complex (略してMAC(マック)と呼びます)に含まれます。https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000266.html

抗酸菌

Mycobacterium属に属する菌種で、分厚い脂質に囲まれ、グラム染色では染色されにくく、抗酸菌染色(抗酸染色、抗酸性染色とも)という特殊な染色法が必要である。acid fast bacilliとも呼ばれる。主要な病原体は、肺結核の原因となる(ヒト型)結核菌 M. tuberculosisである。非結核性抗酸菌のうち、細菌学的性状が類似するM.aviumM.intracellulareは、M.aviumcomplex(MAC)と総称され ‥ (細菌学講義eText大阪市立大学大学院医学研究科細菌学教室)

肺MAC症とは

日本では肺結核の減少とは対照的にMycobacterium avium complex (以下、MAC)という系統の細菌による肺疾患、肺MAC症が増加しています。2016年の調査では、国内で10万人中15人程度の罹患率とされており、今後も患者数が増える見通しです。しかし、病原体についてのゲノム情報が不足しており、肺MAC症の効果的な治療方法は確立されていません。(肺MAC症原因菌が進化する仕組みを解明 AMED)

肺MAC症に代表される非結核性抗酸菌症は本邦で急増している呼吸器感染症ですが、既存の薬が効きにくく難治性です。(研究成果 肺MAC症病原菌の薬剤標的候補を同定 2020/04/01  新潟大学)

  1. 肺 MAC症は通常,気管支拡張型,結核類似型,過敏性肺臓炎型,全身播種型の 4 病型 に分けられることが多いが,後 2 者は稀である。https://www.kekkaku.gr.jp/pub/Vol.84(2009)/Vol84_No8/Vol84No8P569-575.pdf
  2. 非結核性肺抗酸菌症の80%がマック菌 肺非結核性抗酸菌症 https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-08.html
  3. 肺非結核性抗酸菌症の多彩な臨床・病理像 肉芽腫形成の視点から 藤田 次郎 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsogd/39/1_2/39_11/_article/-char/ja/
  4. 発病の危険性が高いグループは、肺嚢胞、気管支拡張症を持っている人、エイズ患者、手術後で体力が落ちたり体重の激減した人である。 https://jata.or.jp/rit/rj/byorichiken.htm
  5. Mycobacterium avium, an opportunistic intracellular pathogen, is a member of the non-tuberculous mycobacteria species. M. avium causes respiratory disease in immunosuppressed individuals and a wide range of animals, including companion dogs and cats. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcimb.2020.609712/full

肺MAC症の治療

症状がなく、健診や人間ドックでの胸部画像検査で発見されることがしばしばあります。また痰(たん)や咳といった気道症状が続くことや、血痰(けったん:痰に血液が混じっている場合)が出ることで発見されることもあります。多くの場合、10年以上かけてゆっくりと進行し、からだのだるさや体重減少が出ることがあります。https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/181

無治療

肺MAC症は、確定診断がついてもすぐに治療を開始するとは限りません。無治療でも進行が緩徐なこともあるため、治療した場合の副作用を考慮し、経過観察を行う場合があります。https://www.ntmnavi.jp/treatment/

標準治療

標準治療は3剤併用療法を基本とし、病型によって他の薬剤が追加されます  https://www.ntmnavi.jp/treatment/

副作用

肺MAC症で世界共通に使われている3つの薬は、クラリスロマイシン(1日4錠)、エタンブトール、リファンピシンだそうです。これらの3つの薬は同時に使われます。エタンブトールによる副作用として、1割の患者さんでアレルギー性皮疹があるそうです。アレルギー性皮疹は、リファンピシンが原因となる例もあります。リファンピシンの服用により血液検査におけるAST, ALTの値(肝臓機能を表す検査値)が一過的に上昇します。これらの肝機能の検査値の上昇に加えてビリルビンの値も上昇することがあります。

  1. 肺非結核性抗酸菌症の治療と副作用 結核予防会複十字病院 2015年3月6日(金)に開催された、慶應医師会市民公開講座の資料②(肺非結核性抗酸菌症の概要) スライドシェア (治療の実際がわかりやすく解説されている)
  2. 肺Mycobacterium avium complex症治療における 副作用の検討(PDF) Kekkaku Vol. 87, No. 7 : 487_490, 2012 治療の変更,中止など何らかの対策を要した副作用が みられた症例は74例中22例(29.7%),23件あった。副作用別の症例数と副作用内に占める割合(Fig. 1)は, 視力障害が 9 例,39.1%と最多であった。9 例とも視力 低下の自覚があり,うち 8 例は眼科受診の結果,フリッ カー値の低下などEBによる視力障害の可能性を指摘さ れていた。次いで,皮疹 5 例,発熱 5 例などのアレルギー症状が多く,各21.7%であった。肝機能障害は 2 例,8.7%においてみられ,うち 1 例はC型慢性肝炎が本症治療前から存在していた症例であった。食欲不振は 1 例,4.3%であった。
  3. 複十字病院 複十字(Double-Barred Cross)は、9世紀頃、あるキリスト教派の象徴として使われていました。その後、第1回十字軍の指揮官ローレーヌ公がこれを楯の紋章にして戦ったことからローレーヌ十字とも呼ばれ、平和と希望の象徴となりました。… 結核以外にも、肺がん、肺炎などの呼吸器感染症、間質性肺疾患など多彩な呼吸器疾患を取り扱う病院です。非結核性抗酸菌症に対して、結核研究所とも協力しながら専門的な医療を提供しています。
  4. 呼吸と循環 64巻4号 (2016年4月発行)連載 症例で学ぶ非結核性抗酸菌症・4 肺MAC症治療薬による副作用出現時の対応(1)肝機能障害・薬疹 鈴木 翔二 1 , 長谷川 直樹 2 , 倉島 篤行 3 , 森本 耕三 3 1慶應義塾大学医学部呼吸器内科 2慶應義塾大学医学部感染制御センター 3公益財団法人結核予防会複十字病院呼吸器センター pp.377-381 発行日 2016年4月15日 DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205940

非結核抗酸菌とは・非結核抗酸菌症とは

非結核抗酸菌とは

非結核抗酸菌non-tuberculousis mycobacteria: NTM)は, 結核菌群およびらい菌を除いた約150種類の抗酸菌の総称である。NTMは, 水系(環境水, 上水道), 土壌, 動物の体内などの環境中に豊富に存在し, 環境中の菌を取り込むことで, 免疫不全患者のみならず健常人への感染が成立すると考えられている。感染が成立すると, 特徴的な症状に乏しく, 数年~十数年かけて慢性肉芽腫性病変が緩徐に進行するのが一般的である。ヒト―ヒト感染は, 一部を除いて起こさないとされるため, 患者の隔離は不要である。NTMの中で, ヒトに病原性を有するのは約50種程度であり, NTM症は全抗酸菌症の10~20%を占めると考えられてきた。主たる感染臓器はであり, 皮膚感染がそれに続く。(非結核抗酸菌症 IASR Vol. 38 p245-247: 2017年12月号 国立感染症研究所)

 

MACの同定方法

PCR

MAC同定-DNA 《TaqManPCR法》 LSIメディエンス 健康保険名称:微生物核酸同定・定量検査/マイコバクテリウム・アビウム及びイントラセルラー(MAC)核酸検出 検査方法:ロシュ・リアルタイムPCR法 臨床的意義:非定型抗酸菌の代表である一連の菌群MACの遺伝子を短時間で検出。結核との早期鑑別に有用。

肺MACと免疫応答バランス

  1. Th1細胞のマスターレギュレーターであるT-betノックアウトマウスを用いて肺MAC症における病態を調べ,T-bet欠損マウスでは野生型に比べMAC感染による肺炎症像が高度であることを示した。‥ 従来のTh1/Th2バランスの考え方より,T-betの欠失 はTh2偏移をもたらし肺MAC症の感受性を高めたと考 えたが,予想に反し肺組織におけるリンパ球サブセット 解析やサイトカイン解析ではT-bet -/-マウスのTh2サイト カインレベルは他マウスと差がなく,一方でTh17細胞,およびIL-17の増加が認められた。これらの結果より, T-betが欠失ないしは不活化した状態ではMAC感染に対 しTh1抑制とともにTh17亢進が生じ(Fig. A),T-betが 活性化した状態ではTh1亢進とともにTh17抑制が生じ るものと思われた(Fig. B)。すなわち,T-betで規定され るTh1/Th17バランスが肺MAC症の発症進展の感受性因 子として重要であることが示された。(Ⅴ. 増加するMAC症の制御を目指して 座長 1小川 賢二 2佐野 千晶 Kekkaku Vol. 88, No. 3 : 355_371, 2013)
  2. A central step in the response to M. avium is the activation of CD4+ T helper 1 (Th1) cells producing effector cytokines such as interferon-γ (IFN-γ) and TNF. Immunology. 2013 Oct; 140(2): 232–243.
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