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非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは?非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease; NAFLD)

NASHとは

お酒の飲みすぎは肝臓に負担がかかってよくないというのはよくよく言われることです。肝臓に脂肪がたまって、いわゆる脂肪肝となり、さらに病気へと進展する恐れがあります。ところが、最近よく耳にする言葉にNASH(ナッシュ)というものがあり、こちらはアルコール摂取をしていないもしくは少量しか摂取していないにも関わらず脂肪肝になり、さらにそれが病気へと進展したものです。NASHは英語で「nonalcoholic steatohepatitis」の略で、日本語だと「非アルコール性脂肪肝炎」と呼ばれます。NASHに進行する前段階の、「脂肪肝」は、Nonalcholic fatty liverで、NAFL(ナッフル)と呼ばれます。

病気の進行は、

正常肝 ⇒ 脂肪肝(NAFL) ⇒ 脂肪肝炎(NASH) ⇒ 肝硬変・肝がん

という経過をたどります。NAFLやNASHは、合わせてNAFLD (nonalcoholic fatty liver disease)と総称されます。

  1. NAFLD/NASH診療ガイドライン2014 日本消化器病学会
  2. 脂肪肝 (NASH/NAFLD)について  しもやま内科(船橋市)
  3. 肝疾患特にNAFLD/NASHについて 消化器センター谷口英明 慢性肝炎から肝硬変への線維化の進行 組織検査 肝臓線維化(F)の進行F0→F1→F2→F3→F4F4が肝硬変を意味する

NAFLD, NAFL, NASHの語句の定義

  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)は,組織診断あるいは画像診断で脂肪肝を認め,アルコール性肝障害など他の肝疾患を除外した病態である.
  • エタノール換算で男性30g/日,女性20g/日以上の飲酒量でアルコール性肝障害を発症しうるので,NAFLDの飲酒量はそれ未満となる.
  • NAFLDは組織学的に大滴性の肝脂肪変性を基盤に発症し,病態がほとんど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver : NAFL)と進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に分類される.

(引用元:NAFLD/NASH診療ガイドライン2014 日本消化器病学会)

  1. Definition & Facts of NAFLD & NASH (NIH)

NASHの原因

その昔、脂肪肝はお酒の飲みすぎで生じるといわれてきたが、現在では食べすぎによる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が増えた。NAFLDを放置して炎症が続くと、肝細胞が傷み線維化が起こる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)となり、その10~20%は5~10年で肝硬変に至る。(コロナ太りになったら、疑うべし。代謝を下げる天敵「脂肪肝」の恐怖 5/25(火) 8:31取材協力/栗原 毅(栗原クリニック 東京・日本橋院長  Tarzan Web)

NASHという病気の恐ろしさ

NAFLDはもちろんですが、NASHも病状が悪化し肝硬変や肝がんを併発しない限り症状は認められません。そのため症状だけではこれらの疾患に気づくことは不可能です。(肝臓・膵臓内科の病気:脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH) 徳洲会グループ

53歳女性。20年前から脂肪肝を指摘されていたが放置していた。血小板数が低下してきたため受診し、腹腔鏡を施行すると既に肝硬変に進行していた。(非アルコール性脂肪肝炎とは(NASH) 脂肪肝と思って放っておいたら知らない間に肝硬変、 肝細胞癌なんてことにならないために 監 修:京都府立医科大学 学長 吉川 敏一 市立奈良病院 消化器科 部長 角田 圭雄)

NAFLD患者さんは我が国に2000万人以上おり、NAFLDには予後の良い脂肪肝NAFL:ナッフル)と予後の悪い脂肪肝炎NASH)があります。NAFLDの10~20%が肝硬変になりやすいNASHです。NAFLD/NASH患者さんは肝臓のみならず食道、胃、大腸、すい臓など、さまざまな臓器にがんが発生しやすく、NAFLD/NASHから糖尿病や高血圧を発症し、心血管障害や認知症など多くの病気を引き起こします。 (なぜ脂肪肝診断が重要なのか 第1回:日本人はなぜNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の早期発見が必要なのか 肝臓検査.com

NASHと線維化

  1. 脂肪肝は怖い病気ですか? なかむら内科クリニック(広島市) 脂肪肝の重症度はどうやって決まるの?肝臓の線維化で決まります。線維化は、壊れた肝細胞の修復が上手くいかず、線維が沈着し、硬くなることで生じます。そのため、線維化が進むと、ますます肝機能障害が進みます。
  2. 非アルコール性脂肪肝炎とは(NASH) 脂肪肝と思って放っておいたら知らない間に肝硬変、 肝細胞癌なんてことにならないために 監 修:京都府立医科大学 学長 吉川 敏一 市立奈良病院 消化器科 部長 角田 圭雄
    1. NASHの診断法は?NASHと診断するためには以下の3項目を満たすことが必須です。1)非飲酒者である:エタノール換算で1日20g未満 (下記参照)2)肝組織所見が脂肪肝炎(図5) (1)大滴性の脂肪沈着 (2)炎症細胞浸潤 (3)肝細胞の風船様腫大3)他の原因による肝疾患の除外ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎などの除外が必要です。
    2. NASHの診断に肝生検は必須です 診断のために肝臓の細胞を取って(肝生検)病理検査を行います。単純性脂肪肝との鑑別だけでなく、脂肪や炎症の程度、さらに線維化の進行具合肝硬変にどれくらい近づいているか)が分かります。

NASHの診断

  1. 非飲酒者であること (アルコール摂取量1日20g*以下)
  2. 肝生検による組織像で脂肪性肝炎を認めること
  3. 他の原因による肝障害を認めないこと

(参照元:非アルコール性脂肪肝炎ってなに? 大阪市立十三市民病院)

NASHの治療法

非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に対する適応が認められた治療薬は現状では存在せず生活習慣の改善や食事・運動療法による減量基礎疾患がある場合にはその治療が主な介入方法となる。(NAFLD、毎食ごはん一口減でも肝機能改善? 2020/08/06 宇津木 菜緒=日経メディカル)

NASHの治療は、まず生活習慣の改善に取り組むことが基本です。‥ 肥満が原因の人は、食事療法運動療法適正体重に戻すプランを立てましょう。‥ NASHのほかに糖尿病や脂質異常症、高血圧などにかかっている場合は、その治療も併せて行う必要があります。糖尿病の薬には、インスリン分泌を促すピオグリタゾン、脂質異常症には、スタチンエゼチミブなどが使われます。高血圧の薬では、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の使用が推奨されています。こういった病気がなくてNASHの人は、ビタミンEを服用します。(肝がんへと進行する恐れがあるNASHの原因や治療法更新日2021年6月15日 NHK健康ch

  1. NASHに対する薬物治療のエビデンス 日内会誌 109:56~63,2020 抗酸化剤のNAFLD/NASHに対する効果の検討はいくつかの薬剤で行われているが,日本で投与可能なのはビタミンEだけである
  2. “FGF21”新たなNASHに対する治療薬の候補、治験も開始! 肝疾患センター
  3. セマグルチド、NASH治療に有効な可能性/NEJM 2020/11/30 CARENET

NAFLD/NASH診療ガイドライン

  1. 日本消化器病学会NAFLD/NASH診療ガイドライン2014

NASHの合併症

  1. 心・脳血管障害,慢性腎臓病など肝臓外への合併症 日内会誌 105:38~46,2016 日常診療においては,肝疾患以外の疾患も少なからず合併する.その中でも,心・脳血管障害,慢性腎臓病,悪性腫瘍の合併は重篤な健康被害になる可能性が高く,また,睡眠障害精神疾患など,生活の質を低下させる疾患を合併する可能性もあり,日常診療においても注意が必要である.

NASH研究の重要性

NAFLはアメリカ人の約4分の1がなっており、慢性肝疾患の中で最もよくみられる疾患になっています。日本でもNAFLDの有病率は9~30%と報告されているそうです。

NAFLD患者1/4程度はさらに深刻な肝疾患である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症し、その1~2割肝硬変の発症に至り、さらには肝がんへと進行する。アメリカや東アジアでNAFLDの罹患率は25%以上とされており、世界的な健康問題のひとつとなっている。(腸内細菌を標的としたNAFLD/NASH治療法を開発 腸内細菌由来の酢酸が肝臓のインスリン抵抗性を改善 2021.10.07 糖尿病リソースガイド

NAFLの中でも一部の患者さんは、炎症や線維化を伴う重篤な疾患NASHへと進行すると言われています。線維化は不可逆な変化ですので、NAFLからNASHにどういうメカニズムで病気が進行するのかの解明は非常に重要性が高いということになります。

  1. Nonalcoholic fatty liver disease (Mayo Clinic)
  2. NAFLD/NASHガイドQ&A 日本消化器病学会ガイドライン

NASH研究

  1. 肝炎研究10カ年戦略の具体的な研究課題と実際の研究課題の対応表 NAFLD/NASH の病態解明や治療等に関する研究 第20回肝炎治療戦略会議 令和3年3月1日
  2. NAFLD/NASH診療の現状と課題 肝臓61 巻 suppl.(1)(2020) 第 56 回 日本肝臓学会総会シンポジウム
  3. 臓器線維症の病態解明と新たな診断・予防・治療法開発のための拠点形成 平成27年度~令和元年度 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 研究成果報告書 令和2年5月 東海大学
  4. NAFLD/NASHの病態研究:最近の動向 総説 竹原徹郎 日消誌  2017;114:807―812

NASHのバイオマーカー探索研究

  1. 国際共同研究で非アルコール性脂肪性肝疾患のバイオマーカーを同定―肝臓を傷つけない“血液”での診断・予後予測を目指して― 大阪大学 日本医療研究開発機構 米国肝臓学会誌「HEPATOLOGY」2021年6月9日 トロンボスポンジン2の肝内遺伝子発現量や血清タンパク質量により、NASH・肝線維化高度進展例の診断、肝硬変に伴う合併症や肝がん症の予測が可能
  2. NASH診断マーカーの取り組み:探索研究 R&D説明会 大日本住友製薬株式会社 2015年12月9日 2015年9月Hepatology NASHおよびNASH線維化診断マーカーの探索結果 日本人NAFLD患者132例を対象に血液を採取し、血中に含まれる261種の生体分子を定量した定量した261種の生体分子の中から、NASHの診断並びに線維化を伴うNASHの診断を良好に行える可能性のある少数の分子の組み合わせを見出した VCAM1、IV型コラーゲン7S 0.896 VCAM1、ヒアルロン酸 0.867 ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S 0.917
  3. 2009~2011 プロテオーム解析によるNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)疾患マーカー探索  研究成果報告書 げっし目のマウスやラットでは C E T P (CHOLESTERYL ESTER TRANSFER PROTEIN)遺伝子(Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol. 2003;135:219-229.)やある種のアポたんぱく質の遺伝子をヒト・ゲノムと異なり欠損するなどヒト肝との間に遺伝子レベルからの大きな脂質代謝上の違い NAFLDは代謝学的に見ると肝細胞に脂肪が蓄積し肝インスリン抵抗性を来すような糖尿病、ないしはメタボリックシンドロームの状態が母地としてあり、さらに肝にたとえば活性酸素(ROS; reactive oxygen species)による酸化ストレスが加わってNASHを発症するという二つの要素を提唱する2-hit theory がヒトNAFLD・NASH進展の理論として最有力

NASHの動物モデル

  1. 世界初のNASH - 癌動物モデル STAM™ マウスは,後期2 型糖尿病の背景を有し,脂肪肝,肝炎,肝線維化,そして肝癌へと病態が進行しヒトNASH と同じ病態進行を示す2)。
  2. NASH病態モデル「NASH-c/PXBマウス」(PhoenixBio)
  3. 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の新たな病態メカニズムの解明―短期間でNASHを発症する疾患モデルの開発を通して― 東京医科歯科大学ほか JCI Insight (JCIインサイト)2017年11月16日 脂肪肝を発症したMC4R欠損マウスに肝障害性薬剤投与によって肝細胞死を誘導することにより、1週間の過程でNASHを発症する新たな疾患モデル(誘導性NASHモデル)を開発 (遺伝性肥満を呈するメラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスを用いて、肥満やインスリン抵抗性を背景に、脂肪肝からNASH、肝細胞癌を経時的に発症するNASHモデルではNASH病変の発症は20週間
  4. 新規NASHモデルマウスを用いた創薬標的分子の探索 兵庫医科大学 研究シーズ集

NASHのオルガノイドモデル

  1. 1000万人の肝硬変予備軍を救う第一歩となるか!?―非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態進行を再現する三次元培養組織を作出ー 2020年2月10日 東京農工大学

NASH研究支援サービス

  1. NASH治療薬の創薬 / 病態研究 ターゲット検証から病態モデル動物での評価まで NASH治療薬の創出をトータルにサポート! AXCELEAD

参考

  1. https://youglish.com/pronounce/NASH%20liver/english?