特29(特許の要件)https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_2-At_29-Pr_1
特29第1項「新規性」
第29第2項「進歩性」
特30(新規性喪失の例外)第1項 本人以外の行為による場合 第2項 本人の行為による場合(学会発表、論文発表など) 記事:特30(新規性喪失の例外) 第1項と第2項の違い
特80 「中用権」
特112の3(回復した特許権の効力の制限)
特176 「後用権」
特29(特許の要件)https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_2-At_29-Pr_1
特29第1項「新規性」
第29第2項「進歩性」
特30(新規性喪失の例外)第1項 本人以外の行為による場合 第2項 本人の行為による場合(学会発表、論文発表など) 記事:特30(新規性喪失の例外) 第1項と第2項の違い
特80 「中用権」
特112の3(回復した特許権の効力の制限)
特176 「後用権」
(手続の補正)
第十七条 手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書、第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_1-At_17
特許法第17条第1項の文章ですが、2文めが異様に長く、どの言葉がどの言葉につながるのか一読しただけでは、いや、何回読んでも最初、さっぱりわかりませんでした。
読みやすくするため()を取り除いてみます。
ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書、第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。
まだまだ複雑です。条文が読めるようになるためには、ANDやORを意味する言葉およびその優先順位を知る必要があります。ここで知っておくべきルールは、英語でいう「A, B, or C 」というやつです。AまたはBまたはCという意味になります。法律の条文だとこれが「A、B、若しくはC」と書かれます。
もう一つ知って置くべきは、おなじORを意味する言葉として「又は」と「若しくは」の2つがあり、「若しくは」の方が結合が強い、つまり局所的なつながりを示すというルールです。「A若しくはB又はC若しくはD」という条文があれば、その意味の塊は、「(A若しくはB)又は(C若しくはD)」となります。AxB+CxDという算術記号の結合の強さのルールに似ています。
さらに知っておくべきことは、このような列挙において、列挙されるものは同じカテゴリーに属するものということです。今の場合カテゴリーとして、「文書」と「条文の条や号の番号」という2つの概念があり、これらの区別が、この長ったらしい分を読み解くカギになります。
もう一つ、重要な知識として、特許出願のための願書は、明細書、特許請求の範囲、図面、要約書という4つの書類から構成されているという事実です。この知識によりこれらはひとまとまりであることがわかります。
ここまでの知識で意味のまとまりのある部分を下線部でマークしてみると以下のようになります。
ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した「明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書」、第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した「明細書、特許請求の範囲若しくは図面」について補正をすることができない。
ここで、英語の「A, B, or C」は、「A、B、C若しくはD」あるいは「A、B、C又はD」と書かれることに注意すれば、上記の条文は、「書類A、書類B又は書類C」と書かれていることが見て取れます。
書類A:願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書
書類B:第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項に規定する書面
書類C:第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面
です。書類Cの中身がまだ複雑です。この部分を読み解くためには、第百二十条の五第二項や第百三十四条の二第一項の内容を知っていたほうがよいです。
(意見書の提出等)
第百二十条の五 審判長は、取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加人に対し、特許の取消しの理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
2 特許権者は、前項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。(特許無効審判における訂正の請求)
第百三十四条の二 特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
ひとつは「特許異議申し立て」における「訂正」、もう一つが、「無効審判」における「訂正」です。これらはどちらも「訂正」に関する内容で訂正のための請求書を提出できますので、その先の請求書という言葉に係ることがわかります。意味のまとまりとしては、[訂正もしくは訂正審判]の請求書 ということになります。訂正審判に関しては条文の番号は示されていませんが、(訂正審判)第百二十六条 は条文にハッキリと書かれた言葉ですので、条文が第何条かを示す必要性がなく、番号をわざわざ示さなかったというわけです。
(訂正審判)
第百二十六条 特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
書類C:[[第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正]若しくは[訂正審判]]の請求書に添付した[訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面]
という構造だということがわかります。以上を踏まえて、最初の文を、意味のまとまりを色分けして示すと
(手続の補正)
第十七条 手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書、第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_1-At_17
だったということが理解できます。
質問:ある遺伝子Aの遺伝子破壊マウスを論文発表済みで、何年もしてから実はそのマウスに新たな表現型が見つかりそれが人疾患モデルになるということがわかったとき、このマウスを疾患モデルとして特許化することは可能?
Gemini:「マウスそのもの(物質としてのマウス)」の特許化は不可能ですが、「そのマウスを使ったスクリーニング方法(使用方法)」としての特許化は十分に可能です。知財の用語では、これを「用途発明(あるいは属性による発明)」の考え方で捉えます。しかし、医薬品の用途発明とは少し勝手が違うため、注意が必要です。以下に、なぜそうなるのか、どのような戦略(クレーム)で権利化を目指すべきかを整理しました。
【壁:新規性の喪失】
すでに論文発表済みで、その遺伝子破壊マウスの作製方法や存在が世の中に知られている場合、そのマウスは「公知(みんなが知っている)」の状態にあります。
物質特許(物の発明): 「遺伝子Aを欠損したマウス」という請求項(クレーム)を立てても、「そのマウスなら、数年前の〇〇先生の論文に載っているよね(新規性なし)」と審査官に拒絶されます。
たとえ発見したのが「全く新しい表現型(病気)」であっても、マウスの遺伝子構成や物質としての実体が変わったわけではないため、物質としての特許は取れません。
【解:スクリーニング方法の発明】
マウス自体は公知でも、「そのマウスを〇〇病のモデルとして使うこと(新たな用途)」は誰も知りませんでした。この「新しい使い方」に特許性を見出します。具体的には、以下のような「方法のクレーム」を立てるのが定石です。
【特許請求の範囲のイメージ】
- 請求項1(方法): 被験物質を、遺伝子A機能欠損マウスに投与する工程、前記マウスにおける〇〇病の症状(またはマーカー)の変化を測定する工程、を含む、〇〇病治療薬のスクリーニング方法。
この戦略のポイント:
新規性: 「このマウスを使って〇〇病の薬を探す」という手法は、過去の論文には書かれていないため、新規性が認められます。
進歩性: もし遺伝子Aの機能から「その病気になること」が容易に予測できなかった場合(意外な発見だった場合)、進歩性(特許の高さ)も認められやすくなります。
医薬品であれば、「成分Xを含有する〇〇病治療剤」という形で、成分が公知でも「医薬用途」として物の特許が取れます。しかし、動物の場合は少し事情が異なります。
この特許を通すためには、以下のデータを明細書(特許出願書類)に記載する必要があります。
表現型の実証: そのマウスが本当にその疾患(または類似の症状)を発症していることを示すデータ(病理画像、生化学データなど)。
相関関係の証明: その遺伝子破壊と疾患発症の因果関係。
有用性の証明(できれば): 既存の薬を投与したら症状が改善した、あるいはターゲットとなるメカニズムがヒトの疾患と類似しているなどの「モデルとして使える根拠」。
| クレームの種類 | 権利化の可能性 | 理由 |
| 物質(マウスそのもの) | × 不可 | 論文発表済みのため「新規性」がない。 |
| 用途限定の物(〇〇病モデルマウス) | △ 厳しい | 日本では「物」そのものとみなされ、新規性欠如とされるリスク大。 |
| 方法(スクリーニング方法) | ◎ 可能 | 「そのマウスを使って薬を探す」という行為は新しい知見であるため。 |
このケースは、大学や研究所でよくある「宝の持ち腐れ復活パターン」です!古いマウスでも、新しい「創薬ターゲット」としての価値が見つかれば、スクリーニング方法の特許として非常に強力な権利になり得ます。特に、その病気の良いモデル動物が他に存在しない場合、製薬企業からのライセンス需要は高くなります。
「馬車をいくら改造しても、自動車にはならない」という言葉は、オーストリアの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter, 1883-1950)の言葉、あるいは彼の提唱した「イノベーション(新結合)」の概念を象徴するフレーズとして広く知られています。この言葉が持つ意味、時代背景、そして現代ビジネスへの強烈なインパクトについて、包括的に解説します。
ヨーゼフ・シュンペーター(経済学者)に帰せられます。
ただし、彼が著書の中で一字一句この通りに書いたというよりは、彼が提唱した「経済発展の理論」における**「イノベーション(新結合)」と「単なる経済成長(静学的適応)」の違いを説明するために、後世の解説者や彼自身が講義などで用いた比喩**として定着しています。
この言葉の本質は、「改善(カイゼン)」と「革新(イノベーション)」の決定的な違いを指摘している点にあります。
馬を増やしたり、車輪を滑らかにしたりすれば、馬車は速くなります。これは既存の延長線上にある**「改善」**です。しかし、どれだけ頑張っても、それは「速い馬車」にしかなりません。
内燃機関という全く異なる技術を持ち込み、馬を切り離すこと。これが「イノベーション」です。そこには、過去(馬車)との連続性はありません。
シュンペーターは、経済が発展するのは、前者のような緩やかな成長ではなく、後者のような「非連続な変化」が起きた時だけだと説きました。
シュンペーターが主著『経済発展の理論』を出版したのは1912年です。この時代背景が、彼の思想に色濃く反映されています。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、電気、化学、そして自動車産業が急速に勃興していました。
1908年にアメリカでT型フォードが発売され、馬車社会から自動車社会へと劇的な転換が起きていた時期です。まさに目の前で「馬車が駆逐され、自動車に置き換わる」様子を見ていた世代です。
それまでの輸送の主役だった「鉄道」網(郵便馬車からの進化形としての公共輸送)に対し、個人の移動を自由にする「自動車」という全く新しい概念が、社会構造を変えつつありました。
彼は、郵便馬車をどれだけ増やしても鉄道にはならないし、馬車を改良しても自動車にはならない、という事実を目の当たりにし、「既存の要素を新しい組み合わせで結合すること(新結合)」こそが、不況を打破し経済を動かす原動力だと確信しました。
このセリフとセットで語られるのが、「創造的破壊(Creative Destruction)」です。
自動車産業が生まれることで、馬車産業、蹄鉄屋、馬の飼育業者は職を失い、衰退します。
しかし、シュンペーターはこれを「悲劇」ではなく、資本主義が発展するための「必要悪」であり「本質」だとしました。
古いものが壊される(破壊)ことなしに、新しいものは定着(創造)しないのです。
この言葉は、現代の日本企業やビジネスパーソンにとって、耳の痛い警句として頻繁に引用されます。
日本企業は、既存製品の品質を上げる「カイゼン(馬車の改造)」が得意です。しかし、この言葉は「カイゼンの先にはイノベーションはない」という残酷な事実を突きつけます。
ガラケー(馬車)をどれだけ高機能にしても、スマートフォン(自動車)には勝てませんでした。既存事業を磨き上げることに夢中になっている間に、全く違うルールの競合に市場を奪われる現象を的確に言い表しています。
現在、行政や企業で進むDXにおいて、「紙の書類をPDFにするだけ」なのは「馬車の改造」です。「デジタル技術を使って業務プロセスやビジネスモデル自体を根底から変える」ことこそが「自動車の発明」であり、DXの本来の目的です。
「馬車をいくら改造しても、自動車にはならない」は、努力の方向性を問う言葉です。
「あなたは今、一生懸命に馬車を磨いているのか? それとも自動車を作ろうとしているのか?」
シュンペーターのこの問いかけは、100年以上経った今も、AIや脱炭素などの激変期において、最も鋭い問いとして機能しています。
(Gemini)
質問:?WASSHAという会社(https://wassha.com/)は、誰に何を売って、どうやって利益を上げているのでしょうか。
Gemini:株式会社WASSHA(ワッシャ)は、「アフリカの未電化地域(オフグリッド)」をターゲットにした、非常にユニークかつ合理的でしたたかなビジネスモデルを展開している日本のベンチャー企業です。彼らのビジネス、「誰に・何を・どうやって」売っているのかについて解説します。
WASSHAは単に「ソーラーパネルを売る会社」ではありません。「電気(電力)というサービス」を小売する会社(EaaS: Energy as a Service)です。彼らの商流は 「B to B to C」 モデルです。
WASSHA(本社):機材とシステムの提供者。
キオスク(村の個人商店):WASSHAの「代理店」パートナー。
エンドユーザー(村人):電気を使いたい未電化地域の住民。
ポイント: キオスク側に高額な初期投資をさせないことで、爆発的に加盟店を増やしています。
ここが売上: これがWASSHAの直接的な収益源です。
スマホの充電サービス
LEDランタンのレンタル
ラジオや家電への給電
キオスクの利益: WASSHAへの支払額と、村人からの受取額の「差額」がオーナーの利益になります。
ただのレンタル事業に見えますが、利益を確保し、損失を防ぐための「テクノロジーによる遠隔制御」が肝です。
WASSHAは未上場企業(プライベートカンパニー)であるため、決算書や正確な利益額は公開されていません。しかし、以下の指標から規模感を推測することは可能です。
市場規模(ステークホルダー):
展開国:タンザニア、ウガンダ、モザンビーク、DRコンゴなど。
提携キオスク数:数千店舗〜1万店舗規模で拡大中。
利用者数:数十万人〜百万人単位。
推測: 1店舗あたりの売上は小さくても(数千円〜数万円/月)、店舗数が万単位になれば、年間売上は数十億円規模に達するポテンシャルがあります。
資金調達(成長フェーズ):
2019年に丸紅から10億円規模の出資。
2020年以降も、東京電力PG、ダイキン工業、JICAなどから大型の資金調達や業務提携を行っています。
見解: 巨額の資金調達をしているということは、現在は「利益を溜め込む」フェーズではなく、調達した資金を使って「エリア拡大・設備投資(先行投資)」を行い、赤字を掘ってでもシェアを取りに行っているフェーズである可能性が高いです。
WASSHAの凄さは、「BOPビジネス(貧困層向けビジネス)は儲からない」という常識を、「デジタル技術(IoT×モバイルマネー)」で覆した点にあります。
誰に売る?: 支払い能力はあるがインフラがない「オフグリッド地域の住民」。
何を売る?: 初期投資不要の「電気の量り売り」。
利益の源泉: IoTによる遠隔管理で「取りっぱぐれ」を防ぎつつ、蓄積したデータで「金融業」へ展開する拡張性。
単なる慈善事業ではなく、J-Startup(経産省支援)にも選ばれるなど、日本発の「SDGsと経済合理性を両立させたモデルケース」として非常に注目されています。
質問:電気を売るっていっても、家で電気を使うためには、電線、電線の家への引き込み、家でのコンセントなどが必要にならない?それらの工事も請け負っているの?
Gemini:WASSHAの主力ビジネスモデルにおいては、各家庭への電線工事やコンセントの設置工事は「一切行っていません」。日本の電力会社(東京電力や関西電力など)のイメージとは全く異なる、「電気のテイクアウト(持ち運び)」という方式をとっているからです。どういうことか、具体的に解説します。
日本の家には電線がつながっていますが、WASSHAが展開するアフリカの未電化地域では、家々が点在しており、それぞれの家に電線を引くのはコストがかかりすぎて不可能です。
そこでWASSHAは、「電気そのもの」ではなく、「電気が詰まった容器(バッテリー)」を貸し出すという方法をとっています。
日本モデル(グリッド): 水道管が家に引かれていて、蛇口をひねれば水が出る。
WASSHAモデル(オフグリッド): 井戸までバケツを持って水を汲みに行き、家に持って帰って使う。
この「バケツ」にあたるのが、WASSHAが開発した「LEDランタン(兼バッテリー)」です。
現地の村人がどのように電気を使っているかを見ると、工事が不要な理由がわかります。
照明として: 夜、天井から吊るしたり机に置いて明かりにします(電球の代わり)。
コンセントとして: ランタンにはUSBポートがついています。ここにスマホのケーブルを挿せば、充電ができます(モバイルバッテリーの代わり)。
つまり、「家自体を電化する」のではなく、「電気の入った道具を家の中に置く」だけなので、壁に穴を開けたり配線工事をしたりする必要が全くないのです。
ただし、最近ではWASSHAも事業を拡大しており、「SHS(ソーラー・ホーム・システム)」という、家の屋根に小さなパネルを置くタイプも扱っています。「じゃあ工事が必要では?」と思われるかもしれませんが、これも日本の電気工事とはレベルが違います。
質問者様が懸念された「電線や工事のコスト」が一切かからない(あるいは極小である)ことこそが、このビジネスが低価格で利益を出せる最大の理由です。
インフラ投資不要: 大規模な発電所も送電線もいらない。
メンテナンス不要: 壊れたら店に持ってきてもらえばいい(巡回スタッフが交換する)。
「電気=インフラ設備」ではなく、「電気=お弁当や灯油のような消費財」として扱っている点が、このビジネスの発明と言えます。
質問:このビジネスは、ビジネスモデルで特許を取ってる?
Gemini:WASSHAは特許を取得しています。
いわゆる「ビジネスモデル特許(ビジネスに関連する発明)」の範疇に入る、ITとハードウェアを組み合わせた仕組み部分で権利化を行っています。単に「電気を売るアイデア」は特許になりませんが、彼らはそれを実現する「技術的な仕組み(システム)」を特許として押さえています。彼らが「どこを」特許で守っているのか、その戦略を解説します。
彼らが特許化しているのは、主に「支払いと機器制御の連動システム」です。J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)などで確認できる彼らの特許(または出願内容)の傾向を見ると、以下のような技術的ポイントを押さえています。
要するに:誰かが「アフリカで電気を売ろう」と真似することは自由ですが、「モバイルマネーで払ったら、自動でカギが開いて電気が使えるようになる、効率的なシステム」を作ろうとすると、WASSHAの特許に引っかかるような網を張っているわけです。
WASSHAのようなスタートアップにとって、ビジネスモデル特許は「攻め」と「守り」の両面で生命線になります。
電気ビジネスは、資金力のある大手商社や現地の通信会社が「うちもやろう」と思えば参入できてしまいます。しかし、特許があれば、大手が全く同じ効率的なシステム(自動化システム)を使うことを阻止できます。「手動でやるならどうぞ(でもコスト合わないですよね?)」と言える状態を作ることで、参入障壁を築いています。
前述のように、WASSHAは丸紅や東大系VCなどから巨額の出資を受けています。投資家は、「この会社にお金を出す価値があるか?」を見るとき、「このビジネスモデルは他社にすぐ真似されないか(独占できるか)?」を厳しくチェックします。「特許でガチガチに守られているので、他社は簡単には真似できません」という事実は、企業価値(バリュエーション)を吊り上げるための最強のカードになります。
WASSHAは、もともと東京大学の研究室(阿部力也先生のデジタルグリッド構想など)周辺から生まれてきたバックグラウンドを持っています。大学発ベンチャーは、「技術を権利化(知財化)する」という意識が非常に高い傾向にあります。単なる「人助けのアイデア」で終わらせず、それを「再現性のある技術(アルゴリズムや装置)」に落とし込み、しっかりと「特許庁に登録する」。この「アカデミア仕込みの知財戦略」と「泥臭い現地のオペレーション」の両輪が回っていることが、WASSHAが単なるNPOやボランティア団体と一線を画し、利益を上げる株式会社として成立している大きな理由です。
質問:WASSHAの鍵となるテクノロジーは何?要するに「充電池」?何が従来のものと違うの?
Gemini: WASSHAの鍵となるテクノロジーは「充電池(バッテリー)」そのものではありません。中身の電池は、極端に言えばどこにでもある普通のものです。彼らのコア技術(競争力の源泉)は、そのバッテリーに取り付けられた「IoTコントローラー(電子基板)」と、それを運用する「ソフトウェア(アプリ)」にあります。要するに、ただの「電池」を、「お金を払わないと電気が流れない自動販売機」に変える装置が、彼らの発明であり、従来のものとの決定的な違いです。具体的に何が違うのか、3つのポイントで解説します。
従来の充電池やソーラーシステムは「売り切り」です。一度渡してしまえば、相手がお金を払わなくても電気は使い放題ですし、回収するには現地まで取り立てに行く必要がありました。
従来の電池: ただの「電気の箱」。渡したら最後、制御不能。
WASSHAの電池: 「デジタルの鍵」がかかった箱。
WASSHAの機材には、特殊なチップ(IoTコントローラー)が埋め込まれています。キオスクのオーナーがモバイルマネーで送金すると、その金額分だけ「カギが開く(通電する)」仕組みになっています。期間が過ぎたり、支払いが滞ると、機材は手元にあってもただの箱(鉄屑)になり、電気が一切出なくなります。これにより、泥臭い集金業務をゼロにし、未回収リスクをなくしています。
ここがWASSHAの技術的に最も渋い(すごい)ところです。「IoT(モノのインターネット)」と言うと、通常は常にインターネットに繋がっている必要があります。しかし、アフリカの奥地では電波が不安定で、常時接続など不可能です。
従来のIoT: ネットが切れると制御不能になる。
WASSHAの技術: Bluetooth等を活用し、オフラインでも鍵が開く。
キオスクオーナーのスマホ(ここだけ一瞬電波が入ればOK)に、解除コード(トークン)が届く。
スマホとWASSHAの機材をBluetoothなどで近づける。
機材自体はネットに繋がっていなくても、「正しいコードだ」と認識してロックが解除される。
この「劣悪な通信環境でも確実に動作するプロトコル(手順)」こそが、大手電機メーカーが簡単に参入できない技術的な参入障壁になっています。
従来の電池は、誰がいつ使ったか分かりません。WASSHAのコントローラーは、「稼働データ(いつ、いくら分発電し、消費されたか)」を記録し、通信できるタイミングでサーバーに送ります。
従来の電池: 壊れるまで黙って働く。
WASSHAの電池: 「この店のオーナーは、毎月ちゃんと稼いで、遅れずに払っています」と喋る。
このデータが蓄積されることで、「この人は信用できるから、次は冷蔵庫をローンで貸してあげよう」という金融ビジネスが可能になります。ただの電池が、「動く信用調査書」になっている点が革新的です。
分かりやすく例えるなら、以下のようになります。
電池の性能(容量や寿命)で勝負しているのではなく、「電気を確実に換金する仕組み(コントローラー)」で勝負している点が、彼らの強みです。
(Gemini)
国立大学法人等に対する運営費交付金は、2004年の国立大学の法人化に伴って導入された制度で、導入後から年1%の割合で削減されて、大学の研究者の研究環境を大きく悪化させた元凶とされています。そもそも法人化と同時に始まった制度なのだとしたら、それ以前はどのような制度があったのでしょうか。
Gemini:「運営費交付金」という名称・制度そのものが始まったのは、2004年(平成16年)4月の国立大学法人化と同時です。ですから、「(以前からあった)運営費交付金という制度が、法人化を機に減らされた」という表現だと、論理的に矛盾して聞こえます。では、なぜ現場の研究者は「法人化で(運営費交付金が)減らされた」と嘆くのでしょうか。そのカラクリは、制度の「切り替わり方」と、法人化後に組み込まれた「自動削減ルール」にあります。
法人化前(国の内部組織だった時代)は、「運営費交付金」ではなく、「国立学校特別会計」という枠組みの予算でした。
以前(~2003年度):
「電気代」「旅費」「人件費」など、細かく費目が決まった予算が国から配分されていました(紐付き予算)。
「足りない分は国が補填する」という性格が強く、経営努力は求められない代わりに、安定していました。
2004年の法人化で、これらが「運営費交付金」という一本化されたお金(使途自由なブロック・グラント)に変わりました。
つまり、研究者が怒っている「削減」の正体は、「法人化と同時に導入された『効率化係数』というルールによって、前年比マイナスが10年以上続き、結果としてベースの予算が激減したこと」を指しています。
「毎年1%減」と聞くと大したことないように聞こえますが、これがボディブローのように効いています。
運営費交付金の制度開始時期は、2004年(法人化と同時)。法人化以前の『国立学校特別会計』の予算規模と比較して、法人化後の『運営費交付金』は、効率化係数というルールにより年々減らされ続けてきた。グラフで見ると一目瞭然ですが、2004年のスタート時をピークに、階段を転がり落ちるように減額されている(近年は横ばい・微増ですが、物価高などで実質価値は低下)のがわかります。これが「法人化で減らされた」という言葉の正体です。
質問:国立学校特別会計と、運営費交付金は、同じものと考えていいの?
Gemini:国立学校特別会計(以下、特会)と運営費交付金(以下、交付金)を「全く同じもの」として単純に一本の線でつなぐと、数字の解釈を大きく間違える(あるいは実態が見えなくなる)という罠があります。結論から言うと、「趣旨(何のための金か)」は同じですが、「金額の計算式(中身の構成)」が全く異なります。ここを混同すると「法人化で予算が半分になった!」といった誤解や、逆に「いやいや、国は十分出している」という強弁を生んでしまいます。知っておくべき「接続」の真実を解説します。
趣旨は同じですが、お金の「計算ルール」が逆転しました。
ここが最大のポイントです。
法人化前(~2003年):【総額予算主義】
大学が稼いだお金(授業料や病院収入)は、一度すべて国庫(国)に入れます。
その上で、国が「必要な経費全額」を予算として配分します。
数式: 国の税金 + 授業料・病院収入 = 国立学校特別会計予算
法人化後(2004年~):【純額予算主義】
大学が稼いだお金(授業料や病院収入)は、大学の懐に入ります(自己収入)。
国は、「必要な総額」から「大学が自分で稼げる額」を差し引いた差額(赤字分)のみを渡します。
数式: 必要な総額 - 授業料・病院収入 = 運営費交付金
結論:
したがって、金額ベースで単純比較すると、法人化前の方が「授業料や病院収入が含まれている分、見た目の金額は圧倒的に巨額」に見えます。
これらを連続的に見るためには、特別会計時代の予算の中から「国からの繰入金(=税金の投入額)」だけを抜き出して比較する必要があります。
では、条件を揃えて「国が大学の基盤経費として出した税金(一般会計からの投入額)」で推移をつなぐとどうなるでしょうか。
実は、法人化の直前まで、国からの投入額(一般会計繰入金)は微増傾向にありました。
ピーク時(2000年代初頭)で、およそ1兆5,000億円規模(※恩給費等を含むベース)でした。
ここで制度が切り替わり、約1兆2,400億円(運営費交付金スタート時の額)となりました。
※ここには特殊な会計操作(付属学校や研究所の再編など)があるため単純な減額とは言えませんが、制度変更の「継ぎ目」です。
ここからが研究者の嘆きの根源です。
「効率化係数(毎年-1%)」のルールが適用され、2004年の1兆2,415億円から、2015年頃まで見事な右肩下がりを描きます。
2010年代半ば以降: 1兆1,000億円を切る水準(約1兆700億円前後)で「横ばい・底這い」状態が続いています。
「1兆2400億が1兆1000億になった程度(約10%減)なら、そこまで大騒ぎすることか?」と思われるかもしれません。しかし、現場の「体感温度」は違います。
金額比較の注意点: 法人化前の「特別会計総額」と今の「交付金」を比べると、前者が巨額すぎて話が合いません。「国からの繰入金(税金分)」で比べる必要があります。
推移の実態: 税金投入分で見ても、法人化(2004年)を境に「微増」から「確実な減少・停滞」へとトレンドが完全に変わりました。
同じものか?: 「国の大学への基礎的支援」という意味では同じですが、国にとっては「出すだけでよかった金」から「効率化(削減)を迫れる金」へと、運用の性質が変わったと言えます。
(Gemini)
質問:行政の文脈において、「施策」の読み方は?
Gemini:
行政の文脈においては、慣例的に「せさく」と読みます。
一般の辞書では「しさく」が正しい読み方とされていますが、役所や自治体の現場ではなぜ「せさく」と読むのか、その理由と実務上のポイントを解説します。
行政用語として「せさく」と読む最大の理由は、「聞き間違い(音の混同)を防ぐため」です。
試作(しさく): プロトタイプを作ること
思索(しさく): 物事を深く考えること
施策(しさく): 政策を実行する計画・策
会議や口頭報告の際、「〇〇の『しさく』について報告します」と言うと、それが「試しに作ってみた(試作)」話なのか、「政策(施策)」の話なのかが文脈に依存して紛らわしくなります。これを避けるために、行政官や政治家は意図的に「せさく」と発音し、区別しています。
行政の世界には、同様の理由で一般とは異なる読み方をする言葉がいくつかあります。
重複: 一般=「ちょうふく」 / 行政=「じゅうふく」
(「ちょうふく」が「往復」などと聞き間違えられないようにするためと言われますが、現在では一般でも「じゅうふく」が浸透しています)
遺言: 一般=「ゆいごん」 / 法務・行政=「いごん」
競売: 一般=「きょうばい」 / 法務・行政=「けいばい」
これらを知っておくと、行政文書や法律の専門家と話す際に役立ちます。
質問:「施行」の読み方は?
Gemini:行政や法律の専門的な文脈においては、「せぎょう」と読みます。
一般的には「しこう」と読まれますが、「施策(せさく)」と同様に、これも聞き間違いを防ぐための「有職読み(慣用読み)」です。
同音異義語が非常に多く、特に実務上致命的な聞き違いを避けるためです。
施行(しこう): 法令の効力を発生させること。
施工(しこう): 工事を行うこと。
試行(しこう): ためしに行うこと(トライアル)。
指向(しこう): ある方向を目指すこと。
行政現場での混乱例:
「新しい制度のシコウ期間についてですが…」と言った場合、
「試行(お試し期間)」の話なのか?
施行 → 「せぎょう」
施工 → 「せこう」
試行 → 「しこう」
まとめ:行政・法律のプロとしては、法令の効力発生については「せぎょう」、工事については「せこう」と読み分けるのがマナーとなっています。
実務上最も重要で、かつ最もトラブルになりやすい「先使用権(せんしようけん・79条)」について、ゼロから解説します。これは一言で言うと、「早い者勝ちの特許ルールにおける、唯一の『例外』」であり、「老舗(しにせ)を守るための権利」です。
~「頑固オヤジのラーメン屋」VS「大手チェーン」~
あなた(Aさん): 昔ながらのラーメン屋の店主。秘伝のスープを開発し、細々と営業中。特許なんて興味なし。
B社(大手): 後から同じようなスープを開発し、すぐに特許出願した企業。
あなたは、もう5年も前から「秘伝スープ」でラーメンを売っていました。
ある日、大手B社があなたの店に来てこう言います。
「このスープの製法、先月うちが特許を取りました。あなたがこれを使うのは特許権侵害です。今すぐ店を閉めるか、ライセンス料を払ってください!」
あなたは怒ります。「ふざけるな! 俺はあんたたちが特許を出すずっと前からこの味でやってるんだ! パクったわけじゃない!」
しかし、B社は冷たく言います。
「特許法は『先願主義(早い者勝ち)』です。先に発明したかどうかは関係ない。先に『出願(手続き)』をした我々が勝者なんです」
B社の言うことは原則としては正しいのですが、これではあまりにあなたが可哀想ですよね。
そこで登場するのが「先使用権(79条)」です。
法律の結論:
「Aさんは、B社が出願する『前』から、そのスープを作っていた実績がある。
だから、特許権に関係なく、タダ(無償)でそのまま店を続けてよし!」
これが先使用権です。
中用権や後用権は「お金(対価)」が必要でしたが、先使用権はタダ(無償)です。なぜなら、「あなた(Aさん)には1ミリも落ち度がないから」です。
あなたは誰のアイデアも盗んでいません(独自に発明した)。
あなたはB社より先に事業を始めていました。
ただ「特許庁に手続きしなかった」だけです(特許を取るかどうかは自由です)。
「先にやっていた人」の既得権(今まで通りの生活)を守るのは当然のことなので、B社にお金を払う義理はないのです。
「前からやってました」と口で言うだけではダメです。以下の3つを証明する必要があります。
B社が特許庁に書類を出した「その日時(分単位)」の時点で、すでにあなたが事業を始めている必要があります。「B社が出した翌日に始めました」ではダメです。0.1秒でも負けてはいけません。
ここでいう善意は、「B社の発明を知らずに、独自に発明した(または正当な人から教わった)」という意味です。B社の研究所から盗み出したネタで先に工場を作っても、先使用権は認められません。
ここが重要です。まだラーメンを1杯も売っていなくてもOKです。
「店舗を契約した」「寸胴鍋を発注した」「メニュー表を印刷した」といった、「即時実施の意図を持って、客観的な準備が進んでいる」段階であれば、先使用権は発生します。
~「そのまま」ならいいけど、「拡大」はダメ~
先使用権は「今まで通り続けていいよ」という権利であって、「特許権者より強くなる権利」ではありません。
そのため、「事業の目的の範囲内」という制限がつきます。
〇 OKな例: ラーメン屋をそのまま続ける。売上が伸びて生産量が増える。
× ダメな例: 「お、このスープ特許取れるくらい凄いのか! よし、全国展開して工場を建てて、カップ麺としてコンビニで売りまくろう!」
このように、特許出願の時点で計画していなかったようなビジネスの大転換(種類の変更など)を行うと、そのはみ出した部分は特許権侵害になります。
どんな権利?: 特許出願より前からやっていた人が、そのまま続けられる権利。
お金は?: 不要(タダ)。
条件は?: 「独自に発明したこと」と「出願時点で事業(または準備)をしていたこと」の証明。
注意点: 証拠(日付入りの日誌、図面、領収書など)がないと裁判で負ける。「知財管理(証拠確保)」が超重要。
それでは、「4つの権利」を、一気に横並びにして比較します。
まず、「いつ、ビジネスを始めたか?」で大きく2つのグループに分かれます。
グループA:出願の「前」からやっていた
$\rightarrow$ 先使用権 (79条)
(特許のレースが始まる前から走っていた人)
グループB:特許が「一度死んでから」始めた
$\rightarrow$ 中用権 (80条)、回復後 (112条の3)、後用権 (176条)
(レースが中断している隙にコースに入ってきた人)
「お金(対価)がいるか?」と「特許権者に落ち度はあるか?」に注目して見てください。
| 権利の名前 | 条文 | 発生タイミング | 対価 (お金) | 判定のロジック (心の声) |
| 先使用権 | 79条 | 出願の前 | 不要 (タダ) | 「私が元祖です。後から来たお前に金を払う義理はない!」 |
| 回復後の実施権 | 112条の3 | 特許料の未納による消滅期間 | 不要 (タダ) | 「期限を守らなかった権利者が悪い。タダで使われても自業自得。」 |
| 中用権 | 80条 | 無効審判で権利者が交代する前 | 必要 (有料) | 「元の権利者もかわいそうだけど、新しい権利者への敬意(金)は払おう。」 |
| 後用権 | 176条 | 再審で特許が復活する前 | 必要 (有料) | 「権利者は騙された被害者だ。ビジネスは認めるから、家賃は払ってあげて。」 |
ここが一番の悩みどころですが、実はシンプルなルールがあります。
「権利者側に重大なミスがある」 or 「使う側が圧倒的に正しい」
79条: 使う側(先使用者)は、独自に発明した正義の人です。文句なしでタダ。
112条の3: 権利者が「期限管理ミス」という大失態を犯しています。ペナルティとしてタダ。
「権利者側には罪がない(または薄い)」
80条・176条: どちらも、審判や裁判という「公的な判断」が二転三転した結果、巻き込まれたケースです。
権利者は、好きで特許を失ったわけではありません。
だから、「せめてお金くらいは払ってバランスを取ろう(衡平の原則)」となります。
以下の状況で、Aさんはどの権利を主張すべきでしょうか?また、お金は必要でしょうか?
ケース1:
Aさんは、ライバルB社が特許出願する1年前から、工場で製品を作っていた。B社から警告状が届いた。
正解: 先使用権 (79条)
お金: 不要
解説: 「出願前から」なのでこれ一択です。
ケース2:
B社の特許が「特許料未納」で消えているのを見て、Aさんは工場を作った。その後、B社が追納して復活した。
正解: 回復後の通常実施権 (112条の3)
お金: 不要
解説: 権利者のミス(未納)なので、AさんはタダでOKです。
ケース3:
B社の特許が無効審決で確定した。Aさんはそれを見て工場を作った。しかし、実は証拠が偽造で、再審によりB社の特許が復活した。
正解: 後用権 (176条)
お金: 必要
解説: Bさんは被害者なので、Aさんは対価を払う必要があります。
最後に、これだけは気をつけてください。
「いつ始めたか」を確認する癖をつける!
トラブルになったら、まず**「出願日」**を見ます。
それより前なら「79条(最強・タダ)」。
それより後なら、「特許が死んでいた空白期間はあるか?」を探します。
「中用権」という言葉を乱用しない!
80条以外(特に112条の3)を中用権と呼ぶのは、プロの前では禁物です。
これで、中用権・後用権・先使用権の3大セット(+112条の3)の解説は完結です!法律の「公平さを保とうとする意図」が見えてくると、丸暗記しなくても答えが出るようになりますよ。