学位研究のために臨床研究論文を纏めないといけない、学会発表はしたことがあるが論文化までしたことがない、教授に論文化を勧められた/命じられたけれども、だからといって講座内で臨床研究の論文をしてくれる人が見当たらなくて途方にくれているという医師の方々も多いことと思います。
そのような人を読者対象とした「臨床研究論文の書き方の教科書」が多数刊行されています。医学部の図書館にいくと、数十冊は並んでいて、かえってどれを読んだらいいのかが分からなくなりそうなくらいです。それだけ需要が大きいということなのでしょう。
統計学や臨床研究のデザインに関する一般論を説いた書籍も多数ありますが、いざある程度診療データなどを手にしていて論文を書こうとしている人にとっては、そのような一般的な教科書はあまり役に立たないようです。役立たないというと言い過ぎですが、一般論を個別の事例に落とし込むのはかなり研究能力が高くなっていないと不可能なので、研究の初心者には実際的でないというわけです。
では、実際的な、実践的な臨床研究の教科書としてはどんなものがあるのでしょうか。
森本 剛先生の本
査読者が教える 医学論文のための研究デザインと統計解析
2017/3/21 中山書店 研究のデザインと統計処理とは切っても切り離せない関係なので、臨床研究の教科書として統計解析の実際が前面に出された本があるのは納得です。データの型の話から入っていて、基本中の基本をしっかり押さえてから先に進みます。
査読者が教える 採用される医学論文の書き方
2013/4/19 中山書店 こちらは「査読者が教える」シリーズですね。
査読者が教える臨床研究のロジックー臨床センスを生かした統計解析と論文作成
こちらは臨床研究論文作成のワークショップの熱気をそのまま書籍化したものだそうです。
2023/4/20 中山書店
康永 秀生先生の本
康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科教授)は、臨床研究論文の実践的な指導をされているそうで、その大学院教育における講義が書籍化されているようです。
必ずアクセプトされる医学英語論文 完全攻略50の鉄則
改訂版 2021/3/23 金原出版
臨床研究の論文を書く順番は、イントロ→メソッド→リザルツ→ディスカッション→アブストラクト→タイトル なのだそうです。これは目からうろこでした。基礎研究の場合には、まず図を仕上げて、図の並び順を考えながら良いストーリーを練って、リザルツから書き始めるのが良いと聞いたことがあります。臨床の場合は、考え方が異なるようです。この本では、書くために論文を精読することの大事さも強調されていて、参考になります。何しろ熱量の大きい本です。真っ赤な表紙が目立ちますが、読むだけで鼓舞されます。もちろん実践的です。Foolproof-Englishで書きましょうということが強調されています。
できる!臨床研究 最短攻略50の鉄則
康永 秀生先生の「50の鉄則」シリーズです。2017/9/28 金原出版。こちらは研究デザインの概説も踏まえた実践的な教科書になっています。こちらは表紙が青。自分の机に50の鉄則を2冊並べておけば士気が高まることでしょう。