ジェイミー・A. デイヴィス『人体はこうしてつくられる』 Life Unfoldingの読書メモ

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ジェイミー・A. デイヴィスの『人体はこうしてつくられる』 (原題 Life Unfolding)は実に素晴らしい本で、発生学の面白さを見事に伝えています。生物学や医学の知識が全くない人には、ここまで噛み砕いた説明でもまだ大変かもしれません。大学で生物学や発生学を学んでいる大学生くらいが読むと面白さがよく感じられるのではないかと思います。

著者は、大変ややこしい学問を実にわかりやすく一般の人に伝える天才ではないかと思います。

表紙の写真はちょっと怖くて、電車でこの本を開くのが憚れます。解剖学の模型みたいですが、発生学の雰囲気とちょっと合っていないです。

倫理声明 わたしが参照した公開済みの実験内容も今日の基準にしたがって行われたものと考えている。

「今日の」は、「当時の」だと思います。原書をみたらof the dayでした。of the dayには当時のという意味と今日のという意味の両方がありますが、ここでは当時のと解さないと、文が意味をなしません。

図13 新しくできた内胚葉の中央部がせり上がって脊索板となり…

脊索の形成過程を解説したこの部分を読んで、あれ?と思いました。カールソンの最新の発生学の教科書を見ると、中胚葉が脊索突起(notochordal process)をつくり、それが内胚葉と融合してもう一度分離するという説明がありますので、その後半部分に相当することしか説明していないように思いました。下の説明はカールソンの教科書と同じ過程が説明されています。

中胚葉は原始結節から頭側に伸びて脊索突起 notochordal process を形成し、〜。(中略)脊索突起は一時的に内胚葉と癒合し脊索板notochordal plate を形成し、沿軸中胚葉は癒合して体節を形成し、脊索板は内胚葉から分離し完全な脊索notochord を形成する。http://www.nicheneuroangio.com/pdf/2021nnac/202101toma.pdf

最新の知見かどうかの差でしょうか。

左右対称の破れ 動物細胞には線毛と呼ばれる微細な、剛毛状だが柔軟な突起をもつものが数多くある。

高校や大学の生物学ではciliaは繊毛と訳されますが、医学では線毛という漢字を当てるようです。これは知りませんでした。生物学で線毛 piliは、細菌の「毛」に使われるようです。生物学と医学では訳語が違うということですね。

線毛(せんもう)は、細菌の細胞外構造体で、タンパク質が重合して繊維状となるもので、鞭毛以外を指す。英語では pilus(複数形 pili)、または fimbria(複数形 fimbriae)という。通常、pilus と fimbria は区別しないで使用される。線毛は1950年代に走査型電子顕微鏡観察によって発見されたが、2つの研究グループがこれらの名称を別々に用いたことが、現代まで続いている。https://ja.wikipedia.org/wiki/線毛

生物学と医学とで用語が違う別の例として、mesenchyme(生物学だと間充織、医学だと間葉)というものもあります。

微小繊維 細胞膜のほうに伸びる繊維は不活性状態のキャッピングタンパク質と出合うだけで、そのまま伸び続けることができるが、

この文は、自分が意味を取り違えたみたいで、「出会うことにより」の意味かと思ったので訳が違う?と思ってしまいました。「出会うだけで、それ以上何もされないので」というつもりの訳みたいですが、「出合ったとしても」と訳したほうが紛れがない。

脈管形成 シャーレを使った単純な実験だが、

「シャーレを使った」というより「シャーレの中で行われた」といったほうが意味が通りやすいと思います。~を使った実験と書くと、~は実験手法をふつうは意味しますが、シャーレは実験に必要な器具に過ぎないので。

 

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