肝臓の解剖学的な構造と働き、特徴

肝臓は、消化器官のひとつです。消化器官は中が中空で中空性器官と呼ばれる食道、胃、小腸、大腸のグループに対して、中身がつまっている実質性器官と呼ばれる肝臓、胆管、膵臓のグループの2つに大別されます。

  1. 肝臓,膵臓,腸に共通した幹細胞系の解明 古山賢一郎・川口義弥 (京都大学大学院医学研究科 肝胆膵・移植外科学) ライフサイエンス新着論文レビュー https://first.lifesciencedb.jp/archives/1981 肝臓および膵臓外分泌は,枝分かれした樹状の管組織(胆管および膵管)に実際の臓器の機能を担う細胞(肝細胞および膵外分泌細胞)が連結しているという共通した解剖学的な構造をもつ.

消化器官には、消化酵素などを体の外側(=消化管の内腔)へ分泌する外分泌の働きと、ホルモンなどを体の内側(=血液)へ分泌する内分泌の働きとを合わせもつものがあります。例えば、膵臓は消化酵素アミラーゼを外分泌する一方で、インスリンがグルカゴンというホルモンを内分泌します。また、胃は胃酸(壁(へき)細胞)やペプシノゲン(主細胞)を外分泌しますが、ガストリン(G細胞)やグレリン(X/A-like細胞)を内分泌します。

  1. グレリン 薬学用語解説 日本薬学会 グレリンは、胃のX/A-like細胞と呼ばれる分泌細胞で合成される
  2. 胃から発見された摂食亢進ペプチド:グレリン  肥満の科学 1999 年国立循環器病センターの児島,寒川 らは,ラットとヒトの胃からこの受容体を活 性化する内在性ペプチドとして,グレリンを 発見した2) .2)Kojima M, Hosoda H, Date Y, et al : Ghrelin is a novel growth hormone releasing acylated peptide from stomach. Nature 1999 ; 402 : 656―660.
  3. 胃酸分泌,胃内分泌そして胃運動 教科書から一歩進んだ身近な製品の化学
  4. 第110回 看護師国家試験 午前12問 胃から分泌される消化管ホルモンはどれか。 1. ガストリン 2. セクレチン 3. 胃抑制ペプチド 4. コレシストキニン
    1. 看護ROO! ガストリンは胃幽門部にある幽門腺のG細胞から分泌

一つの臓器が外分泌と内分泌の両方を行う場合、多くはそれぞれに特化した細胞が分泌しているわけですが、驚いたことに肝臓の細胞は特別で、同一の細胞が外分泌と内分泌の両方を行っているそうです。

肝臓は、横隔膜直下、右上腹部に存在する人体最大の腺臓器で、重量はヒト成人で1200-1400g、体重の約1/50です。その機能上の特徴は、胆汁を排泄する外分泌機能と、グルコースやアルブミンなどの血清蛋白質を産生し血中に放出する広義の内分泌機能を併せ持つことです。しかも驚くべきことに1個の肝実質細胞 hepatocyte が、内分泌と外分泌の両方を同時に行っています。ほかにも肝臓は、消化管で吸収された栄養の代謝貯蔵、解毒、異物や微生物の貪食、血液循環量の調節など多彩な機能を営んでいます。

収蔵標本解説 ▶第31号(2002年 12月1日発行) 基礎肝臓雑学 標本館運営委員  澤田 典均 札幌医科大学医学部 病理学第二講座教授 https://www.sapmed.ac.jp/medm/7-31-1.html

内分泌といっても上の解説では「講義の内分泌機能」という言い方をしており、血清蛋白質アルブミンやエネルギー源であるグルコースが分泌されるとのことでした。内分泌と聞くとホルモンの分泌かと思いますが、実際のところ肝臓はホルモンをつくっているのでしょうか?最近の論文報告によれば、肝臓もへパトカインと総称されるホルモンを合成し分泌するそうです。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Hepatokine Hepatokines:proteins produced by liver cells (hepatocytes) that are secreted into the circulation and function as hormones across the organism. Research is mostly focused on hepatokines that play a role in the regulation of metabolic diseases such as diabetes and fatty liver and include: Adropin, ANGPTL4, Fetuin-A, Fetuin-B, FGF-21, Hepassocin, LECT2, RBP4,Selenoprotein P, Sex hormone-binding globulin.
  2. ヘパトカイン https://www.jst.go.jp/pr/announce/20170228-2/index.html 肝臓から分泌されるホルモンで、血液を介して全身でさまざまな作用を発揮するものを総称してヘパトカインと呼びます。研究グループは2010年に、2型糖尿病において増加し、高血糖の原因となる肝臓由来の液性因子としてセレノプロテインPを同定し、このような肝臓由来ホルモンをヘパトカインと総称することを提唱しました。
  3. Ingerslev, B.; Hansen, J.S.; Hoffmann, C.; Clemmesen, J.O.; Secher, N.H.; Scheler, M.; Hrabe de Angelis, M.; Haring, H.U.; Pedersen, B.K.; Weigert, C.; et al. Angiopoietin-like protein 4 is an exercise-induced hepatokine in humans, regulated by glucagon and cAMP. Mol. Metab. 20176, 1286–1295.
  4. Misu, H.; Takayama, H.; Saito, Y.; Mita, Y.; Kikuchi, A.; Ishii, K.A.; Chikamoto, K.; Kanamori, T.; Tajima, N.; Lan, F.; et al. Deficiency of the hepatokine selenoprotein P increases responsiveness to exercise in mice through upregulation of reactive oxygen species and AMP-activated protein kinase in muscle. Nat. Med. 201723, 508–516.
  5. Hepatokines: linking nonalcoholic fatty liver disease and insulin resistance Nature Reviews Endocrinology volume 13, pages509–520 (2017) https://www.nature.com/articles/nrendo.2017.56 The liver produces proteins, some of which it secretes into the circulation. Quantitative analysis revealed that the mouse liver proteome and plasma proteome contain 7,099 and 4,727 proteins, respectively, and that 1,818 proteins are present in both proteomes. This overlap indicates that up to ∼25% of liver proteins are potentially secreted into the circulation. Key proteins secreted from the liver include: the major plasma proteins albumin, C-reactive protein and fibronectin; proteins that regulate haemostasis and fibrinolysis; carriers such as apolipoproteins; and proteins that regulate metabolism.

プロテオーム解析から肝臓は数百~1000以上ものタンパク質を内分泌している可能性がいわれているようです。こうなると内分泌の概念が変わってしまいそうですね。

消化器系の発生

たった 1 本の管から,咽頭 から肛門管上部に至る消化器官と肝臓,膵臓が形成さ れる.‥ 連続 した管でありながら,各器官の位置や境界はなぜ厳密 に決まっているのであろうか.https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/011030155.pdf