PCT4条(1)(ii) 広域特許

EPCとか広域特許、ユーラシア…って弁理士試験では当然知ってる前提で出てくるけど、馴染みなかったらPCTの「指定」関連規定が一気にわからんようになるよな。整理して解説するで。


1. 広域特許(regional patent)とは?

複数の国をまたいでひとつの特許制度として運営される特許のことや。

普通、特許は「属地主義」で国ごとに取得する必要がある(日本の特許は日本だけ、米国の特許は米国だけで効力を持つ)。せやけど、近隣諸国がまとまって「うちらまとめて一個の特許制度作ろうや」と協定を結んで運営してるのが広域特許制度やねん。

メリットは明確で:

  • 一個の出願で複数国分カバーできる
  • 一個の特許庁が審査する(各国別審査が不要)
  • 言語・手数料の節約

2. 主要な広域特許制度(4つ)

PCTで関係する広域特許は主に4つあるで。

① EPC = 欧州特許条約(European Patent Convention)

最も重要・最も有名な広域特許制度。これが本命や。

  • 運営機関:EPO(欧州特許庁/European Patent Office、本部ミュンヘン)
  • 加盟国:39か国(2024年時点)― EU加盟国+スイス・英国・トルコ・ノルウェーなど
  • 仕組み
    • EPOに1個の出願(欧州特許出願)
    • EPOで1回の審査
    • 特許査定が下りたら、出願人が**権利化したい加盟国を選んで「validation(有効化)」**する
    • 有効化された各国で、その国の国内特許と同等の効力を持つ特許になる

つまり、EPOで「審査を一括」して、最後に「権利は各国別」に分かれる仕組みやな。

※近年は**Unitary Patent(単一効特許、UP)**という、EPOの審査後に「1個の特許のまま」EU内17か国で効力を持つ新制度が2023年6月に始まってる。これは別概念やけど、関連用語として覚えとこか。

② ユーラシア特許条約(EAPC = Eurasian Patent Convention)

旧ソ連諸国の広域特許制度やな。

  • 運営機関:EAPO(ユーラシア特許庁、本部モスクワ)
  • 加盟国:ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、アルメニア、アゼルバイジャン(8か国)
  • 仕組み:EPCと違って、最初から最後まで1個の特許として扱われる。validation不要で、加盟国全部で効力を持つ。

EPCより「広域感」が強い制度や。

③ OAPI(アフリカ知的財産機関/Organisation Africaine de la Propriété Intellectuelle)

フランス語圏アフリカ16か国の広域特許制度。

  • カメルーン、セネガル、コートジボワール、ブルキナファソなど旧フランス植民地中心
  • 1個の出願で全加盟国に効力を持つ特許が取れる(ユーラシアと同じく最初から1個の特許型)

④ ARIPO(アフリカ広域知的財産機関/African Regional Intellectual Property Organization)

英語圏アフリカ19か国の広域特許制度。

  • ケニア、ガーナ、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナなど旧英国植民地中心
  • ARIPOで審査後、出願人が権利化したい国を選ぶ(EPCに似た方式)

3. PCTとの関係(試験で問われるポイント)

PCT4条(1)(ii)で「広域特許」と出てくるのは、この4つの広域特許制度を念頭に置いとるわけや。

PCT規則4.9(a)(iii)とPCT45条を整理するとこうなる:

内容 規定
PCT締約国が広域特許条約の締約国でもある場合、PCT国際出願で広域特許を求める旨を願書に表示できる PCT4条(1)(ii)、規則4.9(a)(iii)
広域特許の対象となる国(広域特許条約の締約国)でPCT締約国でない国があっても、PCT国際出願で広域特許指定が可能 PCT45条(2)
みなし全指定の現行運用では、広域特許も含めて全部指定したことになる 規則4.9(a)

具体的に言うと、たとえば日本の出願人がPCT国際出願をすると:

  • 米国(直接指定)
  • 中国(直接指定)
  • EPC(広域特許指定 ⇒ 後でEPOで審査 ⇒ 各国validation)
  • EAPC(広域特許指定 ⇒ EAPOで審査)
  • OAPI(広域特許指定 ⇒ OAPIで審査)
  • ARIPO(広域特許指定 ⇒ ARIPOで審査)

…と、直接指定の国広域特許指定を組み合わせて、世界中で権利取得を狙えるっちゅう仕組みになっとる。


4. なんで4条(1)(ii)に「みなし規定」が3つあるんか(再整理)

前回の解説の補足として、4条(1)(ii)後段の3つの「みなし規定」は、それぞれこういう実務状況に対応してる:

① 「広域特許条約の締約国のうち一部に限定できない場合の規定」 → 例:EPC旧運用では「EPC加盟国全部か、ゼロか」しか選べんかった(「ドイツとフランスだけ」みたいな部分指定不可)。せやから1か国の指定+広域希望表示=全EPC国の指定とみなす、と擬制した。

② 「指定国の国内法令で『その国の指定=広域特許出願』と定められてる場合の規定」 → 例:もしフランス国内法令が「PCTでフランス指定したら自動でEP出願扱い」と定めてたら、わざわざ「広域希望」と書かんでもEP出願として扱う、と擬制。

これは出願人の手間を減らすための手続簡素化のみなし規定やな。


試験対策のまとめ

弁理士試験で押さえるべき広域特許のポイント:

論点 押さえどころ
広域特許の意味 複数国にまたがる単一の特許制度。EPC・EAPC・OAPI・ARIPOの4つ
EPC 欧州特許条約、EPOが審査、審査後に各国validation必要
EAPC(ユーラシア) 旧ソ連諸国、EAPOが審査、validation不要で全加盟国で効力
PCT4条(1)(ii)の趣旨 願書に指定(直接指定+広域指定)を記載させる規定
PCT45条 PCT国際出願で広域特許を求める場合の規定
みなし全指定(規則4.9(a)) 願書提出=全締約国+全広域特許の指定とみなす

ハーグ協定(意匠)にも似た「広域意匠」みたいな構造があるから、「国際出願系制度の共通フレームワーク」として頭の中で整理しとくと、PCT・ハーグ・マドプロ全部つながって理解できるで。

(Claude Opus 4.7)