投稿者「PhD」のアーカイブ

エクソソーム実験の方法、試薬など

エクソソームの精製

  1. 培養上清からのエクソソーム回収とタンパク質およびmiRNA抽出方法の基礎(3) ベックマン・コールター
  2. エクソソームモノクローナル抗体 Anti CD9, CD63, CD81 コスモ・バイオ 血清、培養上清から免疫沈降法を用いて、エクソソームを単離
  3. ウェスタンブロットに使用できるエクソソームマーカー抗体 Exosome Antibody(System Biosciences社) フナコシ
  4. 【第6回】「パート3:“Protein cargo”の解析方法」 ThermoFisher エキソソーム中のProtein cargoの解析法として、一般的なタンパク質解析の手法であるWestern blotting法を紹介

因果関係と相関関係:研究のデザイン

科研費の申請書には、よく「AがBに関与しているかどうかを検証する」という研究目的とともに、AとBの頻度を調べるという実験計画が示されていたりします。もしAとBともに数値データとして得られるのであれば、散布図を描くと直線状に乗るというイメージです。もしどこかで高低を分けて、分割表に書けば

|    Bが低値 Bが高値

Aが低値 8    2

Aが高値 1    9

と言った感じになります。これにより、AがBに関与している(Bを生じさせている)と言えるでしょうか?もちろん、言えません。「相関関係」があると言えるだけで、「因果関係」に関しては何も言えないわけです。Aが原因でBが結果なのかもしれないし、逆に、Bが原因でAが結果として生じているのかもしれません。

因果関係を実証する理想的な実験デザインとしては、AとBの両方が起きているときに、Aを取り除くとBが起きなくなること(AはBの必要条件)、また、AとBのどちらも起きていないときに、Aを生じさせると、Bも生じること(AはBの十分条件)を示す必要があります。

科研費申請書の研究計画で、このあたりをうやむやにして「関与を調べる」と書いていると、おそらく採択される可能性は低いだろうと思われます。

参考記事

相関関係と因果関係
ある研究者が,低コレステロール血症は胃癌の発生率と高い相関があり,低脂血症が危険因子であると警告を発したが,結果的には癌が低コレステロール血症を引き起こしていたことが判明した2)。このように,相関があることがそのまま因果関係があることにはならない。https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/old/old_article/n1997dir/n2232dir/n2232_12.htm

 

脳活動を測定する原理、装置、応用事例、研究や臨床での使われ方など

脳波計(EEG)

アクティブ電極

  1. 新人技術者の脳波測定記 脳波計(EEG)の選び方 macnica リード線上にノイズがのっても十分なS/N比を確保しているため、電磁シールドがなくても脳波計測が可能 半導体の進化に伴いセンサパッドに高性能なアンプを組み込んだドライタイプの脳波計が台頭

ドライ電極

  1. ウェアラブル脳波計によるポータブルな脳波実験系の構築 成瀬康、横田悠右 情報通信研究機構脳情報通信融合℄ https://www.pgv.co.jp/nais-entry/about

ウェアラブル脳波計

  1. PGV 大阪大学産業科学研究所の関谷教授が開発した高精度ウエアラブル脳波計測技術を実用化し、計測した脳波をAI解析 PGVのパッチ式脳波計 着が簡単で、被験者自身でも可能 小型でワイヤレス計測が可能 自宅・会議室など場所を選ばない

脳波検査

  1. 脳波(EEG):どうやって測るの?何が分かるの?異常と言われたら? 更新日:2022/05/20 著者坂本 崇 | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経内科 監修水澤 英洋 | 国立精神・神経医療研究センター 脳波検査では、22個の電極を頭全体につけます。このほか、筋肉の動きを拾う電極を2個と、呼吸を調べるレスピレーターを鼻につけます。 目を開けたり閉じたりする行為や、目の上方30㎝で光をピカピカ放つ刺激をしたり、4分間深呼吸をしてもらう等して、脳波を20分位記録します。

脳波測定の実際

  1. 新人技術者の脳波測定記~アーチファクト① 電源ノイズ編~ 
  2. Figure -9. Raw data obtained from the EEG headset.
    Figure -10. Prefiltered EEG signals.

公開されている脳波データ

  1. EEG / ERP data available for free public download (updated 2020) Since there was no public database for EEG data to our knowledge (as of 2002), we had decided to release some of our data on the Internet.

同種移植とは

実験動物やヒトの移植における「同種」の意味についてのまとめ。

マウスの移植で同種移植と言った場合には、同じ系統のマウス間での移植のことを指すようです。

  1. マウス乳癌の同種移植 マウスに自然発生した乳癌を同じ系統のマウスに移植して、その移植性を検討すると共に移植時に見られる腫疹の生物学的並びに組織学的変化を追求した.https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/207115/1/ngh029003_765.pdf

同種移植マウスモデル(syngeneic model)

  1. 同種移植マウスモデル(syngeneic model)は同じソースの腫瘍細胞株を免疫健全な近交系マウスに移植して作製したモデルである。接種を受けるマウスは完全なマウス免疫システムと完全な免疫活性を持っていて、且つこの免疫システムは同種移植腫瘍組織と相容れ、腫瘍の微環境を最大限に模擬することができる。 Cyagen
  2. シンジェニックモデルは、マウスの同じ近交系に由来する不死化マウスがん細胞株に由来するホモグラフトです。 https://crownmbl.co.jp/model-systems/in-vivo/syngeneic-tumor-models

同種移植と拒絶

  1. ラットやマウスの同種臓器移植において, 一定期間培養すると移植片が拒絶されず, よって拒絶反応を惹起する細胞は, 移植片の中の, 実質細胞など臓器本来の細胞ではなく, 培養中に遊出するtransient cells, 特に樹状細胞(Dendritic cells, 以下DCと略す)であるとする多くの報告を紹介した https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/81/11/81_11_1655/_pdf

術語のまとめ

患者自身の組織(自家移植片[autograft];例,骨,骨髄,皮膚)

遺伝的に同一の(同系[一卵性双生児])ドナーの組織(同系移植片[isograft])

遺伝的に異なるドナーの組織(同種移植片[allograftまたはhomograft])

他の種由来の組織片(異種移植片[xenograftまたはheterograft])

移植の概要 MSDマニュアルプロフェッショナル版)

  1. 移植治療は大きく分けてご自分の細胞をあらかじめ採取したあとにご自身の体に戻す自家移植と、他人から(ドナーさん)移植細胞をもらう同種移植の2種類があります。https://www.med.oita-u.ac.jp/syuyou/sct2.html

非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(non-ampullary duodenal epithelial tumor; NADET) について

非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍 non-ampullary duodenal epithelial tumor

  1. 非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍non-ampullary duodenal epithelial tumor:NADET)はまれな疾患であ り,診断,治療ともにエビデンスが乏しい.2020年7月時点で,取扱い規約および治療ガイドラインは存在していない(現在,日本胃癌学会と日本肝胆膵外科学会が合同で十二指腸癌治療ガイドラインを作成中).http://www.igaku.co.jp/pdf/2011_shoukaki-02.pdf
  2. https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/35/4/35_562/_pdf/-char/ja
  3. 十二指腸の腺腫ならびに早期がん(乳頭部の腫瘍を除く)はまとめて表在型非乳頭部十
    二指腸上皮性腫瘍(SNADET)と呼ばれています。 https://kohnan.or.jp/kohnan/wp-content/uploads/2021/07/optout_2_20210716.pdf
  4. 非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(non-ampullary duodenal epithelial tumor, NADET) は比較的稀であるが、表在NADET(十二指腸腺腫または粘膜下層までにとどまる癌)に対する内視鏡診療について確立されたものがない。NADETではその発生部位・悪性度・粘液形質が密接に関連していることが知られているが、内視鏡的に粘液形質を同定する方法は確立していない。 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23K11866/
  5. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4168083/
  6. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35310765/
  7. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/deo2.54
  8. https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendockitn/9/1/9_ND21-068/_article/-char/ja/
  9. https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/html/10.1055/a-1931-4105

非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍 の「型」

  1. 免疫組織化学的に粘液形質の評価を行ったNADET 150病変において,胃腸混合型および分類不能型形質を除いた胃型NADET 19例と腸型NADET 73例に対して,臨床的・内視鏡的特徴について比較検討を行った.https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1403203297

Dに出てくる単語:ZT(zeitgiber time)、位相(phase)

ZT(zeitgeber time)とは

zeitgeber とは、ドイツ語で英語でいうとtime giverだそうです。time giver timeというとますますわからないですね。zeitgeberのzeitはtimeというよりも時間周期を与えるキュー(刺激)みたいに捉えたほうがしっくりきます。

 “Zeitgeber” in German is “Time giver” in English and refers to the “agent of entrainment”. https://ruo.mbl.co.jp/bio/e/product/circadian/exuse/per1-2.html

下の説明が非常にわかりやすく、徹底的です。

A zeitgeber is any environmental cue that can be used by an organism to align its endogenous rhythm with the external day-night cycle. So far we have focused mainly on light as it is the most common zeitgeber, but there are other zeitgebers as well.

the experimental manipulations that chronobiologists impose lead to two new ways of talking about time. When an organism is free-running, we speak of circadian time (CT). When an organism is entrained to an artificially-imposed, environmental daily cycle, we speak of zeitgeber time (ZT).

https://ccb.ucsd.edu/the-bioclock-studio/education-resources/basics/part2.html

時間生物学における位相(phase)とは

位相というのは高校物理の波の勉強で出てきましたが、周期的に変化するものが(0度=<x<360度)の中のどの位置にいるかというものだったと思います。y = sin x xは角度 とすれば、x=0のときは位相が0度で、周期のちょうど真ん中にいれば位相は180度と言った具合です。

時間生物学でも24時間周期で変動する遺伝子の発現量が波のように変化するので位相という概念が出てきますが、位相の表し方としては、遺伝子発現がピークのときの”時刻”(一周期を0~24時間とした場合)で表すようです。位相という概念は同一ですが、表現の仕方が独特です。

  1. the peak of mRNA abundance (phase)   Peak times (phase) and amplitudes are summarized in circle plots.  the peak times (also referred to as phases) of pre-mRNA accumulation for cycling genes https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1715225115 この論文では位相(遺伝子発現のピーク)をZT(zeitgeber time)で表示しています。
  2. phase (the maximum peak of expression of a certain gene) https://stackoverflow.com/questions/30463959/circadian-phase-plot-in-r

突然変異体などでは1周期が24時間からかけ離れたものも出現するので、0~24時間に当てはめて(ノーマライズして)位相を表示するというのもやや不自然に自分は思います。

  1. Phase Θ and amplitude A before (gray dot) and after (black circle) pulse. この論文では位相をラジアンで表示しています。

上の論文では位相の単位として24時間でなくラジアン(360度は2πラジアン)で表示していて、こっちのほうがリーズナブルかなと個人的には思いました。

位相を表示するレーダープロット(Radar plot)とは

  1. Radar plots representing the phase analysis of genes whose expression is circadian この論文では位相が0~24時間で表示されています。図の説明文では明示されていませんが、本文ではZTが使われているので、この図もZT表示と思われます。
  2. https://www.nature.com/articles/ncomms11662 個々の個体の位相の平均(ベクター表示)

 

 

COPID(肺気腫)、その他の肺の病気

肺の構造

  1. 肺の構造とガス交換(いわつき三楽クリニック 埼玉県さいたま市岩槻区)肺は、肺胞という小さな袋がブドウの房状にぎっしりと集まった構造をしています。肺胞はおよそ3億個あり、全てひろげるとテニスコート半分(約70m2)もの広さになります。

COPDの名称について

COPDとは肺や気管支に炎症が起こり、長期にわたり気道が細くなる病気です。従来、慢性気管支炎肺気腫(はいきしゅ)などと呼ばれてきました。(呼吸器内科 / COPD(肺気腫) 神鋼記念病院)

肺気腫とは

「肺気腫」とは? 酸素と炭酸ガスの交換を行っている「肺胞」の組織が壊れ、肺にたまった空気を押し出せなくなる病気です。肺胞と呼吸細気管支が拡張して破壊される疾患で、肺胞と肺胞との間の壁が壊れると、いくつもの肺胞が弾力性を失ったひとつの袋のようになります。こうした肺胞の集まり(気腫性嚢胞)がたくさんできた状態肺気腫といいます。肺気腫になると肺胞が破壊され、その数が減り、肺がスカスカの状態になります。(医誠会病院 http://www.is-kokyuki.com/byoki/emphysema.html)

肺気腫慢性閉塞性肺疾患表現型の一種で、肺気腫が主体の慢性閉塞性肺疾患を気
腫型と呼ぶ。

慢性閉塞性肺疾患としての肺気腫は、喫煙が主要原因 https://www.saitama-med.ac.jp/lecture/materials/96-H2507-2.pdf

  1. COPDってどんな病気ですか? 環境再生保全機構 COPD では肺胞が壊れて弾力性を失い、また、気管支に炎症が起こり、気管支の内腔が狭くなります。
  2. 肺気腫(小葉中心性)病理コア画像 ミクロ像(HE弱拡大):呼吸細気管支から末梢の肺組織が破壊され、不規則に拡張した気腔が散在している。

肺水腫とは

  1. 肺水腫 MSDマニュアルプロフェッショナル版 左室充満圧が突然上昇すると,血漿成分が肺毛細血管から間質および肺胞内へと急速に移動する結果,肺水腫が引き起こされる。
  2. 肺水腫(日本呼吸器学会)肺水腫はこの毛細血管から血液の液体成分が肺胞内へ滲み出した状態です。肺胞の中に液体成分が貯まるため、肺で酸素の取り込みが障害されて重症化すると呼吸不全に陥ることがあります。(図 正常な肺のガス交換 肺水腫

気胸とは

気胸とは?肺から漏れた空気が胸腔(胸膜腔)に貯留すること

気腫性嚢胞とは、肺胞の炎症などで、肺胞壁が破壊されて、肺胞同士がくっついて膨張したもの。そのうち、ブラは、肺組織内で形成されたもので、ブレブは臓側胸膜の間または直下にできたもの (気胸 花子のまとめノート)

  1. ブラとブレブの違い(看護roo!)ブラ:肺胞が破壊されて、肺胞の先端に嚢胞(気嚢)ができている状態です。ブレブ:破壊された肺胞と、臓側胸膜の一部が破れたことで、その間に嚢胞(気嚢)ができている状態です。
  2. ブラとブレブ(ナースプラス マイナビ看護部)

肺炎

単に“肺炎”というと、一般的には感染症としての肺炎を指す。細菌性肺炎では、 細菌感染によって肺内に白血球の集積肺の細血管からの滲出が起こるためにガス交換が障害されるが、適切な抗菌薬の使用によって、多くは1~2 週間で治癒する。https://www.saitama-med.ac.jp/lecture/materials/96-H2507-2.pdf

慢性閉塞性肺疾患と間質性肺炎

肺に慢性進行性の障害をきたす疾患は多数あり、その障害が不可逆的(元に戻らない)であると、徐々に健常肺が失われていくこととなる。慢性に進行する代表的な肺疾患が慢性閉塞性肺疾患間質性肺炎で、両者は肺容積について対照的な変化を示す。慢性閉塞性肺疾患は、気流閉塞によって充分に息を吐くことが難しくなっていくため、肺が次第に膨張していく。間質性肺炎は多数の疾患の総称であるが、肺線維化という病態をきたすと肺胞がつぶれる(虚脱する)ため、肺が次第に縮小していく。https://www.saitama-med.ac.jp/lecture/materials/96-H2507-2.pdf

COPD動物モデル

  1. ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)誘発肺気腫モデル(SMCラボラトリーズ株式会社)図1.PPEモデルの肺HE染色画像 正常マウスに比べて、PPEモデルでは肺胞壁の破壊が認められます。

パーキンソン病(Parkinson’s disease)と発病の仮説、パーキンの働きなどについて

Brain-first・body-first仮説とは?

パーキンソン病は、体のどの部分から始まるのか?に関して、脳から始まる病型と体(特に腸)から始まる病型の2つに分かれるという仮説があるそうです。

  • 腸管に端を発した病理が迷走神経を介して脳に到達するという「PDの腸管起源説」が注目を集めている。
  • 上部消化管の粘膜損傷の既往は臨床的PD診断リスクの上昇と関連していることをJAMA Netw Open2024; 7: e2431949
  • 粘膜損傷と臨床的PDリスクとの有意な関連:調整後HR 1.76、95%CI 1.11~2.51、P=0.01

パーキンソン病の腸管起源説に新知見 上部消化管の粘膜損傷が発端か 2024年9月18日 16:26 MedicalTribune

Parkinson’s disease is characterized by the presence of abnormal, intraneuronal α-synuclein aggregates, which may propagate from cell-to-cell in a prion-like manner. However, it remains uncertain where the initial α-synuclein aggregates originate. We have hypothesized that Parkinson’s disease comprises two subtypes. A brain-first (top-down) type, where α-synuclein pathology initially arises in the brain with secondary spreading to the peripheral autonomic nervous system; and a body-first (bottom-up) type, where the pathology originates in the enteric or peripheral autonomic nervous system and then spreads to the brain. https://academic.oup.com/brain/article/143/10/3077/5896254

The hypothesis of body-first vs. brain-first subtype of PD has been proposed with REM-Sleep behavior disorder (RBD) defining the former. The body-first PD presumes an involvement of the brainstem in the pathogenic process with higher burden of autonomic dysfunction. https://content.iospress.com/articles/journal-of-parkinsons-disease/jpd223511

Brain-first and body-first Parkinson’s disease: are there subgroups of prodromal patients? VJNeurology チャンネル登録者数 4480人

  1. EAN 2021 | Brain-first and body-first Parkinson’s disease: are there subgroups of prodromal patients? Filip Scheperjans • 1 Jun 2021

How valid is the brain-first vs body-first model of Parkinson’s disease? VJNeurology チャンネル登録者数 4480人 Alberto Espay, MD, FAAN, University of Cincinnati, Cincinnati, OH

Brain-first and body-first仮説に関するレビュー論文

  1. Neurobiology of Disease Clinical and imaging evidence of brain-first and body-first Parkinson’s disease Neurobiology of Disease Volume 164, March 2022, 105626 Braak‘s hypothesis has been extremely influential over the last two decades.  By using REM-sleep behavior disorder (RBD) as a clinical identifier to distinguish between body-first PD (RBD-positive at motor symptom onset) and brain-first PD (RBD-negative at motor symptom onset), we explored the literature to evaluate clinical and imaging differences between these proposed subtypes.
  2. Brain-First versus Gut-First Parkinson’s Disease: A Hypothesis J Parkinsons Dis . 2019;9(s2):S281-S295. doi: 10.3233/JPD-191721.

Brain-first and body-first仮説に関する原著論文

  1. Body-First Subtype of Parkinson’s Disease with Probable REM-Sleep Behavior Disorder Is Associated with Non-Motor Dominant Phenotype J Parkinsons Dis . 2022;12(8):2561-2573. doi: 10.3233/JPD-223511.
  2. Brain-first versus body-first Parkinson’s disease: a multimodal imaging case-control study Brain, Volume 143, Issue 10, October 2020, Pages 3077–3088, https://doi.org/10.1093/brain/awaa238 Published: 24 August 2020

黒質(中脳)と青斑核(橋)と迷走神経背側核との位置関係

黒質は運動を司る領域で、黒質のドーパミン作動性ニューロンが変性すると運動障害が生じます。青斑核はREM睡眠に関連していて、青斑核が変性するとREM睡眠の異常が見られます。迷走神経背側核からは、副交感神経が伸びて内蔵を支配しています。

  1. 細胞間の伝搬経路 (点線)や、青斑核から上行する経路の実態はヒト脳では明らかになっておらず、病変が上行するという仮説の構造背景はヒト脳では未確定である(点線矢印)。 https://www.igakuken.or.jp/topics/2015/1007.html わかりやすい図

Braak’s Hypothesis

Braak’s Hypothesis: This theory suggests that Parkinson’s disease may start in the peripheral nervous system or the gut and then progress to the brain. According to this hypothesis, abnormal alpha-synuclein protein aggregates may initiate the disease process in the enteric nervous system and later spread to the brain through the vagus nerve. https://chat.openai.com/

It has been hypothesized that α-synuclein inclusions initially form in nerve terminals of the enteric nervous system, and then subsequently spread via autonomic connections to the dorsal motor nucleus of the vagus and intermediolateral cell columns of the sympathetic system (Braak et al., 2003a, b; Borghammer, 2018).

(引用元:Brain-first versus body-first Parkinson’s disease: a multimodal imaging case-control study Brain, Volume 143, Issue 10, October 2020, Pages 3077–3088, https://doi.org/10.1093/brain/awaa238)PDF

  1. The dorsal motor nucleus of vagus (図)
  2. The intermediolateral nucleus (IML) is a region of grey matter found in one of the three grey columns of the spinal cord, the lateral grey column. The intermediolateral cell column exists at vertebral levels T1 – L3. It mediates the entire sympathetic innervation of the body, but the nucleus resides in the grey matter of the spinal cord.

デュアルヒット仮説とは

the idea that PD pathology may in fact originate in synapses of the peripheral nervous system (PNS) and invade the brain from the olfactory epithelium and via retrograde axonal transport through the vagus, termed the dual-hit hypothesis [4]. https://content.iospress.com/articles/journal-of-parkinsons-disease/jpd191721

The progressive, neurodegenerative process underlying idiopathic Parkinson’s disease is associated with the formation of proteinaceous inclusion bodies that involve a few susceptible neuronal types of the human nervous system. In the lower brain stem, the process begins in the dorsal motor nucleus of the vagus nerve and advances from there essentially upwards through susceptible regions of the medulla oblongata, pontine tegmentum, midbrain, and basal forebrain until it reaches the cerebral cortex. With time, multiple components of the autonomic, limbic, and motor systems become severely impaired. All of the vulnerable subcortical grays and cortical areas are closely interconnected. Incidental cases of idiopathic Parkinson’s disease may show involvement of both the enteric nervous system and the dorsal motor nucleus of the vagus nerve. This observation, combined with the working hypothesis that the stereotypic topographic expansion pattern of the lesions may resemble that of a falling row of dominos, prompts the question whether the disorder might originate outside of the central nervous system, caused by a yet unidentified pathogen that is capable of passing the mucosal barrier of the gastrointestinal tract and, via postganglionic enteric neurons, entering the central nervous system along unmyelinated praeganglionic fibers generated from the visceromotor projection cells of the vagus nerve.

J Neural Transm (Vienna) . 2003 May;110(5):517-36. doi: 10.1007/s00702-002-0808-2. Idiopathic Parkinson’s disease: possible routes by which vulnerable neuronal types may be subject to neuroinvasion by an unknown pathogen H Braak 1, U Rüb, W P Gai, K Del Tredici Affiliations expand PMID: 12721813 DOI: 10.1007/s00702-002-0808-2

レビー小体とは

Lewy bodies (LBs) are complex, intracellular inclusions that are common pathological features of many neurodegenerative diseases. They consist largely of aggregated forms of the protein alpha-Synuclein (α-Syn), which misfolds to give rise to beta-sheet rich amyloid fibrils. The aggregation of monomers into fibrils occurs readily in vitro and pre-formed fibrils (PFFs) generated from recombinant α-Syn monomers are the basis of many models of LB diseases. https://actaneurocomms.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40478-021-01288-2

Metaiodobenzylguanidine (MIBG) とは

Metaiodobenzylguanidine (MIBG) was first developed in USA, in Michigan University Medical Centre, in early 1970, for imaging the adrenal medulla and its disease.1 MIBG, a guanithidine analog, is taken up by an active mechanism into the neuroendocrine cells due to its similarities with nor-epinephrine. It came into clinical practice in 1981 for localization of pheochromocytoma (pheo).2 In course of time, MIBG demonstrated its ability to concentrate in tumors of the neural crest origin such as neuroblastoma (NBL),3 carcinoids and medullary carcinoma of the thyroid.4, 5 Due to good selective uptake and retention of MIBG by these tumors, its potential was explored for therapy of neuroendocrine tumors (NETs) as well. MIBG is labeled with 123-Iodine (123I) which is exclusively used for imaging and also with 131-Iodine (131I); which can be used both for imaging and therapy of NBL or other MIBG avid neural crest tumors. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6475939/

パーキンソン病とパーキン遺伝子

パーキンソン病の原因遺伝子としてパーキンが見つかっています。パーキンはE3ユビキチンリガーゼの一種です。

以下はconsensus.appによる回答:

パーキンソン病におけるパーキンの役割

パーキンソン病(PD)は、神経変性疾患であり、特にドーパミン作動性ニューロンの喪失が特徴です。パーキン(Parkin)は、E3ユビキチンリガーゼとして知られ、ミトコンドリアの品質管理やタンパク質の分解に関与しています。パーキンの機能不全がPDの発症にどのように影響するかについて、多くの研究が行われています。

  • パーキンの機能喪失とPDの関連性
    • パーキンのE3リガーゼ活性の喪失が、遺伝性および散発性のPDの病因に寄与する。
    • パーキンの機能不全は、特定の基質の有害な蓄積を引き起こし、ドーパミン作動性ニューロンの生存に重要な役割を果たす。
  • パーキンの神経保護作用
    • パーキンの過剰発現は、α-シヌクレイン誘発性の神経病理を軽減し、ドーパミン作動性ニューロンの保護に寄与する。
    • パーキンは、6-OHDAラットモデルにおいて神経毒性に対する強力な神経保護作用を示し、行動の改善も観察された。
  • パーキンの多機能性と調節
    • パーキンは、ミトコンドリアの恒常性やストレス関連のシグナル伝達など、さまざまな細胞機能に関与し、これらの機能が神経保護に寄与する。
    • パーキンの活性は、酸化ストレスやニトロソ化ストレスによって調節され、これがPDの病因に関連する可能性がある。
  • パーキンとLewy小体の形成
    • パーキンは、Lewy小体の形成に関与し、α-シヌクレインと共局在することが示されている。

パーキンの活性は、パーキンソン病の発症と進行において重要な役割を果たします。パーキンのE3リガーゼ活性の喪失は、遺伝性および散発性のPDの病因に寄与し、ドーパミン作動性ニューロンの生存に不可欠です。また、パーキンの過剰発現やその多機能性は、神経保護作用を持ち、PDの治療における潜在的なターゲットとなり得ます。

当たり前すぎて誰も教えてくれない科研費申請書の書き方の作法、暗黙のルール

当たり前なので誰も言わないけれども、初心者にとっては当たり前でないことが、科研費研究計画調書(申請書)の執筆において重要になります。

申請書を書く際の態度について(*最重要)

研究計画だから、まだデータが出ていないことを書くべきだと誤解する初心者が多いですが、そうではありません。実験データが得られていても「論文化(受理;アクセプト)されていないものは、何も行われていないものと同じ」いうスタンスで書くのが、申請書を書く際の原則です。ですから、もう研究が一通り終わっていると思われると研究費がもらえないのではないか?という初心者にありがちな心配は無用です。

建前の本音が大きく矛盾しているのですが、だからこそ公で誰もはっきりとは言わないことなのですが、ほとんど研究が上手くいっているくらいの状態でデータをバンバン申請書に盛り込んでいるほうが採択されます。なぜなら、研究計画の実現可能性に疑問が挟まれないからです。実験なんてほとんどは思った通りの結果は出ないということは審査委員もみな知っていますので、机上の空論を書かれても真に受けるわけにはいかないのです。

事務が聞いたら怒りそうですが、研究費が得られたら本来の計画書に書いた実験ではなく、「次の」研究のアイデアを纏めるための新たな実験に使ったほうがいいのです。そうしないと、次の申請のときに採択可能性がさがります。「研究費をもらって、実験して論文化」というサイクルではなく、「研究費をもらって、さっさと論文化を済ませて、次に申請するための実験をして論文化の準備をする」というサイクルを回し続けることが、研究者として生き残るための条件なのです。

これは成功している研究者を見れば、皆があたりまえにやっていることです。悪い環境で研究を孤独にやっていると、こういう当たり前のことを教えてくれる人がいないという不幸なことになります。

自分はアメリカのRO-1(大型研究予算)の申請書や、日本の基盤研究(A)の申請書などを見たことがありますが、ぱっと見ほとんど「論文」でした。主要なデータがきちんと論文レベルのクオリティで図として埋め込まれているのです。金額が大きければおおきいほど「ほとんど論文」の傾向が強い(それが要求される)と思いますが、少額である基盤研究(C)や若手研究であっても、基本的な考え方は同じです。

申請書に書くべきこと

申請書には、やることを書きます。また、なぜやるのかという理由も書きます。なぜその研究が大事なのかという説明を書きます。科研費の申請書は、将来の希望を書くための書類ではありませんし、心情を吐露するためでもありません。主観を排して客観的に、すなわち、文献や予備実験データに基づいて、論理的に話を進める場所です。唯一主観を交えて書いても良い場所が、本研究の着想に至った経緯のセクションです。申請者が何を考えているのかを書くべきですが、それは根拠のない思い付きや心情を書くということではなく、どうロジカルに考えた結果そのような主張をしているのかがわかるように書くべきなのです。

3年なら3年という限られた年数の間に、何をやって何を明らかにするつもりなのかを書く代わりに、医療の発展に寄与したいとか、あやふやな願望ばかり書いていては、採択はおぼつきません。

申請書はいくつかのセクションに分かれていて、このセクションにはこれを書くというのがある程度決まっています。研究目的なら、研究目的のセクションに書くわけです。当たり前ですね?このあたりまえのことを守らない人も結構います。書くべきことを書いていなかったり、逆に、書く必要のないことを書いていたりします。そんな申請書は、もちろん採択されるわけがありません。

申請書作成にあたっての態度

なぜ申請書に書かれた指示を守らない書き方を平気でするのか?それは一言でいうと、独りよがりだからです。独りよがりは物事に対する態度なので、申請書のいたるところでその独りよがりぶりが見てとれます。例えば、論文の図などをコピペした際の英語のフォントが小さく読めないのに気にしないなど。独りよがりでない、すなわち、読み手を意識して読みやすい申請書を作成する心の態度ができている人は、ちゃんと読める大きさに図を作ったり、理解しやすいように英語の部分を全部日本語に直したりといった工夫をするわけです。「独りよがりな人=実験データを客観的に解釈できず、自説に引き寄せてしまう人」の恐れが大きいため、研究者としての評価が低くなり、審査委員にしてみれば研究費をあげたい人には入らないでしょう。

申請書の言葉遣いに関する掟

研究目的のセクションに、研究目的を書かずに、研究目的の意義を書く人もたくさんいます。「細菌叢を解析することにより、疾患Aとの関連性を明らかにする」というのが研究目的だったとしたら、研究目的のセクションに「細菌叢を解析することにより、疾患Aとの関連性を明らかにすることにより効果的な治療戦略の開発に貢献できる」などと書くのが典型的な失敗例です。研究目的の文と、その意義を述べる文は一続きの文にせず、2文に分けましょう。

プロポーズするときに、「あなたと結婚したらきっと幸せな家庭が築けると思うよ」と言っても、言われた相手はプロポーズされたとは思わないでしょう。「あなたと結婚したい」と言わなきゃだめです。科研費の研究目的の書き方も、それと同じです。

申請書は書き言葉で書きます。話し言葉やくだけた表現を用いてしまうのもよくある失敗例です。また、ラボで飛び交う日常語と正式な言葉とは使い分けましょう。ラボでは、「サザン」をするというかもしれませんが、書くとときは「サザンブロット法」です。「それで、」とは書かず、「そこで、」と書きます。「そして」も普通使いません。「また」あるいは「その後」といった言葉を使います。使う言葉で、その人がプロフェッショナルな研究者なのかそうでないのかは、一瞬でバレてしまいます。

概要で書くべきこと

概要は、指示にもある通り、本文の要約です。この指示を無視して、本文に書いていない情報を盛り込む人が多数います。これは申請書に整合性がないもの判断される材料になるでしょう。

概要で大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)と書いたからといって、本文でいきなりASと書くのは、「概要は本文の要約」という鉄則に反した行為です。本文でも繰り返しになって全然OKなので、初出時は大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)と書きましょう。そもそも本文のスペースが十分余裕があるのであれば、わざわざASなどど略さなくてもよいでしょう。

概要のところを10行分くらい空けておき、本文4ページ分を書きあげてから4ページ分の要約を概要に書けば、上のようなつまらないミスは起こしようがありません。様式をダウンロードしたあと、まず概要を書き、続けて本文を書き進むといった作成方法をしている人は要注意です。

背景に書くべきこと

その次に来る学術的な問いの妥当性を客観的に説明するために書きます。客観性を出すためには、文献を引用しながら書くのが鉄則です。自分の個人的な体験や考えをただ書いても説得力が出ません。

ただし2025年度科研費から、着想に至った経緯が(1)に入ってきたので、ある程度自由度があるかもしれません。

着想に至った経緯

業績がほぼない臨床医であれば、日常臨床でどのようなクリニカルクエスチョンを得てそれをリサーチクエスチョンとしたのかを書いてもいいでしょう。しかし、研究業績のある人で、テーマに関連する論文の積み上げがある人であれば、自分の論文業績に基づいて書くのが普通です。

2025年度科研費(2024年度応募)から様式に変更があり、着想に至った経緯は、(3)の中ではなく、(1)に書くことになりました。毎年、前年度の申請書のコピペで申請書を作っている人は要注意です。背景~着想~問い はひと続きに書いても、それぞれ分けて書いても、どちらでもいいと思います。ただし、背景を書く目的がそもそも問いを導くためなので、このセクションは一まとまりで書くほうが自然のような気がします。

学術的な問いに書くべきこと

あくまで明らかにしたい学術的な問いであって、「こんな研究は可能か?」という疑問を書くのではありません。日常語としての「問い」の意味に引きずられないようにしましょう。

学術的な問いは、文字通り「学術的な問い」です。ある実験系においてどういう結果が出るか?という具体的なものではなく(それは研究目的)、もっとその研究領域の他の研究者とも共有されるような大きなものであるべきです。「抽象度ー具体度」の軸で考えると、研究目的よりも学術的な問いのほうが抽象度が高くないとおかしいのです。思い付きで例を挙げると、以下の項目は上ほど抽象度が高く、下に行くほど具体性が増します。

  • がんの撲滅
  • 抗体医薬の開発
  • 免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証
  • ヒト大腸がんの細胞株を用いた免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証
  • ヒト大腸がんの細胞株の担癌マウスを用いた免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証

学術的問いと研究目的を設定する場合、どの「大きさ」で設定するかは本人次第ですが、どうであれ、問いは目的より抽象度を高くした記述になっているのが普通です。ただし、「同じ」というのもあり得ます(問いと研究目的が、言葉としては裏返しの関係)。

研究目的に書くべきこと

初心者でときどき勘違いしている人がいて、研究目的として、がんを撲滅して人類に貢献したいといった内容を書く人がいます。これは将来の願望や希望であって、このセクションに書くべきことではありません。通常の日本語でいう「目的」であれば、がんの撲滅は立派な目的ですが、申請書における研究目的とは、「何をどう研究して何を明らかにするのか」という意味です。研究期間内(3~4年)の間に何をやるかを書くのです。将来的な目標を書く場所ではありません。通常の日本語に惑わされないようにしましょう。これは、採択されている人間にとっては当たり前すぎることですが、初めて科研費に応募する人の中にはわかっていない場合があります。どうしても将来的な目標まで書きたければ、期間内の目標と将来のことをハッキリと書き分けましょう。

「研究目的は、~を目的として~を行うことである。」と書いてしまうと、前半部分だけが目的のようになって、分かりにくくなりますので、「研究目的は、~を明らかにするために~を行うことである。」と書いたほうがよいでしょう。

独自性に書くべきこと

「他に論文報告がない研究だから独自性がある」と書くのがダメです。重要な研究なのになぜ誰もやっていないのか、できなかったのか、なぜ自分ならできるのかを説明しましょう。誰もやっていないということは、誰も興味を持たないくらいに面白くない研究テーマであることが多いはずです。

「本研究は~を~して~を明らかにする点で独自性がある」と書く人も多数います。「本研究は~を~して~を明らかにする」の部分が、単に研究目的に書いたことそのままだとしたら、それは独自性を説明したことには全くなりません。AならばAである、とトートロジーを述べているようなものです。独自性=他者と比べて何がどうなのか という説明が必要です。

創造性に書くべきこと

創造性という言葉の意味が広すぎて、人によって書くべきことのイメージが大きく異なる可能性があります。アイデアの斬新さや、研究成果の波及効果(社会に対する貢献や、おなじ研究領域の他の研究者に対する貢献、ベネフィット)を書けば良いでしょう。ぶっちゃけ、審査委員(=同じ研究領域の研究者)が自分たちの役に立つと思ってくれればよいのです。

もう一つの考え方として、自分の研究に将来的な広がりがあるという観点で書くのもありでしょう。しかし、上で書いたことのほうが強力です。自己的な人より他己的な人のほうが評価されるのは当たり前。

創造性という言葉はかなりビッグワードなので、~という点で創造性があると書いても、日本語として不釣り合いなことが多いです。そういうときは、~という点に特色がある。程度で済ませましょう。いろいろな意味でバランスが悪い人は、研究能力も低いのではないかと疑われます。

 

研究動向と位置づけ

他人の研究と自分の研究を紹介すればそれが動向であり位置づけになりますので、動向と位置づけは表裏一体であって、分けて書かないほうがいいと思います。また研究動向はあくまでその申請書の研究テーマに関する研究動向(それくらい広く捉えるかはケースバイケースで正解はない)であって、あまり関係がない研究を紹介するのは意味不明です。

「着想に至った経緯や、研究動向と位置づけ」という指示があるせいか、着想を書いて、そのあと書くことがなくてなのかスペースがなんとなく埋まったせいなのか、動向・位置づけを何もかかずに済ませる人がいます。これは絶対にダメです。着想は主観を書く場所なので、評価のポイントになりえません。しかし動向と位置づけは、客観性をもってその研究の意義をアピールするために必須なので、それを書かなければ採択されるはずもありません。

本研究で何をどのように、どこまで明らかにするのか

このセクションはいわゆる研究計画欄であって、方法や計画、実験課題を具体的に書きます。具体的といっても何を何ml採取して何と混ぜてとか、何gで遠心してなどとプロトコールを書いてはいけません。実験をやり慣れている人が読んだときに何をするのかが分かる程度の詳しさで十分です。遺伝子発現を調べるのであれば、RNAseqなのかreal time PCRなのかウエスタンブロットなのか免疫組織なのかといったことを書く必要があります。関連する実験の論文を多数出している人は、細かいことを書かなくても信用してもらえますし、関連論文ゼロの人は自分がその実験をできるんだというアピールが必要です(予備データを見せるとか、publishableなデータでなくても少なくとも自分のいる研究で自分自身で実験をこなせることを示す写真を見せるとか)。

また、実験の作業工程をえんえんと書いてお仕舞いにしても、読んだほうにはちんぷんかんぷんですので、それぞれの実験を行う意図や目的を必ず書きます。このセクションの最初と最後には実験目的や得られる結果の予測と結論などを書きましょう。

準備状況

予備実験データなどがあればそれを書いてもいいでしょう。予備実験データは計画欄においてもいいですし、背景などもっと前のほうにおいてもいいと思います。ただ単に、準備は万端整っていて採択されれば確実に研究計画を実施可能である。と書いてもあまり説得力がありません。準備できているのなららその中身を書いて、判断は審査委員に委ねましょう。

研究者の遂行能力

ここはいわゆる業績欄で、昔は単に論文のリストを書く場所でした。科研費の様式も変遷を経ていて、今ではかなり自由に何を書いてもよいことになっています。そうは言っても、論文リスト+それらの論文の解説というパターンで書く人がほとんどでしょう。

  1. 査読付き原著英語論文(筆頭著者論文、責任著者論文、共著論文)
  2. 査読付き原著和文論文、英語論文(総説)、症例報告論文、和文商業誌の記事、論文
  3. 学会発表(筆頭演者)

人によって考え方が違うかもしれませんが、上のようなことを書くといいと思います。特に、研究計画に関連する論文はしっかりとアピールします。関連論文がないなら、関連性が薄い論文でもなんでもとにかく余白を作らないように書けるだけ書きます。

関連論文の内容を、場合によっては図なども提示しながら日本語の文章で解説するというのもありです。論文数が少ないほど、日本語の文章が増えることになります。

研究分担者の業績も書きますが、分担者の業績が大半を占めるのはNGです。代表者の業績が少なければ、より詳細に説明することにより、スペース的には代表者がメインになるように印象付けましょう。分担者が他大学の他の専門領域の人の場合で、相補的な関係がある場合は、分担者も代表者と同じ程度にしっかりかくというのは当然のことです。

研究環境

2ページのうち1ページを遂行能力、1ページを環境に当てる人もいますが、それはバランスが悪すぎます。環境は半ページ以下で十分。4~5行でも十分です。研究遂行能力に十分なスペースを割きましょう。

経費

経費を非常に細かく人がいますが、ある程度ざっくりでも大丈夫です。分子生物学用試薬10万円など。抗体は一つ5万円くらいしますので、経費の説明で何に対する抗体かも書いたりしたほうが良いと思います。経費は雑に書いても採択される人は採択されますが、ボーダーライン上のどんぐりの背比べの中に入っている人は、少しでも印象を良くするために、経費の理由をきちんと、研究計画と整合性があるように書きましょう。誰であれ、整合性がないことを書くと、印象が非常に悪くなります。

国内学会の出張費に10万円などと書かれていると、自分はちょっと高くない?と思ってしまいます。東京の研究者が横浜の学会に行くのか、沖縄や札幌の学会に行くのかで旅費は全然違ってくるでしょうから、第XXX回XXX学会(福岡市)などと具体的に書いて常識的な経費を申請したほうが印象が良くなります。逆に海外の学会でヨーロッパ15万円などと書いていると、それで行けるの?と思ってしまいます。エコノミーの座席で格安航空券を買うにしても、宿泊代と航空運賃合わせて30~40万円はかかるのではないでしょうか。

基盤研究(C)や若手研究の助成金額の上限は500万円ですが、それを458万円などとしている人もいます。まず、金額を低くすれば採択可能性が上がるかと言うと、そういうことは全くありません。希望金額と採否は無関係です。また、採択された場合の充足率(実際にもらえる金額)は70%くらいです(最近の挑戦的研究は、100%の充足率になって、話題を呼びましたが)。真面目に書いてしまうと30%削られた金額しかもらえないので、馬鹿正直に書くより少し多めに書いておいてちょうどよくなるということは知っておくべきでしょう。採択されても30%減ということは、それくらいが誤差と考えて金額を書いてもいいのだと自分は思っています。英文校正費用が5万円で済むところを6万円と書いてもなんの問題もないでしょう。

熱量

レベルの高い競争だと、熱意があるのが当たり前なのでそこで差がつくことはないですが、若手研究くらいだと、きちんと申請書を書いていて熱意が感じられるほうが印象が断然よいと思います。採否のボーダーラインにたくさん並んでしまった場合には、熱量があるものが拾われることもあるのではないでしょうか。誠心誠意頑張っているのが伝わる申請書を採択させるという審査委員の言葉を聞いたことがあります。もちろんボーダーライン上でどんぐり状態になった場合の話だとは思いますが。熱量というのは言葉であからさまに表現するものではなくて、申請書の隅々にまで神経がいきわたっていることも、熱量を感じさせる大きな要素になります。

科研費の教科書

いちばんわかりやすい科研費申請書の教科書」(amazon.co.jp)は発売日が2023年9月7日のため、まだ中身を読んでいませんが、科研費.comさんの著作ですので期待が持てます。アマゾンで予約購入すると発売日当日に到着するように発送してもらえるようです。 買って読みました。参考になること(他の類書に書いていないこと)がいくつもあって、自分には非常に参考になりました。

科研費 採択される申請書のまとめ方」(amazon.co.jp)は、近年のベストセラーだと思います。特に審査委員がどうやって審査しているのかという実際や審査委員がどう感じるのか、どう考えるのかといったことも細かく紹介されており、それを踏まえてどのように申請書を作成すればいいのかがわかるようになっています。繰り返し読んで血肉とすべき良書でしょう。

科研費獲得の方法とコツ」(amazon.co.jp)はベストセラーかつロングセラーで、系統だって書かれた正統派教科書の趣があります。初心者はまずこれを読んでから執筆にとりかかるのが良いでしょう。それに対して、「科研費 採択される申請書のまとめ方」は、何度も応募していて書きなれてはいるけれども採択されたことがない人に一番効果がありそうです。

科研費申請書の書き方

採択される科研費申請書の作成方法:仮説を図で示そう!

科研費の申請書に研究計画を書くわけですが、分野が違う審査委員が初めてその研究テーマに関する話を読んで、スッと理解できるかというとそれは難しいはずです。どうすればスムーズに理解してもらえるのか?一番良いのは、その研究計画で検証しようとしている作業仮説の図(いわゆるポンチ絵)を示すことです。

自分のは探索型研究なので仮説がない?いやいや、むやみに探索しても結果がでるはずがありません。探索型と言いつつ、必ず何かしらの仮説が頭にあって、探索研究をやろうとしているはずです。データ駆動型研究でも同様です。ビッグデータの解析をやみくもにできるはずがありません。解析する以上なにかしらの仮説があってのことのはずです。科研費の申請書は仮説駆動型で書きましょう。論文を書くときだって、仮説駆動型で論文をつくったほうがトップジャーナルに掲載されやすくなるのは自明のことです。

作業仮説が描けない人は、多くの場合、そもそも作業仮説が頭の中でまだ固まっていないからです。白い紙を用意して、自由に描いていきましょう。何回も描きなおすのは当然のことです。そうしているうちに、自分がやりたいことや、どのステップにエビデンスがあって、どのステップがまだ未知なのか、どういう可能性があり得るのか、いろいろと頭の中が整理されてきます。この作業をやったかやらないかで、科研費の採否が決まるといっても過言ではありません。頭を使い、知恵を絞り、文献を確かめる作業なのでしんどくて当たり前です。文章を書く前に、作業仮説の図を描きましょう。いったん図が出来上がれば、あとはその図を説明するようにして本文を書いていけばいいので、本文はさくさく書けます。