申請書には、研究計画の実行可能性を示すため、研究者の遂行能力を書く欄があります。論文がいくつかある人は論文リストを見せることが多いのですが、論文が一報しかなかったり、原著英語論文が一報もない場合には何を書けばよいのでしょうか?
そもそも基盤研究(C)の場合、査読付き英語原著論文が0~1報で採択される可能性は非常に低いです。ただしゼロではありません。その場合は、審査種目(小区分)選びが重要です。0~1報の論文業績でも採択された人を自分は知っています。
若手研究の場合は、今は博士号取得者しか出せませんので少なくとも1報は論文がある(=学位論文)ということになるかと思います。ただし大学医学部の紀要に和文で博士論文を出して学位を取る人もいるかもしれませんので、英語論文ゼロで若手研究を狙うという状況もあり得るでしょう。
さて、そういう論文業績が少ない応募者がとるべき戦略とは何でしょうか?研究計画の実現可能性がどうやって測られるのかというと、予備実験データが出ているか、過去に関連する研究で論文が出ているかの2つだと思います。論文がないのなら、予備実験データを見せることは必須です。どっちもないと無理でしょう。
それで業績欄の埋め方の話に戻りますが、まず余白を作らないことです。余白=業績ゼロということです。よく、筆頭著者論文しか載せてはいけないんでしょうか?とか、学会発表は載せたらだめですよね?とか、考える人がいます。余白よりマシというのが私の答えです。余白をつくるくらいなら、臨床医なら臨床経験を語り、症例報告の論文を紹介し、学会発表や和文商業誌の論文でもいいので示すべきです。実のところ、臨床医の場合、臨床医としての経歴を最初に書いている人も(それで採択されている人も)結構います。臨床研究の場合は、臨床医であることも立派な「実現可能性の判断要素」になります。臨床医であることを明示しない限り、読み手には応募者が医師なのかどうかはわかりません。医師であることを正式に書く場所というものは申請書に存在しないからです。
論文が一報しかなければ、その論文の紹介を日本語の文章で書きましょう。論文がないならせめて熱意だけでも示すべきです。論文が多い人は、当然学会発表もしているのが普通なので、学会発表の記載は一切しなくても全く問題ありません。査読付き原著英語論文に勝るものはないからです。
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