ビタミンB12の働きと欠乏症
ビタミンB12が欠乏すると、ビタミンB12から合成される補酵素B12の不足のために、核酸合成が障害されて、巨赤芽球貧血になります。核酸合成に必要な葉酸(ビタミンB9)の不足でもやはり巨赤芽球貧血になるのでした。
ビタミンB12欠乏症になりやすい人
ビタミンB12欠乏症が起こる要因としては、1)食事からの摂取不足と、2)内因子減少による吸収能力不足、3)貯蔵量不足、という3つの可能性が考えられます。
- 畠山 生化学 医学書院 40ページ
- ビタミンB12欠乏症(悪性貧血) MSDマニュアル家庭版
ビタミンB12を多く含む食品は、魚貝類、豚や牛、鶏などの肝臓です。野菜にはほとんど含まれていません。そのため、肉を食べない菜食主義者の人はビタミンB12が不足する恐れがあり、サプリメントなどの利用が勧められます。
- 日本人成人女性ビーガンのビタミンB12摂取量の評価 (PDF) 2012 Trace Nutrients Research 29:28-31
また、胃切除や胃粘膜萎縮などによって内因子(胃から分泌されビタミンB12と結合した形で吸収される物質)の分泌が低下すると、ビタミンB12の摂取が障害されて、同様に貧血になります。
- 胃がん切除症例における術後1年の術式別貧血状態と関連栄養素の検討 JSPEN/4 巻 (2022) 3 号
- 胃切除後貧血 -ビタミンB12欠乏 検査を- 徳島県医師会 ビタミンB12の吸収には胃粘膜で分泌される内因子が必要です。このため、胃切除後や自己免疫による疾患、萎縮性胃炎では、内因子が不足してビタミンB12欠乏に至ることがあります。ただし、ビタミンB12は肝臓で貯蔵されているためにすぐに貧血になることはなく、数年後に症状が現れてきます。
- DIクイズ6:(A)胃全摘患者にメチコバールが処方された理由 日経DI2019年1月号 胃全摘患者では、内因子が完全に欠乏しており、長期的には貧血は必発 生体内補酵素型VB12製剤であるメコバラミン(商品名メチコバール他) メコバラミンの経口薬の適応症は末梢性神経障害のみであるが、同薬の注射薬にはVB12欠乏による巨赤芽球性貧血に対する効能・効果もある。そのため、経口薬についても同様の効果を期待して適応外処方されることがある。メコバラミンは内因子の有無に関わらず、濃度勾配に従って受動的に吸収 体内貯蔵分が枯渇する術後4~5年目に発症する場合が多い 、鉄欠乏性貧血は、術後比較的早期に発症 食品から摂取した鉄は、十二指腸から空腸上部にかけて吸収されるが、その際、胃酸によりイオン化される必要
ビタミンB12は肝臓に貯蔵されるため、肝臓の疾患がある人では、貯蔵量が不足してビタミンB12欠乏症になる恐れもあります。
ビタミンB12欠乏の脳症状
ビタミンB12の欠乏は貧血だけでなく、脳の機能にも影響を及ぼすそうです。
行癌で入院治療を行っている患者さんがおりました。入院当初は普通に会話できておりましたが、徐々に意味不明なことを言い出し、不穏な状態になりました。‥ 血液検査をしたら、なんとビタミンB12が低値であり、ビタミンB12が欠乏していることが判明しました。これまで、ビタミン不足によって体に症状が出てくることは知識として理解していましたが、まさかビタミンB12が不足するだけで、患者さんがここまでひどい不穏状態になるとは思ってもいなかったのです。この患者さんはビタミンB12を投与することで不穏状態が改善して、元通りの状態に回復しました。(認知症の両親との同居生活体験記(8):ビタミンB12が不足すると認知症になる?! https://onetoone-academy.jp/dementia/992/)
正確な機序は分かっていないが,コバラミン欠乏が種々の神経障害を引き起こすことが知られている.コバラミン欠乏による神経障害は男性に頻度が高く,末梢神経と脳脊髄の白質に脱髄性変化と繊維の脱落がみられ,これらは亜急性連合脊髄変性症と呼ばれる.症状は四肢の感覚異常や筋力低下,歩行障害などの末梢神経障害や認知症や精神障害などの中枢神経障害を呈し,ときに認知症などの症状の進行は急速である.
コバラミンの欠乏に先立って血清中のメチルマロン酸やホモシステインの濃度が低下することが知られており,海外においてはこれらの濃度測定はこの様な潜在性のコバラミン欠乏をスクリーニングする感度の高い指標として用いられることもあるが,本邦の日常診療では現在のところ一般的ではない.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/77/5/77_299/_pdf/-char/ja
- https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_16.pdf
- ビタミンB12欠乏症が認知症を引き起こす?原因や治療法を解説! 健達ネット
- The neuropsychiatry of vitamin B12 deficiency in elderly patients J Neuropsychiatry Clin Neurosci . 2012 Winter;24(1):5-15. doi: 10.1176/appi.neuropsych.11020052. Vitamin B12 deficiency is a common cause of neuropsychiatric symptoms in elderly persons. Malabsorption accounts for the majority of cases. Vitamin B12 deficiency has been associated with neurologic, cognitive, psychotic, and mood symptoms, as well as treatment-resistance.