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心臓の発生の分子メカニズム

発生の過程で胚の大きさが大きくなってくると、胚の隅々の細胞に酸素を供給する必要が出てきます。単細胞であれば酸素は拡散によって細胞内に取り込まれますが、胚の大きさが1㎜を超えるようになると奥の細胞は酸素が存在する外界と距離が遠すぎて物理的な拡散によって酸素を供給してもらうことは望めません。そのため、胚発生の早い段階で循環器系が機能する必要があります。種々の器官形成の中で、心臓の発生、機能の獲得が最も早いのも納得できます。

心臓になる細胞は、原始線条の時期に既に決まっています。原始線条のまわりにある細胞が内部に潜り込んで中胚葉となり、前方や側方に異動していって、さらに分化が進むわけですが、心臓になる細胞はまずPrimary Heart Fieldと呼ばれる側方の領域に左右一対としてあらわれます。それから領域が前方に伸びて左右が合わさり、一つのHeart Fieldtoなります。その時期のこの領域は、Heart Crescentと呼ばれます。

Heart field

Fig. 1. (A) Localization of heart precursors in the primary heart field during gastrulation and tubular heart formation.  (B) Expression of BMP2, Nkx2.5, GATA5, and Tbx20 during an early stage (HH stage 5) of heart field formation in the chick embryo.  https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S001216060300112X

Cardial Crescent

Cardial crescentはUの字のまがっている部分を指すので、構造としては1つのようです。しかし論文によっては、Uの字の両肩の曲がりに矢頭が2つあったりして、うっかりすると読み間違えそうになります。グーグルで”cardial crescents”で検索すると単数形に直されるので、やはり単数なのでしょう。

Figure 1The endocardium and myocardium are intimately associated during early differentiation(A) An NFATc1-nuc-LacZ embryo, E7.75, stained with X-Gal. Nuclear expression of β-gal (blue) within the endocardium of the cardiac crescent (white arrowheads). (B) An E7.75 NFATc1-nuc-LacZ embryo stained with myosin heavy chain (MHC; reddish-brown) to identify the myocardium and co-stained with X-Gal to mark β-gal+ (blue) endocardium within the cardiac crescent (white arrowheads).

Cardial CrescentとEndocardial tubesの時期

発生学の教科書やネットの説明、レビュー論文の説明をいろいろみていると、左右一対のHeart fieldが形成されその前方部分が伸びて繋がってhear Crescentと呼ばれる領域になり心臓が形成されると説明しているものと、左右一対のendocardial tubesが生じて、真ん中にきて融合して一本のチューブになると説明しているものと2種類を良くみかけます。すると、Uの字を逆向きにしたようなCrescentからなぜ2本の管になるのか、が理解できませんでした。そもそもどっちのステージが先なのかすら曖昧に感じていました。ChatGPTに訊くと、Crescentの形成が先のようです。明解な説明を探していますが、見当たらないのが不思議です。

 

心臓の発生

https://www.researchgate.net/figure/Mouse-embryos-showing-major-stages-of-heart-development-A-C-Ventral-view-of-mouse_fig2_254851589

概算要求とは

「概算要求」という言葉は、下っ端の大学人にはまったく無縁のものです。自分も長い間そんな言葉は聞いたことがありませんでした。初めて耳にしたのは、研究機関の偉い先生とたまたま何かの機会(懇親会)でお話をさせていただいたときです。大きな研究機関のトップの人達の関心事はどうやら「概算要求」をいかにして通すかということらしいということは感じ取りました。しかし、概算要求がそもそも何なのかはよくわからずじまいでした。

概算要求は各省庁が財務省に対して予算を要求して確保する過程です。なので大学のトップの先生が概算要求で頭を悩ませていたというのは、自分の大学の要求を文科省に伝えて、文部省内での優先順位を上げる努力をし、文科省がその研究領域の発展のためのお金を財務省から取ってこれるようにするということだったのだと思います。

もやもやのまま放置してきた「概算要求」ですが、改めて何のことなのか勉強しておきたいと思います。

概算要求とは

国の予算編成に先立って、各省庁毎年8月末までに財務省翌年度予算の見積りに関する資料を提出すること(https://kotobank.jp/word/概算要求-42436)

翌年度の予算編成に向け、各省庁が取り組みたい事業必要な費用の見積もりを盛り込んだ要求書を財務省に提出すること。7月に財務省が要求時のルールを示し、それに沿って8月末までに行うのが通例です。(https://www.smd-am.co.jp/glossary/YST3546/ 三菱住友DSアセットマネジメント)

令和7年度文部科学省による概算要求の内訳の一部

  1. 令和7年度概算要求のポイント84ページPDF) 文部科学省

基礎研究に関する部分を見てみます。科研費は2492億円でした。科研費以外にも大きな金額のものとして、戦略的創造研究推進事業や世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)というものがあります。戦略的創造研究推進事業というのは、科学技術振興機構(JST)が担当しているCREST, さきがけ、ERATO,ACT-Xなどの研究助成です。

基礎研究をはじめとする抜本的な研究力の向上
• 科学研究費助成事業(科研費)2,492億円(2,377億円)
• 戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)469億円( 437億円)
• 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)76億円( 72億円)

  1. 戦略的創造研究推進事業 https://www.jst.go.jp/kisoken/programs/index.html

 

概算要求の予算規模

  1. 財務省所管令和7年度概算要求をとりまとめました  令和6年8月29日 財務省 財務省所管一般会計の令和7年度概算要求の総額は、30兆7,576億円であり、そのうち、「重要政策推進枠」に係る要望は、792億円となっています。https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/budget/fy2025/20240829.html
  2. 令和7年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧 https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420668_00002.html
  3. 文科省概算要求、総額5兆9,530億円…教職調整額13%へ 2024.8.30 Fri 11:35 ReseEd 文部科学省は2024年8月29日、2025年度予算の概算要求を公表した。一般会計の歳出予算は、対前年度比11.5%増の5兆9,530億円教師の処遇改善に向け、焦点となっている教職調整額の改善などに1兆5,807億円のほか、国立大学改革の推進に1兆1,205億円を計上した。https://reseed.resemom.jp/article/2024/08/30/9384.html
  4. 文科省概算要求 研究基盤強化へ科学技術関係1兆1921億円 2019.09.06 科学新聞 文部科学省は、対前年度比12・2%(6485億円)増の5兆9689億円となる2020年度予算概算要求・要望を財務省に提出した。科学技術関係は、2169億円増の1兆1921億円で、人材・資金・環境と大学改革の一体的展開などにより、研究基盤を強化する。https://sci-news.co.jp/topics/2554/

 

概算要求と大学との関係:大学から文部科学省への要求

自分は概算要求をどうやって大学が文部科学省へ上げてていくのか、そもそもそういうものなのかも含めて全く無知なのですが、ネットの情報で参考になりそうなものを自分の勉強がてら紹介しておきたいと思います。

国立大学教授と概算要求との関係

下の説明によれば、概算要求の流れは、「研究室(研究者)⇒学部⇒大学⇒文科省⇒財務省⇒国会」となるそうです。大学が文科省に働きかけるというのは想像はできますが、実際にそういうことが行われているというのは自分は全く知りませんでした。ましてや、研究者個人が概算要求を意識して研究計画をたてて大学がそれらを集約するというのは完全に初耳で、国立大学特有のことなのか、どうなのかよくわかりません。

  • 時系列的な概算要求の流れ 1 研究室で研究計画を検討 2 各学部等で概算要求事項の検討 順位付け 3 大学本部で概算要求事項の検討 順位付け 4 文部科学省への事前ヒアリング 5 文部科学省へ概算要求 6 文部科学省内で概算要求事項の検討 順位付け 7 財務省へ概算要求 8 国会で議決
  • 概算要求は、事務職員同士の打ち合わせで要求事項が決定します。事務職員同士とは、本省の予算担当者財務省の担当者です。本省の係長や主査が、財務省の担当職員と一緒に概算要求書を作り上げます。
  • 基礎研究にこそ、国民の税金を投入する意味があるのです。
  • 基礎研究は、応用研究の前段階という意味ではありません基礎研究とは実用化に結びつくかわからない研究という意味です

https://kaikei.mynsworld.com/gaisan-yokyu/ 概算要求の方法がわからないとき、夢のある基礎研究こそ国立大学で 官公庁で働く人たちの会計実務専門サイト 誰も教えてくれない官公庁会計実務

教授にとっても、運営費交付金減少の影響は、活動の規模が縮小することにつながってしまう恐れがある。そのため、それを補うために他の方法で活動原資を獲得しようとするインセンティブを誘発する。その方法としては、概算要求関経理補助金といった大学本部を通じて獲得するものもあれば、受託研究科学研究費補助金をはじめとした各省庁から公募・配分される競争的研究資金と呼ばれるもの、また共同研究寄付金などの企業等から獲得する方法もある。

「大学改革が国立大学法人職員の役割に及ぼす影響」 松山 祐輔 https://www.kyoto.next-japan.net/wp-content/uploads/researchpaper-10matsuyama.pdf

上の資料を見ると、やはり国立大学では概算要求と個人研究者(教授)とは関連するようですね。全く知らない世界でした。

 

SNSの投稿などを見ると、(国立?)大学の事務職員の業務の一つとして概算要求の取り纏めがあるようです。

国立大学の中の事務職員にとっての概算要求とは

第 2 次大戦後ごく最近まで国立大学の予算は、国立学校特別会計制度のもとで編成され、
配分されてきた。各大学は、通常、前年の 7 月上旬に文部科学省に対して「概算要求書」
を提出して予算要求を行い、要求事項に対する文部科学省の「説明聴取(ヒアリング)」を
経て、8 月末に文部科学省から財務・総務両省に、とりまとめられた要求書が提出・説明
れる。12 月下旬には全体の予算案が編成され、1~3 月の間に国会審議を経て成立すると、
文部科学省から各大学に配分額が示されるというのが、その基本的な流れであった。

概算要求の中身はさらに「基準概算」と「新規概算」とに分けられる。このうち「基準概算」は人件費、管理運営費、積算校費など、一定の基準にもとづいて事務的に計算される、経常的既定経費の要求分を指している。「新規概算」は、たとえば、学科や研究施設、センター、講座の新設など、新たな組織や定員、さらにはその運営経費に対する予算要求である。ここで「概算要求」と呼ぶのは、その「新規概算」に関わる予算要求の問題であり、一般にも、それが概算要求の名称で呼ばれている。

第1章 概算要求の過程 天野 郁夫(国立大学財務・経営センター) 大島 真夫(東京大学大学院) https://www.niad.ac.jp/media/001/201802/ni001005.pdf

概算要求には、新規概算(新規事項)と基準概算(経常的経費)とがあるが、通常、概算要求と呼ばれるのは新規概算のことで、新しい施設・設備の要求や新たな組織機構・定員の要求である。
5月中旬から6月中旬にかけて文部省から概算要求書提出についての通知が国立大学に送付され、7月上旬には国立大学から文部省に概算要求書が提出される。

https://www.janul.jp/j/publications/reports/66/4.html

  1. 平成23年度概算要求・要望の発表を受けて 9月21日 東京大学総長 濱田 純一
  2. 長崎大学で働く若手職員たち!! 2012年06月26日 所属部署 財務部 財務企画課 財務戦略室 予算班 ◇仕事内容 ・文部科学省への概算要求や学内の予算編成・配分 https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news981.html
  3. 事務職員業務ガイド(第5版) 平成24年7月国立大学法人豊橋技術科学大学 https://www.tut.ac.jp/userfiles/file/H24gyomugaido_dai5(2).pdf

概算要求と任期と研究者

この新たな専任教員ポストは、概算要求で申請される任期付ポストで継承教員枠ではない。このポスト以外にも、第3期は助教(任期付)ポストが3名(うち2名は高等教育系、1名はインターンシップ系)、いずれも概算要求による期限付き予算で確保され、そこに着任された教員によって業務が担われた。高等教育系組織の任期付ポストに着任した教員は、教養教育機構に学内異動した専任教員も同じであったが、より安定した待遇を求めて比較的早いスパンで学外に異動した。

地方国立大学におけるセンター組織の設置・運営の変遷―A大学の事例研究から― 大学経営政策研究第13号(2023年3月発行):199-214 https://ump.p.u-tokyo.ac.jp/resource/12_bulletin13-paper.pdf

概算要求と私立大学

  • 私大連では、これまで常務理事会、理事会並びに総会において、私立大学関係政府予算に対する私立大学側要求について種々の検討を重ねるとともに、私大連と日本私立大学協会(以下、「私大協」という。)とで構成する日本私立大学団体連合会(以下、「連合会」という。)をはじめ、日本私立短期大学協会、日本私立中学高等学校連合会、日本私立小学校連合会並びに全日本私立幼稚園連合会で構成する全私学連合(以下、「全私連」という。)、文部科学省及び関係諸機関とも連携・協力し、要求にあたっての基本方針並びに要求内容のとりまとめをはじめ、文部科学省概算要求に向けた私立大学側の要求、さらに政府予算獲得の実現に向けて積極的な対策活動を展開してきた。
  • 私大連並びに連合会では、8月30日の文部科学省による財務省への概算要求の提出後も、『要望』の内容が令和5年度政府予算(案)に反映されるよう、その実現活動を展開した。

令 和 5 年 度 事 業 報 告 書 令和 6年 6月 一般社団法人日本私立大学連盟 https://www.shidairen.or.jp/files/user/r5jigyo.pdf

  1. 私立学校の教員も処遇改善へ…文部科学省、来年度の概算要求で私学補助金3%引き上げ 2024/08/23 05:00 読売新聞オンライン 文部科学省は、公立学校教員の処遇改善に合わせ、私立学校を運営する学校法人への補助金を増額する方針を固めた。2025年度予算の概算要求で、私立学校への補助金に今年度の予算額から3%増の868億円を盛り込む。
  2. 月報私学 2023年10月 Vol.310(PDF) 令和6年度私学助成関係予算の概算要求

 

概算要求に関連する参考

  1. 文科省以外の概算要求事項における大学関係予算 2017-09-21 大学職員の書き散らかしBLOG 内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金(仮称)の創設」 ‥ 気になるのは、この予算と現在募集されている私立大学等改革総合支援事業(タイプ5)との関係です。
  2. 平成30年度私学助成予算(案)~概算要求からの相違点メモ~ 2018-01-16 平成30年度の予算の資料が掲載されました。ここでは、平成29年8月に出された概算要求と比較してどうなったかを

医学教育モデル・コア・カリキュラム 令和 4 年度改訂版 研究者育成の視点の充実 リサーチマインドの醸成  医師として研鑽していくことが求められる資質・能力 科学的探究(Research)

  • 医学教育モデル・コア・カリキュラム 令和 4 年度改訂版(293ページPDF

コアカリキュラムは日本の医学教員の標準化のために策定されたものだそうです。各大学で行われる医学教育のうち3分の2はこのコアカリキュラムに準じて行い、のこり3分の1は各大学独自の教育を施すという枠組みが想定されています。

3分の2といいつつ、コアカリキュラムは実に網羅的で細かいところまでしっかりと作り込まれており、これだけで「3分の3」の内容を網羅しているように思えます。そのため、大学が独自性を出すための3分の1で何をすればいいの?と疑問を感じる大学関係者もいるようです。しかし、考え方としては、コアカリキュラムに掲載されていないことを大学独自に行うということが期待されているわけでは全くなくて、コアカリキュラムに載っていることで全然構わないので、独自性を出すためにどの部分を重視するか、重点的にやるかというスタンスでいいみたいです(以前、コアカリの勉強会・講演会で聞いた話)。

 

「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂にあったっては、いくつもの改訂ポイントがありますが、このブログikagaku.jpの趣旨である研究に関してどんなことが記述されているのか見ておきたいと思います。

医学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の概要 モデル・コア・カリキュラムの改訂においては、以下 7 つの基本方針に基づき改訂した。

  1. 20 年後以降の社会も想定した医師として求められる資質・能力の改訂
  2. アウトカム基盤型教育のさらなる展開(学修目標の再編成と方略・評価の整理)
  3. 医師養成をめぐる制度改正等との整合性の担保に向けた方策の検討
  4. スリム化の徹底と読み手や利用方法を想定した電子化
  5. 研究者育成の視点の充実
  6. 根拠に基づいたモデル・コア・カリキュラムの内容
  7. 歯学・薬学教育モデル・コア・カリキュラムとの一部共通化

改訂の7つの柱の一つとして、「研究者育成の視点の充実」ということが挙げられていました。

Ⅱ.改訂の各論 1. 改訂された 資質・能力

④ 科学的探究(Research : RE)

  • 「医学・医療の発展のための医学研究の重要性を理解し、科学的思考を身に付けながら、学術・研究活動に関与して医学を創造する。」という目的を掲げ、科学的探究心をもって日常診療に取り組む臨床医の養成も視野に、研究者育成の視点を充実化した。
  • 医学・医療の発展のための医学研究の重要性及びリサーチマインドの醸成という観点を重視し、基礎医学・臨床医学・社会医学の研究が医療の実践の基礎にあることを理解する構造とした。
  • 研究の発信研究倫理についても学修項目を設定している。

研究能力に関する分析も網羅的で詳細です。研究ないろいろな側面を言語化してくれていました。

医師として研鑽していくことが求められる資質・能力

RE: 科学的探究(Research)  医学・医療の発展のための医学研究の重要性を理解し、科学的思考を身に付けながら、学術・研究活動に関与 して医学を創造する。

RE: 科学的探究
医学・医療の発展のための医学研究の重要性を理解し、科学的思考を身に付けながら、学術・研究活動に関与
して医学を創造する。
RE-01: リサーチマインド
知的好奇心を満たす喜びとオリジナリティの重要性を知る。
RE-01-01: 能動的姿勢
RE-01-01-01 常識を疑う。
RE-01-01-02 何事にも知的好奇心を持って取り組むことができる。
RE-01-02: 探究心
RE-01-02-01 最先端の研究に刺激を受ける。
RE-01-02-02 ロールモデルとしての研究者の生き方に触れる。

RE-02: 既知の知
先人の偉業を知り、新たな発想を育む。
RE-02-01: 医学と医療
RE-02-01-01 医療の実践が基礎医学・臨床医学・社会医学の研究に基づいていることを理解する。
RE-02-02: 論文読解
RE-02-02-01 医学論文(英語)を読んで概要を理解する。
RE-03: 研究の実施
自然科学・人文社会科学の研究手法を体験し理解する。
RE-03-01: 問い
RE-03-01-01 自身の関心を問いにすることができる。
RE-03-02: 研究計画
RE-03-02-01 研究計画の素案を作ることができる。

RE-03-03: 研究手法
RE-03-03-01 基礎医学の実習から基本的な実験手技を体得する。
RE-03-03-02 社会医学(行動科学を含む)の実習から基本的な研究方法論を体得する。
RE-03-03-03 研究室配属等で医学研究の基本的な研究手法を修得する。
RE-03-04: 研究結果
RE-03-04-01 研究データを適切に記録、管理できる。
RE-04: 研究の発信
研究の意義・内容を他者に説明し討論する。

RE-04-01: 研究発表
RE-04-01-01 自身の行った研究内容を論文や報告書・学会発表等の形にまとめることができる。
RE-04-01-02 発表の場に応じて読者・聴衆にわかりやすく研究内容をプレゼンテーションできる。
RE-04-01-03 他の研究者の発表に対して質問や意見を述べることができる。
RE-05: 研究倫理
法令遵守ならびに人権尊重し、医学生として正しく行動する。
RE-05-01: 適切な研究遂行
RE-05-01-01 捏造、改ざん、盗用等を含め研究不正の類型を説明することができ、研究不正を行わない。
RE-05-02: 対象者の保護
RE-05-02-01 人を対象とした研究(治験、特定臨床研究を含む)に関するルールの概要を理解し、遵守する。
RE-05-02-02 利益相反や動物・遺伝子組み換え実験に関するルールの概要を理解し、遵守する。

132ページから事例が掲載されていて、研究室配属を具体的にどのように行えばいいかが驚くほど詳細に記載されていました。コアカリおそるべし。

事例 6.研究室配属

(1)関連する主な資質・能力/学修目標

科学的探究/ RE-01: リサーチマインド、RE-02: 既知の知、RE-03: 研究の実施、RE-04: 研究の発信、RE-05:研究倫理

(2)方略

1)概要 カリキュラムの中で一定期間、各研究室に少人数ずつ学生を配属して、研究者としての生活を体験する。この期間は通常の講義・試験は実施しない等、学生が研究活動に専念でいるように配慮し、リサーチマインドの涵養に努める。一流の研究者の謦咳に接することで、研究者の生き方を知ることができ、また、研究の楽しさ(と苦しさ)を知る機会になる。また基本的な研究手法を修得することも目標とする。

2)どのような方法で教えるのか?
3 か月間(10〜12 月)の研究室配属のカリキュラム例を以下に記述する。
4 月初旬:各研究室に対して学生向け研究室紹介文を依頼。
5 月:締め切り。
6 月初旬:研究室紹介の冊子を配布する。配属について説明する。
7 月:学生は希望する研究室を自由に見学する。
7 月末:学生の配属希望順位提出締め切り。各研究室に対して研究室に所属している学生がいるかアンケートを実施する。
8 月:配属研究室の調整。優先順位のつけ方は、研究室へのアンケートや学生の成績等を参考にする。
9 月:配属先発表。
10 月初旬:基礎講座配属開始(1 月初旬まで)。
初日:研究室教授(Principal Investigator:PI)面談。希望する研究内容等を確認して指導教員(メンター)を決定する。
1〜2 週目:メンターと一緒に行動し研究を手伝う。研究室のルールを理解し、スタッフや大学院生と交流する。歓迎会も実施する。
3 週目以後:研究室教授(PI)と指導教員が定期的に面談を実施。

週間スケジュール(例)
月曜午前:抄読会(ジャーナルクラブ)。学生も 2 か月目から担当する。
水曜:ランチミーティング。その週の実験予定、進捗状況等を、学生を交えて、研究室のメンバーが 5 分程度発表する。
金曜午後:リサーチセミナー。学生はその週の進捗状況をまとめて発表する。

学生は原則として実験ノートを毎日夕方指導教員に提出する。指導教員は記載内容を確認し、出席確認を行うとともに、フィードバックする。
12 月下旬:研究室内で研究のまとめを発表する。指導教員と研究室教授(PI)が最終評価を実施する。
12 月下旬~1 月初め:研究室配属期間の活動報告のための全体発表会のための抄録を作成する(できれば英文)。
1 月初旬:研究室配属期間の活動報告のための全体発表会を実施する。
2 月:優秀な研究発表を行った学生に対して、表彰を行う。

3)誰が教えるのか?
配属された各研究室の教員。直接的に実験等を指導する教員に加え、教授等、研究室責任者からの俯瞰的
視点からの指導も望まれる。また大学院生、同じ研究室配属の上級生等も参画する。
4)講義・実習等の時間はどのくらいか?
3 か月~6 か月の終日。
5)講義・実習等の場所はどこか?
原則としては大学内の研究室。基礎医学、社会医学だけでなく臨床医学の研究室も含める。学内の教員と
交流のある学外の研究室も選択肢とする。
6)教える学生は誰でその数は何人程度か?
学年は問わない。基礎医学・社会医学・臨床医学の授業の時期との関係性は配慮する。概ね 1 研究室 5 名
以内が妥当と考えられる。
7)カリキュラム評価
短期的には、学生の学会発表数、論文数等で評価する。
長期的には、大学院進学者数(特に基礎医学・社会医学系の大学院)、大学教員になった人数、研究者とな
った人数等で評価を行う。

8)講義・実習を行う際に必要なヒト(模擬患者含む)・モノ等は何か?
学生が利用する消耗品については配属学生数に応じて大学から補助する

(3)評価

研究室配属については、OJT であるため総括的評価に加えて形成的評価も重要となる。評価は研究室配属の学修目標として設定した内容をもとに行う(コアカリの学修目標を参照)。学生が研究計画や研究準備の段階から参画できる場合には、実際の研究者と同様の評価を受けることができる。評価者は、主として研究室責任者及び指導教員が行うが、総括的評価では学生によるピア評価も行う。日々の出席及び研究活動に加えて、研究室配属期間の活動報告のための全体発表会でのプレゼンテーションも評価対象とする。学内発表会における優秀発表に対して優秀賞を授与する。研究成果について事後に学会発表や論文発表を行った場合に
は、別途表彰を行う。

1)どのような形成的評価・総括的評価を実施するのか?

・形成的評価
・研究計画書(含倫理委員会関連書類)の作成:指導教員との討議をもとに、研究計画書の作成を行い指導教員の確認を経て当該部局に提出する。倫理委員会の許可が必要な研究については関連書類を指導教員と共に作成する。
・研究方法、研究結果に関するフィードバック:指導教員と研究方法、得られた結果について議論を行い、フィードバックを受ける。
・研究ノートの記載チェック:研究に関する日々の進捗、研究結果について研究ノートを適切に記載し、かつ研究倫理に則った内容であることのチェックを、指導教員から受ける。研究ノートについては e-ポートフォリオ等で代用することもできる。
・研究ミーティングでのプレゼンテーション、議論:自己の研究について適切にプレゼンテーション・議論を行うこと、他者の研究について適切な議論ができること、について指導教員から評価を受ける。
・抄読会、Journal Club 等で、適切な議論ができることについて指導教員から評価を受ける。
・総括的評価
・出席及び態度評価:欠席が多い場合や積極性が著しく欠如している場合等は不合格とする。
・研究準備の評価:学内規程に沿って、必要な研究倫理講習(APRIN 等)を受講し、テストに合格する。
・研究室配属の学内発表会:学内でのポスター発表・口頭発表を行う。教員及び学生(Peer)による投票を行い、優秀発表に対して優秀賞を授与する。
・研究室配属の振り返りレポート:学内発表会で指摘された質疑も含めて最終レポートを提出する。
・研究成果の学会発表:研究成果について事後に学会発表を行った場合には、別途表彰を行う。研究成果の論文発表:研究成果について事後に論文発表を行った場合は、別途表彰を行う。

2)誰が評価するのか

・実習の指導教員(総括的評価、形成的評価)
・他の指導教員(総括的評価)
・学生による相互ピア評価(総括的評価)

3)どのような場面・場所で評価するのか

・総括的評価は実習開始時の e ラーニングのテスト及び実習終了時、実習終了後、形成的評価は実習中に適宜実施する。

4)どのくらいの時間をかけて評価するのか

・研究プレゼンテーション(ポスター、口頭) 15 分
・実習中の形成的評価は適宜

5)合否判定基準をどのように設定するのか

・総括的評価にて判定する(欠席が多い場合や積極性が著しく欠如している場合等は不合格とする)。

 

福島国際研究教育機構 F-REIとは?福島版OISTなのか

福嶋国際研究教育機構とは

本機構は、福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとともに、我が国の科学技術力・産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」を目指すもの https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=4&id=D124111447

 

福島国際研究教育機構の令和6年度の研究開発等業務の運営に関する計画(年度計画) 令和 6 年 3 月 29 日 福島国際研究教育機構 (18 page PDF)

F-REIではノーベル賞を取るような研究というより、新技術を開発し、既存の技術と組み合わせながら完成させて事業化する、そしてできれば地元の産業として育てたいと考えています。

福島国際研究教育機構(F-REI)理事長、金沢大学前学長に聞く人材育成の秘訣と日本復興への課題 北陸経済研究 7 2024.1 https://www.hokukei.or.jp/contents/pdf_exl/specialtop2401.pdf

令和6年度予算概算決定及び施設整備の状況令和6年1月12日復興庁 (4 page PDF) 福島国際研究教育機構 研究費 令和6年度予算案額 99億円(令和5年度予算額 126億円)【①ロボット】 24.0億円(39.7億円)【②農林水産業】 19.2億円※(14.0億円)【③エネルギー】 31.6億円※(29.6億円)【④放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用】 16.1億円(33.7億円)【⑤原子力災害に関するデータや知見の集積・発信】 8.2億円(9.0億円) 注:( )は令和5年度予算額

  1. 2023.06.5 震災・原発事故 【福島国際研究教育機構】職員が2日で「出勤断念」【エフレイ】 政経東北 https://www.seikeitohoku.com/f-rei-high-handed-attitude-of-bureaucrats/ 「職員の多くは中央省庁からの出向組 ‥ 着任1日目の職員(当事者の中年男性)に敬語も使わず、いきなり『あんた』呼ばわりだったらしい。 ‥ とにかく、すべてが前時代の高圧的・パワハラ的対応。『この上司と信頼関係を築ける気がしない』と感じたそうです」

福島国際研究教育機構が達成すべき 研究開発等業務についての運営に関する目標 (中期目標) 令和 5 年 4 月1日 復 興 庁 文 部 科 学 省 厚 生 労 働 省 農 林 水 産 省 経 済 産 業 省 環 境 省 (16 page PDF)

 

 

役人の思いは法律に込められているんですよ。このままいったら、福島国際研究教育機構、これは単なる天下りの巣窟になっちゃう可能性だってあるんですよ。

2022-07-23 単なる国の施設でよいのか、福島国際研究教育機構

InDesignの使い方

将来出版したい書籍の原稿を書き貯めるのに、マイクロソフトのワードがいいのかグーグルドキュメントで書くのがいいのかと思ってChatGPTに訊いてみたら、それにくわえてアドビのインデザインというものがあることを知りました。

InDesignを使うと出版社に入稿するフォーマットで原稿作成ができるので、もしそこで完成形まで作れれば、いきなり本ができてしまうようです。今はキンドル書籍を自費出版するのも容易ですし、出版社を通さずに出版することは全然普通にできる時代です。

InDesignの最初の新規ファイルをブックを選んで開いたら、いきなり原稿用紙?みたいなグリッドが出てきて、その先何をすればいいのかわからなくなりました。新規ファイルを「ドキュメント」にしても、アドビイラストレーターみたいに白紙がひとつ表示されるだけで、文章をどうやって打っていくのかイメージが湧きません。

まったく使い始め方がわからないので、ここで躓くくらいならワードでもグーグルドキュメントでもいいのでとりあえず内容を書き貯めようと思いました。

 

参考

  1. https://fare.blue/2020/02/indesign-kumihan/

タンパク質の定量方法

ブラッドフォード法が良く使われています。

原著論文

A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding Marion M. Bradford Analytical Biochemistry Volume 72, Issues 1–2, 7 May 1976, Pages 248-254 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0003269776905273 本文有料

パラグラフライティングの方法:科学的な文章を書く基本技術

パラグラフライティングという言葉はすっかり巷に流布していますが、実際にパラグラフライティングが何かを知っている人はあまりいないのではないでしょうか。自分も、せいぜいトピックセンテンスをパラグラフの最初に書くやつね?くらいの認識しかありませんでした。しかし、図書館で「理系のパラグラフライティング」(羊土社)という本を見つけて開いてみたら、もっと具体的で系統だった説明がありました。その中の内容をネタに、自分なりに説明してみます。

パラグラフライティングは、お作法です。決め事があります。まず、パラグラフの第1文は、トピックセンテンスと呼ばれるものを書きます。トピックセンテンスとは、トピック(パラグラフの主題)があり、それがどうした?の部分「コントローリングアイデア」が続いて、1文になります。2文目からは、そのトピックセンテンスの主張をサポートする、サポーティングセンテンスを書いていきます。サポートの中身としては、①さらに詳細な説明、②具体例、③理由や根拠が書かれるのが一般的です。そしてパラグラフの最後は、コンクルーディングセンテンスで締めくくります。コンクルーディングセンテンスは、書かれないこともあるようです。

作法としてはこれだけなので話は単純なはずですが、「知っている」ことと「できる」こととは大違いで、実際に書いてみるとこの作法に従わない文章を平気で書いてしまうものです。

ありがちな失敗としては、まず「トピックセンテンス」がパラグラフの中に存在しないということがあります。自分がトピックセンテンスのつもりで書いていても、そうなってないようというわけです。主張+サポート(具体例)の形があることからわかるように、トピックセンテンスの主張にはある程度の「抽象性」が要求されます。最初に抽象的に書くからこそ、そのあとで具体例が書けるのです。

サポーティングセンテンスに関してもアリがちな失敗がいくつかあります。一つ目は、トピックをサポートしない情報を書いてしまう、つまり、不要なことを書いてしまうことです。知っていることは何でもつい書いておきたくなるのが人情ですが、それをやると、締まりのない文章になります。2つ目の失敗は、必要なことを書かないことです。主張をする以上、その主張が抽象的なのであれば具体例が必要ですし、その主張が直ちに読者に受入れられないようなことであれば、根拠を示す必要があります。

コンクルーディングセンテンスを書くときの失敗例としては、トピックセンテンスで述べた以上のことを書いてしまうことなどが挙げられます。最後になって突然新たな主張を始めたり、主張を拡大してみたりするのはダメよというわけです。コンクルーディングセンテンスは、内容としてはトピックセンテンスと完全に一致していないといけません。かといってトピックセンテンスをコピペしてパラグラフの最後に持って来るのも芸がありませんので、言葉を変えて表現する必要があります。

この本の教えだと第1文は必ずトピックセンテンスでありコントローリングアイデアを含めるようにとのことです。ただ現実的には、トピックがあまり読者に馴染が無い場合にはトピックの背景や詳細を説明してから、主張を書くということは普通にありますので、あまり「型にはめること」を優先してしまうと本末転倒になるのではないかと思いました。一番優先すべきは、読みやすいこと、理解しやすいこと、文章に自然な流れがあることでしょう。

理系の人に役立つパラグラフライティングの本は今まで類書を見たことがなかったので、この本はなかなか良い教材になると思います。また、学生に教える立ち場の人にとっても、演習のために使う教材、指定教科書・指定参考書になるのではないでしょうか。

脳外科医 竹田くん あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語

SNSを見ていたら、脳外科医”竹田くん”の話題が目に留まりました。知らない人のために言っておくと「竹田」は漫画の主人公の名前であって、モデルと噂されている実在する人物の実名ではありません。また実在する人物の氏名と同姓同名の医師は日本に複数おられるようですが、問題視されている医師は2024年現在、吹田市の徳洲会病院の救急科(ER)に常勤医として勤務しているそうです(下の、院長の声明参照)。この事実を知ってしまった以上、吹田市徳洲会病院は、自分だったら絶対に救急車で運ばれたくない病院になってしまいました。

 

マンガサイト

脳外科医 竹田くん あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語(漫画のサイト)

アーカイブ(月)ごとに辿ると第1話から順に読みやすいと思います。アーカイブ2023/01 【第1話】履歴書 【第2話】後継者 【第3話】初登院 【第4話】男の約束 【第5話】脳外チーム 2023 / (34) 2023 / (11) 2023 /(21) 2023 / 5 (27) 2023 / 6 (24) 2023 / 7 (15) 【第142話】霧(最終話 2023年7月22日投稿)

 

参考

  1. 民事裁判を起こしました私(医療従事者)と医誠会病院との闘いの記録(医療過誤被害に遭った患者家族のブログ)
  1. NHKクローズアップ現代 2024年11月19日 16時51分
  2. 赤穂市民病院『脳外科医 竹田くん』モデル医師、ついに法廷へ…!「ドリルで神経を巻き込んだ」痛ましい事故は「自分の責任ではない」と断言 週刊現代 2024.09.16 手術中の視野を確保するためには、止血を十分に行い、生理食塩水を使って患部周辺を洗浄する必要がある。しかしこの手術では、A医師の執刀中に血液があふれ、手術野が不鮮明になっていたことが事故の原因になったとされる。
  3. 「あのマンガは事実無根です」「メスは置いたつもり」赤穂市民病院『脳外科医 竹田くん』モデル医師が法廷で放った「驚愕の発言」をスクープする 週刊現代 2024.09.16 赤穂市民病院検証委員会外部有識者D医師が手術映像を見て報告した言葉〈L4・L5は問題ない。L2・L3(A医者の執刀部位)から操作、術野は一変した。馬尾神経に事故が起きてもおかしくない
  4. 『脳外科医 竹田くん』モデルの医師がついに「書類送検」された…渦中のA医師が直撃取材で語ったこと 週刊現代 講談社 2024.05.27 # 医療 【連続スクープ】「今回の報道で、『何があろうと病院は絶対にA先生を守る』という確約が得られたからでしょう。現場では、リスクの高い患者さんをA先生に回さないようにしています。院長や病院の方針には逆らうことになりますが、すべては患者さんを守るためです」
  5. 「ひとりずつ院長に呼び出されて…」『脳外科医 竹田くん』モデル医師を告発した、吹田徳洲会病院スタッフの「怒りと絶望」 週刊現代 2024.05.27 # 医療
  6. https://yamatotakada.blog.ss-blog.jp/2024-07-25-6
  7. 高確率で患者は死に、後遺症に苦しむ…トンデモ外科医”竹田くん”をクビにせず雇用し続ける病院の言い分 過酷な労働条件ゆえ常に医師不足に悩む「救急救命科」で働いている PRESIDENT Online 筒井 冨美 筒井 冨美 フリーランス麻酔科医、医学博士 2024/05/20 10:00 〈私は長年この病院に勤めていますが、こんなにひどい医者は初めてです。彼の力量不足とデタラメな処置で、治るはずの患者さんが、命の危機にさらされることが度重なっています。今すぐ医者を辞めてほしい。多くのスタッフが、心の底からそう思っています〉C病院スタッフによる内部告発(『週刊現代』2024年5月11日号)。
  8. 「指に針を突き刺して…」決死の内部告発!『脳外科医 竹田くん』のモデル医師が吹田徳洲会病院で「デタラメ診療」連発、院内は大混乱 週刊現代講談社 2024.05.07 「転んで顎や手を打った女性が運ばれてきました。A先生はCT検査で『異常なし』と判断し、傷を縫って帰宅させた。ですが、その後画像を確認した放射線技師が『顎の骨が折れている』と気づいたのです。‥ 緊急搬送された患者に、A先生はアドレナリン静脈注射を指示しました。ですが、アドレナリン注射は心停止の場合しか行ってはならないのが常識。スタッフが反対して事なきをえましたが、指示通りにしていれば、患者が亡くなったおそれもあります」 「発熱で運ばれてきた高齢の患者さんに、カリウム製剤を大量投与するよう指示したことです。カリウム製剤は命にかかわる副作用を起こすことがあるため、慎重に投与するのが当たり前です。」

世間から問題視されている医師は、現在、吹田徳洲会病院の救急科で常勤の職を得て働いているそうです。下の院長の声明を読む限り、院長もこの医師によるトラブルを認めており、週刊誌への告発内容には信憑性があるようです。

一部週刊誌に掲載された記事について 先日、某週刊誌に掲載された当院救急部門の ER 医師に関する記事について、これまで の経緯と現状について述べさせていただきます。 雑誌社から質問状が届きインタビューに応じました。質問された各事象については医療 過誤と言えるものが一件もないことを医学的観点から丁寧に説明し正直かつ誠実に回答し ました。しかし、記事にはほとんど反映されず、昨年夏から冬にかけて報告された内容を いたずらに曲解・誇張し、誤った誹謗中傷の情報まで記載されていました。的外れで、事 実を捻じ曲げ、悪い評判を煽るだけの今回の週刊誌編集部に対しては断固として抗議を行 うつもりです。 該当医師の ER での診療態度やスタッフとの付き合い方に問題があったのは事実です。 病院として、注意や警告も含めて何度も指導してきたつもりでしたが、その効果が出るの に予想以上に時間がかかり、ER現場のスタッフには思いがけないストレスをかけることに なってしまいました。これが今回の週刊誌へのリークに至った理由です。紆余曲折があり ましたが、ここに来て当該医師も診療態度を改め、スタッフもチーム医療を最優先とした ER運営ができるようになりました。当該医師の ER 医師としての診療能力は ER と連携す る各診療科の責任者に聞いても評価されるようになってきており、頑張ってくれている、 との声も聞こえてくるようになりました。さらに一般外来に専門医の診察を要する重症患 者さんが来られた場合にも迅速かつ的確に ER で対応できる体制となっています。 当院の ER で定期的に勤務していただいている非常勤の先生方は診療経験豊かなベテラ ン医師が多く、若い先生方も大学医局からの派遣で熱心な医師ばかりです。 常勤医としての自覚をしっかりと持つようになった当該医師が加わって、今後の当院の ER 診療は地域の皆さんの期待に今まで以上に応えることができるものと考えています。 今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。 2024 年 5 月 8 日 吹田徳洲会病院 病院長 高橋 俊樹 https://www.suita.tokushukai.or.jp/wp-content/uploads/2024/05/2208aa85824a8082645325cc76898fbd-1.pdf

  1. あだ名は「殺人鬼」手術ミス連発で患者が次々死亡…現役医師が語る「本当にヤバかった事故」「危ない医師の見分け方」 社会・政治FLASH編集部 記事投稿日:2024.02.29 06:00 SMART FLASH 患者にわいせつ行為をした小児科医や、出会い系サイトで知り合った未成年とわいせつ行為をした形成外科医がいますが、2人とも、逮捕された後も医師を続けていますからね。‥ 「外科専門医」の資格を取得しているからといって、手術の腕が保証されたわけではありません。定められた年数の経験と、研修を修了して試験を受ければ、取得できますから。‥ 「技術認定医」を取得している医師は信頼できると思います。たとえば、日本内視鏡外科学会は、手術を映した動画などをもとに、技量を審査して認定していますから。

赤穂市民病院 脳神経外科における医療事故に関する記者会見

赤穂市民病院 脳神経外科における医療事故に関する記者会見(2022年6月28日) 赤穂民報チャンネル チャンネル登録者数 483人 (2:00:58)

ヒスチジンのプロトン化の生理的な意義 

ヒスチジンは生理的なpH=7.4ではプロトン化されていませんが、弱酸性になるとプロトン化されています。

The imidazole ring in histidine exhibits a pKa value within the pH range from 5.5 to 7.4); at pH 5.0, the imidazole ring is protonated and positively charged, whereas, at pH 7.0, it is electrically neutral. https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb/44/5/44_b20-01013/_html/-char/ja

研究セミナーを聞いていたら、ヒスチジンのプロトン化がpHセンサーとして働くという例が示されていて、「へぇ~」と思いました。生き物はうまくできていますね。ヒスチジンのプロトン化は、pHセンサーとして働く意外にも、様々な重要な役割がありました。

 

酵素の活性調節

酵素の活性中心に存在するヒスチジンは、pHに応じてプロトン化・脱プロトン化しやすい性質を持ち、酸-塩基触媒として機能します。 例: セリンプロテアーゼ(例: キモトリプシン)では、ヒスチジンが触媒三重体の一部として、基質の加水分解に関与します。 **カルボン酸脱水酵素(炭酸脱水酵素)**では、ヒスチジンがH⁺の授受を媒介して反応を促進します。 意義: ヒスチジン残基のプロトン化状態が変化することで、酵素反応の速度や特異性が制御されます。

  1. Cancer-associated arginine-to-histidine mutations confer a gain in pH sensing to mutant proteins Science Signaling 5 Sep 2017 Vol 10, Issue 495 DOI: 10.1126/scisignal.aam9931  Given that histidine residues are critical in proteins that respond to changes in pH, White et al. looked at two proteins that frequently have Arg-to-His mutations in tumors and found that a rise in intracellular pH conferred these mutants with oncogenic effects. Molecular modeling of the growth factor receptor EGFR suggested that the mutation stabilizes the kinase in an active conformation, but only when the cells have a high pH.
  2. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0021925820447714

 

pHセンサーとしての機能

ヒスチジンは、側鎖のpKaが約6.0と生理的pH(7.2〜7.4)に近いため、小さなpH変化に敏感に反応します。 例: イオンチャネルや輸送体タンパク質では、ヒスチジンがpH変化を感知して活性を調節します。 **pH感受性Gタンパク質共役受容体(GPCRs)**では、ヒスチジン残基が細胞外のpH変化に応答します。 意義: 組織や細胞環境の酸塩基平衡を感知することで、生体の恒常性維持に寄与します。

  1.  A Transmembrane Histidine Kinase Functions as a pH Sensor Biomolecules . 2020 Aug 14;10(8):1183. doi: 10.3390/biom10081183. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32823946/
  2. Protonation of Individual Histidine Residues Is Not Required for the pH-Dependent Entry of West Nile Virus: Evaluation of the “Histidine Switch” Hypothesis J Virol. 2009 Sep 23;83(23):12631–12635. doi: 10.1128/JVI.01072-09 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2786769/ Histidine residues have been hypothesized to function as sensors of environmental pH that can trigger the activity of viral fusion proteins.
  3. Histidine-Proline-rich Glycoprotein as a Plasma pH Sensor THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 273, No. 10, Issue of March 6, pp. 5493–5499, 1998 https://www.jbc.org/article/S0021-9258(18)67800-7/pdf

 

金属イオンとの結合

ヒスチジンは、プロトン化状態によって金属イオン(Zn²⁺, Cu²⁺, Fe²⁺など)への親和性が変化し、タンパク質の構造や機能に影響を与えます。 例: ヘモグロビンでは、ヒスチジンが鉄(Fe²⁺)と結合し、酸素結合に寄与します。 メタロ酵素(例: カルボン酸脱水酵素やスーパーオキシドジスムターゼ)では、金属イオンとの結合を通じて触媒活性を発揮します。 意義: 金属イオンの結合や解離を調節し、酵素の触媒機能や基質特異性を制御します。

 

タンパク質間相互作用の調節

ヒスチジンのプロトン化状態が変化すると、分子間の静電相互作用や水素結合の形成が変化し、タンパク質間相互作用を調節します。 例: シグナル伝達経路の中で、タンパク質の結合部位のヒスチジンがプロトン化状態を変えることで結合強度が調整されます。 ヒスチジンリン酸化(プロカリオットでよく見られる)は、細胞内シグナル伝達に関与します。 意義: タンパク質の動的な挙動や複合体形成に重要です。

 

タンパク質の構造変化と機能調節

プロトン化されたヒスチジン残基は、タンパク質の三次構造や四次構造を安定化または不安定化する場合があります。 例えば、酸性環境下では、ヒスチジンのプロトン化により静電相互作用が変化し、タンパク質のフォールディングやアンフォールディングに影響を与えます。 pHに依存したタンパク質の構造変化や機能調節に寄与しするという意義があります。

  1. Protonation State of a Histidine Residue in Human Oligopeptide Transporter 1 (hPEPT1) Regulates hPEPT1-Mediated Efflux Activity Biological and Pharmaceutical …/ 2021 年 44 巻 5 号 p. 678-685 https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb/44/5/44_b20-01013/_html/-char/ja

 

細胞内外のpH調節

ヒスチジン残基がプロトンの供与体または受容体として働き、細胞内外のpH調節に関与します。 例: ヘモグロビンのボーア効果では、ヒスチジンのプロトン化状態が酸素解離能を調節します。 意義: 酸素輸送や代謝調節において重要な役割を果たします。

 

その他の参考論文

  1. A pH-sensitive histidine residue as control element for ligand release from HLA-DR molecules December 5, 2002 99 (26) 16946-16950 https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.212643999
  2. https://elifesciences.org/articles/29002

総説論文(review article, reviewpaper)の種類9個とそれぞれの特徴

総説論文(review article, review paper)には、目的や形式によっていくつかの種類があります。総説論文を書く際には、そもそも自分はどの種類の総説論文を書こうとしているのかを決める必要があります。逆に自分が総説論文を読む場合には、その総説論文がどの種類に該当するものなのかを素早く見抜く必要があります。

総説論文の種類に関して、代表的なものを見てみましょう。

Narrative Review(ナラティブレビュー)

特定のトピックに関する研究を包括的にまとめて、そのテーマの全体像を提示してみせるようなレビューはNarrative Review(ナラティブレビュー)と呼ばれます。ナラティブレビューの特徴としては、 執筆者の独自の視点に基づいているということが上げられます。つまり、ナラティブレビューを書く人が自分で問題意識を持ち、問題設定をしてそれに基づいて文献を調べてまとめるというものです。ナラティブレビューは主観的な要素が強く、 レビュー論文を書くにあたって文献をどのようにして系統的に検索したかという方法を示すことは要求されていません。注目した論文の選び方にそもそも主観が入るというわけです。

 

Systematic Review(系統的レビュー)

Systematic Review(系統的レビュー)というのは、特定の研究課題について、事前に定めた方法論に基づき、系統的に客観性をもった手順で文献を収集し、評価し分析してかかれたレビュー論文です。その特徴:としては、明確なリサーチクエスチョンが設定されます。その際には、いわゆるPICOなどのフレームワークが利用されます。また、文献検索のプロセスは詳細に記載されるのが普通です。

 

Meta-Analysis(メタアナリシス)

Meta-Analysis(メタアナリシス)は文字通り「分析」であり、系統的レビューの一部として行われることが多いです。全ての系統的レビュー論文がメタアナリシスを含むというわけではありません。逆に、メタアナリシスが必ず統計的レビューの一部とうわけでもなく、すでに統計的レビュー論文が存在する場合に、その統計的レビュー論文に基いてメタアナリシスを実施して、「メタアナリシス論文」として発表されることもあります。

統計的手法を用いて複数の研究結果を統合・解析するレビューであるという特徴があります。 とくに、定量的な結果を導き出すことが目的です。異なる研究論文を比較することにより、一貫性や総合的な効果を検討します。

 

Scoping Review(スコーピングレビュー)

Scoping Review(スコーピングレビュー)は、設定したテーマに関して全体的な範囲を探索し、主要な概念、証拠の種類、研究ギャップなどを特定するためのレビュー論文です。 特徴としては、メタアナリシスにみられるような厳密な評価や統合を必ずしも目的としないということがあります。 例えば、「人工知能を用いた医療診断に関する研究の現状」といったテーマがスコーピングレビューとしては考えられます。

スコーピングレビューとナラティブレビューの共通点として、どちらも広範なトピックを扱い、特定のテーマについて包括的に情報を収集し、全体像を示すことを目的としているということがあります。また、メタアナリシスのような厳密な統計解析を行わず、定量的な統合は行わないこと、質的な情報を主に扱うことにおいても共通しています。系統的な手法が必須とはされておらず、: スコーピングレビューもナラティブレビューも、方法論的には柔軟なアプローチがとられます。

スコーピングレビューがナラティブレビューと異なる点はいくつかあります。まず、目的が明確に異なります。ナラティブレビューでは、知識の整理やトピックの概要を提供するという目的があります。執筆者の主観に基づき、情報の解釈や選択が行われます。それに対して、スコーピングレビューではトピックの範囲をマッピングすることに焦点を当てます。「何がわかっているか」「研究のギャップはどこか」を明らかにすることはスコーピングレビューの目的です。スコーピングレビューは、ナラティブレビューに比べて、もっと構造化された方法論を用いることが求められます。またその方法論の記載すんわち、透明性も要求されます。スコーピングレビューでは、系統的レビューほど厳密ではないものの、文献検索の手順や選定基準を明示することが求められます。

スコーピングレビューは、研究分野がまだ発展途上であり、系統的レビューを行うのに十分なエビデンスが揃っていない場合に特に有用とされます。それに対して、ナラティブレビューは、発展段階に関わらず幅広いテーマで行われることが多いといえます。

スコーピングレビューもナラティブレビューも、とられる方法論に柔軟性があること、定量的な分析を伴わないこと、研究のギャップの特定や広範な概要を示すことなどはナラティブレビューの目的と重なることから、スコーピングレビューをナラティブレビューの一形態とみなす場合もあり得ます。

Critical Review(クリティカルレビュー)

Critical Review(クリティカルレビュー)は、執筆者が選んだトピックに関連する文献を批判的に評価することにより、現在受け入れられている仮説を見直して、新たな洞察や解釈を提供するレビュー論文です。 クリティカルレビューの特徴は、過去に行われたそれまでの研究に対して批判的に解釈し、研究に関する改善の提案、新たな仮説の可能性の提示を行うものです。クリティカルレビューにおいては、 執筆者の分析力や理論的な視点・考察が重要になります。

 

Mini Review(ミニレビュー)

ミニレビューは話題を限局し、特定の側面について簡潔にまとめたレビュー論文です。 通常、1,000~3,000語程度の短い記事になります。新規性の高いトピックや急成長している分野で執筆されることが多い種類の論文です。

 

Umbrella Review(アンブレラレビュー)

アンブレラレビューとは、複数の系統的レビューやメタアナリシスを統合し、広範なテーマについて俯瞰的な結論を導き出すレビューです。「レビューのレビュー」ともいえます。そのため、エビデンスレベルが高い論文とされます。

 

State-of-the-Art Review(ステート・オブ・ザ・アートレビュー)

文字通り、特定の研究分野の最前線の進展や知識をまとめたレビュー論文になります。 最新の研究成果に焦点を当てているという特徴があります。 将来の研究課題や展望を示すことが多いです。例えば、「量子コンピューティングの現状と未来」といったテーマがありえます。

 

Historical Review(ヒストリカルレビュー)

ヒストリカルレビューとは、特定のトピック・分野の歴史的な発展を追ったレビュー論文です。 時系列に沿って知識や理論の進展を記述するという特徴があります。 現在の理解に至った歴史的経緯、背景が書かれます。「がん研究の歴史的展望」といったテーマが例としてありえます。