パラグラフライティングの方法:科学的な文章を書く基本技術

パラグラフライティングという言葉はすっかり巷に流布していますが、実際にパラグラフライティングが何かを知っている人はあまりいないのではないでしょうか。自分も、せいぜいトピックセンテンスをパラグラフの最初に書くやつね?くらいの認識しかありませんでした。しかし、図書館で「理系のパラグラフライティング」(羊土社)という本を見つけて開いてみたら、もっと具体的で系統だった説明がありました。その中の内容をネタに、自分なりに説明してみます。

パラグラフライティングは、お作法です。決め事があります。まず、パラグラフの第1文は、トピックセンテンスと呼ばれるものを書きます。トピックセンテンスとは、トピック(パラグラフの主題)があり、それがどうした?の部分「コントローリングアイデア」が続いて、1文になります。2文目からは、そのトピックセンテンスの主張をサポートする、サポーティングセンテンスを書いていきます。サポートの中身としては、①さらに詳細な説明、②具体例、③理由や根拠が書かれるのが一般的です。そしてパラグラフの最後は、コンクルーディングセンテンスで締めくくります。コンクルーディングセンテンスは、書かれないこともあるようです。

作法としてはこれだけなので話は単純なはずですが、「知っている」ことと「できる」こととは大違いで、実際に書いてみるとこの作法に従わない文章を平気で書いてしまうものです。

ありがちな失敗としては、まず「トピックセンテンス」がパラグラフの中に存在しないということがあります。自分がトピックセンテンスのつもりで書いていても、そうなってないようというわけです。主張+サポート(具体例)の形があることからわかるように、トピックセンテンスの主張にはある程度の「抽象性」が要求されます。最初に抽象的に書くからこそ、そのあとで具体例が書けるのです。

サポーティングセンテンスに関してもアリがちな失敗がいくつかあります。一つ目は、トピックをサポートしない情報を書いてしまう、つまり、不要なことを書いてしまうことです。知っていることは何でもつい書いておきたくなるのが人情ですが、それをやると、締まりのない文章になります。2つ目の失敗は、必要なことを書かないことです。主張をする以上、その主張が抽象的なのであれば具体例が必要ですし、その主張が直ちに読者に受入れられないようなことであれば、根拠を示す必要があります。

コンクルーディングセンテンスを書くときの失敗例としては、トピックセンテンスで述べた以上のことを書いてしまうことなどが挙げられます。最後になって突然新たな主張を始めたり、主張を拡大してみたりするのはダメよというわけです。コンクルーディングセンテンスは、内容としてはトピックセンテンスと完全に一致していないといけません。かといってトピックセンテンスをコピペしてパラグラフの最後に持って来るのも芸がありませんので、言葉を変えて表現する必要があります。

この本の教えだと第1文は必ずトピックセンテンスでありコントローリングアイデアを含めるようにとのことです。ただ現実的には、トピックがあまり読者に馴染が無い場合にはトピックの背景や詳細を説明してから、主張を書くということは普通にありますので、あまり「型にはめること」を優先してしまうと本末転倒になるのではないかと思いました。一番優先すべきは、読みやすいこと、理解しやすいこと、文章に自然な流れがあることでしょう。

理系の人に役立つパラグラフライティングの本は今まで類書を見たことがなかったので、この本はなかなか良い教材になると思います。また、学生に教える立ち場の人にとっても、演習のために使う教材、指定教科書・指定参考書になるのではないでしょうか。