未分類」カテゴリーアーカイブ

上司とのコミュニケーションを円滑にして自分の思い通りの結果を得る方法

組織内で仕事をする際に、上司の全面的な支援が必ずしも得られるとは限りません。その場合の対処法としては、上司になんとかして動いてもらうか、少なくとも了承してもらう必要があります。そのためにはどうすればよいのでしょうか。

その解決策を提示する本というものが結構な数出版されていました。

「困った人たち」とのつきあい方  1997/6/1 ロバート・M. ブラムソン Robert M. Bramson

究極の人間関係改善術 職場の「苦手な人」を最強の味方に変える方法 2019/5/17 片桐 あい

上司をマネジメント 2007/9/1 村山 昇

トップ3%の人は、「これ」を必ずやっている 上司と組織を動かす「フォロワーシップ」2020/2/28 伊庭 正康

その上司、大迷惑です。 困った上司とかしこく付き合う傾向と対策 2007/8/17 松井 健一

職場のクセモノと付き合う技術 2019/3/16 横山 信治

バカ上司の取扱説明書 (SB新書) 出版年: 2018/9/6 著者:古川 裕倫 出版社 ‏ : ‎ SBクリエイティブ

難しい性格の人との上手なつきあい方 2001/2/1 フランソワ ルロール, クリストフ アンドレ

あなたが上司から求められているシンプルな50のこと  2012/4/17 濱田 秀彦

ソーシャルスタイル理論でわかった! 10万人のデータから導き出した 上司へのすごい伝え方  2021/4/17 斉藤 由美子

職場の嫌いな人の取り扱い方法 2006/7/1 小林 惠智

できる人はやっている上司を使い倒す50の極意 田中和彦 祥伝社 出版年月:2014年06月

上司とうまくいかなくて会社を辞める前に試したい10のコミュニケーション術。 10分で読めるシリーズ  江戸しおり、 MBビジネス研究班 出版社:まんがびと

ある抗原を認識したB細胞の増殖を促すヘルパーT細胞はどうやってその同じ抗原を認識できるのか

抗原刺激を受けたBCRを持つB細胞の増殖をヘルパーT細胞が促すわけですが、このヘルパーT細胞はどうやって同一の抗原を認識するのでしょうか。免疫学の教科書を読んでいて、そこが良く理解できませんでした。

たいていの免疫学の入門用の本では、ヘルパーT細胞はサイトカインをだしてB細胞を元気づけるような図が書いてあります。しかし、それでは、どうしてはしか攻撃隊のT細胞がはしか攻撃隊のB細胞だけを選んで指令を伝えられるか、説明になっていません。免疫学を勉強したというひとでも、この原理を理解していないひとが多いように思います。(抗原の情報はどうやってT細胞からB細胞へ伝わるの? 河本宏研究室)

自分の疑問はどうやらもっともな疑問のようです。もう少し具体的にいうと、リッピンコットの教科書の145ページに、B細胞と抗原提示細胞の絵が描いてあったのですが、この抗原提示細胞はこのB細胞と同一ではないの?別の細胞なの?という疑問が湧いたわけです。B細胞が同時に抗原提示細胞にもなっているのであれば、おなじ抗原を認識するT細胞が、その抗原を認識する免疫グロブリンを産生するB細胞の増殖を促進させるということで説明ができるのにと思ったわけです。しかし、この図10.18だと細胞が別に描かれていました。

ただこの可能性に関していうと、かりにB細胞が抗原提示細胞をかねたとしても、MHCクラスII分子にのせて提示するペプチドの由来となる抗原タンパク質が、BCRが認識する抗原タンパク質と同一である保証はありません。細胞のまわりにある抗原はたくさんの種類があるでしょうから、同一になる保障は全くないはずです。

上のウェブ記事を読むと、説明がありました。抗原提示細胞は樹状細胞などのようです。ある抗原が提示されてそれに反応するT細胞が「活性化」します。同じ抗原をB細胞もBCRで認識できたとすると、それを細胞内に取り込んで、B細胞も抗原提示を行います。すると樹状細胞による抗原提示で刺激を受けたT細胞がその細胞の抗原提示に対して反応することができますので、このヘルパーT細胞はそのB細胞の増殖を指令することができるということのようです。だとするとリッピンコットの教科書はそのあたりの詳細が省かれていたということのようですね。

Janeway’sの免疫学の教科書にはこのあたりの説明が非常に詳細に述べられていました。原書第9版の邦訳版ですが、第10章液性免疫応答で図10.2(400ぺージ)の左側の図や、図10.4(403ページ)などがわかりやすいです。上記の説明と同じことが図10.4に表現されていました。


(Janeway’s Immunobiology 9th edition Fig.10.4 / https://o.quizlet.com/wYER2UCvgzRKGNdj0tpH.g.png)

ウイルスを認識する例ですが、B細胞の細胞膜上のBCRはウイルスの表面のタンパク質を認識しています。そしてエンドソームとしてこのウイルスを取り込み、分解してウイルス内部のタンパク質の一部のペプチドをMHCクラスII分子との複合体として膜表面に提示します。すると、たまたま同じ抗原ペプチドを樹状細胞によって提示されていたものに反応したCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)が、このB細胞による抗原提示を認識することができます。面白いのは、B細胞のBCRが認識する部位と、B細胞が抗原提示する抗原(すなわちヘルパーT細胞が認識する抗原)とは、別々であっていいということです。免疫系ってうまくできているなあと感嘆してしまいました。また、さすが定評のある教科書だとJaneway’sにも関心してしまいました。案外とここまで明確に図と文で説明してくれている教科書は少ないです(もしくは、説明がどこかにあってもそれを見つけられない)。

抗原はB細胞により認識され、抗原提示細胞はCD+T細胞に対してペプチドを提示する。B細胞とT細胞は同一のエピトープを認識する必要はない。(リッピンコット免疫学145ページ図10.18 図中の説明)

リッピンコットの教科書にも、BCRが認識するエピトープとヘルパーT細胞が抗原提示細胞提示されて認識するエピトープとは異なる部位であってもよいという説明がありました。リッピンコットの教科書は、このようにメリハリの効いた言葉による説明があるので、自分は頭に入ってきやすいように思います。

 

 

 

クラススイッチ(アイソタイプスイッチ)とは

クラススイッチとは

クラススイッチ(Immunoglobulin class switching)とは、免疫グロブリンの定常領域(Fc領域)が変化することです。ナイーブB細胞(刺激を受ける前のB細胞)は、IgMやIgDの膜結合型の分子を細胞膜表面に発現しています。抗原による刺激を受けたナイーブB細胞は、形質細胞へと分化しますが、一部は記憶B細胞(memory B cell)となります。将来、同じ刺激を受けた記憶B細胞は、T細胞からのサイトカインに応じて、クラススイッチを起こします。クラススイッチは、アイソタイプスイッチとも呼ばれます。クラススイッチを起こすのはB細胞であって、T細胞ではこのようなことは起こりません。

クラススイッチという呼称をよく聞きますが、リッピンコットの免疫学の教科書ではアイソタイプスイッチという言葉を使っていました。

クラススイッチを生じる遺伝子再編成

クラススイッチは、遺伝子の再編成が起きることによります。第14染色体にはH鎖の遺伝子群がありますが、200個以上のL/V遺伝子、20個以上のD遺伝子、6個のJH遺伝子、9個のC遺伝子がこの順に並んでいます。クラススイッチを決める部分はC遺伝子で、細かくみるとCμ、Cδ、Cγ3,Cγ1、Cα1,Cγ2,Cγ4,Cε、Cα2の9個の領域がこの順に並んでいます(それぞれ、IgM, IgD, IgG3, IgG1, IgA1, IgG2, IgG4, IgE, IgA2に対応)。DHーJHの次に位置する領域が何かでクラスが決まります。遺伝子が再編成されていないときはC遺伝子の一番左端にあるのはCμなので、クラスはMです。クラスDをつくるためには、遺伝子再編によってCδが一番左にくるように、その間にあるDNAの領域が除去されます。他のクラスをつくるときも同様で、間のDNAが除去されます。例えば、IgA2のクラスをつくりたい場合には、遺伝子再編成によりゲノムはVDJのすぐ隣にCα2の領域が直結するように、間の部分のDNAが除去されます。

クラススイッチの方向性

、Cδ、Cγ3,Cγ1、Cα1,Cγ2,Cγ4,Cε、Cα2という順番からわかるように、最初IgMを産生するB細胞だったものが、遺伝子再編成を経てIgG3産生細胞になり、さらに遺伝子再編成を経てIgG2産生細胞になり、さらにIgA2産生細胞になるという経過をたどることが可能です。

参考

  1. リッピンコット 免疫学 原書2版 邦訳 110ページなど

ナチュラルキラー(NK)細胞(natural killer cells)とは

ナチュラルキラー(NK)細胞(natural killer cells)とは

自然免疫のシステムは、可溶性物質による防御機構と、細胞性の防御機構がある。細胞性の防御機構としては、貪食細胞による貪食や、NK細胞による攻撃がある。

末梢のリンパ球のうち、T細胞 (CD3をマーカーとして発現)でもB細胞(マーカーとして免疫グロブリンを発現)でもない集団があり、それがナチュラルキラー細胞(末梢のリンパ球の5~10%)。前感作なしである種の腫瘍細胞を殺すことができることから、この名前がついた。

ウイルスに感染した細胞はストレス分子MICAやMICBを発現する。またMHCクラスI分子の発現量が減少する。NK細胞のキラー活性化レセプター(killer activation receptor)は、MICAやMICBと結合し、キラーシグナルを生み出す。また、NK細胞のキラー抑制性レセプター(killer inihibition receptor)は、MHCクラスI分子と結合することにより、MHCクラスI分子の発現量をモニターする。MHCクラスI分子が十分発現していれば、先のキラーシグナルを抑制する。不十分であればキラーシグナルが優勢となり、NK細胞が宿主細胞を死に至らしめる。

参考

  1. リッピンコットシリーズ イラストレイテッド免疫学 原書第2版

MHC restriction(MHC拘束性)とは?

MHC restriction(MHC拘束性)とは

MHC分子の溝の部分に、抗原となるペプチドが結合し、その両者をT細胞の抗原受容体が認識するのでした。このようなときに、もしMHC分子が他人のMHC分子だったとすると、もはやこのT細胞受容体は、この抗原ペプチドを認識しなくなります。あくまで同一個体内のそのMHC分子とその抗原ペプチドの組み合わせを、そのT細胞受容体が認識することができたのです。このように、他人のMHCだと認識しないということをMHC拘束性と呼んでいるそうです。そのようなことになる理由は、T細胞の発生・成熟過程にあります。

成熟したT細胞は「制の選択」を受けた際に使われたMHCと同じ表現型のMHCによって提示される抗原ペプチドしか認識することができなくなる。(免疫学コア講義)

  1. 矢田純一 医系 免疫学 改訂16版 中外医学社 第5章リンパ球の働き 3.T細胞の抗原認識 84ページ
  2. 免疫学コア講義 南山堂 改訂4版 第5章 主要組織適合遺伝子複合体 28ページ

MHC拘束性 というのは MHC restrictionの訳ですが、MHC restriction の意味を理解するにはrestrictという動詞の意味をわかればよいです。A is restricted to B.でAがBの範囲内に制限されているという意味です。Smoking is restricted to that room.(アルクの例文)という例文を考えるとわかりやすいでしょう。何が、何の範囲に制限されているのかというと、T細胞による抗原ペプチドの認識が、「自己のMHCに結合しているペプチド」の範囲に制限されているということです。つまり、他己のMHCに結合しているそのペプチドは認識できないのです。

Survival of naive T cells depends on the interaction of the TCR with MHC molecules of the same allele/isotype they were restricted to in the thymus.(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2585836/)

日本語訳の「拘束性」というのはちょっとわかりにくいです。「ある範囲に制限されている」と理解したほうが、自分はしっくりきます。

It is known that during the education of T lymphocytes in the thymus, T cells are MHC restricted i.e. they only recognize self MHC complexed with peptides. (https://www.riverpublishers.com/journal_read_html_article.php?j=IJTS/2016/1/003)

別の文例も見ておきます。

The fact to be explained is that the recognition of peptide (P) is a signal via the TCR only when it is coordinated with the recognition of a given allele of the MHC-encoded restricting element. (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2464364/)

もう一つ別の表現。CD1a分子は非古典的MHCクラスI分子に分類されるものですが、CD1aが提示する抗原しか認識しないという制限がかかっている場合に、CD1a-restrictedという言い方をします。MHC restrictionやMHC-restrictedという言葉遣いと同じ考え方によるものです。

CD1a is expressed on Langerhans cells (LCs) and dendritic cells (DCs), where it mediates T cell recognition of glycolipid and lipopeptide antigens that contain either one or two alkyl chains. We demonstrate here that CD1a-restricted T cells can discriminate the peptide component of didehydroxymycobactin lipopeptides. (Molecular Mechanism of Lipopeptide Presentation by CD1a 2005年)

参考文献など

  1. A Disquisition on MHC Restriction and T Cell Recognition in Five Acts. Viral Immunol. April 2020; 33(3): 153–159. Published online 2020 Apr 15. doi: 10.1089/vim.2019.0182. The seminal discovery in the early 1970s, credited to Peter Doherty and Rolf Zinkernagel, of major histocompatibility complex (MHC) restriction exhibited by cytotoxic T cells represented a major conceptual advance in understanding antigen recognition by conventional T cells.
  2. Major histocompatibility complex class I-restricted alloreactive CD4+ T cells. Immunology. 2004 May; 112(1): 54–63. doi: 10.1111/j.1365-2567.2004.01857.x PMCID: PMC1782457 PMID: 15096184 Although it is well established that CD4+ T cells generally recognize major histocompatibility complex (MHC) class II molecules, MHC class I-reactive CD4+ T cells have occasionally been reported.

T細胞の分化・成熟、正の選択、負の選択、T細胞受容体(TCR)の構造、TCRシグナリングの多様性

T細胞の分化・成熟

T細胞は胸腺で分化・成熟します。T前駆細胞(prothymocyte)は胸腺に移住して、胸腺細胞thymocyteとしてTCRを発現します。また全てのT細胞はCD3を発現します。つまりCD3はT細胞のマーカーになります。CD4・CD8ダブルネガティブな状態から、CD4・CD8ダブルポジティブな状態へと遷移したのち、T細胞受容体(TCR)を発現するようになります。その後CD4シングルポジティブ(ヘルパーT細胞)またはCD8シングルポジティブ(細胞傷害性T細胞)になります。

  1. 骨髄の造血幹細胞からT細胞の前駆細胞が分化
  2. T細胞の前駆細胞が血液に入り、胸腺に移住 前胸腺細胞prothymoctyeと呼ばれる。
  3. 前胸腺細胞prothymoctyeは、最初はまだCD4,CD8,CD3,TCRを発現していない。
  4. (CD4,CD8ダブルネガティブ)細胞。
  5. 前胸腺細胞prothymoctyeが増殖して、CD4,CD8,CD3,TCRを発現する。(CD4,CD8ダブルポジティブ)細胞。
  6. 胸腺の皮質の部分で皮質上皮細胞によって正の選択をうける。すなわち、MHCとペプチドの複合体(pMHC)と結合しないものは、3~4日で死ぬ。(TCRの可変領域が自己のMHCと結合できないT細胞は死ぬ。自己のMHCを認識できる細胞のみが生き残る。)
  7. pMHCクラスI分子と結合できた細胞はCD8細胞になる。pMHCクラスII分子と結合できた細胞はCD4細胞になる。(シングルポジティブ)
  8. 正の選択で生き残ったT細胞(胸腺細胞)は、皮質ー髄質の境界に移動し、負の選択を受ける。すなわち、自己抗原+MHCの複合体に強く結合する細胞はアポトーシスで死ぬ。自己抗原を認識するT細胞は死ぬということ。
  9. 成熟T細胞として胸腺から出て、循環血中に入る。

骨髄や胸腺は、「一次リンパ器官」と呼ばれます。骨髄は全てのリンパ球が生まれる場所であり、胸腺は一部のリンパ球が「訓練を受ける場所」、また、他のリンパ球は骨髄で「在宅訓練」を受けます。一次リンパ器官を卒業したリンパ球は、外で仕事をすることになります。

  1. リッピンコット イラストレイテッド免疫学 原書2版 丸善出版 (邦訳)90ページ、122ページなど

Differentiation of mature T cells from immature precursor cells in the thymus is dependent upon signals transduced by surface TCR components and is reflected in changing thymocyte expression patterns of CD4 and CD8 surface coreceptor molecules. The earliest precursor thymocytes are CD48 (double negative [DN]) and are signaled in the thymus to differentiate into double-positive (DP) thymocytes (Robey and Fowlkes 1994). Most thymocytes progress no further than the DP stage of development, as their differentiation into mature CD4+8 (CD4SP) or CD48+ (CD8SP) single-positive (SP) T cells requires engagement of surface αβTCR complexes by intrathymic MHC/peptide self-complexes (2728114). Differentiation of immature DP thymocytes into mature SP T cells is referred to as “positive selection” and requires termination of one or the other coreceptor molecule. The choice of which coreceptor molecule to extinguish is referred to as “lineage commitment” (Janeway 1988) and is a critical one for signaled DP thymocytes, as a functionally competent immune system requires each T cell to express TCR and coreceptor molecules with concordant MHC specificities (Ellmeier et al. 1999). That is, immunocompetence requires that TCR with specificity for MHC class II (MHC II) antigenic complexes be expressed on CD4 SP T cells, while TCR with specificity for MHC class I (MHC I) antigenic complexes be expressed on CD8 SP T cells. (Coreceptor Reversal in the Thymus: Signaled CD4+8+ Thymocytes Initially Terminate CD8 Transcription Even When Differentiating into CD8+ T Cells. Immunity Volume 13, Issue 1, 1 July 2000, Pages 59-71)

  1. T細胞はどこでどのようにつくられるの?(河本宏研究室)

正の選択

胸腺で、胸腺上皮細胞は「MHC分子+自己抗原」を細胞表面に呈示しており、T細胞がもしこれを「ゆるく」認識できれば、合格です。将来、なにかしら外来の抗原とこのMHCが結合していた場合には、強く結合できる可能性があるからです。これが正の選択。

  1. (4) どうやって役に立つ細胞を選んでいるのか 9.T細胞はどこでどのようにつくられるの? 一般の方向け記事:免疫のしくみを学ぼう! 河本宏研究室 京都大学

負の選択

胸腺上皮細胞が提示する「MHC分子+自己抗原」に、T細胞受容体が強く結合してしまうと、それは自己を攻撃してしまうことになって困るため、そんなT細胞は死んでもらうことになります。これが負の選択。

  1. (4) どうやって役に立つ細胞を選んでいるのか 9.T細胞はどこでどのようにつくられるの? 一般の方向け記事:免疫のしくみを学ぼう! 河本宏研究室 京都大学

T細胞受容体(TCR)の構造

T細胞受容体は、α鎖とβ鎖が合わさったヘテロ二量体です。遺伝子組み換えによって多様性が作り出されて、一つ一つのT細胞が異なる反応性をもったT細胞受容体をもっています。MHCが提示するペプチドを認識するのがこのT細胞受容体(TCR)の先端部分。

T細胞受容体はCD4陽性とCD8陽性の2種類あり、CD4やCD8はMHCと結合することができます。CD8はMHCクラスI分子を認識します。MHCクラスI分子は全ての有核細胞(つまり、核をもたない赤血球を別として、体の全ての細胞)で発現しているので、CD8陽性T細胞は全ての有核細胞を認識することができます。それに対して、CD4はMHCクラスII分子を認識することができますので、MHCクラスII分子を発現する特別な細胞すなわち、樹状細胞、マクロファージ、単球、B細胞をCD4陽性T細胞が認識することになります。

TCRは細胞膜に埋め込まれて細胞の外側に飛び出している構造をしており、細胞質の内部にシグナルを伝えることが単独ではできません。そこでTCRのシグナルを細胞内につたえる仕事をする分子が必要となりますが、その役割を担うのがCD3複合体です。CD3複合体は、ζ鎖のホモ二量体(別名CD247)、ε鎖γ鎖、ε鎖δ鎖からなります)。

TCRシグナリングの多様性

T細胞は複数の細胞内情報伝達系を備えており、刺激に応じて異なる情報伝達経路が作動して、異なる細胞応答を示します。

多数の役者が登場するので、頭の中でしっかり整理しておかないと、わけがわからなくなります。

CD4陽性T細胞の場合ですが、

  1. まずT細胞受容体(TCR)が、ペプチドを提示しているMHCクラスII分子と結合する
  2. CD4がMHCクラスII分子と結合して、T細胞と相手の細胞との間の結合を安定化する
  3. CD4ともともと結合していたチロシンキナーゼLckがCD3複合体のITAMモチーフをリン酸化する
  4. リン酸化されたITAMモチーフに、ZAP-70チロシンキナーゼが結合し、CD3ζ鎖2量体のITAMモチーフをリン酸化する。また、ホスホリパーゼCγ(PLCγ)をリン酸化する。
  5. PLCγは、細胞膜に存在するPIP2DAGIP3とに分解する。
  6. IP3は細胞内のカルシウムストア上にあるIP3受容体Caチャンネルに結合して開口させ、カルシウムイオンを細胞質内へ放出させる。
  7. DAGはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する。
  8. PKCはIκB(inhibitor of NFκB)をリン酸化し、IkBから転写因子NFkBを引き離す。
  9. DAGとカルシウムイオンはプロテインフォスファターゼであるカルシニューリンを活性化する。
  10. カルシニューリンは転写因子NFATを活性化する。
  11. NfKBおよびNFATは核へ移行し、種々の遺伝子の転写を誘導する。
  12. ZAP-70チロシンキナーゼは、LAT(Linker of activation for T cell)をリン酸化し、リン酸化されたLATはグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)のであるrasracを活性化する。
  13. rasやracは、Ras-MAPKカスケードを活性化するなどしてAP-1転写因子ファミリーを活性化する。
  14. AP-1は核に移行し遺伝子発現を制御する。

信号情報伝達系はZAP-70の2つの働き(PLCγのリン酸化と、LATのリン酸化)により、2つの情報伝達経路に分岐します。

参考

  1. リッピンコット イラストレイテッド免疫学 原書2版 丸善出版 平成25年 139ページなど
  2. 自己免疫疾患における翻訳後修飾によるT細胞シグナル伝達の調節  松井 幸英  桑原 卓  近藤 元就 抗原を認識したTCRの細胞質領域で最初に生じる反応はSrcファミリータンパク質チロシンキナーゼであるLckの活性化である.
  3. ヒト制御性T細胞は通常型T細胞におけるT細胞受容体誘導性Ca2+、NF-κBおよびNFATシグナル伝達を速やかに抑制する Sci. Signal., 20 December 2011 Vol. 4, Issue 204, p. ra90 [DOI: 10.1126/scisignal.2002179]
  4. T Cell Activation Annu Rev Immunol. 2009 ; 27: 591–619. This year marks the 25th anniversary of the first Annual Review of Immunology article to describe features of the T cell antigen receptor (TCR). doi:10.1146/annurev.immunol.021908.132706.
  5. T細胞活性化の時空間的制御機構 生物物理58(1), 005-011(2018) T細胞は抗原認識受容体=T細胞受容体(TCR)を介して,さまざまな応答を起こす.たった1種類の受容体からなぜこのような多様性が生まれるのか.この理由として,TCR 下流のシグナルが,Ras–MAPK経路,カルシウム―カルモジュリン―カルシニューリン―NFAT経路,NF-κB 経路,アクチン重合,フォスファチジルイノシトール3リン酸―Akt–mTOR経路などの複数のシグナル伝達経路へと分岐し,さらに補助刺激受容体やサイトカイン受容体からのシグナルが修飾することがあげられる1).
  6. T-Cell Receptor (TCR) の概要 ThermoFisher Scientific
  7. T細胞受容体シグナル伝達
  8. 免疫・アレルギーの理解のためのT細胞学 日耳鼻 114: 539―546,2011 「他領域からのトピックス」
  9. T Cells and MHC Proteins Molecular Biology of the Cell. 4th edition.
  10. Major Histocompatibility Complex Restriction (ScienceDirect)

 

胸腺(きょうせん)とは?T細胞の分化成熟の場所

胸腺とは

胸腺は胸骨の裏にある組織で、骨髄で作られた未熟なリンパ球(Tリンパ球*)が正常に働くようにする役割を担っています。胸腺の機能は幼児期まで活発に働き、思春期で最も大きくなり、その後は年齢とともに萎縮していき、脂肪組織と置き換わることで周囲の脂肪組織と見分けがつきにくくなります。(胸腺腫と胸腺がん 国立がん研究センター 東病院)

胸腺におけるT細胞の分化成熟

胸腺内におけるT細胞分化の過程で生じる重要な現象は、1)T細胞受容体遺伝子の再編成、2)自己MHCを認識するTCRを発現するT細胞の選択(正の選択)、3)自己抗原を認識するTCRを発現するT細胞の除去(負の選択)、4)CD4およびCD8の発現である。(自己免疫疾患をより良く理解するための免疫学 JBスクエア)

Tリンパ球はおおまかにはウイルスやがん細胞を攻撃する細胞障害性T細胞CD8T細胞)と、他のリンパ球の働きを手助け・調節するヘルパー-T細胞CD4T細胞)に分けられます。(胸腺腫と胸腺がん 国立がん研究センター 東病院)

 

HLAとMHCの違い?

免疫学の知識が断片的かつ曖昧なままだと、HLAとMHCが似ているけどどう違うの?といったぼやけた疑問が頭の中で停留した状態になっています。MHC IとMHC IIの違いなども、あやふやです。一度、整理してスッキリさせる必要があると思いました。

MHC (Major histocompatibility Complex)主要組織適合性複合体とは

免疫学の本質的な部分は、自己と他己との区別です。じゃあ、自分と他人との違いはどこにあるのでしょうか。いわゆる遺伝的な多型というものがどんなタンパク質の一次構造にもあり得るわけですが、それをおいておけば、人間は他の動物のものとは異なる、人間独自のタンパク質(アミノ酸配列)をもっています。違っている部分というのは、一体どこにあるのかというと、非常に限られた部分なわけで、それがMHCなんですね。ヒトという「同種」なのに、他の個体にとって抗原となるようなもの、それがMHCです。

人と人との間で臓器移植を行った場合に、単純にそのまま移植すると、移植拒絶反応がおきます。拒絶反応を引き起すということは、組織適合性がなかったということです。この組織適合性を決めるのが、すなわちMHCになっているのが、人間の場合はHLAという遺伝子です。

勉強を始める前に抱いた疑問、「MHCとHLAとの違いは何か」というと、ヒトの場合同じと考えてよいよです。MHCは動物種を問わない概念の名称(もしくはその概念を体現している遺伝座の名称)であり、ヒトにおいてMHCの中にはHLA遺伝子が含まれます。HLAはHuman Leukocyte Antigenの略で、このことば自体、概念をも表しています。ちなみに人のMCHはHLAと呼ばれますが、マウスの場合はH2と呼ばれています。

比較的最近の論文のイントロダクションにMHCが何かということがわかりやすく説明されていました。

The Major Histocompatibility Complex (MHC) region on the short arm of chromosome 6 has consistently emerged in all of these studies as the most polymorphic region in the human genome. Spanning about 4 Mb, the MHC contains over 160 genes including the human leukocyte antigen (HLA) Class I and Class II genes, thus allowing this genomic region to play a central role in regulating the human immune system as well as in determining the compatibility of organ transplants, susceptibility to infectious and autoimmune disorders and adverse reactions to pharmacologic agents. (Mapping the genetic diversity of HLA haplotypes in the Japanese populations Scientific Reports volume 5, Article number: 17855 (2015))

じゃあ、MHCのM、「主要」という言葉は何?と気になります。実は、組織適合性をきめる遺伝子の中の、主要なものなので、主要組織適合性複合体と呼ばれるわけです。ということは、主要ではないものも当然あります。それは、minor (副)という言葉をつかって、副組織適合抗原(minor histocompatibility antigen)と呼ばれます。副組織適合抗原というのも「概念」でもあって、じゃあ、ゲノムのなかのどの遺伝子だといわれると困るわけです。副組織適合抗原となる遺伝子は、あちこちにあって、まだ見つかっていないものもある可能性があります。つまり、主要組織適合性複合体が完全に一致した人同士で臓器移植をしても、まだ、移植拒絶が完全には抑制できないため、その原因として、主要以外の組織適合性が問題になるのだろうということで、副組織適合抗原の存在が仮定されているというわけなのです。

組織適合遺伝子座は複数あり、おそらく100以上存在する。その代表が主要組織適合遺伝子複合体major histocompatibility complex (MHC)にコードされるMHCクラスI分子とMHCクラスII分子である。‥ 非MHC組織適合抗原については、ほとんどわかっていない。(リッピンコットシリーズ イラストレイテッド免疫学)

HLA遺伝子の構造はというと、クラスI, クラスII、クラスIIIと領域がわかれていて、クラスIの中にはA,B,C,E,F,G,H,J,Xという領域がさらにあります。クラスIIの領域の中にはさらに細かくDP,DN,DMDO,DQ,DRと言う領域があります。HLA-Aは人によって多様性があってA1, A2, A3, A9, A1, A210, A203など名付けられていて数十種類あります。よって、ヒトによってこの組み合わせがことなるので、一本の染色体(父おや由来または母親由来)のHLAの「型」があることになりますが、これをHLAハロタイプと呼びます。HLAハロタイプの種類は、数万におよぶため、HLAハロタイプが一致する赤の他人に出会う確率は、数万分の一しかありません。兄弟の場合は、父親から同じハロタイプを受け継いだ可能性は二分の一になります。一卵性双生児の場合は、ハロタイプは一致します。

参考図書

  1. 矢田純一 医系 免疫学 改訂16版 中外医学社 第18章 輸血と臓器移植 904ページ~
  2. リッピンコットシリーズ イラストレイテッド免疫学 原書2版 丸善出版 第17章 移植 270ページ~

MHCの構造

MHC分子の最大の特徴は、なんといってもその抗原提示機能にあります。そのため、MHC分子の表面部分は、αヘリックスが2つならんで間に大きな溝の部分をもつ立体構造を持っています。

  1. PDBj入門 主要組織適合性複合体

MHCとHLAがなぜごっちゃになっていたのかというと、ヒトのMHCがHLAで、HLA遺伝子からつくられるタンパク質がMHCクラスI分子であったりMHCクラスII分子であったりするからだったんですね。概念の名前、遺伝子座の名前、タンパク質分子の名前が、そもそもこんがらがっていたのです。

MHCの2つの役割

MHCの役割を勉強するにあたって、MHCの2つの役割を把握しておくことが大事だと思います。一つは、ハロタイプによって個人が「識別」されていること。そして、このことがまさに、他人の臓器が移植された場合に、自己と他己との違いになるメカニズムであること。2つ目は、抗原ペプチドを提示する機能をMHC分子が持っていることです。

  1. 免疫学コア講義 南山堂 改訂4版 第5章 主要組織適合遺伝子複合体 28ページ

T細胞による抗原認識

自分が面白いなあとおもうのは、B細胞による抗原認識と、T細胞による抗原認識とが、抗原タンパクの立体構造を認識するのかそれともタンパク質の一次構造を認識するのかという違いがある点です。

B細胞の場合は、立体構造が保たれたままの抗原を、B細胞膜上に発現している抗原受容体(sIgM)が認識して、そのB細胞のクローンが増殖して抗体を産生します。

T細胞が「一次構造」認識するということの意味は、抗原となるタンパク質はペプチドに分解されてそのペプチドがMHC分子表面の空隙に結合してT細胞に提示されるということを意味しています。ペプチドはもはやもともとのタンパク質の一部として存在していたときの立体構造の情報は持っていないというわけです。

Alpha-beta T cells are unique in expressing antigen receptors that do not recognize 3-dimensional conformational antigenic shapes but instead recognize linear antigenic peptides bound to molecules of the Major Histocompatibility Complex (MHC). (Research Topics Thymic selection of MHC-restricted and MHC-independent T cell receptors Alfred Singer, M.D. Senior Investigator)

抗原は、「B細胞およびその表面抗体(sIgM)」と「T細胞上のT細胞受容体」の2種類の異なる工程によってホストに認識されます。B細胞もT細胞も同じ抗原に反応しますが、反応するのは抗原分子上の別々の部分です。B細胞の表面にある抗体は、タンパク質の立体構造を認識することができます。一方、T細胞では、抗原が抗原提示細胞によって取り込まれ、認識可能なフラグメントに分解される必要があります。一般的な抗原提示細胞は、マクロファージや樹状細胞です。(【研究ツールとしての抗体技術】抗原とエピトープ M-Hub)

  1. 技術用語解説 抗原決定基(エピトープ) 橘田 和美

MHCクラスI分子とMHCクラスII分子

すべての有核細胞は、MHCクラスI分子を持っていて、細胞内の抗原物質をペプチドに分解し、MHCクラスI分子とともに提示します。また、樹状細胞、マクロファージ、B細胞は、MHCクラスIIも発現していて、外来性の抗原ペプチドをMHCクラスIIとともに提示します。(MHCとは?MBL)

上の説明を読むと核をもたない赤血球を別として、体の全ての細胞はMHCクラスI分子を持っていて、「細胞内」のタンパク質を分解してMHCクラスI分子とともに提示するようです。これは異物としてではなくて、「自己」を提示しているという意味なのでしょうか。『免疫ペディア』(第9章移植免疫 1.MCH(HLA) 160ページ 及び288ページ)を読むと、MHCクラスI分子はほとんどの細胞で発現していて、細胞内で分解されたタンパク質のペプチド断片(自己抗原またはウイルス由来)をCD8陽性T細胞に提示し、細胞傷害性であるCD8陽性T細胞がその提示している細胞を殺すということみたいです。MHCクラスI分子はCD8と結合性があり、MHCクラスII分子はCD4と結合性があるため、このような選択的な会合ができるのですね。

ウイルスに感染した細胞がどうして、細胞傷害性T細胞によって殺されるかというと、こういう仕組みがあったからなのでした。がん化した細胞がT細胞により除去される仕組みも同じです。

 

HLAは個性や行動に関係するか

HLAが数万種類も自己の多様性があるのなら、人間の多様な個性と相関することはないでしょうか。

  1. Influence of HLA on human partnership and sexual satisfaction. Sci Rep. 2016; 6: 32550. Published online 2016 Aug 31. doi: 10.1038/srep32550 PMCID: PMC5006172 PMID: 27578547
  2. It Is Not You Who Chooses Your Partner… But Your HLA Genes! 24/10/2018

脳梗塞の診断と治療:経皮的脳血栓回収療法(カテーテル)coreとpenumbra

脳梗塞について

脳梗塞におけるキーワードとして、Ischemic core(コア)とpenumbra(ペナンブラ)、collaterals(コラテラル)等があります。以下の動画で説明されています。

Ischemic core and penumbra | Circulatory System and Disease | NCLEX-RN | Khan Academy khanacademymedicine チャンネル登録者数 164万人

  1. アテローム性脳梗塞とラクナ脳梗塞 (河村循環器病クリニック 神戸市灘区)
  2. ちょっと気になる画像講座①~脳梗塞ってどこ見ればわかるの??(みどり病院 神戸市西区)脳梗塞は血栓の大きさ、詰まる範囲や場所によって大きく3タイプに分類されます。 ラクナ梗塞 アテローム血栓性脳梗塞 心原性脳梗塞 *説明文や写真の例や模式図が非常にわかりやすい
  3. time is brain” (Youglish.com 26件)

脳梗塞の画像診断法

  1. 血栓を観る:最新の脳梗塞画像診断 井上学 血栓止血誌017;28(3):289-296
  2. [特集]脳血管障害の画像診断(PART 1) ラジオロジー 21 2013年
  3. 急性期結構再建療法と画像診断 平野 脳循環代謝 第26巻 第2号

RAPID

  1. 脳梗塞治療の診断をより効果的に iSchemaView RAPIDを導入しました 2020年08月05日 健和会大手町病院 福岡県北九州市小倉北区大手町

血栓回収療法とは

  1. 血栓回収療法(治療の解説 中村記念病院 札幌市中央区)脚の付け根の血管から脳動脈までカテーテルを通し、脳塞栓症を引き起こした血栓を、血管内から回収する治療です。

脳卒中救急

  1. 常時待機の脳卒中救急で医師の疲弊をどう防ぐ 血栓回収療法の普及に対応できるシステムの構築が必要に 学会トピック◎第78回日本脳神経外科学会学術総会  2019/10/30 日経メディカル 急性期脳梗塞に対する血栓回収療法の有効性が証明され、我が国でも血管内治療の全国的な普及を目的とした脳卒中センターの指定が始まろうとしている。 ‥ 同病院がある神戸市の人口は約150万人。救急隊から直接連絡が入る脳卒中ホットラインがあり、平均すると1日に2例は脳卒中患者が救急搬送されてくる。脳主幹動脈閉塞(LVO)で血栓回収療法を行う症例はここ3~4年で急増し、2018年は96例に及んだ。

急性期脳梗塞における画像診断から治療までの流れ

  1. 急性期脳梗塞における画像診断から治療までのパスウェイ (レクチャー動画リンクあり)成清 道久(川崎幸病院脳血管センター) Session 1 わが国において脳梗塞を含む脳血管疾患は死因の第3位であり,寝たきり(要介護5)の原因の第1位となっている。‥ 急性期脳梗塞の画像診断においては,ischemic penumbraischemic coreという概念が重要となる。ischemic penumbraは,脳血流量(CBF)が20mL/100g/分を切り,電気的活動が停止して脳梗塞に陥っている領域で,神経脱落症状として麻痺などが生じる。ischemic coreは,CBFが10mL/100g/分を下回って虚血性脱分極となり,神経細胞死に陥った領域である。このような虚血コアは従来,ASPECTS(Alberta Stroke Program Early Score)としてCTの早期虚血変化(early ischemic change,early CT sign)やMRIの拡散強調画像(DWI)で評価してきた ‥ 灌流画像の重要性が再認識され,海外では主にCT perfusionを用いて評価が行われている。‥ 国内では灌流画像の解析システムが普及していないことから,グレーディングの評価項目では虚血コア体積MRI ASPECTSを併記している。‥ 急性期脳梗塞と診断された患者は,検査後そのままカテーテル室へ移動し,血栓回収療法を施行する。 ガイドラインでは,搬送から画像検査まで30分,穿刺までを60分で実施し,90分以内に再灌流を得ることが推奨されている ‥ 当院では,画像処理ワークステーション「Vitrea」に搭載されたベイジアンアルゴリズムのソフトウエア“Brain Perfusion Bayesian”にて灌流画像評価を行っている。

参考

  1. コラムその15 バイパスを造らずに脳の血行をよくする
  2. 『脳梗塞は治る病気へ、脳出血の治療開発はこれから』 国立循環器病研究センター 私が研修を開始した1994年は「脳卒中は治らない病気」から「脳卒中は治る病気」に変わる分岐点でした。‥ 1995年に米国からアルテプラーゼによる血栓溶解療法の効果を証明する試験結果が発表され、救急治療対象への大きな流れの変化が起こりました。現在、わが国でもアルテプラーゼによる血栓溶解療法ステント型血栓回収デバイスなどによる血栓回収療法標準治療となり、脳卒中の約7割を占める脳梗塞は治る病気になったのです。
  3. 認知症 脳血流SPECT 読影のポイント 日本メジフィジックス株式会社医療関係者専用情報