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発生に必要な細胞生物学の知識の速習

発生学は細胞がどのようにして組織や器官を構築するかという話なので、細胞生物学の知識が不可欠です。具体的にいうと、組織を構成する細胞や細胞外基質、細胞の構造、細胞小器官、生体を構成する分子(タンパク質、脂質、核酸、糖質)、といったことです。

発生学はボディプランの形成であったり各臓器の形成過程が主要なテーマですが、発生学の応用例として再生医学も重要なトピックです。再生医療のおける今一番のトピックは京都大学の山中伸弥先生が発見してノーベル賞を受賞したiPS細胞(induced pluripotent stem cells)です。iPS細胞の発見は、最終的に分化した細胞が再び多能性を持った状態に戻ることはないという常識をひっくり返す大発見でした。数学なら数百年前に発見されたことが今でも真実として成り立ちますが、生物学という学問はちょっと特殊で、それまで常識とされていて授業でもそう習っていたようなことが、新発見によって覆るということが起こりえます。常識を覆す研究成果はたいていの場合ノーベル賞授賞の対象になります。

人間は誕生後に成長して老いていきますが、変化し続ける過程ととらえれば、老いも発生学の範疇と言えます。また発生学は遺伝子の働きで説明されることが多いわけですが、遺伝子の多様性が個の多様性を生み出すそのメカニズムも広い意味で発生学といえます。もちろん遺伝子の差だけでなく環境要因の差およびそれらの相互作用が、個体差を生み出す原因だと考えられます。

発生学は何を学ぶ学問かといえば、たった一個の細胞である受精卵が38週間後にどうして赤ちゃんとして誕生してくるのかその途中の過程で起きていることを知りたいということです。人間の体は37兆個の細胞からなると言われますが、2の46乗が70兆なので、たかだか46回受精卵が細胞分裂を行なえば、数的には足りるわけです。しかし、数が増えても人間の体にはなりません。

細胞が分裂するだけでなく、種類も変わる必要があります。人間の体には数百種類の細胞があるとされているので、細胞が分裂するだけでなく、どうやって異なる種類の細胞に変化するのか(細胞分化 と呼びます)が大事です。さらに細胞がバラバラに存在しても人間の体にはならないので、細胞同士が接着して組織をつくり、組織が臓器の形をつくり、それが器官系として機能する必要があります。個々の細胞や、全体としての器官系が、与えらえられた機能を果たす必要もあります。例えば神経系は、感覚を感じ、情報を処理し、運動を司らないといけません。循環器系であれば、心臓がポンプとして血液を押し出して全身にくまなく供給する必要があります。

そうやって複雑な営みを絶え間なく行っている人体ですが、それが受精卵というたった一個の細胞から出発したということは、今でこそ当たり前ですが、二千年以上にわたる科学の歴史なかにおいては、全く当たり前でありませんでした。

前成説

人間の体はどのようにして出来上がるのか?昔の人は、精子もしくは卵子の中にすでに小さな人間の体をしたものが入っていて、それがそのまま大きくなるだけではないかと考えていました。小さな人間のかたちをしたもの homunculus(ホムンクルス)と呼ばれる、小人が精子の中に存在すると考える学説は精子論 spermismと呼ばれ、逆に卵子の方に入っていると考えた学説はovismと呼ばれていました。16席や17世紀ころまでの千数百年間は、今から考えるとばかばかしいかもしれないようなこういう学説が、信じられていたのです。

後成説

前成説に対して、人間の体はもとからそんな形をしていたのではなく後から出来上がってきたのだという学説もあり、それは後成説(こうせいせつ)と呼ばれます。古くは古代ギリシャの時代、当代きっての偉大な科学者であったアリストテレスは、人間は肉体と魂から成り立っているのだから、母親が物質である肉体を月経の血の塊として提供し、それに父親が魂を与えることに人間が作られてくるという説を唱えました。その後、千数百年の間は、前成説が優勢でしたが、顕微鏡が発明されて、発生の過程を顕微鏡で観察できるようになってまた後成説が盛り返します。例えばニワトリの卵で胚発生を観察したヴォルフという人は1759年に発生論という書物を出版して、ニワトリは最初からニワトリの形をしているわけではなく、最初は小さな球体(原基)として生じて、その後に構造が作られてくると唱えました。

顕微鏡で細胞が分裂して増える様子も観察できるようになり、植物や動物の体は細胞からできているという細胞説が確立します。またウィルヒョーという人は、細胞は無から生まれることはなく、かならずもともとあった細胞が分裂することで生じるという説を唱えました。

人間の体も細胞からなりたっており、それらの細胞は何もないところから生まれたのではなくて、もともとあった細胞が分裂して増えて出てきたのだとすると、分裂する一段まえ、さらにその段階の細胞が分裂する前の段階、と順々に時間をさかのぼっていくと、やがて一番大元の段階で存在していた細胞に辿り着くはずです。つまり、「体は細胞からできている」ことと、「細胞は細胞からしかつくられない」ことを合わせると、人間の体は最初はたった1個の細胞から出発していたという仮説がなりたつわけです。そう考えると上記の2つの学説は非常に強力な主張をしているといえます。

動物の体は細胞と細胞外基質からできている

さて、動物の体は細胞からできているという「細胞説」ですが、現在の観点でもう少し正確にいうなら、動物の体は細胞と細胞が分泌した細胞外基質からできているというべきでしょう。

皮膚に関して考えてみましょう。肌の表面をルーペで見ても、細胞の形は見当たりません。皮膚は本当に細胞からできているのでしょうか?皮膚の断面を考えると、細胞が見えてきます。皮膚の一番外側は実はケラチノサイトという扁平な細胞が死んで重なっている状態です。生きたケラチノサイトはその下にいます。また活発に分裂している細胞はさらにその下側に存在しています。皮膚の外側はそうして細胞がぎゅっと詰まって存在しており、その部分は表皮と呼ばれます。それに対して、表皮の内側の部分は細胞はあまり密には存在しておらずまばらです。まばらな細胞の間の空間は何が埋めているかというと、細胞が分泌したコラーゲンという線維が存在しているのです。つまり細胞外基質です。この部分は「真皮 dermis」と呼ばれます。

電子顕微鏡で真皮の部分をみてみると、線維芽細胞という細胞のまわりにコラーゲン線維がみえます。コラーゲン線維はいろいろな方向にむいているので、たまたま繊維方向の切断面をみれば繊維状に形がみえますし、線維方向の垂直な断面を観察すると線維のひとつひとつが粒粒の断面として見ることができます。

皮膚は細胞でできているということはわかりました。人間の体のほかの部分も本当に細胞からできているのでしょうか?筋肉はどうでしょう?

筋肉はアクチン線維とミオシン線維が整然と並んだ構造をしています。その線維の束の外側には核が存在しており線維のひとまとまりが一つの細胞です。筋線維の断面を観察してみると、それぞれの筋線維の束のそばには核が染まってみえます。筋線維の周りには細胞外基質が膜をつくって取り囲んでいます。

筋肉も細胞でできていることがわかりました。では骨はどうでしょう?骨の堅い部分は、骨細胞(こつさいぼう)が分泌したコラーゲン線維のまわりにリン酸カルシウムが沈着して固くなったものです。骨の断面を観察すると、やはり骨細胞が観察されます。自分が分泌した骨の部分に埋もれてしまう形で細胞が存在しているのです。

さて、人間の体はどの部分をとってみても細胞と細胞外基質から成り立っているということが納得してもらえたでしょうか。

人の発生

YOUTUBEには人の受精卵が細胞分裂する(卵割という)様子のビデオがいくつかあります。これらは人工授精して実験用のシャーレの中で育てたものです。倫理的な問題からずっと発生を進めさせることはできないので、だいたい5日目くらいまでしか観察されていません。

ivf embryo developing over 5 days by fertility Dr Raewyn Teirney Fertility Doctor and IVF Specialist Sydney チャンネル登録者数 2130人

最初の5日で、細胞分裂を何回かして、2種類の細胞、「内部細胞塊」と「栄養膜」とに分かれるのがわかると思います。また、途中で、外側の細胞同士がキューっとピッタリ接着される現象、コンパクション、も認められます。

受精卵は2週間もすると羊膜腔(ようまくくう)と卵嚢(らんのう)という2つの袋が合わさったような構造になり、その2つの袋がくっついた部分が二層性胚盤になります。受精後3週間めには中胚葉が形成されて三層の構造になります。

将来人間になるのはどの部分かというと、1週目でいうと内部細胞塊の部分です。2週目でいうと、二層性胚盤の部分です。3週目でいうと三層性胚盤になっている部分です。その部分がどんどん人間らしい形に発生していきます。5週目には手や足のもとになる部分が「出芽」してきます。7週目には指ができています。8週目にはだいぶ人間らしい形になっています。ちなみに受精後8週目までを胚子期と呼びます。胚子期以降は、胎児期と呼ばれ、基本構造はもう出来上がっているのであとはひたすら成長して大きくなる、そんな時期になります。

発生時期の数え方

 

間質、間葉、間充織、結合組織の違い

間質とは

  1. 全身すべての臓器、組織は実質と間質によって構成されています。臓器、組織機能の中心となっている部分が実質であり、その周辺にあり実質を支持する部分が間質です。 https://interstitial-literacy.org/

間質細胞とは?

間質細胞 Stromal cell は、上皮細胞の支持組織を構成する細胞の総称であり、具体的には、線維芽細胞、免疫細胞(リンパ球や好中球,マクロファージなど),血管内皮細胞,平滑筋細胞などを含みます。、実質細胞を支える細胞という見方もできます。

  1. https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/index.html?id=815
  2. https://ja.wikipedia.org/wiki/間質細胞

間葉とは

間葉系細胞とは

間葉系細胞と、間質細胞とは同じものを指す言葉のようです。

  1. 間葉系細胞」とはいわずに当時「間質細胞」といわれていました。いまでも私は細胞と細胞の間を埋めているという語感があって、「間質細胞」という言葉が好きなんですよ。https://www.terumozaidan.or.jp/labo/class/26/interview02.html

間充織とは

間充織は、間葉のことです。生物学の業界では「間充織」という言葉を使いますが、医学の業界では同じものを指すのに「間葉」という言葉を使います。不思議なことに両者を統一しようという動きはありません。それは恐らく、医学者と生物学者があまり交わらないからでしょう。

結合組織とは

結合組織は、広い意味で使われた場合、骨、歯、軟骨、脂肪、腱、靱帯、真皮、皮下組織、内臓にあるリンパ組織、血液などの組織を指します。狭い意味で使う場合には、骨、歯、軟骨、脂肪、血液を除きます。

  1. https://www.e-kanpo.jp/saibou/saibou5.php

間葉系間質細胞とは

間葉系細胞に分化する間葉系幹細胞からできた間質のこと。

  1. https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/index.html?id=3715

間葉系幹細胞(MSC)とは

  1. https://www.terumozaidan.or.jp/labo/class/26/interview02.html
  2. 中胚葉由来の組織である骨や軟骨、血管、心筋細胞に分化できる能力をもつ幹細胞 https://www.healthcare.nikon.com/ja/ss/cell-image-lab/glossary/msc.html

micro RNAのヒトの発生における役割

2024年ノーベル医学生理学賞は、マイクロRNAの発見者2人Victor AmbrosとGary Ruvkunに授与されました。そもそもmicro RNAとは何でしょうか?比較的最近見つかったものなので、知らない人も多いかもしれません。マイクロRNAは標的となるmRNAに結合して、そのmRNAからの翻訳を抑制します。このような翻訳調節機構はそれまで全く知られていなかったので、非常に新しいものでした。線虫に特有な現象なのではないのかという懐疑的な見方もあったかもしれませんが、その後、実はマイクロRNAによる翻訳調節機構は、ヒトを含む哺乳類にまで共通する、非常に普遍性の高い仕組みだということがわかり、その意義の大きさが認識されるようになったのです。

  1. From Worm Anomaly to Nobel Prize  Oct 21, 2024 https://www.the-scientist.com/from-worm-anomaly-to-nobel-prize-micrornas-show-macro-impact-72260

世界で最初に見つかったマイクロRNAは、線虫のlin-4と呼ばれるものでした。lin-4が抑制するmRNAは、lin-14と呼ばれる遺伝子のmRNAです。ノーベル財団の受賞理由の説明が非常にわかりやすいと思います。

Announcement of the 2024 Nobel Prize in Physiology or Medicine Nobel Prize チャンネル登録者数 63.1万人

  1. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2024/press-release/

この二人の論文は、Cell誌の同じ号に同時に掲載されました。

  1. The C. elegans heterochronic gene lin-4 encodes small RNAs with antisense complementarity to lin-14 Rosalind C. Lee ,Rhonda L. Feinbaum and Victor Ambros  https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/009286749390529Y?via%3Dihub
  2. Posttranscriptional regulation of the heterochronic gene lin-14 by lin-4 mediates temporal pattern formation in C. elegans  Bruce Wightman, Ilho Ha, Gary Ruvkun Volume 75, Issue 5 , 3 December 1993, Pages 855-862 Cell https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0092867493905304

当初は線虫特有の話かと思われたmicroRNAですが、その後、他の動物種にも広く存在する別のマイクロRNAが線虫で発見されて、突如、細胞生物学のひのき舞台にmicroRNAが出てきたと思います。

  1. Conservation of the sequence and temporal expression of let-7 heterochronic regulatory RNA Nature volume 408, pages86–89 (2000) Published: 02 November 2000

 

ヒトのマイクロRNA

  • The chromosome 19 miRNA cluster (C19MC) is the largest human miRNA gene cluster, comprising roughly 8% of all known human miRNA genes, and is exclusively expressed in the placenta and in undifferentiated cells
  • MicroRNAs (miRNAs) are endogenous, 19–24 nucleotide, non-coding RNAs that post-transcriptionally regulate gene expression through sequence-specific base-pairing with target mRNAs.
  • In the human placenta, miRNAs are synthesized and expressed primarily in trophoblasts.
  • This primate-specific miRNA cluster spans ∼100 kb at human chromosome 19q13.41, and spans 46 miRNA genes
  •  In the human placenta, the C19MC cluster is imprinted, and is exclusively expressed from the paternally inherited allele
  • Aberrant expression of C19MC miRNAs is observed in specific human malignancies, where they may contribute to tumor invasiveness ().

An external file that holds a picture, illustration, etc. Object name is gas01301.jpg

The expression profile of C19MC microRNAs in primary human trophoblast cells and exosomes Mol Hum Reprod. 2012 Aug; 18(8): 417–424. Published online 2012 Feb 29. doi: 10.1093/molehr/gas013 PMCID: PMC3389496 PMID: 22383544

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3389496/

ヒト胚発生におけるマイクロRNAの役割:栄養膜細胞への分化

This figure summarizes simplistically some of the features of trophoblast fate that are at least partly governed by miRNA expression. Trophoblast cells are represented in blue with a round nucleus. Trophoblasts (in blue) can proliferate (left part of the figure) or differentiate into syncytiotrophoblast (right part of the figure; in this case, nuclei are filled in purple) or into endovascular or interstitial trophoblast in the vascular context of maternal arteries (represented as a cone in the lower part of the figure; in this case the nuclei are represented in light blue). In this latter case, they eventually become enclosed into the arterial wall to become intramural trophoblast along pathways that are still debated as nicely described by Pijnenborg et al. (2006). In the figure, crucial genes for cell cycle, Nodal, Notch, and FGF pathways, ROS production, invasion, and angiogenesis are presented in red. Crucial miRNAs are in blue. Blue arrows represent cell differentiation/proliferation pathways. Black arrows symbolize induction. When black lines are terminated by an orthogonal bar they represent inhibition. In the cases where the relation is not fully demonstrated, dotted arrows are used. It is clear that this vision is far from exhaustive, but attempts to depict current knowledge on the role of miRNA in building placental structure and ensuring efficient vascularization of this organ.

Trophoblasts, invasion, and microRNA Frontiers Frontiers in Genetics November 20134:248 DOI:10.3389/fgene.2013.00248 License CC BY 3.0

https://www.researchgate.net/figure/This-figure-summarizes-simplistically-some-of-the-features-of-trophoblast-fate-that-are_fig1_259208444

  1. 受精卵から胎盤が生まれる仕組み、東北大学などが解明20229/08ニュース2022年9月8日 国際幹細胞普及機構 https://stemcells.or.jp/baby/ 受精卵から胎盤が作られる過程を考えると、受精卵は着床後に将来胎児になる細胞と、胎盤になる細胞、2つのタイプに分かれます。つまり、細胞の「運命決定」がなされます。‥ つまり、運命決定とは大まかに言えば、ES細胞と栄養膜幹細胞のどちらになるか、ということなのです。‥ C19MCは、ヒトを含む霊長類のDNAにのみ存在します。発現する場所はほぼ胎盤に限られますが、精巣、胚性幹細胞、一部の腫瘍、そして栄養細胞由来の小胞でも発現しています。‥ 人工的にES細胞でC19MC遺伝子の作用を強めてみました。その結果、ES細胞は、栄養膜幹細胞に変化
  2. The microRNA cluster C19MC confers differentiation potential into trophoblast lineages upon human pluripotent stem cells Nature Communications volume 13, Article number: 3071 (2022) Published: 02 June 2022 https://www.nature.com/articles/s41467-022-30775-w
  3. Chromosome 19 microRNA cluster enhances cell reprogramming by inhibiting epithelial-to-mesenchymal transition Scientific Reports volume 10, Article number: 3029 (2020) Published: 20 February 2020 https://www.nature.com/articles/s41598-020-59812-8
  4. Selective activation of miRNAs of the primate-specific chromosome 19 miRNA cluster (C19MC) in cancer and stem cells and possible contribution to regulation of apoptosis Phan Nguyen Nhi Nguyen, Chiu-Jung Huang, Shigeki Sugii, Soon Keng Cheong & Kong Bung Choo Journal of Biomedical Science volume 24, Article number: 20 (2017) https://jbiomedsci.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12929-017-0326-z
  5. C19MC MicroRNAs Regulate the Migration of Human Trophoblasts Endocrinology. 2014 Dec; 155(12): 4975–4985. Published online 2014 Sep 11. doi: 10.1210/en.2014-1501 PMCID: PMC4239420 PMID: 25211593
  6. The expression profile of C19MC microRNAs in primary human trophoblast cells and exosomes Mol Hum Reprod. 2012 Aug; 18(8): 417–424. Published online 2012 Feb 29. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3389496/

胎盤とマイクロRNA

Placental trophoblast cell-derived exosomal microRNA-1290 promotes the interaction between endometrium and embryo by targeting LHX6 Nucleic Acids Volume 26 , 3 December 2021, Pages 760-772

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2162253121002389

  1. Imprinted MicroRNA Gene Clusters in the Evolution, Development, and Functions of Mammalian Placenta REVIEW article Front. Genet., 18 January 2019 Sec. RNA Volume 9 – 2018 | https://doi.org/10.3389/fgene.2018.00706 https://www.frontiersin.org/journals/genetics/articles/10.3389/fgene.2018.00706/full

器官の発生における分岐形成でFGFが果たす役割

多くの臓器や器官は管が分岐構造をとっています。その管の分岐はどのようにして発生のときに生じたのでしょうか。驚くべきことに、臓器や器官が違っていても、FGFが共通してその役割を担っているようです。同じシグナリング経路が、発生においては使いまわされているわけですね。

FGF

  1. The Fibroblast Growth Factor signaling pathway First published: 13 March 2015 https://wires.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/wdev.176
  2. From Cradle to Grave: The Multiple Roles of Fibroblast Growth Factors in Neural Development Neuron Volume 71, Issue 4 , 25 August 2011, Pages 574-588 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0896627311006787

Life Unfoldingを読んでいたら、FGFが進化の過程で繰り返し異なる器官の発生に使われたという記述があり、進化の順に、膵臓 pancreas、肺 lung、前立腺 prostateが挙げられていました。ChatGPTで進化の順を確認してみます。

Pancreas (Appeared First)

  • The pancreas is one of the earliest organs to appear in evolutionary history. It evolved as part of the digestive system in early vertebrates.
  • The pancreas or pancreas-like organs are found in jawed vertebrates (gnathostomes) and even in some jawless vertebrates (agnathans). Its dual function as both an endocrine (hormone production) and exocrine (enzyme secretion) organ suggests its ancient origin.
  • Estimated Appearance: Over 400 million years ago, in the early vertebrates.

Lung (Second)

  • Lungs evolved later, initially appearing as primitive respiratory structures in early fish that inhabited oxygen-poor waters. This structure was likely a precursor to both lungs and swim bladders in fish.
  • The development of lungs was crucial for the transition of vertebrates to terrestrial life. Primitive lungs are thought to have evolved before the Devonian period, approximately 400 million years ago.
  • Estimated Appearance: Approximately 400 million years ago, but after the pancreas.

Prostate (Appeared Last)

  • The prostate gland is a more recent evolutionary development and is specific to mammals. It is part of the male reproductive system, responsible for producing seminal fluid components.
  • Prostate evolution is linked to the diversification of reproductive strategies in mammals, and it is absent in more primitive vertebrates such as reptiles and amphibians.
  • Estimated Appearance: Roughly 200-250 million years ago, coinciding with early mammals.

以下、consensus.appでの回答です。

線維芽細胞成長因子(FGF)と膵臓の発生

線維芽細胞成長因子(FGF)は、膵臓の発生における分岐形態形成に重要な役割を果たします。特に、FGF10は膵臓の発生における上皮前駆細胞の増殖と分岐に関与しています。

  • FGF10の重要性:
    • FGF10は膵臓の上皮前駆細胞の増殖を維持し、分岐形態形成を促進するために必要です。FGF10が欠乏すると、膵臓の成長と分岐が停止します。
    • FGF10は、膵臓の前駆細胞のPDX1陽性細胞の維持に重要であり、これが膵臓の正常な発生に不可欠です。
  • FGFR2bシグナル伝達の役割:
    • FGFR2bとそのリガンド(FGF1、FGF7、FGF10)は、膵臓の発生全体を通じて表現され、上皮-間葉相互作用を介して膵臓の成長、形態形成、および細胞分化を促進します。
    • FGFR2bシグナル伝達の阻害は、膵臓の成長と分岐の著しい減少を引き起こします。
  • FGF2の異なる役割:
    • FGF2は、膵臓の前駆細胞のクラスター形成を促進するが、膵臓の分化を抑制する役割を持ちます。これは、動物モデルと比較して人間の膵臓発生において異なる役割を果たすことを示唆しています。
  • Notchシグナルとの相互作用:
    • FGF10シグナルは、Notchシグナルを活性化し、膵臓の前駆細胞の増殖と分化の統合を助けます。これにより、膵臓の発生における新たな役割が明らかになりました。

FGF10は、膵臓の発生における上皮前駆細胞の増殖と分岐形態形成に不可欠であり、FGFR2bを介したシグナル伝達がこのプロセスを調整します。FGF2は異なる役割を持ち、特に人間の膵臓発生においては分化を抑制する可能性があります。FGFシグナルとNotchシグナルの相互作用も、膵臓の発生において重要な役割を果たします。

 

線維芽細胞成長因子(FGF)と肺の発生

肺の発生における分岐形成は、複雑な細胞間相互作用とシグナル伝達経路によって制御されています。特に、線維芽細胞成長因子(FGF)は、この過程において重要な役割を果たすことが知られています。本稿では、FGFが肺の分岐形成にどのように関与しているかについての研究を総合的に分析します。

  • FGF10の役割
    • FGF10は肺の分岐形成において重要な役割を果たし、局所的なFGF10の供給源が内胚葉の増殖と芽の成長を調節する。
    • FGF10は、肺の遠位部の上皮芽に対して化学誘引効果を持ち、適切な位置に芽を誘導する。
  • FGFシグナル伝達の阻害効果
    • FGF受容体の機能を阻害すると、肺の分岐形成と上皮の分化が完全にブロックされる。
  • FGFと他のシグナル経路の相互作用
    • FGFシグナルは、SHH(ソニックヘッジホッグ)とのフィードバックループを形成し、分岐の周期性を決定する。
    • FGFシグナルは、WNTシグナルと相互作用し、肺の上皮細胞の運命と形態形成を調節する。
  • FGFの種間差
    • マウスとヒトの肺発生におけるFGFの役割には違いがあり、特にFGF10はヒトの肺では分岐を誘導せず、膨張と嚢胞形成を引き起こす。

FGF10は肺の分岐形成において中心的な役割を果たし、特に内胚葉の増殖と芽の成長を調節します。また、FGFシグナルは他のシグナル経路と相互作用し、分岐の周期性や細胞の運命を決定します。種間での役割の違いもあり、特にヒトとマウスではFGF10の機能が異なることが示されています。これらの知見は、肺の発生メカニズムの理解を深めるとともに、将来的な治療法の開発に寄与する可能性があります。

  1. Fgf10/Fgfr2b Signaling Orchestrates the Symphony of Molecular, Cellular, and Physical Processes Required for Harmonious Airway Branching Morphogenesis Front. Cell Dev. Biol., 12 January 2021 Sec. Cell Growth and Division Volume 8 – 2020 | https://doi.org/10.3389/fcell.2020.620667
  2. FGF18 promotes human lung branching morphogenesis through regulating mesenchymal progenitor cells 17 Mar 2023 https://doi.org/10.1152/ajplung.00316.2022
  3. Fibroblast Growth Factor 10 (FGF10) and branching morphogenesis in the embryonic mouse lung Development (1997) 124 (23): 4867–4878. https://doi.org/10.1242/dev.124.23.4867

線維芽細胞成長因子(FGF)と前立腺の発達

線維芽細胞成長因子(FGF)は、前立腺の発達における分岐形態形成に重要な役割を果たします。特に、FGF10とその受容体FGFR2は、前立腺の成長と分岐において中心的な役割を果たすことが示されています。

  • FGF10の重要性:
    • FGF10は前立腺の成長と分岐に不可欠であり、FGF10欠損マウスでは前立腺の発達が著しく抑制される。
    • FGF10は、前立腺の分岐形態形成を促進し、エピテリアル細胞の増殖と分化を調整する。
  • FGFR2の役割:
    • FGFR2は前立腺の分岐形態形成と成長に必要であり、FGFR2の欠損は前立腺の発達を著しく阻害する。
    • FGFR2は、前立腺がアンドロゲン依存性の組織として機能するために重要である。
  • FGFシグナル伝達の調整:
    • FGFシグナル伝達は、前立腺の発達と腫瘍形成において重要な役割を果たし、異常なFGFシグナル伝達は前立腺癌の進行に寄与する可能性がある。
    • FGF10とその受容体FGFR2は、前立腺の分岐形態形成において他の形態調節因子(例:Shh、Bmp7)と相互作用する。

FGF10とその受容体FGFR2は、前立腺の成長と分岐形態形成において中心的な役割を果たします。これらの因子は、エピテリアル細胞の増殖と分化を調整し、前立腺が正常に発達するために必要です。また、FGFシグナル伝達の異常は前立腺癌の進行に寄与する可能性があり、これらの知見は前立腺の発達と疾患の理解に重要な示唆を与えます。

線維芽細胞成長因子(FGF)と尿管の分岐

Search Labs | AI による概要
Fibroblast growth factors (FGFs) can play a role in the branching morphogenesis of the ureteric bud (UB). FGF2 and FGF7 are two FGFs that have been shown to have different effects on UB branching:
  • FGF2: Induces the formation of globular structures with an irregular branching pattern
  • FGF7: A more potent stimulator of UB growth 

Other factors that may be involved in UB branching include: GDNF and A BSN-derived factor(s).

The UB is an epithelial tube that originates from the nephric duct and branches repeatedly to form the renal collecting duct system. Defects in UB growth and branching can lead to renal agenesis, hypodysplasia, and other congenital abnormalities of the kidney and urinary tract.

The FGF system is associated with several downstream signaling pathways, including the RAS/mitogen-activating protein (MAP) kinase pathway, the phosphoinositide 3 (PI3) kinase/AKT pathway, and the phospholipase C gamma (PLCγ) pathway.

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circresaha.108.181818

  1. Multiple fibroblast growth factors support growth of the ureteric bud but have different effects on branching morphogenesis Mechanisms of Development Volume 109, Issue 2 , December 2001, Pages 123-135 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925477301005925

線維芽細胞成長因子(FGF)と唾液腺の分岐形成

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FGF signaling regulates salivary gland branching morphogenesis by modulating cell adhesion Development. 2023 Mar 15; 150(6): dev201293. Published online 2023 Mar 20. doi: 10.1242/dev.201293 PMCID: PMC10112918 PMID: 36861436 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10112918/

ショウジョウバエのblanchless (FGFR)の役割

FGFが非脊椎動物でも器官の分岐を誘導するというのは興味深いです。低酸素が分岐を促すというのも、脊椎動物で低酸素が血管の伸長・分岐を促すのと類似していて、やはり興味深く思われます。合目的的になっているんですね。

Signaling pathways regulating the branching of the Drosophila tracheal system. a, The anterior-posterior and dorsal-ventral patterning genes induce bnl expression in mesenchymal cell clusters, which secrete and form a gradient of Bnl (green). Bnl induces btl expression (red) in the epithelial cells of the tracheal placodes that are closest to the Bnl source, and acts as a chemoattractant. The migrating cells coalesce into a primary branch. b, Bnl induces secondary branch tip-cell genes in epithelial cells sensing the highest Bnl signal, which then suppress tip-cell gene expression in stalk cells via Notch signaling. Pointed is a pivotal tip-cell gene which upregulates MAPK signaling and Sprouty expression. Sprouty forms a negative-feedback loop by inhibiting Btl signaling. c, Hypoxia induces local expression of bnl via Fatiga, leading to Btl signaling via Pointed and Blistered and resulting in terminal branch sprouting.

Signaling pathways regulating the branching of the Drosophila tracheal system.

a, The anterior-posterior and dorsal-ventral patterning genes induce bnl expression in mesenchymal cell clusters, which secrete and form a gradient of Bnl (green). Bnl induces btl expression (red) in the epithelial cells of the tracheal placodes that are closest to the Bnl source, and acts as a chemoattractant. The migrating cells coalesce into a primary branch.

b, Bnl induces secondary branch tip-cell genes in epithelial cells sensing the highest Bnl signal, which then suppress tip-cell gene expression in stalk cells via Notch signaling. Pointed is a pivotal tip-cell gene which upregulates MAPK signaling and Sprouty expression. Sprouty forms a negative-feedback loop by inhibiting Btl signaling.

c, Hypoxia induces local expression of bnl via Fatiga, leading to Btl signaling via Pointed and Blistered and resulting in terminal branch sprouting.

https://www.researchgate.net/figure/Signaling-pathways-regulating-the-branching-of-the-Drosophila-tracheal-system-a-The_fig4_281067266

 

参考

  1. Biological Roles of Fibroblast Growth Factor-2 Endocrine Reviews, Volume 18, Issue 1, 1 February 1997, Pages 26–45, https://doi.org/10.1210/edrv.18.1.0292 Published: 01 February 1997

 

Delta-Notchシグナリングによる側方抑制のメカニズム:神経細胞とグリア細胞の分化

神経発生において、最初は一様な細胞集団だったものが、ある細胞が神経細胞になり、周りの細胞を神経細胞にならないように(側方抑制)して、結果的に、グリア細胞に分化させるということが起こります。どのようなメカニズムがこの側方抑制という現象を実現させているのでしょうか。

ここで使われている仕組みが、デルタ(リガンド)とノッチ(受容体)です。

The role of the Notch signaling pathway in Drosophila development has been studied since a dominant notched wing phenotype was first reported in 1914, but its role in human development and disease has only been recognized since 1991, when mutations in NOTCH1 were associated with a form of T-cell acute lymphoblastic leukemia (T-ALL) []. In 1996NOTCH3 mutations were found to cause CADASIL, a disorder characterized by stroke and dementia, with onset in the 3rd or 4th decade [].

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3638987/

一様な細胞集団では、当初、すべての細胞がdeltaとnotchを発現しています。しかし、個々の細胞で発現量にばらつきがあった場合、その差が拡大するような仕組みが存在しているのです。

delta→notch→NICD(notch intracellular domain)が核内に移行→NICDがHES遺伝子の発現をオン→転写因子HESがAcaete-Scute遺伝子の発現を抑制→転写因子Acaete-ScuteによるDelta遺伝子の発現がダウン

という一連の反応により、deltaのシグナルをより強く受信した細胞では、deltaを出せなくなります。転写因子Acaete-Scuteは、deltaを発現しているだけでなく、神経細胞に分化するために必要な遺伝子群もオンにするので、結局、deltaのシグナルを出した側の細胞は、自分は神経細胞になり、周りの細胞を神経細胞にさせなくするというわけです。下の図が非常にわかりやすいと思います。

https://scholarlycommons.pacific.edu/open-images/37/

上の説明はショウジョウバエに関するものですが、哺乳類でも同様の仕組みがあるそうです。

figure 1

Dynamic Notch signaling in neural progenitor cells and a revised view of lateral inhibition Ryoichiro Kageyama, Toshiyuki Ohtsuka, Hiromi Shimojo & Itaru Imayoshi Nature Neuroscience volume 11, pages1247–1251 (2008) 28 October 2008  https://www.nature.com/articles/nn.2208

delta-notchシグナリングは、標的遺伝子の違いによっては、側方抑制以外の分化状態を作り出すことも可能なようです。

An external file that holds a picture, illustration, etc. Object name is fphys-11-00929-g003.jpg

Understanding the Principles of Pattern Formation Driven by Notch Signaling by Integrating Experiments and Theoretical Models Front Physiol. 2020; 11: 929. Published online 2020 Jul 31. doi: 10.3389/fphys.2020.00929 PMCID: PMC7411240 PMID: 32848867

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7411240/

上の図では、最初、一様な細胞集団を仮定しましたが、実際にはそうでもなくて、不均一性があります。下の説明によれば、神経細胞の分化が起こる場所apical/ventricular surfaceでは、細胞が分裂したときに、2つの細胞の「組成」が一様でなくなっているそうです。

An external file that holds a picture, illustration, etc. Object name is jdb-08-00008-g001.jpg

Neural progenitors are polarised along the apico-basal axis of the neuroepithelium and localise apical polarity proteins such as Pard3 to the apical surface. Most neural progenitors divide at the apical surface of the neuroepithelium. A daughter that inherits the apical attachment (outlined by Pard3), inherits the Delta modulator Mindbomb and is likely to become a neuron.

Delta-Notch Signaling: The Long and the Short of a Neuron’s Influence on Progenitor Fates J Dev Biol. 2020 Jun; 8(2): 8. Published online 2020 Mar 26. doi: 10.3390/jdb8020008 PMCID: PMC7345741 PMID: 32225077  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7345741/

Delta-Notchシグナリングと脊椎動物の体節形成

Delta-Notchシグナリングは、側方抑制による神経細胞ーグリア細胞分化だけでなく、脊椎動物の体節形成にも関与していることが知られています。

  1.  Delta-Notch signalling in segmentation Arthropod Structure & Development Volume 46, Issue 3 , May 2017, Pages 429-447

以下、consensus.appの回答です。

デルタ-ノッチ(Delta-Notch)シグナル伝達経路は、発生過程における細胞運命の決定に重要な役割を果たします。特に、体節形成(somitogenesis)において、このシグナル伝達経路がどのように関与しているかについて多くの研究が行われています。

  • Wntシグナルとノッチ経路の連携:
    • WntシグナルはLEF1を介してDelta-like1(Dll1)を調節し、これによりノッチ経路が活性化されることが示されています。LEF1の変異は体節のパターン形成とノッチ経路の構成要素の発現に影響を与えます。
  • ノッチ経路のオシレーター機能:
    • ノッチ経路は体節形成中にオシレーターとして機能し、遺伝子発現の振動を制御します。特に、DeltaDがこのオシレーター機能に必要であり、her1の発現パターンに影響を与えます。
  • 異なるデルタリガンドの役割:
    • 異なるデルタリガンド(例えば、deltaCのスプライスバリアント)は、体節形成において異なるシグナル伝達能力を持ちます。deltaC(tv2)は体節形成には効果的ではないが、他の発生過程には影響を与えます。
  • ノッチ経路の多様な機能:
    • ノッチ経路は、体節形成中にオシレーターとして機能するだけでなく、他の発生過程でも異なる役割を果たします。例えば、hes1の発現を制御することで、細胞運命のスイッチとして機能することができます。
  • ノッチ依存の遺伝子の役割:
    • ノッチ依存の遺伝子(例えば、her6とher4)は、体節形成中の遺伝子発現の調整に重要な役割を果たします。これらの遺伝子は、体節前中胚葉における遺伝子発現の周期的な調整を維持するために必要です。

参考論文

  1. Enhanced Delta-Notch Lateral Inhibition Model Incorporating Intracellular Notch Heterogeneity and Tension-Dependent Rate of Delta-Notch Binding that Reproduces Sprouting Angiogenesis Patterns Yen Ling Koon, Songjing Zhang, Muhammad Bakhait Rahmat, Cheng Gee Koh & Keng-Hwee Chiam Scientific Reports volume 8, Article number: 9519 (2018) Published: 22 June 2018  https://www.nature.com/articles/s41598-018-27645-1
  2. Cis-interactions between Notch and Delta generate mutually exclusive signalling states David Sprinzak, Amit Lakhanpal, Lauren LeBon, Leah A. Santat, Michelle E. Fontes, Graham A. Anderson, Jordi Garcia-Ojalvo & Michael B. Elowitz Nature volume 465, pages86–90 (2010) Published: 25 April 2010 https://www.nature.com/articles/nature08959

細胞内情報伝達機構の一つであるソニックヘッジホッグ(ssh)シグナリングとは?

下の動画では複雑なshhシグナリングの全容が見事に説明されていました。shhが存在しないときのシグナリング、存在したときのシグナリングと、2つの場合に分けて理解することが大事です。

SHH-SMO-GLIシグナリングと書くと、プレーヤーを覚えやすいかもしれません。一般的に、リガンド(外からくるシグナル)、レセプター(リガンドと結合するもの)、トランスデューサー(レセプターとエフェクターをつなぐもの)、エフェクター(遺伝子発現など効果をもたらすもの)と役割ごとに理解するのがいいと思います。今の場合

  • リガンド:shh (sonic hedgehog)
  • レセプター:patcd (patched)
  • トランスデューサー: smoothened (smo)
  • エフェクター:Gli (Gli2 が活性化、Gli3が抑制)

GLIがエフェクターの転写因子です。GLI2が活性化する標的遺伝子には、GLI1、サイクリンD1、c-mycなどがあります。サイクリンD1はG0期からG1期へ移行すつときに働くサイクリンですので、つまりは、増殖期に入るということになります。標的遺伝子の一つがサイクリンDと聞くと、shhが増殖シグナルとして働くということがしっくりきます。shhはモルフォゲンとして分化因子としても働きますが、増殖を指令する因子でもあるということです。

The hedgehog signaling pathway – Part 1: Normal situation Onkoview チャンネル登録者数 7700人

ソニックヘッジホッグの受けて側の細胞は常に上皮系の細胞なのか

shhシグナリングではsmoothenedがshhの受容体patchedからの束縛から解放されて繊毛へはいっていくことが大事です。細胞に繊毛があるということは、つまり、shhシグナルの受けてとなる細胞は上皮細胞にそもそも限られていると理解していいのでしょうか。ChatGPT 4oに訊いてみました。

Yes, that’s correct! The recipient cells of Sonic Hedgehog (Shh) signals are generally ciliated, as cilia are crucial for proper Shh signaling transduction. In vertebrates, the primary cilium is essential for Shh signaling because it serves as a compartment where key signaling components, like the receptors Patched (Ptch) and Smoothened (Smo), are localized and activated.

Here’s a bit more detail on the process:

  1. Shh Binding to Patched (Ptch): In the absence of Shh, Ptch inhibits Smoothened (Smo), keeping it out of the cilia. When Shh binds to Ptch, this inhibition is relieved.
  2. Smoothened Translocation to Cilia: With Ptch inhibition lifted, Smo moves into the cilia. This movement initiates downstream signaling, which eventually leads to the activation of Gli transcription factors and influences gene expression.
  3. Role of Cilia: The cilium acts as a signaling hub in this process. Cells lacking primary cilia or with defective ciliary function are typically unable to transduce Shh signals effectively, underscoring the importance of cilia in Shh pathway activation.

Since primary cilia are a feature of most epithelial cells, it’s often these ciliated cells that can respond to Shh signaling. However, ciliated cells are not limited to epithelial tissues; some types of neuronal cells, for example, also have primary cilia and can respond to Shh signaling.

繊毛をもった神経細胞もあるけど、たいていの場合はshhの受けては上皮細胞と考えてよさそうです。

shhシグナリングを英語で説明

shhシグナリングをうまく説明している英語の文章をまとめておきます。

下の文章はGLIに3種類あることは言及せず、繊毛にも触れず、かわりに複合体の話に軽く触れて、すっきりとまとめています。

SHh-mediated transduction is initiated via extracellular SHh ligand binding to the 12-span transmembrane receptor, PATCHED-1 (PTCH-1) or the redundant receptor PTCH-2, in target cells (910). In the absence of SHh, PTCH-1 and, redundantly, PTCH-2, catalytically inhibit downstream signaling activity with seven-transmembrane G-protein-coupled receptor, Smoothened (SMO) (1113). Upon SHh binding to PTCH, the inhibitory interaction is terminated through internalization of PTCH, releasing SMO and allowing for phosphorylation to transduce signal into the cytoplasm (14). The resultant signal leads to the component dissociation of a large protein complex comprising of Sufu and GLIs in the cytoplasm, releasing the GLI transcription factors. Finally, the released GLI transcription factors translocate into the nucleus to execute transcriptional activation of specific target genes (15). https://www.frontiersin.org/journals/oncology/articles/10.3389/fonc.2021.673154/full

下の説明は繊毛の重要性を強調したもの。

Vertebrate hedgehog signaling requires the primary cilium, and components of the pathway are localized to cilia (Corbit et al., 2005Haycraft et al., 2005Huangfu et al., 2003Rohatgi et al., 2007). Ptch1 is a Shh receptor and is localized to the cilium in the absence of Shh, whereas Smoothened (Smo) enters the cilium upon Shh stimulation (Corbit et al., 2005Marigo and Tabin, 1996Rohatgi et al., 2007). Gli2 and Gli3 proteins mediate the transcriptional response to Shh signaling and are processed to either an activator form (GliA) in the presence of Shh, or to a repressor form (GliR) without Shh ligand (Aza-Blanc et al., 2000Ruiz i Altaba, 1998). Normally, the relative localization of Ptch1 and Smo shifts upon Shh stimulation, permitting Gli proteins to be enriched in cilia (Chen et al., 2009Haycraft et al., 2005Rohatgi et al., 2007Tukachinsky et al., 2010). https://journals.biologists.com/dev/article/139/21/4062/45364/Temporal-deletion-of-Arl13b-reveals-that-a

下の説明は論文ではなくラーセンの人体発生の教科書の説明です。

After secretion into the extracellular milieu, the 20-kDa domain binds to a transmembrane receptor called patched. In the absence of Shh protein, patched interacts with and inhibits another transmembrane signaling protein called smoothened, repressing the expression of smoothened target genes. In contrast, in the presence of Shh protein, smoothened is no longer inhibited. Instead, it is transported into a primary (non-motile) cilium projecting from the cell’s surface, where it accumulates in the cilium’s cell membrane. This activates an intracellular signaling cascade that results in transcriptional activation of target genes. It is interesting to note that smoothened signaling in mammals involves three proteins (called Gli proteins) that function as transcriptional activators or repressors. These proteins are orthologs of the Drosophila Ci, or cubitus interruptus protein. When Shh is absent, Gli2 and Gli3 are cleaved and act as transcriptional repressors (GliR). When Shh is present, this proteolytic cleavage is inhibited, and Gli2, 3, and Gli1, which is induced in response to Shh signaling, act as transcriptional activators (GliA). The levels (concentration) of Shh determine the ratio of GliA versus GliR in a cell, which in turn determines the fate of that cell (see Fig. 5.19B).

Larsen’s Human Embryology

Gli1遺伝子の転写は、Gli2によって活性化されるようです。下のChatGPTの説明や上のYOUTUBE動画の説明だとGli2は転写活性化因子(ただしshh存在下でその活性を得る)、Gli3は転写抑制因子(但しshh存在下で抑制因子としての活性は抑制される)のようです。Gli2によって発現を誘導されたGli1も活性化因子として働きます。Gli2は活性化、Gli3は抑制、Gli1は(活性化の)増幅に働くと理解するとスッキリします。

Yes, in the presence of Shh signaling, Gli1 expression is primarily induced by Gli2 acting as an activator. Here’s how it works:

  1. Shh Signal Activation: When Shh binds to Ptch, it relieves inhibition on Smoothened (Smo), allowing it to move into the cilia. This initiates downstream signaling events that lead to activation of Gli proteins.
  2. Role of Gli2 as an Activator: Gli2 is the main transcriptional activator in the Shh pathway. In response to Shh signaling, Gli2 is stabilized and accumulates in its active form, which then translocates to the nucleus to drive the transcription of Shh target genes, including Gli1. Therefore, Gli2 is crucial for inducing Gli1 expression in Shh-responding cells.
  3. Gli3 as a Repressor: Gli3 predominantly functions as a repressor in the absence of Shh signaling. Without Shh, Gli3 is processed into a repressor form that inhibits target gene expression. In the presence of Shh, Gli3 processing into its repressor form is inhibited, allowing the pathway to activate Gli1 and other target genes through Gli2.
  4. Gli1 as an Amplifier: Interestingly, Gli1 itself doesn’t act as an initial activator but rather serves as an amplifier of Shh signaling. Once expressed, Gli1 provides positive feedback, reinforcing the activation of Shh target genes.

In summary, Gli2 is the primary inducer of Gli1 expression when Shh signaling is active, with Gli1 serving to further amplify the pathway’s response.

consensus.appに訊いてみました。

ソニックヘッジホッグ(Shh)シグナリングについて

ソニックヘッジホッグ(Shh)シグナリングは、胚発生、組織の維持、腫瘍形成などの重要な生物学的プロセスを制御する細胞内情報伝達機構です。Shhは、特定の細胞応答を引き起こすために濃度に依存して作用するモルフォゲンとして機能します。

  • Shhの濃度と持続時間の役割:
    • Shhは、脊椎動物の神経管の背腹軸をパターン化するために、濃度と曝露時間に応じて異なる神経細胞のアイデンティティを生成します。負のフィードバックがShhの分布と細胞内シグナル伝達の持続時間を調整します。
  • Gli転写因子の役割:
    • Gli転写因子の活性勾配がShhシグナリングの細胞内対応物として機能し、神経管のパターン形成を調整します。Shhの濃度変化はGli活性の変化に対応し、シグナルの持続時間も重要なパラメータです。
  • Shhの分泌と受容体の関与:
    • Shhは高度に疎水性であり、SCUBEタンパク質によって分泌されます。SCUBE-SHH複合体は直接的にPatched1(PTCH1)受容体を介してシグナルを伝達するのではなく、CDON/BOCおよびGAS1コレセプターを介してシグナルを伝達します。
  • Shhの空間的および時間的勾配:
    • Shhシグナルの空間的および時間的勾配は、下流の転写ネットワークによって解釈され、細胞の位置情報と遺伝子発現を組織化します。このネットワークはシグナルの変動に対する耐性を提供し、シグナルの記憶を保持します。
  • Shhの分布と機能:
    • Shhペプチドは、脊椎動物の中枢神経系、体節、四肢のパターン形成に関与し、特定の時期に特定の部位で発現します。Shhの長距離シグナル伝達は、他のシグナルの活性化によって間接的に媒介される可能性があります。
  • Shhシグナリングのモデル化:
    • Shhシグナリングは、上皮-間葉相互作用を介して、腎線維症の進行を促進します。Shhは、腎臓の線維芽細胞を活性化し、細胞外マトリックスの生成を促進します。

ソニックヘッジホッグ(Shh)シグナリングは、胚発生や組織のパターン形成において重要な役割を果たします。Shhの濃度と持続時間、Gli転写因子の活性、コレセプターの関与、空間的および時間的勾配の解釈などが、Shhシグナリングの主要なメカニズムです。これらの要素が協調して働くことで、細胞の位置情報と遺伝子発現が正確に制御されます。

ユビキチン化されたタンパク質を分解する2つの経路:プロテアソームとリソソーム

細胞の中には、不要となったタンパク質を分解するメカニズムが2つ存在します。一つは、プロテアソームで、もう一つがリソソームです。分解されるべきタンパク質は、まずタグ付けとしてユビキチン化されます。なのでユビキチン化されたタンパク質の分解経路として、プロテアソームとリソソームの2つが存在すると言えます。

以下、consensus.appで確認しておきます。

タンパク質分解におけるプロテアソームとリソソームの関係

タンパク質分解は細胞内の恒常性維持に不可欠なプロセスであり、主にユビキチン-プロテアソーム系(UPS)とオートファジーを介したリソソーム系二つの経路によって行われます。これらの経路は、E3ユビキチンリガーゼによって標的タンパク質にユビキチンが付加されることで開始されます。

  • ユビキチン化とプロテアソーム分解:
    • E3ユビキチンリガーゼは特定のタンパク質を認識し、ユビキチンを付加することでプロテアソームによる分解を促進します。
    • ユビキチン化されたタンパク質は26Sプロテアソームにより分解され、これはATP依存的なプロセスです。
  • ユビキチン化とリソソーム分解:
    • ユビキチン化はまた、タンパク質をエンドソーム-リソソーム経路に送るシグナルとしても機能し、リソソームによる分解を促進します。
    • 特に膜タンパク質のユビキチン化は、これらのタンパク質をリソソームに送るための内部化シグナルとして機能します。
  • プロテアソームとリソソームの相互作用:
    • UPSとオートファジー(リソソーム経路)は相互に調整されており、E3ユビキチンリガーゼの活性やユビキチン結合タンパク質(UBP)などの調節因子がこれに関与します。
    • これらの経路の調整は、特に熱ショック因子やp97、p62、オプチニューリンなどのUBPによって影響を受けます。

プロテアソームとリソソームは、E3ユビキチンリガーゼによるユビキチン化を介してタンパク質分解を行う二つの主要な経路です。プロテアソームは主に細胞質内の短命なタンパク質を分解し、リソソームは膜タンパク質や長寿命のタンパク質を分解します。これらの経路は相互に調整されており、細胞内のタンパク質恒常性を維持するために協力しています。

ギラン・バレー症候群

ニュース記事で、ギラン・バレー症候群という病気を知りました。

  • 俳優の小堀正博さん(36)は半年前、謎の病に襲われた。「38度後半は出ていた。突然握力が弱くなり、ペットボトルのふたが開けられなくなった。2~3時間寝てトイレへ行こうと思ったら体が動かず、救急車を呼んだ」。
  • 手足がしびれ、体に力が入らないなどの症状が起こり、最悪の場合、呼吸さえできなくなり死に至る。
  • 原因として、通常は風邪や下痢、細菌の感染症(カンピロバクター食中毒など)、新型コロナ感染、予防接種といった「先行感染」から始まる。
  • 先行感染に対し、体内では細菌やウイルスを攻撃する抗体ができるが、一部の抗体が誤って自身の末梢神経への攻撃を始めてしまう。その結果、筋力低下や手足のしびれにつながる

「入院を決断しなかったら家で呼吸が止まっていた」 36歳俳優がギラン・バレー症候群に 突然の発症なぜ? 医師に聞く原因と治療法 10/3(木) 10:00 ABEMA TIMES https://news.yahoo.co.jp/articles/777269f3f6a0e630c968d3d80a9bdecfc353d931

アンドロゲン不応症(Androgen insensitivity syndrome;AIS)

2024年パリオリンピックの女子ボクシングで、女子66キロ級のイマネ・ヘリフ選手(アルジェリア)と女子57キロ級のリン・ユーチン選手(台湾)が金メダルを獲得しましたが、この2人の性染色体がXY(男性の染色体)だったことと、試合内容があまりにも一方的だったために物議をかもしました。

自分も最初誤解したのですが、世間でも大きな誤解があり、もともと男性だった人がトランスジェンダーとして女性としてエントリーしたのではないかと考えた人も多かったようです。しかし、それは完全な誤解で、両選手はトランスジェンダーではなく、アンドロゲン不応症と呼ばれるものです。

性染色体がXYであり、Y染色体をもつことから、Y染色体上にあるSRY遺伝子の働きにより性腺は精巣に分化します。つまり、内部生殖器は男性、すなわち精巣というわけです。ところが、アンドロゲン受容体に異常があるために、男性ホルモンであるアンドロゲンに対する反応が無く、外部生殖器がデフォルトである女性型になります。つまり、陰茎や睾丸が形成されず、デフォルトである膣が形成されるわけです。思春期には乳房も発育します。つまり、外形は女性になるわけです。

外性器も本来は陰嚢となる場所だったものが大陰唇に、亀頭部となるはずだったものがクリトリスと女性型になってしまう https://medical-tribune.co.jp/rensai/articles/?blogid=11&entryid=564331

AISの女性と通常の(XX染色体の)女性との外見の違い

AISの女性(XY)は性染色体がXXの女性と外見において異なる部分もあります。

身長と体重が平均的な女性よりも大きくなります。また、腋毛axillary hairや陰毛 public hair は、乏しいか無毛になります。これは体毛の発育がアンドロゲン受容体に依存するためです。また、膣の長さは通常より短く、盲端(blind)になっています。

  • A shortened blind-ending vagina is observed in almost all patients and the vaginal measurement varied from 2.5 to 8 cm in CAIS and 1.5 – 4 cm in PAIS.
  • Pubic and axillary hair are sparse or absent (1,14).
  • Final height in CAIS is above normal mean female height, probably due to the action of the growth-controlling gene (GCY) located at the Y chromosome (15).
  • newborns with CAIS have the same size of male newborns
  • the final height of CAIS individuals (165.7 ± 8.9 cm) was taller than described for Brazilian females, but lower than expected for Brazilian males (15).

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10118986/

参考

  1. Lecturio動画 Androgen Insensitivity Syndrome: Complete and Partial AIS
  2. http://grj.umin.jp/grj/androgen.htm  CAIS ウォルフ管由来器官の欠如や低形成 精巣上体・精管は存在することもしないこともある 停留睾丸 短い盲端の膣 恥毛,腋毛が薄いか欠如

AISの原因遺伝子

AISの原因遺伝子はアンドロゲン受容体遺伝子です。アンドロゲン受容体遺伝子はX染色体上にあります。AISの女性の性染色体はXYなので、そのX染色体は母親由来ということになります。しかしcomplete AISの人の40%において、アンドロゲン受容体遺伝子の変異はde novoすなわち母親には変異がないのだそうです(参照:Lecturio動画 Androgen Insensitivity Syndrome: Complete and Partial AIS)。

AISに気付くタイミング

CAISの場合

  • 思春期にアンドロゲンからアロマターゼを介して産生されたエストロゲンの作用により、乳房の発育は通常
  • 外性器は完全に女性型
  • 出生後から女性として生活
  • 原発性無月経を主訴に産婦人科にて診断されることが多い

https://medical-tribune.co.jp/rensai/articles/?blogid=11&entryid=564331

  1. amenorrhea 無月経

AISの脳の性(性自認)

以下は、Consensus.appの回答です。

アンドロゲン不応症候群(AIS)は、アンドロゲン受容体の遺伝子変異によって引き起こされ、46,XY個体において様々な表現型を示します。完全型アンドロゲン不応症候群(CAIS)の女性は、外見上は女性であり、通常は女性として育てられます。本研究では、CAIS女性の脳の性別と自己認識についての研究結果をまとめます。

  • 女性としての性別認識:
    • CAIS女性は、一般的に女性としての性別認識を持ち、女性としての性役割行動を示します。
    • CAIS女性は、通常、男性パートナーを選び、性同一性障害を経験しないことが多いです。
  • 性別再割り当ての稀少性:
    • CAIS女性が自発的に性別再割り当てを行うケースは非常に稀です。
    • 性別再割り当てを行ったCAIS女性のケースは、非常に少数であり、特異な事例として報告されています。
  • 男性としての性別認識の例外:
    • 一部のCAIS女性は、幼少期から男性としての性別認識を持ち、最終的に性別再割り当てを行うことがあります。
    • これらのケースでは、幼少期からのクロスジェンダー行動が観察され、心理療法やホルモン治療を経て男性としての性別認識が確認されました。

CAIS女性は、一般的に女性としての性別認識を持ち、女性としての性役割行動を示します。性別再割り当てを行うケースは非常に稀であり、特異な事例として報告されています。したがって、CAIS女性は通常、自分自身を女性として認識しますが、例外的に男性としての性別認識を持つケースも存在します。

先天性ミオパチーの原因遺伝子

ニュースで、先天性ミオパチーという病気を初めて知りました。

「今日はまず、謝らせてください。ふうかさんの病名を間違えておりました」とし、「正しくは先天性ミオパチー中心核ミオパチーです。セントラルコア病ではありません (初めの投稿の文章も訂正させていただきました)」と訂正した。もともと「中心核ミオパチー」と説明を受けていたというが、新たに「セントラルコア」という病名を知り、いつしか同じものと捉えてしまったとか。

星野真里、難病と公表した9歳長女について謝罪「病名を間違えておりました」 10/2(水) 12:51配信 42 コメント42件 テレビ朝日系(ANN)https://news.yahoo.co.jp/articles/05c217af6204ba3e80a4b2e1f252485419177758

 

先天性ミオパチーの病型分類

「先天性ミオパチー」は顕微鏡の特徴的所見をもとに、いくつかの病型に分類されます。
① ネマリンミオパチー
セントラルコア病、ミニコア病
③ ミオチュブラーミオパチー、中心核病
④ 先天性筋線維タイプ不均等症、全タイプ1線維ミオパチー
⑤ その他、分類不能な先天性ミオパチー

https://www.nanbyou.or.jp/entry/4726

 

先天性ミオパチーの原因遺伝子

先天性ミオパチーは遺伝子の変異が原因となるようです。一つの病型に対して一つの原因遺伝子が対応しているわけではなく、一つの病型に対して変異が見つかっている遺伝子が複数あり、同じ原因遺伝子の変異が複数の病型で認められることもあるようです。

それぞれの病型の発症には、複数の遺伝子が関与していることが分かります。これらのすべてに変異が認められるわけではなく、通常、一人の患者さんで認められる遺伝子の変異は1種類です。これらの遺伝子の変異により、骨格筋を構成するたんぱく質が欠損したり、機能がうまく働かなくなったりして、病気が発症すると考えられています。https://www.nanbyou.or.jp/entry/4726

アクチン、ミオシンを始めとして、骨格筋の筋収縮に関与する多数の遺伝子が原因になり得るようです(参照:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4726)。

  • ACTA1:actin alpha 1, skeletal muscle
  • MYH7:myosin heavy chain 7 Also known as: CMD1S, CMH1, CMYO7A, CMYO7B, CMYP7A, CMYP7B, MPD1, MYHCB, SPMD, SPMM
  • MYL2:myosin light chain 2 Also known as: CMH10, MFM12, MLC-2, MLC-2s/v, MLC-2v, MLC2
  • TPM2:Tropomyosin 2
  • TPM3:Tropomyosin 3
  • TNNT1:Troponin T 1
  • CFL2: cofilin-2
  • RYR1:ryanodine receptor 1
  • DNM2:dynamin 2 Also known as: CMT2M, CMTDI1, CMTDIB, DI-CMTB, DYN2, DYNII, LCCS5
  • TTN:titin Also known as: CMD1G, CMH9, CMPD4, CMYO5, CMYP5, EOMFC, HMERF, LGMD2J, LGMDR10, MYLK5, SALMY, TMD
  • NEB:ネブリン nebulin
  • KLHL40: kelch like family member 40
  • KLHL41: kelch like family member 41
  • KBTBD13:kelch repeat and BTB domain containing 13 
  • LMOD3:leiomodin 3 Also known as: NEM10
  • MYPN:myopalladin Also known as: CMD1DD, CMH22, CMYO24, CMYP24, MYOP, NEM11, RCM4
  • SELENON:selenoprotein N Also known as: CFTD, CMYO3, CMYP3, MDRS1, RSMD1, RSS, SELN, SEPN1
  • MTM1:myotubularin 1 Also known as: CNM, CNMX, MTMX, XLMTM
  • BIN1:bridging integrator 1 Also known as: AMPH2, AMPHL, CNM2, SH3P9
  • SPEG:striated muscle enriched protein kinase Also known as: APEG-1, APEG1, BPEG, CNM5, MYLK6, SPEGalpha, SPEGbeta
  • CCDC78:coiled-coil domain containing 78 Also known as: C16orf25, CNM4, JFP10, hsCCDC78