発生の初期には「腹側腸間膜」も存在します。しかし、そのほとんどは発生が進むにつれて退化してなくなってしまいます。
発生学の教科書でよく描かれているのは、主に**「背側腸間膜」**です1111。これは、消化管を体の背中側の壁につなぎとめる、より広範囲に残る腸間膜です。発生の模式図では、この主要な背側腸間膜が強調して描かれることが多いです。
腹側腸間膜の運命 🗺️
発生の初期段階では、消化管は背側と腹側の両方の腸間膜によって体壁に固定されています。
- 背側腸間膜 (Dorsal Mesentery): 消化管の全長にわたって存在し、成長して小腸間膜や横行結腸間膜など、成体のお腹の中に見られる広範な膜になります。
- 腹側腸間膜 (Ventral Mesentery): こちらは、消化管の前方部分(将来の胃や十二指腸の上部あたり)にしか存在しません。肝臓がこの腹側腸間膜の中に発生・成長してくるため、腹側腸間膜は肝臓によって2つに分けられます。
- 肝臓と腹壁をつなぐ部分 → 鎌状間膜 (falciform ligament) として残ります。
- 肝臓と胃をつなぐ部分 → 小網 (lesser omentum) として残ります。
これら以外の大部分の腹側腸間膜は消滅してしまうため、成体では背側腸間膜ほど広範囲には見られません。
単純化のために教科書に描かれていなくても、実際には腹側にも腸間膜が存在し、それが肝臓周りの重要な構造を形成する、と理解しておくと良いでしょう。
(Gemini)