保険収載(ほけんしゅうさい)と保険償還(ほけんしょうかん)は、日本の公的医療保険制度における、医療サービスや医薬品、医療機器などに関する重要な概念です。
簡単に言えば、保険収載は「公的な医療保険の適用対象として認められ、リストに載ること」、保険償還は「その費用を保険者(国や健康保険組合など)が医療機関などに支払うこと」を意味します。
保険収載とは
保険収載とは、医薬品や医療技術、医療機器などが、公的医療保険(健康保険)の適用対象として認められ、その価格(薬価や診療報酬)が国の定めるリスト(薬価基準や診療報酬点数表)に正式に登録されることです。
- 意味: 医療保険の適用範囲内となること。
- 具体例:
- 新しく開発された薬が薬価収載される。
- 新しい手術方法や検査が診療報酬点数表に追加される。
- 影響: 保険収載されることで、患者さんはその医療を受ける際、原則として費用の**自己負担分(通常1〜3割)**だけを支払い、残りは保険から賄われるようになります。
保険償還とは
保険償還とは、医療機関が患者さんに保険診療を提供した後、その費用のうち患者さんの自己負担分を除いた残りの費用を、**保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市町村など)**から受け取ることです。
- 意味: 医療機関が立て替えた(あるいは患者の自己負担分以外)の費用を保険者が支払うこと。
- 流れ:
- 患者さんが病院で診療を受ける(患者さんは自己負担分を支払う)。
- 病院は診療内容に応じて作成したレセプト(診療報酬明細書)を審査支払機関に提出する。
- 審査支払機関の審査を経て、保険者から病院へ費用(診療報酬)が支払われる。
- 償還価格: 医薬品や特定医療材料などの費用として医療機関に支払われる、保険で定められた価格を償還価格と呼ぶこともあります。
両者の関係と違い
項目 | 保険収載 (主に「適用」と「価格設定」の段階) | 保険償還 (主に「支払い」の段階) |
定義 | 医療保険の適用対象として認められ、価格が公的に定められること。 | 医療機関が提供した保険診療の費用を保険者が支払うこと。 |
時期 | 診療の前(市場に出る前や適用開始時)。 | 診療の後(毎月の診療行為に対する支払い)。 |
対象 | 医薬品、医療技術、医療機器など。 | 医療機関(診療報酬)。 |
何が起こるか | そのサービスが保険診療として使えるようになる。 | 医療機関が保険による対価を受け取る。 |
結論として:
- 保険収載がなければ、その医療は原則として保険適用されず、全額自己負担となります。
- 保険償還は、保険収載されたサービスを提供した医療機関に対する、保険者からの支払いのプロセスです。