abandonedとは(アメリカの特許制度)
質問:https://patents.google.com/patent/US20070249952A1/en の特許のstatusがabandonedとありますが、これはどういう意味でしょうか?20年経過して切れたのではないということですよね?
はい、その通りです。「Abandoned (放棄)」は、20年の存続期間が満了して「切れた (Expired)」のとは全く異なります。
「Abandoned」は、特許権が成立する「前」に、出願人による手続きが停止されたことを意味します。
「Abandoned (放棄)」とは?
これは、特許出願が審査段階で「死んだ」状態、つまり特許にならなかったことを示します。
ブラウザで確認した情報(Legal Events)によると、この出願(US11/586,196)は2013年2月12日に「ABANDONED — FAILURE TO RESPOND TO AN OFFICE ACTION」となっています。
これは具体的に、以下のことを意味します。
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出願人(AXON SLEEP RESEARCH LABORATORIES Inc)が特許を出願しました。(2006年10月24日出願)
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米国の特許庁(USPTO)の審査官がこの出願を審査し、「このままでは特許にできません」という**拒絶理由通知(Office Action)**を出しました。
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出願人は、その通知に対して応答期間内(反論書や補正書を提出する期限)に返答しませんでした。
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その結果、この出願は「放棄」されたものとみなされ、手続きが打ち切られました。
このように、出願人が審査の途中で応答をやめたり、特許査定が出たのに登録料を払わなかったりすると、その出願は「Abandoned」となります。
「切れた (Expired)」との違い
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Abandoned (放棄):
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特許権が成立する「前」に手続きが止まった状態。
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権利が発生していないため、その出願内容で他者を訴えたりすることはできません。
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Expired (存続期間満了):
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一度、特許権が成立し、権利として有効になったもの。
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その権利が、存続期間(原則として出願日から20年)の満了によって消滅した状態です。
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ご質問の出願は2006年に出願されているため、もし特許権が成立していたとしても、満了するのは2026年頃です。したがって、20年経過で切れたのではない、というご認識は正しいです。
abandonedに対応する日本の制度
質問:今の説明はアメリカだけでなく、日本にも通用する話?
Gemini 2.5 Pro:はい、基本的な概念は日本にも通用します。アメリカの「Abandoned(放棄)」に相当する状況は、日本の特許制度にも存在し、それは「Expired(存続期間満了)」とは明確に区別されます。
🇯🇵 日本の特許制度における対応
ご説明した「審査官の通知(Office Action)に応答しなかったために出願が終了する」というケースは、日本では「みなし取下げ」または「拒絶査定」につながる手続きに該当します。
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審査官からの通知
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日本の特許庁の審査官も、審査において特許できない理由(新規性がない、進歩性がない等)を見つけた場合、「拒絶理由通知」を出願人に送付します。
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応答期間
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出願人には、その通知に対して意見を述べたり(意見書)、出願内容を修正したり(手続補正書)するための応答期間(通常、国内居住者は60日)が与えられます。
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応答しなかった場合
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もし出願人がこの応答期間内に何も応答しなかった場合、その出願は「みなし取下げ」(出願が取り下げられたものとみなされる)となるか、あるいは審査官がそのまま「拒絶査定」を出します。
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どちらの場合も、その出願は特許権として成立することなく終了します。
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🇺🇸 米国「Abandoned」と日本の「みなし取下げ」
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共通点:
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どちらも、特許権が成立する「前」に、出願人が特許庁の要求(拒絶理由への応答、手数料の支払いなど)に応じなかったために、その出願手続きが終了する状態を指します。
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区別:
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これは、一度特許権が成立し、20年間の権利期間が終了した「存続期間満了(Expired)」とは全く異なります。
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したがって、審査の途中で応答せずに手続きが終了し、権利化されなかった点において、ご質問の米国特許の「Abandoned」と日本の「みなし取下げ」や「拒絶査定」は、実質的に同じ状況を示していると言えます。
質問:みなし取り下げと拒絶の2通りは、どういうときにどっちになるの?
Gemini 2.5 Pro:
はい、そのご認識で正しい部分と、少し補足が必要な部分があります。
1. 🇯🇵 日本の特許法における「放棄」
まず、「放棄」という言葉自体は、日本の特許法にも存在します(特許法第97条など)。ただし、これは主に「権利が成立した後に、特許権者が自らの意思で権利を手放すこと」を指します。あるいは、出願人が自らの意思で「出願放棄書」を提出して、能動的に出願をやめる場合も指します(Source 1.1)。これは、前回の会話で出てきた米国の「Abandoned(審査官の通知を無視した結果、受動的に手続きが打ち切られる)」とはニュアンスが異なります。アメリカの「Abandoned」に最も近い日本の制度上の扱いは、やはり「みなし取下げ」と「拒絶査定(の結果、権利化が終了すること)」になります。
2. 🚦 「みなし取下げ」と「拒絶査定」の分岐
ご質問の核心である「どういうときにどっちになるのか?」ですが、これは「応答しなかった」対象が何かによって明確に分かれます。
🅰️ 「みなし取下げ」になるケース
これは主に、審査プロセスそのものを開始維持するための「手続き」を行わなかった場合です。
代表例:出願審査請求をしなかった場合
特許出願は、出願しただけでは審査が始まりません。
出願から3年以内に「審査してください」という「出願審査請求」の手続き(と費用の支払い)が必要です。
もし3年以内に誰も審査請求をしなかった場合、その出願は**「取下げ」られたものとみなされます**(みなし取下げ)。(Source 3.2, 5.1, 5.2)
この場合、審査官は中身(新規性や進歩性)を一切判断していません。「審査の土俵に上がるための手続きをしなかった」ので、自動的に終了(みなし取下げ)となります。(他にも、国内優先権を主張した場合の基礎出願が一定期間後に「みなし取下げ」になるなど、別のケースもありますが(Source 3.3, 5.1)、最も代表的なのは審査請求のケースです。)
🅱️ 「拒絶査定」になるケース
これは、審査官による「中身」の審査が開始された後で、その指摘(拒絶理由)に応答しなかった場合です。
代表例:拒絶理由通知に応答しなかった場合
出願人が「出願審査請求」を行います。
審査官が中身を審査し、「この発明は新規性がない(特許にできない)」という「拒絶理由通知」を出します。(Source 4.2)
出願人は、これに対して「意見書」や「補正書」で反論・修正する機会を与えられます。
もし出願人がこの通知を**完全に無視(無応答)**した場合、審査官は「出願人に反論の意思なし」と判断し、「拒絶査定(=あなたの出願を拒絶しますという最終決定)」を出します。(Source 2.2, 4.3)
まとめ
非常にシンプルにまとめると、以下の違いになります。
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みなし取下げ:
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いつ?:主に「審査の開始前」
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なぜ?:審査を開始・維持するための手続き(例:審査請求)をしなかったから。
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結果:審査官が中身を判断するまでもなく、手続き的に終了。
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拒絶査定 (無応答の場合):
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いつ?:「審査が開始された後」
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なぜ?:審査官が発見した中身の問題点(拒絶理由)に反論しなかったから。
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結果:審査官が中身を判断した上で、「拒絶」という最終判断を下す。
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米国の「Abandoned — Failure to respond to an Office Action」は、この「拒絶査定(無応答の場合)」のパターンに最も近いと言えます。