受動免疫(母子免疫):母親の血液中のIgGが胎児の血液中に入れる仕組み

疑問:胎児や新生児の免疫は母親の抗体で賄われている?なぜ母親の抗体が胎児の血液に入れるの?母親の血液と胎児の血液は胎盤で決して交じり合わないんじゃなかったっけ?

Gemini 2.5 Pro:はい、その通りです。胎児や新生児の免疫の大部分は、母親から受け継いだ抗体によって賄われています。これは受動免疫(または母子免疫)と呼ばれます。ユーザーさんの疑問は、生物学的に非常に重要なポイントを突いています。血液同士は交じり合わないのに、なぜ抗体だけが移動できるのか、その仕組みを解説します。

👶 胎児・新生児の免疫と母親の抗体

胎児や生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ自分で十分な抗体(免疫グロブリン)を作ることができません。そのため、母親から抗体を受け取ることで、感染症から身を守っています。

  • 胎児期(お腹の中): 胎盤を通じて、母親の血液中にある「IgG(免疫グロブリンG)」という種類の抗体を受け取ります。
  • 新生児期(生まれた後): 主に母乳、特に分娩後数日間の「初乳」に含まれる「IgA(免疫グロブリンA)」という抗体を受け取ります。これは主に赤ちゃんの腸管を感染から守ります。

母親から胎盤経由でもらったIgG抗体は、生後6ヶ月頃まで赤ちゃんの体内に残り、さまざまな感染症(はしか、風疹、おたふくかぜ等、母親が免疫を持つ病気)から守ってくれます。

🛡️ なぜ抗体だけが胎盤を通過できるのか?

ユーザーさんのご指摘通り、母親の血液と胎児の血液は、胎盤で決して直接交じり合いません

胎盤は、母親の血管と胎児の血管が非常に近接している場所ですが、両者の間には「胎盤関門」と呼ばれる薄い細胞の層があります。この関門は「関所」のような働きをしています。

  1. 血液細胞は通過できない:

    赤血球や白血球などの血液細胞は大きすぎるため、この関所(胎盤関門)を通過できません。もし交じり合ってしまうと、お互いの血液型や免疫細胞が反応し合い、大変なことになります。(※ただし、出産時などに微量に混ざることがあり、それがRh血液型不適合などの原因になることもあります。)

  2. IgG抗体は「特別に」通過できる:

    酸素や栄養素、老廃物などは、この関所を通過して交換されます。そして、数種類ある抗体のうち、IgGだけが、この関所を通過するための特別な仕組み(能動輸送)を持っています。

    • IgGは、胎盤関門にある特定の「運び屋」(専門的にはFcRn受容体と呼ばれます)と結合します。
    • この「運び屋」が、IgGを母親の血液側からキャッチし、関門の細胞内を通って、胎児の血液側へと運び届けるのです。

つまり、IgGは「特別な通行証」を持っており、胎盤の「関所」を意図的に通過することが許されているのです。他の抗体(IgMやIgAなど)はこの仕組みを持っていないため、胎盤を通過できません。

✅ 結論

ユーザーさんの疑問をまとめると、以下のようになります。

  • 疑問1: 胎児・新生児の免疫は母親の抗体で賄われている?
    • 答え: はい。胎盤を通じてIgGを、母乳を通じてIgAを受け取っています。
  • 疑問2: なぜ母親の抗体が胎児の血液に入れるの?
    • 答え: 抗体のうちIgGだけが、胎盤を通過するための特別な輸送システム(運び屋)を持っているためです。
  • 疑問3: 母親と胎児の血液は交じり合わないのでは?
    • 答え: その通りです。血液細胞そのものは交じり合いません。胎盤という「関所」を介して、酸素や栄養素、そしてIgG抗体のような必要な物質だけが選択的に交換されています。