特許出願非公開制度は、経済安全保障推進法(正式名称:経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)および同法に基づく**内閣府令**(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく特許出願の非公開に関する内閣府令)によって規定されています。
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)
第五章 特許出願の非公開
(特許出願非公開基本指針)
第六十五条 政府は、基本方針に基づき、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)の出願公開の特例に関する措置、同法第三十六条第一項の規定による特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面(以下この章において「明細書等」という。)に記載された発明に係る情報の適正管理その他公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明に係る情報の流出を防止するための措置(以下この条において「特許出願の非公開」という。)に関する基本指針(以下この条において「特許出願非公開基本指針」という。)を定めるものとする。
2 特許出願非公開基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 特許出願の非公開に関する基本的な方向に関する事項
二 次条第一項の規定に基づき政令で定める技術の分野に関する基本的な事項
三 保全指定(第七十条第二項に規定する保全指定をいう。次条第一項及び第六十七条において同じ。)に関する手続に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、特許出願の非公開に関し必要な事項
3 内閣総理大臣は、特許出願非公開基本指針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定により特許出願非公開基本指針の案を作成するときは、あらかじめ、安全保障の確保に関する経済施策、産業技術その他特許出願の非公開に関し知見を有する者の意見を聴くとともに、産業活動に与える影響に配慮しなければならない。
5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、特許出願非公開基本指針を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、特許出願非公開基本指針の変更について準用する。
(内閣総理大臣への送付)
第六十六条 特許庁長官は、特許出願を受けた場合において、その明細書等に、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野として国際特許分類(国際特許分類に関する千九百七十一年三月二十四日のストラスブール協定第一条に規定する国際特許分類をいう。)又はこれに準じて細分化したものに従い政令で定めるもの(以下この項において「特定技術分野」という。)に属する発明(その発明が特定技術分野のうち保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きいと認められる技術の分野として政令で定めるものに属する場合にあっては、政令で定める要件に該当するものに限る。)が記載されているときは、当該特許出願の日から三月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過する日までに、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、当該特許出願に係る書類を内閣総理大臣に送付するものとする。ただし、当該発明がその発明に関する技術の水準若しくは特徴又はその公開の状況に照らし、保全審査(次条第一項に規定する保全審査をいう。次項において同じ。)に付する必要がないことが明らかであると認めるときは、これを送付しないことができる。
2 特許出願人から、特許出願とともに、その明細書等に記載した発明が公にされることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きいものであるとして、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、保全審査に付することを求める旨の申出があったときも、前項と同様とする。過去にその申出をしたことにより保全審査に付され、次条第九項の規定による通知を受けたことがある者又はその者から特許を受ける権利を承継した者が当該通知に係る発明を明細書等に記載した特許出願をしたと認められるときも、同様とする。
3 特許庁長官は、第一項本文又は前項の規定による送付をしたときは、その送付をした旨を特許出願人に通知するものとする。
4 第一項に規定する特許出願が次の表の上欄に掲げる特許出願である場合における同項の規定の適用については、同項中「当該特許出願の日」とあるのは、同表の上欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の下欄に掲げる日(当該特許出願が同表の上欄に掲げる区分の二以上に該当するときは、その該当する区分に係る同表の下欄に定める日のうち最も遅い日)とする。
特許法第三十六条の二第二項に規定する外国語書面出願
当該特許出願に係る特許法第三十六条の二第二項に規定する翻訳文が提出された日(同条第四項又は第六項の規定により当該翻訳文が提出された場合にあっては、同条第七項の規定にかかわらず、当該翻訳文が現に提出された日)
特許法第三十八条の三第一項に規定する方法によりした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の三第三項に規定する明細書及び図面並びに先の特許出願に関する書類が提出された日
特許法第三十八条の四第四項ただし書の場合(同条第五項に規定する場合を除く。)における同条第二項の補完をした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の四第三項に規定する明細書等補完書が提出された日
特許法第四十四条第一項に規定する新たな特許出願
当該特許出願に係る特許法第四十四条第一項の規定による特許出願の分割の日
特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更に係る特許出願
当該特許出願に係る特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更の日
5 特許法第百八十四条の三第一項の規定により特許出願とみなされる国際出願については、第一項本文又は第二項の規定は、適用しない。
6 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をするかどうかを判断するため必要があると認めるときは、特許出願人に対し、資料の提出及び説明を求めることができる。
7 特許庁長官が第一項本文若しくは第二項の規定による送付をする場合に該当しないと判断し、若しくは当該送付がされずに第一項本文に規定する期間が経過するまでの間又は内閣総理大臣が第七十一条若しくは第七十七条第二項の規定による通知をするまでの間は、特許法第四十九条、第五十一条及び第六十四条第一項の規定は、適用しない。
8 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をしてから第七十条第一項又は第七十一条の規定による通知を受けるまでの間に特許出願の放棄又は取下げがあったときは、その旨を内閣総理大臣に通知しなければならない。第一項本文又は第二項の規定による送付をしてから第七十一条又は第七十七条第二項の規定による通知を受けるまでの間に特許法第三十四条第四項又は第五項の規定による承継の届出があったときも、同様とする。
9 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をしてから第七十条第一項又は第七十一条の規定による通知を受けるまでの間に特許出願を却下するときは、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に通知するものとする。
10 特許庁長官は、第一項本文又は第二項の規定による送付をする場合に該当しないと判断した場合において、特許出願人から内閣府令・経済産業省令で定めるところにより申出があったときは、これらの規定による送付をしない旨の判断をした旨を特許出願人に通知するものとする。
11 第一項の規定は、同項の規定に基づく政令の改正により新たに同項本文に規定する発明に該当することとなった発明を明細書等に記載した特許出願であって、その改正の際現に特許庁に係属しているものについては、適用しない。
(内閣総理大臣による保全審査)
第六十七条 内閣総理大臣は、前条第一項本文又は第二項の規定により特許出願に係る書類の送付を受けたときは、内閣府令で定めるところにより、当該特許出願に係る明細書等に公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載され、かつ、そのおそれの程度及び保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響その他の事情を考慮し、当該発明に係る情報の保全(当該情報が外部に流出しないようにするための措置をいう。第七十条第一項において同じ。)をすることが適当と認められるかどうかについての審査(以下この章において「保全審査」という。)をするものとする。
2 内閣総理大臣は、保全審査のため必要があると認めるときは、特許出願人その他の関係者に対し、資料の提出及び説明を求めることができる。
3 内閣総理大臣は、保全審査をするに当たっては、必要な専門的知識を有する国の機関に対し、保全審査に必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができる。
4 内閣総理大臣は、前項の規定により十分な資料又は情報が得られないときは、国の機関以外の専門的知識を有する者に対し、必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができる。この場合においては、当該専門的知識を有する者に発明の内容が開示されることにより特許出願人の利益が害されないよう、当該専門的知識を有する者の選定について配慮しなければならない。
5 内閣総理大臣は、前項の規定により国の機関以外の専門的知識を有する者に対し必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めるに当たり、必要があると認めるときは、その者(補助者の使用の申出がある場合には、その者及びその補助者。以下この項において同じ。)に明細書等に記載されている発明の内容を開示することができる。この場合においては、その者に対し、あらかじめ、第八項の規定の適用を受けることについて説明した上、当該開示を受けることについての同意を得なければならない。
6 内閣総理大臣は、保全指定をするかどうかの判断をするに当たり、必要があると認めるときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議することができる。
7 第四項及び第五項の規定は、前項の規定により協議を受けた関係行政機関の長について準用する。この場合において、第四項中「前項の規定により十分な資料又は情報が得られないとき」とあるのは、「第六項の規定による協議に応ずるための十分な資料又は情報を保有していないとき」と読み替えるものとする。
8 保全審査に関与する国の機関の職員及び第五項(前項において準用する場合を含む。)の規定により発明の内容の開示を受けた者は、正当な理由がなく、当該発明の内容に係る秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
9 内閣総理大臣は、保全指定をしようとする場合には、特許出願人に対し、内閣府令で定めるところにより、第七十条第一項に規定する保全対象発明となり得る発明の内容を通知するとともに、特許出願を維持する場合には次に掲げる事項について記載した書類を提出するよう求めなければならない。
一 当該通知に係る発明に係る情報管理状況
二 特許出願人以外に当該通知に係る発明に係る情報の取扱いを認めた事業者がある場合にあっては、当該事業者
三 前二号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
10 特許出願人は、特許出願を維持する場合には、前項の規定による通知を受けた日から十四日以内に、内閣府令で定めるところにより、同項に規定する書類を内閣総理大臣に提出しなければならない。
11 内閣総理大臣は、前項の規定により提出された書類の記載内容が相当でないと認めるときは、特許出願人に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。
(保全審査中の発明公開の禁止)
第六十八条 特許出願人は、前条第九項の規定による通知を受けた場合は、第七十条第一項又は第七十一条の規定による通知を受けるまでの間は、当該前条第九項の規定による通知に係る発明の内容を公開してはならない。ただし、特許出願を放棄し、若しくは取り下げ、又は特許出願が却下されたときは、この限りでない。
(保全審査の打切り)
第六十九条 内閣総理大臣は、特許出願人が第六十七条第十項に規定する期間内に同条第九項に規定する書類を提出せず、若しくは同条第十一項の規定により定められた期間内に同項の規定による補正を行わなかったとき、前条の規定に違反したと認めるとき、又は不当な目的でみだりに第六十六条第二項前段の規定による申出をしたと認めるときは、保全審査を打ち切ることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により保全審査を打ち切るときは、あらかじめ、特許出願人に対し、その理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面を提出する機会を与えなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定により保全審査を打ち切ったときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。
4 特許庁長官は、前項の規定による通知を受けたときは、特許出願を却下するものとする。
(保全指定)
第七十条 内閣総理大臣は、保全審査の結果、第六十七条第一項に規定する明細書等に公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載され、かつ、そのおそれの程度及び指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響その他の事情を考慮し、当該発明に係る情報の保全をすることが適当と認めたときは、内閣府令で定めるところにより、当該発明を保全対象発明として指定し、特許出願人及び特許庁長官に通知するものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による指定(以下この章及び第八十八条において「保全指定」という。)をするときは、当該保全指定の日から起算して一年を超えない範囲内においてその保全指定の期間を定めるものとする。
3 内閣総理大臣は、保全指定の期間(この項の規定により保全指定の期間を延長した場合には、当該延長後の期間。以下この章において同じ。)が満了する日までに、保全指定を継続する必要があるかどうかを判断しなければならない。この場合において、継続する必要があると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、一年を超えない範囲内において保全指定の期間を延長することができる。
4 第六十七条第二項から第八項までの規定は、前項前段の規定による判断をする場合について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。
5 内閣総理大臣は、第三項後段の規定による延長をしたときは、その旨を第一項の規定による通知を受けた特許出願人(通知後に特許を受ける権利の移転があったときは、その承継人。以下この章において「指定特許出願人」という。)及び特許庁長官に通知するものとする。
(保全指定をしない場合の通知)
第七十一条 内閣総理大臣は、保全審査の結果、保全指定をする必要がないと認めたときは、その旨を特許出願人及び特許庁長官に通知するものとする。
(特許出願の取下げ等の制限)
第七十二条 指定特許出願人は、第七十七条第二項の規定による通知を受けるまでの間は、特許出願を放棄し、又は取り下げることができない。
2 指定特許出願人は、第七十七条第二項の規定による通知を受けるまでの間は、実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第十条第一項及び意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第十三条第一項の規定にかかわらず、特許出願を実用新案登録出願又は意匠登録出願に変更することができない。
(保全対象発明の実施の制限)
第七十三条 指定特許出願人及び保全対象発明の内容を特許出願人から示された者その他保全対象発明の内容を職務上知り得た者であって当該保全対象発明について保全指定がされたことを知るものは、当該保全対象発明の実施(特許法第二条第三項に規定する実施をいう。以下この章及び第九十二条第一項第六号において同じ。)をしてはならない。ただし、指定特許出願人が当該実施について内閣総理大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の規定による許可を受けようとする指定特許出願人は、許可を受けようとする実施の内容その他内閣府令で定める事項を記載した申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項ただし書の規定による許可の申請に係る実施により同項本文に規定する者以外の者が保全対象発明の内容を知るおそれがないと認めるときその他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止の観点から内閣総理大臣が適当と認めるときは、同項ただし書の規定による許可をするものとする。
4 第一項ただし書の規定による許可には、保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために必要な条件を付することができる。
5 第六十七条第二項から第五項まで及び第八項の規定は、第一項ただし書の規定による許可について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。
6 内閣総理大臣は、指定特許出願人が第一項の規定又は第四項の規定により許可に付された条件に違反して保全対象発明の実施をしたと認める場合であって、特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び指定特許出願人に通知するものとする。指定特許出願人が第七十五条第一項に規定する措置を十分に講じていなかったことにより、指定特許出願人以外の者が第一項の規定又は第四項の規定により許可に付された条件に違反して保全対象発明の実施をした場合も、同様とする。
7 内閣総理大臣は、前項の規定による通知をするときは、あらかじめ、指定特許出願人に対し、その理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面を提出する機会を与えなければならない。
8 特許庁長官は、第六項の規定による通知を受けた場合には、第七十七条第二項の規定による通知を待って、特許出願を却下するものとする。
(保全対象発明の開示禁止)
第七十四条 指定特許出願人及び保全対象発明の内容を特許出願人から示された者その他保全対象発明の内容を職務上知り得た者であって当該保全対象発明について保全指定がされたことを知るものは、正当な理由がある場合を除き、保全対象発明の内容を開示してはならない。
2 内閣総理大臣は、指定特許出願人が前項の規定に違反して保全対象発明の内容を開示したと認める場合であって、特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び指定特許出願人に通知するものとする。指定特許出願人が次条第一項に規定する措置を十分に講じていなかったことにより、指定特許出願人以外の者が前項の規定に違反して保全対象発明の内容を開示した場合も、同様とする。
3 前条第七項及び第八項の規定は、前項の規定による通知について準用する。
(保全対象発明の適正管理措置)
第七十五条 指定特許出願人は、保全対象発明に係る情報を取り扱う者を適正に管理することその他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置を講じ、及び保全対象発明に係る情報の取扱いを認めた事業者(以下この章において「発明共有事業者」という。)をして、その措置を講じさせなければならない。
2 発明共有事業者は、指定特許出願人の指示に従い、前項に規定する措置を講じなければならない。
(発明共有事業者の変更)
第七十六条 指定特許出願人は、第六十七条第九項第二号に規定する事業者として同項に規定する書類に記載した事業者以外の事業者に新たに保全対象発明に係る情報の取扱いを認めるときは、あらかじめ、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。
2 指定特許出願人は、前項の場合を除き、発明共有事業者に保全対象発明に係る情報の取扱いを認めることをやめたときその他発明共有事業者について変更が生じたときは、内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、その変更の内容を内閣総理大臣に届け出なければならない。
(保全指定の解除等)
第七十七条 内閣総理大臣は、保全指定を継続する必要がないと認めたときは、保全指定を解除するものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により保全指定を解除したとき、又は保全指定の期間が満了したときは、その旨を指定特許出願人及び特許庁長官に通知するものとする。
3 第六十七条第二項から第八項までの規定は、第一項の規定により保全指定を解除する場合について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。
(外国出願の禁止)
第七十八条 何人も、日本国内でした発明であって公になっていないものが、第六十六条第一項本文に規定する発明であるときは、次条第四項の規定により、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全に影響を及ぼすものでないことが明らかである旨の回答を受けた場合を除き、当該発明を記載した外国出願(外国における特許出願及び千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約に基づく国際出願をいい、政令で定めるものを除く。以下この章及び第九十四条第一項において同じ。)をしてはならない。ただし、我が国において明細書等に当該発明を記載した特許出願をした場合であって、当該特許出願の日から十月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過したとき(第七十条第一項の規定による通知を受けたとき及び当該期間を経過する前に当該特許出願が却下され、又は当該特許出願を放棄し、若しくは取り下げたときを除く。)、第六十六条第一項本文に規定する期間内に同条第三項の規定による通知が発せられなかったとき(当該期間を経過する前に当該特許出願が却下され、又は当該特許出願を放棄し、若しくは取り下げたときを除く。)及び同条第十項、第七十一条又は前条第二項の規定による通知を受けたときにおける当該特許出願に係る明細書等に記載された発明については、この限りでない。
2 指定特許出願人に対する前項の規定の適用については、同項中「第六十六条第一項本文に規定する発明」とあるのは、「第六十六条第一項本文に規定する発明(第七十条第一項の規定による通知を受けた特許出願に係る明細書等に記載された発明にあっては、保全対象発明)」とする。
3 第一項ただし書に規定する特許出願が次の表の上欄に掲げる特許出願である場合における同項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「当該特許出願の日」とあるのは、同表の上欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の下欄に掲げる日(当該特許出願が同表の上欄に掲げる区分の二以上に該当するときは、その該当する区分に係る同表の下欄に定める日のうち最も遅い日)とする。
特許法第三十六条の二第二項に規定する外国語書面出願
当該特許出願に係る特許法第三十六条の二第二項に規定する翻訳文が提出された日(同条第四項又は第六項の規定により当該翻訳文が提出された場合にあっては、同条第七項の規定にかかわらず、当該翻訳文が現に提出された日)
特許法第三十八条の三第一項に規定する方法によりした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の三第三項に規定する明細書及び図面並びに先の特許出願に関する書類が提出された日
特許法第三十八条の四第四項ただし書の場合(同条第五項に規定する場合を除く。)における同条第二項の補完をした特許出願
当該特許出願に係る特許法第三十八条の四第三項に規定する明細書等補完書が提出された日
特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更に係る特許出願
当該特許出願に係る特許法第四十六条第一項の規定による出願の変更の日
4 特許庁長官は、特許法第百八十四条の三第一項の規定により特許出願とみなされる国際出願を受けた場合において、当該特許出願に係る明細書等に第六十六条第一項本文に規定する発明が記載されているときは、その旨を内閣総理大臣に通知するものとする。
5 内閣総理大臣は、特許庁長官が第六十六条第三項の規定による通知をした特許出願人(通知後に特許を受ける権利の移転があったときは、その承継人を含む。)が第一項の規定に違反して外国出願をしたと認める場合又は前項の規定による通知に係る国際出願が第一項の規定に違反するものであると認める場合であって、当該特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び特許出願人に通知するものとする。
6 第七十三条第七項の規定は、前項の規定による通知について準用する。
7 特許庁長官は、第五項の規定による通知を受けたときは、特許出願を却下するものとする。ただし、その特許出願が保全指定がされたものである場合にあっては、前条第二項の規定による通知を待って、特許出願を却下するものとする。
(外国出願の禁止に関する事前確認)
第七十九条 第六十六条第一項本文に規定する発明に該当し得る発明を記載した外国出願をしようとする者は、我が国において明細書等に当該発明を記載した特許出願をしていない場合に限り、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、特許庁長官に対し、その外国出願が前条第一項の規定により禁止されるものかどうかについて、確認を求めることができる。
2 特許庁長官は、前項の規定による求めを受けた場合において、当該求めに係る発明が第六十六条第一項本文に規定する発明に該当しないときは、遅滞なく、その旨を当該求めをした者に回答するものとする。
3 特許庁長官は、第一項の規定による求めを受けた場合において、当該求めに係る発明が第六十六条第一項本文に規定する発明に該当するときは、遅滞なく、内閣総理大臣に対し、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全に影響を及ぼすものでないことが明らかかどうかにつき確認を求めるものとする。この場合において、当該確認を求められた内閣総理大臣は、遅滞なく、特許庁長官に回答するものとする。
4 特許庁長官は、前項の規定により回答を受けたときは、遅滞なく、第一項の規定による求めをした者に対し、当該求めに係る発明が第六十六条第一項本文に規定する発明に該当する旨及び当該回答の内容を回答するものとする。
5 第一項の規定により確認を求めようとする者は、手数料として、一件につき二万五千円を超えない範囲内で政令で定める額を国に納付しなければならない。
6 前項の規定による手数料の納付は、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、収入印紙をもってしなければならない。ただし、内閣府令・経済産業省令で定める場合には、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、現金をもって納めることができる。
7 前条第一項の規定の適用の有無については、産業競争力強化法(平成二十五年法律第九十八号)第七条の規定は、適用しない。
(損失の補償)
第八十条 国は、保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。)について、第七十三条第一項ただし書の規定による許可を受けられなかったこと又は同条第四項の規定によりその許可に条件を付されたことその他保全指定を受けたことにより損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。
2 前項の規定による補償を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣にこれを請求しなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の規定による請求があったときは、補償すべき金額を決定し、これを当該請求者に通知しなければならない。
4 第六十七条第二項から第四項まで及び第五項前段の規定(保全指定の期間内にあっては、これらの規定のほか、同項後段及び第八項の規定)は、内閣総理大臣が前項の規定による決定をする場合について準用する。この場合において、同条第四項中「発明」とあり、及び同条第五項中「明細書等に記載されている発明」とあるのは「第七十条第一項に規定する保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。)」と、同条第八項中「規定により発明」とあるのは「規定により第七十条第一項に規定する保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。)」と、「当該発明」とあるのは「当該保全対象発明」と読み替えるものとする。
5 第三項の規定による決定に不服がある者は、その通知を受けた日から六月以内に訴えをもって補償すべき金額の増額を請求することができる。
6 前項の訴えにおいては、国を被告とする。
(後願者の通常実施権)
第八十一条 指定特許出願人であって、保全指定がされた他の特許出願について出願公開がされた日前に、第六十六条第七項の規定により当該出願公開がされなかったため、自己の特許出願に係る発明が特許法第二十九条の二の規定により特許を受けることができないものであることを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した場合における当該他の特許出願に係る特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
2 前項に規定する他の特許出願に係る特許権又は専用実施権を有する者は、同項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
(特許法等の特例)
第八十二条 特許法第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願について、特許庁長官が第六十九条第四項、第七十三条第八項(第七十四条第三項において準用する場合を含む。)又は第七十八条第七項の規定によりその優先権の主張の基礎とした特許出願を却下した場合には、当該優先権の主張は、その効力を失うものとする。
2 保全指定がされた特許出願を基礎とする特許法第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願がされた場合における同法第四十二条第一項の規定の適用については、同項中「経済産業省令で定める期間を経過した時」とあるのは、「経済産業省令で定める期間を経過した時又は当該先の出願について、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七十七条第二項の規定による通知を受けた時のうちいずれか遅い時」とする。
3 保全指定がされた場合における特許法第四十八条の三第一項の規定の適用については、同項中「その日から三年以内に」とあるのは、「その日から三年を経過した日又は経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七十七条第二項の規定による通知を受けた日から三月を経過した日のうちいずれか遅い日までに」とする。
4 保全指定がされた場合における特許法第六十七条第三項の規定の適用については、同項中「次の各号に掲げる期間」とあるのは、「次の各号に掲げる期間及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七十条第一項の規定による通知を受けた日から同法第七十七条第二項の規定による通知を受けた日までの期間」とする。
5 特許庁長官は、実用新案法第五条第一項の規定による実用新案登録出願を受けた場合において、当該実用新案登録出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に保全対象発明が記載されているときは、同法第十四条第二項の規定にかかわらず、その保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了するまで、同項の規定による実用新案権の設定の登録をしてはならない。
(勧告及び改善命令)
第八十三条 内閣総理大臣は、指定特許出願人又は発明共有事業者が第七十五条の規定に違反した場合において保全対象発明に係る情報の漏えいを防ぐため必要があると認めるときは、当該者に対し、同条第一項に規定する措置をとるべき旨を勧告することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、当該者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3 内閣総理大臣は、前二項の規定にかかわらず、指定特許出願人又は発明共有事業者が第七十五条の規定に違反した場合において保全対象発明の漏えいのおそれが切迫していると認めるときは、当該者に対し、同条第一項に規定する措置をとるべきことを命ずることができる。
(報告徴収及び立入検査)
第八十四条 内閣総理大臣は、この章の規定の施行に必要な限度において、指定特許出願人及び発明共有事業者に対し、保全対象発明の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該者の事務所その他必要な場所に立ち入り、保全対象発明の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(送達)
第八十五条 この章に規定する手続に関し、送達をすべき書類は、内閣府令・経済産業省令で定める。
2 特許法第百九十条から第百九十二条までの規定は、前項の送達について準用する。